説明

標的核酸の検出方法

【課題】核酸増幅法及び核酸ハイブリダイゼーション法の利点を活かしながら、より簡易、迅速、特異的且つ目視判定性に優れた、いわゆるラテラルフロータイプの標的核酸の検出方法、並びに該方法を実施するためのキットの提供。
【解決手段】試料中の標的核酸を検出する方法であって、以下の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする標的核酸の検出方法。
(1)ビオチン標識された一本鎖標的核酸を増幅する工程
(2)該一本鎖標的核酸をストリップ上に展開し、予め固定された相補核酸プローブとハイブリダイズさせてこれを捕捉する工程
(3)金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液をストリップ上に展開し、前記捕捉核酸を可視化する工程
(4)洗浄液をストリップ上に展開する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物試料中の標的核酸、特にウイルス核酸を特異的に検出するための方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、核酸の検出に関する研究や診断技術が急速に進歩し、検査試料中の特定遺伝子を検出する方法として、遺伝子増幅法及びハイブリダイゼーション法等いくつかの方法が知られている。
中でも、PCR法(polymerase chain reaction method)やRT−PCR法(reverse transcriptase polymerase chain reaction method)に代表される遺伝子増幅法は、検出感度が高い方法として広く研究及び利用されている。
【0003】
また、標的核酸と相補的な塩基配列をもつ単鎖又は二本鎖を放射性あるいは非放射性の標識物質で標識し、標的配列との相補性を利用して標的配列を検出するハイブリダイゼーション法も、標的核酸又は標的核酸増幅物の存在を検出するための方法として広く用いられている。また、プローブを担体に固定する液相−固相ハイブリダイゼーション法やサンドイッチ型の液相−液相ハイブリダイゼーション法も考案されている。
【0004】
また最近では、検出感度の向上と操作の簡便性を目的として、PCR法などの遺伝子増幅法とハイブリダイゼーション法を組み合わせた方法、例えば増幅した1本鎖核酸を予めストリップ上に固定(或いは半固定)させておいた第1のオリゴヌクレオチドプローブ及び標識した第2のオリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズさせて検出する方法が報告されている(特許文献1)。
しかし、当該検出法は、第2の標識オリゴヌクレオチドプローブをそれぞれ標的核酸毎に作成する必要があり手間がかかる、或いはストリップ上に半固定化作業を行う必要があるという問題があった。
【0005】
一方、インフルエンザウイルスは、インフルエンザの原因であるオルソミキソウイルス科に属し、エンベロープで包まれたマイナス鎖の一本鎖RNAを含むウイルスであり、A型、B型、C型の3属が存在する。A型インフルエンザウイルスは鳥類やヒトを含む哺乳動物に感染するが、B及びC型はヒトのみに感染する。
インフルエンザウイルスのエンベロープには、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)が存在し、HA及びNAの亜型の組み合わせは、ウイルス分離株の特定に用いられる。A型インフルエンザウイルスにはHAとNAの変異が特に多く、これまでHAに16種類、NAに9種類の大きな変異が見つかっており、その組み合わせの数の亜型が存在しうる。亜型の違いはH1N1〜H16N9といった略称で表現されている。
【0006】
これまでに、ヒトのインフルエンザの原因になることが明らかになっているのは、「Aソ連型」として知られているH1N1、「A香港型」として知られているH3N2、H1N2、H2N2、の4種類であったが、2009年4月、メキシコにおいて、豚のあいだで流行していたウイルスが農場などで豚から人に直接感染し、それから人の間で流行が認知された。当該インフルエンザウイルスは、A型、H1N1であり、2009年6月12日に世界的流行病(パンデミック)であることが宣言された。また、この他にH9N1、高病原性トリインフルエンザとして知られたH5N1などのいくつかの種類がヒトに感染した例が報告されている。
【0007】
従って、当該インフルエンザウイルスを遺伝子レベルで、正確で、且つ簡易・迅速に検出・判定できる方法が強く求めてられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4268944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、核酸増幅法及び核酸ハイブリダイゼーション法の利点を活かしながら、より簡易、迅速、特異的且つ目視判定性に優れた、いわゆるラテラルフロータイプの標的核酸の検出方法、並びに該方法を実施するためのキットを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、生物試料から、標識された1本鎖核酸を増幅し、これをストリップ上で、毛細管現象によって展開させて、ストリップ上に固定させた相補核酸プローブとハイブリダイズさせてこれを捕捉し、次いでこれを可視化することにより、目視判定によって、簡易・迅速に標的核酸を検出できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の1)〜5)に係るものである。
1)試料中の標的核酸を検出する方法であって、以下の(1)〜(4)の工程を含む標的核酸の検出方法。
(1)ビオチン標識された一本鎖標的核酸を増幅する工程
(2)該一本鎖標的核酸をストリップ上に展開し、予め固定された相補核酸プローブとハイブリダイズさせてこれを捕捉する工程
(3)金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液をストリップ上に展開し、前記捕捉核酸を可視化する工程
(4)洗浄液をストリップ上に展開する工程
2)一本鎖標的核酸を増幅が、非対照PCR法により行われるものである請求項1記載の標的核酸の検出方法。
3)非対照PCR法が、以下に示されるプライマーセットを単独又は複数用いて行われる上記2)の標的核酸の検出方法。
a)配列番号1の塩基配列からなるプライマー、配列番号2の塩基配列からなるプライマー
b)配列番号3の塩基配列からなるプライマー、配列番号4の塩基配列からなるプライマー
4)複数のストリップ上に捕捉された標的核酸を一つの金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液を用いて同時に可視化する、上記1)〜3)の標的核酸の検出方法。
5)PCR増幅プライマー、相補核酸プローブ固定化ストリップ及び金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液を少なくとも含有する、上記1)の方法を実施するための標的核酸の検出キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明の標的核酸の検出方法及びキットによれば、生物試料中の標的核酸、特にインフルエンザウイルスを遺伝子レベルで、高感度で、且つ簡易・迅速に目視で検出・判定できる。また、本発明の方法によれば、複数のストリップ上に捕捉された標的核酸を一つの金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液を用いて同時に可視化することができ、一の可視化操作により、一度に複数の標的核酸の検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ストリップの構成例を示した図
【図2】標的核酸の検出手順を示した図(A:ハイブリダイゼーション、B:可視化、C:洗浄)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)ビオチン標識された一本鎖標的核酸を増幅する工程
本工程では、公知の核酸増幅反応を用いて、生物材料中の核酸から、ビオチン標識された一本鎖標的核酸を増幅する。
【0015】
ビオチン標識された一本鎖標的核酸の増幅は、生物材料に含まれる核酸のうち、標的核酸を含む一本鎖核酸を選択的に増幅することが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ビオチン標識され、標的核酸配列を増幅可能なプライマーを用いた非対称PCRにより行うことが好ましい。
非対称PCRは、1本鎖として得たい方のプライマーを、片方のプライマーに対して10〜100倍程度の濃度にしてPCRを行う方法である。使用するプライマーの設計、プライマー比率は適宜調製すればよいが、1本鎖形成の効率の点から、例えば、ビオチン標識プライマーをフォワードプライマーとする場合、非標識のリバースプライマーとのプライマー濃度比(フォワードプライマー:リバースプライマー)は、3〜6:1が好ましく、5:1とするのがより好ましい。
また、PCRのサイクル数は、40〜60が好ましく、連続的に60サイクルのPCRをかけることにより効率的に一本鎖を形成できる。
【0016】
また、上記非対称PCRは、複数、例えば、3〜10組程度のプライマーセットを用いて一度にPCRを行う、所謂マルチプレックスPCR(MPCR)を採用することもできる。これを用いることにより様々な長短の塩基配列を一度に増幅することができ、また、一本鎖核酸が取得されやすいという利点もある。
【0017】
標的核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、原核生物にのみ存在する塩基配列の一部、真核生物(但し、ヒトを除く)にのみ存在する塩基配列の一部、及びヒトにのみ存在する塩基配列の一部のいずれかから選択される核酸であることが好ましい。具体的には、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子、癌関連遺伝子、遺伝病関連遺伝子等が挙げられる。このうち、ウイルス及び細菌遺伝子としては、例えば、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、HIVウイルス、マイコプラズマ、リケッチア、レンサ球菌、サルモネラ菌等の遺伝子が挙げられる。
【0018】
インフルエンザウイルスについては、例えば、Influenza A virus (A/Narita/1/2009(H1N1)) segment 4 hemagglutinin (HA) 遺伝子(ACCESSION :GQ165815)、Influenza A virus (A/New Jersey/8/76(H1N1)) segment 4 hemagglutinin (HA) 遺伝子(ACCESSION :VR-897)、Influenza A virus (A/Aichi/2/68(H3N2)) segment 4 hemagglutinin (HA) 遺伝子(ACCESSION :VR-547)、Influenza A virus (A/Duck/PA/10218/84(H5N2)) segment 4 hemagglutinin (HA) 遺伝子(ACCESSION :VR-1331)、Influenza B virus (B/Taiwan/2/62) segment 4 hemagglutinin (HA) 遺伝子(ACCESSION :VR-295)等が挙げられる。
また、Influenza A virus (A/Narita/1/2009(H1N1)) segment 4 hemagglutinin (HA) 遺伝子を増幅するためのプライマーとしては、後記〔表1〕に示すものが例示できる。
【0019】
標的核酸を含む生体材料(検体)としては、例えば、細菌、ウイルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、或いは糞尿等の排泄物が挙げられる。また、これらの検体は直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、目的とする組織由来のDNAを顕在化させる目的で、例えば酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理等による細胞破壊処理を予め施したものを使用することができる。
【0020】
(2)該一本鎖増幅核酸を、ストリップ上に展開し、予め固定された相補核酸プローブとハイブリダイズさせて捕捉する工程
本工程では、工程(1)で増幅された核酸を、クロマトグラフィーの原理に基づいてストリップ上で展開し、ストリップ上に予め固定化された標的核酸と相補的な核酸プローブに接触させこれを捕捉する。
【0021】
ストリップは、捕捉用オリゴヌクレオチドプローブを結合できる固相担体であればよいが、ニトロセルロース、ナイロン等の多孔性メンブレンが好適に挙げられ、カルボキシル基等を化学修飾した共有結合活性修飾ナイロンメンブレンでもよい。
【0022】
相補核酸プローブは、検出対象となる1本鎖標的核酸(増幅産物)に相補的な配列を有する1本鎖オリゴヌクレオチドである。このような核酸は、上記同様にPCR法、化学合成法などにより作製することができる。核酸の長さは、通常のハイブリダイゼーション条件下で安定に標的分子とハイブリダイズできる限り、制限されないが、必要以上に長くないことが好ましく、10〜50塩基、より好ましくは10〜30塩基、更に好ましくは15〜25塩基である。
【0023】
相補核酸プローブのストリップへの固定は、核酸プローブが直接ストリップと結合を形成することにより固定されていてもよいし、間接的に固定されていてもよい。例えば、化学修飾したメンブレンを用いる場合、相補核酸プローブはこれに反応する官能基を有す事が望ましく、例えばカルボキシル基で修飾されたメンブレンに対しては、5’あるいは3’末端をアミノ化した合成オリゴヌクレオチドが好ましい。
【0024】
ストリップへの捕捉用オリゴヌクレオチドプローブの結合形態は特に限定されず、ライン状あるいは円形スポット状等の何れでもよいが、ライン状が好ましい。さらに、標的核酸と内部標準核酸由来の増幅産物を同時に捕捉するため、同一のストリップ上の異なる位置に各捕捉オリゴヌクレオチドプローブを結合しておくこともできる。
【0025】
(3)金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液をストリップ上に展開し、前記捕捉核酸を可視化する工程
本工程では、前記で捕捉された一本鎖標的核酸のビオチンに対して、金属コロイド標識ストレプトアビジンを結合させることによって、標的核酸の捕捉位置が可視化される。
金属コロイド標識ストレプトアビジンにおける金属コロイド標識としては、視覚的に検知し得るシグナルが得られるものであって、毛管現象により移動可能であれば特に限定されないが、具体的には例えば金コロイド、鉄コロイド、銀コロイド等が挙げられ、取扱易さや感度等の点から金コロイドが好ましい。さらには、金と白金からなる合金コロイドも好適に用いることができる。ストレプトアビジンに代えてアビジンを用いてもよい。
【0026】
金属コロイド標識ストレプトアビジンを調製する方法としては、公知の物理的吸着法、化学的結合法等を用いて調製すればよく、市販品を使用することもできる。
【0027】
金属コロイド標識ストレプトアビジンは、例えば、金コロイド標識ストレプトアビジン40nm(50 O.D.)を1%BSA溶液で適当に希釈して金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液とし、ストリップ上に展開することによって使用される。
尚、金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液は一つ用意すればよく、一つのコンジュゲート液で、複数のストリップ上に捕捉された標的核酸を同時に可視化することも可能である。
【0028】
(4)洗浄液をストリップ上に展開する工程
本工程は、洗浄液をストリップ上に展開し、残存する金属コロイド標識ストレプトアビジンを除去する工程は、試験管或いはプレートのウエル等に洗浄液を毛管現象にて吸い上げ洗浄する。
ここで用いられる洗浄液は、金属コロイド標識ストレプトアビジンを除去できるものであれば限定されないが、例えば、2×PBS溶液に0.1%Tween20を加えた溶液等が挙げられる。
【0029】
上記(1)〜(4)の工程を行い、可視化されたバンドを確認することにより、標的核酸の存在を目視により判定することができる。
【0030】
本発明の方法において、内部標準核酸を用いる場合は、標的核酸と内部標準核酸はそれぞれ別々に検出してもよいが、同一のストリップで同時に検出する共検出方法が好ましい。
検出における結果判定は、具体的には以下のように行われる事が望ましい。予想される標的核酸量と同等あるいは以下に設定され、競合あるいは非競合的に共増幅され、共検出された内部標準核酸の発色量を対照として、標的核酸量が同等、以下あるいは以上であると目視で判定を行う。例えば、標的核酸と競合増幅され得る内部標準核酸を用いた場合、標的核酸から得た増幅産物の発色量が、対照となる内部標準核酸由来の増幅産物と同等の発色量を呈した場合に同等量であると判定し、対照となる内部標準核酸の発色が微かに認められるあるいは認められず標的核酸の発色のみである場合、内部標準核酸に比べ標的核酸量が多いと判定する。一方、対照となる内部標準核酸の発色のみあるいは標的核酸の発色量が非常に微かである、という場合は標的核酸量が少ないと判定する。
【0031】
本発明の標的核酸の検出キットは、上記の(1)〜(4)の一連の工程を実施するための手段を備えたものであり、具体的には、逆転写酵素、PCR増幅プライマー、PCR酵素液、dNTP、UNG試薬、陽性コントロール、dH2O等を含む「増幅試薬セット」と、相補核酸プローブ固定化ストリップ、増幅反応停止液、変性液、金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液等を含む「検出試薬セット」、更には、96 ウェル平底マイクロタイタープレート、マイクロピペット等の器具、洗浄液等の試薬が挙げられる。
【実施例】
【0032】
参考例1.プライマー及びプローブの設計
(1)プライマー
【0033】
【表1】

【0034】
(2)プローブ
【0035】
【表2】

【0036】
参考例2.核酸試料の調製
以下に示す手順で核酸試料を調製した。
1.25μlのProteaseを1.5mlのマイクロ遠心チューブにピッペト或いはエクセルにて加える。
2.チューブに200μlのサンプルを加える。
3.200μl抽出試薬を加え、ボルテックスにて15秒間混和する。
4.ヒートブロックで56℃、15分間インキュベート後、スピンダウンする。
5.250μl純エタノールを加え、ボルテックス15秒間混和し、スピンダウンする。
6.カラムに全量を移す。6,000g 1分間遠心する。
7.カラムに500μlBuffer1を加え、6,000g 1分間遠心する。ろ液を捨てる。
8.カラムに500μlBuffer2を加え、6,000g 1分間遠心する。ろ液を捨てる。
9.カラムに500μlエタノールを加え、6,000g 1分間遠心する。ろ液を捨てる。
10.カラムを20,000g3分間遠心し、乾燥させる。
11.カラムを56℃3分間インキュベートする。
12.50μlRNase Free H2Oを加え、20,000g1分間遠心する。
【0037】
実施例1.非対称PCR
非対称PCRは、以下の条件により行った。
(1)PCRマスター混合溶液の調製
dH2O 32.5μl、10×RT-PCR buffer 10μl,dNTPs2μl、20μM FLAsw-R la 0.5μl,25μM FLAsw-F la bio 2μl,Enzyme mix 2μlをそれぞれ加える。
(2)(1)で調製したPCRマスター混合溶液49μlに、上記参考例2で調製した核酸試料1μlをPCR用チューブに入れ、ABI9700(アプライドバイオシステムズ)にて、95℃で15分間加熱後、95℃,30秒、60℃,30秒、72℃,30秒のサイクルで60回繰り返し、72℃,3分間加熱した後、4℃、1時間放置した。
【0038】
実施例2.マルチプレックス非対称PCR
(1)PCRマスター混合溶液の調製
dH2O 29.5μl、10×RT-PCR buffer 10μl,dNTPs2μl、20μM FLAsw-R la 0.5μl,25μM FLAsw-F la bio 2μl, 20μM β354-F la 0.5μl,25μM β455-R la bio 2μlEnzyme mix 2μlをそれぞれ加える。
(2)(1)で調製したPCRマスター混合溶液49μlに、上記参考例2で調製した核酸試料2μlをPCR用チューブに入れ、ABI9700(アプライドバイオシステムズ)にて、95℃で15分間加熱後、95℃,30秒、60℃,30秒、72℃,30秒のサイクルで60回繰り返し、72℃,3分間加熱した後、4℃、1時間放置した。
【0039】
実施例3.マルチプレックス非対称PCR
(1) PCRマスター混合溶液の調製
dH2O 14.5μl、2×RT-PCR Master buffer 25μl,10×Primer Mix 5μl(20μM FLAsw-R la 0.5μl,25μM FLAsw-F la bio 2μl, 20μM β354-F la 0.5μl,25μM β455-R la bio 2μl)RT Enzyme mix 0.5μlをそれぞれ加える。
(2)(1)で調製したPCRマスター混合溶液49μlに、上記参考例2で調製した核酸試料2μlをPCR用チューブに入れ、ABI9700(アプライドバイオシステムズ)にて、50℃20分、95℃で15分間加熱後、94℃,45秒、54℃,75秒、のサイクルで40回繰り返し、72℃,3分間加熱した後、4℃、1時間放置した。
この方法でも、上記実施例2と同等かそれ以上の性能を有する。
【0040】
参考例3 金コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液の調製
金標識ストレプトアビジン40nm(50 O.D.)を1%BSA溶液にて8倍希釈して室温に静置した。
【0041】
参考例4 捕捉プローブ固定化ストリップの作成
以下の手順により、捕捉プローブ固定化ストリップを作成した(図1)
1)10xSSCでプローブを100μMに溶解する。
2)10xSSCでビオチン標識プライマーを50μMに溶解する。
3)Schleicher & Schuell PRIMA60 membraneに、水彩画用の筆でコントロールラインとプローブラインを引き、80℃5分間放置する。これを5回繰り返した後、80℃ 30分間放置し、固定化する。
4)1xPBS; 0.1% Tween20溶液で洗浄(15分)した後、滅菌水で洗浄し(10分)、membraneを風乾する(37℃、O/N)。
5)固相化したメンブレンをArcare 9020 precut cardsに貼り付ける。
ろ紙(Whatman 17Chr)を貼り付け、ラミネートフィルムを貼り付ける。出来上がったカードを2mm幅に切断する。
【0042】
実施例3 標的核酸の検出
以下の1)〜6)の操作を行い、インフルエンザウイルス(Influenza A virus (A/Narita/1/2009(H1N1)) segment 4 hemagglutinin (HA) 遺伝子)を検出した。
1)ポリプロピレンプレートにPCR産物(プライマー:配列番号1〜4)50μLを入れる。
2)その隣のウェルに8μLの金コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液(金コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲートをTBS;1%BSA溶液で8倍に希釈)を入れる。
3)その隣のウェルに100μLの洗浄液(2xPBS 0.1% Tween20)を入れる。
4)捕捉プローブを固定化したストリップをPCR産物50μL に浸漬し(図2A)、10分間放置する。
5)ストリップを金コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲートウェルに移動させ(図2B)、3分間放置する。
6)ストリップを洗浄液ウェルに移動させ(図2C)、2分間放置後、ストリップを取り出してバンドを確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、以下の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする標的核酸の検出方法。
(1)ビオチン標識された一本鎖標的核酸を増幅する工程
(2)該一本鎖標的核酸をストリップ上に展開し、予め固定された相補核酸プローブとハイブリダイズさせてこれを捕捉する工程
(3)金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液をストリップ上に展開し、前記捕捉核酸を可視化する工程
(4)洗浄液をストリップ上に展開する工程
【請求項2】
一本鎖標的核酸を増幅が、非対照PCR法により行われるものである請求項1記載の標的核酸の検出方法。
【請求項3】
非対照PCR法が、以下に示されるプライマーセットを単独又は複数用いて行われる請求項2記載の標的核酸の検出方法。
a)配列番号1の塩基配列からなるプライマー、配列番号2の塩基配列からなるプライマー
b)配列番号3の塩基配列からなるプライマー、配列番号4の塩基配列からなるプライマー
【請求項4】
複数のストリップ上に捕捉された標的核酸を一つの金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液を用いて同時に可視化する、請求項1〜3の何れか1項記載の標的核酸の検出方法。
【請求項5】
PCR増幅プライマー、相補核酸プローブ固定化ストリップ及び金属コロイド標識ストレプトアビジンコンジュゲート液を少なくとも含有する、請求項1記載の方法を実施するための標的核酸の検出キット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−72222(P2011−72222A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225255(P2009−225255)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(509271543)株式会社北里大塚バイオメディカルアッセイ研究所 (2)
【Fターム(参考)】