説明

模様入り障子紙及びその製造方法

【課題】和紙の風合いを有し、通気性を保有すると共に、耐水性があり、ペット等の外力に対しても耐久性があり、かつ模様が汚損することなく、長く均一状態を保つ強靱な障子紙を提供する。
【解決手段】合成樹脂フィルム1と紙3を接着した紙フィルム2枚により模様4を挟着した模様入り障子紙。合成樹脂フィルムと紙を接着した紙フィルム2枚により模様を挟着すると共に、微小穿孔を設けることが好ましい。模様は印刷、又は繊維模様を介装することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙の風合いを保ち、かつ水又は外力(例えばペットの引っ掻き)に抵抗力の大きい障子紙を得ることを目的とした模様入り障子紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来障子紙としては、幾多異種類の製品があった。
【0003】
従来強度及び耐汚染性に優れた障子紙として紙基材の両面に接着剤を介して延伸樹脂フィルムを積層させた障子紙が知られている。
【0004】
また押し花を挟着した絵画障子紙の提案もある。
【0005】
更に紙層の上下両面に樹脂からなるフィルム層を設けた障子紙及び障子紙の製造方法が知られている。
【特許文献1】特開2004−114653
【特許文献2】特開平11−287073
【特許文献3】特開2007−8100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来知られている合成樹脂フィルムで紙基材を挟着した障子紙は、通気性がない問題点があった(特許文献1,3)。
【0007】
また和紙により切り絵又は絵画を施したものは外力に弱く、又は汚れ易い問題点があった(特許文献2)。
【0008】
また合成樹脂フィルムの厚さ又は枚数によっては、紙特有の風合いを失う恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、和紙又は和紙と洋紙、不織布などの紙を用いて合成樹脂フィルム2枚に対応させ、紙特有の風合いを保有させつつ、合成樹脂フィルムによる強度を保有させ、かつ穿孔によって通気性を保有させたものである。
【0010】
また印刷又は繊維によって色彩、模様を表示し、しかも内装することによって色彩、模様の汚染を防止したものである。
【0011】
また同一工程で製造した積層紙を重ねた場合には、工程を節減して、複層障子紙を得ることができる。
【0012】
即ちこの発明によれば、合成樹脂フィルムと紙を接着した紙フィルム2枚により模様を挟着したことを特徴とする模様入り障子紙であり、合成樹脂フィルムと紙を接着した紙フィルム2枚により模様を挟着すると共に、微小穿孔を設けたことを特徴とする模様入り障子紙であり、模様は印刷し、又は繊維模様を介装したものである。
【0013】
次に方法の発明は、合成樹脂フィルム上へ接着剤を介して紙を接着して紙フィルムとする第1工程と、前記紙上へ模様を付着させる第2工程と、前記第1工程で得た紙フィルムを前記模様上へ被着して障子紙とする第3工程とを組み合わせたことを特徴とする模様入り障子紙の製造方法であり、合成樹脂フィルム上へ接着剤を介して紙を接着して紙フィルムとする第1工程と、前記紙上へ模様を付着させる第2工程と、前記第1工程で得た紙フィルムを前記模様上へ被着して障子紙とする第3工程と、前記障子紙に穿孔する第4工程とを組み合わせたことを特徴とする模様入り障子紙の製造方法である。
【0014】
更に、合成樹脂フィルム上へ、接着剤を介して紙を接着して紙フィルムとする第1工程と、前記紙上へ模様を付着させる第2工程と、該模様上へ接着剤を介して紙を接着する第3工程と、前記紙上へ接着剤を介して合成樹脂フィルムを被着して障子紙とする第4工程と、前記障子紙に穿孔する第5工程とを組み合わせることを特徴とした模様入り障子紙の製造方法である。
【0015】
前記におけるフィルム紙には、次のようなパターンがある。
【0016】
(1)光沢フィルムと、紙と、光沢フィルム
(2)光沢フィルムと、紙と、マットフィルム
(3)マットフィルムと、紙と、マットフィルム
【0017】
前記におけるマットフィルムとは、透明フィルムに微小凹凸を設けたフィルムであって、半透明状となる。
【0018】
前記における紙には、次のような組み合わせがある。
【0019】
(1)厚い紙と、薄い紙
(2)柄(模様)入り紙と、無地の紙
(3)和紙と不織布
(4)和紙と洋紙
(5)パルプ紙と非木材紙
【0020】
前記における印刷は、フィルム裏面に1色以上又は紙裏面に1色以上印刷し、又は前記の組み合わせを用いる。また予め印刷し、又は模様入り紙を使用すれば、印刷工程は省かれる。
【0021】
前記発明の障子紙は、通常の障子紙として用いる他、間仕切り建具に用いる紙、ブラインド素材用の紙、ランプシェードその他淡い透孔、通気性、紙の風合いを求める仕切りなどに用いることができる。
【0022】
前記発明において、紙を2枚使用したのは、紙と紙の間に印刷層を設けて、和風のファジーさを演出し、かつリバーシブルを可能にする為である。
【0023】
また印刷面を樹脂層で覆うのは、隠蔽性のコントロールを可能にし、作業性の容易さと、強度を向上させる為である。
【0024】
前記における合成樹脂フィルムは、ポリオレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、スチレン系、ABS樹脂系及び塩化ビニール系などの合成樹脂を使用することができるが、燃焼により有毒ガスを生じ易い樹脂は好ましくない。
【0025】
次に接着剤としては、水性接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤、熱溶融樹脂などが使用できる。
【0026】
また紙としては、木材パルプ、非木材パルプ、化学繊維パルプ等を使用した紙及び不織布などがある。
【0027】
次に印刷層としては、グラビアインキ層、フレキソ印刷インキ層、オフ輪インキ層、インクジェットインキ層などがあり、樹脂層としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系、アクリル系、スチレン系、ABS樹脂系及び塩化ビニール系などがあるが、原則的に従来使用されていた合成樹脂フィルム及び接着剤は何れも使用することができる。
【0028】
前記この発明においては、外面に合成樹脂フィルムを被着するが、この合成樹脂フィルムは同一フィルムでも異種フィルムでもよく、この障子紙を使用する場所によって裏(室内側)を和風様にし、表(室外側)を洋風好みにすることもできる。
【0029】
前記模様は印刷し、又は繊維による模様形成物としてもよく、更には薄紙による模様紙を介装することもできる。
【0030】
前記発明における穿孔は、大きいと目立ち小さいと通気面積が少なくなるおそれがあるが、直径0.1mm〜3.0mm程度が好ましい。その密度は直径によっても異なるが、例えば1cm当たり10個以上であってもよい。
【0031】
通気性については、直径0.1mmの穿孔であっても呼吸に対して十分の通気量が考えられるので、室内燃焼暖房のような一酸化炭素が特に発生し易い環境でなければ少ない通気孔でも支障はない。
【0032】
この発明において、穿孔工程は通常最終工程で行うが、合成樹脂フィルムに予め小孔を穿孔してあれば、穿孔工程を省くことができる。またポリエチレンフィルムの如く合成樹脂フィルムに通気性があれば、特別に穿孔する必要のない場合もある。
【0033】
更に穿孔位置を合成樹脂フィルムに全面に亘り均等に設ける外、不均等に設け、又は穿孔によって模様を表すこともできる。要するに、穿孔すれば通気性を付与する為の特別の考慮は必要性がない。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、紙の風合いを有し、通気性を保有すると共に、耐水性がり、ペット等の外力に対しても耐久性(破れにくい)があり、かつ模様が汚損することなく、長く同一状態を保つ効果がある。
【0035】
またこの発明の製造方法によれば、比較的少ない工程で、多数層の障子紙を容易に製造できる効果がある。
【0036】
更に穿孔工程において、熱針ローラによれば、効率よく所望孔径、所望密度に穿孔し得る効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
この発明は、合成樹脂フィルム上へ接着剤を介して紙を接着して紙フィルムとする第1工程と、前記紙上へ模様を付着させる第2工程と、前記第1工程で得た紙フィルムを前記模様上へ被着して障子紙とする第3工程とを組み合わせたことを特徴とする模様入り障子紙の製造方法によって効率よく製造することができる。
【0038】
また、合成樹脂フィルムと紙を接着した紙フィルム2枚により模様を挟着すると共に、微小穿孔を設けたことを特徴とする模様入り障子紙によれば、通気性よく、紙の風合いを保有した耐水性、耐久性のある障子紙を得ることができる。
【実施例1】
【0039】
この発明の実施例を、図1に基づいて説明すれば、ポリオレフィン系の合成樹脂フィルム1の上面へ、水系接着剤2を塗布し、該接着剤2の上へ木材パルプより抄紙した和紙3を層着(積層和紙3a)し、前記和紙3の上へ、模様4を印刷する。
【0040】
次に前記積層和紙3aを前記模様4上へポリオレフィン系樹脂6を介して被着して障子紙5aとなり、更に熱針ロール8で通気孔7を設けて、この発明の障子紙5が出来上がる。図中9は受けロール、10はノズルである。
【実施例2】
【0041】
この発明の実施例を図2について説明すると、ポリオレフィン系フィルム1の上部へ、溶剤系接着剤2を介して和紙3を層着して、積層和紙3aとする。前記和紙3上へポリオレフィン系樹脂6を熱溶融させ乍ら介装し、前記ポリオレフィン系樹脂6の上部へ、和紙3に模様4を施した前記積層和紙3aを、下向きに被着し、接着すると共に、太さ0.3mm〜3.0mmの熱針(150℃〜350℃加熱)を用いて、穿孔(0.3mm〜3.0mm)して、この発明の障子紙5を得た。
【0042】
前記穿孔は、通気性とデザイン性を兼ねる目的で設けるが、合成樹脂フィルムに通気性がある(付与してあるものを含む)場合には、穿孔の必要性がない。
【0043】
前記積層和紙3aは、層着ではあるが、薄いので(例えば0.1mm〜0.5mm)、一枚のフィルムと同様に取り扱うことができる。
【0044】
また前記ポリオレフィン系フィルムは、通常無色透明(必要に応じ淡い有色透明)であるから、和紙が透視され、和紙の風合いを保つことができる。
【0045】
特に積層紙にも拘わらず、和紙を表裏側に夫々1枚層着してあるので、和紙の風合いを有効に表示することができる。従って、この実施例の障子紙は、表裏何れからも和紙の風合いを保つことができる。
【実施例3】
【0046】
この発明の実施例を図3について説明すれば、ポリオレフィン系フィルム1の上面へ模様4を印刷した後、前記ポリオレフィン系フィルム1上と模様4の上へ無地のパルプ和紙3を重ねてその間にオレフィン系樹脂6を熱溶融させながら流し込み接着する。
【0047】
次にパルプ和紙3の上へ模様4を印刷(例えばグラビア印刷)した後、その上部へ合成繊維(例えば5%〜20%)を抄き込んだパルプ和紙3を重ねる。次にこの模様4とパルプ和紙3の間にオレフィン系樹脂6を熱溶融させながら流し込み接着させる。また前記パルプ和紙3の上面に接着剤2を介してポリオレフィン系フィルム1を重ねて接着させると、この発明の障子紙5が完成する。
【0048】
前記において、ポリオレフィン系フィルム1と、パルプ和紙3とを接着した紙フィルムを予め製造した後一旦ロール状に巻き込んでおけば、収納及び使用に際し、取扱いが容易である。
【0049】
前記実施例は穿孔しなかったので、原則的に通気性はない。通気性を付与した合成樹脂フィルムを用いれば、前記図2記載の障子紙と同様に通気性があることになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)この発明の実施例の第1工程を示す図、(b)同じく第2工程を示す図、(c)同じく第3工程を示す図、(d)同じく穿孔の工程を示す説明図。
【図2】同じくこの発明の実施例の障子紙の断面拡大図。
【図3】同じく他の実施例の障子紙の断面拡大図。
【符号の説明】
【0051】
1 合成樹脂フィルム
2 接着剤
3 和紙
4 模様
5 障子紙
6 ポリオレフィン系樹脂
7 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムと紙を接着した紙フィルム2枚により模様を挟着したことを特徴とする模様入り障子紙。
【請求項2】
合成樹脂フィルムと紙を接着した紙フィルム2枚により模様を挟着すると共に、微小穿孔を設けたことを特徴とする模様入り障子紙。
【請求項3】
模様は印刷し、又は繊維模様を介装したことを特徴とする請求項1又は2記載の模様入り障子紙。
【請求項4】
合成樹脂フィルム上へ接着剤を介して紙を接着して紙フィルムとする第1工程と、前記紙上へ模様を付着させる第2工程と、前記第1工程で得た紙フィルムを前記模様上へ被着して障子紙とする第3工程とを組み合わせたことを特徴とする模様入り障子紙の製造方法。
【請求項5】
合成樹脂フィルム上へ接着剤を介して紙を接着して紙フィルムとする第1工程と、前記紙上へ模様を付着させる第2工程と、前記第1工程で得た紙フィルムを前記模様上へ被着して障子紙とする第3工程と、前記障子紙に穿孔する第4工程とを組み合わせたことを特徴とする模様入り障子紙の製造方法。
【請求項6】
合成樹脂フィルム上へ、接着剤を介して紙を接着して紙フィルムとする第1工程と、前記紙上へ模様を付着させる第2工程と、該模様上へ接着剤を介して紙を接着する第3工程と、前記紙上へ接着剤を介して合成樹脂フィルムを被着して障子紙とする第4工程と、前記障子紙に穿孔する第5工程とを組み合わせることを特徴とした模様入り障子紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262483(P2009−262483A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117039(P2008−117039)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(594110620)ソルトリバー株式会社 (1)
【Fターム(参考)】