説明

模様付樹脂成形品及びその製造方法

【課題】特別な装置を要することなく従来通常樹脂成形品の塗装に使用している装置を使用して、単に樹脂成形品に光輝材を含むメタリック塗料を塗布するという簡易な方法により、低コストで立体感のある模様を現出した樹脂成形品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】光輝材を含む塗料を表面に塗布してなる塗膜を有する樹脂成形品において、前記塗膜が光輝材の光反射状態の相違に基づき形成される模様を具備する模様塗装付樹脂成形品であって、前記模様に対応する樹脂成形品の裏面位置に突条部で形成した模様を配置してなる模様付樹脂成形品。裏面側に突条部で形成した模様を配置した樹脂成形品を用意し、その表面側に、光輝材を含む塗料を塗布し、次いで必要に応じてクリヤー塗装し、乾燥し、膜厚1〜2μmの塗膜を形成し、前記裏面側に配置した突条模様に対応する光輝度模様を現出することを特徴とする模様付樹脂成形品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック塗料を塗布した立体感のある光輝度模様を有する樹脂成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂部品に塗装によって模様を付ける方法として、複数のスプレーガンを用いて、異なる組成や色の塗料を吹き付ける方法が用いられている。
しかしながら、複数塗料を用いる方法では、何種類もの塗料を使用するため、コストが高くなるとともに、作業工程が煩雑となる。また、樹脂製品に単に塗料を吹き付けるだけでは、立体的な視覚効果を生ずるような特定の模様を付けることは技術的に困難である。
こうした状況のなかで、複数の塗膜を形成することにより塗膜の表面に周囲と異なる色調の模様や図形、文字などの模様を形成する方法として、例えば特許文献1に提案されたものがある。この方法は、特定の磁性材料を含有した磁性塗料を用いる方法である。樹脂成形品や金属製品の上に形成した永久磁化粒子粉末(磁性剤塗料A)を含有する着磁用塗膜を磁化し、次いで磁化された着磁塗膜上に磁性材料Bを含有した磁気模様形成塗料を塗布すると、塗布されていく過程で塗料の磁化された部分に含まれている磁性材料Bが磁力線に沿って配向する。この状態で磁気模様形成塗料の塗膜が硬化することによって、所定の模様を形成する。しかしながら、必ず、磁化粒子が存在する塗料を用いなくてはならず、このような塗料は種類が少ないため、塗料の選択幅が狭くなってしまう。そして、磁性材料を磁力線によって配向させる必要があるため、塗装装置が磁力線発生装置を具備しなければならず、塗装装置が複雑になってしまう。
また、特許文献2に提案されたものは、樹脂製品の裏側にアース電位のプレート状導電性治具を接面させて光輝材を含む塗料を高電圧下で静電塗装する際に、塗面に模様を形成する模様塗装方法である。しかしながら、自動車部品に用いられている樹脂製品裏面には、一般にリブが設けられているので、導電性治具の上に樹脂製品を載置し静電塗装しても、リブ部と一般部とでは肉厚が異なるため、模様が不明瞭となってしまう。また、アース電位のプレート状導電性治具などの専用装置が必要で、塗装装置が複雑になってしまう。
【特許文献1】特開平6−114332号公報
【特許文献2】特開2000−51783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、特別な装置を要することなく従来通常樹脂成形品の塗装に使用している装置を使用して、単に樹脂成形品に光輝材を含む塗料を塗布するという簡易な方法により、低コストで立体感のある模様を現出した樹脂成形品及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、メタリック塗料が樹脂成形品表面に塗布されたときその塗膜中の光輝材の光反射状態が塗布面の状態により変化することを知見した。そして、樹脂成形品の裏面側にリブが存在するような場合、そのリブの位置に対応する表面部では塗膜の光輝度がより高くなり、その周辺部は高輝度がより低くなる現象を確認した。こうした現象は、塗膜の厚さにより影響され、膜厚がより薄い程前記の現象が強く表れることを見出し、本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
[1] 光輝材を含む塗料を表面に塗布してなる塗膜を有する樹脂成形品において、前記塗膜が光輝材の光反射状態の相違に基づき形成される模様を具備する模様塗装付樹脂成形品であって、前記模様に対応する樹脂成形品の裏面位置に突条部で形成した模様を配置してなる模様付樹脂成形品。
[2]前記塗膜の膜厚が1〜2μmであることを特徴とする[1]に記載の模様付樹脂成形品。
[3] 前記光輝材を含む塗料を塗布した表面に、更にクリヤー塗料を塗布したことを特徴とする[1]に記載の模様付樹脂成形品。
[4] 裏面側に突条部で形成した模様を配置した樹脂成形品を用意し、その表面側に、光輝材を含む塗料を塗布し、乾燥し、膜厚1〜2μmの塗膜を形成し、前記裏面側に配置した突条模様に対応する光輝度模様を現出することを特徴とする模様付樹脂成形品の製造方法。
[5] 光輝材を含む塗料を塗布後、更にクリヤー塗料を塗布することを特徴とする[4]に記載の模様付樹脂成形品の製造方法。
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂成形品の裏面部にリブ等の突条を所望の模様形状にて予め配設しておき、該樹脂成形品の表面に光輝材を含む塗料を所定の厚みの塗膜を形成するように塗布するという簡易な操作により、特別な治具、設備を要することなく、生産性よく立体感のある模様を樹脂成形品の表面側に現出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の樹脂成形品は、樹脂成形品表面に塗布した光輝材を含む塗料が乾燥する過程で、前記樹脂成形品の裏面に配設したリブなどの突条による影響で塗膜中に存在する光輝材の存在状態に違いが生じ、その相違により光反射状態が、前記突条の配設位置に対応する表面側部位とその周囲とで相違が生じる結果、樹脂成形品表面側に現出される前記突条による模様を具備することに特徴を有するものである。
こうした裏面側の突条の形成する模様が表面側の対応部位に現出される理由については必ずしも明確ではないが、本発明者は以下のように推察している。
【0008】
例えば、30℃の室温に静置しておいた裏面に突条(リブ、枠部など、あるいはその類似突部)をもつ樹脂基材の表面に塗料を塗布すると、塗布後に、塗装面からほぼ均一に気化熱によって樹脂基材から熱が奪われる。樹脂基材周辺の外気温度も30℃であり、樹脂基材周辺の外気から樹脂基材に熱が伝わるが、一般部(平坦部)の方が樹脂基材の板厚が薄いので、表面側への熱伝導が速い。一方、突条は板厚が厚く表面側への熱伝導が遅い。そのため、一般部では塗料の乾燥が速くなるので、光輝材の配向が乱れ、輝度が低下する。一方、突条部に対応する表面部位では断熱効果により塗料の乾燥が遅くなるので、光輝材の配向が整い輝度が高くなる。その結果、光反射状態に相違が生じて、裏面側の突条の配設模様が表面側部位に現出される。
【0009】
また、以下のような事情も影響しているものと推察している。
樹脂基材の成形時に、一般部(平坦部)よりも突条の板厚の方が厚く、成形後に樹脂基材の一般部に比べて徐冷されるので、突条の樹脂は密となり、一般部の樹脂は疎となる。そのため、樹脂基材にメタリック塗料を塗布すると、樹脂が密である突条部対応部位では塗料の溶剤の吸い込みが弱い。一方、樹脂が疎である一般部では塗料の溶剤の吸い込みが強くなる。一般部の吸い込みの強いところでは、見掛けの乾燥が速くなるので、光輝材の配向が乱れ、光輝度が低くなる。突条のように吸い込みの弱いところでは見掛けの乾燥が遅くなるので光輝材の配向が整い高輝度が高くなる。
【0010】
本発明に使用する塗料は、光輝材を含むメタリック塗料、パール塗料等である。中でも樹脂分の少なく、超高輝度のものが好ましい。この光輝材としては、アルミフレークなどの金属フレーク、アルミ箔などの金属箔、パールマイカ、二酸化チタンなどの金属を被覆したマイカなどのマイカ、亜鉛紛、ステンレス紛、アルミ粉などの金属粉、銀、銀合金、二酸化チタンなどの金属を被覆したガラスフレーク等が好ましく用いられる。
この光輝材の大きさは、細かい程前記現象による模様形成に寄与することができる。例えば、長径が20μm以下、厚さ0.02 〜0.1μm、好ましくは0.03〜0.05μmである。
本発明の樹脂成形品の表面側に前記裏面側に設けた突条による模様を現出させるためには、光輝材を含む塗料の塗膜の厚みも重要である。塗膜厚みは2μm以下、好ましくは、1〜2μmである。塗膜厚みが2μmを越えると前記裏面側の模様が表面側部位に現出する傾向が弱まる。また膜厚の下限は、光輝材を含む塗料により塗膜が形成でき得る最低限の厚みでよい。
【0011】
光輝材を含む塗料を塗布し、乾燥させた後、好ましくはクリヤー塗装を行う。このクリヤー塗装により前記光輝材の存在状態の相違が一層強調されて、模様をより明確に現出することができる。この理由についても推測の域を出ないが、クリヤー塗装の際にトップコートのクリヤーの溶剤の影響で光輝材の存在状態の相違が一層強調されたことによるものと考えている。
このトップコートのクリヤー塗料は、一般的なクリヤー塗料を使用することができる。
【0012】
すでに述べているように、本発明の樹脂成形品は裏面側の突条による模様が表面側に現出するものであり、そのために成形品が裏面に突条による模様を配設していること、表面側に光輝材を含む塗料を塗布して所定の膜厚の塗膜を形成することが重要であるが、その他の事項には特に制限はなく、樹脂の成形法、塗装方法などは従来の方法が採用できる。また、樹脂成形品の色も制限はないが、光輝材の作用を生かす色が好ましい。以下の実施例では黒色とした。
【実施例】
【0013】
以下に図面に基づき本発明の実施例を説明する。
図1は、樹脂成形品の斜視図で、説明のためにリブを透視するように表現してある。この例ではリブを亀甲状に配設している。図2は、図1に示す樹脂成形品(黒色)の表面側にメタリック塗料を塗布し、次いでクリヤー塗料を塗布し、乾燥後に表面側部位に裏面の亀甲模様が現出している状態を示す写真である。図2の写真において、丸数字で示す1は表面に現出する模様(光の影響を受けて見る方向により模様の鮮明度が異なる)、2は裏面のリブの亀甲模様、3は樹脂成形品(黒色)を表す。なお、図2において(IV)表面状態として示すものは、上が平坦部の、下がリブに対応する部位の顕微鏡写真でリブに対応する部位の方が表面状態が緻密となっていることを示している。
この実施例において使用したメタリック塗料は、微細アルミニウム箔含有塗料であるハイパーメタルスター(大栄産業株式会社製:アルミ箔サイズ 長径20μm以下、厚さ0.03〜0.05μm)であり、塗膜厚は1〜2μmであり、また、クリヤー塗料の膜厚は10〜30μmである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の樹脂成形品の斜視図である。
【図2】図1に示す樹脂成形品にメタリック塗料を塗布し、次いでクリヤー塗料を塗布し、乾燥後に表面側部位に裏面の亀甲模様を現出させるまでの工程を説明する写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝材を含む塗料を表面に塗布してなる塗膜を有する樹脂成形品において、前記塗膜が光輝材の光反射状態の相違に基づき形成される模様を具備する模様塗装付樹脂成形品であって、前記模様に対応する樹脂成形品の裏面位置に突条部で形成した模様を配置してなる模様付樹脂成形品。
【請求項2】
前記塗膜の膜厚が1〜2μmであることを特徴とする請求項1に記載の模様付樹脂成形品。
【請求項3】
前記光輝材を含む塗料を塗布した表面に、更にクリヤー塗料を塗布したことを特徴とする請求項1に記載の模様付樹脂成形品。
【請求項4】
裏面側に突条部で形成した模様を配置した樹脂成形品を用意し、その表面側に、光輝材を含む塗料を塗布し、乾燥し、膜厚1〜2μmの塗膜を形成し、前記裏面側に配置した突条模様に対応する光輝度模様を現出することを特徴とする模様付樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
光輝材を含む塗料を塗布後、更にクリヤー塗料を塗布することを特徴とする請求項4に記載の模様付樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−125673(P2009−125673A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303856(P2007−303856)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】