説明

標的物質の精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化のための静的支持床及びその使用方法

本発明は、流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質の精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化のための静的支持床(SSB)を開示する。本発明の静的支持床は、標的化学物質又は標的生物学的物質の付着に適した一又は複数のマイクロワイヤー支持体を具備する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質の精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化のための静的支持床に関する。
【0002】
(背景技術)
種々の分析的、生化学的及び診断的方法は、高表面積基質に生体分子の生体結合パートナー又は特定の試薬を固定化することを含む。
一方では、細胞は、生物学的及び薬理学的産物を産生させるため、しばしば反応器において培養される。このような細胞は、動物、植物、菌類、又は微生物の細胞でありうる。細胞培養を維持するためには、一般的に酸素や他の栄養物を細胞に供給しなければならない。細胞培養は、通常、灌流により反応器中に維持され、そこでは、酸素及び他の栄養物を含む細胞培養培地が、細胞培養反応器を通るようになされる。しかしながら、細胞培養反応器は、反応器の単位容積当たり、少しの細胞の充填の支持しかできない。それらは、流量又は攪拌速度が遅い場合でのみ操業可能である。同様に、生体触媒反応も反応器中で実施され、そこでは、酵素触媒は多孔質の無機支持体に保持されている。
【0003】
他方、固定化が化学的及び生物学的分離を実施するためにまた使用されている。薬理学的産物の製造におけるタンパク質等の高分子の分離には、かなりのコストがかかる。クロマトグラフィーは、そのようなタイプの分離の実施に数十年間使用されている。化学的に修飾されたセルロース又はシリカは、食品、生物薬剤、バイオテクノロジー及び製薬工業における商業的に重要な生体分子の製造における固定相に使用される。代替の固定相は、金属及び金属酸化物、例えば粒子状の酸化アルミニウムを含みうる。また、膜吸着体、すなわちクロマトグラフィー用に表面に官能化部位を有する膜を使用することもできる。
【0004】
多くの分析方法は、表面上に生体分子の生体結合パートナーを固定化することを含む。表面を、分子を含んでいると思われる培地に暴露し、表面固定化結合パートナーにカプリングした分子の存在又は度合いを測定する。
【0005】
同様に、薬理学的又は診断用生成物を作製するためのバイオテクノロジープロセスの大部分は、様々な供給源からの生体分子を精製することを含む。生体分子の精製は、多くの場合、固形支持吸着体の一般的な充填床での吸着クロマトグラフィーの使用によって開始される。このためには、クロマトグラフィー用カラムに適用する前に粗培養物を浄化することが、頻繁に必要となる。細菌溶解物からプラスミドDNAを産生し又は精製するための実際のプロセスは、一般的な充填床クロマトグラフィーに基づいている。この方法は、これらの化合物の物理的特徴(例えばプラスミドの大きさ、溶液の粘度、プラスミドの脆弱度、微生物の他の核酸分子との化学的類似性等)、作動床(operating bed)の容量及び圧力低下に関して厳しい制限を設けることにより、阻害される。さらに、非治療用部分に含まれる遺伝子の発現には、このようなプラスミドレセプターに対する危険、特定されていない影響の危険、染色体組込の危険等が伴うという事実があるため、治療効果に寄与しないプラスミドフラクションを除去することが必要な場合がある。
【0006】
吸着クロマトグラフィー法は、一般的な充填床(充填床クロマトグラフィー;PBC)ばかりでなく、膨張床(膨張床吸着;EBA)又は流動床(流動床吸着;FBA)でも実施される。これらクロマトグラフィー法の全てが吸着支持体として粒子を含んでいる。
【0007】
分離及び精製に使用される他のクロマトグラフィー法は、固定相として繊維質培地を使用している。例えば、J. Chromatography 1992, 598/2:pp.169-180には、丸められて、液体クロマトグラフィーカラムに充填された繊維に織り込まれた糸からなる連続固定相が記載されている。記載された糸は200〜400μmの特徴的な幅を有し、95%のポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)と5%のポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)の10−20μmの繊維から作製されている。
【0008】
J. Oleo Science 2002, 51/12:789-798には、水性の界面活性剤ミセル溶液を用いて、繊維状基質から油性土を除去するために、固定相としてポリエステル及びセルロース製のフィラメント糸を使用する液体クロマトグラフィー法が記載されている。
【0009】
欧州特許第328256号には、クロマトグラフィー法において、適切なリガンド又は生体材料に結合するように誘導体化された多孔質の親水性マトリックス物質で被覆されたガラス繊維が記載されている。
【0010】
最後に、国際公開第03/00407号は、直径約2ナノメートルで、高度に陽性の水酸化アルミニウム繊維に関する。このような繊維は、フィルターを通し、高フラックスで、細菌及びナノサイズの粒子、例えばウイルス及びコロイド状粒子を濾過することができる。またそれらは、水、生物学的、医学的及び薬力学的流体の精製及び滅菌のため、微生物及びウイルスの検出及び分析のためのコレクター/濃縮器として、また細胞増殖の基質として使用可能である。
【0011】
非晶質ガラスで被覆されたマイクロワイヤーは当該分野で知られている。それらは高周波数でのその磁気特性のため、小型電子部品、及びプリント回路及びケーブルにおける電磁気インターフェイスのフィルタリングに使用されている。またマイクロワイヤーは導電性を有しており、よって電磁応用分野、例えば小型コイル、小型ケーブル、高圧発生装置及び小型アンテナに使用され得る。それにもかかわらず、非晶質ガラスで被覆されたマイクロワイヤーは、流体に含まれる標的基質を精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化する方法における使用については決して提案されていない。
【0012】
J. Magnetism及びMagnetic Materials 2002, 249:357-367には、流体中に存在する磁気ビーズを分離するために、中空の磁気ワイヤーが部分的に充填されたナノ多孔性膜を使用することが記載されている。特定の生物学的物質が事前に取り込まれた磁性ビーズは、強磁性シリンダーを磁化させるために外部磁場を印加しながら、磁気ビーズを含む流体を、膜に通過させることにより分離され、よって、磁気ビーズに結合した生物学的物質はキャピラリー壁部に捕捉され、未結合単位は通過する。
【0013】
J. Magnetism及びMagnetic Materials 2005, 293:671-676には、磁場が印加された場合、その表面上又は近傍に存在する磁性微小粒子の検出について、巨大磁気インピーダンス効果(GMI)に対するガラス被覆非晶質マイクロワイヤーの感度が記載されている。マイクロワイヤーは、続いて検出される磁性微小粒子の表面に存在する標的生体分子に対して特異的なバイオレセプターを含むポリマーで被覆されている。
【0014】
国際公開第2005/101464号は、金属ガラスで被覆されたマイクロワイヤーに関するもので、ここでは、PCR反応の生化学的試薬及び酵素は、ガラス被覆されたマイクロワイヤーの一部であるか、又はディッピング法、スプレー法又は他のある方法により付着させられたガラス表面上にエッチング処理されたナノ-又はマイクロ細孔に充填又はカプセル化されている。
【0015】
(発明の概要)
本発明により解決される課題は、他の方法について上述された不具合のいくつかが回避され又は最小化された、流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質を精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化するための改善された方法を提供することにある。
【0016】
解決法は、固定相として、それらの端部が固定される一又は複数のマイクロワイヤー支持体を含む静的支持床を使用して実施される方法の提供に基づいており、該マイクロワイヤー支持体は、標的化学物質又は標的生物学的物質の付着に適したものである。
【0017】
従って、本発明の第1の態様は、流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質を精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化するための静的支持床(SSB)に関し、ここで、該静的支持床は、それらの端部が固定される一又は複数のマイクロワイヤー支持体を具備しており、これらのマイクロワイヤー支持体は中心コア部と一又は複数のコーティング層に分離した多層構造を有しており、かつ標的化学物質又は標的生物学的物質の付着に適したものであり、但し、磁場が該静的支持床に作用するならば、マイクロワイヤー支持体と磁気の影響を受けやすい粒子との間に生じる磁気相互作用により、流体中に存在する該磁気の影響を受けやすい粒子を分離及び/又は検出するためには磁場は使用されない。
【0018】
また、マイクロワイヤー支持体が本発明の主題事項でもある。よって、本発明の第2の態様は、本発明の静的支持床に組み込まれ、上述した特徴を有するマイクロワイヤー支持体に関し、よって、該マイクロワイヤー支持体は中心コア部と一又は複数のコーティング層に分離した多層構造を有し、ここで、マイクロワイヤーの表面は、
a)リガンドの付着;又は
b)機能的コーティングでコーティングされること
により修飾されており、但し機能的コーティングはポリマーコーティングではない。
【0019】
本発明の第3の態様は、上述した静的支持床を使用する、流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質を精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化するための方法に関し、該方法は、a)静的支持床を含む流路の内容積に標的化学物質又は標的生物学的物質を含むサンプル流体を充填し;b)静的支持床のマイクロワイヤー支持体に標的化学物質又は標的生物学的物質を付着させ;c)場合によっては、標的物質で化学的又は生物学的修飾、例えば標的分子の生体触媒的修飾を実施し;d)場合によっては、流路を洗浄し、サンプル流体の所望しない成分及び不純物を排出させ;e)得られた化学物質又は得られた生物学的物質を溶出させることを含み、但し、磁場が該静的支持床に作用するならば、マイクロワイヤー支持体と磁気の影響を受けやすい粒子との間に生じる磁気相互作用により、磁場は、流体中に存在する該磁気の影響を受けやすい粒子を分離及び/又は検出するためには使用されない。
【0020】
この方法は、生体分子、例えばタンパク質、糖タンパク質、核酸、例えばRNA、DNA、cDNA、オリゴヌクレオチド及びプラスミド、ペプチド、ホルモン、抗原、抗体、脂質及び一又は複数のこれらの分子を含有する複合体を分離、精製及び/又は修飾するのに特に有用である。
【0021】
(定義)
以下、「生物学的物質(biological entity)」なる用語は、生物由来の成分を含むことを意図している。それには、動物、植物、菌類又は微生物の細胞、組織、培養物、抗体、抗生物質、抗原、プラスミド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ホルモン、補酵素、酵素、タンパク質で、天然で又は組換えにより生成され、グリコシル化された又はされていないもの、細胞性成分、核酸、ウイルス、炭水化物、体液、血液成分、微生物、及びそれらの誘導体、又はそれらの一部、並びに関心ある任意の他の生体分子が含まれる。
【0022】
ここで使用される場合、「化学物質(chemical entity)」なる用語は、薬剤を含む任意の有機又は無機化合物を含む。
【0023】
ここで使用される場合、「精製」なる用語は、不純物を除去することにより、サンプル中の外来又は汚染成分から、関心ある物質を分離するプロセスを意味する。
ここで使用される場合、「分離」なる用語は、物質の混合物を、二又はそれ以上の組成的に異なる生成物に変えるプロセスを意味する。
ここで使用される場合、「修飾」なる用語は、化学的又は生物学的手段による、分子構造の変化を意味する。
ここで使用される場合、「固定化」なる用語は、化学的化合物又は生体分子を、共有結合力又は非共有結合力により結合させる行為を意味する。ワクチン、タンパク質、真核細胞遺伝子、組織移植片、組換えDNAからのタンパク質等を産生させるための細胞の固定化には、本発明のマイクロワイヤーが特に使用される。
【0024】
ここで使用される場合、任意の与えられた物体の「最大断面寸法」なる用語は、物体と、物体の最も長い寸法に直交する面との交差により形成される最も長い周囲長さ内に含まれる任意の与えられた2点間に見出される最大距離を意味する。
ここで使用される場合、「マイクロワイヤー」なる用語は、円形又は非円形の横断面であってよく、1000μmより小さな最大断面寸法を有する、中実、すなわち中空ではない細い部材を意味する。「マイクロワイヤー」及び「マイクロワイヤー支持体」なる用語は、この文献では区別することなく使用される。
【0025】
ここで使用される場合、「静的支持床」なる用語は、繰り返しパターンにされて、いずれの端部も固定された一又は複数のマイクロワイヤー支持体からなるマトリックスを意味する。
ここで使用される「マイクロワイヤー支持体の束」なる用語は、複数のマイクロワイヤー支持体、すなわち繰り返しパターンにされた一を越えるマイクロワイヤー支持体を意味する。
【0026】
(発明の詳細な説明)
今日の工業プロセスにおける重要な課題は、適用される技術によるスケーラビリティの限界である。この限界は、小さな研究室規模では成功するプロセスが、大きな工業的規模で応用されると、予期される結果をもたらすことに失敗する原因となるうる。
よって、本発明の静的支持床装置の寸法は、好ましくは最大断面寸法0.5cm及び長さ0.5cmから、最大断面寸法1.5m及び長さ10mの範囲をカバーしている。しかしながら、静的支持床技術は高容量であるため、非常に大きな静的支持床装置が使用されることは非常にまれであり、よって、工業的プロセス用の静的支持床装置のより好ましい寸法は、最大断面寸法0.5cm及び長さ5cmから、最大断面寸法50cm及び長さ1.5mの範囲をカバーしている。
【0027】
静的支持床技術の利点の一つは、静的支持床装置の境界内における高多孔率と組合せて、大きい利用可能な表面積を提供するその能力にある。この利点は、この発明に使用されるマイクロワイヤー支持体が繊維状形態であることに起因する、すなわち、静的支持床装置の特定の多孔率が与えられると、より薄いマイクロワイヤー支持体が使用される場合に、より大なる利用可能な表面積が得られる。しかしながら、マイクロワイヤー支持体が厚い程、破砕に対する耐性が増し、この理由から、大きな装置又は過酷な操業条件では、より厚いマイクロワイヤー支持体を使用する必要がある。
【0028】
マイクロワイヤー支持体の長さは、一般的にはカラム又は反応器の長さ以上である限り、如何なる特定の範囲にも特に制限されるものではない。それにもかかわらず、上述したことを考慮すれば、好ましくは1μm〜1000μmの範囲の最大断面寸法を有し、繊維状形態を保持し、最大断面寸法に対する長さの比が5を越えるマイクロワイヤー支持体を使用することが、結果的に簡便である。より好ましくは、それらの最大断面寸法は1μm〜100μmの範囲であり、最大断面寸法に対する長さの比は50より長い。さらに好ましくは、最大断面寸法に対する長さの比は50より長い。最も好ましくは、最大断面寸法に対する長さの比は1000より長い。
【0029】
ここに記載されたように、静的支持床技術は、多くの流体容量、流速の早い流体、粘度のある流体、及び固形物が懸濁した流体のプロセシングに適用される場合に最も有利である。これら4つの例のいずれにおいても、現存する技術を適用すると、生産性が低下するか、又は背圧が制限される結果となる。
【0030】
背圧は、プロセシングされる流体の流れの中に配されたプロセシング装置が流れに対して抵抗するように作用する場合に生じる。この抵抗は、装置の任意の与えられた断面での多孔率と比較して、適用される粘度が大きい又は流速が速いことの結果である。装置の多孔性は、装置のデザイン、装置内に収容される支持体の大きさ及び形状、装置内に蓄積され、装置の有効多孔率を低下させる懸濁液中の固形物でのフィルタリング効果によって影響を受ける。
【0031】
静的支持床技術では、マイクロワイヤー支持体は、いずれかの端部が固定されて、静的支持床が提供されており、ここで、マイクロワイヤー支持体の空間分布は、適用される流体の性質又は適用される流れの速度とは無関係に安定している。端部が固定される結果、近接するマイクロワイヤー支持体が特定の角度を形成する。懸濁液中の固形物に対するフィルタリング効果及び背圧を回避するために、静的支持床装置内にあるマイクロワイヤー支持体の最も簡便な配置は、隣接するマイクロワイヤー支持体が、互いにゼロ度の角度を形成する場合である。しかしながら、隣接するマイクロワイヤー支持体の間の距離よりも大きな寸法の固形物は、隣接するマイクロワイヤー支持体を押しのけ、隣接するマイクロワイヤー支持体の空間分布を一時的に破壊し、その結果、隣接するマイクロワイヤー支持体が10度までの角度を形成することにより、妨害なく床を通過することは重要である。さらに、設計及び構築限界は、隣接するマイクロワイヤー支持体の間の角度を45度まで増加させることを必要とする場合がある。
【0032】
よって、本発明の好ましい実施態様では、任意の与えられた個々のマイクロワイヤー支持体は、任意の他の隣接したマイクロワイヤー支持体と、0°〜45°の角度を形成する。さらに好ましくは、任意の与えられた個々のマイクロワイヤー支持体は、任意の他の隣接したマイクロワイヤー支持体と、0°〜10°の角度を形成する。
【0033】
好ましい実施態様では、マイクロワイヤーは、それらの端部が固定されて、カラム又は反応器の一端から他端に完全に延びる形で、カラム又は反応器に配され、供給流は一端から他端へと流れる。特定の好ましい実施態様では、供給流とマイクロワイヤー支持体とが0°〜45°の角度をなすような形にマイクロワイヤー支持体が配されている。但し、他の配置も許容される。
【0034】
マイクロワイヤー支持体を有するカラム又は反応器の内容積の全範囲では、それ自体又は束にまとめられたマイクロワイヤー支持体がカラム又は反応器の全体にわたって均一に分布していることが必要である。この均一の分布は、固定化された端部が、カラム又は反応器のいずれかの端部で、格子、ジグザグ又は平行線のパターンを形成する形で、カラム又は反応器のいずれかの端部に、マイクロワイヤー支持体又はそれらの束の端部を固定することにより達成可能である。
【0035】
従って、SSBは、所望の値のスケール及び均一な床多孔性を達成するように最適化された分布パターンでカラム又は反応器内に配される。これらの値は、任意のSSB装置の寿命がある間、一定に維持される。
【0036】
本発明の好ましい実施態様では、静的支持床のマイクロワイヤー支持体は、異なる物質からなる中心コア部とコーティング層を有している。よって、この好ましい実施態様に係るマイクロワイヤー支持体は、中空繊維状のワイヤーとは異なり、中空構造を呈しない。中心コア部及びコーティング層の材料は、ガラス、金属、セラミック、ポリマー、及びプラスチックの材料からなる群から選択される。より好ましい実施態様では、前記マイクロワイヤー支持体の中心コア部は金属製であり、少なくとも一のコーティング層はガラス製である。マイクロワイヤー支持体の金属製コア部は、非晶質及び/又は結晶質の微細構造を有していてもよい。好ましくは、金属製コア部は非晶質の微細構造を有している。
【0037】
好ましい実施態様では、マイクロワイヤー支持体のコア部は、金属、金属合金、又は少なくとも一の金属と金属合金との組合せからなる。このようなものとして、又は合金に使用される好ましい金属は、銅、金、銀、白金、コバルト、ニッケル、鉄、ケイ素、ゲルマニウム、ホウ素、炭素、リン、クロム、タングステン、モリブデン、インジウム、ガリウム、鉛、ハフニウム、及びジルコニウムである。より好ましい実施態様では、マイクロワイヤー支持体のコア部は、コバルト、鉄、ニッケル、クロム、ホウ素、ケイ素及びモリブデンを含む合金からなる。
【0038】
本発明において特に好ましいコア部の組成の例は、以下の表1に含まれるものである。
【表1】

【0039】
ガラス質コーティング組成物は、金属酸化物、例えばSiO、Al、B、NaO、及びKOをとりわけ含有していてもよい。
【0040】
本発明の好ましい実施態様では、マイクロワイヤー支持体の表面は、リガンドの付着、又は機能的コーティングによるコーティングで修飾されており、よって精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化は、マイクロワイヤー支持体の表面に存在している機能的コーティング又はリガンドに標的化学物質又は標的生物学的物質を付着させることを介してなされる。
【0041】
本発明の好ましい実施態様では、マイクロワイヤー支持体の表面は、タンパク質、ゼラチン、又はコラーゲンのコーティングを用いて、表面をコーティングすることにより適切に修飾される。よって、この場合、マイクロワイヤー支持体の表面は、機能的コーティングにより、適切に修飾されている。よって、ここで使用される「機能的コーティング(functional coating)」なる用語は、標的物質と共有又は非共有的にカップリングすることにより相互作用し得るコーティングを意味する。
【0042】
本発明の他の好ましい実施態様では、マイクロワイヤー支持体の表面は、直接又はリンカーを介して、マイクロワイヤー支持体の表面にリガンドを結合させることにより、適切に修飾される。好ましいリガンドは、細胞、生体組織、抗体、抗生物質、抗原、核酸、ペプチド、ホルモン、補酵素、生体触媒、化学触媒、化学反応体、脂質、糖類、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、及び、ジエチルアミノエチル、第4級アミノエチル、第4級アンモニウム、カルボキシメチル、スルホプロピル、スルホン酸メチル、ブチル、オクタール(octal)、及びフェニルからなる群から選択される官能基を有する化合物、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものである。特に好ましいリガンドは、細胞、生体組織、抗体、抗生物質、抗原、核酸、ペプチド、ホルモン、補酵素、生体触媒、化学触媒、化学反応体、脂質、糖類、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、及びそれらの混合物である。
【0043】
好ましいリンカーは、ポリマーコーティング、タンパク質コーティング、ゼラチンコーティング、コラーゲンコーティング、細胞、抗体、抗原、核酸、ペプチド、補酵素、脂質、糖類、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、塩化シアヌル、キニーネ、p-安息香酸水銀、ボロン酸フェニル、及びアルデヒド、芳香族アミン、ナイトレン、マレイミド、カルボン酸、イソシアナート、ジエチルアミノエチル、第4級アミノエチル、第4級アンモニウム、カルボキシメチル、スルホプロピル、スルホン酸メチル、ブチル、オクタール、及びフェニルからなる群から選択される官能基を有する化合物、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものである。
【0044】
ガラスコーティングされたマイクロワイヤーは、当該分野で知られている任意の適切な方法、例えばTaylor-Ulitovski法(Fizika Metallov I Metallovedenein 1987, 67;73)により調製することができる。種々の金属組成のコア部が使用されてよく、また種々の組成のコーティングガラスが使用されてもよい。
【0045】
上述した機能化されたガラスコーティングマイクロワイヤー支持体は、次の工程を含むプロセスにより調製することができる:(i)ガラスコーティングされたマイクロワイヤー支持体を提供し;(ii)その表面を酸化させ;(iii)得られた酸化したマイクロワイヤーの表面を活性化させ;及び(iv)工程(iii)で付着したリンカーに対し、リガンドの共有又は非共有的カップリングを介し、適切なリガンドを用いて機能化させる。
【0046】
好ましくは、酸化工程(ii)は、H/NH水(1:4)を用いた処理、続いて濃HSOを用いた処理を含む。また、他の酸化条件を使用することもできる(J. Am. Chem. Soc;2003, 125, 12096;Langimur, 2004, 20, 7753; Anal. Chem.;1993, 65, 1635;J. Am. Chem. Soc;1996, 118, 9033を参照)。
【0047】
好ましくは、活性化工程(iii)は、リガンドに共有又は非共有的(静電気的、親水性的、疎水性的又は親和的相互作用)カップリングをするのに適切な官能基を含むマイクロワイヤーの表面に適切なリンカーを付着させることを含む。マイクロワイヤー支持体の活性化工程(iii)は、単一工程で又はいくつかの反応工程を介して実施することができる。例えば、活性化工程(iii)は、次の工程を含むプロセスにより実施することができる:(iii-1)酸化したマイクロワイヤーをシラン化合物に反応させ;(iii-2)マレイミド、カルボキシル又はイソシアナート基を有する化合物に、工程(iii-1)の結果得られたマイクロワイヤー製品を反応させる。好ましいシラン化合物は、3-アミノプロピルエトキシシラン、7-オクタ-1-エニルトリクロロシラン及び3-イソシアノテプロピルトリエトキシシランである。
【0048】
機能化工程(iv)は、静電気的相互作用、親水性的相互作用、疎水性的相互作用、親和的相互作用、又は共有結合を介して、マイクロワイヤー支持体の表面に付着したリンカーを、リガンドにカップリングさせることで実施することができる。カップリングは、次の組合せの任意のものを使用して達成することができる:
a)リガンドの共有的カップリング;
a.1)リガンド上のアミン官能基と、表面上のアルデヒド官能基とのイミン結合を介した結合;
a.2)リガンド上のアミン官能基と、塩化シアヌルで官能化された表面の求核置換を介した結合;
a.3)リガンド上のアミン官能基の、表面上のキノン官能基へのマイケル付加を介した結合;
a.4)リガンド上のチロシン又はヒスチジン残基の、表面に結合した芳香族アミンへの、アゾ基を介した結合;
a.5)リガンド上のアミン残基の、フェニルアジド基の光化学活性化を介して生じた表面上のナイトレン官能基への結合;
a.6)リガンド上のチオール官能基の、シロキサン架橋、ジスルフィド結合又はマイケル付加を介した、表面上のp-安息香酸水銀、ヨードアセトアミド又はマレイミド基への結合;
a.7)リガンド上のシス-ジオール部位(糖タンパク質の糖類上に存在)は、表面上のフェニルボロン酸基に結合可能;
a.8)表面上のカルボキシル又はイソシアナート基の、リガンド上のアミン基への結合;
b)リガンドの非共有的カップリング;
b.1)フマル酸レダクターゼ、及び表面上のドデシルチオールとオクタデシルチオールの自己集合単分子層の間に充填されたチオールを介した相互作用等の、静電気的相互作用;
b.2)表面上のジミリストイルホスファチジルエタノールアミンの層へのリポソームの相互作用を介した、表面に結合してリポソームに埋設されたATPアーゼ等の、親水性的又は疎水性的相互作用;
b.3)補因子類似体でコーティングされた表面に結合した補因子依存性酵素、及びFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)でコーティングされた表面に結合したFAD-依存性酵素、コリンでコーティングされた表面に結合したリガンド上のコリン-結合ドメイン、コンカナバリンAでコーティングされた表面に結合したアルファ-D-マンノピラノース含有リガンド、レシチンでコーティングされた表面に結合した糖タンパク質、アビジン又はストレプトアビジンでコーティングされた表面に結合したビオチン標識リガンド、抗原でコーティングされた表面に結合した抗体標識リガンド等の、親和的相互作用。
【0049】
ここに記載された静的支持床吸着法は、種々の用途に使用することができる。よって、
(i)マイクロワイヤー支持体の表面に酵素を固定化することによる生体触媒反応器として;
(ii)生体触媒であろうがなかろうが、マイクロワイヤー支持体の表面に結合した触媒の使用により、化学的又は生物学的標的分子を修飾させるため;
(iii)マイクロワイヤー支持体の表面に結合した物質と相互作用する、化学的又は生物学的標的分子の相互作用を介して、それらが含まれる流体から化学的又は生物学的標的分子を分離するため;
(iv)マイクロワイヤー支持体の表面に結合した触媒及び相互作用する物質の双方又はそれらの一方のみである、相互作用する物質に結合して、化学的又は生物学的標的分子上の触媒の作用を介して、流体に含有される化学的又は生物学的標的分子を同時に分離及び修飾するため;
(v)上述した任意の手段により、流体に含有される化学的又は生物学的標的分子とさらに相互作用する化学的又は生物学的標的分子を固定化させるため;
(vi)マイクロワイヤー支持体の表面に結合した細胞である、流体の成分上の細胞活性を介して、流体の組成を修飾するため;
(vii)マイクロワイヤー支持体の表面上で細胞が分割することによる、分割した細胞の数を増加させるため;
(viii)マイクロワイヤー支持体の表面に結合した化学的又は生物学的標的分子と、流体に含有される化学的又は生物学的標的分子とを交換することによる、流体の組成を修飾するため;
(ix)マイクロワイヤー支持体、すなわち固相合成支持体として、その表面に結合した分子物質上の一又は一以上の薬剤の作用を介した、一又は複数の工程を含む化学的反応体を開発するため;
(x)マイクロワイヤー支持体の表面に固定化された異なった物質の活性化を介して、又はマイクロワイヤー支持体を通して流体に伝えられる物理的力を介して、流体の物理的特性を修飾するため;
(xi)プラスミドDNAに挿入される標的配列に対して相補的である適切なオリゴヌクレオチドで機能化されたマイクロワイヤー支持体の表面と、該プラスミドDNATの相互作用を介して、プラスミドDNAを精製するため;
(xii)プラスミド、制限酵素及びリガーゼ酵素に挿入される標的配列に対して相補的である適切なオリゴヌクレオチドを用いたマイクロワイヤー支持体の表面の機能化を介して、プラスミドを生体触媒的に修飾するため;
(xiii)マイクロワイヤー支持体の表面上に細胞を固定し培養するため(それらの表面に細胞を固定化したこれらのマイクロワイヤーは、細胞増殖に対するバイオ発酵漕として使用することができる);
(xiv)その方法に適切なプライマーを固定化することによる固相PCRのため;
(xv)マイクロワイヤー支持体の表面上に汚染因子を固定化することにより、流体を浄化するため;
(xv)懸濁液中の固形物濃度が高い及び/又は流速が速い粘性流体を用いて処理する場合の、上述の用途の任意のもののため;
の方法に使用することができる。
【0050】
本方法の特定の実施態様では、マイクロワイヤー支持体の適度な攪拌及びマイクロワイヤー支持体の表面に結合した物質の溶出を補助し、又はマイクロワイヤー支持体の温度を調節するために、磁場又は電流が静的支持床を通って印加される。マイクロワイヤーを通って電流が印加される場合に、静的支持床の温度を調節することができる。
【0051】
さらに、磁場が静的支持床に印加される場合、本発明の方法は、マイクロワイヤー支持体と磁気の影響を受けやすい粒子との間に生じる磁気相互作用により、それらが含まれている流体から、磁気の影響を受けやすい粒子を分離するのに使用することができる。
【0052】
当該分野で知られている他のクロマトグラフィー方法と比較して、本発明に記載された静的支持床吸着法は、表2に示す改善された特徴を有する。
【表2】

【0053】
よって、SSB技術の主な特徴は、そのスケーラビリティである。マイクロワイヤー支持体は、所望の長さに作製され、所望するカラム直径を満たすように組み立てることができる。標準的なサイズの他に、装置は特定の要求を満たすようにカスタマイズすることができる。さらに、SSB技術は、
− 下流のプロセシング工程数を低減;
− 流速に無関係な操作パラメーター;
− 粒状化プロセス支持体より比表面積が大きい;
という3つの主要な改善点を示す。
【0054】
SSBは:
− 競合する技術よりも分解能が良好;
− 非常に粘性の液体及び固形物含量に適している;
− 生成物への支持体粒子の漏出を防止;
という改善されたプロセス性を介して生産を容易にするシームレス技術である。
【0055】
よって、ここに記載されたような、流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質を精製、分離、検出、修飾、及び/又は固定化するための方法によれば、標的物質を含む流体はSSB装置を通過し、ついで標的物質はマイクロワイヤー支持体の修飾された表面の機能的コーティングに特異的に結合し、及び/又はマイクロワイヤー支持体の表面に存在するリガンドと相互作用し、その間、不純物と流体は障害なく通過する。必要ならば、化学的又は生物学的修飾を標的物質に実施することができる。場合によっては、流路の洗浄及びサンプル流体の所望しない成分及び不純物の排出の付加的な工程を実施することが可能で、最後に、得られた化学物質又は生物学的物質を溶出又は脱着させ、回収する。
【0056】
好ましい実施態様では、マイクロワイヤー支持体は、付着細胞の増殖にとって優れた表面を提供する。使い捨てSSB装置は、滅菌した増殖表面と新鮮培地の連続供給がなされるように設計される。該システムは、連続した細胞外タンパク質の産生と細胞生成に続く収集工程に適切である。
【0057】
他の好ましい実施態様では、固相合成のための固形支持体としてSSBを使用することで、改善されたプロセス性と共に、より大なる比表面積と、より速い流れ条件を提供することにより、固相合成の生産性の増加を示す。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲において「含む」なる用語及び該用語の変形例、例えば「含有している」等は、他の技術的特徴、添加剤、成分、又は工程を排除することを意図してはいない。本発明のさらなる目的、利点及び特徴は、本明細書の精査の際に、当業者には明らかになるであろうし、又は本発明の実施により知得されうる。以下の実施例は例示のために提供するもので、本発明を限定することを意図しているものではない。
【実施例】
【0059】
実施例1.マイクロワイヤー支持体の製造例
外径24.4マイクロメーターの連続したマイクロワイヤー支持体の製造について、以下に記載する:
外径が7〜10mmで、壁厚が1.0〜1.4mmであり、69%のコバルト、4%の鉄、1%のニッケル、13%のホウ素、及び11%のケイ素からなる金属合金が充填されたガラス管を、マイクロワイヤー製造機の誘導オーブンに、0.9〜1.5mm/分の供給速度で供給した。オーブン温度を1260〜1330℃に設定した。得られた金属充填マイクロワイヤー支持体を流水で冷却し、150〜250m/分の巻回速度で巻き、使用するまで室温で保管されるスプールを形成した。
マイクロワイヤー支持体のガラス層の厚みとマイクロワイヤー支持体の全直径は、誘導オーブンの温度、巻回速度及び供給速度を調節することにより、変更可能である。
【0060】
実施例2.EcoR I活性化マイクロワイヤー支持体の製造(C-S結合):
マイクロワイヤー支持体を、室温で30分、7容量の硫酸と3容量の30%過酸化水素の混合物で処理した。ついで、支持体を流水、次にエタノール、さらにクロロホルムで十分にすすいだ。最後に、支持体を窒素流で乾燥させた。ついで、マイクロワイヤー支持体を、室温で窒素雰囲気下、水に2%の(3-アミノプロピル)トリエトキシシランが入ったもので処理した。次に、支持体をジクロロメタンですすぎ、窒素流に暴露した。エタノールで洗浄した後、マイクロワイヤー支持体を、2mMの4-マレイミド酪酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルがエタノールに入ったもので16時間処理し、エタノールですすいだ。ついで、マイクロワイヤー支持体を、TEバッファー、pH8.0(0.1Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと1mMのエチレンジアミン四酢酸が水に入ったもの;塩酸でpH8.0に調節)において16時間、マイクロワイヤー支持体メートル当たり600単位のEcoR I酵素で処理し、TEバッファーで洗浄した。
【0061】
実施例3.EcoR I感受性プラスミドの処理への、EcoR I活性化マイクロワイヤー支持体の応用
EcoR I酵素に対して唯一の標的部位を含むpCMS-EGFPプラスミド(BD Biosciences, カタログ番号6101-1)2.5μg/mLを、50mMのNaCl、100mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、10mMのMgCl及び0.025%のトリトンX-100を含有する水溶液、pH7.5、37℃において4時間、EcoR I活性化マイクロワイヤー支持体の活性に暴露させた。プラスミド分子上におけるEcoR I活性化マイクロワイヤー支持体の活性を、アガロースゲル電気泳動により分析した。不活性化マイクロワイヤー支持体をネガティブコントロールとして使用した。
【0062】
プラスミド分子上におけるEcoR I活性化マイクロワイヤー支持体の活性の電気泳動分析
EcoR I活性化マイクロワイヤー支持体で処理した後に得られた600μLのサンプルの上清を70%エタノールに沈殿させ、水に溶解させ、作動用バッファーとしてTAEを使用し、TAE(0.04Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;0.001Mのエチレンジアミン四酢酸、氷酢酸でpH8.5に調節)に0.8%のアガロースゲルが入ったものにおいて、40分、10.5V/cmで電気泳動した。TAEに0.5μg/mLの臭化エチジウムが入ったものにおいて20分、ゲルを染色し、紫外線下で観察した。EcoR I活性化マイクロワイヤー支持体のみが、プラスミド分子上で何らかの効果を有していた。
【0063】
実施例4.アビジン活性化マイクロワイヤー支持体の製造(アミド結合及び尿素結合):
1容量の33%過酸化水素と4容量の濃縮アンモニアからなる溶液において、マイクロワイヤー支持体を20分インキュベートした。ついで、マイクロワイヤー支持体を水で3回洗浄し、濃硫酸で2回、30分処理した。ついで、マイクロワイヤー支持体を水で十分にすすぎ、水中で10分超音波処理し、エタノールですすぎ、窒素流で乾燥させた。次に、2つの異なる手順、つまり手順1または手順2に従い、アビジン活性化マイクロワイヤー支持体を得た。
【0064】
手順1(アミド結合):
ついで、窒素雰囲気下、室温で16時間、7-オクタ-1-エニルトリクロロシルを2%含有するジクロロメタンにおいて、マイクロワイヤー支持体をインキュベートし、次に、第1にジクロロメタン、第2にメタノール、最後に水ですすいだ。得られたマイクロワイヤー支持体を、0.5mMのKMnO、14.7mMのNaIO、及び3mMのKCOの水溶液において、24時間インキュベートし、ついで水で洗浄し、0.05MのN-ヒドロキシスクシンイミドと0.2MのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミドヒドロクロラードの水溶液を用いて7分処理した。次に、マイクロワイヤー支持体を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.0においてすすぎ、0.2mg/mLのアビジンを含むPBS中で16時間インキュベートした。アビジン活性化マイクロワイヤー支持体を水、ついで20%エタノールで洗浄し、窒素流で乾燥させ、使用するまで室温で保持した。
【0065】
手順2(尿素結合):
ついで、マイクロワイヤー支持体を、窒素雰囲気下、室温で16時間、ジクロロメタンに2%の3-(イソシアナトプロピル)トリエトキシシランが入ったもので処理した。得られたマイクロワイヤー支持体を、0.2mg/mLのアビジンを含むジメチルホルムアミド中において室温で1時間インキュベートし、水で十分にすすいだ。
【0066】
実施例5.ビオチン結合基質の固定化へのアビジン活性化マイクロワイヤー支持体の応用
アビジン活性化マイクロワイヤー支持体のビオチンに結合する能力を、次の方法で分析した。アビジン活性化マイクロワイヤー支持体を、室温で45分、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中において、フルオレセイン-ビオチンコンジュゲートと共にインキュベートした。ついで、支持体をPBSにおいて洗浄し、アビジン活性化マイクロワイヤー支持体の表面においてビオチン-結合フルオレセインにより発光した蛍光を、紫外線下、顕微鏡で観察した。不活性化マイクロワイヤー支持体をネガティブコントロールとして使用した。
【0067】
実施例6.オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体の製造:
手順1(アミド結合):
1容量の33%過酸化水素と4容量の濃縮アンモニアからなる溶液において、マイクロワイヤー支持体を20分インキュベートした。ついで、マイクロワイヤー支持体を水で3回洗浄し、濃硫酸で2回、30分処理した。ついで、マイクロワイヤー支持体を水で十分にすすぎ、水中で10分超音波処理し、エタノールですすぎ、窒素流で乾燥させた。ついで、窒素雰囲気下、室温で16時間、7-オクタ-1-エニルトリクロロシルを2%含有するジクロロメタンにおいて、マイクロワイヤー支持体をインキュベートし、次に、第1にジクロロメタン、第2にメタノール、最後に水ですすいだ。得られたマイクロワイヤー支持体を、0.5mMのKMnO、14.7mMのNaIO、及び3mMのKCOの水溶液において、24時間インキュベートし、ついで水で洗浄し、0.05MのN-ヒドロキシスクシンイミドと0.2MのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミドヒドロクロラードの水溶液を用いて7分処理した。次に、マイクロワイヤー支持体をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.0ですすぎ、マイクロワイヤー支持体表面の平方メートル当たり10nmmolのHN-d(CTT)オリゴヌクレオチドを含むPBSにおいて、16時間インキュベートした。オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体を水、ついでエタノールで洗浄し、窒素流で乾燥させ、使用するまで室温で保持した。
【0068】
手順1(アビジン-ビオチン架橋):
また、オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体を、0.2μMのビオチン-d(CTT)オリゴヌクレオチドを含有する、pH7.5のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)において、アビジン活性化マイクロワイヤー支持体をインキュベートし、続いてPBSにおいて洗浄工程を行うことにより製造した。
【0069】
実施例7.細胞増殖のための基質としてのマイクロワイヤー支持体の応用
滅菌したマイクロワイヤー支持体を、真核細胞増殖用の培地を入れた容器において、2時間インキュベートした。全てのプロセスを滅菌状態で実施した。ついで、mL当たり1.5×10細胞である真核細胞株の懸濁液を、マイクロワイヤー支持体が入った容器に注ぎ、5%のCO雰囲気において、37℃で一晩インキュベートした。次の日、培地を新鮮な培地と取り替え、培地を連続交換するためのポンプシステムに容器を連結した。マイクロワイヤー支持体の表面での細胞増殖を、顕微鏡下でマイクロワイヤー支持体の表面上の細胞を直接観察することにより確認した。
【0070】
実施例8.静的支持床(SSB)装置の構築へのマイクロワイヤー支持体の応用
マイクロワイヤー支持体をベースにした装置、つまり静的支持床(SSB)装置を製造するために、マイクロワイヤー支持体を、多くの連続した平行マイクロワイヤー支持体部材が装置の全機能的ユニットの頂部から底部に向けて整列するように配置した(ここで、機能的ユニットは、全マイクロワイヤー支持体部材のみを含む装置の長さであり、マイクロワイヤー支持体部材は、機能的ユニットの頂部から底部に延びるマイクロワイヤー支持体のあらゆる別個の長さである)。マイクロワイヤー支持体装置の入口を、ケイ素配管を介し、フィード部を具備する容器に連結し、また容器の出口を、さらにケイ素配管を介し、バルブ調節に応じて生成物貯留部又は廃棄のいずれかに導く三方弁に連結した。
【0071】
実施例9.プラスミドDNAの精製への、オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体の応用
2つのオリゴヌクレオチド、d[GATC(GAA)17GTATACT](配列番号:2)及びd[GATCAGTATAC(TTC)17](配列番号:3)を5'-ホスホリル化及び共にアニール化して、二本鎖のDNA親和性配列を形成させた。プラスミドpCMS-EGFP/GAA17を、pCMS-EGFPのBgI II制限部位に、DNA親和配列(配列番号:2)を挿入することにより構築した。オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体を、結合バッファー(2MのNaCl、0.2Mの酢酸ナトリウム、pH4.5)において30分間平衡にした。ついで、オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体を、10μg/mLのプラスミドpCMS-EGFP/GAA17を含む結合バッファー中において室温で2時間インキュベートした。プラスミドpCMS-EGFP/GAA17は、オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体上で、(CTT)オリゴヌクレオチド配列(配列番号:1)に結合する(GAA)17オリゴヌクレオチド配列(配列番号:4)を含む。ついで、支持体を結合バッファーで洗浄し、顕微鏡分析用にサンプルを取り出した。次に、支持体を溶出バッファー(1Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;0.05Mのエチレンジアミン四酢酸、pH9.5)中において1時間インキュベートした。溶出バッファーに回収された物質は、蛍光分光分析により測定して、1.2μg/mLのプラスミドpCMS-EGFP/GAA17を含んでいた。相補性ヌクレオチド配列(GAA)17を欠くプラスミドpCMS-EGFPを、ネガティブコントロールとして使用した。
【0072】
プラスミドが充填されたマイクロワイヤー支持体の分析:
上述したプラスミドpCMS-EGFP/GAA17が充填されたオリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体を、可視化バッファー(0.1MのNaCl、0.02Mの酢酸ナトリウム、pH4.5)で洗浄した。ついで、支持体を、可視化バッファーにDNA結合蛍光試薬が入ったPicoGreen(Molecular Probes;USA)の1:400希釈液中において10分間インキュベートした。ついで支持体を可視化バッファーで洗浄し、蛍光下、顕微鏡で観察した。支持体の表面上で、プラスミドpCMS-EGFP/GAA17に結合したDNA結合蛍光試薬からの発光のため、pCMS-EGFP/GAA17で処理されたオリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体のみが蛍光を示した。
【0073】
実施例10.固定化プラスミドDNA分子の修飾へのSSB吸着の応用
BsrBI制限酵素とd(CCT)オリゴヌクレオチドで活性化されたマイクロワイヤー支持体を配置し、静的支持床(SSB)装置を形成し、このSSB装置を、先の実施例に記載したように、ケイ素配管、ポンプ及びバルブを使用して容器に連結した。(CTT)に相補的なDNA配列とBsrBI酵素に対する2つの標的部位を含み、10μg/mLのプラスミドpCMS-EGFP/GAA17を含む結合バッファー(2MのNaCl、0.2Mの酢酸ナトリウム、pH4.5)を、1cm/分で2時間、室温にて、システムを通してポンピングした。ついで、システムの供給側を制限バッファー(0.1MのNaCl、0.02Mの酢酸ナトリウム、10mMのMgCl、pH5.5)に2時間の間、交換した。次にシステムの供給側を、溶出バッファー(1Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;0.05Mのエチレンジアミン四酢酸、pH9.5)に交換し、その間、次の実施例に記載するように磁気攪拌機を適用した。プラスミド分子上における活性化SSBの効果を、EcoR IでプラスミドpCMS-EGFP/GAA17の修飾された分子を処理した後、アガロースゲル中において得られたDNAフラグメントのサイズを測定することにより評価した。
【0074】
実施例11.SSB装置での粒状物質の分離
以下の実施例に記載するように、粒子を、それらが含まれている流体から分離するために該システムを使用することができる。
マイクロワイヤー支持体をベースにしたSSB装置を上述のようにして構築した。この装置を、先の実施例に記載したようにしてシステムに取り付けた。水中に磁気粒子が入った懸濁液を、SSB装置を通して、1mL/分の流れで連続してポンピングし、その間、固定磁石を使用して外部磁場を印加した。磁気粒子がマイクロワイヤー支持体の表面にきたとき、マイクロワイヤー支持体との磁気的相互作用を介して該磁気粒子を検出することができる。SSB装置を通過する磁気粒子の濃度が、比濁法により測定して、供給懸濁液のものと同じ場合、流入流れを水と交換し、磁石を引き上げて外部磁場を排除した。磁気粒子はSSBシステムの生成物貯留部に回収した。
【0075】
実施例12.静的支持床の磁気振盪
磁気振盪手順は、静的支持床プロセス中、マイクロワイヤー支持体からの溶出又は脱着工程を補助するように考案された。これは、次の記載に実証される:オリゴヌクレオチド活性化静的支持床を、マイクロワイヤー支持体装置の製造について記載したように配置した。結合バッファー(2MのNaCl、0.2Mの酢酸ナトリウム、pH4.5)に10μg/mLのプラスミドpCMS-EGFP/GAA17が入った溶液を、1mL/分で2時間ポンピングすることにより、システムを通して再循環させた。ついで流れを洗浄結合バッファー(0.1MのNaCl、0.02Mの酢酸ナトリウム、pH4.5)と、5分間交換した。次に、振動する外部磁場を印加することにより、振盪運動をSSBに加えつつ、流入流れを溶出バッファー(1Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;0.05Mのエチレンジアミン四酢酸、pH9.5)に交換した。溶出液に回収された物質は、蛍光分光分析により測定して2.1μg/mLのプラスミドpCMS-EGFP/GAA17を含んでいた。
【0076】
実施例13.マイクロワイヤー支持体を通して電流を印加することにより誘導される温度シフトを使用したSSBでのDNAの固相合成
プライマー活性化マイクロワイヤー支持体を、HN-d(CTT)オリゴヌクレオチド(配列番号:1)に対して、HN-d(TTTGTGATGCTCGTCAGGG)オリゴヌクレオチド(配列番号:5)の置換のみが異なるものを用い、オリゴヌクレオチド活性化マイクロワイヤー支持体についての前述の実施例に記載されたようにして製造した。このプライマー活性化マイクロワイヤー支持体を、前述の実施例に記載されたように、静的支持床(SSB)を製造するために使用した。静的支持床の一端において、全てのマイクロワイヤー支持体部材の金属製コア部を、電源の陽極に接続する一方、静的支持床の他端において、全てのマイクロワイヤー支持体部材の金属製コア部を、電源の陰極に接続した。このSSBを、前述の実施例に記載したようなSSB装置が製造されるように配置し、そこでは、床の両端の電気的接続は、SSB装置の内部空間からは電気的に絶縁されている。電極間に異なる電流を印加することにより、SSBの温度を30℃〜95℃に調節することができた。2つのサーモスタット装置をSSB装置の端部に接続し、このような方法で、流入及び流出する液体の温度を30℃〜95℃に調節することができた。これらの装置は、SSB装置に接続される排出配管を囲む水で満たされたコイルからなる。200μMのdNTP、20mMのTris-HCl、10mMのKCl、10mMの(NH)SO、0.1%のトリトン(Triton)X-100、0.3単位/mLのTaq DNAポリメラーゼ、0.5μMのd(TTTGTGATGCTCGTCAGGG)(配列番号:5)及び1pg/mLの直鎖状二重鎖DNA断片で、5'末端に配列TTTGTGATGCTCGTCAGGGAATTC(配列番号:6)、3'末端に配列GAATTCCCTGACGAGCATCACAAA(配列番号:7)を有するものを含むpH8.8の水溶液を、上述したシステムを通して連続的に再循環させ、それぞれ90℃で2分、55℃で2分、72℃で5分からなる30の温度シフトサイクルを適用した。ついで、1単位/mLのEcoR I酵素をシステムに収容されている溶液に添加し、1時間、温度を37℃に保持した。最後に、システムに収容される溶液を回収し、ゲル濾過クロマトグラフィーシステムに適用し、酵素及び残留した反応成分から増幅した二重鎖DNA断片を分離した。
【0077】
実施例14.細胞増殖用の静的支持床(SSB)装置の構築へのマイクロワイヤー支持体の応用
13束のマイクロワイヤー支持体を、次の方法で製造した:11cm長さのマイクロワイヤー支持体を、グループ毎に100の平行マイクロワイヤー支持体の13グループに配置した。束を、マイクロワイヤー支持体の一側の端部を互いに結合させ、溶融したプラスチック材料を適用することにより、それぞれのグループのマイクロワイヤー支持体から製造した。ついで、同じ手順をマイクロワイヤー支持体の他端に適用した。
【0078】
0.2μmの孔サイズ、10.75cm長さで、0.5mmのルーメンを有する中空繊維状の形態をした8つのフィルター膜を、各繊維の一端のルーメンが、その端部で繊維をつぶすことによりブロックされ、他端が開放したままになるようにして、調製した。
【0079】
ついで、束とフィルター膜を、4つのフィルター膜がアラインメントの一側で開口端を有し、他の4つが他の側で開口端を有するように、互いに平行に整列させた。次に、アラインメントの一側の全ての端部を、直径が15mmで5mm厚のプラスチックディスクに埋設した。アラインメントの他の側の端部を、中心が穿孔されていることを除けば上述したものと同様のディスク中に埋設し、ディスクを貫通する1mmの穴からなる接種ポートを作製した。束の端部は、ディスクの他側の表面に到達する点まで、正確にディスクに通した。フィルター膜の開口端は、ディスクの他の側から開口端が利用される点まで、正確にディスクに通した。フィルター膜の閉塞端を、ディスクの両側面間の距離の半分までディスクに通した。
【0080】
束、フィルター膜及びディスクを含むこの配置を滅菌し、ディスクの穴を取り外し可能なシールでシールした。ついで、配置を、15mmの内径を有する11cm長の滅菌ガラスシリンダーに滅菌条件下で導入した。ついで、ディスク及びガラスシリンダー開口部を共にシールし、細胞増殖用SSB装置を作製した。
【0081】
非穿孔ディスクを具備する細胞増殖用SSB装置の端部を、滅菌条件下で、ケイ素配管に連結し、37℃で、5%のCO雰囲気で飽和した培地を、細胞増殖SSB装置が部分的に満たされるまで、管を通して上方に供給した。ついで、mLあたり1.5×10細胞の真核細胞株の懸濁液を、接種ポートを介して細胞増殖用SSB装置に注入し、接種ポートをシールした。シリコーン配管を細胞増殖用SSB装置の開口側に連結し、37℃で、5%のCO雰囲気で飽和した培地を、細胞増殖用SSB装置に連続して供給した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質を精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化するための静的支持床であって、該静的支持床は、それらの端部が固定された一又は複数のマイクロワイヤー支持体を具備し、これらのマイクロワイヤー支持体は、中心コア部と一又は複数のコーティング層に分離した多層構造を有し、かつ標的化学物質又は標的生物学的物質の付着に適したものであり、但し、磁場が該静的支持床に作用するならば、マイクロワイヤー支持体と磁気の影響を受けやすい粒子との間に生じる磁気相互作用により、流体中に存在する磁気の影響を受けやすい粒子を分離及び/又は検出するために磁場は使用されない静的支持床。
【請求項2】
マイクロワイヤーの表面が、
a)リガンドの付着;又は
b)機能的コーティングでコーティングされること
により修飾されており、このような精製、分離、検出、修飾及び/又は固定化が、マイクロワイヤー支持体の表面に存在する機能的コーティング又はリガンドに標的化学物質又は標的生物学的物質を付着させることを介してなされる請求項1に記載の静的支持床。
【請求項3】
中心コア部とコーティング層が、異なった物質から作製され、該物質が、ガラス、金属、セラミック、ポリマー及びプラスチック材料からなる群から選択される請求項1又は2に記載の静的支持床。
【請求項4】
前記マイクロワイヤー支持体の中心コア部が金属製であり、前記マイクロワイヤー支持体の少なくとも一のコーティング層がガラス製である請求項3に記載の静的支持床。
【請求項5】
前記静的支持床が、0.5cm〜1.5mの範囲の最大断面寸法と、0.5cm〜10mの範囲の長さを有する請求項1から4のいずれか一項に記載の静的支持床。
【請求項6】
最大断面寸法が0.5cm〜50cmの範囲であり、長さが5cm〜1.5mの範囲である請求項5に記載の静的支持床。
【請求項7】
マイクロワイヤー支持体が1μm〜1000μmの範囲の最大断面寸法を有し、最大断面寸法に対する長さの比が5を越える請求項1から6のいずれか一項に記載の静的支持床。
【請求項8】
マイクロワイヤー支持体が1μm〜100μmの範囲の最大断面寸法を有し、最大断面寸法に対する長さの比が50を越える請求項7に記載の静的支持床。
【請求項9】
マイクロワイヤー支持体の最大断面寸法に対する長さの比が500を越える請求項7又は8に記載の静的支持床。
【請求項10】
マイクロワイヤー支持体の最大断面寸法に対する長さの比が1000を越える請求項7から9のいずれか一項に記載の静的支持床。
【請求項11】
任意の与えられた個々のマイクロワイヤー支持体が、任意の他の隣接したマイクロワイヤー支持体と0°〜45°の角度をなす請求項1から10のいずれか一項に記載の静的支持床。
【請求項12】
任意の与えられた個々のマイクロワイヤー支持体と、任意の他の隣接したマイクロワイヤー支持体との間の角度が0°〜10°である請求項11に記載の静的支持床。
【請求項13】
静的支持床が流路の内容積を占めている請求項1から12のいずれか一項に記載の静的支持床。
【請求項14】
マイクロワイヤー支持体の表面が、ポリマー、タンパク質、ゼラチン、又はコラーゲンのコーティングからなる群から選択される機能的コーティングで表面をコーティングすることにより修飾されている請求項1から13のいずれか一項に記載の静的支持床。
【請求項15】
マイクロワイヤー支持体の表面が、直接に又はリンカーを介して、マイクロワイヤー支持体の表面にリガンドを結合させることにより修飾されている請求項1から13のいずれか一項に記載の静的支持床。
【請求項16】
リガンドが、細胞、生体組織、抗体、抗生物質、抗原、核酸、ペプチド、ホルモン、補酵素、生体触媒、化学触媒、化学反応体、脂質、糖類、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、ジエチルアミノエチル、第4級アミノエチル、第4級アンモニウム、カルボキシメチル、スルホプロピル、スルホン酸メチル、ブチル、オクタール、及びフェニルからなる群から選択される官能基を有する化合物、並びにそれらの混合物からなる群から選択される請求項15に記載の静的支持床。
【請求項17】
リガンドが、細胞、生体組織、抗体、抗生物質、抗原、核酸、ペプチド、ホルモン、補酵素、生体触媒、化学触媒、化学反応体、脂質、糖類、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項15又は16に記載の静的支持床。
【請求項18】
リンカーが、ポリマーコーティング、タンパク質コーティング、ゼラチンコーティング、コラーゲンコーティング、細胞、抗体、抗原、核酸、ペプチド、補酵素、脂質、糖類、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオチド、塩化シアヌル、キニーネ、p-安息香酸水銀、ボロン酸フェニル、及びアルデヒド、芳香族アミン、ナイトレン、マレイミド、カルボン酸、イソシアネート、ジエチルアミノエチル、第4級アミノエチル、第4級アンモニウム、カルボキシメチル、スルホプロピル、スルホン酸メチル、ブチル、オクタール、及びフェニルからなる群から選択される官能基を有する化合物、並びにそれらの混合物からなる群から選択される請求項15に記載の静的支持床。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の静的支持床に組み込まれるマイクロワイヤー支持体であって、該マイクロワイヤー支持体は、中心コア部と一又は複数のコーティング層に分離した多層構造を有しており、ここでマイクロワイヤーの表面が、
a)リガンドの付着;又は
b)機能的コーティングでコーティングされること
により修飾されており、但し機能的コーティングがポリマーコーティングではないマイクロワイヤー支持体。
【請求項20】
中心コア部とコーティング層が、異なった物質から作製され、該物質が、ガラス、金属、セラミック、ポリマー、及びプラスチック材料からなる群から選択される請求項19に記載のマイクロワイヤー支持体。
【請求項21】
前記マイクロワイヤー支持体の中心コア部が金属製であり、少なくとも一のコーティング層がガラス製である請求項19又は20に記載のマイクロワイヤー支持体。
【請求項22】
最大断面寸法が1μm〜1000μmの範囲であり、最大断面寸法に対する長さの比が5を越える請求項19から21のいずれか一項に記載のマイクロワイヤー支持体。
【請求項23】
表面が、ポリマー、タンパク質、ゼラチン、又はコラーゲンのコーティングで表面をコーティングすることにより修飾されている請求項19から22のいずれか一項に記載のマイクロワイヤー支持体。
【請求項24】
表面が、直接又はリンカーを介して、マイクロワイヤー支持体の表面にリガンドを結合させることにより修飾されている請求項19から22のいずれか一項に記載のマイクロワイヤー支持体。
【請求項25】
請求項1から18のいずれか一項に記載の静的支持床を使用し、流体中に存在する標的化学物質又は標的生物学的物質を精製、分離、修飾、及び/又は固定化する方法であって、該方法が:
a)静的支持床を含む流路の内容積中に標的化学物質又は標的生物学的物質を含む流体を充填し;
b)静的支持床のマイクロワイヤー支持体に標的化学物質又は標的生物学的物質を付着させ;
c)場合によっては、標的物質に化学的又は生物学的修飾を実施し;
d)場合によっては、流路を洗浄し、流体の所望しない成分及び不純物を排出し;
e)得られた化学物質又は得られた生物学的物質を溶出させることを含み、
但し、磁場が該静的支持床に作用するならば、マイクロワイヤー支持体と磁気の影響を受けやすい粒子との間に生じる磁気相互作用により流体中に存在する該磁気の影響を受けやすい粒子を分離及び/又は検出するために磁場は使用されない方法。
【請求項26】
電流が静的支持床に印加される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
システムの振盪及び/又は加熱のために磁場が静的支持床に印加される請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
細胞の固定化及び培養のための、請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
工程a)が、培地と、少なくとも一の細胞株の懸濁液を充填し、場合によっては静的支持床を含む流路の内容積へ培地を連続して充填することを含む請求項28に記載の方法。

【公表番号】特表2009−502464(P2009−502464A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523334(P2008−523334)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064483
【国際公開番号】WO2007/012605
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508028346)
【Fターム(参考)】