説明

横架材の接合装置

【課題】一対の補強板を別体にしたものと同様な接合強度を備え、しかも、組付け上の煩雑さの無い横架材の接合装置の提供。
【解決手段】柱や胴差などの構造材3の側面に、梁や桁などの横架材1を接合する。横断面コ字状の接合金物4を、構造材3の側面に重ね合わせて固定する。そして、横架材1の端面に下面開口の凹入部13を設け、該凹入部13のスリット溝13bに係合した一対の補強板5を持つ接合金物2に止着杆11を挿通して横架材1の端部に取付ける。また、1対の補強板を持つ接合金物4の受止縁15に掛止する掛止杆7を、横架材1の端部に取り付ける。さらに、前記接続孔に一致させて横架材1を通じて挿通する接続杆の接続孔10を補強板5に設け、補強板5は上面が横架材1の下端に接する仲介板6で後端部下端において互いに接続して一体にされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の梁や桁などの横架材を、柱や胴差などの構造材に接合するために適用する横架材の接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
梁や桁などの横架材を接合する、柱や胴差などの構造材の側面に、背板と該背板の両側に相対設し、しかも、上端に受止縁を、適所に貫挿孔をそれぞれ設けた側板とで構成した横断面コ字形の接合金具を、前記背板を、前記構造材の側面に重ね合わせて固定すると共に、前記横架材の端面に下面開口の凹入部を設け、該凹入部の開放端側の係合溝と、該係合溝に連通する奥端側のスリット溝に補強板を、スリット溝毎に係合して前記接合金具の係合間隙を存して相対設し、該補強板の前記開放端側の上方に、前記係合間隙に係合したときの前記接合金具の前記受止縁に掛止する掛止杆を、前記横架材端部を通じて架設し、前記貫挿孔に一致させて前記横架材を通じて挿通する係止杆の貫挿孔を前記補強板に設けた構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−227175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例のものは、一対の補強板を互いに別体に構成してあるので、該補強板を横架材の端部に係止杆を用いて組付けるとき、各補強板をそれぞれ支えるようにして該補強板に設けた取付け孔と、横架材側に設けた止着孔を一致させた上、これらに止着杆を挿通させなければならず、補強板の横架材に対する組付け作業が煩雑となる。
【0005】
また、接合状態時には、横架材に負荷される荷重は、構成上、概し、止着杆に集中、負荷されるため、横架材の該止着杆近傍が裂傷するおそれがある。
【0006】
本発明は、従来例と同様の接合強度を備え、しかも、組付け上の煩雑さや裂傷のおそれをできるだけ低減した横架材の接合装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
梁や桁などの横架材を接合する、柱や胴差などの構造材の側面に、背板と該背板の両側に相対設し、しかも、上端に受止縁を、適所に接続孔をそれぞれ設けた側板とで構成した横断面コ字状の接合金物を、前記背板を前記構造材の側面に重ね合わせて固定すると共に、前記横架材の端面に下面開口の凹入部を設け、該凹入部の開放端側の係合溝と該係合溝に連通する奥端側のスリット溝に係合した一対の補強板を、該補強板側の止着孔と前記横架材側の止着孔に止着杆を挿通して前記横架材の端部に取付け、該補強板の前記開放端側の上方に、前記補強板間の係合間隙に係合したときの前記接合金物の前記受止縁に掛止する掛止杆を、前記横架材端部を通じて架設すると共に、前記接続孔に一致させて前記横架材を通じて挿通する接続杆の接続孔を前記補強板に設け、該補強板を、上面が前記横架材の下端に接する仲介板で後端部下端において互いに接続して一体的にして接続金物としたことを基本的手段とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来例と同様、横架材を構造材に確実に接合することのできる接合装置を提供できることは勿論、一対の補強板が仲介板を介して接続されて接続金物の構成材として一体として取扱いのできるものとして構成してあるから、該補強板同士の位置合わせをする必要がなく、従って、横架材に対する組付け作業を簡単に行うことができ、比較的接合作業を円滑に行える接合装置を提供できるものである。しかも、仲介片が横架材側からの負荷荷重を受けるから、従来のように止着杆等のみで受けるものと較べ、横架材の裂傷の可能性を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一部欠截正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】構造材に横架材を組付ける直前の正面図。
【図4】分解斜視図。
【図5】構造材と接合金物の関係を示す分解斜視図。
【図6】第二実施形態の接続金物の正面図。
【図7】第三実施形態の接続金物の正面図。
【図8】第四実施形態の一部欠截正面図。
【図9】第四実施形態の平面図。
【図10】第四実施形態の分解斜視図。
【実施例】
【0010】
実施形態の接合装置は、横架材(実施形態では梁であるが桁でも良い)1側に接続金物2を取付け(固着し)、該接続金物2と構造材(実施例では柱であるが胴差でも良い)3側に設けた接合金物4を互いに組合わせて前記横架材1を構造材に接合するものである。
【0011】
接続金物2は、長方形状の一対の補強板5,5と、該補強板5,5を後端部下端において接続して一体にした仲介板6で構成した縦断面コ字状の鋼製枠体で構成し、補強板5,5の先端部(構造材3側の一側部)には、掛止杆7挿通用の透孔8と該透孔8の直下に並べて接続杆9挿通用の、一対の接続孔10,10を設け、後端部の、前記仲介板6の直上位置には、一対の、止着杆11挿通用の止着孔12,12を上下方向に並べて設けたものである。
【0012】
前記横架材1の端部1´の側面の先端には、接続金物2の前記補強板5の先端部に設けた透孔8および一対の接続孔10,10と一致する位置にして透孔8Aおよび一対の接続孔10A,10Aを設け、該接続孔10Aより後方側に補強板5に設けた前記止着孔12,12と一致する位置にして止着孔12A,12Aを設け、これら透孔8A、接続孔10Aおよび止着孔12Aと直交する、下面開口の凹入部13を前記横架材1の端面1´aに設けてある。
【0013】
凹入部13は、前記端面1´a側すなわち開放端側の係合溝13aと該係合溝13aに連通する奥端側両隅部のスリット溝13b,13bで構成し、横架材1の端面1´aに設けた、この凹入部13に、補強板5を、開口下端側から、仲介板6の上面がスリット溝13b,13bで区画された、舌状の横架材部片1aに接触するまで挿入して組合わせ、接触するまで挿入して組合わせたとき、互いに一致するように予め設けてある横架材1側の止着孔12と接続金物2(補強板5)側の止着孔12Aに止着杆11を挿通し、また、同様に互いに一致するように設けた横架材1側の透孔8Aと接続金物2(補強板5)側の透孔8に、透孔8A側から掛止杆7を挿通して接続金物2を横架材1の端部に取付け、接続金物2を組付けた横架材1を得られる。
【0014】
前記接合金物4は、背板14と該背板14の両側に相対設し、しかも、上縁に半円状の底縁を備えた受止縁15を、該受止縁15の直下の適所に前記補強板5に設けた接続孔10と一致する位置にして接続孔10Bを設けた一対の側板16,16で構成した横断面コ字形の鋼製枠で構成し、構造材3の側面に背板14を重ね合わせ、該背板14に設けた取付け孔17に取付け杆18(実施形態ではボルト杆を用いるが取付け手段は自由に選択すれば良い)を挿通して構造材3に取付けたものである。
【0015】
そして、構造材3に取付けた(固定した)接合金物4を、横架材1に組付けた接続金物2の補強板5,5間の係合間隙19内に係合するようにして、横架材1を構造材3に沿わせて降下させ、横架材1側に架設した掛止杆7を構造材3の接合金物4の受止縁15に係合、受支させると、横架材1は構造材3に仮接合された状態となる。
【0016】
この仮接合状態で、横架材1側の接続孔10,10Aと構造材3(接合金物2)側の接続孔10Bに前記接続杆9を挿通させると、横架材1の構造材3に対する実施形態を利用した接合状態を得ることができる。
【0017】
なお、図6、図7および図8乃至図10で示す第二、第三および第四の各実施形態の接続金物は、第一実施形態のものと、同じ符号で示すように、横架材1の大きさに合わせて止着孔12、接続孔10の数、位置を変えただけ(もとより、これに対応して、接合金物2の大きさ、接続孔10Aの位置も変るが)、残余の点は、第一実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0018】
もっとも、図8乃至図10で示す第四実施形態の接続金物2は、補強板5の下端の先後の中間部に仲介板6に隣接させて補強板5に対して直交する方向に突出する受部片26を設け、接続金物2を横架材1に組付けたとき、前記横架材部片1aに仲介板6の上面が接すると同様に、この受部片26が横架材部1a´に接してこれからの荷重を受け、尚一層の耐荷重強度を得られるようにしてある。
【符号の説明】
【0019】
1 横架材
3 構造材
4 接合金物
5 補強板
6 仲介板
7 掛止杆
10,10B 接続孔
11 止着杆
12,12A 止着孔
13 凹入部
13a 係合溝
13b スリット溝
14 背板
15 受支縁
16 側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁や桁などの横架材を接合する、柱や胴差などの構造材の側面に、背板と該背板の両側に相対設し、しかも、上端に受止縁を、適所に接続孔をそれぞれ設けた側板とで構成した横断面コ字状の接合金物を、前記背板を前記構造材の側面に重ね合わせて固定すると共に、前記横架材の端面に下面開口の凹入部を設け、該凹入部の開放端側の係合溝と該係合溝に連通する奥端側のスリット溝に係合した一対の補強板を、該補強板側の止着孔と前記横架材側の止着孔に止着杆を挿通して前記横架材の端部に取付け、該補強板の前記開放端側の上方に、前記補強板間の係合間隙に係合したときの前記接合金物の前記受止縁に掛止する掛止杆を、前記横架材端部を通じて架設すると共に、前記接続孔に一致させて前記横架材を通じて挿通する接続杆の接続孔を前記補強板に設け、該補強板を、上面が前記横架材の下端に接する仲介板で後端部下端において互いに接続して一体的にして接続金物とした、横架材の接合装置
【請求項2】
接続金具の各補強板の下端に、仲介板に隣接させて、しかも、補強板に対して直交する方向に突出する受部片を設けた、請求項1記載の横架材の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−84893(P2011−84893A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237042(P2009−237042)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(591027499)株式会社カネシン (49)
【Fターム(参考)】