説明

標識の補修方法

【課題】例えば道路標識等の各種標識の補修方法、特に標識の表面に記載した文字や記号または図形等の表記部と、その表記部以外の素地部とを、それぞれ異なる色彩で表わした標識の補修方法に関するもので、上記のような標識が経年変化等により劣化した場合にも標識表面の表示パネルを交換したり標識全体を取替えることなく容易・安価に補修する。
【解決手段】標識の表面に文字や記号または図形等を表記し、その文字や記号または図形等の表記部12とそれ以外の素地部11とを、それぞれ異なる色彩で表した標識の補修方法であって、上記表記部12または素地部11のうちの少なくともいずれか一方と同彩色で透光性を有する補修フィルム13を、上記表記部12および素地部11とを覆うようにして、それらの表面に貼着したのち、上記補修フィルム13の上記表記部12または素地部11に対応する部分を切り抜き除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路標識等の各種標識の補修方法に関する。更に詳しくは、標識の表面に記載した文字や記号または図形等の表記部と、その表記部以外の素地部とを、それぞれ異なる色彩で表わした標識の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来たとえば高速道路等の運転者向けの標識としては、昼夜の視認性を考慮して、文字や図形等の表記部が白色で素地部が緑色または青色、あるいは表記部が緑色または青色で素地部が白色の内部照明式標識が多く用いられている。上記のような標識は経年劣化によって、緑色または青色部が次第に褪色して白色化することは避けられず、特に昼間走行時の視認性が低下する等の不具合がある。
【0003】
このような不具合に対する従来公知の技術としては、下記特許文献1に示すように、防汚機能のあるシート材料を標識の表面にコーティングする方法がある。しかし、こうしたコーティングがなされていない標識が劣化したり或いはコーティングがなされていても劣化した場合には、結局、劣化した標識自体を取替えることでしか対応できないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−81158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、道路標識等の標識が経年変化等により劣化した場合にも、標識表面の表示パネルを交換したり標識全体を取替えることなく、容易・安価に再生することのできる標識の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明による標識の補修方法は、以下の構成としたものである。即ち、道路標識等の標識の表面に記載した文字や記号または図形等の表記部と、その表記部以外の素地部とを、それぞれ異なる色彩で表示した標識の補修方法であって、上記表記部または素地部のうちの少なくともいずれか一方の色彩と同系色で透光性を有する補修フィルムを、上記表記部および素地部とを覆うようにして、それらの表面に貼着したのち、上記補修フィルムの表記部または素地部に対応する部分を切り抜き除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のように本発明による標識の補修方法は、標識の表記部または素地部のうちの少なくともいずれか一方の色彩と同系色で透光性を有する補修フィルムを、上記表記部および素地部とを覆うようにして貼着したのち上記補修フィルムの表記部または素地部に対応する部分を切り抜き除去するだけの極めて簡単な作業で容易・迅速に標識を補修することができる。特に、本発明は標識全体を取替えなくてよいので、材料費や工事費が安価であり、しかも産業廃棄物が出ないので、その処分費も不要となる。また作業が容易で短時間に施工できるので、例えば道路標識等にあっては、工事のために自動車の通行を制限する時間が少なくて済む。さらに標識の表面に補修フィルム貼ることによって、クラックや傷等が補修されて耐久性が向上すると共に、標識の表面が平滑になって乱反射しなくなるため、昼夜両方の視認性が向上する。さらにまた、飛散防止効果があり、万一損傷した場合にも標識の破片が落下することを避けることができる。
【0008】
特に、道路標識等において汎用的に用いられる緑色または青色は、紫外線による経年劣化によって白色化(色褪せ)が激しいが、地部が緑色または青色で白抜き文字を表示した劣化標識において、地部にポリ塩化ビニル製の光透過フィルムシートを貼着した場合、標識自体を新規のものと取替える必要なくこれと同等の視認性が回復される。なお、ポリ塩化ビニルのフィルムシートの場合、工場生産時に耐候性が所定の期間保証されており、さらに、将来再度貼り直しをすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を高速道路等に用いる道路標識に適用した場合を例にして図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。図1(a)は本発明を適用した道路標識の補修前の斜視図、同図(b)は補修している状態の斜視図、同図(c)は補修後の斜視図である。
【0010】
本実施形態の道路標識Aは、全体略箱状の本体ケース1内に蛍光ランプ等の照明器(不図示)を内蔵した、いわゆる内部照明式の道路標識、特に正面の表示パネル10としてアクリル繊維板を用いた無反射型の内部照明式道路標識に適用したものである。
【0011】
上記表示パネル10には、緑色または青色の素地11に白色の表記12を施したしたもので、その表記12として図の場合は「出口」および「EXIT」の文字と、矢印を示す図形とが記載されている。
【0012】
図1(a)においては長期間の使用で紫外線等による経年劣化によって緑色または青色の素地部11が褪色(色褪せ)して次第に白色化し、表記部12との識別性が低下して視認しづらくなった状態にある。
【0013】
そのような状態になったら上記素地部または表記部のうちの少なくともいずれか一方を補修するもので、特に上記のように素地部または表記部のうちのいずれか一方が褪色した場合には、少なくともその褪色した方を補修するのが望ましい。
【0014】
そこで、本実施形態においては、褪色前の緑色または青色の素地部11と同彩色で透光性を有する補修フィルム13を、図1(b)のように上記素地部および表記部を含む上記表示パネル10の表面の略全面を覆うようにして上記パネル10の表面に貼着した後、同図(c)のように上記補修フィルム13の前記表記部12に対応する部分を切り抜き除去したものである。
【0015】
上記補修フィルム13の厚さや材質は適宜であるが、例えば図示例のような無反射型内部照明式道路標識に適用する場合には、厚さ0.08mm〜0.10mm程度のポリ塩化ビニル樹脂製光透過フィルムが好適である。
【0016】
上記のような補修フィルム13を表示パネル10の表面に貼着する際には、そのパネル10の表面を適宜の手段で清掃してから貼着するのが望ましい。また貼着した補修フィルム13の一部、例えば表記部12に対応する部分を切り抜き除去する場合には、上記素地部11と表記部12との境界部にカッター等で切り込み溝を形成したのち上記表記部12に対応する部分の補修フィルム13を剥離して除去すればよい。
【0017】
上記のようにして表記部12に対応する部分を切り抜き除去することで、そこには元の白色の表記部12が現れ、また元の素地部11は新たな緑色または青色の補修フィルム13で覆われてコントラストの高い視認性のよい表示が再生されるものである。
【0018】
なお、上記補修フィルム13の表示パネル10との貼着面には、予め接着材等を設けることなく、静電気力または感圧等によってパネル表面に貼着して表記部12に対応する部分を切り抜き除去したのち上記補修フィルム13を表示パネル10に接着材で貼り直す。もしくは補修フィルム13の表示パネル10との貼着面に予め感圧性の接着材を設けて当初はパネル表面に軽く押し付けて表記部12に対応する部分を切り抜き除去したのち補修フィルム13を表示パネル10に強く押し付けることによって強固に接着させる。或いは補修フィルム13をパネル表面に通常の接着材で貼り付けてその接着材が乾く前に表記部12に対応する部分を切り抜き除去してもよい。
【0019】
また上記実施形態は、素地部を補修するようにしたが、例えば白色の素地に緑色または青色の表記をした場合のように表記部12が褪色しやすい場合には表記部を補修するようにしてもよく、また表記部と素地部の両方を補修するようにしてもよい。特に表記部または素地部が白色で汚れ等によって見にくくなった場合にはその白色部分も補修するのが好ましい。
【0020】
さらに上記実施形態は、無反射型の内部照明式道路標識に適用したが、無反射型でない内部照明式道路標識や反射型の道路標識等でもよく、また道路標識に限らず、鉄道用の標識等その他各種の標識にも適用できる。
【実施例】
【0021】
前記図1に示すような無反射型内部照明式道路標識において、長期間の使用で紫外線等による経年劣化によって緑色または青色の素地部11が褪色した表示パネル10の表面をクリーナ等で清掃した後、厚さ0.08mmの緑色または青色のポリ塩化ビニル樹脂製光透過フィルムよりなる補修フィルム13を表示パネル10の表面のほぼ全面に感圧等によって貼り付けた。次いで、図1における「出口」および「EXIT」の文字と矢印を示す図形とからなる表記部12に対応する部分をカッター等で切り抜いて除去した後、上記補修フィルム13を一旦はがして再度同位置に接着材で張り直した。
【0022】
その結果、上記表記部12に対応する部分を切り抜き除去した部分には、元の白色の表記部12が現れ、また元の素地部11は新たな緑色または青色の補修フィルム13で覆われてコントラストの高い視認性のよい表示が再生され、昼間の視認性はもちろん、夜間においても表記部と素地部の差が明瞭となり、視認性を大幅に向上させることができた。
【0023】
また上記の補修にあたっては、標識1枚あたりの世話役は1名・作業員は4名で、1日あたりに補修できる表示パネルの表面積は12m 程度が可能であり、その補修に掛かる費用は表示パネル10を交換する場合の1/3〜1/4程度、また標識全体を取替える場合の1/10程度で済むことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように本発明による標識の補修方法は、表示パネルを交換したり、標識全体を取替えることなく、容易・安価に補修および再生使用することができると共に、パネル表面にフィルムを貼ることで、例えば事故等で標識が損傷した場合にも飛散するのを防止する効果もあり、さらにクラックや傷が入ったパネルに対してもそのまま補修フィルムを貼って補修することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による標識の補修方法のプロセスの一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
A 道路標識
1 本体ケース
10 表示パネル
11 素地部
12 表記部
13 補修フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識の表面に文字や記号または図形等を表記し、その文字や記号または図形等の表記部とそれ以外の素地部とを、それぞれ異なる色彩で表した標識の補修方法であって、
上記表記部または素地部のうちの少なくともいずれか一方と同彩色で透光性を有する補修フィルムを、上記表記部および素地部とを覆うようにして、それらの表面に貼着したのち、上記補修フィルムの上記表記部または素地部に対応する部分を切り抜き除去することを特徴とする標識の補修方法。
【請求項2】
前記補修フィルムは、ポリ塩化ビニルよりなる請求項1記載の標識の補修方法。
【請求項3】
前記表記部は白色、素地部は緑色または青色で、その素地部の経時変化による褪色前と同等の色調を有する補修フィルムを表記部と素地部とに貼着したのち、その補修フィルムの上記表記部に対応する部分を切り抜き除去する請求項1または2に記載の標識の補修方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−193986(P2006−193986A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7073(P2005−7073)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】