説明

標的治療薬を作製する方法

本明細書では、疾患または状態を治療するための標的治療薬を作製する方法およびキットが提供される。本治療薬は、患者に特異的な疾患マーカーを標的とすることができる。これらの方法の1つでは、本方法は、疾患もしくは状態を有する患者、または疾患もしくは状態を発現する危険性がある患者から生体試料を得ることを含む。この特定の方法では、試料は、疾患細胞の集団を含み、前記疾患細胞に結合するmRNA−タンパク質対を同定するために、それらの同族mRNAに連結されたタンパク質を含むライブラリーをスクリーニングし、1つまたは複数のタンパク質を、前記同定されたmRNA−タンパク質対から分離し、前記分離したタンパク質(複数可)を治療薬に結合させる。本方法の一部は、さらにその同族mRNAに連結したタンパク質を有するライブラリーを作製することを含む。これらの方法の一部では、前記ライブラリーの作製は、各々の前記mRNA分子が架橋剤を含む少なくとも2つの候補mRNA分子を提供すること、少なくとも1つの翻訳されたタンパク質を生成するために、前記候補mRNA分子のうちの少なくとも2つを翻訳すること、および前記候補mRNA分子の少なくとも1つを、少なくとも1つの同族対を形成する前記架橋剤を介して、その対応する翻訳されたタンパク質に連結することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、個々の患者または患者の亜集団に合わせて調整した治療薬を作製する方法、またこのような治療薬を用いて、悪性疾患、病原体感染および他の状態を治療する方法、ならびに移植拒絶反応を減少させるかまたは阻止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
多くの悪性細胞は、悪性疾患のタイプに特異的であるばかりでなく、個々の患者にも特異的であるエピトープを示す。ある態様では、本発明は悪性リンパ球上に示されるエピトープのような患者特異的なエピトープを標的にできる治療薬に関する。
【0003】
リンパ球は、脊椎動物の免疫系に重要である。リンパ球は、胸腺、脾臓および骨髄(成体)で産生され、ヒト(成体)の循環系に存在する全白血球の約30%を占める。リンパ球の2つの主要な亜集団、すなわちT細胞およびB細胞が存在する。T細胞は、細胞性免疫を担い、一方B細胞は、抗体産生(液性免疫)を担っている。典型的な免疫応答では、T細胞レセプターが、抗原提示細胞の表面で主要組織適合複合体(「MHC」)糖タンパク質に結合した抗原フラグメントに結合すると、T細胞が活性化される。このような活性化が生物学的伝達物質(「インターロイキン」)の放出を生じ、そしてこの伝達物質が本質的には、B細胞を刺激して分化させ、抗原に対する抗体(「免疫グロブリン」)を産生させる。
【0004】
リンパ腫、白血病および多発性骨髄腫などの血液癌の病因は、異なるかまたは知られていない。疑われる原因は、ウイルスおよび化学物質への暴露から家系性傾向の範囲に及ぶ。しかしこれらの癌の共通性は、これらの癌は全て分裂して、これらの癌がその表面に発現する免疫グロブリンタンパク質上に同じFabイディオタイプを発現する細胞のクローンを生ずる悪性に形質転換したB細胞またはT細胞で始まることである。これらの癌を治療する困難性の1つは、それぞれの癌が特有なイディオタイプ発現することである。したがって、効果的かつ選択的に全てのありうるイディオタイプを治療する治療処置の開発についてはよく分かっていない。
【0005】
血液癌のための従来の治療は、骨髄中の悪性クローンを含む全ての血液産生細胞を破壊した後、血液産生系を再構築するために、骨髄を患者または適合するドナーの骨髄から分離した幹細胞で置換する方法を一般的に含む。これらの治療は侵襲性が高く、治効はわずかである。1つの方法は、同定の「マーカー」として利用する細胞表面タンパク質を認識するモノクロナール抗体ワクチンを用いる治療を含む。この方法を採用する治療薬には、Compath−H(Alemtuzumab)、HLL2(Epartuzumab)、HulD10およびRituximab、(例えば、米国特許第6,455,043号)が含まれる。しかし、これらのモノクロナール抗体に基づく治療薬についての深刻な限界は、標的細胞表面抗原が正常および悪性腫瘍細胞両方上にしばしば見出されることである。さらに、ヒトモノクロナール抗体の生成が困難であるため、モノクロナール抗体ワクチンは、通常は「キメラ」抗体、すなわち2つ以上の異なる種(例えば、マウスおよびヒト)由来の一部を含む抗体を利用する。このような外来抗体の注射を繰り返すと、有害な過敏性反応を招く免疫反応の誘導を引き起こす。マウスに基づくモノクロナール抗体に関して、この免疫反応は、ヒト抗マウス抗体応答(「HAMA」応答)としばしば呼ばれる。患者が、ヒト抗キメラ抗体応答(「HACA」応答)も発症することもある。HAMAおよびHACAは、「外来の」抗体を攻撃することができ、その結果抗体の標的部位(複数可)に到達前に、それらの抗体は実質的に中和される。さらに、モノクロナール抗体ワクチンの他の欠点は、モノクロナール抗体を生成するため要する時間および費用である。標的エピトープ、例えばCD20、CD19、CD52wおよび抗クラスII HLAが容易に突然変異して、以前の治療薬に抵抗性の新たな腫瘍を生ずることができることを考慮すると、これは特に問題である(例えば、Clinical Cancer Research、5:611〜615、1999を参照)。したがって本技術分野において、良性の細胞に対して個々の癌細胞を選択的に標的にする悪性疾患を治療する効果的で低コストの治療薬に対する必要性が存在する。
【0006】
悪性細胞のように移植組織および移植臓器の細胞は、生来の細胞と比べて移植された細胞で発現の異なる細胞表面エピトープを示す。ある態様では、本発明はこのような変異するエピトープを認識することにより、移植組織または臓器の細胞を標的にすることができる治療薬に関する。個々の患者(ドナーを含む)にとって特異的なタンパク質であり、したがってレシピエントにより異種であると認識される移植された細胞上の同種抗原に対する免疫応答により、移植拒絶反応が生じる。移植拒絶反応に含まれる最も一般的な同種抗原は、MHC(主要組織適合複合体)分子であり、移植された細胞表面で発現し、個体間で高度に多型性である。異種MHC分子は、レシピエントの免疫系により認識され、移植の拒絶反応を招く免疫応答を生じる。
【0007】
免疫系が移植組織に拒絶反応を示す1つの経路は、補体媒介性免疫であり、これは移植された細胞上のMHC抗原およびMHC抗原に対するレシピエントの自然抗体からなる、免疫複合体へのC1(第1の補体成分)の結合により活性化することができる。経路の活性化により、補体成分C3を分解してC3aおよびC3bを生ずるC3転換酵素と呼ばれている酵素の集合体が得られる。そして、C3b分子の一部がC3転換酵素に結合して、C5をC5aとC5bに分解する。次いで補体系の生物活性が、C3とC5の分解産物から誘導される。別の補体系の亜成分であるC1qが、補体活性化の最初のステップに含まれる。現在まで補体媒介性免疫を調節することにより移植拒絶反応を治療する方法は、例えば異種分子から保護する免疫系の能力の重要な成分を排除する治療薬による、全ての補体媒介性免疫応答の抑制に起因する非選択性と関連した副作用を被っていた。
【0008】
したがって本技術分野において、外来の病原体からの防御を保持しながら、移植された細胞に対する体の免疫応答を選択的に阻害することにより、および/またはより大きな免疫応答を刺激する特定の細胞型を選択的に破壊することにより、移植拒絶反応を減少させるかまたは予防する効果的で低コストの治療薬に対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の開示
様々な態様において、細胞表面マーカー(例えばエピトープ、イディオタイプなど)、または悪性腫瘍細胞、病原体、移植された細胞、および/または治療の標的にされる他の物により、あるいはその極めて近傍で発現の異なる他の分子を標的にすることにより、広範な状態の治療に有効な、標的治療薬を開発するための方法が本明細書において提供される。また本明細書に記載する方法により生成される治療薬を投与することにより、疾患または状態を治療する方法も提供する。
【0010】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書で提供される方法は、タンパク質をその対応するmRNAに連結し、タンパク質mRNA複合体を1つまたは複数の病因決定因子と関連した分子標的への結合についてスクリーニングする新規の技術を利用する。様々な好ましい実施形態では、本明細書で提供される治療法は、治療を望む個々の患者、または特定の株または疾患もしくは状態の亜型を有すると診断された患者のような患者の亜集団で、発現の異なる分子標的を認識するように設計されている。対象の標的に対して高親和性を有するタンパク質を好ましくは分離し、治療している疾患に対して有効な1つまたは複数の治療薬(例えば、細胞毒性薬剤)に連結して、種々の標的治療薬を生成する。都合の良いことに、対象の標的を認識できるタンパク質の迅速かつ効率的な同定、分離および生成が、患者および/または疾患に特異的な治療薬の生成のための効果的かつ低コストの方法を提供する。様々な実施形態で、本明細書において提供される方法は、従来の保健医療予算および資源分配状況の範囲内で、広範な疾患および状態を調整治療薬を用いて治療できる利点がある。
【0011】
様々な態様において、癌および他の状態を治療するための調整治療薬を生成する方法が、本明細書で提供され、調整治療薬は治療のために選択される疾患または状態と関連した分子標的に結合する「標的領域」、および前記疾患または状態を治療するかまたは予防できる「治療薬」を含む。いくつかの好ましい実施形態では、標的領域が、特定の患者または患者の亜集団で発現の異なる標的を認識するように調整されるが、これらおよび/または他の実施形態では、本治療薬は個々の患者または患者の亜集団に対して実質的な調整を必要としない。標的領域を含む投与可能な治療薬の小部分だけの調整による、個別化した治療薬の作製のために、この「モジュラー」構造は有利であり、次いでこの治療薬を種々の既存のまたは容易に調製できる治療薬の有効性を増強するために用いることができる。
【0012】
いくつかの好ましい実施形態では、治療を望む患者で、標的領域は選択的にエピトープと結合するように調整されるか、または非癌性細胞に比べ癌細胞で優先的に発現され、治療薬は抗体または患者で免疫応答を促進できる他の分子(以下「免疫エフェクター」と呼ぶ)である。いくつかの好ましい実施形態では、標的エピトープは非癌性細胞には実質上存在せず、治療薬は別の方法で非癌性細胞に実質上結合しない。いくつかの好ましい実施形態では、癌はイディオタイプでありうる患者特異的なエピトープを発現する癌性および/または悪性細胞であるリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、白血病、または多発性骨髄腫のような血液癌である。
【0013】
様々な実施形態で、治療薬は標的領域に直接的にまたは間接的に連結、融合、または誘導体化されて、モジュラー治療薬を形成する。いくつかの実施形態では、免疫エフェクターは、標的結合領域に共有結合しているが、他の実施形態では、免疫エフェクターは非共有結合している。いくつかの実施形態では、標的結合領域は、免疫エフェクターと結合する第2の領域に融合した標的結合領域を含む二官能性タンパク質の一部である。免疫エフェクター結合領域は、抗体の可変領域、またはFc領域などの抗体の他の領域と結合する分子によって認識されるエピトープを含むことができる。免疫エフェクター結合領域は、免疫エフェクター(例えば図9を参照)と強固に結合するように設計されたペプチド配列も含むことができる。二官能性タンパク質は、融合タンパク質を含むことができるか、または2つのドメインは、共有結合または非共有結合することができる。標的結合領域および免疫エフェクター結合領域は、直接的に連結できるかまたは間接的に、例えば可動性のリンカーペプチドを介して連結できる。
【0014】
他の態様では、本発明は、mRNA発現ライブラリーから、発現したmRNA分子およびそれらの新生ポリペプチドの複合体を分離すること、タンパク質mRNA複合体を、癌細胞で示されるエピトープのような病因決定因子と関連した分子標的への結合についてスクリーニングすること、標的エピトープと結合するタンパク質をコードするmRNAを分離して発現させること、および標的エピトープ結合タンパク質(または誘導体、フラグメント、もしくはこれらのサブユニット)を、治療薬、例えば標的に対して免疫応答を誘発できる抗体に誘導体化することを含む癌治療の治療薬を調製するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本治療薬の調製は、以下にさらに詳細に説明するように、標的結合領域をコードする分離したmRNAに、in vitro進化、選択的な突然変異誘発、および/または標的エピトープに対しより強いかまたはより効果的な結合を示すmRNAを同定して分離する当該技術分野で周知の他の方法を受けさせることをさらに含む。
【0015】
さらに他の態様では、本発明は治療を要する患者で、治療標的にした状態の病因決定因子上で、あるいはその極めて近傍で特異的にもしくは優先的に発現する、標的エピトープまたは他の分子を同定すること、標的と結合するが、非標的には実質的に結合しないタンパク質を分離すること、標的結合タンパク質(または誘導体、誘導体のフラグメントもしくはサブユニット)を、治療薬、例えば所望の対象で免疫応答を誘発できる抗体に連結すること、ならびに患者に治療薬を、治療の標的にされた状態を治療するために十分な分量および回数で投与することを含む癌のような疾患または状態を治療するための方法を提供する。
【0016】
なおさらなる態様では、本発明はmRNA発現ライブラリーから、発現したmRNA分子およびそれらの新生ポリペプチドの複合体を分離すること、癌細胞により示される標的エピトープに対する結合についてタンパク質mRNA複合体をスクリーニングすること、標的エピトープと結合するタンパク質をコードするmRNAを分離して発現させること、および標的エピトープ結合タンパク質(または誘導体、誘導体のフラグメントもしくはサブユニット)を、免疫応答を誘発できる抗体に誘導体化することを含む、癌細胞の標的エピトープまたは他の病因決定因子と結合するタンパク質を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は標的エピトープ結合タンパク質をコードする分離したmRNAに、in vitro進化、選択的な突然変異誘発、または標的エピトープに対しより強いかもしくはより効果的な結合を示すmRNAを同定して分離する当該技術分野で周知の他の方法を受けさせることをさらに含む。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、個別化した治療薬を開発するための、疾患および/または患者特異的な病因決定因子の発現により特徴付けられる疾患または状態の治療用のキットを提供する。いくつかの好ましい実施形態では、治療薬は癌性および/または悪性細胞表面で発現の異なる特有な細胞表面エピトープを標的にする固形腫瘍および血液癌を含む癌治療のための、患者特異的な治療薬を開発するキットが提供される。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、移植拒絶反応を減少させるか、または予防するための治療薬および方法を提供する。いくつかの実施形態では、標的結合タンパク質は、移植された細胞により表示されるMHC抗原のような細胞表面抗原に結合し、治療薬(例えば、免疫エフェクター)は、免疫応答についての1つまたは複数の分子決定因子に結合して阻害するタンパク質または他の分子を含む。いくつかの好ましい実施形態では、免疫エフェクターは、補体系のC1qまたはC3成分と結合し、それにより補体媒介免疫の活性化を阻害する。他の実施形態においては、免疫エフェクターは、免疫応答を刺激して「外来の」MHCまたは他の抗原を持つ移植された細胞を排除する。さらなる実施形態では、特異的なエピトープ、例えばMHC抗原を認識するエピトープを発現するリンパ球亜集団のクローン増殖を、治療薬は除去するかまたは妨げる。
【0019】
本発明は、さらに悪性疾患治療に関して前記したものと本質的には同様の、移植拒絶反応を抑制する方法およびキットを提供する。
【0020】
本発明のさらなる態様では、前記したものと本質的には同様の、標的結合領域が、病原性病原体により発現される1つまたは複数の変異するエピトープ、または病原性病原体が感染した1つまたは複数の細胞と結合するように選択され、かつ治療薬が、抗生物質または他の細胞毒性薬剤などの抗病原薬剤を含む治療薬、方法およびキットを提供する。いくつかの実施形態では、病原体は、HIVのようなウイルスである。
【0021】
様々な態様において、本明細書で提供される方法は、迅速でかつ費用効率が高い個別化した治療薬の作製を可能にする。以下の詳細な記述は、態様の特定の用途に関連する本発明の様々な態様を説明する。しかし、この説明は悪性疾患の治療、病原体の減少と除去、移植拒絶反応の低減および/または予防、ならびに全体的に、非標的細胞または非標的分子と比べて、差次的な結合特性を示す治療薬標的を含むあらゆる状態の治療を含むがこれらに限定されない治療薬の開発および使用ならびに様々な状態の治療方法に等しく適用される。
【0022】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の発明の詳細な説明を添付の図面と共に読むとさらに充分に明らかとなる。
図面の簡単な説明
図1、標的エピトープ結合タンパク質および免疫エフェクター抗体を含む複合体は、細胞表面上に発現したFabイディオタイプを介して悪性細胞と反応した。
【0023】
図2は、小さなヒトタンパク質(Ebbd)に対する既知のヒト抗体(Ab)を示す。このタンパク質は、抗体(Ab)を治療薬に連結するエピトープとして機能できる。Abの役割は、最終的に免疫応答を誘発する免疫エフェクターとして作用することである。
【0024】
図3は、治療薬の二官能性タンパク質成分をコードするオリゴヌクレオチド配列の作製における、ライゲーションの目的のための免疫エフェクター結合タンパク質(Ebbd)をコードするmRNAの拡大生成を示す。
【0025】
図4は、特定の癌細胞表面で発現したエピトープと選択的に結合するタンパク質改良用のProteoNovaシステム。このシステムは、それぞれのタンパク質が、その同族のmRNAと連結したままであるタンパク質ライブラリーをもたらすmRNAライブラリーのin vitroでの翻訳を含む。選択は、癌エピトープと選択的に結合するが、正常細胞で発現するエピトープには結合しないタンパク質を同定するステップを含む。用いられる選択法は、用いられるエピトープ分離および表示方法に依存する。このシステムは、迅速な指向性進化法(directed evolution)、選択および標的特性を有するタンパク質(複数可)の大量な生成も含む。
【0026】
図5は、悪性細胞上のイディオタイプまたは標的エピトープと結合するmRNAをタンパク質から分離する過程。図ではネガティブ選択を除外する。
【0027】
図6は、オリゴヌクレオチド配列から翻訳される二官能性タンパク質が、標的エピトープ結合タンパク質およびヒト抗体が結合するヒトタンパク質(免疫エフェクター結合領域(Ebbd))をコードするmRNAのライゲーションにより作製されることを示す。
【0028】
図7は、免疫エフェクターAb(抗Ebbd抗体)およびFabイディオタイプまたは標的エピトープに対するエピトープを有する、二官能性タンパク質を含む複合体形成により調製された、個別化した癌治療薬を示す。
【0029】
図8は、イディオタイプもしくは標的エピトープとイディオタイプもしくは標的エピトープと結合するタンパク質との結合を介して、治療薬により標識された悪性細胞の図を示す。露出したヒト抗体は、治癒的免疫応答を誘発する。
【0030】
図9は、標的エピトープに結合するように改良された第1のペプチド(標的エピトープ結合領域)、および安定なC3転換酵素(免疫エフェクター)と結合するように改良された第2のペプチド(免疫エフェクター結合領域)を含む治療薬を示す。標的エピトープへの治療薬の結合が、結合部位で補体媒介免疫応答を誘発する。
【0031】
図10は、標的エピトープに結合するように改良された第1のペプチド(標的エピトープ結合領域)、および補体系のC1成分と結合するように改良された第2のペプチド(免疫エフェクター)を含む治療薬を示す。標的エピトープへの治療薬の結合が、エフェクターへの内在のC1の結合を誘発し、結合部位で補体媒介免疫応答の開始を誘発する。
【0032】
図11は、修飾されたtRNAまたは類似体により連結されたとき、mRNAおよびそのタンパク質生成物により形成される複合体の1つの例を、図式的に説明する。図のように、mRNAのコドンは修飾されたtRNAのアンチコドン塩基対を形成し、UV照射によってソラレンモノ付加体、または非ソラレン架橋剤もしくはアリールアジドと共有結合的に架橋結合する。翻訳されたポリペプチドは、リボソームのペプチジルトランスフェラーゼを介して修飾されたtRNAに連結される。いずれの連結も、mRNAおよび新生タンパク質がリボソームによって適所に保持されている間に起こる。
【0033】
図12は、in vitroでの選択および進化過程の1例を示す模式図であり、開始核酸およびそのタンパク質生成物は連結されており(例えば図1参照)、タンパク質によって示される特定の特徴によって選択される。特定の特徴を示さないタンパク質は廃棄され、特徴を有するタンパク質は変異を有して増幅する、好ましくは変異を有するmRNAの増幅を介して増幅して新しい集団を形成する。様々な実施形態では、結合していないタンパク質が選択される。新しい集団は翻訳され、修飾されたtRNAまたは類似体を介して連結され、選択過程が繰り返される。タンパク質生成物を最適化するために、所望するだけの回数の選択および増幅/突然変異を行うことができる。
【0034】
図13は、本発明のtRNA分子を構築する1方法を例示する図である。この実施形態では、tRNAの5’末端と、アンチコドンループをコードし、mRNAに安定して連結することができる分子(本例で用いるソラレンなど)を有する核酸と、末端ピューロマイシン分子で修飾されたtRNAの3’末端とをライゲーションして、本発明のin vitro進化の方法で用いる完全な修飾されたtRNAを形成する。他の実施形態にはピューロマイシンは含まれない。
【0035】
図14は、本発明の方法において、mRNAをtRNAに連結することができるように架橋結合分子であるソラレンを配置することができる2つの代替実施形態について記載した図である。第1の実施形態には架橋剤(例えばソラレンモノ付加体)をmRNAに連結させることが含まれ、第2の実施形態には架橋剤をtRNA分子のアンチコドンに連結させることが含まれる。架橋剤は、知られているもしくは部分的に知られているメッセージの読み枠のアンチコドンまたは3’末端コドンのどちらかとのモノ付加体とすることができる。これは翻訳とは別の手順、例えば翻訳が起こる前に行うことができる。
【0036】
図15は、ウリジンおよびプソイドウリジンの化学構造を示す図である。プソイドウリジンは、ウリジンと同じように水素結合を形成するが、ソラレンの標的である5−6二重結合を欠くtRNA中に見つかる天然に生じる塩基である。
【0037】
図16は、本発明のいくつかの実施形態を示す図である。特定の実施形態におけるSATA、連結tRNA類似体およびナンセンスサプレッサー類似体を示す。
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書中で用いられる用語「Tリンパ球」および「T細胞」は、T細胞前駆体から成熟T細胞までの、Tリンパ球系列内のあらゆる細胞を包含する。
【0038】
用語「Bリンパ球」および「B細胞」は、プレB細胞のようなB細胞前駆体から、成熟B細胞および形質細胞にまでのB細胞系列内のあらゆる細胞を包含する。
【0039】
免疫グロブリン分子は、重(H)鎖および軽(L)鎖から構成され、それらのアミノ末端で高度に特異的な可変領域を含む。H(VH)およびL(VL)鎖の可変(V)領域が組み合わさって、特有な抗原認識または免疫グロブリン(Ig)タンパク質の抗原結合部位を形成する。Ig分子の可変領域は、抗原またはイディオタイプとして認識されうる決定基(すなわち分子形態)を含む。
【0040】
用語「エピトープ」は、免疫グロブリンV領域の抗原決定基またはエピトープ決定基(すなわちイディオトープ)のセット(すなわち相補性決定領域、VHおよびVL領域の会合により形成される抗原結合部位を表す。)を表す。
【0041】
用語「イディオトープ」は、免疫グロブリン分子のV領域の一部に沿って位置する単一のイディオタイプのエピトープを表す。
【0042】
用語「免疫エフェクター」は、治療している対象で、免疫応答を促進できる分子、または分子の誘導体、フラグメント、もしくはサブユニットを表し、抗体、または抗体の誘導体、フラグメント、もしくはサブユニット、または非抗体分子を含むことができる。
【0043】
「アジュバント」は、1つまたは複数の抗原(複数可)と共に投与した場合、免疫応答を増強するか、または刺激する化合物である。
【0044】
「悪性細胞」は、未治療で放置した場合、癌を生じる細胞を表す。
【0045】
本明細書中で定義する用語「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」とは、任意の型のアミノ酸(例えばペプチド結合を介して重合することができるDもしくはLアミノ酸、合成または修飾されたアミノ酸など)を含む2つ以上の単位の高分子を意味し、これらの用語は本明細書中で互換性があるように使用してもよい。
【0046】
本明細書で提供するのは、特定の疾患もしくは状態を病む、特定の患者または患者の亜集団に合わせて調整した治療薬を生成する方法である。様々な実施形態で、治療薬は、1つまたは複数の患者マーカーおよび/または疾患特定マーカーと結合するように、小タンパク質領域の調整を可能にし、かつ治療標的にした状態に効果的である様々な既存のまたは容易に生成される治療薬を指示する調整された領域の使用を可能にする「モジュラー」構造で構成される。標的にされた疾患マーカーは、タンパク質、核酸、脂質、化学物質、ポリマー、および金属、ならびに生物構造、例えば細胞膜、細胞骨格要素、レセプター、およびさらに全細胞を含むがこれに限定されないあらゆるタイプの分子、またはこれら分子の部分もしくは誘導体、または分子の複合体を含むことができる。好都合にも、治療標的にした状態の病因決定因子上で、あるいはその極めて近傍でマーカーは発現し、治療薬の活性を病原性細胞、病原体、タンパク質、および/または治療状態の他の決定因子に集中する。
【0047】
いくつかの実施形態では、モジュラー治療薬は血液癌治療用に調整され、悪性B細胞および/またはT細胞の表面の特有なFabイディオタイプに結合するように設計される。例えばいくつかの好ましい実施形態では、全ての癌性細胞が単一の悪性B細胞に由来する「クローン」B細胞疾患である非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療のために、治療薬が提供される。その結果、本明細書で提供されるモジュラー治療薬の標的結合部分により標的にされうるそれぞれの患者に特有である共通のイディオタイプ(表面で発現されたIgM分子の可変領域を含む)を、全てのNHL細胞が発現する。当該技術分野で周知の方法を用いて、B細胞はリンパ節または末梢血から分離できる。例えばいくつかの実施形態では、赤血球および/または顆粒球は、分離する細胞群間の中間密度を有する液体中で、遠心分離によりB細胞から分離できる。Tリンパ球を得る方法、例えば患者末梢血からの分離、および大きさおよび/または密度に基づく分離も、当該技術分野で周知の技術でもある。B細胞および/またはT細胞からのタンパク質の抽出は、当該技術分野で周知の多くの方法のいずれかにより実施できる。例えば、細胞は界面活性剤により、または機械的な方法により溶解できる。必要に応じて、酵素消化により、またはストレプトマイシンのような薬剤を使った沈殿により、核酸を細胞標品から除去できる。このような方法は当該技術分野で周知の技術である。
【0048】
本明細書で記載される方法に従って作製した、血液癌を治療するためのモジュラー治療薬の作用機序を図1に示す。投与された治療薬は、悪性B細胞および/またはT細胞の表面の特有なFabイディオタイプに結合し、イディオタイプが関連する血液癌の病因決定因子は、標的イディオタイプを発現する悪性および/または癌性細胞を含む。イディオタイプへの標的領域の結合は、悪性細胞を破壊する免疫応答を生じる。標的結合タンパク質は、単独で免疫応答を誘発するにはあまりに小さく、したがって標的イディオタイプへの結合がない場合は、結合した免疫エフェクターはIRを生じない。標的結合タンパク質が、悪性細胞の表面のFabイディオタイプに結合するとき、悪性細胞は標的エピトープ結合タンパク質に免疫原性を与えるキャリアとして作用し、免疫エフェクターに悪性腫瘍細胞を標的にするIRを生じさせる。さらなる実施形態では、本発明の治療薬および方法は、非血液癌を特徴付けるエピトープを標的にするために用いることもできる。
【0049】
様々な好ましい実施形態では、標的マーカーは、(i)同様の診断を有する他の患者と比べて個々の患者において、または限定された患者の亜群で、および/または(ii)状態と関連せず、好ましくは治療薬の影響を受けない細胞/分子と比べて、細胞または状態の病因と関連した他の分子標的に関連して発現が異なる。有利なことに、例えば健全な細胞に対する無調整治療薬の非選択的活性、および/または標的マーカー(複数可)に関して、既存の標的治療薬の患者間での差異を説明できないため、既存の無調整治療薬と比べて、調整治療薬の選択性が治療の有効性を増強する。例えば血液癌の場合、標的イディオタイプは、患者および悪性細胞の両方に特有のもので、治療薬(免疫応答をもたらす)の活性を非癌性細胞は免れて、標的細胞に選択的に向けるようにする。さらに、イディオタイプがそれぞれの患者に特有なので、無調整治療薬は非選択的またはより選択的でない治療的応答をもたらすであろう。
【0050】
悪性細胞により発現の異なる細胞表面マーカーの例には、リンパ管腫に関しては、CD−20およびCD−22などの安定な細胞表面抗原エピトープ、ならびに固形腫瘍に関しては、mAbと結合した際に内部に取り入れられるCD−19およびCD−33などの表面エピトープが挙げられるが、それらに限定されない。他の発現の異なる細胞表面マーカーは当該技術分野で周知であり、CD−52wおよびクラスIIHLA抗原を含むがこれらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態では、標的エピトープは、治療対象患者で変異する(例えば、Clinical Cancer Research、5:611〜615、1999を参照)癌細胞特異的なエピトープである。好都合にも、それぞれの患者に特有な変異エピトープを標的にする個別化した治療薬の開発を可能にすることにより、本明細書で提供される方法が、癌のさらに効果的な治療を可能にする。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態では(例えば、図2に示すように)、モジュラー治療薬の標的結合領域は、標的(例えば、標的エピトープ結合領域(Tebd))と結合する第1のサブドメイン、および治療薬(例えば、免疫エフェクター結合領域(Ebbd))と結合する第2のサブドメインを含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、治療の標的である対象における免疫応答を促進できる薬剤、例えば抗体、または抗体の誘導体、フラグメント、もしくサブユニットであり、治療薬と結合する領域は、治療薬により認識される小タンパク質、例えば、治療薬抗体により認識されるエピトープである。当該技術分野で周知である、はっきりと特徴付けられた抗体−抗原の組合せも利用でき、市販で入手可能である。本発明で有用な抗体は、任意の哺乳動物から得られるか、または異なる哺乳動物の組合せから得られるキメラ抗体でありうる。哺乳動物は、例えばウサギ、マウス、ラット、ヤギまたはヒトであってもよい。抗体は、ヒト抗体であるのが好ましい。ウエスタンブロット、免疫沈降、ELISA、および適切なFabイディオタイプフラグメント、ペプチド、イディオタイプ−発現細胞またはこれらの細胞抽出物を用いるFACS分析を含む多数の周知の方法により、標的抗原に対する抗体の反応性を確立できる。本抗体は、任意の抗体クラスおよび/またはサブクラスに属すことができる。抗体は、異なるクラスおよびサブクラスの抗体からのフラグメントも含み、それにより複合体を形成してもよい。
【0052】
様々な実施形態で、所望の結合活性を有するヒトモノクロナール抗体は、当該技術分野で周知の方法(総説に関しては、Vaughanら、1998、Nature Biotechnology 16:535〜539を参照のこと)を用いて、例えば、ParmleyとSmith、Gene 73:305〜318(1988)、Barbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7978〜7982(1991)、Griffithsら、EMBO J 13:3245〜3260(1994)、GriffithsとHoogenboom、in vitroの免疫系の構築:ファージディスプレイライブラリー由来ヒト抗体(Building an in vitro immune system: human antibodies from phage display libraries)、ヒトにおける予防的および治療的適用のための抗体分子のタンパク質工学(Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man)中、Clark,M.編、Nottingham Academic、ページ45〜64(1993)、およびBurtonとBarbas、組合せライブラリー由来ヒト抗体(Human Antibodies from combinatorial libraries)、(前掲)、ページ65〜82に記載される、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングにより生成され、これら全ては、参照として本明細書に組み込まれている。典型的には、所望の大きさの結合親和性を生じる抗体に対応するクローンを同定し、標準的な組換え発現方法を用いるDNAを用いて、所望の抗体を生成する。
【0053】
PCT特許出願WO98/24893、およびJakobovits、1998、Exp. Opin. Invest. Drugs 7(4):607〜614に記載されているような、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作したトランスジェニックマウスを用いて、完全ヒトモノクロナール抗体も生成でき、参照として本明細書に組み込まれている。この方法は、ファージディスプレイ技術で要求されるin vitroの操作を回避し、高親和性真正ヒト抗体を効率的に生成する。
【0054】
いくつかの実施形態では、免疫エフェクター結合領域のような、対象の抗原に対する抗体が、モジュラー治療薬を用いる治療に選択された患者で生成される。例えば、いくつかの実施形態では、Zebedeeら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3175〜3179(1992)、Burtonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134〜10137(1991)、およびBarbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10164〜20168(1991)に記載されているように、患者は対象の抗原を用いる「ワクチン接種」を受け、抗原に対する患者の抗体が、対象の抗原への結合により選択される。
【0055】
いくつかの実施形態では、スクリーニングを追加実施して、最初に分離した抗体の親和性を増加させる。例えばいくつかの実施形態では、抗体の親和性は、超可変抗体領域が変異して多数の組合せを生じ、対応する抗体変異体をファージディスプレイによりスクリーニングして、抗原に対し所望の親和性を有する抗体を選択する、親和力成熟により増強される。さらなる実施形態では、小さなタンパク質エピトープは、in vitro進化を行い、以下にさらに詳細に説明するように、抗体に対するそのエピトープの結合親和性を増加できる。有利なことに、いくつかの実施形態では、例えば、患者に「予防接種をする」ことにより抗体が産生される実施形態では、同様な方法が宿主免疫系により(例えば、クローン選択を介して)行われて、対象の抗原に対して特異的な高親和性抗体を生成する。
【0056】
他の実施態様において、治療を受けている対象で免疫応答を促進できる免疫エフェクターには、非抗体分子を含む。例えば、FarriesとHarrisonに付与された米国特許第6,268,485号に記載されている免疫エフェクターは、C3転換酵素を含むことができ、これは参照として本明細書に組み込まれている。C3転換酵素は、C3タンパク質をC3aとC3bにタンパク質分解性転換を触媒する酵素であり、転換は補体系応答の誘発における重要なステップを含む。C3bは生成部位近傍の細胞表面に結合し、そこでC3bは食作用および他の破壊性免疫応答を媒介する。いくつかの実施形態では、C3転換酵素は修飾または誘導体化されて、阻害剤に対する感受性の低下、タンパク分解性裂開に対する耐性、補助因子に対する親和性の増強、または補体媒介免疫応答の促進における酵素の効果を増強する他の修飾を賦与する。いくつかの実施形態では、免疫エフェクターは、C5転換酵素、マンノース結合タンパク質(MBP)または補体媒介免疫を刺激する別の分子を含む。
【0057】
C3転換酵素を本発明の治療薬に連結することは、標的エピトープ結合タンパク質の、標的にされた細胞表面上の変異するエピトープへの結合により、治療の標的にされた細胞、病原体、病原体−感染細胞、および/または他の細胞に向けられている補体媒介免疫応答を可能にする。免疫エフェクターとしてC3転換酵素を用いる治療薬を図9に示す。好ましい実施形態では、C3転換酵素(免疫エフェクター結合タンパク質)、および標的エピトープ(標的エピトープ結合タンパク質)と結合するタンパク質をコードするペプチド配列を同定し、分離し、必要に応じてin vitroでの進化または他の技術により改良して、それらの標的リガンドに対するペプチド配列の親和性を増加させた。次いで、標的エピトープ結合領域、および免疫エフェクター結合領域(Ebbd)として転換酵素結合ペプチドを含む二官能性融合タンパク質を作製する。治療薬が治療を要する患者に投与され、標的エピトープ結合領域が、悪性細胞の表面または他の標的に結合し、C3転換酵素が、対象細胞の破壊を媒介する細胞膜傷害複合体の生成を含む補体媒介免疫応答を生じる。
【0058】
いくつかの実施形態では、治療薬は、標的エピトープ結合領域およびC3転換酵素結合領域を含む。投与されると同時にこのような治療薬は標的エピトープと結合し、内在性のC3転換酵素を集めて補体媒介免疫応答を誘導する。免疫エフェクターが、補体系のC1成分と結合する治療薬を示すこのような方法を図10に示す。治療を要する患者に投与されると同時に治療薬は標的エピトープと結合し、内在性のC1を細胞表面に集めて、そこで補体媒介免疫応答を誘導する。
【0059】
他の実施形態においては、治療薬の免疫エフェクター成分は、C1q、C3、C5、および/または補体媒介免疫応答の誘発に含まれる他の分子、例えば米国特許第5,650,389号で記載されるタンパク質に結合して阻害する。治療を必要とする患者に投与されると同時に、このような治療薬は、標的エピトープに結合し、さもなければ結合部位またはその近傍に向けられる免疫応答を阻害する。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、患者は移植された細胞(例えば、幹細胞、または移植臓器を含む細胞)のレシピエントであり、標的治療薬は、移植された細胞を認識し、このような細胞に対する免疫応答を阻害することができる。さらなる実施形態では、移植拒絶反応を阻害するための標的治療薬は移植された細胞を認識する1つまたは複数の免疫細胞のエピトープ、例えば移植された細胞表面上のMHC抗原と結合するエピトープを標的にする標的結合領域を含み、治療薬は患者において抗移植免疫細胞に対し免疫応答を促進できる免疫エフェクターである。
【0060】
有利なことに、本明細書で提供される方法は、迅速かつ安価で個別化した治療薬の日常的な作製が十分に可能である。本発明に従う治療薬は、生検材料の受け取りから治療薬の完成まで、わずか数週間で、かつ数千ドルの経費で作製できるのが好ましい。
【0061】
本発明に用いる二官能性融合タンパク質は、当業者には周知の標準的な組換えDNA技術に従って生成できる(例えば、Sambrook, J.ら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1989))。いくつかの実施形態では、精製した二官能性タンパク質は、免疫エフェクターと反応でき、図7に示しているような、治療薬を含む結合したエフェクター−二官能性タンパク質複合体を産生する。当該技術分野で周知の方法により、二官能性タンパク質を、免疫エフェクターに化学的に結合させることもできる。
【0062】
いくつかの実施形態では、タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオン酸塩(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチル脂肪イミダートHCL)、活性エステル(例えば、ジスクシニミヂルスベリン酸塩)、アルデヒド(例えばグルタレルデヒド(glutareldehyde))、ビスアジド化合物(例えばbis(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えば、bis−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチル−エンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン 2,6−ジイソシアネート)、またはビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)が、治療薬を含む2種以上のタンパク質成分を連結するために使用される。
【0063】
いくつかの実施形態では、標的−エピトープ結合タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列、またはその誘導体、フラグメントもしくはサブユニットを、キメラコード配列を作製するために免疫エフェクターと結合するエピトープまたは他のタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチド配列に連結すること、キメラコード配列を発現ベクターにサブクローニングすること、発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションすること、およびトランスフェクション細胞により発現される融合タンパク質を精製することにより、組換え型の融合タンパク質を作製する。いくつかの実施形態では、キメラポリヌクレオチドは、原核生物および/または真核生物のin vitro翻訳系で適切な翻訳開始配列、および/または選択可能なマーカーを含むことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、両方のタンパク質をコードするmRNA、およびいくつかの実施形態では、主要組織適合複合体Iおよび/またはIIをコードするmRNAを含むmRNAオリゴのin vitroでの翻訳により、二官能性タンパク質複合体を作製する。mRNA配列に対するcDNAは、合成または市販品として入手でき、図3に示すようにPCRにより転写して充分なmRNAを得ることができる。様々な実施形態で、免疫エフェクター結合領域をコードしているmRNAと、標的エピトープ結合領域をコードしているmRNAをライゲーションすることにより、オリゴを形成する。ある場合にはこの融合は、図6に示すように親水性アミノ酸をコードするmRNAブリッジを介して連結できる。次いで、mRNAは原核生物または真核生物の翻訳系を用いてin vitroで翻訳でき、得られた二官能性タンパク質は、ゲル電気泳動または当該技術分野で周知の任意の他の方法により精製できる。
【0065】
本融合タンパク質は、キメラタンパク質の有用性を高める、1つまたは複数の多数から成る他の成分を含むこともできる。例えば、タンパク質は融合タンパク質の精製を容易にするのに役立つエピトープタグを含むように設計できる。例えばペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端で、2またはそれ以上の隣接したヒスチジン残基をコードするようにキメラコード配列を修飾できる。ヒスチジン残基挿入は、スプライスバイオーバーラップ(splice−by−overlap)延長方法により、ヒスチジンをコードするCATおよびCAC三塩基コドンをコード配列の適切な位置でPCRプライマー中に取り込むことにより容易に達成できる。当該技術分野で周知のニッケル−セファロースクロマトグラフィー法により、ヒスチジン−修飾タンパク質は、効率的かつ定量的に分離できる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される治療薬は、治療薬(例えば細胞毒性薬剤)のような第2の分子に結合されてもよい。例えば、治療薬は抗腫瘍剤、トキシン、放射性薬剤、サイトカイン、第2抗体または酵素を含むが、これらに限定されない。細胞毒性薬剤の例には、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリアトキシン、シュードモナスエキソトキシン(PE)A、PE40、アブリン、アルブリン(arbrin)A鎖、モデッシンA鎖、アルファ−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クルシン(curcin)、クロチン、カリケアマイシン、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、マイタンシノイドス(maytansinoids)、ならびにグルココルチコイドおよび他の化学療法剤、ならびに放射性同位元素、例えば212Bi、131I、90Y、および186Reを含むが、これらに限定されない。適切な検出可能なマーカーには、これらに限定されるものではないが、放射性同位元素、蛍光性化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が含まれる。本発明の治療薬は、プロドラッグをその活性型に変換できる抗癌プロドラッグ活性化酵素にも結合できる。例えば米国特許第4,975,287号を参照のこと。
【0067】
いくつかの好ましい実施形態では、第2の治療薬は、第1の治療薬と相補的作用様式を有する。例えばいくつかの実施形態では、第1および第2の治療薬は、癌または他の疾患の病因に含まれるシグナル伝達系の異なる態様に対して作用し、第1および/または第2の治療薬のみを持つ調整治療薬と比べて、有効性の増強、副作用の減少、改善された治療指数、および/または他の利点を生じる。いくつかの実施形態では、第1の治療薬は、第2の治療薬を増強するかあるいはこの逆で増強するか、または1つまたは複数の治療の態様で、第1および第2治療薬は相乗的な増強を示す。相乗作用、増強作用、および他の組み合わせた薬理学的効果を評価する方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、ChouとTalalay、Adv Enzyme Regul、22:27〜55(1984)に記載され、参照として本明細書に組み込まれる。
【0068】
いくつかの実施形態では、治療薬は、治療薬の抗体免疫エフェクター成分に結合される。抗体に治療薬を結合するか、または接続する技術は周知である(例えば、Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immuno−targeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら編、ページ243〜56(Alan R. Liss, Inc. 1985)、Hellstromら、“Antibodies For Drug Delivery”、in Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら編、ページ623〜53(Marcel Dekker, Inc. 1987)、Thorpe、“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”、in Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら編、ページ475〜506(1985)、およびThorpeら、“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”、Immunol. Rev.,62:119〜58(1982)を参照のこと)。
【0069】
本発明の治療薬は、タンパク質薬剤に適切な当該技術分野で周知の任意の方法、例えば静脈内注射、筋肉内注射、局所投与、経口摂取、経直腸投与および吸入により投与できる。あるいは本発明の治療薬は、悪性疾患部位に直接供給できる。治療薬は、薬剤学的に許容し得る担体との混合物として投与してもよい。任意のそのような担体が、適合性の問題が生じない限り本方法に従って使用できる。本組換え型融合タンパク質の有効量を、患者に投与しなければならない。用語「有効量」とは、望ましい応答をもたらすために必要な融合タンパク質の量を意味する。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書で提供する方法に従って作製した治療薬は、増殖を阻害し、かつ/またはエピトープ結合タンパク質がスクリーニングされて、エピトープを持つ細胞のアポトーシスを誘導する。例えば、いくつかの実施形態では、本治療薬複合体のエピトープ結合部分が、悪性細胞表面で発現するエピトープまたは他の標的と結合できる。一旦結合すると、複合体のIRを誘発する抗体成分が免疫系を刺激して、図8に示すように正常な細胞を残しつつ標識された細胞を攻撃し排除する。
【0071】
様々な実施形態で、タンパク質をその対応するmRNAに連結(「同族対」として)する新規の方法を使用して、患者および/または疾患特異的な標的に結合する本明細書で提供される個別化した治療薬の調整が可能になる。いくつかの好ましい実施形態では、多数の同族対を含むタンパク質ライブラリーを作製し、対象の標的、例えば本明細書に記載した個別化された標的に結合する同族対に関して、ライブラリーをスクリーニングする。
【0072】
本発明の様々な態様では、修飾したtRNAおよび/またはmRNA分子を用いて、翻訳されたタンパク質生成物をtRNAリンカーを介してそれらの対応するmRNAに連結して「同族対」を形成する。いくつかの実施形態で、未知の配列を有するmRNA、例えばmRNAライブラリーからのmRNAをin vitro翻訳系で発現し、それらの対応するタンパク質を、1つまたは複数の所望の特性、例えば標的エピトープ結合領域への結合、または対象の別のリガンド、および/または1つまたは複数の新たなリガンド、例えば健全な細胞により表示されるエピトープに対する選択性に関してスクリーニングする。さらなる実施形態では、1回または複数回の選択で同定されたタンパク質およびタンパク質と連結した核酸を、例えば核酸進化(図4)を通じて修飾して、標的リガンドに対して増強された親和性をもつタンパク質を生成する。次いで、標的リガンドに対する高親和性のような所望の特性を有するタンパク質を、標準的なクローン技術を使用して、タンパク質−mRNA同族対から、それらの対応するmRNAを分離することにより多量に生成できる。
【0073】
いくつかの好ましい実施形態では、同族対は、真核生物のin vitro翻訳系、例えばウサギ網状赤血球溶解物(RLL)、コムギ胚芽、大腸菌、または酵母菌溶菌液系を用いて形成される。しかしin situ系、ならびに異なる系の成分を組み合わせるハイブリッド系を含む任意のin vitro翻訳系を用いることは、当業者により理解される。例えばいくつかの実施形態では、1つまたは複数の原核生物の因子、例えば翻訳サプレッサータンパク質が真核生物の翻訳系で使用される(全て参照として本明細書に組み込まれている、例えばGellerとRich、Nature 283:41(1980)、Edwardsら、PNAS 88:1153(1991)、HouとSchimmel、Biochem 28:6800(1989)を参照のこと)。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のtRNAまたはtRNA類似体を原核生物系中で荷担し、その後、確立された方法に従って、真核生物系で使用するために精製する(参照として本明細書に組み込まれているLucas−LenardとHaenni、PNAS 63:93(1969)。
【0074】
様々な実施形態で、リボソームのペプチジルトランスフェラーゼの作用により、同族対を含むタンパク質を、tRNAまたはtRNA類似体に連結する。いくつかの実施形態では、タンパク質を安定なアミノアシルtRNA類似体に連結させる(SATA)。いくつかの実施形態では、SATAは天然の構造で対応する高エネルギーのエステル結合と比べて、安定な結合を介してtRNAの3’末端に結合したアミノ酸またはアミノ酸類似体を有するtRNAである。SATAが特定のコドンを、例えば水素結合を介して認識し、リボソームのペプチジルトランスフェラーゼの作用により新生ペプチド鎖を受容する場合、安定なアミノアシル結合が、ペプチジルトランスフェラーゼによるポリペプチドからのtRNAの脱離を防ぎ、その後のステップの間tRNA−ポリペプチド構造も保つ。
【0075】
いくつかの実施形態では、SATAは、参照として本明細書に組み込まれている、FraserとRich、PNAS、70:2671(1973)において一般に説明された方法により作製され、tRNAまたはtRNA類似体を3’−アミノ−3’−デオキシtRNAへと変換することを含む。これは、天然のアデノシンを取り除いた後に、tRNAヌクレオチジルトランスフェラーゼを用いて、天然tRNAの末端に3’−アミノ−3’−デオキシアデノシン付加することにより達成され、次いでそれぞれのアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)によって、修飾されたtRNAにアミノ酸を荷担する。いくつかの実施形態では、aaRSは、tRNAの2’ヒドロキシルではなく3’ヒドロキシルに荷担して、通常の不安定な高エネルギーのエステル結合ではなく、安定なアミド結合によってtRNAにアミノ酸を連結する。したがってSATAがリボソームのペプチジルトランスフェラーゼからペプチド受容した際、ペプチドは安定して保持されて別のアクセプターに供与することができなくなる。
【0076】
特定の実施形態では、3’アミド結合を介してアミノアシル化されたtRNAは、A部位への結合を補助する伸長因子EF−TUと結合しない(例えば、参照として本明細書に組み込まれているSprinzlとCramer、Prog.Nuc.Acid Res.、22:1(1979))。しかし、このような修飾されたtRNAはA部位に結合する。この3’修飾されたtRNAの結合は、Mg++濃度を変えることにより増加させることができる(参照として本明細書に組み込まれているChinaliら、Biochem.、13:3001(1974))。SATAおよびMg2+の適切な濃度ならびに/またはモル比は経験的に決定することができる。例えば、SATAの濃度またはA部位結合力が高すぎる場合は、SATAは非同族コドンに関して、天然tRNAと競合する可能性があり、翻訳を停止する可能性がある。あるいは、SATAの濃度またはA部位結合力が低すぎる場合は、SATAは放出因子と有効に競合しない可能性があり、SATAが新生ペプチドを安定に受容することを妨げる可能性がある。
【0077】
伸長因子がコドン−アンチコドンの認識のプルーフリーディングを補助すると考えられているが、プルーフリーディングのこの供与源を欠くことが、本明細書で提供される方法を妨害することは予想されない。特定の作用機序に束縛されることなく、伸長因子および関連するGTP加水分解が存在しない場合における誤り率は、ヌクレオチド1つ離れたコドンの認識についてほぼ100回に1回であると考えられる(参照として本明細書に組み込まれているVoetとVoet、Biochemistry、第2版、ページ1000〜1002(1995)、John Wiley and Sons)。いくつかの好ましい実施形態では、UAAが連結コドンとして用いられる。UAAは、アミノ酸1個が異なる7つの非ストップコドンを有し、非ストップコドンの7/61または約11.5%を含む。したがって、所定のコドンのミスコードの確率は、コドン1個あたり(0.01)(0.115)=1.15×10-3個のミスコード、または870コドンごとに約1個のミスコードで、本明細書に記載されている様々な方法のパフォーマンスを実質的には損なわない頻度であると推定できる。いくつかの新たな実施形態では、伸長因子媒介プルーフリーディングを欠くことによる実質的な障害なしに、UAGを連結コドンとして用いることができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、SATAは、アクセプター基部(acceptor stem)または分子の別の領域に、1つまたは複数の修飾された塩基を有するtRNAまたはtRNA類似体である。アクセプター基部修飾を有するtRNAを生成する様々な方法が当該技術分野で周知であり、例えば、参照として本明細書に組み込まれているSprinzlとCramer、Prog. Nuc. Acid Res.、22:1(1979)に記載されている。いくつかの実施形態では、tRNAは、tRNAがアミノアシル−Tyr tRNAを模倣するように、ピューロマイシンで修飾され、新生ポリペプチドに取り込まれて翻訳を停止する。いくつかの実施形態では、アクセプター基部が修飾されたtRNAは、「転写tRNA」から形成され、転写後プロセシングではなく、tRNA自体の配列が非定型かつ修飾された塩基をもたらす。転写tRNAはtRNAとして機能することができる(例えば、どちらも参照として本明細書に組み込まれているDabrowskiら、EMBO J. 14:4872、1995、およびHarringtonら、Biochem. 32:7617、1993を参照のこと)。転写tRNAは、転写のような当該技術分野で周知の方法により生成することができ、または市販されているRNA配列(例えば、Dharmacon Research Inc.、Boulder、Colo.から)を図Xに記載のように1片ずつ連結して一緒にするか、もしくは確立された方法をいくつか併用することにより生成することができる。例えば図Xを参照して、5’リン酸と3’ピューロマイシンは、オリゴリボヌクレオチドと結合したものが市販されていて、T4 DNAリガーゼ(例えば、参照として本明細書に組み込まれているMooreとSharp、Science 256:992、(1992)、またはT4 RNAリガーゼ(参照として本明細書に組み込まれているRomaniukとUhlenbeck、Methods in Enzymology 100:52(1983))を用いて結合することができる。
【0079】
修飾されたtRNAを生成する他の方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Chinaliら、Biochem.13:3001(1974)およびKrayevskyとKukhanova、Prog. Nuc. Acid Res 23:1(1979)に記載され、どちらも参照として本明細書に組み込まれている。
【0080】
いくつかの実施形態では、tRNAは、新生タンパク質がペプチジルトランスフェラーゼによりtRNAに結合する時に翻訳が停止するように、好ましくはコドン−アンチコドンの水素結合により、ストップコドンまたは疑似ストップコドンを認識する修飾されたtRNAもしくは修飾されていないtRNA、またはtRNA類似体を含むナンセンスサプレッサーtRNAである。いくつかの実施形態では、ナンセンスサプレッサーtRNAはYarusの延長アンチコドン則に従う3’修飾および/または配列を有する(参照として本明細書に組み込まれているYarus、Science、218:646〜652、1982)。本明細書で定義されるように「疑似ストップコドン」とは、天然にはナンセンスコドンではないが、メッセージがさらに翻訳されることを防ぐコドンを意味する。疑似ストップコドンは、本明細書に記載されるような、「安定なアミノアシルtRNA類似体」もしくはSATAにより認識されるコドン、または存在しないtRNAが要求されたとき、すなわち疑似ストップコドンで翻訳が停止するように、相補的アンチコドンを有するtRNAが実質的に枯渇するかあるいは存在しないコドンを含むことができる。当業者は、本明細書で定義されるように、疑似ストップコドンの作製方法が多数存在することを理解するであろう。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態では、tRNAは、天然ペプチド結合を介して新生ポリペプチドに連結された天然tRNAである。いくつかの実施形態では、SATAは、アンチコドンループおよび/または分子の他の領域に1つまたは複数の修飾を有するが、3’末端で修飾されていないtRNAである。様々な実施形態で、3’末端で修飾されていない天然tRNAおよび/またはtRNAの使用は、本明細書に記載されている様々な選択法の改善に結びつき、より速い、誤りの少ない、効率的な、費用効率のより高い、および/または高い収率の方法が得られる。特定の理論に束縛されるものではないが、特定の条件下においては、ピューロマイシン(および類似のリンカー)は、伸長因子(複数可)とtRNAとの相互作用を干渉することで低収率をもたらしうると考えられる。
【0082】
本発明の1つの実施形態において、架橋剤は、2つの分子を化学的または力学的に一緒に連結する作用物質である。1つの実施形態では、架橋剤は活性化されることにより、tRNAおよび/またはmRNAと1つまたは複数の共有結合を形成することができる作用物質である。1つの実施形態では、架橋剤は硫黄で置換したヌクレオチドである。別の実施形態においては、架橋剤はハロゲンで置換したヌクレオチドである。架橋剤の例には、これらに限定されるものではないが、2−チオシトシン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−ヨードシトシン、5−ヨードウリジン、5−ブロモウリジンおよび2−クロロアデノシン、アリールアジド、ならびにそれらの修飾体または類似体が含まれる。1つの実施形態では、架橋剤はソラレンまたはソラレン類似体である。
【0083】
いくつかの好ましい実施形態では、例えば、ソラレンで連結されたオリゴヌクレオチド(図3)を連結することにより、または天然もしくは修飾されたtRNAもしくはtRNA類似体、好ましくアンチコドンもしくはポリペプチドとの連結とは異なる別の部位へのモノ付加(monoadduction)により(図4)、ソラレンをtRNAまたはtRNA類似体(例えば、3’修飾されたSATA)とのモノ付加体とする。所望の波長のUV光で照射を受けたとき、以下にさらに詳細に説明するように、共有結合のソラレン架橋結合が、SATAとmRNAの間に形成される。いくつかの実施形態では、tRNAのアンチコドンまたは他の部分を、mRNAと架橋結合を形成することができる非ソラレン部分、例えば2−チオシトシン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−ヨードシトシン、5−ヨードウリジン、5−ブロモウリジン、2−クロロアデノシン、アリールアジド、およびそれらの修飾体または類似体で誘導体化する。これらおよび他の架橋剤は、当分野で周知であり、例えばAmbion,Inc.(Austin,TX)、Dharmacon,Inc.(Lafayette,CO)、および他の周知の科学材料の製造者から購入可能である。
【0084】
様々な実施形態で、SATA−ポリペプチド複合体またはtRNA−ポリペプチド複合体が、mRNA上および/またはtRNA上に位置することができるリンカー部分を介して、ポリペプチドをコードするmRNAに連結される。いくつかの好ましい実施形態では、mRNAは、好ましくは転写物の3’末端のストップコドンまたはその近隣で架橋剤を含み、mRNA−tRNA連結は、mRNAに基づく架橋剤により完全に媒介される。さらなる実施形態では、tRNAは、その3’末端で修飾されていない(例えば、ナンセンスサプレッサーtRNA)。いくつかの好ましい実施形態では、mRNAは、翻訳可能な読み枠の最後に位置する疑似ストップコドンを含む。疑似ストップコドンがmRNAの3’末端に位置する、翻訳系が疑似ストップコドンの3’側のコドン対応するtRNAを枯渇する、および/または疑似ストップコドンに対応する3’修飾されたtRNAが使用され、転写物を翻訳不可能にして放出因子の活性化ができないようにする読み枠の最後に、疑似ストップコドンを効果的に配置することができる。いくつかの実施形態では、mRNAはtRNAストップアンチコドンに対応するストップコドンを含む。有利なことに、ストップコドン/アンチコドンの対は、完全長の転写物を選択する。当業者は、ストップコドンを有さないmRNAを用いてもよく、任意のコドンまたは核酸トリプレットを用いてもよいことを理解するであろう。
【0085】
いくつかの方法では、SATAは、コドンとアンチコドンとの間でソラレン架橋結合によって翻訳されたメッセージに結合している。ソラレン架橋結合は、相補的5’ピリミジン−プリン3’配列、特にUAまたはTA配列を含む配列間で優先的に生じる(参照として本明細書に組み込まれているCiminoら、Ann.Rev.Biochem.、54:1151(1985))。SATAをコードするコドン、または連結コドンは、連結コドンにいくつかのコドンが用いられてもよいために、PYR−PUR−XまたはX−PYR−PURであることができる。便利なことに、ストップコドンまたはナンセンスコドンがこの立体配置を有する。アミノ酸をコードするコドンを用いることは遺伝暗号の微調整を必要とすることがあり、これは一部の用途を複雑にする可能性がある。したがって好ましい実施形態では、ストップコドンを連結コドンとして用い、SATAは連結コドンを認識するという意味でナンセンスサプレッサーとして機能する。しかし当業者は、系に適切な調整を加えることによって任意のコドンを用いることができることを理解するであろう。
【0086】
いくつかの好ましい実施形態では、SATAまたはペプチジルtRNAは、例えばコドンとアンチコドン間でソラレン架橋結合によって、または2−チオシトシン、2−チオウリジン、4チオウリジン、5−ヨードシトシン、5−ヨードウリジン、5−ブロモウリジン、2−クロロアデノシン、およびアリールアジドから成る群から形成された架橋結合によって、翻訳されたmRNAに架橋結合する。いくつかの実施形態では、ソラレン架橋結合は、相補的5’ピリミジン−プリン3’配列、特にUAまたはTA配列を含む配列間で優先的に生じる(参照として本明細書に組み込まれているCiminoら、Ann.Rev.Biochem.、54:1151(1985))。いくつかの実施形態では、非ソラレン架橋剤またはアリールアジドが用いられ、特定の実施形態では、その要件においてストリンジェンシーがより低く、そのため可能なコドン−アンチコドン対が増加するので特に有利である。
【0087】
様々な実施形態で、ペプチジルトランスフェラーゼにより、新生タンパク質がSATAに結合された際に、および/または読み枠の最後に到達した際に翻訳が停止する。多数のリボソームがこの位置にあるとき、SATAおよびmRNAはUV光の処理によって架橋結合される。好ましい方法では、UV光を、好ましく320nm〜400nmの範囲で照射した後に、ソラレン架橋結合を形成することにより、架橋結合がなされる。ソラレンはフラン側鎖およびピロン側鎖を含み、これらは二本鎖DNA、RNA、およびDNA−RNAハイブリッドの相補的塩基対の間に容易にインターカレートする(参照として本明細書に組み込まれているCiminoら、Ann.Rev.Biochem.、54:1151(1985))。いくつかの好ましい実施形態では、ソラレン架橋結合は、以下により詳細に記述するピロン側鎖またはフラン側鎖のモノ付加体であるモノ付加体を形成する。さらに照射すると、フラン側鎖のモノ付加体を相補的塩基対に共有結合的に架橋結合することができるが、ピロン側鎖のモノ付加体はさらに架橋結合することができない。フラン側鎖のソラレンモノ付加体(MAf)の形成は、確立された方法に従って達成される。さらに他の実施態様においては、ソラレンは、メッセージの読み枠の最後に結合することもできる。
【0088】
精製したオリゴヌクレオチドのMAfの大量生成方法は文献に記載されており(例えば、参照として本明細書に組み込まれているSpeilmannら、PNAS 89:4514、1992)、また、より少ない資源しか必要としないが架橋結合不可能なピロン側鎖のソラレンモノ付加体の混入を一部含む方法も記載されている(例えば、いずれも参照として本明細書に組み込まれている米国特許第4,599,303号、Gamperら、J. Mol.Biol. 197:349(1987)、Gamperら、Photochem. Photobiol. 40:29(1984))。本発明のいくつかの実施形態では、どちらかの方法を用いてソラレンの標識化を行う。好ましい実施形態では、どちらも参照として本明細書に組み込まれている米国特許第5,462,733号およびGasparroら、Photochem.Photobiol.、57:1007(1993)に記載の方法に従って、可視光、好ましくは約400nm〜420nmの範囲の可視光を用いてフラン側鎖のモノ付加体を作製する。本発明の1態様では、mRNAの3’末端に配置するための、フラン側鎖モノ付加体を有するSATA、またはモノ付加体化したオリゴヌクレオチド、および付加していないSATAをキットの主成分として提供する。
【0089】
1つの実施形態では、参照として本明細書に組み込まれているBachellerieら、(Nuc Acids Res、9:2207(1981))の方法に従って、モノ付加体および架橋結合の形成および逆転を行う。好ましい実施形態では、どちらも参照として本明細書に組み込まれているKobertzとEssigmann、J.A.Chem.Soc.、1997、119、5960〜5961およびKobertzとEssigmann、J.Org.Chem.、1997、62、2630〜2632の方法を用いることにより、高収率の最終生成物をもたらすモノ付加体の効率的な生成が達成される。
【0090】
mRNAをそのタンパク質に連結する他の方法、またファージディスプレイ方法が使用できる。
【0091】
いくつかの実施形態では、適切な濃度のSATAおよびMg++が、mRNA分子の存在下で、in vitro翻訳系で用いられ、リボソームが上記のようにSATAにペプチド鎖を受容させるストップコドンまたは疑似ストップコドンに達した際に翻訳が停止される。短時間の後、かなりの割合のおよび/または多くのストップコドンまたは疑似ストップコドンが、リボソーム内のSATAによって占有され、いくつかの実施形態では、その後、系にUV光を照射して、tRNA−ポリペプチドとそれらの対応するmRNA間に架橋結合を生成する。いくつかの実施形態で、mRNAに架橋結合の後、好ましくは透析、希釈、またはキレート化によるMg++の除去によって、リボソームを放出または変性させる。当業者は、それだけに限定されないが、イオン強度、pH、または溶媒系を変えることによる変性を含めた他の方法も、結合したリボソームおよび/または他の翻訳因子から同族対を放出するために使用できることを理解するであろう。
【0092】
様々な実施形態で、1つまたは複数の所望の特性に基づき同族対が選択される。いくつかの実施形態では、同族対の選択は、これらに限定されるものではないが、アレイ、アフィニティーカラム、免疫沈降などを含む、様々な確立された方法のうちの任意のものにより測定されるように、標的細胞、タンパク質、および/または他の生体分子の結合に基づく。いくつかの好ましい実施形態では、ハイスループットスクリーニング手法を用いて、選択基準が測定される。様々な実施形態において、治療薬の所望の特性に従って、選択は陽性または陰性であることができる。いくつかの好ましい実施形態では、配列が未知のmRNA(例えば、患者、組織、または所望の他の供与源からのmRNAライブラリーの形態で)を発現させ、本明細書に記載する方法を用いてそれらのコードされたポリペプチドに連結し、同族対を所望の特性に関し選択するためにスクリーニングする。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、同族対を、所望のリガンド、例えば悪性細胞により表示されるFabイディオタイプ、または標的細胞の他の表面的特徴への結合に関して分析する。所望の結合特性を示すタンパク質に対するmRNAが分離でき、当該技術分野で周知の標準的な分子クローン技術を用いて大量のタンパク質が生成できる。本明細書でさらに詳細に記載されるように、次に所望のタンパク質をモジュラー治療薬に組み込み、例えば作用物質を患者および/または疾患特異的標的に向けることができる。
【0093】
様々な実施形態で、選択された同族対は、リガンドによく結合する同族対またはよく結合しない同族対であってもよい。例えば、タンパク質が熱力学的に有利な反応を加速するためには、例えばその反応の酵素として作用するためには、基質および遷移状態の類似体のどちらにも結合するべきである。しかし、遷移状態の類似体は基質よりもはるかに密に結合しているべきである。
これは、以下の式によって説明される。
【0094】
【数1】

【0095】
[式中、酵素を用いた場合反応の速度(K酵素)の、酵素を用いない場合の速度(K酵素)に対する比は、酵素と遷移状態との結合(K遷移状態)の、基質の酵素との結合(K基質)に対する比に等しい(VoetとVoet、Biochemistry、第2版、ページ380、(1995)、John Wiley)。
【0096】
いくつかの好ましい実施形態では、基質との結合に関して競合が不十分であるが遷移状態の類似体との結合に関して良好に競合するタンパク質を選択する。操作上では、これはマトリックスに基質または基質類似体が結合した状態でマトリックスから容易に溶出され、マトリックスに遷移状態の類似体が結合した状態のマトリックスから除去が最も困難であるタンパク質を選ぶことによって達成してもよい。この選択を連続して繰り返し、同族対の核酸の複製および翻訳によりタンパク質を再生産することにより、改良された酵素が進化するはずである。本発明のいくつかの実施形態では、同一選択過程において、1つの部分に対する親和性、および別の部分に対する親和性の欠如を用いる。いくつかのさらなる実施形態では、mRNA部分の1つまたは複数の特性に従って同族対が選択できる。
【0097】
正常細胞および悪性細胞により発現されるエピトープを同定する、当該技術分野で周知の多くの方法がある。例えば、いくつかの実施形態では、例えばAinaらによる“Therapeutic Cancer Targeting Peptides”、Biopolymers 66:184〜199(2002)の記載のように、組合せライブラリーからの細胞特異的なマーカーペプチドの分離に、ペプチドマイクロアレイが使用できる。いくつかの好ましい実施形態では、タンパク質mRNA複合体ライブラリーを悪性細胞の分離した集団と反応させ、正常細胞の集団に対して観察される結合と比較して、悪性腫瘍細胞エピトープに結合する程度を測定する。いくつかの実施形態では、悪性細胞に対してかなりの親和性を有し、正常細胞に対しては、かなり低いかまたは親和性を有さないタンパク質が選択される。例えば、いくつかの実施形態では、約10μM未満、好ましくは約1μM未満、より好ましくは約0.1μM未満、そしてさらにより好ましくは約10nM未満の親和性で、エピトープまたは所望の他の標的と結合するポリペプチドが同定される。いくつかの好ましい実施形態では、ポリペプチドは、エピトープまたは約1nM未満の他の標的に対する親和性を有する。スクリーニング法は、潜在的なリガンド(例えば、その同族mRNAに連結されたタンパク質)およびいろいろな配向の標的(例えば、治療対象の細胞)を用いて実施することができる。例えば、いくつかの実施形態では、悪性細胞はガラススライドのような平坦な表面上にあり、mRNA−タンパク質同族対を含む溶液に曝露される。結合したタンパク質(同族対)は、当該技術分野で周知のいろいろな方法で検出できる。例えば、いくつかの実施形態では、好ましくはmRNAおよび/またはtRNAリンカー上で、その後第2のリポータープローブを用いて、例えばアビジンでコーティングした磁気ビーズ用いて検出できるビオチン部分のような検出可能なプローブを用いて、同族対は誘導体化される。得られたイディオタイプ−(タンパク質:mRNA)−ビオチン−アビジン−磁気ビーズ複合体は、Ventana 320自動免疫組織化学システム(Ventana 320 automated immunohistochemistry system)(Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)、または例えばDavisら、Clinical Cancer Research 5:611〜615、(1999)に記載されているような類似のシステムを用いて同定できる。
【0098】
この方法は、複数の相異なる核酸−ポリペプチド複合体を提供すること、所望の結合特徴を有するリガンドを提供すること、複合体をリガンドと接触させること、結合していない複合体を取り除くこと、およびリガンドに結合した複合体を回収することをさらに含むことができる。
【0099】
本発明のいくつかの方法は、核酸分子および/またはタンパク質の進化を含む。いくつかの実施形態では、例えば参照として本明細書に組み込まれているCadwellら、PCR Methods Appl.、2:28(1992)に記載のように、試験管内組換え、例えば米国特許第5,605,793号に記載のように、突然変異誘発、例えば米国特許第5,830,721号に記載のように、「DNAシャッフリング」、例えばCocoら、Nat Biotechnol、19(4):354〜9(2001)に記載のように、および/または当該技術分野で周知の方法に記載のように、このような方法は回収された複合体の核酸成分(RNAまたは対応するcDNAとして)を増幅すること、および例えばエラープローンPCRにより、変異を核酸の配列に導入することを含む。いくつかの好ましい実施形態では、タンパク質中のそれぞれの位置において少なくとも1つのアミノ酸置換が導入される。さらなる実施形態では、この方法は、増幅して変化した核酸からポリペプチドを翻訳すること、tRNAを用いてそれらを一緒に連結すること、および、結合した複合体の別の新しい集団を選択するためにそれらをリガンドと接触させることをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態では、in vitro進化の過程で、特に選択されたmRNAが変異を持って複製され、翻訳され、選択のために再度同族タンパク質に結合される反復過程において、選択されたタンパク質mRNA複合体を用いる。
【0100】
複製の閾値
効率的な進化のための複製の公称最小回数は、以下の式を用いて推定してもよい。
選択的改善が突然変異r離れており、突然変異率pである長さn配列がある場合、複製において選択的改善が生じる確率は以下のように決定してもよい:
r=1では、適当な点での突然変異の確率(p)×その突然変異が、開始点とは異なる3個のヌクレオチドの目的ものに変異する確率(1/3)×他のn−1部位が、変異しないままである確率(1−p)(n-r)、または
【0101】
【数2】

【0102】
式中、Pは、突然変異r離れて所定の変化を達成する確率である。より一般的には、全てのr値において:
【0103】
【数3】

【0104】
突然変異1つ離れた場所で利点を見つける確率と、突然変異3つ離れた場合の確率とを比較することは有用である。これはトリプレットの遺伝暗号を考慮すると、任意の1種のコドンは1つの突然変異において9種の他のコドンにしか変化できないからである。実際に、1つの突然変異で9種の他のアミノ酸コードに実際に変化できるコドンは存在しないことが判る。1つの突然変異でアクセスすることができるアミノ酸の最大数は7種のアミノ酸であり、これを行うことができるのは64個のコドンのうち8個のみである。ほとんどのコドンでは、1つの突然変異で19種の他のアミノ酸のうち5または6種となる。開始アミノ酸とは異なる19種のアミノ酸全てに達するためには、一般に3つの突然変異が必要である。間に入る2つの変異は一般に選択的に有利とならないので、これら3つの突然変異は逐次的であることはできない。したがって、20種のアミノ酸全てを用いるためには、大きさが少なくとも3つの突然変異(r=3)であるステップを用いる必要がある。
【0105】
「エラープローンPCR」に関して報告されている突然変異率である0.0067では、100個のアミノ酸の短いタンパク質を与える300個のヌクレオチドのメッセージを用いると:
3=1.51×10-9
したがって、有利である次のアミノ酸に合理的に到達することを予測するためには、その突然変異率において:
【0106】
【数4】

【0107】
回の複製の閾値が必要であると予測される。二項展開により、1/3回を超える試験(実際には約1/e)でも選択的利点を有する所定の配列が含まれないことが示されるので、これは用いるべき複製ではない。
【0108】
所定のμについて大きなnおよび小さなpに対するポアソン近似を計算することができ、したがってnが例えば109の桁数であり、pが10-9の桁数の場合の一般項を算出することができる。近似の一般項は以下のとおりである:
【0109】
【数5】

【0110】
約6/Pを超える増幅係数により、全てのアミノ酸の使用を伴って進化が進行することが保証される。これは、新規タンパク質の生成が既存のタンパク質の「シャッフリング」の使用を妨げる場合に有用である。
精製に対する制限
BおよびCがAに対して競合する可逆的結合において:
【0111】
【数6】

【0112】
全濃度は以下のように表すことができる:
[B]T=[B]+[AB](3)
[C]T=[C]+[AC](4)
(3)を(4)で割り算し:
【0113】
【数7】

【0114】
(1)および(2)を[B]および[C]に代入し:
【0115】
【数8】

【0116】
方程式を再度整理し、以下の結果が得られる:
【0117】
【数9】

【0118】
分子および分母の[A]を約分し:
【0119】
【数10】

【0120】
最後に方程式を再度整理し、以下の方程式が得られる:
【0121】
【数11】

【0122】
上記係数は「濃縮係数」と呼ばれる。結合した成分の比、またはCに対するBの濃縮を計算するために、全成分の比にこの係数を掛け算する。最大濃縮係数は、[A]がkcまたはkBよりも有意に小さい場合にkc/kBである。[A]がkcまたはkBよりも有意に大きな場合は、濃縮は1であり、すなわち、他方に対して一方の濃縮は存在しない。
【0123】
濃縮は結合定数の比によって制限される。その競合相手よりも100倍強力に結合している乏しいタンパク質を濃縮するためには、3回の濃縮でその競合相手に対するこのタンパク質の比が百万上昇する。その競合相手よりも2倍強力にしか結合していないタンパク質を濃縮するためには、10回の濃縮サイクルでも約1000の濃縮しか得られない。
【0124】
まったく同様の方法によって、結合が最小のタンパク質を選択する濃縮係数を示すことができる:
以下の方程式において:
【0125】
【数12】

【0126】
ここでの濃縮は、[A]>kAまたはkBで最大である。
【0127】
【数13】

【0128】
以下の実施例は本発明の様々な実施形態を例示し、いかなる様式でも本発明を限定することを意図しない。
【0129】
実施例1:SATAの生成
当業者は、いくつかの異なる方法でSATAを生成することができることを理解するであろう。以下の実施例中に記載したプロトコルは、tRNA上にピューロマイシンおよび架橋剤の両方を有するSATA、またはtRNA上にピューロマイシンを有しmRNA上に架橋剤を有するSATAに用いることができる。架橋剤がmRNA上にあるものは、以下の実施例4に指針が提供されている。好ましい実施形態において、連結tRNA類似体もtRNA上に架橋剤を有するという意味で、以下のプロトコルは連結tRNA類似体についても有用である。
【0130】
例えば、好ましい実施形態では、3つのフラグメント(図1)を商業的な供与源(例えばDharmacon Research Inc.、Boulder、CO)から購入した。修飾された塩基、ならびにその3’末端上に事前付着されたピューロマイシンおよびその3’末端上にPO4を有するフラグメント3が含まれ、これらの全てが市販されていた。3つのフラグメントは、モノ付加体の形成においてフラグメント2の操作を容易にするために用いた。
【0131】
酵母tRNA Alaまたは酵母tRNA Pheを用いた。しかし、配列は広く知られているtRNAから、またはtRNA様の構造を形成する配列を選択することによって選択することができる。フラグメント2に対応する部分中に限定数のUしか有さない配列を用いるのが好ましい。ソラレンは優先的に5’UA3’配列に結合するので、わずかなUしか有さない配列を用いることは必須ではない(参照として本明細書に組み込まれているThompsonJ.F.ら、Biochemistry、21:1363)。しかし、そのような配列を用いれば、精製して除去する二重に付加した生成物を減らすことになるであろう。
【0132】
フラグメント2は、ソラレンのインタカレートを誘導するためにヘリカルコンホメーションで用いるのが好ましかった。したがって、相補鎖が必要であった。DNAまたはRNAを用い、1つの配列、例えば一方または両方の末端にポリCを添加して、モノ付加体形成の完了後の分離と除去を容易にした。
【0133】
フラグメント2およびcRNAを、緩衝50mMNaCl溶液中で結合した。Tmは、ハイパークロミシティー変化により測定した。2つの分子を再アニールして、選択されたソラレンと共に、Tmよりも約10℃低い温度で1時間インキュベートした。ソラレンは用いた配列に基づいて選択した。より高い配列ストリンジェンシーを有するが補充する必要があるかもしれない、8MOPなどの比較的不溶性のソラレンを選択することが可能であった。AMTのような可溶性の高いソラレンは、ストリンジェンシーが低いが、ほとんどの部位を埋める。HMTを用いるのが好ましい。非標的のUをより多く含むフラグメント2を選択した場合は、さらに高いストリンジェンシーが要求される。温度の低下、またはMg++を加えることによるイオン強度の上昇も、ストリンジェンシーを高めるために用いた。好ましい実施形態では、MG++を省略し、約400mMのNaCl溶液を用いた。
【0134】
インキュベーション後、ソラレンを約400nmよりも高い波長で照射した。照射は選択した波長および用いたソラレンに依存する。例えば、HMTには約419nm、20〜150J/cm2を用いるのが好ましかった。この処理は、ほぼ全部がフラン側鎖のモノ付加体をもたらす。
モノ付加体の精製
次いで、参照として本明細書に組み込まれているSastryら、J.Photochem.Photobiol.B Biol.、14:65〜79に記載のHPLCによってモノ付加体を精製した。一般に25量体以上のモノ付加体の精製は困難なので、フラグメント2がフラグメント3から分離されたことで、精製ステップが容易になった(参照として本明細書に組み込まれているSpielmannら、PNAS、89:4514〜4518)。
フラグメント2および3のライゲーション
T4 RNAリガーゼを用いて、フラグメント2を フラグメント3にライゲーションした。3’末端のピューロマイシンは保護基として役割を果たした。これは参照として本明細書に組み込まれているRomaniukとUhlenbeck、Methods in Enzymology、100:52〜59(1983)により実施する。フラグメント2+3とフラグメント1の3’末端との結合は、参照として本明細書に組み込まれているUhlenbeck、Biochemistry、24:2705〜2712(1985)に記載の方法に従って実施した。フラグメント2+3をポリヌクレオチドキナーゼによって5’リン酸化し、2つの半分子をアニールした。
【0135】
代替方法では、フラン側鎖のモノ付加体としたUの相当量を、ポリUAをそれ自体にハイブリダイズさせて、上記のように照射することにより形成した。次いでポリUAを酵素消化して保護されているフラン側鎖のUを得て、ヌクレオシドホスホラミダイト法によりtRNA類似体内に組み込んだ。ソラレンモノ付加体を形成する他の方法には、全て参照として本明細書に組み込まれているGamperら、J.Mol.Biol.、197:349(1987)、Gamperら、Photochem.Photobiol.、40:29、1984、Sastryら、J.Photochem.Photobiol.B Biol.、14:65〜79、Spielmannら、PNAS、89:4514〜4518、米国特許第4,599,303号に記載の方法が含まれる。
【0136】
上記の方法によって生成したSATAはUAG(アンチコドンCUA)を読み取った。
さらに、UAAまたはUGAも用いた。様々な実施形態では、「連結コドン」として選択されたストップコドンを有する任意のメッセージを用いた。
実施例2:ソラレン化したフラン側鎖のモノ付加体の生成
RNA:DNAハイブリッドのUV光露光
いずれも50mMのNaClを含む、等容積の3ng/mlのRNA:cRNAハイブリッドセグメントおよび10μg/mlのHMTを、新しい1.5mlのキャップ付ポリプロピレンマイクロ遠心チューブに移し、37℃で30分間、暗所でインキュベートした。次いで、これを新しい清浄な培養皿に移した。これを、照射量が約6.5mW/cm2であるように約12.5cmの距離で光化学反応器(419nmのピーク、Southern New England Ultraviolet Co.)内に配置し、60〜120分間照射した。
【0137】
低分子量の原産物(Protoproduct)の除去
100μlのクロロホルム−イソアミルアルコール(24:1)をピペットで注ぎ、ボルテックスによって混合した。混合物をマイクロ遠心チューブ中で、5分間、15000×gで遠心分離した。クロロホルム−イソアミルアルコール層をマイクロピペットで除去した。クロロホルム−イソアミルアルコールによる抽出を再度繰り返した。透明なRNAが溶液から沈殿した。
【0138】
アルコール沈殿
2倍量(約1000μl)の氷冷無水エタノールを混合物に加えた。チューブを15分間、15,000×gで、マイクロ遠心機で遠心分離した。上清をデカンテーションして廃棄し、沈殿したRNAを100μlのDEPC処理水に再溶解し、その後、再度RNA+8−MOPに曝した。
【0139】
HPLCを用いたソラレン化したRNAフラグメントの分離
全ての成分、ガラス器具および試薬は、RNAaseフリーのように調製した。HPLCはDionex DNAPA−100パッケージカラムを用いてセットアップした。ソラレン化したRNA:DNAハイブリッドを4℃まで暖めた。ソラレン化したRNAをHPLCにかけ、次いで「HPLCによるオリゴヌクレオチド解析」という表題の以下のセクションに記載のように、オリゴヌクレオチド解析を行った。採取された分画は以下を表した:
・5’CUAGAΨCUGGAGG3’、ここで、Ψはプソイドウリジンである(配列番号1)
・フラン側鎖の5’CUPソラレンAGAΨCUGGAGG3’モノ付加体(配列番号:2)
【0140】
【化1】

【0141】
分画を新しい、RNAaseフリーのスナップ付マイクロ遠心チューブ中に4℃で保存し、4週間を超える保存が必要な場合は−20℃で保存した。
【0142】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いた、HPLCによって採取された各ピーク分画に示されたRNAフラグメントの同定
電気泳動ユニットを4℃の冷蔵庫内にセットアップした。2mmのスペーサーを有するゲルを選択した。各HPLC分画の5μlをローディング緩衝液で10μlまで希釈した。10μlの各希釈した分画を適切に標識した試料ウェルに入れた。追跡用色素を別のレーンに載せ、「ソラレン化したRNAフラグメントのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)」という表題の以下のセクションに記載のように電気泳動を行った。電気泳動の実行が完了したあと、追跡用色素がゲルの端に達した時に電気泳動を停止した。装置を解体した。ゲル−ガラスパネルユニットをUV光ボックス上に置いた。UV光を点けた。RNAのバンドを同定した。バンドはUV光の条件下でより濃い影として現れた。
【0143】
ゲルからのRNAの抽出
各バンドを滅菌して、RNAaseフリーの新しいメスの刃を用いて切り出し、新しい1.5mlのスナップキャップ付マイクロ遠心チューブに移した。メスの刃の側面を用いて、各ゲルをマイクロ遠心チューブの壁でつぶした。各試料に新しい刃を用いた。1.0mlの0.3M酢酸ナトリウムを各チューブに加え、少なくとも24時間、4℃で溶出させた。マイクロピペットを用いて溶出液を新しい0.5mlのスナップキャップ付ポリプロピレンマイクロ遠心チューブに移した。各チューブに新しいRNAaseフリーのピペットチップを用い、RNAをエタノールで沈殿させた。
【0144】
エタノール沈殿
2倍容量の氷冷エタノールを各溶出液に加え、マイクロ遠心機で、15,000×gで15分間遠心分離した。上清を排出し、沈殿したRNAを再度100μlのDEPC処理脱イオン水に溶かした。RNAは必要時まで4℃でマイクロ遠心チューブに保存した。保存が2週間を超える場合、チューブを−20℃で保存した。以下が、各フラグメントの移動速度の順(速いものから遅いものの順)であった:
【0145】
【化2】

【0146】
・フラン側鎖の5’CUPソラレンAGAΨCUGGAGG3’モノ付加体(配列番号:2)
【0147】
【化3】

【0148】
各分画の残りを含むチューブを標識し、−20℃で保存した。
エタノール沈殿
RNAオリゴヌクレオチドフラグメントを沈殿させ、RNaseの痕跡を全て取り除くために、全てのガラス器具を「装置上、消耗品上、および溶液中のRNasesの不活化」という表題の以下のセクションに記載のように洗浄した。全ての溶液はRNAaseフリーのガラス器具中で保存し、ヌクレアーゼの導入を防いだ。無水エタノールは使用時まで0℃で保存した。マイクロピペットを用いて、2倍容量の氷冷エタノールをマイクロ遠心チューブ内で沈殿させる核酸に加えた。キャップ付マイクロ遠心チューブをマイクロ遠心器内に入れ、15,000×gで15分間遠心分離した。上清を捨て、沈殿したRNAを再度DEPC処理脱イオン水に溶かした。RNAは使用の準備ができるまで、マイクロ遠心チューブ中に4℃で保存した。
RNAフラグメント2および3のライゲーション
RNaseの痕跡を全て取り除くために、全てのガラス器具を「装置上、消耗品上、および溶液中のRNaseの不活化」という表題の以下のセクションに記載のように洗浄した。100〜1000μlのピペットを用いて以下を新しい1.5mlのポリプロピレンスナップキャップ付マイクロ遠心チューブに加え、各溶液に新しい滅菌したピペットチップを用いた:
フラグメント2(3.0nM) 125.0μl
フラグメント3(3.0nM) 125.0μ1
反応緩衝液 250.0μ1
RNA T4リガーゼ(9〜12U/ml) 42μl
反応緩衝液
RNaseを含まない脱イオン水 90.00ml
トリス−HCl(50mM) 0.79g
MgCl2(10mM) 0.20g
DTT(5mM) 0.078g
ATP(1mM) 0.55g
HClを用いてpHは7.8
RNaseを含まない脱イオン水で100.00mlに調整
混合物を穏やかに混合し、混合物を温度制御した冷蔵庫内で、16℃で1時間インキュベートしてRNAを溶解した。インキュベーション完了後直ちに、RNAを溶液から沈殿させた。
【0149】
アルコール沈殿
2倍容量(約1000μl)の氷冷無水エタノールを反応混合物に加えた。マイクロ遠心チューブを15,000×gで15分間マイクロ遠心機内に置いた。上清をデカントして捨て、沈殿したRNAを100μlのDEPC処理水に再溶解した。混合物を「ソラレン化したRNAフラグメントのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)」という表題の以下のセクションに記載のように電気泳動した。以下が、各フラグメントの移動速度の順(速いものから遅いものの順)であった:
a) フラグメント2
【0150】
【化4】

【0151】
b) フラグメント3
【0152】
【化5】

【0153】
c) フラグメント2+3
【0154】
【化6】

【0155】
各分画をUVシャドーイングにより分離し、バンドを切り出し、RNAをゲルから溶出させ、RNA溶出液を「ソラレン化したRNAフラグメントのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)」という表題の以下のセクションに記載のように沈殿させた。残留のライゲーションしていないフラグメント2および3の分画全てを用いてライゲーション手順を繰り返した。ライゲーションした画分2および3をプールし、少量のRNaseを含まない脱イオン水に4℃で保存した。
RNAフラグメント1とフラグメント2+3とのライゲーション
RNaseの痕跡を全て取り除くために、全てのガラス器具を「装置上、消耗品上、および溶液中のRNaseの不活化」という表題の以下のセクションに記載のように洗浄した。以下を新しい1.5mlのポリプロピレンスナップキャップ付マイクロ遠心チューブに加えた。各溶液に100〜1000μlのピペットおよび新しいチップを用いた:
フラグメント2+3(3.0nM) 125.0μl
反応緩衝液 250.0μl
T4ポリヌクレオチドキナーゼ(5〜10U/ml) 1.7μl
反応緩衝液
RNaseを含まない脱イオン水 90.00ml
トリス−HCl(40mM) 0.63g
MgCl2(10mM) 0.20g
DTT(5mM) 0.08g
ATP(1mM) 0.006g
HClを用いてpHは7.8
RNase含まない脱イオン水で100.00mlに調整
RNAを穏やかに混合し、その後、加熱ブロック内で、混合物を70℃まで5分間加熱し、融解した。混合物を2時間かけて室温まで冷却し、RNAをtRNAの立体配置でアニールさせた。RNAを溶液から沈殿させた。
【0156】
アルコール沈殿
2倍容量(約1000μl)の氷冷無水エタノールを反応混合物に加えた。マイクロ遠心チューブを15,000×gで15分間マイクロ遠心機内に置いた。上清をデカントして捨て、沈殿したRNAを100μlのDEPC処理水に再溶解した。混合物を「ソラレン化したRNAフラグメントのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)」という表題の以下のセクションに記載のように電気泳動した。以下が、各フラグメントの移動速度の順(速いものから遅いものの順)であった:
a) フラグメント1
【0157】
【化7】

【0158】
b)フラグメント2+3
【0159】
【化8】

【0160】
b)フラグメント1+2+3
【0161】
【化9】

【0162】
各画分をUVシャドーイングにより分離し、バンドを切り出し、RNAをゲルから溶出させ、RNA溶出液を「ソラレン化したRNAフラグメントのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)」という表題の以下のセクションに記載のように沈殿させた。ライゲーションしていないフラグメント1および2+3分画を用いて、ライゲーション手順を繰り返した。ライゲーションした分画2+3をプールし、少量のRNaseを含まない脱イオン水中に4℃で保存した。
【0163】
最終RNAライゲーション
以下を新しい1.5mlのポリプロピレンスナップキャップ付マイクロ遠心チューブに加えた。各溶液に100〜1000μlのピペットおよび新しいチップを用いた:
フラグメント1+2+3(3.0nM) 250μl
反応緩衝液 250μl
RNA T4リガーゼ(44μg/ml) 22μg
混合物を温度制御した冷蔵庫内で、17℃で4.7時間インキュベートした。インキュベーションの直後、上記ステップ6.2に記載のようにtRNAを沈殿させ、「ソラレン化したRNAフラグメントのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)」という表題の以下のセクションに記載したように電気泳動によりtRNAを分離した。tRNAを少量のRNaseを含まない水にプールし、2週間までは4℃で、または2週間を超える長い期間は−20℃で保存した。
ソラレン化したRNAフラグメントのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)
アクリルアミドゲルの調製
全ての試薬およびガラス器具は、「装置上、消耗品上、および溶液中のRNaseの不活化」という表題の以下のセクションに記載のようにRNAaseフリーのようにした。ゲル装置を組み立てて厚さが4mmで20cm×42cmの四角いゲルを作製した。RNAaseフリーの厚肉エルレンマイヤーフラスコ内で、適量のアクリルアミド溶液を用いて、29部のアクリルアミドと1部のアンモニウム架橋剤を室温で混合した。
【0164】
アクリルアミド溶液
尿素(7M) 420.42g
TBE(1×) 1Lに調整
(5×TBE)
0.455M トリスHCl 53.9g
10mM EDTA 0.5Mを20ml
RNAaseフリーの脱イオン水 900ml
ホウ酸を用いて pH9
RNAaseフリーの脱イオン水を用いて 1Lに調整
混合物を1分間真空圧で脱気した。適量のTEMEDを加え、穏やかに混合し、その後、ゲル混合物をガラスプレートの間に上部から0.5cm以内まで注いだ。すぐにガラスシートの間のゲル混合物内に櫛を挿入した。RNAaseフリーのゲル用櫛を用いた。櫛で5mm幅の色素レーンおよび135mmの試料レーン用のウェルを作製した。ゲルを約30〜40分間重合させ、その後、注意しながら櫛を取り外した。新しいピペットチップを備えたマイクロピペットを用いて試料ウェルを泳動緩衝液ですすいだ。その後、ウェルに泳動緩衝液を満たした。
【0165】
試料の調製
試料のアリコートをスナップキャップ付マイクロ遠心チューブ中のローディング緩衝液に懸濁させ、ボルテックスした。指示色素は試料に加えなかった。
【0166】
ローディング緩衝液
尿素(7M) 420.42g
トリスHCl(50mM) 7.85g
RNAaseフリーの蒸留水を用いて 1Lに調整
電気泳動の実行
最大量のRNA/ローディング緩衝液溶液を135mmの試料ウェルにセットし、適量の追跡用色素を5mmの追跡用レーンに載せた。試料を5℃の冷蔵庫で電気泳動した。追跡用色素がゲルの端に達したら電気泳動を停止した。装置を解体した。ガラスパネルはゲルから取り外さなかった。ゲル−ガラスパネルユニットをUV光ボックス上に置いた。UVフィルタリングゴーグルを装着してUV光を点けた。RNAのバンドを同定した。バンドはUV光条件下でより濃い影として現れた。RNAをゲルから抽出した。各バンドを滅菌したRNAaseフリーの新しいメスの刃を用いて切り出し、各バンドを新しい1.5mlのスナップキャップ付マイクロ遠心チューブに移した。メスの刃の側面を用いて、各ゲルをマイクロ遠心チューブの壁でつぶした。各試料に新しい刃を用いた。1.0mlの0.3M酢酸ナトリウムを各チューブに加え、少なくとも24時間、4℃で溶出した。各チューブにRNAaseフリーの新しいピペットチップを備えたマイクロピペットを用いて、溶出液を新しい0.5mlのスナップキャップ付ポリプロピレンマイクロ遠心チューブに移した。2倍容量の氷冷エタノールを各溶出液に加え、次いでマイクロ遠心機で、15,000×gで15分間遠心分離した。上清を捨て、沈殿したRNAを100μlのDEPC処理脱イオン水に再溶解した。RNAは必要時まで4℃でマイクロ遠心チューブに保存した。
HPLCによるオリゴヌクレオチド解析
RNAオリゴヌクレオチドのHPLC精製は陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて最も良好に達成される。2’−保護または2’−脱保護の型のいずれもククロマトグラフィーによって分離できる。2’−保護の型は、二次構造効果を最小限に抑える利点を提供し、ヌクレアーゼに対して耐性を与える。RNAが完全に脱保護されている場合は、精製中は無菌的な条件が必要である。
【0167】
2’−オルソエステル保護RNAの脱保護
チューブを15,000×gで、30秒間またはRNAペレットが底部に存在するまで遠心分離する。400μlのpH3.8脱保護緩衝液を、RNAの各チューブに添加する。
【0168】
脱保護緩衝液
酢酸(100mM)を、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を用いてpH3.8に調整する。ピペットで吸入と排出とを行って、ペレットを緩衝液中に完全に溶解する。チューブを10秒間ボルテックスし、15,000×gで遠心分離する。チューブを、60℃の水浴で30分間インキュベートする。試料は、使用前に凍結乾燥する。
【0169】
HPLCカラムの条件
260nmで40吸光度単位(ODU)のキャパシティを有するDionex(800)−DIONEX−0(346−6390)で充填された4×250 mmカラム(DNAPAC PA、No.043010)を設置する。カラム温度は、54℃にセットする。注入量を、5μlが約0.20ODUをもたらすように調整する。
溶出緩衝液
【0170】
【表1】

【0171】
HPLCの勾配
オリゴ17〜32塩基対長に対して、緩衝液Bの30%〜60%の勾配が用意される:
【0172】
【表2】

【0173】
勾配の選択
勾配は、以下のとおり塩基数に基づき選択される:
【0174】
【表3】

【0175】
HPLCの後、目標の試料を採取し、分光光度計を用いて260nmでRNA濃度を決定する。試料は−70℃で保存する。
装置上、消耗品上、および溶液中のRNasesの不活化
ガラス器具は、180℃で少なくとも8時間ベーキングすることにより処理した。プラスチック器具は、クロロホルムですすぐことにより処理した。あるいは、全てのものを0.1%のDEPCに浸した。
【0176】
0.1%のDEPCを用いた処理
0.1%のDEPCを調製した。脱イオン水を0.2μMの膜フィルターで濾過した。水を15psiで15分間、液体サイクルでオートクレーブした。1.0g(wt/v)のDEPC/リットルの無菌的な濾過水を加えた。
【0177】
ガラスおよびプラスチック器具
全てのガラスとプラスチック器具を、0.1%DEPCに37℃で2時間浸した。
ガラス器具を少なくとも5回、殺菌した脱イオン水ですすいだ。ガラス器具は、15分間100℃までに加熱するか、または15psiで15分間、液体サイクルでオートクレーブした。
【0178】
RNAの電気泳動に用いる電気泳動槽
泳動槽を洗剤で洗浄し、水、次いでエタノールですすぎ、空気乾燥した。泳動槽に3%(v/v)の過酸化水素(30ml/L)を満たし、10分間室温で放置した。泳動槽をDEPC処理水で少なくとも5回すすいだ。
【0179】
溶液
全ての溶液は、Rnaseを含まないガラス器具、プラスチック器具、オートクレーブした水、RNAを用いる作業のための化学薬品、およびRNaseを含まないスパーテルを用いて作製した。使い捨ての手袋を用いた。可能な場合は、溶液を0.1%のDEPCで少なくとも12時間、37℃で処理し、その後、100℃までに15分間加熱するか、または15分間15psiで、液体サイクルでオートクレーブした。
RNAの翻訳
20μl/mlの濃度の腸阻害ペプチド(GIP)mRNA、2μlを、250μlのスナップキャップポリプロピレンマイクロ遠心チューブに入れた。35μlのウサギ網状赤血球溶解物(Promegaから購入可能)を加えた。メチオニンを含まないアミノ酸混合物(Promegaから購入可能)を1μl加えた。35S メチオニンまたは非標識のメチオニンを1μl加えた。35S GIPmRNAまたは非標識のGIPmRNAを2μl加えた。任意選択で、対照として役割を果たすために2mlのルシフェラーゼを一部のチューブに加えてもよい。好ましい実施形態では、GIPmRNAの代わりにルシフェラーゼを用いた。当業者は、実際に適切な配列を含む任意のmRNAフラグメントを用い得ることを理解するであろう。
【0180】
SATAを実験チューブに加えた。SATAを含まない対照チューブも調製した。用いたSATAの量は、約0.1μg〜500μg、好ましくは0.5μg〜50μgであった。40単位/mlのRnasinを1μl加えた。ヌクレアーゼを含まない水を加えて全容量を50μlとした。
【0181】
約150個を超えるアミノ酸のタンパク質では、tRNAの量を補充する必要があり得る。例えば、約10〜200μgのtRNAを加えてもよい。一般にSATAの量は、ストップコドンまたは疑似ストップコドンを有効に抑制するのに十分に多量であるべきである。天然tRNAの量は、伸長因子の作用下で動的なプルーフリーディングを受けないSATAとの競合に勝つために十分多くなければならない。
【0182】
各チューブは、すぐにキャップを締め、パラフィルム処理し、翻訳反応のために30℃で90分間インキュベートした。各反応チューブの内容物を毛管作用によって50μlの石英の毛細管に移した。Gasparroら(Photochem.Photobiol.、57:1007(1993)、参照として本明細書に組み込まれている)の記載に従って、各チューブの内容物に2〜10J/cm2、約350nmの波長の光を照射して、SATAをmRNAと架橋結合した。光架橋結合の後、各チューブの内容物を新しいスナップキャップマイクロ遠心チューブに移した。2μlの10mM EDTAを各チューブに加えてカルシウム陽イオンをキレートして、リボソームを解離させた。各ステップの間で、各成分を加えた際にピペットチップで攪拌して各チューブを穏やかに混合した。
【0183】
最終的な実験を行う前に翻訳に最適なRNAを決定した。mRNAの最適濃度を見つけるためには、5〜20μg/mlの段階希釈を要してもよい。
【0184】
上記のように、各試料でSDS−Page電気泳動を行った。参照として本明細書に組み込まれているSambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Coldspring Harbor Press(1989)に記載のように、ゲルのオートラジオグラフィーを実施した。
【0185】
上記実施例は、SATA(例えばtRNA上のピューロマイシン+tRNA上の架橋剤)の生成および使用、ならびに連結tRNA類似体(例えばピューロマイシンを有さないがtRNA上に架橋剤を有する)の生成および使用を教示している。
【0186】
別の実施例では、ウリジンをプソイドウリジンで置き換えた以外は上記方法と同様の方法によってSATAを生成した。プソイドウリジンによる置換は、架橋剤モノ付加体形成(例えばソラレンモノ付加体の形成)の形成を容易にするので、連結tRNA類似体にも用いることができる。この技術は以下の実施例2で説明する。
実施例3:プソイドウリジンを用いたSATAの生成
上記のように、当業者は、SATA、連結tRNA類似体およびナンセンスサプレッサーtRNAを、多くの異なる方法により生成することができることを理解するであろう。図5はウリジンおよびプソイドウリジンの化学構造を示す。プソイドウリジンは、ウリジンと同じように水素結合を形成するが、ソラレンの標的である5−6二重結合を欠くtRNAにおいて見出される天然の塩基である。本明細書中で用いるプソイドウリジンには、天然に存在する塩基および任意の合成類似体または修飾体が含まれる。好ましい実施形態では、プソイドウリジンを用いてSATAを生成した。連結tRNA類似体もプソイドウリジンを用いて生成することができる。具体的には、好ましい実施形態では、3つのフラグメント(図1)を商業的な供与源(Dharmacon Research Inc.、Boulder,CO)から購入した。それぞれの3’末端にピューロマイシンおよびPO4を事前に結合させた、修飾された塩基およびフラグメント3(「フラグメント3」)が含まれ、これらは全て市販されている。3つのフラグメントは、モノ付加体の形成においてフラグメント2(「フラグメント2」)の操作を容易にするために用いた。いくつかの実施形態によれば、3つのフラグメントの配列は以下のとおりである(各フラグメントにつき2つの配列例を提供する):
フラグメント1
【0187】
【化10】

【0188】
フラグメント2
【0189】
【化11】

【0190】
フラグメント3
【0191】
【化12】

【0192】
フラグメント3に挙げた上記配列はSATAに適用可能である。連結tRNA類似体では、ピューロマイシンがアデノシンで置き換えられる以外は配列は類似している。
【0193】
修飾された酵母tRNA Alaまたは酵母tRNA Pheを本発明の1つの実施形態に従って用いた。しかし当業者は、配列は既知のtRNAから、またはtRNA様の構造を形成する配列を選択することにより、広く選択することができることを理解するであろう。いくつかの実施形態においてプソイドウリジンを用いる利点の1つは、フラグメント2中にプソイドウリジンがあることで、対象外のUのソラレン標識化が回避されることである。ウリジンの代わりにプソイドウリジンを用いることにより、tRNA類似体に対するリボソームのA部位の結合力が減少するが、末端ウリジンとソラレンとの相互作用が排除される。Yarusの「延長アンチコドン」の指針を用いることによりA部位の結合が増加する(参照として本明細書に組み込まれているYarus、Science、218:646〜652、1982)。
【0194】
1つの実施形態では、ソラレンのインタカレートを誘導するために、フラグメント2をヘリカルコンホメーションで用いる。当業者は、本発明のいくつかの実施形態に従って他のコンホメーションも用いることができることを理解するであろう。相補鎖も用いた。DNAまたはRNAを用い、Cがソラレンの一方または両方の末端に対して相互作用する場合には、ポリGまたはポリCなどの配列を付加して、モノ付加体形成の完成後の分離と除去を容易にした。相補体中でウリジンの代わりにプソイドウリジンを用いることにより、生成物の架橋結合を気にせずに約365nmのような高効率の波長を用いることが可能となった。照射は約300〜450nmの範囲が好ましく、約320〜400nmの範囲がより好ましく、約365nmが最も好ましい。さらに、Mafが架橋結合形成の主な第1のステップであるので、プソイドウリジンを使用することによりフラン側鎖のモノ付加体がフラグメント2上の適所に配置された。
【0195】
プソイドウリジンを有する以下のcRNA配列を本発明の好ましい実施形態に従って用いた。当業者は、これらの配列および本明細書中に記載の他の配列の置換体ならびに修飾体も、本発明のいくつかの実施形態に従って用いることができることを理解するであろう。例えば以下に記載の配列番号19では、配列は以下のものであることもできる。
【0196】
【化13】

【0197】
ステップ1:フラグメント2へのソラレンのフラン側鎖のモノ付加体
フラグメント2の標的ウリジンを用いたフラン側鎖のソラレンモノ付加体の形成を以下のように行った。
【0198】
反応緩衝液を以下のように調製した:
トリスHCL 25mM
NaCl 100mM
EDTA 0.32mM
pH 7.0
次いで、4’ヒドロキシメチル−4,5’,8’−トリエチルソラレン(HMT)を最終濃度0.32mMまで加え、等モル量のフラグメント2およびcRNAをフラグメント2:cRNA:ソラレンの最終モル比=1:1:1000まで加えた。100μlの全容量を一度に照射した。
【0199】
相補的オリゴ、HMT、ソラレンの混合物を以下のように処理した:
1)PCRサーモサイクラーを用いて、85℃まで60秒間加熱し、次いで4℃まで15分間かけて冷却した。
【0200】
2)エッペンドルフUVetteプラスチックキュベット内で、上部をパラフィルムで覆い、UVランプ(1mW/cm2多波長UVランプ(λ>300nm)(UV L21モデルλ365nm)の上に置いて4℃で20分間照射した。
【0201】
HMTを再度インタカレートし、照射するために、上記ステップ1および2を4回繰り返した。2回目の照射後、さらに10μlの1.6mM HMTを、合計100μlの反応容積に加えた。4サイクルの照射後、遊離ソラレンをクロロホルムで抽出し、全てのオリゴ(標識したものおよび未標識のもの)をエタノールで一夜沈殿させた(沈殿ステップを参照)。少量のアリコートをゲルの同定用に保存した。
ステップ2:HPLCによるHMTとコンジュゲートしたフラグメント2(2MA)オリゴの精製
1)反応混合物を高速真空(speed vacuum)で10分間乾燥させ、その後、2μlの0.1MのTEAA、pH7.0の緩衝液に溶解した。
【0202】
0.1M TEAA、pH7.0の緩衝液
酢酸 5.6ml
トリエチルアミン 13.86ml
2O(RNAaseフリーの) 950ml
酢酸を用いてpHを7.0に調整し、水を加えて1Lにする
2)試料を、緩衝液A(0.1MのTEAA、pH7.0中5%wt/wtのアセトニトリル)で事前に平衡化したWaters Xterra MS C18、2.5μm、4.5×50mmの逆相カラムに載せた。試料を、緩衝液Aに対して0〜55%の緩衝液B(0.1MのTEAA、pH7.0中15%wt/wtのアセトニトリル)の勾配で、35分間の時間フレームをかけて、1ml/分の流速で溶出した。カラム温度は60℃であり、狭帯域フィルターによって設定した検出波長は340nmであった。フラン側鎖のソラレンモノ付加体は340nmで吸収するが、RNAおよび任意のピロン側鎖のモノ付加体は吸収しない。緩衝溶液は使用前に濾過し脱気した。
【0203】
2MAは約25〜28分で、緩衝液Bの濃度40%により溶出された。採取した分画のその後のゲル電気泳動分析に基づくと、ソラレン化していないフラグメント2は8分間より前に溶出された。
【0204】
カラムを100%アセトニトリルで5分間洗浄し、緩衝液Aで15分間、再度平衡化した。全ての分画を高速真空で一夜乾燥させた。
【0205】
2MAを含む分画は、260nm(RNA)および330nm(フラン側鎖のソラレンモノ付加体としたRNA)での吸光レベルによって同定した。これは、乾燥した分画を再度120μlのRnaseを含まない蒸留水に溶かし、分光光度計を用いて260nmおよび330nmの吸光度を測定することによって行った。両方の波長で吸光度の高い分画をプールし、次いで高速真空で乾燥させた。各分画からの少量のアリコートをゲル分析用に保存した。
【0206】
架橋結合した生成物を変性20%TBE−尿素ゲルで分析し、ゲルの銀染色によって可視化した。
ステップ3:HPLCによるHMTとコンジュゲートした、cRNAからのフラグメント2オリゴの精製
乾燥した試料をプールし、その後、0.5×TE緩衝液に溶かした。約0.4吸光単位の試料を、緩衝液C(25mMのトリス−HCl、pH8.0)で事前に平衡化したDionex DNAPac PA−100(4×250mm)カラムに載せた。カラム温度は85℃であった(陰イオン交換HPLC)。
【0207】
オリゴを1ml/分の流速で、4%〜55%の緩衝液Dの凹型(concave)勾配で15分間、次いで次の15分間は55%〜80%の緩衝液Dの凸型(convex)勾配で溶出させた。オリゴを100%の緩衝液Dで5分間および100%の緩衝液Cでさらに5分間、1.5ml/分の流速で洗浄した。260nmの光を吸収した分画を採取した。2MAの保持時間(RT)は16.2分であり、57%の緩衝液Dによって溶出され、遊離フラグメント2のRTは16.6分未満であり、55%の緩衝液Dによって溶出され、遊離cRNAのRTは19.2分を超えていた。254または260nmで吸光した分画を採取した。採取した分画を高速真空で一夜乾燥させた。全ての溶液は使用前に濾過し脱気した。
【0208】
用いた溶液は以下を含んでいた:
C:25mMトリス−HCl pH8.0、
D:25mMのトリス、pH8.0の緩衝液中250mMのNaClO4、
TE:1mMのEDTAを含む10mMトリス−HCl、pH8.0
ステップ4:精製した2MAオリゴの脱塩、沈殿および採取
乾燥した分画を100μlのRnaseを含まない蒸留水に再溶解した。0.5Mの(NH4)2CO3を含む500μlの100%冷エタノールを加え、混合物を短時間ボルテックスした。その後、混合物を60分間ドライアイス上で凍結させるか、または−20℃で一夜保存した。
【0209】
その後、試料を4℃にし、マイクロ遠心機で、最大速度で15分間遠心分離した。ペレットの位置に注意し、上清をデカントするか、またはピペットで取り除いた。ペレットを乱さないように注意した。ペレットがまだ塩を含んでいた場合は、このステップを繰り返した。その後、ペレットを70%の事前に冷やしたエタノールを用いて2回で洗浄した。湿ったペレットを高速真空で15分間乾燥させた。尿素PAGEゲルにより、次のステップ用の適切な分画を同定した。
ステップ5:2MAオリゴのフラグメント3オリゴへのライゲーション
以下のステップを実施した。
【0210】
A.以下の試薬および器具を用いた:
ヌクレアーゼを含まない水(Promega)
ポリエチレングリコール(PEG8000、Sigma)40%(水中のwt/wt)
RNasin(登録商標)リボヌクレアーゼ阻害剤(Promega)
フェノール:クロロホルム
滅菌1.5mlマイクロ遠心チューブ
100%エタノール
70%エタノール
ドライアイスまたは−20℃の冷凍庫
室温および+4℃のマイクロ遠心機
PCRサーモサイクラーまたは水浴
B.以下の反応条件を用いた:
50mMトリス−HCl(pH7.8)
10mM MgCl2、
10mM DTT
1mM ATP
18〜20%のPEG
C.以下の反応混合物を無菌的なマイクロ遠心チューブ内で構築した:
フラグメント3(ドナー)1μl(6μg)(必要な場合は、ドナーとして用いる前に精製した)
2MA(アクセプター)1μl(1.5μg)。
【0211】
8μlのRnaseを含まないdH2Oを8μl加えたあと、オリゴ二次構造を緩めるために反応物を85℃で1分間インキュベートし、その後、PCR装置のサーモサイクラーを用いて4℃までゆっくりと冷やした。事前に加熱したチューブを氷上に置いて冷たい状態に保ち、短時間遠心分離し、その後、以下のものを加えた:
10×リガーゼ緩衝液 4μl
10mMのATP 4μl
Rnase OutまたはRnasin(40単位/μl)Promega 0.5μl
PEG、40%(Sigma) 20μl
T4 RNAリガーゼ(10単位/μl)(NEB) 1μl
ヌクレアーゼを含まない水を加えて全容積を40μlとした。混合物を16℃で一夜(16時間)インキュベートした。混合物を短時間遠心分離し、次いで氷上に置いた。
【0212】
D.オリゴヌクレオチドの沈殿:
60μlのDEPC RNaseを含まない蒸留水を混合物に加え、次いで150μlのフェノール/クロロホルムを加えた。混合物を30秒間激しくボルテックスした。その後マイクロ遠心分離機で、室温で5分間、最大速度で遠心分離して沈殿物を除去した。水相を新しいマイクロ遠心チューブに移した(>95μl)。
【0213】
これに、3μlの5mg/mlのグリコーゲン、および500μlの事前に冷やした0.5Mの(NH4)2CO3を含む100%エタノールを加え、混合物を短時間ボルテックスし、次いで60分間ドライアイス上で凍結した。この時点で、これを一夜−20℃で保存してもよい。乾燥した分画を100μlのRnaseを含まない蒸留水に再溶解し、0.5Mの(NH4)2CO3を含む500μlの100%冷エタノールを加え、混合物を短時間ボルテックスした。その後、これを60分間ドライアイス上で凍結させるか、または−20℃で一夜保存した。その後、試料を4℃にし、マイクロ遠心機で、最大速度で15分間遠心分離し、上清をピペットで取り除いた。ペレットを乱さないように注意した。ペレットがまだ塩を含んでいた場合は、このステップを1回繰り返した。その後、ペレットを70%の事前に冷やしたエタノールで数回洗浄した。次いで、これをマイクロ遠心機で、4℃で5分間、最大速度で遠心分離した。ピペットを用いてエタノールを慎重に取り除いた。遠心分離を再度繰り返して 残留するタノールを集め、これを慎重に取り除いた。湿ったペレットを高速真空で10分間乾燥した。少量のアリコートをゲル分析用に採取した。長期間の保存には、RNAをエタノール中に−20℃で保存した。RNAをDEPC水中で保存しないように注意した。
ステップ6:ライゲーションしたフラグメント3オリゴ複合体の精製
乾燥した試料を0.5×TE緩衝液に再溶解し、緩衝液Cで平衡化したDNAPac PA−100カラムに載せた。カラム温度は85℃であり、検出器をRNAを有する分画の同定には254nmで作動させ、2MaFを有する分画の同定には340nmで作動させた。オリゴは、最初の20分間は30%〜70%の緩衝液Dの凸型勾配で、0.8ml/分の流速で溶出させ、次いでさらに20分間、70%の〜98%のDの直線勾配で、同じ流速で溶出させた。溶出は、100%のDで7分間および100%のCでさらに10分間、1.0ml/分の流速で洗浄することによって完了した。分画は254または260nmの波長の光を用いて検出した。ライゲーションしたオリゴ(2MA−フラグメント3)は34分より後に、90%を超える緩衝液Bで溶出された。254nmでの吸光度を有する分画(A254nm>0.01)を採取し、高速真空で一夜乾燥させた。
ステップ7:精製した2MA−フラグメント3の脱塩および沈殿
乾燥した分画を100μlのRnaseを含まない蒸留水に再溶解し、500μlの0.5Mの(NH4)2CO3を含む100%冷エタノールを加え、混合物を短時間ボルテックスした。次いで混合物を60分間ドライアイス上で凍結させるか、または−20℃で一夜保存した。
【0214】
試料を4℃にし、マイクロ遠心機で、最大速度で15分間遠心分離した。ペレットの位置に注意し、上清をデカントするか、またはピペットで取り除いた。ペレットを乱さないように注意した。まだ塩を含んでいる場合は、このステップを繰り返した。その後、ペレットを70%の事前に冷やしたエタノールを用いて2回で洗浄した。湿ったペレットを高速真空で15分間乾燥させた。
【0215】
フラグメント1を2MA−フラグメント−3オリゴにライゲーションさせてSATAリンカーを完成させる次のステップで用いる、ライゲーションした2MA−フラグメント−3を同定するために、尿素PAGEを実施した。
ステップ8:SATA(または他のtRNA分子)の調製
A.RNAオリゴの5’リン酸化
1.試薬および器具:
・ヌクレアーゼを含まない水(カタログ番号P1193、Promega)
・RNasin(登録商標)リボヌクレアーゼ阻害剤(カタログ番号N2511、Promega)
・フェノール:クロロホルム
・無菌的なマイクロ遠心チューブ
・100%のエタノール
・70%のエタノール
・室温および4℃のマイクロ遠心機
・PCRサーマルサイクラーまたは水浴
2.以下の反応混合物を無菌的なマイクロ遠心チューブ内で構築する:
成分 : 容積
・アクセプターRNA <200ng
・T4リガーゼ10×反応緩衝液* 4μl
・RNasin(登録商標)リボヌクレアーゼ阻害剤(40単位/μl) 20単位
・T4キナーゼ(9〜12単位/μl) 2μl
・10mM ATP 4μl
・ヌクレアーゼを含まない水で最終容量に 40μl
PCRサーモサイクラーまたは水浴中で、37℃で30分間インキュベートする。非放射性のリン酸化には、1×T4ポリヌクレオチドキナーゼ反応緩衝液、1mMのATPおよび10〜20単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを含む30〜40μlの反応で、300pmolまでの5’末端を用いる。37℃で30分間インキュベートする。1×T4DNAリガーゼ反応緩衝液は1mMのATPを含み、非放射性のリン酸化において置き換えることができる。T4ポリヌクレオチドキナーゼはこの緩衝液中で100%の活性を示す)。最適な活性には新しい緩衝液が必要である(古い緩衝液では、酸化によるDTTの減少が活性を低下させる。
【0216】
B.フラグメント1および2MA−フラグメント3オリゴ複合体のアニーリング:
1.試薬および器具:
・PCRサーモサイクラー装置または水浴
・100μg/mlのヌクレアーゼを含まないアルブミン
・100mMのMgCl2
2.以下の反応混合物を無菌的なマイクロ遠心チューブ内で構築する:
・アクセプターRNAオリゴ(1E) <200ng
・ドナーRNAオリゴ(3G−2Gのライゲーションしたオリゴ) <200ng
・(ステップAからの5’リン酸化されたオリゴ)
適切な比は以下のとおりで、フラグメント1の自己ライゲーションを回避するために、アクセプターオリゴ:ドナーオリゴ(フラグメント1:2MA−フラグメント3)のモル比が1:1.1であるべきである。MgCl2を、T4リガーゼ緩衝液(50mM トリス−HCl2−(pH7.8)、10mM MgCl2、10mM DTTおよび1mM ATP)に、最終20mMの濃度で添加した。Rnaseを含まないアルブミンを最終的に5μg/mlになるように添加する。最終容量は、100μl以下とすべきである。溶液を5分間70℃まで加熱し、次いで2時間にわたって70℃から26℃まで冷やし、40分にわたって26から0℃まで冷却した。PCR器具を用いて、16℃で16〜17時間インキュベートする。
【0217】
C.アニールしたオリゴのライゲーション
・アニールしたオリゴ <15μl
・10mM ATP 2μl
・40%PEG 18μl
・T4リガーゼ 10×緩衝液 2μl
・RNasin(登録商標)リボヌクレアーゼ阻害剤(40単位/μl) 0.5μl
・T4リガーゼ(9〜12u/μl)(NEB) 1μl
・ヌクレアーゼを含まない水で 最終容量40μl
D.tRNAフラグメントの沈殿
ライゲーションの後、50μlのDEPC水および150μlのフェノール:クロロホルムを加え、30秒間激しくボルテックスした。その後、これをマイクロ遠心機で、室温で最大速度で5分間遠心分離した。水相を新しいマイクロ遠心チューブ(約100μl)に移した。これに、2μlの10mg/mlのイガイグリコーゲン、10μlの3Mの酢酸ナトリウム、pH5.2を加えた。これをよく混合した。次いで220μlの95%のエタノールを加え、短時間ボルテックスした。その後、混合物を30分間ドライアイス上で凍結させた。この時点で、混合物を一夜−20℃で保存してもよいし、または先に進んでもよい。1つの実施形態では、RNAは好ましくはDEPC水中に保存すべきでなく、エタノール中に−20℃で保存すべきである。
【0218】
その後試料を4℃にし、マイクロ遠心機で、最大速度で15分間遠心分離した。ペレットの位置に注意し、上清をデカントするか、またはピペットで取り除いた。ペレットを乱さないように注意した。次いでペレットを70%の事前に冷やしたエタノールを用いて2回で洗浄した。エタノールを除去した後、湿ったペレットを高速真空で15分間乾燥させた。乾燥したペレットは、次のステップまで−20℃で保存した。
【0219】
RNAの翻訳
SATAのアンチコドンによって認識されるコドンに対応するストップコドン(この場合はUAG)を有するように修飾されたルシフェラーゼmRNAを、1μlの濃度1μg/μlを推奨する標準のPromega in vitro翻訳キットで用いた。当業者は、実際、適切な配列を含む任意のmRNAフラグメントを用い得ることを理解するであろう。
【0220】
SATAを実験チューブに加えた。SATAを含まない対照チューブも調製した。用いたSATAの量は、約0.1μg〜500μg、好ましくは0.5μg〜50μgであった。40単位/mlのRnasinを1μl加えた。ヌクレアーゼを含まない水を加えて全容量を50μlとした。
【0221】
約150個を超えるアミノ酸のタンパク質では、tRNAの量を補充する必要があり得る。例えば、約10〜200μgのtRNAを加えてもよい。一般に、SATAの量は、ストップコドンまたは疑似ストップコドンを有効に抑制するのに十分に多量であるべきである。天然tRNAの量は、伸長因子の作用下で活発なプルーフリーディングを受けないSATAとの競合に勝つために十分に多量でなければならない。
【0222】
各チューブは、直ちにキャップを締め、パラフィルムで覆い、翻訳反応のために30℃で90分間インキュベートした。各反応チューブの内容物を毛管作用によって50μlの石英の毛細管に移した。Gasparroら(Photochem.Photobiol.、57:1007(1993)、参照として本明細書に組み込まれている)に従って、各チューブの内容物に2〜10J/cm2、約350nmの波長の光を照射することにより、SATAをmRNAと架橋結合させた。光架橋結合の後、各チューブの内容物を新しいスナップキャップマイクロ遠心チューブに移した。2μlの10mM EDTAを各チューブに加えることによってカルシウム陽イオンをキレートして、リボソームを解離させた。各ステップの間に、各成分を加えた際にピペットチップで攪拌することによって各チューブを穏やかに混合した。
【0223】
最終的な実験を行う前に翻訳に最適なRNAを決定した。mRNAの最適濃度を見つけるためには、5〜20μg/mlの段階希釈を要してもよい。
【0224】
上記のように、各試料でSDS−Page電気泳動を実施した。参照として本明細書に組み込まれているSambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Coldspring Harbor Press(1989)に記載のように、ゲルのオートラジオグラフィーを実施した。
【0225】
上記実施例は、SATA(tRNA上のピューロマイシンおよびtRNA上の架橋剤)の生成および使用、ならびに連結tRNA類似体(ピューロマイシンを有さず、tRNA上に架橋剤を有する)の生成および使用のために有用である。
実施例4:架橋剤を形成するよう修飾したリボヌクレオチドを用いたtRNA類似体の生成:ソラレンおよび非ソラレン架橋剤の使用
上記のように、いくつかの実施形態では、所望しないモノ付加体および架橋結合の形成を最小限にするために、プソイドウリジンを用いることができる。1つの実施形態では、架橋剤で修飾されたモノヌクレオチドを形成して用いる。架橋剤で修飾されたモノヌクレオチドの1つの利点は、これが望ましくないモノ付加体および架橋結合の形成を最小限にすることである。
【0226】
上記のように、当業者は、SATA、連結tRNA類似体およびナンセンスサプレッサー類似体を多くの異なる方法によって生成することができることを理解するであろう。好ましい実施形態では、ソラレン化したウリジン5’モノヌクレオチド、2−チオシトシン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−ヨードシトシン、5−ヨードウリジン、5−ブロモウリジンもしくは2−クロロアデノシンを生成または購入し、オリゴヌクレオチドに酵素的にライゲーションして、tRNA類似体内に組み込むことができる。アリールアジドおよびアリールアジドの類似体、ならびにその任意の修飾体も、いくつかの実施形態において連結部分または作用物質として用いることができる。以下のプロトコルをtRNA上に位置する架橋剤に用いることができる。当業者は、このプロトコルはmRNA上に位置する架橋剤にも用いることができることを理解するであろう。したがって、以下の実施例は、SATA、連結tRNA類似体、およびナンセンスサプレッサー類似体の生成ならびに使用に関して有用である。
修飾されたヌクレオチドの生成
長さが80塩基対までのカスタムヌクレオチドにすでに組み込まれている、ピューロマイシンを有するかまたは有さない4−チオU、5−ヨードおよび5−ブロモUを購入できる(Dharmacon,Inc)。したがって、SATA、およびこれらの架橋剤が既に適所に存在する連結tRNA類似体、ならびに類似の架橋剤を、Dharmacon,Incから直接購入できる。ナンセンスサプレッサー類似体もDharmacon,Incから購入できる。
【0227】
2−チオシトシン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−ヨードシトシン、5−ヨードウリジン、5−ブロモウリジンまたは2−クロロアデノシンは、RNA内に組み込むためのAmbionMODIscriptキットで使用するために、Ambion,Inc.から架橋用に全て購入できる。したがって、これらの架橋剤および類似の架橋剤を有するSATAおよび連結tRNA類似体を、Ambion,Incから直接購入できる。
【0228】
PO4Uソラレンは以下のように生成することができる:
【0229】
【化14】

【0230】
(Dharmacon,Inc.から入手可能)
【0231】
【化15】

【0232】
(南カリフォルニア大学(University of Southern California)のサービスから入手可能)。
【0233】
標的ウリジンを用いたフラン側鎖のソラレンモノ付加体の形成は、以下のように実施する:
反応緩衝液を調製する。pH7.0を有する反応緩衝液は、25mM トリスHCL、100mM NaCl、および0.32mM EDTAを含む。
【0234】
その後、4’ヒドロキシメチル−4,5’,8’−トリエチルソラレン(HMT)を最終濃度0.32mMまで加え、等モル量の配列A1および配列A2を配列A1:配列A2:ソラレンの最終モル比=1:1:1000まで加える。100μlの全容量を一度に照射した。
【0235】
相補的オリゴ、HMT、トリメチルソラレンの混合物を以下のように処理する:1)PCRサーモサイクラーを用いて、85℃まで60秒間加熱し、次いで4℃まで15分間かけて冷却する、ならびに2)冷却ファンおよび419nmの波長を備えたRPR−200 Rayonet Chamber Reactor内で、上部をパラフィルムで覆ったエッペンドルフUVetteプラスチックキュベット内で20〜60分間4℃で照射する。これを、氷水浴上または−20℃の冷凍庫内のどちらかに置く。
【0236】
HMTを再インタカレートおよび照射するために上記ステップ1および2を4回繰り返す。4サイクルの照射後、遊離ソラレンをクロロホルムで抽出し、全てのオリゴ(標識したものおよび未標識のもの)をエタノールで一夜沈殿する(沈殿ステップを参照)。少量のアリコートをゲルの同定用に保存する。
【0237】
非ソラレン架橋剤のAmbion,Incのキットを用いて同等の配列を生成することができる。
【0238】
DNA/RNA二重鎖中のRNAのRNase H消化
以下のステップを実施する:(1)高速真空内でオリゴを乾燥する、(2)ペレットを10μLの1×ハイブリッド混合物に再懸濁する、(3)68℃で10分間加熱する、(4)ゆっくりと30℃まで冷却する。パルススピンダウン(Pulse spin down)する、(5)10μLの2×RNase H緩衝液を加える。混合する。(6)30℃で60分間インキュベートする、(7)130μLの停止混合液を加える。
【0239】
フェノール/クロロホルム抽出には、(1)1倍容量のフェノール/クロロホルムを加える、(2)よくボルテックスする、(3)室温のマイクロ遠心機で2分間遠心沈殿する、(4)上層を新しいチューブに取り出す。
【0240】
クロロホルム抽出には:(1)1倍容量のクロロホルムを加える、(2)よくボルテックスする、(3)室温のマイクロ遠心機で2分間遠心沈殿する、(4)上層を新しいチューブに取り出す。
【0241】
次いで、(1)375μLの100%エタノールを加える、(2)−80℃で凍結する、(3)室温のマイクロ遠心機で10分間遠心沈殿する、(4)ペレットを70%エタノールで洗浄する、(5)10μLのローディング色素に再懸濁する、(6)載せる直前に100℃で3分間加熱する。
【0242】
より長いcDNAおよびより長いRNAフラグメントからのモノリボヌクレオチドヌクレオチドの精製は、陰イオン交換HPLCを用いて行う。次いでソラレンモノ付加体としたモノヌクレオチド(PO4Uソラレン)を、逆相HPLCによってモノ付加体化されなかったモノヌクレオチド(PO4UおよびPO4A)から分離する。
【0243】
以下に記載する類似の消化技法およびヌクレオチドの組み込みも、Ambion,Incのキットを用いた非ソラレン架橋剤に用いることができる。
tRNA成分オリゴリボヌクレオチド内への光感受性ヌクレオチドの組み込み
pU架橋剤をCUAストップアンチコドン内に組み込むために以下のプロトコルを用いることができる。しかし当業者は、本明細書中に記載の方法に従って、他のストップアンチコドンおよび疑似ストップアンチコドンを生成するために他のヌクレオチドも用いることができることを理解するであろう。
【0244】
一般に、T4 RNAリガーゼ用のプロトコルからから適用させた方法を用いるが、修飾されたヌクレオチドの3’OHの保護が欠けているためにいくつかの変更を伴っている。
【0245】
5’OH CUC OH3’オリゴリボヌクレオチド(配列B1)はDharmacon,Inc.から購入することができ、ライゲーションにおいてアクセプターとすることができる。B1対ソラレン化したモノヌクレオチドのモル比は、修飾されたUの数が大きく下回るように10:1〜50:1を保つのが好ましく、それによりCUC(U架橋剤)Nの形成を妨げる。これにより、好ましい反応の1つが行われる:
【0246】
【化16】

【0247】
1つの実施形態では、ソラレン化したUおよびより長いソラレン化した7量体を確実に分離するために、連続した陰イオン交換および逆相HPLCによって生成物を精製する。その後、pApとライゲーションすることによって7量体を3’保護してCUCU架橋剤Ap(フラグメント2B)を得る。
【0248】
陰イオン交換HPLCFまたは次のライゲーションを用いて、これを再び精製する。
フラグメント2Bと1Bもしくは1B1との第1のライゲーション
この2Bフラグメントは、安定したアクセプターを有するtRNA類似体または、天然のエステル化されたアクセプターを有するtRNA類似体において用いることができる。1つの実施形態では、天然のAA−tRNA合成酵素によって、天然の3’末端をアミノアシル化できることを保証するために、その類似体のバージョンにおいてアクセプター基部を修飾する。SATAのバージョンでは、1つの実施形態では、3’フラグメントは市販の調製されたピューロマイシンをアクセプターとして保守する。したがって、1つの実施形態では、異なる2つの5’末端において以下を用いる:
【0249】
【化17】

【0250】
(安定したピューロマイシンアクセプターを有するtRNA類似体と共に用いる)および
【0251】
【化18】

【0252】
(天然のエステル化されたアクセプターと共に用いる)。
【0253】
T4 RNAリガーゼを用いて再度ライゲーションを行い、長さによって精製する。配列1Bの式は以下のとおりである:
【0254】
【化19】

【0255】
tRNA類似体の2つの半分子のライゲーション
3’リン酸を除去して5’リン酸を付加するために、上記生成物を、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて2つの個別のステップで処理する。
【0256】
その後、新しく調製した5’および3’の半分子末端を、一般に以前のプロトコルに従ってライゲーションする。それぞれの5’配列に対応する3’配列は以下のとおりである:
配列1B:(Ψ=プソイドウリジン)
【0257】
【化20】

【0258】
3’の半分に対応:
【0259】
【化21】

【0260】
3Bおよび配列1B1、
【0261】
【化22】

【0262】
3’の半分に対応:
【0263】
【化23】

【0264】
後者は、大腸菌のアラニンに対するアミノアシルtRNA合成酵素によって認識可能である。
【0265】
上記の実施例は、SATA、連結tRNA、およびナンセンスサプレッサーtRNAを作製および使用するために用いることができる。
実施例5:SATAおよびナンセンスサプレッサーtRNAに対するmRNA上への架橋剤の配置
いくつかの実施形態では、架橋剤(ソラレンまたは非ソラレン架橋剤など)はtRNA上に配置されず、mRNA上に位置する。例えば、1つの実施形態では、SATAはtRNA上に位置するピューロマイシンを含むが、架橋剤はmRNA上にある。さらに別の実施形態では、ナンセンスサプレッサーtRNAを用い、これはピューロマイシンを有さないtRNAを含み、架橋剤はmRNA上にある。架橋剤のメッセージ(mRNA)上への配置は、以下に示すように達成することができる。関連する配列は以下のとおりである:
【0266】
【化24】

【0267】
利便性だけを考えると、1つの実施形態では、多数の35S標識のためのメチオニンコドンを有する、コザック配列およびシャインダルガノ配列をどちらも有するメッセージを用いる。
【0268】
4−チオウリジン、5−ブロモウリジンおよび5−ヨードウリジンに関しては、完全に作製されたメッセージをDharmacon,Incから購入できる。アリールアジドに関しては、参照として本明細書に組み込まれているDemeshkina,Nら、RNA、6:1727〜1736、2000に記載の方法を用いることができる。
【0269】
2−チオシトシン、2−チオウリジン、5−ヨードシトシン、または2−クロロアデノシンに関しては、修飾された塩基を5’モノリン酸ヌクレオチドとしてAmbion,Inc.から購入できる。ソラレンを架橋剤として用いる場合は、修飾された5’モノリン酸ヌクレオチドは上記のように作製する。
【0270】
精製を容易にするために、修飾された5’モノリン酸ヌクレオチドをまず六量体内に組み込む。架橋剤を含むウリジンの構築を示すが、いくつかの実施形態では、類似の技法を用いて他の塩基をストップコドンおよび疑似ストップコドンのどちらにも組み込むことができる:
【0271】
【化25】

【0272】
は、pN架橋剤の3’保護が存在しないことによるAUGの優位点を用いたこと以外は上記のプロトコルと同様のプロトコルを用いて達成した。陰イオン交換HPLCにより、生成物を過剰のAUGから精製した。次いでT4 RNAリガーゼを用いて5’pAGビオチン3’を付加した。3’ビオチンは、単にDharmaconから入手可能な便利な3’ブロッキング基であった。得られたAUGU架橋剤AGヒ゛オチンを再度精製し、次いで5’リン酸化し:
【0273】
【化26】

【0274】
にライゲーションして、
【0275】
【化27】

【0276】
を得た。
【0277】
収率は精製が不要となるほどに十分に高い。したがって、上記のプロトコルを用いて、本発明のいくつかの実施形態に従ってSATAおよびナンセンスサプレッサーtRNAを作製および使用することができる。
実施例6:ピューロマイシンを必要としないtRNA系の使用
本発明のいくつかの実施形態は、ピューロマイシン、ピューロマイシン類似体、または他のアミドリンカーを必要としない系および方法を提供する。1つの実施形態では、連結tRNA類似体およびナンセンスサプレッサーtRNAはピューロマイシンを必要とせず、以下の例に従って作製および使用することができる。
【0278】
ピューロマイシンを用いない系では、tRNAをアミノアシル化するための翻訳系を用いることができる。他の実施形態では、化学的にアミノアシル化を達成できる。当業者は、どのようにtRNAを化学的にアミノアシル化するかを理解するであろう。翻訳系を用いる場合は、in vitro、in vivoおよびin situなどのアミノアシル化する任意の種類の翻訳系を用いることができる。1つの実施形態では、大腸菌翻訳系を用いる。大腸菌翻訳系は、aaRSAlaによって認識されるように修飾したtRNAを用いる系で使用する。1つの実施形態では、これは安定したアクセプター(例えばピューロマイシン)を含まない系に好ましい。
【0279】
以下のmRNAの各3mcgを、Promega S30大腸菌翻訳混合物の各40マイクロリットル中で翻訳する:
【0280】
【化28】

【0281】
上記のように製作したアンバーサプレッサーtRNAの3mcgを、第1配列に加える。アンチコドン上に架橋剤を有するサプレッサーの3mcgを、第2配列に加える。35S−メチオニンを両方に加えた後、混合物を37℃で30分間インキュベートする。その後、反応液を氷浴に入れることにより迅速に冷却し、平らなペトリ皿に移し、混合物が約350nm光源から1.5cmだけ下方にあるように氷浴中に浮かべる。これらを約20J/cmで15分間露光させる。
【0282】
照射後、混合物をフェノール抽出し、エタノール沈殿する。このようにして、連結tRNA類似体およびナンセンスサプレッサーtRNAなどの系をアミノアシル化し、本発明のいくつかの実施形態に従ってメッセージ(mRNA)をそのコードされたペプチドに結合させるために用いる。
実施例7:代替配列
好ましい実施形態では、上記の実施例1に記載したフラグメント1、2および3は、以下の代替配列を有する:
フラグメント1(配列番号13)
【0283】
【化29】

【0284】
フラグメント2(配列番号14)
【0285】
【化30】

【0286】
フラグメント3−先に記載した配列(配列番号6)から変化なし
【0287】
【化31】

【0288】
上記の方法を用いると、代替フラグメント1+2+3の配列は(配列番号15)であった:
【0289】
【化32】

【0290】
tRNA類似体とナンセンスサプレッサーtRNAの連結に関して、アデノシンがピューロマイシンの置換に用いられていることを除いて、上記の配列は類似している。
【0291】
本発明の多くの好ましい実施形態およびその変形を詳述したが、当業者には他の改変および使用方法が容易に明らかであろう。上記の全ての実施形態において、方法のステップを逐次的に行う必要はない。したがって、本発明の精神または特許請求の範囲から逸脱せずに様々な応用、改変および置換を行い得ることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0292】
【図1】標的エピトープ結合タンパク質および免疫エフェクター抗体を含む複合体は、細胞表面上に発現したFabイディオタイプを介して悪性細胞と反応した。
【図2】小さなヒトタンパク質(Ebbd)に対する既知のヒト抗体(Ab)を示す図である。
【図3】ライゲーションの目的のための免疫エフェクター結合タンパク質(Ebbd)をコードするmRNAの拡大生成を示す図である。
【図4】特定の癌細胞表面で発現したエピトープと選択的に結合するタンパク質改良用のProteoNovaシステムの概略図である。
【図5】悪性細胞上のイディオタイプまたは標的エピトープと結合するmRNAをタンパク質から分離する過程を示す図である。
【図6】二官能性タンパク質が、ヒトタンパク質(免疫エフェクター結合領域(Ebbd))をコードするmRNAのライゲーションにより作製されることを示す図である。
【図7】二官能性タンパク質を含む複合体形成により調製された、個別化した癌治療薬を示す図である。
【図8】治療薬により標識された悪性細胞の図を示す。
【図9】改良された第2のペプチド(免疫エフェクター結合領域)を含む治療薬を示す図である。
【図10】改良された第2のペプチド(免疫エフェクター)を含む治療薬を示す図である。
【図11】mRNAおよびそのタンパク質生成物により形成される複合体の例を示す図である。
【図12】in vitroでの選択および進化過程の1例を示す模式図である。
【図13】本発明のtRNA分子を構築する1方法を例示する図である。
【図14】本発明の方法において、mRNAをtRNAに連結することができるように架橋結合分子であるソラレンを配置することができる2つの代替実施形態について記載した図である。
【図15】ウリジンおよびプソイドウリジンの化学構造を示す図である。
【図16】本発明のいくつかの実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患または状態を治療するための標的治療薬を作製する方法であって、
疾患もしくは状態を有する患者、または疾患もしくは状態を発現する危険性がある患者から生体試料を得るステップであって、前記試料が疾患細胞の集団を含むステップと、
前記疾患細胞に結合するmRNA−タンパク質対を同定するために、同族mRNAと連結させたタンパク質を含むライブラリーをスクリーニングするステップと、
前記同定したmRNA−タンパク質対から、1つまたは複数のタンパク質を分離するステップと、
前記分離したタンパク質(複数可)を治療薬に結合するステップであって、前記治療薬が前記疾患細胞に対して治療有効性を有するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
第1の亜集団細胞を前記試料から分離するステップであって、前記第1の亜集団が、非疾患細胞を実質的に含まない疾患細胞を含むステップと、
第2の亜集団細胞を前記試料から分離するステップであって、前記第2の集団が、疾患細胞を実質的に含まない非疾患細胞を含み、前記非疾患細胞よりも前記疾患細胞と実質的に高親和性で結合するmRNA−タンパク質対を同定するために、前記ライブラリーをスクリーニングするステップと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患または状態が癌であり、前記疾患細胞が悪性細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患または状態が血液癌であり、前記悪性細胞がリンパ球を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記悪性細胞がB細胞である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記悪性細胞がT細胞である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患または状態が病原体の感染であり、前記疾患細胞が病原体で感染した細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記病原体がウイルスである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスがHIVである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記治療薬が細胞毒性薬剤である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記治療薬が前記患者で免疫応答を引き起こしうる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記治療薬がアジュバントである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患または状態が移植拒絶反応であり、前記疾患細胞が移植された細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記治療薬が前記患者で免疫応答を抑制できる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患または状態が移植拒絶反応であり、前記疾患細胞が移植された細胞に結合するリンパ球である請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記治療薬が前記患者で免疫応答を引き起こしうる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記治療薬が補体媒介免疫応答を刺激する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記治療薬がC3転換酵素である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分離ステップが、前記同定されたmRNA−タンパク質対の前記mRNAに対応するオリゴヌクレオチドをクローニングすること、および前記オリゴヌクレオチドからタンパク質を発現することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
同族のmRNAに連結したタンパク質を含むライブラリーを作製するステップであって、
少なくとも2つの候補mRNA分子を提供することであって、前記mRNA分子のそれぞれが架橋剤を含むこと、
前記候補mRNA分子のうちの少なくとも2つを翻訳して、少なくとも1つの翻訳されたタンパク質を生成すること、および
前記候補mRNA分子のうちの少なくとも1つを、架橋剤を介してその対応する翻訳されたタンパク質と連結して、少なくとも1つの同族対を形成すること
を含むステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記架橋剤がコドン上に配置される請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記架橋剤が疑似ストップコドン上に配置される請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋剤がソラレン架橋剤を含み、連結には前記mRNAをUV光に曝露することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記翻訳がin vitroで実施される請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記候補mRNA分子の少なくとも1つおよび前記翻訳されたタンパク質の少なくとも1つが、tRNA、修飾されたtRNA、およびtRNA類似体からなる群から選択されるtRNA分子によって連結される請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患または状態が癌であり、前記疾患細胞が悪性細胞である請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患または状態が血液癌であり、前記悪性細胞がリンパ球を含む請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患または状態が病原体の感染であり、前記疾患細胞が病原体で感染した細胞である請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患または状態が移植拒絶反応であり、前記疾患細胞が移植された細胞である請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記治療薬が前記患者で免疫応答を抑制できる請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記疾患または状態が移植拒絶反応であり、前記疾患細胞が移植された細胞に結合するリンパ球である請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記治療薬が前記患者で免疫応答を引き起こしうる請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記治療薬が細胞毒性薬剤である請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記治療薬が前記患者で免疫応答を引き起こしうる請求項18に記載の方法。
【請求項35】
疾患または状態を治療するための標的治療薬を作製する方法であって、
疾患もしくは状態を有する患者、または疾患もしくは状態を発現する危険性がある患者から試料を得るステップと、
1つまたは複数のタンパク質を前記試料から分離するステップであって、前記タンパク質が、非疾患細胞と比べて疾患細胞上で発現の異なるマーカーを含むステップと、
前記マーカーに対して実質的に親和性を有するmRNA−タンパク質対を同定するために、同族のmRNAと連結されたタンパク質を含むライブラリーをスクリーニングするステップと、
1つまたは複数のタンパク質を、前記同定されたmRNA−タンパク質対から分離するステップと、
前記分離したタンパク質を治療薬に結合するステップであって、前記治療薬が前記疾患細胞に対して治療有効性を有するステップと、
を含む方法。
【請求項36】
同族のmRNAに連結されたタンパク質を含むライブラリーを作製するステップであって、
少なくとも2つの候補mRNA分子を提供することであって、前記mRNA分子のそれぞれが架橋剤を含むこと、
前記候補mRNA分子のうちの少なくとも2つを翻訳して、少なくとも1つの翻訳されたタンパク質を生成すること、
および前記候補mRNA分子のうちの少なくとも1つを、前記架橋剤を介してその対応する翻訳されたタンパク質と連結して、少なくとも1つの同族対を形成すること、
を含むステップをさらに含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記マーカーがMHCを含む1つまたは複数のタンパク質である請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記治療薬が免疫応答を抑制する請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患または状態が移植拒絶反応である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記マーカーが、MHCに結合するリンパ球のイディオタイプを含む1つまたは複数のタンパク質である請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記治療薬が免疫応答を増強する請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記疾患または状態が移植拒絶反応である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項18から請求項42のいずれか1項に記載の前記方法を実施するためのキットであって、
同族のmRNAに連結されたタンパク質を含む前記ライブラリーを発現する手段と、
生体試料の1つまたは複数の成分に結合するmRNA−タンパク質対を同定するために、前記ライブラリーをスクリーニングする手段であって、前記試料を疾患もしくは状態を有する患者、または疾患もしくは状態を発現する危険性がある患者から採取する手段と、
前記同定されたmRNA−タンパク質対から、前記タンパク質を分離する手段と、
前記分離したタンパク質を前記治療薬に結合する手段であって、前記治療薬が前記疾患または状態に対して治療有効性を有する手段と、
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−526973(P2008−526973A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551343(P2007−551343)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/000956
【国際公開番号】WO2006/076417
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(506198285)プロテオノヴァ、 インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】PROTEONOVA, INC.
【Fターム(参考)】