樹状細胞/腫瘍細胞融合物および抗CD3/CD28を使用する抗腫瘍免疫の刺激
本発明は、樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞の融合に関する。養子免疫療法の方法、ならびに融合細胞および抗CD3/CD28抗体を用いて抗腫瘍免疫を刺激する方法を含む、これらの細胞融合の作製および使用方法も提供される。したがって、本発明は、樹状細胞、例えば、非濾胞性樹状細胞および非樹状細胞の融合産物であるハイブリッド細胞を含む。ハイブリッド細胞は、その表面にB7(例えばB7−1またはB7−2などの同時刺激分子のB7ファミリーの任意の構成員)を発現する。好ましくは、ハイブリッド細胞は、他の同時刺激分子、MHCクラスIおよびクラスII分子、および接着分子も発現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2007年11月8日に出願されたU.S.S.N.第61/002,538号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
連邦政府によって資金供与された研究についての声明
本発明は、国防省助成金DAMD17−03−1−0487;Renal SPORE Development Project助成金CA10194およびOvarian Cancer SPORE助成金CA105009の下、米国政府の援助を受けてなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に細胞免疫学に関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍細胞は、宿主のT細胞レパートリーによって認識される可能性があり、腫瘍免疫療法のための潜在的標的の役目を果たす特異な抗原を発現する。しかし、抗原は同時刺激がないところで提示され、腫瘍細胞は、固有の抗原提示およびエフェクター細胞集団を抑制する阻害性のサイトカインを発現するので、腫瘍細胞は宿主免疫を逃れる。(非特許文献1;非特許文献2を参照)。この免疫抑制性環境における重要な要素は、悪性腫瘍を有する患者の腫瘍層、流入領域リンパ節および循環で見出される調節T細胞の存在の増加である。(非特許文献3;非特許文献4を参照)。したがって、研究の有望な領域は、腫瘍関連アネルギーを逆転させ、悪性細胞を認識して除去するようにエフェクター細胞を刺激する、癌ワクチンの開発である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Speiserら、J.Exp.Med.(1997年)186巻:645〜53頁
【非特許文献2】Gabrilovichら、Clin Cancer Res.(1997年)3巻:483〜90頁
【非特許文献3】von Boehmer、Nat Immunol(2005年)6巻:338〜44頁
【非特許文献4】Liyanageら、J.Immunol.(2002年)169巻:2756〜61頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、免疫系を刺激する組成物を特徴とする。したがって、本発明は、樹状細胞、例えば、非濾胞性樹状細胞および非樹状細胞の融合産物であるハイブリッド細胞(またはその後代)を含む。ハイブリッド細胞は、その表面にB7(例えばB7−1またはB7−2などの同時刺激分子のB7ファミリーの任意の構成員)を発現する。好ましくは、ハイブリッド細胞は、他の同時刺激分子、MHCクラスIおよびクラスII分子、および接着分子も発現する。樹状細胞融合パートナーおよび非樹状細胞は、同じ種に由来してもよい。例には、非樹状細胞融合パートナーが、疾患関連抗原、例えば腫瘍、細菌またはウイルスに由来するものを発現するハイブリッド細胞が含まれる。あるいは、非樹状細胞は、腫瘍細胞である。樹状細胞は、自己由来であるか同種異系である。樹状細胞および非樹状細胞は、好ましくは同じ個体、例えばヒト患者に由来する。
【0007】
これらの免疫賦活性組成物のそれぞれは、融合細胞を含む複数の細胞を含み、融合細胞のそれぞれは、少なくとも1つの哺乳動物の樹状細胞(例えば、骨髄培養または末梢血細胞培養に由来するDC)と、細胞表面抗原(例えば、癌抗原)を発現する少なくとも1つの哺乳動物の非樹状細胞(例えば、癌細胞またはトランスフェクトされた細胞)との間の融合によって生成される。「癌抗原」は、癌を有する個体の正常細胞と対照的に、主にまたは完全に癌細胞によって発現される抗原性分子を意味する。癌抗原は、その正常な対応物と比較して、悪性細胞によってより高いレベルで発現されることもできる。あるいは、癌抗原は、ある悪性細胞および正常細胞で特異的に発現させることができる(すなわち、前立腺特異抗原)。組成物中の融合細胞は、免疫系を刺激する(例えば、T細胞を活性化する)のに有効な量で、MHCクラスII分子、B7および細胞表面抗原を発現する。
【0008】
本発明は、実質的に純粋なハイブリッド細胞を代償にして培養で増殖し、教育され(educated)、抗原特異性免疫エフェクター細胞集団であって、ハイブリッド細胞が、1つまたは複数の抗原を発現する細胞に融合している抗原提示細胞(APC)である集団も提供する。本発明は、活性化され、増殖した免疫エフェクター細胞集団も含む。例えば、細胞はエキソビボで活性化される。上記集団は、T細胞およびハイブリッド細胞を含む。細胞は、患者由来の免疫細胞およびハイブリッド細胞の共培養に由来してもよい。エフェクター細胞は、自己由来の腫瘍細胞を特異的に死滅させ、既知のまたは未知の腫瘍抗原を認識し、それによって、未知の腫瘍抗原を特定するために用いることができる。
【0009】
実質的に純粋な、教育され、増殖した、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する方法であって、免疫エフェクター細胞がTリンパ球であり、集団がCD4+免疫エフェクター細胞および細胞毒性CD8+免疫エフェクター細胞の両方を含む方法も、ここで提供される。具体的には、そのような方法は、複数のハイブリッド細胞を提供する工程であって、ハイブリッド細胞のそれぞれは少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍細胞または癌細胞との間の融合によって生成され、樹状細胞および腫瘍細胞または癌細胞は同じ種に由来し、樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、ハイブリッド細胞の少なくとも半分は免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)細胞表面抗原を発現する工程と;免疫エフェクター細胞集団を複数のハイブリッド細胞と接触させ、それによって、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する工程と;ハイブリッド細胞または抗CD3/CD28抗体単独への曝露と比較して、T細胞増殖、T細胞活性および/または腫瘍反応性T細胞を増加させるために、生じた集団を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程とを含む。例えば、これらの方法は、活性化されたT細胞の少なくとも約2倍の増加、腫瘍反応性T細胞の少なくとも約2倍の増加;および/または、T細胞増殖の少なくとも約2倍の増加をもたらすことができる。DC/腫瘍融合単独による刺激と比較したときの、DC/腫瘍融合と続く抗CD3/CD28による刺激の増加は、もう1つの特性、例えば、それらに限定されないが、T細胞増殖の程度;記憶エフェクター細胞の存在;集団中の活性T細胞の存在の増加(例えば、CD69発現を測定することによって);IFNγおよび/またはグランザイムBを発現する細胞の存在;腫瘍反応性T細胞の存在(例えば四量体染色によって);および/または集団中の調節T細胞の存在の枯渇(例えば、FoxP3発現を測定することによって)を調べることによって測定することができる。
【0010】
当業者は、本発明の方法が、活性化T細胞および調節T細胞の両方の増数をもたらすことを認識するであろう。しかし、融合への曝露および抗CD3/CD28抗体による増殖の後に観察される調節T細胞の数と比較したときには、より大きなパーセントの活性化されたT細胞が観察される。したがって、生じるT細胞集団は、活性化された表現型を主に表す。
【0011】
任意選択で、本発明の方法は、教育され、増殖したT細胞集団を、抗CD3/CD28抗体による増殖の後に調節T細胞の活性を除去するか、さもなければ低減させる化合物(複数可)と接触させる工程も含む。調節T細胞の活性を除去するか低減させる化合物には、例えばある種のサイトカインが含まれる。選抜方法を用いて、または、siRNAを用いて調節T細胞の重要な遺伝子の発現を抑制することによって、調節T細胞の活性を達成することができる可能性もある。
【0012】
免疫エフェクター細胞が少なくとも24時間の間に増殖することができるように、抗CD3/CD28抗体は、平らな基材(substrate)に、または、当技術分野で通常用いられる任意の他の適する基材もしくは表面に結合することを当業者は認識するであろう。
【0013】
これらの方法に従って、免疫エフェクター細胞および/またはハイブリッド細胞は、遺伝子改変された細胞であってよい。例えば、遺伝的改変は、ペプチド、リボザイム、アンチセンス配列、ホルモン、酵素、成長因子および/またはインターフェロンをコードするポリヌクレオチドの細胞(複数可)への導入を含むことができる。
【0014】
さらに、免疫エフェクター細胞は、ハイブリッド細胞と培養する前はナイーブであってよい。さらに、免疫エフェクター細胞は、1つまたは複数のサイトカインまたはアジュバントの存在下でハイブリッド細胞と培養することができる。適するサイトカインには、IL−7、IL−12および/またはIL−18が含まれるが、これらに限定されない。さらに、適するアジュバントには、CPG ODN、TLR7/8アゴニストおよび/またはTLR3アゴニストを含めることができるが、これらに限定されない。
【0015】
生じた増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団は、IL−7などのサイトカインを含む細胞培養培地で維持することができる。
【0016】
当業者は、樹状細胞および1つまたは複数の抗原を発現する腫瘍もしくは癌細胞が、自己由来または同種異系であってよいことを認識するであろう。一部の実施形態では、樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は、同じ個体から(すなわち同じヒトから)得られる。あるいは、樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は、同じ種(すなわち、Homo sapiens)の異なる個体から得られる。
【0017】
これらの方法で用いるのに適する樹状細胞は、末梢血、骨髄または皮膚に由来しても、またはそこから得てもよい。同様に、樹状細胞は、樹状細胞始原細胞から得ても、またはそれに由来してもよい。
【0018】
これらの方法と共に使用することが企図される腫瘍もしくは癌細胞には、乳癌細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、尿路上皮癌細胞、結腸癌細胞、直腸癌細胞または血液癌細胞が含まれるが、これらに限定されない。例えば、血液癌細胞には、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、多発性骨髄腫細胞および非ホジキンリンパ腫細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
さらに、当業者は、任意の腫瘍または癌細胞を本発明の方法のいずれかで用いることができることを認識するであろう。
【0020】
ここでは、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含む実質的に純粋な集団であって、1つまたは複数の抗原を発現する腫瘍もしくは癌細胞に融合している樹状細胞を含むハイブリッド細胞によって教育された、教育された抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含む。好ましくは、樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は同じ種に由来し、樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、融合細胞の少なくとも半分は、免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7および(c)細胞表面抗原を発現する。生じた、教育された免疫エフェクター細胞は、その後抗CD3/CD28抗体の存在下の培養物で増殖し、培養でのこの増殖の後に、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して、集団におけるT細胞の増殖が少なくとも約7倍増加しているか、集団におけるT細胞の活性化が少なくとも約4倍増加しているか、集団における腫瘍反応性T細胞が少なくとも約13倍増加しているか、またはそれらの任意の組合せである。
【0021】
樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は、同じ個体(すなわち同じヒト)または同じ種(すなわち、Homo sapiens)の異なる個体から得られる。
【0022】
一実施例では、腫瘍もしくは癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、集団におけるT細胞の増殖が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約13倍増加していること;集団における記憶エフェクター細胞の存在が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加していること、集団におけるT細胞の活性化が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約8倍増加していること;IFNγおよびグランザイムBを発現する細胞の集団における存在が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して、それぞれ少なくとも約2.5倍および3.75倍増加していること;ならびに、集団における腫瘍反応性T細胞が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約13倍増加していることが観察されている。
【0023】
当業者は、集団における様々な細胞の数の増加倍率が、本発明で用いる腫瘍もしくは癌細胞のタイプによって決まることを認識するであろう。さらに、特定の癌タイプ内で患者間の変動が存在する。
【0024】
DC/腫瘍融合単独による刺激と比較した、DC/腫瘍融合と、それに続く抗CD3/CD28とによる刺激の平均増加倍率を、下の表1に示す。
【0025】
【表1】
生じた、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団は、細胞集団および薬学的に許容される担体を含むことができるワクチンとして用いることもできる。
【0026】
ここでは、免疫応答を誘導するために、この増殖し、教育された免疫エフェクター細胞集団を個体に投与することによって、癌を治療する方法も提供される。例えば、治療される癌は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、肺癌、尿路上皮癌、結腸癌、直腸癌、脳癌(例えば、神経膠腫)または血液癌からなる群より選択される。例えば、適する血液癌には、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫および非ホジキンリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
当業者は、そのような治療方法が、複数のハイブリッド細胞の有効量の共投与(co−administration)を含むこともでき、ハイブリッド細胞のそれぞれは、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍細胞または癌細胞との間の融合によって生成され、樹状細胞および腫瘍細胞または癌細胞は同じ種に由来し、ハイブリッド細胞の少なくとも半分は、免疫系を刺激するのに有効な量で、(a)MHCクラスII分子、(b)B7および(c)細胞表面抗原を発現することを認識するであろう。例えば、共投与は、逐次的または同時に行われてもよい。
【0028】
さらに、治療が必要な個体に、集団の投与の前にリンパ球を枯渇させる治療を投与することができる。具体的には、この治療は、個体においてリンパ球減少を誘導する。適する治療の例には、それらに限定されないが、フルダラビンまたは放射線の投与が含まれる。
【0029】
増殖し、教育された免疫エフェクター細胞集団は、幹細胞移植の後に個体に投与することができる。
【0030】
本発明は、抗原性活性についてペプチドを試験する方法も特徴とする。具体的には、そのような方法は、樹状細胞と腫瘍もしくは癌細胞との融合産物を含み、その表面にB7を発現するハイブリッド細胞を提供する工程と;ハイブリッド細胞を免疫エフェクター細胞と接触させ、それによって教育された免疫エフェクター細胞を生成する工程と;教育された免疫エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と;ペプチドの存在下で標的細胞を教育された免疫エフェクター細胞と接触させる工程とを含む。当業者は、標的細胞の溶解が、前記ペプチドを抗原性ペプチドと同定することを認識するであろう。
【0031】
抗原性活性についてペプチドを試験する方法であって、複数の細胞を提供する工程であり、前記複数の細胞の少なくとも5%が、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍もしくは癌細胞との間の融合によって生成される融合細胞であり、融合細胞が、免疫応答を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(ii)B7および(iii)前記細胞表面抗原を発現する工程と;ヒトTリンパ球の集団を前記複数の細胞と接触させる工程であり、Tリンパ球の集団内のエフェクター細胞前駆体細胞の、細胞傷害性Tリンパ球を含むエフェクター細胞への分化を引き起こす工程と;細胞傷害性Tリンパ球を含むエフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と;複数の標的細胞を前記ペプチドの存在下でTリンパ球を含むエフェクター細胞と接触させる工程とを含む方法も提供される。そのような方法では、複数の標的細胞またはその一部の溶解は、前記ペプチドを、細胞傷害性Tリンパ球によって認識される抗原性ペプチドと同定する。
【0032】
最後に、本発明は、本明細書で開示される方法のいずれかによって特定される抗原性ペプチドおよび担体を含むワクチンも提供する。
【0033】
特に定義されていない場合は、本明細書で用いるすべての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書のすべての引用文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図、詳細な説明および請求項から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】単球由来の樹状細胞(DC)、腎細胞癌(「RCC」)細胞系、RCC 786および融合細胞の免疫組織化学的分析の結果を示す図である。DCは、正常な供与体から得られたロイコパック(leukopak)コレクションから単離された、接着性単核細胞から生成された。DCをGM−CSFおよびIL−4と5日間培養し、次に、TNFαへの48〜72時間の曝露によって成熟させた。DC調製物は、同時刺激分子の発現について、免疫組織化学的分析にかけた。CD86(青色)のDC発現を、図1Aに示す(60×)。RCC 786細胞をRPMI 1640完全培地で培養し、腫瘍関連抗原サイトケラチンおよびCAMの発現について、免疫組織化学的分析にかけた。CAM(赤色)の腫瘍発現を、図1Bに示す(60×)。PEGの存在下でのDCおよびRCC 786細胞の共培養によって、融合細胞を生成した。DC由来の同時刺激分子CD86(青色)および腫瘍関連抗原CAM(赤色)の同時発現について、融合細胞調製物を免疫組織化学的分析にかけた(図1C)。
【図2】T細胞増殖に及ぼす、融合細胞、抗CD3/CD28による刺激、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の影響を示す図である。T細胞を、1)1:10の融合対T細胞の比率で、融合細胞と7日間共培養した;2)抗CD3/CD28でコーティングしたプレート上で48時間培養した;3)融合細胞と5日間、その後抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した;または4)抗CD3/CD28と48時間培養し、その後、融合細胞で5日間刺激した。刺激の後、終夜パルス後のトリチウムチミジンの取込みによって、T細胞増殖を測定した。図2Aは、刺激指数(未刺激のT細胞の共培養/増殖の後のT細胞増殖)で表した結果を示す。9回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。融合細胞、抗CD3/CD28、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞を、ナイーブな(CD45RA)および記憶(CD45RO)T細胞集団の存在について評価するために、表現型分析にかけた。刺激されたT細胞をFITC結合CD4およびPE結合CD45RAもしくはCD45ROとインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。4回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と図2Bに示す。
【図3】融合細胞、抗CD3/CD28、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞の表現型分析の結果を示す図である。融合細胞、抗CD3/CD28、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞を、CD4およびCD25の同時発現について評価するために、多チャネルフローサイトメトリーによる表現型分析にかけた。図3Aは、二重発現細胞のパーセントを判定するために、FITC結合CD4およびサイクローム(cychrome)結合CD25で染色した刺激されたT細胞集団の結果を示す。11回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激が、調節T細胞(CD4+CD25+FOXP3+)と比較して活性化された(CD4+CD25+CD69+)の増殖をもたらすかを調べた。刺激されたT細胞調製物を、FITC結合CD4、サイクローム結合CD25およびPE結合CD69について染色した。あるいは、細胞をCD4/CD25について染色し、透過性にし、PE結合Foxp3またはマッチさせたアイソタイプ対照抗体とインキュベートした。CD4/CD25+T細胞をFACSゲーティングによって単離し、CD69およびFoxp3の発現を測定した。図3Bに示すように、結果を、全T細胞集団に対する活性化T細胞または調節T細胞のパーセントとして提示する。9回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。
【図4A】単球由来の樹状細胞(DC)の表現型分析の結果を示す図である。DCは、乳癌患者の末梢血から単離された接着性単核細胞から生成し、ロイコパックは正常な供与体から得た。細胞をGM−CSF(1000IU/ml)およびIL−4(1000IU/ml)と5〜7日間培養し(未熟DC)、サブセットをTNFα(25ηg/ml)で48〜72時間成熟させた。同時刺激および成熟マーカーの発現を調べるために、未熟および成熟DCをFACS分析にかけた。図4Aは、代表的な未熟および成熟DC調製物のFACs分析を示す。図4Bは、15回の実験からの、指示された表面マーカーを発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。成熟は、同時刺激(CD80およびCD86)および成熟(CD83)マーカーの発現の増加をもたらす。
【図4B】単球由来の樹状細胞(DC)の表現型分析の結果を示す図である。DCは、乳癌患者の末梢血から単離された接着性単核細胞から生成し、ロイコパックは正常な供与体から得た。細胞をGM−CSF(1000IU/ml)およびIL−4(1000IU/ml)と5〜7日間培養し(未熟DC)、サブセットをTNFα(25ηg/ml)で48〜72時間成熟させた。同時刺激および成熟マーカーの発現を調べるために、未熟および成熟DCをFACS分析にかけた。図4Aは、代表的な未熟および成熟DC調製物のFACs分析を示す。図4Bは、15回の実験からの、指示された表面マーカーを発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。成熟は、同時刺激(CD80およびCD86)および成熟(CD83)マーカーの発現の増加をもたらす。
【図5A】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5B】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5C】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5D】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5E】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5F】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図6A】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図6B】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図6C】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図6D】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図7A】DC/乳癌融合による自己由来T細胞の刺激の後の、培養上清のサイトカイン発現を示す図である。自己由来の非接着性細胞と共培養した未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合細胞の培養上清のTh1、Th2および炎症性サイトカインのプロフィールを、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析キットを用いて定量化した。図7Aにおいて、上のパネルは、BD CellQuestソフトウェアによるデータ収集と、それに続くデータフォーマットおよびその後のBD CBAソフトウェアを用いての分析との後の、Th1/Th2および炎症性サイトカインの蛍光ビーズアレイドット−プロットアッセイディスプレイを表す、単一の実験からの代表的な実施例を示す。図7Bでは、培養上清中のIL−2、IL−4、IL−10、IL−12、TNFαおよびIFNγサイトカイン(pg/ml)の平均(±SEM)濃度は、一連の4回(対照としてDC+自己由来非接着性細胞共培養)、および11回(自己由来非接着性細胞と共培養した未熟および成熟DC/乳癌融合細胞)の別々の実験から提供される(IM−DC融合:未熟な樹状細胞融合;M−DC融合:成熟した樹状細胞融合)。
【図7B】DC/乳癌融合による自己由来T細胞の刺激の後の、培養上清のサイトカイン発現を示す図である。自己由来の非接着性細胞と共培養した未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合細胞の培養上清のTh1、Th2および炎症性サイトカインのプロフィールを、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析キットを用いて定量化した。図7Aにおいて、上のパネルは、BD CellQuestソフトウェアによるデータ収集と、それに続くデータフォーマットおよびその後のBD CBAソフトウェアを用いての分析との後の、Th1/Th2および炎症性サイトカインの蛍光ビーズアレイドット−プロットアッセイディスプレイを表す、単一の実験からの代表的な実施例を示す。図7Bでは、培養上清中のIL−2、IL−4、IL−10、IL−12、TNFαおよびIFNγサイトカイン(pg/ml)の平均(±SEM)濃度は、一連の4回(対照としてDC+自己由来非接着性細胞共培養)、および11回(自己由来非接着性細胞と共培養した未熟および成熟DC/乳癌融合細胞)の別々の実験から提供される(IM−DC融合:未熟な樹状細胞融合;M−DC融合:成熟した樹状細胞融合)。
【図8】未熟および成熟DC/乳癌融合は、腫瘍標的の溶解およびMUC−1特異的T細胞の増殖を刺激することを示す図である。図8Aでは、未熟および成熟DC/乳癌融合細胞を、30:1の比率で自己由来T細胞と7〜10日間共培養した。T細胞を、51Cr標識自己由来乳房腫瘍細胞、または半自己由来のDC/乳癌融合細胞とインキュベートした。標識細胞の溶解は、クロム放出アッセイで測定した。未熟もしくは成熟DC/乳癌融合細胞による刺激の後の、平均細胞毒性のパーセント(±SEM)を提供する。図8Bは、成熟DC/乳癌融合による刺激が、MUC1四量体に結合するT細胞の増殖をもたらすことを示す。HLA*0201供与体から生成されたDCを乳癌細胞と融合させ、自己由来のT細胞と5日間培養した。融合細胞による刺激の前後におけるMUC1四量体に結合するCD8+T細胞のパーセントを二次元FACS分析で測定し、対照四量体で見られるものと比較した。
【図9A】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図9B】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図9C】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図9D】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図10A】DC/乳癌融合細胞による刺激の後の、IFNγ、IL−10およびFoxp3に続くT細胞の増殖を示す図である。自己由来T細胞を、DC/乳癌融合と5〜7日間共培養した。磁気ミクロビーズを用いたCD4+T細胞の選択の後に、細胞をFITC結合CD25で染色し、Cytofix/Cytoperm溶液で透過性にし、PE結合IFNγ、IL−10またはFoxp3抗体で染色した。図10Aは、IFNγ、IL−10またはFoxp3を発現する、未刺激の(上のパネル)および融合によって刺激されたCD4+CD25+ T細胞(下のパネル)の代表的なFACS分析を示す。図10Bは、一連の9〜14回の実験のスタッキングドットプロットグラフを示す。実験の各ドットプロット群を覆う影付きのヒストグラムは、その群の平均を表す。
【図10B】DC/乳癌融合細胞による刺激の後の、IFNγ、IL−10およびFoxp3に続くT細胞の増殖を示す図である。自己由来T細胞を、DC/乳癌融合と5〜7日間共培養した。磁気ミクロビーズを用いたCD4+T細胞の選択の後に、細胞をFITC結合CD25で染色し、Cytofix/Cytoperm溶液で透過性にし、PE結合IFNγ、IL−10またはFoxp3抗体で染色した。図10Aは、IFNγ、IL−10またはFoxp3を発現する、未刺激の(上のパネル)および融合によって刺激されたCD4+CD25+ T細胞(下のパネル)の代表的なFACS分析を示す。図10Bは、一連の9〜14回の実験のスタッキングドットプロットグラフを示す。実験の各ドットプロット群を覆う影付きのヒストグラムは、その群の平均を表す。
【図11A】CPG−ODN、IL12およびIL18の添加が、DC/乳癌融合による調節T細胞の増殖の枯渇をもたらすことを示す図である。DC/乳癌融合細胞を、CpG ODN、IL−12またはIL−18の存在下または非存在下で、自己由来T細胞と5日間共培養した。図11Aは、CD4+細胞の選択の後、CD4+/CD25+のパーセントを各条件について二次元FACS分析で測定したことを示す。図11Bは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。図11Cは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。
【図11B】CPG−ODN、IL12およびIL18の添加が、DC/乳癌融合による調節T細胞の増殖の枯渇をもたらすことを示す図である。DC/乳癌融合細胞を、CpG ODN、IL−12またはIL−18の存在下または非存在下で、自己由来T細胞と5日間共培養した。図11Aは、CD4+細胞の選択の後、CD4+/CD25+のパーセントを各条件について二次元FACS分析で測定したことを示す。図11Bは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。図11Cは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。
【図11C】CPG−ODN、IL12およびIL18の添加が、DC/乳癌融合による調節T細胞の増殖の枯渇をもたらすことを示す図である。DC/乳癌融合細胞を、CpG ODN、IL−12またはIL−18の存在下または非存在下で、自己由来T細胞と5日間共培養した。図11Aは、CD4+細胞の選択の後、CD4+/CD25+のパーセントを各条件について二次元FACS分析で測定したことを示す。図11Bは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。図11Cは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。
【図12A】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12B】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12C】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12D】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12E】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12F】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図13】T細胞増殖に及ぼす、DC/骨髄腫融合細胞による刺激、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の影響を示す図である。多発性骨髄腫(MM)を有する患者に由来するT細胞を、1:10の融合対T細胞の比率で融合細胞と7日間共培養するか、融合細胞と5日間共培養した後、抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した。刺激の後、終夜パルスの後のトリチウムチミジンの取込みによって、T細胞増殖を測定した。
【図14】自己由来の腫瘍標的細胞の溶解に及ぼす、DC/骨髄腫融合細胞によって刺激された、または融合および抗CD3/CD28によって逐次的に刺激された自己由来のT細胞の影響を示す図である。DC、腫瘍およびT細胞は、多発性骨髄腫の患者に由来した。自己由来のT細胞を、抗CD3CD28単独で48時間、抗CD3CD28で48時間の後DC/MM融合刺激で5日間、DC/MM融合細胞単独で7日間、または、DC/MM融合細胞で5日間の後抗CD3CD28への曝露によって48時間刺激した。図14は、標準の51Cr放出アッセイで測定された、自己由来の腫瘍標的の溶解率を示す。
【図15】DC/乳癌融合細胞および抗CD3/CD28による刺激の後の、平均T細胞増殖を示す図である。
【図16】IFNγの細胞内発現を示す図である。刺激されたT細胞調製物を、FITC結合CD4について染色した。次に細胞を洗浄し、透過性にし、PE結合抗ヒトIFNγまたはマッチさせたアイソタイプ対照抗体とインキュベートした。IFNγの細胞内発現を、フローサイトメトリー分析で測定した。8回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。
【図17】MUC1四量体に結合するCD8+細胞のパーセントを示す図である。HLA*0201+自己由来非接着性細胞を、融合細胞、抗CD3CD28、融合と、それに続く抗CD3CD28と、それに続く融合細胞、および抗CD3/CD28と、それに続く融合細胞と共培養した。細胞を収集し、MUC1特異的PE結合四量体または対照四量体を用いて、および適当なCD8+T細胞ゲーティングを用いて、MUC1+CD8+T細胞について分析した。MUC1四量体に結合するCD8+細胞のパーセント(対照四量体への非特異的結合を差し引いた後)を提供する。2回の実験からの平均値を提供する。
【図18】グランザイムBを発現する、陽性のCD8+細胞のパーセントを示す図である。T細胞を、融合細胞、抗CD3/CD28、融合細胞と、それに続く抗CD3/CD28、および抗CD3CD28と、それに続く融合細胞と共培養した。細胞をFITC結合CD8抗体で染色し、固定し、透過性にし、PE結合グランザイムB抗体またはマッチさせたアイソタイプ対照とインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。棒グラフは、グランザイムBを発現する、陽性のCD8+細胞のパーセントの平均増加倍率(±SEM)を示す。
【図19】融合細胞の免疫組織化学染色を示す図である。急性骨髄性白血病患者の骨髄穿刺液または末梢血採集物から、骨髄性白血病細胞を単離した。PEGを用いて、白血病細胞を成熟DCと融合させた。融合細胞は、免疫細胞化学染色(100×)により、腫瘍マーカーCD117(青色)およびDCマーカーCD11C(赤色)の同時発現を示す。
【図20】DC/AML融合、DC/AML融合と、それに続く抗CD3/CD2K、および抗CD3/CD28と、それに続くDC/AML融合で刺激したT細胞についての、T細胞増殖(刺激指数によって測定した)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
様々な刊行物、特許および公開特許明細書が、特定引用文献によって本明細書内で参照される。これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示物は、本発明が関係する最新技術をより完全に記載するために、ここに参照により本開示に組み込まれる。
【0037】
定義
本発明の実施は、特に明記しない限り、当技術分野の範囲内である、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の技術を使用する。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版(1989年);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F. M. Ausubelら編、(1987年));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press, Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(Mi. MacPherson、B.D. HamesおよびG.R. Taylor編(1995年))およびANIMAL CELL CULTURE(Rd. Freshney編(1987年))を参照。
【0038】
本明細書で用いるように、特定の用語は、以下の定義された意味を有する。本明細書および特許請求の範囲で用いるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、複数体を含む。例えば、用語「細胞」は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0039】
用語「免疫エフェクター細胞」は、例えば新生物または腫瘍細胞の上に存在する抗原を、特異的に認識する細胞を指す。本発明のために、免疫エフェクター細胞には、B細胞;単球;マクロファージ;NK細胞;ならびにT細胞、例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、例えば腫瘍、炎症部位または他の浸潤物からのCTL系、CTLクローンおよびCTLが含まれるが、これらに限定されない。「Tリンパ球」は、表現型的にCD3+であるリンパ球を表し、一般的に、適する標識化技術と組み合わせた抗CD3モノクローナル抗体を用いて検出される。本発明のTリンパ球は、一般的にCD4、CD8またはその両方にも陽性である。用語「ナイーブな」免疫エフェクター細胞は、抗原に遭遇していない免疫エフェクター細胞を指し、抗原刺激を受けていないおよびバージンと同義とされる。「教育された」は、抗原と相互作用した免疫エフェクター細胞を指し、したがってそれらは抗原特異的細胞に分化する。
【0040】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、好ましくはクラスI MHC分子と、1つまたは複数の抗原の提示を誘導することができる無傷の完全な細胞、ならびに他の分子の両方を含む。適するAPCの例は以下に詳細に述べられ、例えば、完全細胞、例えばマクロファージ、樹状細胞、B細胞;β2−マイクログロブリンと複合体を形成した精製MHCクラスI分子;およびフォスター抗原提示細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
樹状細胞(DC)は、強力なAPCである。DCは、様々な免疫器官、例えば脾臓、胸腺、リンパ節、表皮および末梢血のマイナーな構成要素である。例えば、DCは、粗脾臓(Steinmanら(1979年)J. Exp. Med149巻:1頁を参照)または表皮細胞懸濁液(Schulerら(1985年)J. Exp. Med161巻:526頁;RomaniらJ. Invest. Dermatol(1989年)93巻:600頁を参照)の約1%、および末梢血中の単核細胞の0.1〜1%だけに該当する(FreudenthalらProc. Natl Acad Sci USA(1990年)87巻:7698頁を参照)。末梢血または骨髄前駆体からDCを単離する方法は、当技術分野で公知である。(Inabaら(1992年)J. Exp. Med175巻:1157頁;Inabaら(1992年)J. Exp. Med176巻:1693〜1702頁;Romaniら(1994年)J. Exp. Med.180巻:83〜93頁;Sallustoら(1994年)J. Exp. Med179巻:1109〜1118頁)を参照)。DCの単離および培養のための好ましい方法は、Benderら(1996年)J.Immun. Meth.196巻:121〜135頁およびRomaniら(1996年)J. Immun. Meth196巻:137〜151頁に記載されている。
【0042】
樹状細胞(DC)は、主に一次免疫の開始および免疫応答の調節を担う、抗原提示細胞の複雑なネットワークである。(Avigan、Blood Rev.13巻:51〜64頁(1999年);Banchereauら、Nature392巻:245〜52頁(1998年)を参照)。部分的に成熟したDCは抗原捕捉部位に位置し、外来性抗原の内在化およびプロセシングに優れているが、T細胞応答の刺激因子としては劣る。未熟なDCによる抗原提示は、T細胞耐性を誘導することがある。(Dhodapkarら、J Exp Med.193巻:233〜38頁(2001年)を参照)。活性化後、DCは、同時刺激分子および、流入領域リンパ節におけるT細胞輸送部位への移動を促進するケモカイン受容体CCR7の発現の増加によって特徴づけられる成熟を経る。腫瘍もしくは癌細胞は、IL−10、TGF−βおよびVEGFの分泌を通して、DCの発達を阻害し、抗腫瘍応答を潜在的に抑制する腫瘍層での未熟なDCの蓄積をもたらす。(Allavenaら、Eur. J. Immunol.28巻:359〜69頁(1998年);Gabrilovichら、Clin Cancer Res.3巻:483〜90頁(1997年);Gabrilovichら、Blood92巻:4150〜66頁(1998年);Gabrilovich、Nat Rev Immunol4巻:941〜52頁(2004年)を参照)。逆に言えば、活性化DCは、エキソビボでDC前駆体のサイトカイン媒介性の分化によって生成することができる。DCの成熟および機能は、Toll様受容体9アゴニストCPG ODNへの曝露によって、さらに高めることができる。さらに、抗腫瘍免疫を強力に刺激する腫瘍抗原を提示するように、DCを操作することができる。(Asavaroenhchaiら、Proc Natl Acad Sci USA99巻:931〜36頁(2002年);Ashleyら、J Exp Med186巻:1177〜82頁(1997年)を参照)。
【0043】
「フォスター抗原提示細胞」は、それらが反応する免疫エフェクター細胞に通常接触する抗原提示細胞(「APC」)の代わりに利用される、抗原提示能力を有する任意の改変細胞または天然の細胞(野生型または突然変異体)を指す。言い換えると、それらは、T細胞がインビボで通常遭遇しないであろう任意の機能的APCである。
【0044】
DCは、T細胞の活性化および増殖のために必要とされるすべてのシグナルを提供することが示された。これらのシグナルを、2つの型に分類することができる。免疫応答に特異性を与える第一のタイプは、APC表面でのT細胞受容体/CD3(「TCR/CD3」)複合体と、主要組織適合性複合体(「MHC」)クラスIまたはIIタンパク質によって提示される抗原性ペプチドとの間の相互作用を通して媒介される。この相互作用は、T細胞の活性化が起こるために必要であるが、十分でない。実際、第二のタイプのシグナルがないと、第一のタイプのシグナルは、T細胞アネルギーをもたらすことができる。同時刺激シグナルと呼ばれる第二のタイプのシグナルは、抗原特異的でもMHC限定でもなく、第一のタイプのシグナルの存在下で、T細胞の完全な増殖応答およびT細胞エフェクター機能の誘導をもたらすことができる。
【0045】
したがって、用語「サイトカイン」は、細胞に対して様々な効果を発揮する、例えば成長または増殖を誘導する、多数の因子のいずれかを指す。サイトカインのそれには限定されない例には、IL−2、幹細胞因子(SCF)、IL−3、IL−6、IL−7、IL−12、IL−15、G−CSF、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、MIP−1α、LIF、c−kitリガンド、TPOおよびflt3リガンドが含まれる。サイトカインは、いくつかの供給業者、例えばGenzyme Corp.(Framingham、Mass.)、Genentech(South San Francisco、CA)、Amgen(Thousand Oaks、CA)およびImmunex(Seattle、WA)から市販されている。常に明示されているわけではないが、野生型のサイトカインまたは精製されたサイトカイン(例えば、組換えで生成されたサイトカイン)と類似した生物活性を有する分子は、本発明の精神および範囲の中で用いられるものとし、したがって、野生型のまたは精製されたサイトカインの代用品であるものとする。
【0046】
「同時刺激分子」は、抗原提示細胞およびT細胞の表面で発現される受容体−リガンド対の間の相互作用に関与する。1つの例示的な受容体−リガンド対は、DC表面のB7同時刺激分子およびT細胞上のその反受容体CD28またはCTLA−4である。(Freemanら(1993年)Science262巻:909〜911頁;Youngら(1992年)J. Clin. Invest90巻:229頁;NabaviらNature360巻:266頁を参照)。他の重要な同時刺激分子には、例えば、CD40、CD54、CD80およびCD86が含まれる。これらは、上で特定した供給業者から市販されている。
【0047】
「ハイブリッド」細胞は、両方の抗原提示能力を有し、さらに1つまたは複数の特異的抗原を発現する細胞を指す。一実施形態では、これらのハイブリッド細胞は、APCを、関心の1つまたは複数の抗原を発現することが公知である細胞とインビトロで融合することによって形成される。本明細書で用いるように、用語「ハイブリッド」細胞および「融合」細胞は、互換的に用いられる。
【0048】
「対照」細胞は、抗原発現細胞の集団と同じ抗原を発現しない細胞を指す。
【0049】
用語「培養する」は、様々な種類の培地の上または中での細胞または生物体のインビトロ増殖を指す。培養で増殖させた細胞の30代子孫は、親細胞と完全に同一ではない(すなわち、形態学的、遺伝的または表現型的に)ものと理解される。「増殖した」は、細胞の任意の増殖または分裂を意味する。
【0050】
「有効量」は、有益または所望の結果を達成するのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬で投与することができる。本発明の目的のために、ハイブリッド細胞の有効量は、抗原特異的な免疫エフェクター細胞、例えばT細胞の増殖を促進する量である。
【0051】
「単離された」細胞集団は、それが本来関連している細胞および物質を「実質的に含まない」。「実質的に含まない」または「実質的に純粋な」は、集団の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が所望の細胞タイプであることを意味する。「濃縮」細胞集団は、少なくとも5%が融合細胞である。好ましくは、濃縮集団は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%の融合細胞を含む。
【0052】
本明細書で用いる用語「自己由来」または「自原性」は、細胞の起源を示す。したがって、個体(「レシピエント」)に投与される細胞は、その細胞がその個体(「ドナー」)または遺伝的に同一の個体(すなわち、その個体の一卵性双子)に由来するならば自原性である。自原性細胞は、自原性細胞の後代であってもよい。この用語は、異なる細胞型の細胞が、同じ供与体または遺伝的に同一の供与体に由来することも示す。したがって、エフェクター細胞および抗原提示細胞は、それらが同じ供与体もしくは供与体に遺伝的に同じ個体に由来する場合、またはそれらが同じ供与体もしくは供与体に遺伝的に同じ個体に由来する細胞の後代である場合、自原性であると言われる。
【0053】
同様に、本明細書で用いる用語「同種異系」は、細胞の起源を示す。したがって、個体(「レシピエント」)に投与される細胞は、その細胞がレシピエントと遺伝的に同一でない個体に由来する場合、同種異系である。詳細には、この用語は発現されるMHC分子の非同一性に関する。同種異系細胞は、同種異系細胞の後代であってもよい。この用語は、異なる細胞型の細胞が遺伝的に同一でない供与体に由来すること、または、それらが遺伝的に同一でない供与体に由来する細胞の後代である場合も示す。例えば、APCは、それらが遺伝的に同一でない供与体に由来する場合、エフェクター細胞に同種異系であると言われる。
【0054】
「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、マウス、サル、ヒト、畜産動物、スポーツ動物およびペットが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で用いるように、「遺伝子改変」は、細胞の内因性ヌクレオチドに対する任意の付加、欠失または破壊を指す。
【0056】
「ウイルスベクター」は、インビボ、エキソビボまたはインビトロで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む、組換えで生成されたウイルスまたはウイルス粒子と定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどが含まれる。遺伝子導入がレトロウイルスベクターによって媒介される態様では、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノムまたはその一部および治療的な遺伝子を含むポリヌクレオチドを指す。
【0057】
本明細書で用いるように、用語「レトロウイルス媒介遺伝子導入」または「レトロウイルス形質導入」は同じ意味を含み、遺伝子または核酸配列が、細胞に入って宿主細胞ゲノムにそのゲノムを組み込むウイルスによって、宿主細胞に安定して導入される過程を指す。ウイルスは、その感染の正常な機構を通して宿主細胞に入ることができるように、またはそれが異なる宿主細胞表面受容体またはリガンドに結合して、細胞に入るように改変することができる。
【0058】
レトロウイルスは、それらの遺伝情報をRNAの形で運ぶ。しかし、ウイルスが細胞に感染すると、RNAは、感染細胞のゲノムDNAに組み込まれるDNAの形態に逆転写される。組み込まれたDNAの形態は、プロウイルスと呼ばれる。
【0059】
遺伝子導入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルスベクターによって媒介される態様では、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部および治療的な遺伝子を含むポリヌクレオチドを指す。アデノウイルス(Ad)は、比較的よく特徴づけられた均質の群のウイルスであり、50以上の血清型を含む。(例えば、WO95/27071を参照)。Adは増殖させるのが簡単で、宿主細胞ゲノムに組み込まれない。組換え体Ad由来のベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび生成の可能性を減少させたものも構築した。(WO95/00655;WO95/11984を参照)。野生型AAVは、高い感染性および特異性を有し、宿主細胞ゲノムに組み込まれる。(Hermonat and Muzyczka(1984年)PNAS USA81巻:6466〜6470頁;Lebkowskiら、(1988年)Mol Cell Biol8巻:3988〜3996頁を参照)。
【0060】
プロモーターおよびポリヌクレオチドを作動可能に連結することができるクローニング部位の両方を含むベクターは、当技術分野で周知である。そのようなベクターはRNAをインビトロまたはインビボで転写することができ、Stratagene(La Jolla、CA)およびPromega Biotech(Madison、Wl)などの販売元から市販されている。発現および/またはインビトロ転写を最適化するために、余分の、潜在的な不適当な代替翻訳開始コドンを除去するために、または、転写または翻訳のレベルで発現を妨害または低減することができる他の配列を除去するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去するか、加えるか、変化させることが必要であろう。あるいは、発現を強化するために、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンの5’に直に挿入することができる。適するベクターの例は、様々な真核および原核生物の宿主での発現について記載され、遺伝子治療ならびに単なるタンパク質発現のために用いることができる、当技術分野で一般的に用いられるバキュロウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌類のベクター、および他の組換え媒体である。
【0061】
これらには、DNA/リポソーム複合体および標的ウイルスタンパク質DNA複合体を含む、いくつかの非ウイルスベクターが含まれる。細胞への送達を高めるために、本発明の核酸またはタンパク質を、細胞表面抗原、例えばTCR、CD3またはCD4に結合する抗体またはその結合性断片にコンジュゲートさせることができる。また、ターゲティング抗体またはその断片も含むリポソームを、本発明の方法で用いることができる。本発明は、本明細書で開示される方法で使用するための、ターゲティング複合体も提供する。
【0062】
当技術分野で周知の方法を用いて、ポリヌクレオチドをベクターゲノムに挿入する。例えば、適する条件下で、挿入断片およびベクターDNAを制限酵素と接触させて、互いと対になること、およびリガーゼで結合することができる相補的末端を各分子の上に形成することができる。あるいは、切断されたポリヌクレオチドの末端に、合成核酸リンカーを連結することができる。これらの合成リンカーは、ベクターDNAの特定の制限部位に対応する核酸配列を含む。さらに、終結コドンおよび適当な制限部位を含むオリゴヌクレオチドを、例えば以下のいくつかまたは全部を含むベクターへの挿入のために連結することができる:選択可能なマーカー遺伝子、例えば哺乳動物細胞での安定したまたは一時的なトランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子;高レベル転写のためのヒトCMVの極初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結およびRNAプロセシングシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマ複製開始点およびColEI;多用途の複数のクローニング部位;ならびに、センスおよびアンチセンスRNAのインビトロ転写のためのT7およびSP6 RNAプロモーター。他の手段が当技術分野で周知であり、利用可能である。
【0063】
本明細書で用いるように、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写され、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳される過程を指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、適当な真核生物の宿主が選択されるならば、発現はmRNAのスプライシングを含むことができる。発現のために必要とされる調節要素には、RNAポリメラーゼに結合するためのプロモーター配列、およびリボソーム結合のための転写開始配列が含まれる。例えば、細菌発現ベクターは、ラックプロモーターなどのプロモーターを、ならびに、転写開始のために、シャイン−ダルガノ配列および開始コドンAUGを含む(Sambrookら(1989年)、上記)。同様に、真核生物の発現ベクターは、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種のプロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボソームの分離のための終結コドンを含む。そのようなベクターは、市場から得ること、または、当技術分野で周知の方法、例えばベクター一般を構築するために上に記載した方法に記載の配列によって組み立てることができる。
【0064】
用語「主要組織適合複合体」または「MHC」は、T細胞などの免疫エフェクター細胞への抗原提示のために、および急激な移植片拒絶のために必要とされる細胞表面分子をコードする遺伝子の複合体を指す。ヒトでは、MHC複合体は、HLA複合体としても公知である。MHC複合体によってコードされるタンパク質は、「MHC分子」として公知であり、クラスIおよびクラスIIのMHC分子に分類される。クラスI MHC分子は、β2−マイクログロブリンと非共有結合しているMHCでコードされるα鎖で構成される膜ヘテロダイマータンパク質を含む。クラスI MHC分子は、ほとんどすべての有核細胞によって発現され、CD8+T細胞への抗原提示で機能することが示された。ヒトでは、クラスI分子には、HLA−A、−Bおよび−Cが含まれる。MHCクラスII分子も、非共有結合しているJ3鎖からなる膜ヘテロダイマータンパク質を含む。クラスII MHCはCD4+ T細胞で機能することが公知であり、ヒトでは、HLA−DP、−DQおよびDRが含まれる。用語「MHC限定」は、それがプロセシングされた後にT細胞に抗原だけを認識させるT細胞の特徴を指し、生じた抗原性ペプチドは、クラスIまたはクラスIIのMHC分子に結合して提示される。MHCを特定して比較する方法は当技術分野で周知であり、Allen M.ら(1994年)Human Imm.40巻:25〜32頁;Santamaria P.ら(1993年)Human Imm.37巻:39〜50頁;およびHurley C.K.ら(1997年)Tissue Antigens50巻:401〜415頁に記載されている。
【0065】
用語「配列モチーフ」は、15の分子(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)の群に存在するパターンを指す。例えば、一実施形態では、本発明は、抗原に存在するペプチドの間で、配列モチーフの同定を可能にする。この実施形態では、一般的なパターンは、疎水性、親水性、塩基性、酸性などの特徴のあるアミノ酸残基によって同定することができる。
【0066】
用語「ペプチド」は、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド様物質の化合物を指すものとして、その最も広い意味で用いられる。サブユニットは、ペプチド結合によって連結することができる。別の実施形態では、サブユニットは、例えばエステル、エーテルなど、他の結合によって連結することができる。
【0067】
本明細書で用いるように、用語「アミノ酸」は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方を含む天然および/または25の非天然のもしくは合成されたアミノ酸、およびアミノ酸類似体およびペプチド様物質を指す。3つ以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短い場合、通常オリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは通常ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0068】
本明細書で用いるように、「固相支持体」は「担体」の例として用いられ、特定のタイプの支持体に限定されない。むしろ、多数の支持体が利用可能であり、当業者に公知である。固相支持体には、シリカゲル、樹脂、誘導体化されたプラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲルが含まれる。適する固相支持体は、所望の最終使用および様々な合成プロトコルとの適合性に基づいて選択することができる。例えば、ペプチド合成のために、固相支持体は、ポリスチレン(例えば、Bachem Inc.、Peninsula Laboratoriesから得られるPAM樹脂など)、POLYHIPE(登録商標)樹脂(Aminotech、Canadaから得られる)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから得られる)、ポリエチレングリコールを接いだポリスチレン樹脂(TentaGel(登録商標)、Rapp Polymere、Tubingen、Germany)またはポリジメチルアクリルアミド樹脂(MilligenlBiosearch、Californiaから得られる)などの樹脂を指すことができる。ペプチド合成のための好ましい実施形態では、固相支持体は、ポリジメチルアクリルアミド樹脂を指す。
【0069】
用語「異常に発現される」は、同じ組織型であるかないかに関係なく異なる細胞または組織と比較して、すなわち、肺組織対肺癌組織で差別的に発現される(過剰発現または過小発現される)細胞または組織中のポリヌクレオチド配列を指す。
【0070】
「宿主細胞」または「レシピエント細胞」には、ベクター、または外来性の核酸分子、ポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質の組込みのためのレシピエントであることができるか、レシピエントであった、任意の個々の細胞または細胞培養物が含まれるものとする。それには単一の細胞の後代も含まれるものとし、後代は、自然、偶然または故意の突然変異のために、元の親細胞と完全に同一(形態上、またはゲノムもしくは総DNA補体において)でなくてもよい。細胞は原核生物または真核生物であってよく、例には、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞および哺乳動物細胞、例えばマウス、ラット、サルまたはヒトが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
「抗体」は、抗原に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で用いるように、この用語は無傷の免疫グロブリン分子だけでなく、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む、免疫グロブリン分子の抗イディオタイプ抗体、突然変異体、断片、融合タンパク質、ヒト化タンパク質および改変形態を包含する。
【0072】
「抗体複合体」は、抗体およびその結合パートナーまたはリガンドの組合せである。
【0073】
「自然抗原」は、対象で免疫応答を誘導するエピトープを含むポリペプチド、タンパク質または断片である。
【0074】
用語「単離された」は、通常、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片が本来結合する、細胞およびその他の構成要素から分離されたことを意味する。当業者に明らかであるように、非天然のポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、その天然の対応物からそれを区別するために「単離」を必要としない。さらに、「濃縮された」、「分離された」または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、容量あたりの分子の濃度または数が、その天然の対応物のそれよりも「濃縮された」もので大きく、または「分離された」もので小さい点で、その天然の対応物から識別可能である。その一次配列、または、例えばそのグリコシル化パターンがその天然の対応物から異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、それが、その一次配列、あるいは、グリコシル化パターンなどの別の特徴によってその天然の対応物から識別可能であるので、その単離された形態で存在する必要がない。本明細書で開示される本発明の各々のために明示されていないが、下でおよび適当な条件下で開示される各組成物の上記の実施形態のすべてが、本発明によって提供されることを理解すべきである。したがって、非天然のポリヌクレオチドは、単離された天然のポリヌクレオチドとは別の実施形態として提供される。細菌細胞で生成されるタンパク質は、それが本来生成される真核細胞から単離された天然のタンパク質とは別の実施形態として提供される。
【0075】
「組成物」は、活性剤および、アジュバントなどの不活性(例えば、検出可能な剤、担体、固体支持体または標識)または活性な別の化合物または組成物の組合せを意味するものとする。
【0076】
「医薬組成物」は、活性剤と、組成物をインビトロ、インビボまたはエキソビボでの診断上または治療上の使用に適するようにする、不活性または活性な担体との組合せを含むものとする。
【0077】
本明細書で用いるように、用語「薬学的に許容される担体」は、リン酸緩衝食塩水溶液、水および乳剤、例えば油/水または水/油乳剤、ならびに様々なタイプの湿潤剤などの標準の薬用担体のいずれも包含する。組成物は、安定剤および防腐剤を含むこともできる。担体、安定剤およびアジュバントの例については、Martin、REMINGTON’S PHARM. SCI、第15版(Mack Publ. Co.、Easton(1975年))を参照。
【0078】
本明細書で用いるように、用語「対象で免疫応答を誘導する」ことは当技術分野でよく理解されている用語であり、対象への抗原(またはエピトープ)の導入の前の免疫応答(ある場合)と比較して、抗原(またはエピトープ)を対象に導入した後に、抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約100倍、より好ましくは少なくとも約500倍、より好ましくは少なくとも約1000倍以上の増加を検出(測定)することができることを意味する。抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答には、抗原特異的(またはエピトープ特異的)抗体の生成、および、抗原(またはエピトープ)に特異的に結合する分子をその表面に発現する免疫細胞の生成が含まれるが、これらに限定されない。所与の抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答が誘導されているかどうかを判断する方法は、当技術分野で周知である。例えば、抗原特異的抗体は、それに限定されないが、例えば試料中の抗体の固定化抗原(またはエピトープ)への結合が、検出可能に標識された第二の抗体(例えば、酵素標識マウス抗ヒトIg抗体)によって検出されるELISAを含む、当技術分野で公知である様々なイムノアッセイ法のいずれかを用いて検出することができる。抗原に特異的な免疫エフェクター細胞は、それらに限定されないが、FACS、またはCTLの場合には51CR放出アッセイ、または3H−チミジン取込みアッセイを含む、当業者に公知である様々なアッセイのいずれかで検出することができる。
【0079】
融合
DCは、当技術分野で公知であるプロトコルを用いて、哺乳動物の骨髄培養、末梢血、脾臓または他の任意の適当な組織から得ることができる。骨髄はDC前駆体を含み、それは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)およびインターロイキン4(「IL−4」)などのサイトカインによる処理の後に増殖して、DCに分化する。腫瘍壊死細胞因子(TNF)は、DCの成熟を促進するために、任意選択で、単独で用いられるか、またはGM−CSFおよび/またはIL−4と併用される。骨髄から得られるDCは、(例えば脾臓DCと比較して)比較的未熟である。GM−CSF/IL−4によって刺激されたDCは、MHCクラスIおよびクラスIIの分子、B7−1、B7−2、ICAM、CD40および様々なレベルのCD83を発現する。これらの未熟なDCは、脾臓で見られるより成熟したDCよりも融合(または抗原取込み)に適合するが、より成熟したDCは比較的より有効な抗原提示細胞である。末梢血も比較的未熟なDCまたはDC前駆体を含み、それらは、GM−CSFなどの適当なサイトカインの存在下で増殖および分化することができ、融合で用いることもできる。
【0080】
本発明で用いられる非樹状細胞は、任意の組織または癌(例えば、それに限定されないが、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、神経癌、尿生殖器癌、血液癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃腸癌および脳腫瘍(すなわち、神経膠腫))から周知の方法によって誘導することができ、不死化させることができる。関心の細胞表面抗原を発現する非樹状細胞は、抗原を含むポリペプチドをコードする核酸分子で所望のタイプの非樹状細胞をトランスフェクトすることによって生成することができる。例示的な細胞表面抗原は、MUC1、α−フェトプロテイン、γ−フェトプロテイン、癌胎児性抗原、胎児スルホグルコプロテイン抗原、α2H−鉄タンパク、胎盤アルカリホスファターゼおよび白血病関連膜抗原である。トランスフェクションおよび抗原の同定のための方法は、当技術分野で周知である。
【0081】
所与の試薬の存在下で非樹状細胞が死に至るか、少なくとも増殖することができない場合、および、この感受性をDCとの融合によって克服することができる場合、任意選択で、大部分の未融合細胞を除去するのに十分な時間、融合細胞ならびに親の細胞を含む融合後細胞混合物を、この試薬を含む培地でインキュベートしてもよい。例えば、いくつかの腫瘍細胞系は、機能的ヒポキサンチングアニンフォスフォリボシル転移酵素(「HGPRT」)の欠如のために、HATに感受性である。DCは機能的HGPRTを付与するので、DCおよびこれらの腫瘍細胞系によって形成される融合細胞は、HAT耐性になる。したがって、未融合の親の細胞を除去するために、融合の後にHAT選抜を実施することができる。長期培養は融合細胞上のMHCクラスIIタンパク質および/またはB7同時刺激分子の喪失をもたらすので、標準のHAT選抜技術に反し、このHAT選抜は一般に12日を超えて持続するべきでない。融合産物は、融合工程の直後に(例えば、抗原発見スクリーニング法で、または治療法で)、または短い培養期間の後に用いられる。
【0082】
任意選択で、融合細胞は、臨床使用の前に照射される。照射はサイトカインの発現を誘導し、それは、免疫エフェクター細胞活性を促進する。
【0083】
融合細胞がAPC特異的T細胞刺激分子の発現などのあるDC特性を失う場合、DC表現型を回復するために一次融合細胞を樹状細胞と再融合させることができる。再融合された細胞(すなわち、二次融合細胞)は、非常に強力なAPCであることが分かる。融合細胞は、樹状または非樹状の親の細胞と所望の回数、再融合させることができる。
【0084】
MHCクラスII分子、B7または他の所望のT細胞刺激分子を発現する融合細胞は、これらの分子に対する抗体によるパニングまたはFACS(fluorescence−activated cell sorting)によって選択することもできる。
【0085】
細胞内の病原体に感染した細胞を、その病原体に起因する疾患の治療のための融合の非樹状パートナーとして用いることもできる。病原体の例には、ウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス;A、BまたはC型肝炎ウイルス;乳頭腫ウイルス;ヘルペスウイルス;または麻疹ウイルス)、細菌(例えば、Corynebacterium diphtheria、Bordetella pertussis)および細胞内真核生物寄生虫(例えば、Plasmodiuin種、Schistosoina種、Leishmania種、Trypanosoma種またはMycobacterium lepre)が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
あるいは、それぞれは1つまたは複数の同定された癌抗原または病原体からの抗原をコードする、1つまたは複数の核酸構築物でトランスフェクトした非樹状細胞を、融合の非樹状パートナーとして用いることができる。抗原が融合細胞上でMHCクラスIまたはII分子によって提示される限り、これらの抗原は、癌細胞または病原体の表面に発現される必要はない。
【0087】
融合の作製方法
DCと非樹状細胞との間の融合は、ポリエチレングリコール(「PEG」)、センダイウイルスまたは電気融合を用いるものなどの、周知の方法で実行することができる。DCは自己由来であるか、同種異系である。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第6,653,848号を参照)。融合の非樹状細胞に対するDCの比率は、1:100〜1000:1と異なることができ、非樹状細胞が培養で激しく増殖する1:1より高い比率が好ましい。最も好ましくは、比率は1:1、5:1または10:1である。融合の後、未融合のDCは培養中で通常2、3日中に死滅するので、融合細胞は下記2つの方法によって未融合の親の非樹状細胞から分離することができ、両方法は、約50%以上の純度の融合細胞を生成し、すなわち、融合細胞調製物は50%未満、しばしば30%未満の未融合細胞を含有する。
【0088】
具体的には、未融合の細胞を融合細胞から分離する1つの方法は、融合細胞と非樹状親細胞との間で異なる接着特性に基づく。融合細胞は一般に、組織培養容器への接着性が弱いことが分かっている。したがって、非樹状親細胞がずっとより接着性である場合、例えば癌細胞の場合、融合後細胞混合物を短期間(例えば、5〜10日)適当な培地(HATは必要ではないが、それが未融合細胞の増殖を遅くするならば加えてもよい)で培養してもよい。その後、融合細胞を静かに剥がし、吸い出すことができるが、未融合細胞は組織培養容器に密着して増殖する。逆に、非樹状親細胞が懸濁液中で増殖する場合、培養期間の後、融合細胞を容器に弱く結合させたまま、それらを静かに吸い出すことができる。あるいは、インビトロの細胞培養工程なしで、ハイブリッドが直接用いられる。融合細胞は機能的ヒポキサンチングアニンフォスフォリボシル転移酵素(「HGPRT」)酵素を欠き、したがって、化合物HAT処理に耐性であることが示された。したがって、これらの細胞を選択するために、HATを培地に加えてもよい。しかし、従来のHAT選抜とは異なり、ハイブリッド細胞培養物は、12日を超えて化合物に曝露させるべきでない。
【0089】
上記の方法によって得られる融合細胞は、DCの表現型特性を一般的に保持する。例えば、これらの融合細胞は、MHCクラスIIタンパク質、B7−1、B7−2および、ICAM−1など、APCに特有の接着分子などのT細胞刺激分子を発現する。融合細胞は、親の非樹状細胞の細胞表面抗原を続けて発現し、それによって、細胞表面抗原に対する免疫を誘導するのに有用である。特に、非樹状融合パートナーが腫瘍細胞である場合、融合細胞の腫瘍形成性は親の腫瘍細胞に比較してしばしば弱められている。
【0090】
融合細胞がAPC特異的T細胞刺激分子の発現などのあるDC特性を失う場合、DC表現型を回復するために、それら(すなわち一次融合細胞)を樹状細胞と再融合させることができる。再融合された細胞(すなわち、二次融合細胞)は、非常に強力なAPCであることが分かり、場合によっては一次融合細胞よりも腫瘍形成性が低いことさえある。融合細胞は、樹状または非樹状の親細胞と所望の回数、再融合させることができる。
【0091】
あるいは、それぞれは1つまたは複数の同定された癌抗原または病原体からの抗原をコードする、1つまたは複数の核酸構築物でトランスフェクトした非樹状細胞を、融合の非樹状パートナーとして用いることができる。抗原が融合細胞上でMHCクラスIまたはII分子によって提示される限り、これらの抗原は、癌細胞または病原体の表面に発現される必要はない。
【0092】
融合の使用方法
本発明の融合細胞は、疾患の治療または予防のために、哺乳動物の免疫系を刺激するために用いることができる。例えば、ヒトで原発性または転移性の腫瘍を治療するために、患者自身のDCおよび腫瘍細胞によって形成される融合細胞を含む組成物を患者に、例えばリンパ系組織の近くの部位に投与することができる。組成物は、適当な間隔(例えば、2〜3週間ごと)および投薬量(例えば、1投与につき約105〜108、例えば約0.5×106〜1×106個の融合細胞)で複数回(例えば、3〜5回)投与されてもよい。癌に対する予防(すなわち、ワクチン接種)のために、同系DCおよび同種異系もしくは異種の癌細胞、または同種異系DCおよび癌細胞によって形成されるものなどの、非同系融合細胞を投与することができる。ワクチン接種の効果を監視するために、治療される個体から得られる細胞傷害性Tリンパ球を、癌細胞に対するそれらの効力について細胞傷害性アッセイで試験することができる。細胞傷害性Tリンパ球の効力を高めるために、複数のブーストが必要かもしれない。
【0093】
適当な融合細胞を含む組成物は、適宜当業者によって決定されるレジメンで個体(例えば、ヒト)に投与される。例えば、組成物は、適当な間隔(例えば、2〜3週間ごと)および投薬量(例えば、1投与につき約105〜108、好ましくは約107個の融合細胞)で複数回(例えば、3〜5回)投与されてもよい。
【0094】
DCおよびこれらのトランスフェクトされた細胞によって生成される融合細胞は、癌またはその病原体に起因する疾患の治療および予防のために用いることができる。それには限定されない例として、MUC1を発現する融合細胞は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、リンパ腫、ある種の白血病および骨髄腫を治療または予防するために用いることができ;α−フェトプロテインを発現する融合細胞は、肝癌または慢性肝炎を治療または予防するために用いることができ、そこで、α−フェトプロテインはしばしば高いレベルで発現され;前立腺特異抗原を発現する融合細胞は、前立腺癌を治療するために用いることができる。そのように生成された融合細胞を含む組成物の投与は、上に述べた通りである。
【0095】
腫瘍細胞は、一部、抗原提示細胞の発達および機能を撹乱することによって、宿主免疫を抑制する。したがって、DC/腫瘍融合ワクチンの有効性に関する潜在的な問題は、腫瘍細胞融合パートナーがDC分化を阻害し、融合ワクチンによる抗原提示を妨害することである。
【0096】
DC/腫瘍融合は、DC媒介性の同時刺激との関連で提示される広範な腫瘍抗原を発現し、抗腫瘍免疫の生成において非常に有効である。MHCクラスIおよびII経路との関連で内因的および内在化された抗原が提示され、平衡したヘルパーおよび細胞傷害性Tリンパ球応答をもたらす。(Parkhurstら、J Immunol170巻:5317〜25頁(2003年)を参照)。動物モデルでは、DC/腫瘍融合によるワクチン接種は、腫瘍細胞のさもなければ致死性の攻撃からの保護をもたらし、確立された疾患を効果的に根絶する。(Gongら、Nat Med3巻:558〜61頁(1997年);Gongら、Proc Natl Acad Sci USA95巻:6279〜83頁(1998年);Gongら、Blood99巻:2512〜17頁(2002年);Lespagnardら、Int J Cancer76巻:250〜58頁(1998年)を参照)。実際、患者由来の乳癌細胞およびDCによって刺激されたT細胞の融合は、インビトロで自己由来の腫瘍細胞の溶解を媒介した。(Gongら、Proc Natl Acad Sci USA97巻:2715〜18頁(2000年)を参照)。
【0097】
しかし、転移性乳癌患者の臨床試験では、自己由来DC/腫瘍融合によるワクチン接種は患者の大多数で抗腫瘍免疫を誘導したが、臨床応答は患者のサブセットだけで観察された。(Aviganら、Clin Cancer Res10巻:4699〜708頁(2004年);Aviganら、J Clin Oncol ASCO Annual Meeting Proceedings22巻:169頁(2004年)を参照)。このI/II相試験では、23人の転移性乳癌および腎癌患者が、アクセス可能な組織部位から採取された自己由来腫瘍細胞と融合された部分的に成熟したDCによるワクチン接種を受けた。(Aviganら、Clin Cancer Res.10巻:4699〜708頁(2004年)を参照)。融合細胞はMUC−1などの腫瘍特異抗原およびDC由来の同時刺激分子の同時発現を示したが、ワクチン接種は、18人中10人の評価可能患者で、腫瘍溶解物へのエキソビボ曝露の後のIFNγの増加が表す抗腫瘍免疫応答をもたらし、2人の患者は疾患退行を示し、6人の患者は転移性疾患が安定した。したがって、DC/乳癌融合によるワクチン接種は患者の大多数で抗腫瘍免疫応答を刺激したが、サブセットだけが臨床的に意味のある疾患応答を示した。
【0098】
DC/乳癌融合の表現型特性を、抗原提示細胞としてのそれらの機能に関して調べた。(Vasirら、Br. J. Hematol.129巻:687〜700頁(2005年)を参照)。具体的には、乳癌細胞とのDCの融合は、同時刺激マーカー、CD80、CD86および成熟マーカーCD83の発現を高める結果となった。未熟のおよび成熟したDCで生成された融合細胞は類似したレベルの成熟を示し、それによって、融合工程そのものがDC活性化を促進することを示唆した。実際、IL−12の相当な発現が両集団で観察され、一次免疫応答を刺激する能力を有する強力な抗原提示細胞としてのそれらの役割と一貫した。融合細胞集団によるCCR7の発現は、流入領域リンパ節におけるT細胞通行部位を刺激するそれらの能力を裏付ける。DC/乳癌融合は、高レベルのIFNγの関連する分泌を伴う、自己由来T細胞増殖も強力に刺激した。
【0099】
したがって、未熟なDCは乳癌細胞とのPEG媒介性融合の後に成熟を経、成熟DC/乳癌融合に類似した機能特性を示す。しかし、これらのDC/腫瘍融合は、活性化および調節性T細胞の混合応答を刺激する。融合細胞による刺激は、CD4/CD25+細胞の増加をもたらした。この集団の免疫表現型タイピングは、活性化(CD69+)ならびに阻害性(CTLA−4+、Foxp3)T細胞の存在を明らかにした。さらに、IFNγおよびIL−10生成細胞の相対的な増加も、観察された。
【0100】
腫瘍細胞は、無効なT細胞機能、ならびに、免疫性活性化を低下させ、癌ワクチンに対する応答を潜在的に制限する調節T細胞の存在の増加を特徴とする、免疫抑制環境を生成する。(Baccher−Allanら、J Immunol167巻:1245〜53頁 92001);Dieckmannら、J Exp Med.193巻:1303〜10頁(2001年);Jonuleitら、J Exp Med.193巻:128594頁(2001年)を参照)。調節T細胞の存在の増加は、癌患者の循環、流入領域リンパ節および腫瘍層で、疾患負担と相関するレベルで観察された。(Liyanageら、J Immunol.169巻:2756〜61頁(2002年);Sasadaら、Cancer98巻:1089〜99頁(2003年);Ormandyら、Cancer Res.65巻:2457〜64頁(2005年)を参照)。
【0101】
癌ワクチン療法は、インビボで腫瘍特異的T細胞応答を刺激するワクチンの能力に依存する。しばしば、悪性腫瘍を有する患者でのエフェクター細胞の機能不全は、癌ワクチンの効力および有効性を制限する。したがって、有効な癌ワクチン戦略の開発における主要な難題は、腫瘍を抱える患者で免疫応答を制限する内因性の免疫欠乏を克服することである。有効であるために、癌ワクチンは、刺激性シグナル伝達との関連で腫瘍抗原を提示し、T細胞通行部位に移動し、腫瘍標的を溶解する能力を有する活性化エフェクター細胞の増殖を誘導する能力を示さなければならない。
【0102】
腫瘍媒介性の免疫抑制の2つの中心的な要素には、DC成熟の阻害および調節T細胞の存在の増加が含まれる。(Gabrilovichら、Clin Cancer Res3巻:483〜90頁(1997年);Gabrilovichら、Blood92巻:4150〜66頁(1998年);Gabrilovich、Nat Rev Immunol4巻:941〜52頁(2004年)を参照)。
【0103】
DC/腫瘍もしくは癌細胞融合に関する1つの懸念は、ワクチン製剤中の腫瘍細胞が、抗原提示細胞としてのその機能を阻害することがあるということである。ワクチン接種に対する応答を制限する別の潜在的な問題は、T細胞活性化を抑制する調節T細胞の存在の増加である。
【0104】
調節T細胞は、正常な宿主での自己抗原に対する寛容性の媒介で重要な役割を演ずる。悪性腫瘍を有する患者では、それらの存在の増加は、宿主免疫応答の腫瘍関連抑制を媒介すると考えられる。(Baecher−Allanら、J Immunol.167巻:1245〜53頁(2001年);Piccirilloら、J Immunol167巻:1137〜40頁(2001年);Woodら、Nat Rev Immunol.3巻:199〜210頁(2003年)を参照)。GITRおよびCD25などの多くのマーカーが調節T細胞および活性化T細胞集団で共有されているので、調節T細胞の正確な定義は複雑である。調節細胞は、CD25high、GITR、CTLA−4およびFoxp3を含む一団のマーカー;混合リンパ球反応への応答の欠如;ならびに、インビトロで自己由来T細胞応答を抑制する能力によって同定される。
【0105】
調節T細胞は、直接細胞接触および腫瘍関連アネルギーの媒介で役割を果たすサイトカインの放出を通して、阻害シグナルを送達する。前述のように、調節T細胞は悪性腫瘍を有する患者の循環、腫瘍層およびリンパ節で増加し、それらの存在はより悪い予後に関連付けられた。(Curielら、Nat Med10巻:942〜49頁(2004年);Liyanageら、J. Immunol169巻:2756〜61(2002年);Ormandyら、Cancer Res65巻:2457〜64頁(2005年)を参照)。
【0106】
逆に、複数の研究が、DC/癌細胞融合によるワクチン接種が、免疫応答を究極的に鈍らせる調節T細胞の増殖をもたらすことができることを実証している。(Javiaら、J Imunother26巻:85〜93頁(2003年)を参照)。例えば、動物モデルでは、調節T細胞の除去、または、Toll様受容体(TLR)の連結を通しての先天性免疫の活性化は、腫瘍ワクチンへの応答を高めた。(Prasaら、J Immunol174巻:90〜98頁(2003年);Casaresら、J Immunol171巻:5931〜39頁(2003年);Tanakaら、J Immunother.25巻:207〜17頁(2002年);Dannullら、J. Clin Invest15巻:3623〜33頁(2005年)を参照)。さらに、T細胞/同時刺激複合体(CD3/CD28)の連結は、他の刺激性シグナルとの関連で投与されるとき、T細胞の活性化を促進することも示された。(Jungら、Blood102巻:3439〜45頁(2003年)を参照)。したがって、調節T細胞の存在は、悪性腫瘍を有する患者で、活性免疫化への応答を阻止することができる。
【0107】
過去の研究では、抗原パルス適用未熟DCによるワクチン接種は、抗原特異的T細胞で寛容性を誘導した。(Dhodapkarら、J Exp Med.193巻:233〜38頁(2001年)を参照)。さらに、複数の骨髄腫細胞との未熟なDCの融合は、DC融合パートナーのさらなる成熟をもたらした。(Vasirら、Br J Ahematol.129巻:687〜700頁(2005年)を参照)。
【0108】
これらの結果は、機能的に活性なT細胞を生成するためのワクチンのエキソビボの使用を調べるための、強い根拠を提供する。養子T細胞移入では、調節T細胞の数を変更することができ、エフェクター細胞の抗原特異的集団を移入することができる。転移性黒色腫患者での研究は、リンパ除去の後の自己由来黒色腫反応性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の移入が、持続する臨床応答をもたらすことを示した。(Zhouら、J Immunother.28巻:53〜62頁(2005年)を参照)。これらの研究は、腫瘍サプレッサー細胞の除去に続く腫瘍反応性T細胞の養子移入が、進行疾患を有する患者の50%で腫瘍退行を誘導することも示した。(Robbinsら、J Immunol.173巻:7125〜30頁(2004年)を参照)。しかし、TILのこの使用は、それらが入手できる少数の腫瘍型に限られている。したがって、養子免疫療法のために腫瘍ワクチンによってエキソビボで増殖したT細胞を利用することは、今でも大きな関心の的である。
【0109】
教育されたT細胞
本発明は、ハイブリッド細胞を代償にして培養で増殖する、教育された、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の集団も提供し、そこで、ハイブリッド細胞は、1つまたは複数の抗原を発現する細胞に融合している、抗原提示細胞(APC)を含む。一実施形態では、APCは樹状細胞(DC)であり、ハイブリッド細胞は培養で増殖する。別の実施形態では、抗原(複数可)を発現する細胞は腫瘍細胞であり、免疫エフェクター細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。DCは、血液、皮膚、脾臓、骨髄または腫瘍などの源から単離することができる。細胞集団を調製する方法も、本発明によって提供される。
【0110】
本発明の抗原特異的な免疫エフェクター細胞の一部もしくは全部、またはハイブリッド細胞は、外来性ポリヌクレオチドの挿入によって遺伝子操作することができるか、されている。例えば、細胞に導入されるポリヌクレオチドは、ペプチド、リボザイムまたはアンチセンス配列をコードする。
【0111】
抗原(複数可)を発現する細胞および免疫エフェクター細胞は、腫瘍から濃縮されていてもよい。さらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。本方法は、APCおよび抗原発現細胞が同じ対象または異なる対象(すなわち、自己由来または同種異系)に由来する実施形態も提供する。
【0112】
この方法のさらなる変更形態では、免疫エフェクター細胞は、サイトカイン、例えば、IL−2またはGM−CSFおよび/または同時刺激分子の存在下で培養される。
【0113】
本発明で用いられるハイブリッド細胞は、当技術分野で公知である任意の適する方法によって形成することができる。一実施形態では、腫瘍生検試料を細かく切り刻み、細胞懸濁液を作製する。好ましくは、細胞懸濁液は、少なくとも2つの分画に分離される。1つは免疫エフェクター細胞、例えばT細胞について濃縮され、1つは腫瘍細胞について濃縮される。免疫エフェクター細胞は、骨髄、血液または皮膚から、当技術分野で周知である方法を用いて単離することもできる。
【0114】
一般に、培養の前に新生細胞から最初の接種集団を単離することが望ましい。例えば、新生細胞からの様々な細胞型の分離は、例えばセルソータ、磁気ビーズおよび充填カラムの使用を含む、任意の数の方法によって実施することができる。分離のための他の方法には、それらに限定されないが、物理的分離、抗体コーティング磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、それらに限定されないが補体および細胞毒を含む、モノクローナル抗体に結合するかモノクローナル抗体と併用される細胞毒性剤、および固体マトリックス、例えばプレートに結合された抗体による「パニング」、エラトリエーション、または当業者に公知である他の任意の便利な技術が含まれる。
【0115】
物理的分離技術の使用には、物理的特性(密度勾配遠心法および逆流遠心エラトリエーション)、細胞表面特性(レクチンおよび抗体親和性)および生体染色特性(ミトコンドリア結合性色素ロー123およびDNA結合性色素Hoechst 33342)の差に基づくものが含まれるが、これらに限定されない。適する方法は、当業者に周知である。
【0116】
特定の細胞系および/または分化の段階に関連するマーカーを同定するための、別の有用な試薬であるモノクローナル抗体を用いることができる。大雑把な分離のために、抗体を固体支持体に結合することができる。使用する分離技術は、収集される分画の生存度の保持を最大にするべきである。異なる効力の様々な技術を、「比較的粗な」分離を得るために使用することができる。そのような分離では、マーカーを有しない存在総細胞数の最高10%、通常約5%以下、好ましくは約1%以下が、保持される細胞集団に残留することができる。使用される特定の技術は、分離効率、関連細胞毒性、実施の容易性および速度、ならびに高度な機器および/または技術の必要性に依存する。
【0117】
細胞分画を分離する別の方法は、所望の細胞集団の優先的増殖を可能にする培養条件を用いることである。例えば、抗原発現細胞を濃縮した分画を、次にAPCに、好ましくは樹状細胞に融合する。APCと抗原発現細胞との間の融合は、任意の適する方法、例えばポリエチレングリコール(PEG)、電気融合またはセンダイウイルスを用いて実行することができる。ハイブリッド細胞は、Gongら(1997年)Nat. Med3巻(5号):558〜561頁に記載のPEG方法、または当技術分野で公知である他の方法を用いて作製される。
【0118】
予備コミットされたDCを、例えばメトリザミド勾配;非粘着/粘着技術(Freduenthal, PSら(1990年)PNAS87巻:7698〜7702頁を参照);パーコール勾配分離(Mehta−Damaniら(1994年)J. Immunol153巻:996〜1003頁を参照)およびFACS技術(Thomasら(1993年)J. Immunol151巻:6840〜6852頁を参照)を用いて単離する。一実施形態では、DCは、基本的にFACS技術を用いてWO96/23060に記載の通りに単離される。ヒトDCの特異的細胞表面マーカーはないが、20個のマーカーの混合(例えばHLA−DR、B7.2、CD 13/33その他)がDCの上に存在することが公知である。さらに、DCは、CD3、CD20、CD56およびCD14抗原を欠くことが公知である。したがって、陰性および陽性のFACS技術を組み合わせることは、DCを単離する方法を提供する。
【0119】
1つまたは複数の抗原を発現するAPCおよび細胞は、自己由来でよく、すなわち、その腫瘍生検試料が得られた同じ対象に由来してもよい。樹状細胞は一次免疫応答の生成を促進することが公知であるので、抗原を発現するAPCおよび細胞は、同種異系でもよく、すなわち、異なる対象に由来してもよい。
【0120】
抗原特異的な免疫エフェクター細胞の増殖
本発明は、抗原特異的(すなわち、「教育された」)免疫エフェクター細胞の濃縮集団の生成を刺激するために、これらのハイブリッド細胞を利用する。抗原特異的な免疫エフェクター細胞は、培養中に死に至るハイブリッド細胞を代償にして増殖する。ナイーブな免疫エフェクター細胞が他の細胞によって教育される工程は、基本的にCoulie、Molec. Med Today261〜268頁(1997年)に記載されている。
【0121】
上に述べたように調製されるハイブリッド細胞は、ナイーブな免疫エフェクター細胞と混合される。好ましくは、免疫エフェクター細胞は腫瘍細胞を特異的に認識し、上に述べたように腫瘍生検試料から濃縮されている。任意選択で、細胞をサイトカイン、例えばIL−2の存在下で培養することができる。DCはIL−12などの強力な免疫賦活性サイトカインを分泌するので、初回のおよび続く増殖の間、補助的サイトカインを加える必要はないであろう。しかし、融合細胞がIL−12を形成しない場合、このサイトカインは培養に加えられる。いかなる場合でも、培養条件は、抗原特異的な免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞よりもずっと高い速度で拡張する(すなわち、増殖する)ような条件である。抗原特異的細胞の集団をさらに拡張するために、ハイブリッド細胞および任意選択のサイトカインの複数回の注入を実施することができる。
【0122】
第二の刺激性シグナルの添加は、調節T細胞の融合媒介性増殖を枯渇させ、したがって、活性化抗腫瘍免疫応答の発達を有利にする。適する二次刺激性シグナルには、IL−12;IL−18;TLR9アゴニスト、CPG−ODN;および抗CD3/CD28が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
例えば、動物モデルは、IL−12の共投与がDC/腫瘍融合ワクチンの効力を促進することを実証している。(Akasakiら、J Immunother.24巻:106〜113頁(2001年)を参照)。調節T細胞の影響を最小にする別の戦略は、Toll様受容体(TLR)の連結による先天性免疫の活性化を通したものである。動物モデルでは、TLR9を活性化するためのCPG ODNの投与が、拡大する腫瘍の負荷から生じる免疫抑制を克服することが示された。CPGへの曝露は、調節細胞の存在を枯渇させ、ワクチン応答を促進した。さらに、TLR7/8アゴニストへの曝露は、同時刺激マーカーおよび成熟マーカーの発現増加によって明らかにされる、DC活性化の増強をもたらした。同様に、TLR9アゴニスト(CpG)、IL−12およびIL−18の添加は、融合媒介刺激の後に、調節T細胞のレベルを低下させた。
【0124】
DC/腫瘍融合は、自己由来の腫瘍標的を溶解する能力を有する腫瘍反応性T細胞を刺激することが、前に実証されている。さらに、過去の試験は、抗CD3/CD28への最初の曝露がT細胞レパートリーの複合性を回復し、腫瘍反応性クローンを増殖させるDC/腫瘍融合の能力を潜在的に高めることも実証している。対照的に、融合媒介刺激の後の抗CD3/CD28への二次曝露は、活性化腫瘍反応性細胞のより特異的な増殖をもたらすことができる。
【0125】
CD3/CD28の連結は、NFκBを含むシグナル伝達経路の活性化をもたらす、T細胞受容体/同時刺激複合体によって媒介される強力な抗原非依存性刺激を提供する。(Bonyhadiら、J. Immunol.174巻:2366〜75頁(2005年);Wangら、Mol Cell Biol.24巻:164〜71頁(2004年);Herndonら、J Immunol.166巻:5654〜64頁(2001年);Khoshnanら、J Immunol165巻:6933〜40頁(2000年);およびYamada−Ohnishiら、Stem Cells Dev13巻:315〜22頁(2004年)を参照)。この工程は、HIVおよび悪性腫瘍を有する患者で、T細胞増殖、およびT細胞レパートリーの複合性の増強を誘導する、強力な活性化および増殖シグナルを送達する。(Bonyhadiら、J. Immunol.174巻:2366〜75頁(2005年);Kalamaszら、J Immunother.27巻:405〜18頁(2004年)を参照)。抗CD3/CD28によってエキソビボで増殖したT細胞を、腫瘍関連の細胞性免疫機能不全を逆転させる可能性のある戦略として探究した。しかし、抗CD3/CD28単独への曝露は、関連サイトカイン環境に依存して、活性化細胞または抑制細胞を増殖させることができる。(Jungら、Blood102巻:3439〜46頁(2003年)を参照)。
【0126】
抗CD3/CD28刺激のT細胞表現型に対する影響は複雑であり、調査するモデルによって多様で相反する影響をもたらす。抗CD3/CD28への曝露は、免疫環境の性質に依存して、活性化T細胞または抑制T細胞の増殖を促進する。(Jungら、Blood102巻:3439〜46頁(2003年)を参照)。例えば、抗CD3/CD28およびIL−15による刺激は、阻害性表現型を示す調節T細胞の増殖をもたらす。(Linら、Bone Marrow Transplant37巻:881〜87頁(2006年)を参照)。移植片対宿主疾患モデルでは、抗CD3/CD28刺激の後のTh1またはTh2表現型への分極は、サイトカイン曝露によって決定される(Jungら、Blood102巻:3439〜46頁(2003年)を参照)。抗CD3/CD28、IL−4およびIL−2と共培養されたCD4+細胞は、増加したレベルのIL−4およびIL−10を分泌する。対照的に、動物モデルでは、抗CD3/CD28への抗原特異的T細胞の曝露は、抗原への曝露後にIFNγを発現し、腫瘍抗原投与に対して保護的であった記憶エフェクター細胞の増殖をもたらした。(Hughesら、Cytotherapy7巻:396〜407頁(2005年)を参照)。
【0127】
したがって、DC/腫瘍融合は、腫瘍関連抗原に対して向けられた活性化T細胞を選択的に刺激することによって、抗CD3/CD28媒介増殖のための特異なプラットホームを提供するであろうと仮定された。このように、融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、増殖集団中の調節T細胞の存在を最小にしつつ、腫瘍反応性T細胞のかなりの収量の生成を潜在的に可能にする。腎癌細胞(RCC)または患者由来の骨髄性白血病細胞と融合させたDCによるインビトロ刺激を経たT細胞の、表現型特性および機能的特性を研究した。さらに、DC/乳癌と、続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、記憶エフェクター細胞のそれと一貫していた活性化表現型を主に表したT細胞集団をもたらした。
【0128】
したがって、DC/腫瘍融合および抗CD3/CD28は、活性化表現型を有する抗腫瘍T細胞を劇的に増殖させることにおいて、相乗効果を提供する。RCCおよび乳癌の両モデルにおいて、DC/腫瘍融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、DC/RCC融合または抗CD3/CD28単独による刺激の後に観察されたものをはるかに超える記憶エフェクターT細胞の劇的な増殖をもたらしたことも実証されている。
【0129】
さらに、その後抗CD3/CD28増殖を経た融合刺激T細胞は、MUC1反応性T細胞クローンの著しい増加を示し、培養中に融合細胞で抗原刺激をされた腫瘍反応性クローンがその後増殖していたことを示唆する。DC/腫瘍融合と、続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD69およびIFNγを発現するCD4+/CD25+細胞のかなり増加した収量から明らかなように、活性化T細胞の比較的選択的な増殖をもたらす。IL−10およびFoxp3を発現する細胞のより控え目な増加は、阻害性集団の増殖が起こることを示唆した。細胞溶解能力の尺度として、DC/腫瘍融合と、続く抗CD3/CD28によって刺激されたT細胞は、融合細胞または抗CD3/CD28単独による刺激の後に観察されたものを超える、高レベルのグランザイムB発現を示した。
【0130】
DC/腫瘍融合と、続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、活性化表現型が優勢な腫瘍反応性リンパ球の劇的な増殖をもたらすので、この戦略は、養子免疫療法の理想的なプラットホームを提供する。さらに、当業者は、増殖集団で調節T細胞をさらに枯渇させる追加の手法が、癌ワクチン効力をさらに高めるかもしれないことを認識するであろう。
【0131】
ハイブリッド細胞を記載のように用いて、免疫エフェクター細胞の強力な抗原特異的集団を得ることができる。これらの細胞は、腫瘍特異抗原に特異的であるT細胞であってよい。
【0132】
教育されたT細胞を用いる方法
本明細書で記載されるように、本明細書で記載される細胞の有効な量を、養子免疫療法を提供するために対象に投与することができる。サイトカインまたは他の同時刺激分子の有効な量を、対象に共投与することもできる。
【0133】
本発明の抗原特異的な免疫エフェクター細胞の増殖集団は、養子免疫療法体系で、およびワクチンとして使用することもできる。
【0134】
養子免疫療法は、例えば、ナイーブな免疫エフェクター細胞をハイブリッド細胞と培養することによって作製される、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団の有効量を対象に投与することであって、そこで、ハイブリッド細胞は、1つまたは複数の抗原を発現する細胞に融合している、抗原提示細胞(APC)であり、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞は、ハイブリッド細胞を代償にして増殖することと、その後、生じる教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体に曝露させて集団をさらに増殖させることを含む。好ましくは、APCはDCである。
【0135】
細胞は、自己由来または同種異系であってよい。例えば、本明細書で記載される養子免疫療法方法が自己由来性の場合、ハイブリッド細胞は、単一の対象から単離される親細胞を用いて作製される。増殖集団は、その対象から単離されるT細胞も使用する。最後に、抗原特異的細胞の増殖集団は、同じ患者に投与される。
【0136】
あるいは、養子免疫療法が同種異系の場合、ハイブリッド細胞を生成し、抗原特異的細胞の生成を刺激するために、2名以上の患者からの細胞を用いる。例えば、生検試料を提供する対象から自己由来のT細胞および/または樹状細胞を得ることができない場合、抗原特異的細胞を生成するために、他の健康対象または有病対象からの細胞を用いることができる。増殖集団は、細胞を単離した対象、または完全に別の対象のいずれか1名に投与することができる。
【0137】
遺伝子改変
本発明の方法は、ハイブリッド細胞、または、刺激因子としてハイブリッド細胞を用いて誘導される細胞の抗原特異的集団に対する、遺伝子導入の任意の方法を包含するものとする。遺伝子改変の例には、ウイルス媒介遺伝子導入、リポソーム媒介導入、形質転換、トランスフェクションおよび形質導入、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびヘルペスウイルスなどのDNAウイルスに基づくベクター、ならびにレトロウイルスに基づくベクターの使用などのウイルス媒介遺伝子導入が含まれるが、これらに限定されない。本方法は、核局在化要素もしくは配列を欠くので、核酸が細胞質にとどまるベクターまたは構築物に含まれる核酸の組込みに特に適している。これらの例では、核酸または治療的遺伝子は、核膜が破壊され、核酸または治療的遺伝子が宿主細胞染色体に接近することができるM(有糸分裂)相の間に、核に入ることができる。遺伝子改変はエキソビボで実施され、その後、組換え(すなわち、形質導入)細胞はレシピエントに投与される。したがって、本発明は、本明細書で開示される方法によってエキソビボまたはインビボで遺伝子を投与することによる、抗原特異的細胞への遺伝子導入に適合する疾患の治療を包含する。
【0138】
抗原特異的細胞の増殖集団は、遺伝子操作することができる。さらに、例えば、それらに限定されないが、ホルモン、酵素、インターフェロン、成長因子などを含む特定の分泌産物を供給するために、ハイブリッド細胞を遺伝子操作することもできる。適当な調節開始領域を使用することによって、欠乏するタンパク質の誘導可能な生成を達成することができ、したがって、生成がそのようなタンパク質を通常生成する細胞型とは異なる細胞型中で起こるとしても、タンパク質の生成は天然の生成に対応する。特定の遺伝子産物、または疾患、特に血リンパ系疾患への感受性を阻害するために、リボザイム、アンチセンスまたは他のメッセージを挿入することも可能である。
【0139】
適する発現および導入ベクターは、当技術分野で公知である。
【0140】
優性な阻害性オリゴヌクレオチドおよびペプチドをコードする治療的遺伝子、ならびに調節タンパク質およびオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子も、本発明に包含される。一般に、遺伝子治療は単一の治療的遺伝子の導入を含むが、特定の疾患の治療のために複数の遺伝子が必要なこともある。治療的遺伝子は、野生型免疫抑制剤の優性な阻害性突然変異体である。あるいは、治療的遺伝子は、野生型、欠陥遺伝子のコピー、または機能的相同体でもよい。
【0141】
ベクターにつき複数の遺伝子を投与することができ、あるいは、いくつかの適合するベクターを用いて複数の遺伝子を送達することができる。遺伝子の欠陥次第で、治療的遺伝子は、調節配列および非翻訳配列を含むことができる。ヒト患者での遺伝子治療のために、一般に治療的遺伝子はヒト起源であるが、遺伝子産物がレシピエントで有害な免疫反応を誘導しないならば、ヒトで高い相同性および生物学的に同一のまたは同等な機能を示す、他の緊密に関連する種からの遺伝子を用いることができる。治療での使用に適する治療的遺伝子は、疾患で異なる。
【0142】
DNA構築物が組み込まれていない細胞に比較して、形質導入の成果を監視するために、およびDNAが組み込まれた細胞の選択のために、マーカー遺伝子がベクターに含まれてもよい。様々なマーカー遺伝子には、0418またはハイグロマイシンへの耐性などの抗生物質耐性マーカーが含まれるが、これらに限定されない。より不便であるが、それに限定されないが、マーカーが、細胞をアシクロビルおよびガンシクロビルなどの剤に感受性にするHSV−tk遺伝子である場合、陰性選択を用いることができる。あるいは、FACS選別によって導入遺伝子発現細胞を選択するための、安定細胞表面マーカーの使用によって選択を達成することができよう。NeoR(ネオマイシン/0418耐性)遺伝子が一般に用いられるが、その配列がレシピエント細胞にまだ存在していない任意の好都合なマーカー遺伝子を用いることができる。
【0143】
ウイルスベクターは、粒子安定性を改善し、宿主域を拡張するか、感染中に細胞型特異的ターゲティングを可能にするために、キメラエンベロープタンパク質または非ウイルス膜タンパク質をレトロウイルス粒子に組み込むように改変することができる。宿主域を変化させたレトロウイルスベクターの生成は、例えば、WO92/14829およびWO93/14188で教示されている。インビボで特異的細胞型を標的にすることができるレトロウイルスベクターも、例えば、Kasaharaら(1994年)Science266巻:1373〜1376頁で教示されている。Kasaharaらは、ウイルスエンベロープタンパク質と融合しているヒトエリスロポイエチン(EPO)からなるキメラエンベロープタンパク質を有する、モロニー白血病ウイルス(MoMLV)の構築を記載している。このハイブリッドウイルスは、EPOの受容体を運ぶヒト赤血球前駆体への組織向性を示し、したがって、鎌状赤血球貧血およびサラセミアの遺伝子治療で有用である。細胞の感染を特異的に標的にすることができるレトロウイルスベクターが、インビボ遺伝子治療のために好ましい。
【0144】
導入遺伝子の発現は、遺伝子導入の目的および所期の効果によって、様々な方法で制御することができる。したがって、特定の生理的条件の下でだけ、または特定の細胞型においてだけ、遺伝子が構成的に発現されるようにするプロモーターの支配下に、導入遺伝子を置くことができる。
【0145】
特定の細胞型で導入された配列の発現を引き起こすために用いることができるプロモーターの例には、T細胞およびNK細胞での発現のためのグランザイムA、幹細胞および前駆体細胞での発現のためのCD34プロモーター、細胞傷害T細胞での発現のためのCD8プロモーター、および骨髄細胞での発現のためのCD11bプロモーターが含まれる。
【0146】
ある生理的条件下での遺伝子発現のために、誘導可能なプロモーターを用いることができる。例えば、求電子性の分子に反応して化学療法抵抗性遺伝子の発現を誘導するために、求電子性の応答要素を用いることができる。適当な局在化配列を結合することによって適当な細胞の場所、例えば核を遺伝子産物の標的にすることによって、治療上の利点をさらに増加させることができる。
【0147】
ウイルス形質導入の後、形質導入細胞またはそれらの後代におけるウイルスベクターの存在は、例えばPCRによって検証することができる。マーカー遺伝子、または他のウイルスによって形質導入された配列を検出するために、PCRを実施することができる。一般に、定期血液試料を採取し、例えばNeoR遺伝子をマーカーとして用いる場合はNeoRプローブを用いて、PCRを都合よく実施する。骨髄細胞または成熟造血細胞中のウイルスによって形質導入された配列の存在は、形質導入細胞による再構成の成功の証拠である。PCR技術および試薬は当技術分野で周知であり(一般に、PCR PROTOCOLS, A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS. Innis、Gelfand、Sninsky & White編(Academic Press, Inc.、San Diego、1990年))、市販されている(Perkin Elmer)。
【0148】
候補ペプチドおよび抗原活性のためのペプチドのスクリーニング方法
上記のCTLおよびHTL(「エフェクター細胞」)は、本発明のエフェクター細胞を生成するために用いられる融合細胞の非樹状細胞パートナーによって発現される抗原を、当技術分野で用いられるいくつかの方法によって同定するために用いることができる。手短に言えば、エフェクター細胞を含有する細胞集団を候補ペプチドまたはポリペプチド、および、適当な標的細胞(細胞毒性をアッセイする場合)または抗原提示細胞(APC)(細胞増殖またはサイトカイン生成をアッセイする場合)と一緒に培養し、関連する活性を測定する。エフェクター活性を誘導するペプチドは抗原性のペプチドであり、それは、エフェクター細胞によって認識される。エフェクター活性を誘導するポリペプチドは抗原性のポリペプチドであり、そのペプチド断片はエフェクター細胞によって認識される。
【0149】
細胞傷害活性は、当技術分野で公知である様々な方法(例えば、実施例IおよびIII〜Vに記載される51Crまたは乳酸脱水素酵素(LDH)放出アッセイ)によって試験することができる。標的細胞は、様々な細胞型、例えば、線維芽細胞、リンパ球、レクチン(例えば、植物性凝集素(PHA)、コンカナバリンA(ConA)またはリポポリサッカライド(LPS))活性化リンパ芽球、マクロファージ、単球または腫瘍細胞系のいずれかでよい。標的細胞は抗原活性について試験する候補抗原を本来発現するべきでないが、それらは、組換えでそれらを発現することができるであろう。しかし、標的細胞は、CTLと共通する、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子の少なくとも1種類(関連するCTLの制限次第で)を発現するべきである。標的細胞は適当なMHC分子を内因的に発現することができるか、または、それらは、そのような分子をコードするトランスフェクトされたポリヌクレオチドを発現することができる。選択された標的細胞集団は、アッセイの前に候補ペプチドまたはポリペプチドをパルス適用することができるか、または、候補ペプチドまたはポリペプチドを、CTLおよび標的細胞と一緒にアッセイ容器、例えばマイクロタイタープレートウェルまたは培養試験管に加えることができる。あるいは、候補ペプチドまたはポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクターでトランスフェクトまたは形質転換された標的細胞を、用いることができる。CTL含有細胞集団、標的細胞および候補ペプチドまたはポリペプチドを、約4〜約24時間一緒に培養する。標的細胞の溶解は、例えば標的細胞からの51CrまたはLDHの放出によって測定される。CTLによる標的細胞の溶解を引き出すペプチドは、CTLによって認識される抗原性ペプチドである。CTLによる標的細胞の溶解を引き出すポリペプチドは、抗原性ポリペプチドであり、そのペプチド断片はCTLによって認識される。
【0150】
候補ペプチドまたはポリペプチドは、CTLおよびHTLの両方で増殖応答を誘導するそれらの能力について、試験することができる。エフェクター細胞は、適当なMHCクラスIまたはクラスII分子を発現するAPCの存在下で、候補ペプチドまたはポリペプチドと一緒に培養される。そのようなAPCは、Bリンパ球、単球、マクロファージまたは樹状細胞、または完全なPBMCであってよい。APCは、Bリンパ球、単球、マクロファージまたは樹状細胞に由来する、不死化された細胞系であってもよい。APCは、適当なMEC分子を内因的に発現することができるか、または、それらは、そのような分子をコードするトランスフェクトされた発現ベクターを発現することができる。すべての場合において、APCは、アッセイの前に、例えば電離放射線またはマイトマイシンCによる処理によって、非増殖性にされてもよい。エフェクター細胞を含有する集団は、候補ペプチドまたはポリペプチドと一緒にまたはそれなしに培養され、細胞の増殖応答は、例えばそれらのDNAへの[3H]−チミジンの組込みによって測定される。
【0151】
細胞増殖の測定に代わるものとして、当業者に公知である方法によってエフェクター細胞によるサイトカイン生成を測定することができる。サイトカインには、限定されずに、インターロイキン−2(IL−2)、IFN−、IL−4、IL−5、TNF−、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−b)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)およびトランスフォーミング成長因子(TGF)が含まれ、それらを測定するアッセイには、限定されずに、ELISA、および関連するサイトカインに応答性である細胞が、試験試料の存在下で応答性(例えば、増殖)について試験されるバイオアッセイが含まれる。あるいは、エフェクター細胞によるサイトカイン生成は、細胞内免疫蛍光検査染色およびフローサイトメトリーによって直接に視覚化することができる。
【0152】
抗原性について試験される候補ペプチドおよびポリペプチドの選択は、融合細胞を作るために用いられた非樹状細胞によって決まる。非樹状細胞が腫瘍細胞である場合、候補ポリペプチドは、関連する腫瘍細胞によって発現されるそれらである。それらは、好ましくは、腫瘍細胞と同等の正常な細胞におけるよりもかなり高いレベルで腫瘍細胞において発現されるそれらである。候補ペプチドは、そのようなポリペプチドの断片である。したがって、例えば、黒色腫細胞については、候補ポリペプチドは、チロシナーゼ、またはMARTファミリーの分子の構成員でよく;結腸癌については、癌胎児性抗原;前立腺癌については、前立腺特異抗原;乳癌または卵巣癌については、HER2/neu;卵巣癌については、CA−125;または、ほとんどの癌腫については、ムチン−1(MUC1)でよい。
【0153】
他方、融合細胞を生成するために用いられる非樹状細胞が、感染細胞または病原体由来のポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞であった場合、候補ポリペプチドは、それぞれ適当な感染性微生物によって発現されるもの、またはトランスフェクトされた細胞によって発現されるものである。そのようなポリペプチドの例には、レトロウイルス(例えば、HIVまたはHTLV)膜糖タンパク質(例えば、gp160)またはgagタンパク質、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼまたは血球凝集素、Mycobacterium tuberculosisもしくはlepraeのタンパク質、または原生動物(例えば、PlasmodiumまたはTrypanosoma)のタンパク質が含まれる。ポリペプチドは、本明細書に記載される他の微生物からのものであってもよい。試験されるペプチドは、例えば、関心の完全長ポリペプチドの様々な断片に相当する一連のペプチド、例えば、一団で配列全体をカバーする重複配列を有するペプチドであってよい。試験されるペプチドは、任意の長さであることができる。エフェクター細胞のMHCクラスI制限応答を試験する場合、それらは、好ましくは長さが7〜20個(例えば、8〜12個)のアミノ酸である。他方、MHCクラスII制限応答の場合、ペプチドは、好ましくは長さが10〜30個(例えば、12〜25個)のアミノ酸である。
【0154】
あるいは、ペプチドのランダムなライブラリーを試験することができる。適当なエフェクター細胞で陽性応答を引き出すそれらの配列を、タンパク質配列データベースと比較することによって、ペプチド配列を含むポリペプチドを同定することができる。関連するポリペプチドまたは同定されたペプチド自体は、対応する疾患のための候補治療薬またはワクチン剤となるであろう(下記参照)。
【0155】
ポリペプチドおよびペプチドは、当技術分野で公知である様々な手段によって作製することができる。より小さなペプチド(長さが50個未満のアミノ酸)は、標準の化学手段によって都合よく合成することができる。さらに、ポリペプチドおよびペプチドの両方は、適当なポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を用いて、標準のインビトロ組換えDNA技術、およびインビボ遺伝子改変(例えば、遺伝子導入)によって生成することができる。当業者に周知である方法を用いて、関連するコード配列および適当な転写/翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。例えば、Maniatisら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.、1989年)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、(Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.、1989年)に記載の技術を参照。
【0156】
ペプチドおよびポリペプチドを発現させるために、様々な宿主−発現ベクター系を用いることができる。そのような宿主−発現系は、関心のポリペプチドを生成し、その後精製することができる媒体を表すだけでなく、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされると、インサイツで、関連するペプチドまたはポリペプチドを生成することができる細胞も表す。これらには、それらに限定されないが、ペプチドまたはポリペプチドコード配列を含む組換え体バクテリオファージDNA、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された、細菌などの微生物、例えばE.coliまたはB.subtilis;適当なコード配列を含む組換え体酵母発現ベクターで形質転換された酵母、例えばSaccharomycesまたはPichia;組換え体ウイルス発現ベクター、例えばバキュロウイルスに感染させた昆虫細胞系;適当なコード配列を含む組換え体ウイルス発現ベクター、例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)またはタバコモザイクウイルス(TMV)に感染させたか、組換え体プラスミド発現ベクター、例えばTiプラスミドで形質転換された植物細胞系;または、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター、例えばメタロチオネインプロモーター、または、哺乳動物のウイルスに由来するプロモーター、例えばアデノウイルス後期プロモーターもしくはワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを含む組換え体発現構築物を抱える哺乳動物細胞系、例えば、COS、CHO、BHK、293または3T3が含まれる。
【0157】
本発明のペプチドには、上記のものが含まれるが、関連するペプチドのインビボでの生存を促進するために、アミノ末端およびC末端の片方または両方でのブロッキング剤の付加によって、インビボ使用のために修飾される。これは、ペプチド末端が細胞またはミトコンドリアによる取込みの前にプロテアーゼによって分解される傾向がある状況で、有用であろう。そのようなブロッキング剤には、投与されるペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端残基に結合することができる、追加の関連するペプチドまたは無関係なペプチドの配列を含めることができるが、これらに限定されない。これは、ペプチドの合成の間に化学的に、または、当業者がなじんでいる方法による組換えDNA技術によって実行することができる。あるいは、ピログルタミン酸または当技術分野で公知である他の分子などのブロッキング剤を、アミノおよび/またはカルボキシル末端残基に結合することができるか、または、アミノ末端のアミノ基もしくはカルボキシル末端のカルボキシル基を異なる部分で置換することができる。同様に、投与の前に、ペプチドを薬学的に許容される「担体」タンパク質に、共有結合または非共有結合で結合することができる。
【0158】
ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計されるペプチド様化合物にも、関心がある。ペプチド様化合物は、選択されるペプチドの三次元の立体配座と実質的に同じである三次元の立体配座を有する合成化合物(すなわち、「ペプチドモチーフ」)である。ペプチドモチーフは、そのペプチド様物質が由来するペプチドまたはポリペプチドのそれと質的に同じ方法でT細胞を活性化する能力を有するペプチド様化合物を提供する。ペプチド様化合物は、細胞透過性の増加および長期生物学的半減期などの、それらの治療的有用性を高める追加の特性を有することができる。
【0159】
一般的に、ペプチド様物質は、部分的または完全に非ペプチドであるが、そのペプチド様物質が基づくペプチドで出現するアミノ酸残基の側鎖と同一である側鎖を有する骨格を有する。数種類の化学結合、例えば、エステル、チオエステル、チオアミド、レトロアミド、還元カルボニル、ジメチレンおよびケトメチレン結合は、一般に、プロテアーゼ耐性ペプチド様物質の構築において、ペプチド結合の有用な代用法であることが当技術分野で公知である。
【0160】
ワクチン
本明細書で記載される教育され、増殖したT細胞集団および方法は、細胞ベースのワクチンを開発するために用いることもできる。本発明による抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含むワクチンが、本発明によってさらに提供される。本明細書に記載の抗原特異的な免疫エフェクター細胞を利用する、エピトープまたは配列モチーフなどの抗原またはその断片を含むワクチンが、本発明によってさらに提供される。ワクチンの投与方法は当技術分野で公知であり、ワクチンは、許容される薬用担体と組み合わせることができる。サイトカインおよび/または同時刺激分子の有効な量も、ワクチンに加えて投与することができる。
【0161】
本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子およびコードされるペプチドおよびタンパク質をさらにクローニングして、インビトロまたはインビボで発現させることができる。宿主細胞発現系から生成および単離されるタンパク質およびポリペプチドも、本発明の範囲内である。これらのポリヌクレオチドおよび遺伝子を含む発現およびクローニングベクターならびに宿主細胞、ならびに、それらを有効な量で対象に投与する方法も本明細書で請求される。これらの配列に対応するペプチドは、組換え技術によって生成することができ、それらはワクチンとして対象に投与すること、あるいは、APCに導入し、それを今度は有効な量で対象に投与することができる。遺伝子を用いてタンパク質を生成し、それを今度はAPCにパルス適用するために用いることができる。次に、APCを用いて、CTLなどの免疫エフェクター細胞を増殖させることができる。パルス適用したAPCおよび増殖したエフェクター細胞は、組成物の有効量を対象に投与することによって、免疫療法のために用いることができる。
【0162】
以下の実施例は、本発明の組成物および方法を例示するためのものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0163】
(実施例1):DCおよび腫瘍およびDC/腫瘍融合細胞調製物の生成
DCは、正常な供与体から得られたロイコパックコレクションから単離された、接着性単核細胞から生成された。末梢血単核細胞(PBMC)を、Histopaque(登録商標)−1077密度勾配遠心法によって、正常な供与体からのロイコパックから単離した。PBMCを、RPMI 1640完全培地に1×106/mlで懸濁させ、6ウェル組織培養プレートに5mlの一定量で平板培養し、5%CO2の加湿インキュベータ内において37℃で2時間インキュベートした。単球濃縮接着性分画を、GM−CSF(1000U/ml)およびIL−4(1000U/ml)を含有するRPMI 1640完全培地で5日間培養して、未熟なDCを生成した。TNFα(25ηg/ml)の存在下で細胞をさらに48時間培養することによって、DC調製物を成熟させた。
【0164】
腎癌(「RCC」)細胞系RCC786を、RPMI 1640培地で維持した。施設承認のプロトコルに従って、急性骨髄性白血病患者から得た骨髄穿刺液または末梢血採取物から、骨髄性白血病細胞を得た。白血病細胞をフィコール密度遠心分離によって単離し、RPMI 1640完全培地で培養した。下で概説するように、DCおよび腫瘍細胞を、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学による表現型分析にかけた。
【0165】
融合細胞を生成するために、腫瘍細胞を1:1〜1:3(細胞収量に依存する)の比でDC調製物と混合し、無血清RPMI 1640培地で3回洗浄した。最終洗浄の後、細胞ペレットを1mlの50%ポリエチレングリコール(PEG)溶液に再懸濁させた。室温で2分後に、PEG溶液を段々と希釈し、細胞を無血清培地で2回洗浄した。DC−腫瘍融合細胞を、GM−CSFの存在下でRPMI完全培地で培養した。DC/腫瘍融合は、特異なDCおよび腫瘍抗原を発現する細胞のパーセントを免疫組織化学的分析によって測定することによって定量した。
【0166】
免疫組織化学的分析によるDC、腫瘍および融合細胞調製物の分析
DC、腫瘍および融合細胞調製物は、腫瘍関連抗原ならびにDC関連同時刺激および成熟マーカーの存在について評価するために、免疫細胞化学分析にかけた。RCC細胞を、MUC1(PharMingen、San Diego、CA)、サイトケラチン(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)およびCAM(Becton Dickson、San Jose、CA)に対する、マウスの一次モノクローナル抗体(mAb)による染色にかけた。骨髄性白血病細胞を、CD34、CD117およびMUC1について染色した。下で概説するDCマーカーの非存在が、確認された。(図1Bを参照)。DC調製物を、HLA−DR、CD80、CD83またはCD86(PharMingen)およびアイソタイプをマッチさせた陰性対照のための染色に60分間かけた。(図1Aを参照)。細胞をウマ抗マウスIgG(Vector Laboratories)のビオチン化F(ab’)2断片と45分間インキュベートし、PBSで2度洗浄し、ABC(アビジン−ビオチン複合体)試薬液、および続くAEC(3アミノ−9−エチルカルバゾール)溶液(Vector Laboratories)と30分間インキュベートした。融合細胞調製物では、ABC試薬による腫瘍関連抗原の検出に続いて、ABC−AP(アルカリホスファターゼ)キット(Vector Laboratories)によるDC関連マーカーのための染色を行った。スライドを洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、オリンパスAX70顕微鏡を用いて分析した。融合は、特異なDCおよび腫瘍抗原を同時発現する細胞のパーセントを測定することによって定量した。(図1Cを参照)。
【0167】
フローサイトメトリー分析
上で概説した抗原の発現について評価するために、DC、腫瘍および融合細胞調製物をフローサイトメトリー分析にもかけた。細胞を、指示された一次mAbまたはマッチさせたアイソタイプ対照と、4℃で30分間インキュベートした。結合した一次mAbは、二次親和性精製FITC結合ヤギ抗マウスIgG(Chemicon Intl、Temecula、CA)で検出し、続いて2%パラホルムアルデヒドで固定した。二次元フローサイトメトリーのために、細胞を、腫瘍関連抗原(RCC−MUC1、CAMまたはサイトケラチン、AML−CD34、CD117またはMUC1)に対する抗体、FITC結合二次抗体、およびPEとコンジュゲートさせたDRまたはCD86に対する抗体とインキュベートした。分析は、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて、FACS Caliburフローサイトメータ(Becton Dickinson)で実施した。
【0168】
(実施例2):DC/腫瘍融合および/または抗CD3/CD28によるT細胞刺激および増殖
DC生成のために用いたロイコパックコレクションから非接着性PBMCを単離し、10U/mlのIL−2の存在下のRPMI完全培地において1×106/mlの密度で培養した。T細胞は、ナイロンウール分離によって単離した。T細胞を、固定化モノクローナル抗体、抗CD3(クローン−UCHT1;Pharmingen)および抗CD28(クローン−CD28.2;Pharmingen;CD3i/CD28i)に曝露させた。24ウェル非組織培養処理プレート(Falcon、Fisher)を抗体(PBSに1μg/ml)の各々でコーティングし、37℃で一晩放置した。T細胞を:1)抗CD3/CD28でコーティングしたプレート上で48時間培養した;2)1:10の融合対T細胞の比率で、融合細胞と5日間共培養した;3)融合細胞、およびその後抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した;または4)抗CD3/CD28と48時間培養し、その後、融合で5日間刺激した。刺激の後、下で概説するように、T細胞を表現型分析にかけた。
【0169】
刺激されたT細胞集団の増殖
刺激の後、T細胞を収集し、培養期間の終わりの18時間前に各ウェルに加えた[3H]−チミジン(1μCi/ウェル;37kBq;NEN−DuPont、Boston、MA)の取込みで増殖を測定した。その後、自動TOMTECハーベスター(Mach II、Hamden CT)を用いてガラス繊維ろ紙(Wallac Oy、Turku、Finland)の上に細胞を収集し、乾燥させ、10mlのScintiVerse(登録商標)(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)を含むBetaPlate試料バッグ(Wallac)中に入れて密封した。細胞に結合した放射活性を、液体シンチレーション計数器(Wallac、1205Betaplate(商標))で計数した。(図2を参照)。データを、刺激指数(「SI」)で表す。SIは、未刺激T細胞集団のバックグラウンド[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)に対する[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)の比率を計算することによって測定した。T細胞は、DC/RCC融合または抗CD3/CD28単独への曝露の後に有意な増殖を示さず、SIはそれぞれ0.9および1.0であった(N=9)。対照的に、DC/RCC融合による刺激とそれに続くCD3/CD28への曝露は、T細胞増殖の劇的で相乗的増加をもたらし、SIは13.2であった(融合単独による刺激と比較してp=0.03)。(図2Aを参照)。留意すべきは、融合細胞による刺激の前の抗CD3/CD28への曝露は、T細胞増殖を誘導しなかった(SI 1.0)。
【0170】
融合細胞、抗CD3/CD28または、融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激したT細胞を、ナイーブ(CD45RA)、記憶(CD45RO)、活性化(CD69、IFNγ)または調節(Foxp3、IL−10)T細胞の存在について評価するために、多チャネルフローサイトメトリーによる表現型分析にかけた。細胞を洗浄し、ブロック緩衝剤(10%ヒトIgG;Sigma)とインキュベートし、FITC結合CD4またはCD8、およびPE結合CD45RAまたはCD45ROとインキュベートした。T細胞調製物を、FITC結合CD4、シトクロム結合CD25およびPE結合CD69(PharMingen)について染色した。あるいは、細胞をCD4/CD25について染色し、次に、Cytofix/Cytopermプラス(商標)(ホルムアルデヒドおよびサポニンを含む)(PharMingen)でのインキュベーションによって透過性化した。次に、細胞をPE結合抗ヒトIFNγ、IL−10またはFoxp3(Caltag、Burlingame、CA)、またはマッチさせたアイソタイプ対照抗体とインキュベートし、Perm/Wash(商標)溶液で洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、FACScan(Becton Dickinson)を用いてフローサイトメトリーによって分析した。
【0171】
DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激の、ナイーブな細胞および記憶細胞の相対的な増殖に対する効果を、その後研究した。(図2Bを参照)。4つの連続した研究で、未刺激T細胞は0.9のCD45RO/CDRA比を示し、それは、総CD4+T細胞集団のそれぞれ21%および24%の平均レベルを表す。DC/RCC融合による刺激はこの比率を変化させず、CD45RAおよびCD45ROの平均レベルはそれぞれ17%および22%であった(比率0.8)。抗CD3/CD28へのT細胞の曝露は、CD45RA細胞の相対的な抑制をもたらし、それはT細胞集団の9%に相当したが、CD45RO+細胞はほとんど不変であった(24%)。
【0172】
対照的に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD45RO+細胞の増殖をもたらし、それはT細胞の40%に相当し、CD45RAレベルはより控え目な枯渇を示した(2.9のCD45RO/CD45RA比)。抗CD3/CD28への最初の曝露と続くDC/RCC融合への曝露は、CD45RO集団の増殖をもたらさなかった(23%の平均レベル)が、CD45RA細胞の平均レベルの低下が観察された。これらのデータは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、記憶エフェクター細胞を特異的に増殖させることを示唆する。
【0173】
調節T細胞と比較した活性化T細胞の刺激
DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激が、調節T細胞と比較して活性化T細胞の増殖をもたらしたかの判定もした。これらの2つのT細胞集団は、CD4およびCD25を同時発現する。活性化T細胞は高レベルのCD69を特徴的に発現するが、Foxp3は、調節T細胞の比較的特異的なマーカーであることが分かった。DC/RCC融合、抗CD3/CD28、またはこれらの剤による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞の表現型特性を調べた。(図3を参照)。11回の実験で、DC/RCC融合単独による刺激の後に、CD4+/CD25+の控え目な増加が観察された。総T細胞集団のCD4+/CD25+細胞の平均パーセントは、2.8%から6.4%に増加した。同様に、抗CD3/CD28単独によるT細胞の刺激の後に、CD4+細胞の7.8%は、CD4およびCD25の同時発現を示した。
【0174】
対照的に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後にCD4+/CD25+細胞の平均パーセントの著しい増加が観察され、総T細胞集団の25.3%のレベルに到達した(未刺激T細胞、融合によって刺激されたT細胞および抗CD3/CD28単独によって刺激されたT細胞と比較してそれぞれp=0.001、0.02および0.002)。抗CD3/CD28とそれに続く融合細胞による刺激がわずか10%のCD4+/CD25+発現細胞(融合とそれに続く抗CD3/CD28による刺激と比較してp=0.008)をもたらしたという点で、曝露の順番が重要であった。
【0175】
CD4+/CD25+細胞の性質をさらに明確にするために、CD4/CD25集団が活性化または抑制のマーカーを発現するかどうかを判定するために、多チャネルフローサイトメトリー分析を実施した。(図3を参照)。CD4+/CD25+T細胞をFACSゲーティングによって単離し、CD69およびFoxp3の発現を測定した。結果を、全CD4/CD25+T細胞集団に対する活性化T細胞または調節T細胞のパーセントとして提示した。DC/RCC融合単独または抗CD3/CD28単独によるT細胞の刺激は、CD4+/CD25+/CD69+細胞で定義される活性化T細胞のパーセントのそれぞれ5倍および6倍の増加をもたらした。注目すべきことに、融合細胞とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に、CD4+/CD25+/CD69+細胞のパーセントの42倍の増加が観察され、それによって、抗CD3/CD28単独(6倍の増加、p=0.01)、融合細胞単独(5倍の増加、p=0.05)、または抗CD3/CD28増殖とそれに続く融合による刺激の後(9倍の増加、p=0.02)と比較して、統計的に有意な増加が実証された。
【0176】
同様に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28の複合刺激の、CD4、CD25およびFOXP3を同時発現する細胞によって定義される調節T細胞の増殖に対する効果も調べた。(図3を参照)。9回の実験で、DC/腫瘍融合ワクチンによる刺激とそれに続く抗CD3/CD28による増殖の組合せは、調節T細胞の15倍の増殖をもたらし、それは、融合単独(1.9倍、p=0.008)、抗CD3/CD28単独(1.7倍、p=0.004)または抗CD3/CD28および融合による逐次的な刺激(3.4倍、p=0.03)による刺激の後に観察されたものよりも統計学的に大きかった。これらのデータは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、DC/RCC単独または抗CD3/CD28単独で観察されたものをはるかに超えて、T細胞増殖および活性化T細胞の増殖を相乗的に誘導することを示唆する。さらに、T細胞をDC/RCC融合で最初に刺激したときにこの結果が特異的に観察され、抗CD3/CD28複合体の連結によって生成される抗原非依存性増殖の前に、DC媒介抗原特異的刺激が重要であることが示唆された。留意すべきは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激は、より低い程度ではあるが調節T細胞のパーセントも増加させた。
【0177】
MUC1四量体への結合による腫瘍特異的免疫応答およびグランザイムB発現による細胞溶解能力の評価
抗原特異的MUC1+CD8+T細胞を、それぞれMUC1特異的エピトープM1.2(MUC112〜20)LLLLTVLTV(配列番号1)(Beckman Coulter、Fullerton、CA)に結合している4つのHLA MHCクラスI分子で構成される、フィコエリトリン(PE)標識HLA−A*0201+iTAg(商標)MHCクラスIヒト四量体複合体を用いて同定した。対照PE標識四量体を、平行して用いた。抗CD3/CD28、融合、または抗CD3/CD28および融合への逐次的な曝露によって刺激したT細胞を、MUC1または対照四量体とインキュベートし、次に、FITC結合CD8抗体で染色した。細胞を洗浄し、二次元FACS分析によって分析した。刺激されたT細胞集団の細胞溶解能力を、FITC結合CD8およびPE結合グランザイムBによる染色によって評価した。合計3×105個の事象を、最終分析のために収集した。同様に、非接着性未刺激細胞を、平行して分析した。
【0178】
刺激されたT細胞集団の機能的特性
T細胞集団の機能的特性をさらに特徴づけるために、融合細胞、抗CD3/CD28またはそれらの組合せによって刺激されたT細胞による、Th−1およびTh−2サイトカインの細胞内発現を特定した。8回の連続した検査で、IFNγの細胞内発現が、未刺激CD4+T細胞集団の0.5%で観察された。抗CD3/CD28またはDC/RCC融合単独による刺激の後、IFNγ発現T細胞の平均パーセントは、それぞれ1.7%および1.8%に上昇した。対照的に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、IFNγ発現細胞の平均レベルの統計的に有意な増加をもたらし(それぞれ抗CD3/CD28または融合による刺激と比較して4.7%、p=0.05)、それは、未刺激T細胞と比較して10.5倍の増加に相当する(p=0.008)(図16)。抗CD3/CD28単独によるT細胞の刺激は、IL−4の細胞内発現を示すCD4+T細胞のパーセントの、1.0%から2.4%への増加をもたらした。対照的に、DC/RCC融合単独への曝露またはDC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、IL−4発現の増加をもたらさなかった(それぞれ0.9%および0.6%)。IL−10の平均細胞内発現は、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による刺激の後、0.9から3.4%に増加した。比較では、DC/RCC融合単独による刺激の後、IL−10発現のいかなる増加も観察されなかった。これらのデータは、DC/RCC融合による逐次的な刺激が、IFNγを発現する活性化エフェクター細胞の増殖を誘導し、IL−10を発現するT細胞の増加は比較的より控え目であることを示唆する。
【0179】
細胞溶解能力を有する腫瘍反応性T細胞の増殖
DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、腫瘍反応性リンパ球の選択的な増殖をもたらしたかどうかを判断するために、腫瘍関連抗原、MUC1に特異的なT細胞が増殖後に増加したかどうかを調べた(図17)。この分析のために、DCおよびT細胞を、HLA−A2.1供与体から単離した。抗CD3/CD28単独による刺激の後に、CD8集団のわずか0.93%がMUC1四量体に結合した。対照的に、DC/RCC融合との共培養は、MUC1四量体+細胞の増加(2.3%)をもたらした。留意すべきは、DC/RCC融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、MUC1四量体+細胞の劇的な増加をもたらした(17.3%、融合または抗CD3/CD28単独による刺激と比較してそれぞれp=0.02および0.004)。対照的に、抗CD3/CD28による非特異的刺激とそれに続く融合との共培養は、MUC1四量体+細胞の増殖を誘導しなかった(0.19%)。これらのデータは、DC/RCCによる抗原特異的刺激剤への最初の曝露が、抗CD3/CD28を用いる腫瘍反応性T細胞の以降の増殖のために重要であったことを示唆する。
【0180】
その後、DC/RCC融合および抗CD3/CD28によって刺激したT細胞が、グランザイムBの発現によって明示される細胞溶解能力を実証するかどうかを調べた。グランザイムの発現は、パーフォリン媒介性の標的細胞の殺傷を示す活性細胞溶解性CD8+T細胞で上方制御される。DC/RCC融合による刺激は、グランザイムを発現するCD8+T細胞の5.6倍の増加をもたらした(図18)。抗CD3/CD28への曝露は、グランザイム+細胞のわずか2倍の増加をもたらした。しかし、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、グランザイム+細胞の21倍の増殖を誘導した。抗CD3/CD28への一次曝露とそれに続くDC/RCC融合への曝露は、抗CD3/CD28単独による刺激の後に観察されたものと比較して、グランザイム+細胞のさらなる増殖をもたらさなかった。これらのデータは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、機能的に強力な細胞傷害性Tリンパ球の増殖において特異的に有効であることを示唆する。
【0181】
DC/AML融合および抗CD3/CD28による刺激
その後、患者由来の急性骨髄性白血病試料を用いたDC/腫瘍融合、および抗CD3/CD28による逐次的な刺激を受けたT細胞の表現型特性を調べた。高レベルの循環疾患を有する患者の末梢血または骨髄から骨髄性白血病細胞を得、正常なロイコパックコレクションから生成されたDCと融合させた。DC/AML融合は、DC(CD86)および骨髄性白血病に特異な抗原(CD117−ckitリガンド、CD34および/またはMUC1)を同時発現した細胞のパーセントの測定に従って定量化した(図19)。平均融合効率は、総細胞集団の28%であった。DC/AML融合は自己由来T細胞の控え目な増殖を誘導し、SIは3.3で、記憶エフェクター細胞(CD45RO+)は総T細胞集団の10%を構成した。DC/AML融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、T細胞増殖の統計的に有意な上昇(SI8.2)をもたらし、その39%はCD45ROを発現した(図20)。同様に、DC/AML融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に、CD4+/CD25+細胞の上昇が観察された(9.3%に対してDC/AML融合単独による刺激の後に2.7%)。さらに、融合細胞との共培養に続いて抗CD3/CD28に曝露させたとき、増加したパーセントのCD4+/CD25+細胞がIFNγを発現した。Foxp3+細胞のパーセントの上昇も観察されたが、これは統計的有意性を満たさなかった。DC/AML融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD8+集団の13%でグランザイムB発現を誘導した。対照的に、融合細胞単独、または抗CD3/CD28とそれに続く融合による刺激は、CD8+細胞の2.5%および2.7%でグランザイムB発現をもたらした。RCCモデルで観察された結果に類似して、これらのデータは、DC/AML融合による刺激とそれに続く抗CD3/CD28への曝露が、細胞溶解能力を有する活性化T細胞の有意な増加をもたらしたことを実証する。
【0182】
(実施例3):乳癌との樹状細胞の融合
単球由来のDCの生成
施設によって承認されたプロトコルに従って、正常な供与体からのロイコパック、および乳癌患者から収集された末梢静脈血から、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。試料をHistopaque(登録商標)−1077(Sigma)密度勾配遠心法にかけ、5%CO2加湿インキュベータ内の組織培養フラスコ(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)中の、2mM L−グルタミン(Mediatech、Herndon、VA)を含有し、熱不活性化10%ヒトAB雄血清(Sigma、St.Louis、MO)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Mediatech)を添加したRPMI 1640培地(完全培地)に、37℃で2時間平板培養した。単球濃縮接着性分画を、GM−CSF(1000U/ml)(Berlex、Wayne/Montville、NJ)およびIL−4(1000U/ml)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を含有する完全培地で5日間培養して、未熟なDCを生成した。DC調製物の分画を、TNFα(25ηg/ml)(R&D Systems)、またはTNFα(25ηg/ml)、IL−1β(10ηg/ml)、IL−6(1000U/ml)(R&D Systems)およびPGE2(1μg/ml)(Calbiochem−San Diego、CA)からなるサイトカインの組合せの存在下でさらなる48時間細胞を培養することによって、さらに成熟させた。成熟は、48〜96時間のTNFαへの曝露によって効果的に誘導され、CD80およびCD83の発現の増加がもたらされた。(図4Aを参照)。15回の連続した実験で、未熟のおよび成熟したDC調製物は、同時刺激分子、CD86を強く発現し(それぞれ75%および84%)、CD14の低いレベルの発現を示した。(図4Bを参照)。しかし、成熟したDCは、CD80(20%対9%、p=0.05)およびCD83(31%対7%、p=0.0003)の平均発現の統計的に有意な増加を示した。抗原提示細胞としてのそれらの機能的能力の尺度として、DC調製物を、同種異系T細胞増殖を刺激するそれらの能力について調べた。連続した研究で、未熟なDCとの比較で、成熟DCは同種異系T細胞の高いレベルの増殖を刺激した。
【0183】
T細胞の単離および培養
T細胞濃縮カラム(R&D Systems)またはナイロンウールカラム(Polysciences、Warrington、PA)を用いて、非接着性PBMC分画からT細胞を単離した。両方の方法によるT細胞の純度は、CD3表面発現のFACS分析による測定で、90%を超えた。T細胞は、第三者供与体に由来する場合は同種異系に、DC融合パートナーが由来するのと同じ供与体に由来する場合は自己由来に分類された。
【0184】
腫瘍細胞の単離および培養
施設によって承認されたプロトコルに従って、一次乳癌細胞を悪性の滲出液または切除された腫瘍病巣から得た。ヒト乳癌細胞系MCF−7およびZR75−1を、ATCC(Manassas、VA)から購入した。すべての腫瘍細胞系を、DMEM(高グルコース)、または2mMのL−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび10%熱不活性化ウシ胎児血清(HyClone、Logan、UT)を添加したRPMI 1640で維持した。
【0185】
DC/乳癌融合細胞の調製
腫瘍細胞を1:3〜1:10(細胞収量に依存する)の比で未熟もしくは成熟DC調製物と混合し、前もって加温した無血清RPMI 1640培地で3回洗浄した。細胞ペレットを、50%ポリエチレングリコール(PEG)溶液(分子量:1450)/DMSO溶液(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)に再懸濁した。室温で3分後に、前もって加温した無血清RPMI培地でPEG溶液を段々と希釈し、無血清培地で2回洗浄した。融合調製物を、GM−CSF(500IU/ml)を含む完全培地で、5%CO2において37℃で5〜7日間培養した。
【0186】
フローサイトメトリーによるDC、乳癌およびDC/乳癌融合調製物の特性評価
未熟および成熟DCで生成された融合細胞集団の表現型特性を、調べた。未熟および成熟DC集団を、PEGとの共培養によって、患者由来の一次乳癌細胞またはMCF−7ヒト乳癌細胞系と融合させた。DCおよび乳癌細胞を、HLA−DR、CD11c、CD14、CD80、CD86、CD83、CD40、CD54、MUC−1、サイトケラチン、およびマッチさせたアイソタイプ対照(Pharmingen−San Diego、CA)に対する一次マウス抗ヒトモノクローナル抗体とインキュベートし、洗浄し、FITC結合ヤギ抗マウスIgG1(Chemicon International−Temecula、CA)と培養した。細胞を2%パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、FACScan(Becton Dickinson、San Jose、CA)およびCellQuest Proソフトウェア(登録商標)(Becton Dickinson)を用いて、フローサイトメトリー分析にかけた。DC/乳癌融合調製物を、特異なDC(CD11c−Cychrome)および腫瘍抗原(MUC−1またはサイトケラチン−FITC)を同時発現した細胞のパーセントを定量化するために、二重染色にかけた。融合細胞は、特異な腫瘍(MUC−1および/またはサイトケラチン)およびDC(CD11c)抗原を同時発現した細胞のパーセントを測定することによって定量化した。
【0187】
約1.2×104個の細胞を遠心させてスライド(Cytospin(登録商標)、Shandon Lipshaw、Pittsburgh、PA)の上に置き、乾燥させ、アセトンで固定した。スライドを、一次マウス抗ヒトmAb MUC−1およびサイトケラチンおよびアイソタイプをマッチさせた陰性対照と室温で1時間インキュベートし、洗浄し、ウマ抗マウスIgG(Vector Laboratories、Burlingame、CA)の1:100のビオチン化F(ab’)2断片とインキュベートし、洗浄し、ABC(アビジン−ビオチン複合体)試薬液(Vector Laboratories)とそれに続くAEC(3アミノ−9−エチルカルバゾール)溶液(Vector Laboratories)と30分間インキュベートした。次に、HLA−DR、CD86またはCD83のために、細胞をABC−AP(アルカリホスファターゼ)キット(Vector Laboratories)で染色した。スライドを洗浄し、2%パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、オリンパスAX70顕微鏡(Melville、NY)を用いて分析した。
【0188】
融合細胞をFACSゲーティングにより単離し、CCR7、CD80、CD86またはCD83に対するPE結合マウス抗ヒト抗体で染色した。これらのマーカーを発現する滲出細胞のパーセントは、多チャネルフローサイトメトリー分析によって測定した。あるいは、融合細胞の一定分量にGolgiStop(1μg/ml;Pharmingen)をパルス適用し、Cytofix/Cytopermプラス(商標)(ホルムアルデヒドおよびサポニンを含む)(Pharmingen)中でのインキュベーションによって透過性にし、Perm/Wash(商標)溶液(Pharmingen)で洗浄した。次に、細胞をPE結合抗ヒトIL−10またはIL−12(Caltag Laboratories−Burlingame、CA)、またはマッチさせたアイソタイプ対照抗体と30分間インキュベートし、Perm/Wash(商標)溶液で2回洗浄し、2%パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定した。分析のために、最小限で1×104個の事象を得た。
【0189】
12回の連続した検査で、腫瘍細胞の成熟(11%±1.6SEM)および未熟(7%±1.2SEM)DCとの融合の後に、同等の平均融合効率が観察された。融合細胞は、DCおよび腫瘍由来の抗原を同時発現した細胞のFACSゲーティングによって単離した。これらの研究では、未熟DC/乳癌(89%)および成熟DC/乳癌(82%)融合集団の両方で、CD86の発現が一様に観察された。(図5A、Bを参照)。成熟マーカーCD83は、未熟および成熟融合細胞集団のそれぞれ46%および51%で見られた(p=0.5、NS)。(図5Aおよび5Bを参照)。免疫細胞化学染色は、未熟DC/腫瘍融合による、DR、CD86およびCD83の顕著な発現を示した。(図5C〜5Fを参照)。これらの試験は、DCおよび乳癌細胞の融合が、成熟および活性化と一貫した表現型特性をもたらすこと、および、DC分化の阻害に関連しなかったことを証明する。
【0190】
未熟および成熟DC/腫瘍融合によるIL−12およびIL−10の発現
抗原提示細胞としてのそれらの効力およびTH1応答を刺激するそれらの能力の尺度として、融合細胞集団によるIL−12およびIL−10の発現を調べた。(図6Aおよび6Bを参照)。融合細胞は、DCおよび腫瘍由来の抗原を同時発現した細胞のFACSゲーティングによって単離した。成熟および未熟DCならびに乳癌で生成された融合細胞を、12回の別々の実験で比較した。IL−12およびIL−10を発現する融合細胞の平均パーセントは、融合細胞集団の間で異ならなかった。IL−12は、未熟および成熟DC/乳癌融合のそれぞれ約40%(±6.7SEM)および49%(±6.3SEM)(p=0.35、NS)で、IL−10は、それぞれ約36.3%(±6.4SEM)および40%(±6.4SEM;n=11)(p=NS)で発現された。
【0191】
未熟および成熟DC/腫瘍融合によるCCR7の発現
ケモカイン受容体CCR7は、流入領域リンパ節内のT細胞通行部位に細胞移動を誘導し、成熟および活性化を受けるDCによって特徴的に発現される。それらの移動能力の尺度として、未熟および成熟DCで生成された融合について、CCR7の発現を測定した。(図6Cを参照)。CCR7は未熟および成熟融合集団の上で顕著に発現され、腫瘍−DC融合が、成熟し、活性化された表現型の発現をもたらしたことが示唆される。12回の実験では、平均CCR7発現が、未熟および成熟DC/乳癌融合のそれぞれ33%(±9SEM)および38%(±7.3SEM;n=11)で観察された。
【0192】
(実施例4):DC、腫瘍およびDC/乳癌融合による同種異系T細胞増殖の刺激
同種異系T細胞の増殖を刺激するそれらの能力を評価するために、未熟および成熟DCならびにDC/乳癌融合細胞調製物を、96ウェルU底培養プレート(Costar、Cambridge、MA)内で、同種異系の正常な供与体由来のT細胞と1:10、1:30、1:100、1:300および1:1000の比率で、37℃および5%CO2で5日間共培養した。T細胞の増殖を、培養期間の終わりの18時間前に各ウェルに加えた[3H]−チミジン(1μCi/ウェル;37kBq;NEN−DuPont、Boston、MA)の取込みで測定した。その後、自動TOMTECハーベスター(Mach II、Hamden CT)を用いてガラス繊維ろ紙(Wallac Oy、Turku、Finland)の上に細胞を収集し、乾燥させ、10mlのScintiVerse(登録商標)(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)を含むBetaPlate試料バッグ(Wallac)中に入れて密封した。細胞に結合した放射活性を、液体シンチレーション計数器(Wallac、1205Betaplate(商標))で計数した。データを、刺激指数(SI)で表す。SIは、未刺激T細胞集団のバックグラウンド[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)に対する[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)の比率を計算することによって測定した。
【0193】
未熟および成熟DC/乳癌融合によって刺激されたT細胞によるサイトカイン発現
未熟および成熟DC/乳癌融合と培養されたT細胞により分泌されたサイトカインのプロフィールを、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)キット(Becton Dickinson)を用いて測定した。未刺激T細胞、または未融合のDCおよび乳癌に曝露させた細胞からの上清は、対照の役目を果たした。上清は細胞回収の前に収集し、−80℃で凍結させた。IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IFNγ、TNFα、IL−12、IL−6、IL−1βおよびIL−8の濃度は、標準のプロトコルに従って炎症性CBAキットを用いて定量した。簡潔に、キットは各サイトカインに特異的な捕捉抗体でプレコートされている、異なる蛍光強度(FL−3)を有する6つのミクロビーズ集団の混合物を提供した。培養上清または提供された標準化サイトカイン調製物を、予備混合されたミクロビーズに加え、次に、二次PE結合抗体と培養した。個々のサイトカイン濃度をそれらの蛍光強度(FL−2)によって示し、次に、CellquestおよびCBAソフトウェア(BD Pharmingen)の標準参照曲線を用いて計算した。アッセイ間の再現性は、3回の別々の実験で3つの異なるレベルのヒト標準の2つの反復試料を用いて評価した。
【0194】
未熟DC/腫瘍融合集団と比較した成熟DC/腫瘍融合集団の機能的能力は、T細胞増殖およびサイトカイン生成を刺激するそれらの能力を比較することによって分析した。融合細胞集団を自己由来のT細胞と5日間共培養し、増殖は、終夜パルスの後のトリチウムチミジンの取込みを測定することによって測定した。(図6Dを参照)。増殖は、T細胞刺激指数(SI)(刺激されたT細胞/未刺激T細胞)で測定した。両未熟および成熟DC/乳癌融合は自己由来T細胞の増殖を刺激し、SIはそれぞれ3.3(±1.4SEM;n=6)および3.5(±1.4SEM;n=6)であった。刺激されたT細胞集団のサイトカイン分泌は、BDサイトメトリックアレイビーズシステム(BD Biosciences)を用いて定量した。(図7を参照)。未熟および成熟DC/乳癌融合による刺激の後のIFNγの平均レベルは、それぞれ2188および2252pg/mlであった。これらのレベルは、未融合の自己由来DCと培養されたT細胞で見られるもの(685pg/ml)よりも、有意に高かった。融合細胞調製物は、上清中のIL−12、IL−4、IL−10、IL−2およびTNFαの生成の統計的に有意な増加を誘導しなかった。
【0195】
未熟および成熟DC/乳癌融合による刺激の後のCTL応答
未熟および成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞調製物を、1:10の比率で自己由来T細胞と7〜10日間共培養した。標準の5時間51Cr放出アッセイで、T細胞エフェクターに自己由来であるDCで生成したDC/乳癌融合を標的細胞として用いた。標的細胞(2×104個の細胞/ウェル)を、51クロム(NEN−DuPont)と37℃で1時間インキュベートし、続いて反復洗浄をした。51Cr放出は、エフェクターおよび標的細胞集団の5時間の共培養の後に定量した。細胞毒性パーセントは、以下の通りに標準のアッセイによるトリプリケートの平均値を使用して計算した:比細胞毒性百分率=[(試料カウント−自然発生カウント)/(最大カウント−自然発生カウント)]×100。自然発生放出は、最大51Cr取込みの25%未満であった。
【0196】
腫瘍特異的CTL応答およびMUC−1特異的応答の刺激。
【0197】
自己由来の腫瘍または半自己由来の融合標的の溶解が証明するように、両未熟および成熟DC/腫瘍集団は、かなりのレベルの標的特異的殺滅を生成することができた。10回の別々の実験では、CTL活性は、融合集団の間で異ならなかった。30:1のエフェクター:T細胞比率のための平均CTL溶解は、成熟および未熟DC/乳癌融合で刺激されたT細胞では27%であった。(図8Aを参照)。特異的腫瘍抗原に対して誘導されるT細胞応答、DC/乳癌融合によるHLA−A2.1+T細胞刺激を刺激する融合ワクチンの能力を評価するために、認められたMUC1を評価した。MUC−1四量体に結合しているCD8+T細胞の選択的な増殖が、融合細胞刺激の後に観察された。(図8Bを参照)。要約すると、DC/乳癌融合は、同時刺激分子、刺激性サイトカイン、および、それらがT活性化部位に移動するのを可能にするケモカイン受容体の強い発現を伴う、活性化表現型を実証する。DC/乳癌融合は、既定の腫瘍抗原を標的にするT細胞の増殖を含む、抗腫瘍CTL応答を刺激する。
【0198】
四量体染色
抗原特異的MUC1+CD8+T細胞は、それぞれMUC1特異的エピトープM1.2(MUC12〜20)LLLLTVLTV(配列番号1)(Beckman Coulter、Fullerton、CA)に結合されている4つのHLA MHCクラスI分子で構成される、フィコエリトリン(PE)標識HLA−A*0201+iTAg(商標)MHCクラスIヒト四量体複合体を用いて同定された。対照PE標識四量体を、平行して用いた。非接着性細胞をDC/乳癌融合細胞と5日間共培養し、回収し、MUC1または対照四量体とインキュベートし、次に、FITC結合CD8抗体で染色した。細胞を洗浄し、二次元FACS分析によって分析した。合計3×105個の事象を、最終分析のために収集した。同様に、非接着性未刺激細胞を、平行して分析した。
【0199】
DC/乳癌融合による刺激への調節T細胞および活性化T細胞の応答の分析
自己由来および同種異系のT細胞調製物を、成熟DC/乳癌融合と10:1の比率で5日間共培養した。細胞調製物を、FITC結合抗CD4、シトクロム結合抗CD25、およびPE結合抗CD69、抗GITRまたは抗CTLA−4とインキュベートした。あるいは、細胞を透過性にし、IFNγ、IL−10、IL−4またはFOXP3に対するPE結合抗体と培養した。次に、細胞を多チャネルフローサイトメトリーによって分析した。一部の検査では、CD4+T細胞を磁気ミクロビーズ単離(Miltenyi Biotec)によって単離し、生じた集団をCD25抗体および指示されたマーカーによる2つの染色方法にかけた。
【0200】
活性化T細胞応答を引き出す能力を有する強力な抗原提示細胞としてDC/乳癌融合を特徴付けした後、ワクチン応答を抑制するであろう阻害要素も刺激する融合細胞の能力を調べた。具体的には、DC/腫瘍融合が、活性化T細胞と比較して調節T細胞の増殖を誘導するかどうかを調べた。活性化記憶エフェクター細胞および調節T細胞の両方はCD4およびCD25を同時発現するが、調節T細胞は、それらの比較的高いレベルのCD25発現、およびGITR、CTLA−4およびFoxp3などの他のマーカーの存在によって識別することができる。対照的に、CD69は、活性T細胞によって特徴的に発現される。成熟DCをヒト乳癌細胞系(MCF7またはZR75−1)に融合し、自己由来または同種異系のT細胞と5日間共培養した。CD4/CD25+細胞をフローサイトメトリー分析によって定量化し、細胞表面マーカーの発現およびサイトカインプロフィールに関してさらに特徴付けした。CD4+磁気ビーズを用いて、この集団からCD4+T細胞を積極的に選択した。生じたCD4+T細胞のFACS分析は、97%を超える純度を証明した。
【0201】
一連の13回の別々の実験では、DC/乳癌融合による刺激は、CD4+CD25+T細胞のパーセントの増加をもたらさなかった(未刺激T細胞6.9%±1.1SEMと比較して7%±1.3SEM)。(図9Aを参照)。しかし、融合細胞および自己由来T細胞の共培養は、CD69を発現したCD4+CD25+T細胞の6.3倍の増加をもたらし(4.7%−未刺激T細胞;29.5−融合刺激細胞、N=5;p=0.01)、これは活性化表現型と一貫した。成熟DC/乳癌融合による刺激は、GITRおよびCTLA−4を発現したCD4+CD25+T細胞の、それぞれ9倍および5.2倍の増加ももたらした。これらの知見は、DC/乳癌融合によって、活性化および阻害性の両T細胞集団が増殖することを示唆する。(図9Bを参照)。留意すべきは、同種異系T細胞の融合刺激は、CD4+25+69+T細胞で類似した増加(5倍)をもたらしたが、GITR(25倍)およびCTLA−4(15倍)陽性集団の有意により大きな増殖をもたらした。(図9Cを参照)。
【0202】
細胞内フローサイトメトリー分析を用いて、DC/乳癌融合による刺激の後の、CD4 +CD25+T細胞集団でのサイトカイン発現のプロフィールも調べた。14回の連続した研究では、融合細胞刺激の前および後の、IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセントは、それぞれ40%(±6.9SEM)および68%(±6.1SEM)であった(p=0.005)。(図10Aおよび10Bを参照)。同様に、阻害性サイトカインIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞のパーセントは(図10Bを参照)は、20%(±4.9SEM)から59%(±8.4SEM)に上昇した(p=0.0002)。
【0203】
最後に、調節T細胞に特異的であると考えられるマーカー、Foxp3の細胞内発現に及ぼす融合細胞刺激の影響を評価した。Foxp3発現は、未刺激および融合刺激のCD4+CD25+T細胞集団のそれぞれ26.5%(±5.4SEM;n=9)から63%(±10.6SEM;n=9)(p=0.01)に増加した。(図10Bを参照)。このように、融合細胞は免疫賦活性および免疫抑制の両要素の増殖を誘導し、調節T細胞が持続的で有効な抗腫瘍免疫の発達を阻止することができる複合応答をもたらす。
【0204】
(実施例5):自己由来T細胞の融合媒介刺激に対する外来性のIL−12、IL−18およびCpG ODN(TLR9アゴニスト)の影響
二次刺激分子の添加の後に活性化T細胞の発生率の上昇があるかどうか判断するために、DC/乳癌融合および自己由来T細胞の共培養への、IL−12、IL−18およびTLRアゴニスト、イミダゾキノロン(TLR7/8)およびCPG−ODN(TLR9)の添加を調べた。DC/乳癌融合を、IL−12(10ηg/ml;R&D Systems)、IL−18(10ηg/ml)またはCPG ODN(10μg/ml、Coley Pharmaceutical Group、Ottawa、Canada)の存在下または非存在下で、自己由来のT細胞と5〜7日間共培養した。CpG ODN2395は、TスペーサーによってGCに富む回文配列5’−CGGCGCGCGCCG−3’(配列番号3)に連結された、六量体CpGモチーフ、5’−TCGTCGTTTT−3’(配列番号2)からなった。各実験で、刺激配列のない対照CpG ODNを同時に試験した。調節T細胞および活性化T細胞の集団を、上で概説される通りに定量した。
【0205】
DC成熟およびT細胞集団の融合媒介刺激に及ぼすTLRアゴニストの影響
T細胞応答を活性化表現型に傾かせ、調節T細胞の影響を制限しようとして、ワクチン応答に及ぼすTLR9アゴニスト、CPG ODNの影響、先天性免疫応答の要素を活性化し、ワクチン効力を増強することが示されたTLRアゴニストを試験した。具体的には、CD4/CD25+細胞でIL−10およびFoxp3と比較したIFNγの発現を定量化することによって、活性化T細胞および阻害性T細胞の集団の融合媒介刺激を調節するCPG ODNの能力を調べた。さらに、DC/乳癌融合と共培養したT細胞の表現型プロフィールに及ぼす刺激性サイトカインIL−12およびIL−18の添加の影響も評価した。CpG ODNおよびIL−18の存在下で、融合刺激CD4+CD25+T細胞においてそれぞれ2.5倍の増加が見られた(p=0.0004およびp=0.006)。対照的に、IL−12をT細胞およびDC/乳癌融合の共培養に加えた場合、CD4/CD25+細胞の有意な増加は見られなかった。(図11Aを参照)。
【0206】
CPG、IL−12またはIL−18の添加は、Foxp3発現(それぞれp=0.024、p=0.042、p=0.016)によって明示されるように、調節T細胞の表現型特性を明示するCD4/CD25+のパーセントを低下させた。これらの知見と一致して、CD4+CD25+T細胞でのIL−10の発現は、DC/乳癌融合単独で刺激したT細胞(59.3%±8.4、n=14)と比較して、CpG ODN(19.8%±4.1、n=7;p=0.002)およびIL−18(18.3%±5.1、n=4;p=0.0004)の添加をパルス適用した共培養で有意に低下した。(図11Bを参照)。留意すべきは、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセントの枯渇が、融合および自己由来T細胞の共培養へのCpGおよびIL−18の添加の後にも見られた。(図11Cを参照)。これらの結果は、IL−12またはTLRアゴニストの添加が、免疫抑制調節細胞の存在を制限することによって、ワクチン効力を潜在的に高めることを証明する。
【0207】
(実施例6):DC/乳癌融合細胞応答に及ぼすT細胞の抗CD3/CD28刺激の影響
ワクチン応答を免疫活性化の方に傾かせる別の戦略として、DC/乳癌融合ワクチンに対する応答に及ぼす、CD3およびCD28の抗体媒介連結の影響を調べた。抗CD3/CD28は、周囲の免疫環境の性質によって活性化T細胞または阻害性T細胞の増殖をもたらす、抗原非依存性刺激を提供する。したがって、DC/乳癌融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、融合ワクチンによって最初に活性化されたT細胞の応答を増幅するであろうと仮定された。
【0208】
T細胞を、固定化モノクローナル抗体、抗CD3(クローン−UCHT1;Pharmingen)および抗CD28(クローン−CD28.2;Pharmingen;CD3i/CD28i)に曝露させることによって、48時間活性化させた。24ウェル非組織培養処理プレート(Falcon、Fisher)を0.5ml/ウェルの各抗体(PBSに1μg/ml)でコーティングし、4℃で一晩放置した。プレートを1%BSAでブロックし、T細胞調製物をウェルにつき2×106個の細胞密度でそれらの上に加えた。T細胞を、抗CD3/CD28(48時間)もしくはDC/乳癌融合単独(5〜7日間)、融合とそれに続く抗CD3/CD28への曝露、または、抗CD3/CD28とそれに続く融合細胞によって刺激した。T細胞を収集し、トリチウムチミジンの取込みで増殖を測定した。MUC1四量体に結合するT細胞を定量した。調節(Foxp3)および活性化(CD69、IFNγ)表現型と一貫したマーカーを発現するT細胞のパーセントを、定量した。
【0209】
一連の検査で、制限されたT細胞の増殖が、CD3/CD28単独(SI1.6)またはDC/乳癌融合(SI3.1)への曝露の後に観察された。(図12Aを参照)。対照的に、T細胞を先ずDC/乳癌融合で刺激し、次に抗CD3/CD28で増殖させたときに、T細胞増殖の顕著な増加が認められた(SI25.9)。留意すべきは、T細胞を抗CD3/CD28に最初に曝露させ、次にDC/乳癌融合と培養したときには、増殖の増加は観察されなかった(SI1.5)。DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、腫瘍反応性T細胞の特異的増殖をもたらした。3つの一連の研究で、融合細胞による刺激の後の抗CD3/CD28への曝露は、MUC1四量体結合細胞の13.7倍の平均増加率を誘導した。(図12Bを参照)。対照的に、MUC1四量体+細胞のパーセントは、抗CD3/CD28単独による刺激の後、ベースラインレベルにとどまった。
【0210】
その後、増殖集団のT細胞表現型を評価した。CD4/CD25を発現するT細胞のパーセントは、抗CD3/CD28(11%)または融合単独(10%)によって刺激したT細胞と比較して、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に著しく増加した(28%)。(図12Cを参照)。抗CD3/CD28の添加は、CD4、CD25およびCD69を同時発現した細胞のパーセントの約5倍の増加をもたらし、これは、活性化表現型と一貫した(図12D)。同様に、それぞれ融合または抗CD3/CD28と比較して、融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激で、IFNγを発現した細胞のパーセントのそれぞれ4倍および3倍の増加が観察された。対照的に、Foxp3を発現したCD4/CD25+T細胞の増加が明らかにするように、調節T細胞の約5倍の増加も観察された。(図12Dを参照)。
【0211】
これらのデータは、融合媒介刺激とそれに続く抗CD3/CD28増殖が、活性化T細胞および調節T細胞の両方の上昇したレベルをもたらしたことを示唆する。
【0212】
(実施例7):IL−12と併用した樹状細胞/乳癌融合による転移性乳癌を有する患者のワクチン接種
樹状細胞(DC)/乳癌融合によるワクチン接種の安全性、免疫応答および臨床効果を検査するために、転移性乳癌を有する患者に、融合をIL−12と併用投与する。DC/乳癌融合細胞は、DC媒介同時刺激との関連で、広範囲の腫瘍関連抗原を提示する。融合細胞は、自己由来の腫瘍細胞を溶解する能力を有する、腫瘍特異的免疫を刺激する。臨床試験では、融合細胞によるワクチン接種は、良好な耐容性を示し、患者の大多数で免疫応答を誘導し、患者のサブセットで疾患退行をもたらす。IL−12と併用したワクチンの投与は、T細胞活性化を促進することによってさらにワクチン応答を高めると仮定された。
【0213】
抗原提示細胞としてのそれらの表現型特性に関するDC/乳癌融合の性質、および抗腫瘍免疫を刺激するそれらの能力を調べた。DC/乳癌融合は、同時刺激、接着および成熟マーカー、ならびに刺激性サイトカイン、IL−12およびIFNγを強く発現した。さらに、融合細胞は、流入領域リンパ節でのT細胞通行部位への細胞の移動のために必要な、CCR7を発現した。これらの知見と一致して、未熟および成熟DCで生成された融合は、自己由来の腫瘍標的のCTL媒介溶解を強力に刺激した。
【0214】
その後、活性化T細胞および調節T細胞の存在に関して、DC/乳癌融合に対するT細胞の応答の性質を調べた。DC/乳癌融合は、CD4/CD25/CD69およびCD4/CD25/Foxp3+細胞を特徴とする細胞の混合集団を刺激した。調節細胞の存在の増加は、融合細胞ワクチンのインビボ効力を潜在的に阻害すると考えられた。このように、融合媒介T細胞応答を活性化細胞の方に傾かせるために、いくつかの戦略を調べた。IL−12、TLR7/8アゴニスト、CPG ODNまたはIL−18の添加は、調節細胞と比較して活性化細胞の相対的な存在を増加させた。
【0215】
DC/乳癌融合に対するT細胞応答の性質をさらに明確にするために、CD4およびCD25を同時発現する増殖T細胞集団の機能的特性を調べた。融合細胞による刺激の後に、CD4/CD25/FOXP3細胞の存在の増加が認められ、融合共培養の前および後に、総CD4/CD25細胞のそれぞれ26%および63%の平均レベルが観察された。FOXP3を一様に発現するCD4/CD25high細胞をFACS選別によって単離し、CD4/CD25−細胞のマイトジェンおよび抗原特異的応答を阻害するそれらの能力を分析した。CD4/CD25−T細胞を、CD4/CD25high細胞の存在下または非存在下で、PHA(2μg/ml)または抗CD3と1:1の比率で3日間培養した。CD4/CD25high細胞の存在は、終夜パルスの後のチミジン取込みによって判断される、増殖のかなりの阻害をもたらした。同様に、末梢血単核細胞を、CD4/CD25high細胞の存在下または非存在下で、破傷風トキソイド(10μg/ml)と1:1の比率で5日間培養した。CD4/CD25high細胞の存在は、刺激指数(PBMCおよび破傷風トキソイドのチミジン取込み/PBMC単独のチミジン取込み)によって判断される、破傷風へのT細胞応答のかなりの阻害をもたらした。
【0216】
Foxp3発現は、FACSおよび免疫細胞化学的分析によって選別されたCD4/CD25high細胞で確認した。これらのデータは、DC/乳癌融合が、調節T細胞の表現型および機能的特性を有するT細胞集団の増殖を誘導することを証明する。
【0217】
DC/乳癌融合とそれに続く抗CD3/CD28による活性化T細胞の選択的増殖
抗腫瘍免疫を刺激し、調節T細胞の増殖を制限するDC/乳癌融合の能力を高めるために、いくつかの戦略を調べた。DC/腫瘍融合による抗原特異的刺激およびT細胞同時刺激複合体(CD3/CD28)の非特異的連結の組合せが、腫瘍特異性リンパ球の活性化をもたらすであろうと仮定された。DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による複合刺激は、活性化表現型が優先する腫瘍反応性T細胞の増殖をもたらすことが実証された。
【0218】
DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激を受けたT細胞の、表現型特性および機能的特性を調べた(図15)。制限されたT細胞増殖が、抗CD3/CD28単独(SI:1.5±0.5SEM;n=7)またはDC/乳癌融合(SI3.1±1.2SEM;n=7)への曝露の後に観察された。しかし、T細胞を先ずDC/乳癌融合で刺激し、次に抗CD3/CD28で増殖させたときに、T細胞増殖の顕著な増加が認められた(SI:23±8.73SEM;n=7)。留意すべきは、T細胞を抗CD3/CD28に最初に曝露させ、次にDC/乳癌融合と培養したときには、増殖の増加は観察されなかった(SI:1.6±0.3SEM;n=6)。
【0219】
DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、腫瘍反応性T細胞の特異的増殖をもたらした。融合細胞による刺激の後の抗CD3/CD28への曝露は、MUC1四量体結合細胞(n=3)の13.7倍の平均増加率を誘導した。MUC1四量体+細胞のパーセントは、抗CD3/CD28単独による刺激の後、ベースラインレベルにとどまった。
【0220】
増殖T細胞集団の表現型に関しては、CD4+CD25+表現型を発現するT細胞のパーセントは、抗CD3/CD28(11%)または融合単独(10%)(n=6)によって刺激したT細胞と比較して、DC/腫瘍融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に著しく増加した(28%)。融合細胞単独と比較して、DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD69およびIFNγを同時発現したCD4+CD25+細胞の5倍および4倍の増加をもたらした。対照的に、Foxp3を発現したCD4+CD25+T細胞の増加が明らかにするように、調節T細胞の約5倍の増加も観察された。これらの結果は、融合媒介刺激とそれに続く抗CD3/CD28増殖が、活性化T細胞および調節T細胞の両方のレベルの上昇を誘導することを示唆する。
【0221】
将来の臨床試験は、IL−12と併用したDC/乳癌融合による転移性乳癌患者のワクチン接種を含む。
【0222】
(実施例8):DC/多発性骨髄腫融合による自己由来T細胞増殖の刺激
多発性骨髄腫(MM)の患者に由来する自己由来の融合およびT細胞を用いる実験で、類似した知見が観察された。DCを接着性単核細胞から生成し、本明細書に記載の方法を用いて自己由来の骨髄腫細胞と融合させた。自己由来のT細胞は、T細胞分離カラムを用いて単離した。多発性骨髄腫を有する患者に由来するT細胞を、1:10の融合対T細胞の比率で融合細胞と7日間共培養するか、融合細胞と5日間共培養した後、抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した。刺激の後、一晩の適用の後のトリチウムチミジンの取込みによって、T細胞増殖を測定した。DC/骨髄腫融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、融合細胞単独によって刺激したT細胞と比較して、T細胞増殖のレベルを著しく増加させた(図13)。
【0223】
DC/MM融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD4+/CD25+/CD69+細胞によって定義される活性化T細胞のレベルの増加をもたらした。抗CD3/CD28単独によって刺激された細胞と比較して、DC/MM融合単独による刺激またはDC/MM融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に、CD4/25/CD69細胞の(総集団中の)パーセントの27倍および39倍の増加が観察された。その後、DC/MM融合および抗CD3/CD28によって刺激したT細胞の、自己由来のMM標的を溶解する能力を調べた。患者由来のT細胞を、自己由来のDC/MM融合単独によって7日間、またはDC/MM融合で5日間と以降の抗CD3/CD28への48時間の曝露によって刺激した。自己由来の骨髄腫細胞の溶解は、標準のクロム放出アッセイで測定した。DC/MM融合とそれに続く抗CD3/CD28によって刺激したT細胞は、自己由来の骨髄腫標的の、DC/MM融合単独で刺激したT細胞で観察されたものを超える、高レベルのCTL媒介性の溶解を示した(図14)。これらの知見は、DC/MM融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、腫瘍標的を溶解する能力を有する活性化された腫瘍特異的T細胞の選択的増殖をもたらすことを実証する。したがって、この手法は、多発性骨髄腫の養子免疫療法のための理想的なプラットホームを提供する。
【0224】
同等物
本発明を、その好ましい実施形態を参照して詳細に示し、記載したが、添付の請求項によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更をそこに加えることができることは、当業者によって理解されよう。当業者は、常用の実験しか用いずに、本明細書で具体的に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識するか、確認することができよう。そのような同等物は、特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2007年11月8日に出願されたU.S.S.N.第61/002,538号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
連邦政府によって資金供与された研究についての声明
本発明は、国防省助成金DAMD17−03−1−0487;Renal SPORE Development Project助成金CA10194およびOvarian Cancer SPORE助成金CA105009の下、米国政府の援助を受けてなされた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に細胞免疫学に関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍細胞は、宿主のT細胞レパートリーによって認識される可能性があり、腫瘍免疫療法のための潜在的標的の役目を果たす特異な抗原を発現する。しかし、抗原は同時刺激がないところで提示され、腫瘍細胞は、固有の抗原提示およびエフェクター細胞集団を抑制する阻害性のサイトカインを発現するので、腫瘍細胞は宿主免疫を逃れる。(非特許文献1;非特許文献2を参照)。この免疫抑制性環境における重要な要素は、悪性腫瘍を有する患者の腫瘍層、流入領域リンパ節および循環で見出される調節T細胞の存在の増加である。(非特許文献3;非特許文献4を参照)。したがって、研究の有望な領域は、腫瘍関連アネルギーを逆転させ、悪性細胞を認識して除去するようにエフェクター細胞を刺激する、癌ワクチンの開発である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Speiserら、J.Exp.Med.(1997年)186巻:645〜53頁
【非特許文献2】Gabrilovichら、Clin Cancer Res.(1997年)3巻:483〜90頁
【非特許文献3】von Boehmer、Nat Immunol(2005年)6巻:338〜44頁
【非特許文献4】Liyanageら、J.Immunol.(2002年)169巻:2756〜61頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、免疫系を刺激する組成物を特徴とする。したがって、本発明は、樹状細胞、例えば、非濾胞性樹状細胞および非樹状細胞の融合産物であるハイブリッド細胞(またはその後代)を含む。ハイブリッド細胞は、その表面にB7(例えばB7−1またはB7−2などの同時刺激分子のB7ファミリーの任意の構成員)を発現する。好ましくは、ハイブリッド細胞は、他の同時刺激分子、MHCクラスIおよびクラスII分子、および接着分子も発現する。樹状細胞融合パートナーおよび非樹状細胞は、同じ種に由来してもよい。例には、非樹状細胞融合パートナーが、疾患関連抗原、例えば腫瘍、細菌またはウイルスに由来するものを発現するハイブリッド細胞が含まれる。あるいは、非樹状細胞は、腫瘍細胞である。樹状細胞は、自己由来であるか同種異系である。樹状細胞および非樹状細胞は、好ましくは同じ個体、例えばヒト患者に由来する。
【0007】
これらの免疫賦活性組成物のそれぞれは、融合細胞を含む複数の細胞を含み、融合細胞のそれぞれは、少なくとも1つの哺乳動物の樹状細胞(例えば、骨髄培養または末梢血細胞培養に由来するDC)と、細胞表面抗原(例えば、癌抗原)を発現する少なくとも1つの哺乳動物の非樹状細胞(例えば、癌細胞またはトランスフェクトされた細胞)との間の融合によって生成される。「癌抗原」は、癌を有する個体の正常細胞と対照的に、主にまたは完全に癌細胞によって発現される抗原性分子を意味する。癌抗原は、その正常な対応物と比較して、悪性細胞によってより高いレベルで発現されることもできる。あるいは、癌抗原は、ある悪性細胞および正常細胞で特異的に発現させることができる(すなわち、前立腺特異抗原)。組成物中の融合細胞は、免疫系を刺激する(例えば、T細胞を活性化する)のに有効な量で、MHCクラスII分子、B7および細胞表面抗原を発現する。
【0008】
本発明は、実質的に純粋なハイブリッド細胞を代償にして培養で増殖し、教育され(educated)、抗原特異性免疫エフェクター細胞集団であって、ハイブリッド細胞が、1つまたは複数の抗原を発現する細胞に融合している抗原提示細胞(APC)である集団も提供する。本発明は、活性化され、増殖した免疫エフェクター細胞集団も含む。例えば、細胞はエキソビボで活性化される。上記集団は、T細胞およびハイブリッド細胞を含む。細胞は、患者由来の免疫細胞およびハイブリッド細胞の共培養に由来してもよい。エフェクター細胞は、自己由来の腫瘍細胞を特異的に死滅させ、既知のまたは未知の腫瘍抗原を認識し、それによって、未知の腫瘍抗原を特定するために用いることができる。
【0009】
実質的に純粋な、教育され、増殖した、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する方法であって、免疫エフェクター細胞がTリンパ球であり、集団がCD4+免疫エフェクター細胞および細胞毒性CD8+免疫エフェクター細胞の両方を含む方法も、ここで提供される。具体的には、そのような方法は、複数のハイブリッド細胞を提供する工程であって、ハイブリッド細胞のそれぞれは少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍細胞または癌細胞との間の融合によって生成され、樹状細胞および腫瘍細胞または癌細胞は同じ種に由来し、樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、ハイブリッド細胞の少なくとも半分は免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)細胞表面抗原を発現する工程と;免疫エフェクター細胞集団を複数のハイブリッド細胞と接触させ、それによって、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する工程と;ハイブリッド細胞または抗CD3/CD28抗体単独への曝露と比較して、T細胞増殖、T細胞活性および/または腫瘍反応性T細胞を増加させるために、生じた集団を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程とを含む。例えば、これらの方法は、活性化されたT細胞の少なくとも約2倍の増加、腫瘍反応性T細胞の少なくとも約2倍の増加;および/または、T細胞増殖の少なくとも約2倍の増加をもたらすことができる。DC/腫瘍融合単独による刺激と比較したときの、DC/腫瘍融合と続く抗CD3/CD28による刺激の増加は、もう1つの特性、例えば、それらに限定されないが、T細胞増殖の程度;記憶エフェクター細胞の存在;集団中の活性T細胞の存在の増加(例えば、CD69発現を測定することによって);IFNγおよび/またはグランザイムBを発現する細胞の存在;腫瘍反応性T細胞の存在(例えば四量体染色によって);および/または集団中の調節T細胞の存在の枯渇(例えば、FoxP3発現を測定することによって)を調べることによって測定することができる。
【0010】
当業者は、本発明の方法が、活性化T細胞および調節T細胞の両方の増数をもたらすことを認識するであろう。しかし、融合への曝露および抗CD3/CD28抗体による増殖の後に観察される調節T細胞の数と比較したときには、より大きなパーセントの活性化されたT細胞が観察される。したがって、生じるT細胞集団は、活性化された表現型を主に表す。
【0011】
任意選択で、本発明の方法は、教育され、増殖したT細胞集団を、抗CD3/CD28抗体による増殖の後に調節T細胞の活性を除去するか、さもなければ低減させる化合物(複数可)と接触させる工程も含む。調節T細胞の活性を除去するか低減させる化合物には、例えばある種のサイトカインが含まれる。選抜方法を用いて、または、siRNAを用いて調節T細胞の重要な遺伝子の発現を抑制することによって、調節T細胞の活性を達成することができる可能性もある。
【0012】
免疫エフェクター細胞が少なくとも24時間の間に増殖することができるように、抗CD3/CD28抗体は、平らな基材(substrate)に、または、当技術分野で通常用いられる任意の他の適する基材もしくは表面に結合することを当業者は認識するであろう。
【0013】
これらの方法に従って、免疫エフェクター細胞および/またはハイブリッド細胞は、遺伝子改変された細胞であってよい。例えば、遺伝的改変は、ペプチド、リボザイム、アンチセンス配列、ホルモン、酵素、成長因子および/またはインターフェロンをコードするポリヌクレオチドの細胞(複数可)への導入を含むことができる。
【0014】
さらに、免疫エフェクター細胞は、ハイブリッド細胞と培養する前はナイーブであってよい。さらに、免疫エフェクター細胞は、1つまたは複数のサイトカインまたはアジュバントの存在下でハイブリッド細胞と培養することができる。適するサイトカインには、IL−7、IL−12および/またはIL−18が含まれるが、これらに限定されない。さらに、適するアジュバントには、CPG ODN、TLR7/8アゴニストおよび/またはTLR3アゴニストを含めることができるが、これらに限定されない。
【0015】
生じた増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団は、IL−7などのサイトカインを含む細胞培養培地で維持することができる。
【0016】
当業者は、樹状細胞および1つまたは複数の抗原を発現する腫瘍もしくは癌細胞が、自己由来または同種異系であってよいことを認識するであろう。一部の実施形態では、樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は、同じ個体から(すなわち同じヒトから)得られる。あるいは、樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は、同じ種(すなわち、Homo sapiens)の異なる個体から得られる。
【0017】
これらの方法で用いるのに適する樹状細胞は、末梢血、骨髄または皮膚に由来しても、またはそこから得てもよい。同様に、樹状細胞は、樹状細胞始原細胞から得ても、またはそれに由来してもよい。
【0018】
これらの方法と共に使用することが企図される腫瘍もしくは癌細胞には、乳癌細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、尿路上皮癌細胞、結腸癌細胞、直腸癌細胞または血液癌細胞が含まれるが、これらに限定されない。例えば、血液癌細胞には、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、多発性骨髄腫細胞および非ホジキンリンパ腫細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
さらに、当業者は、任意の腫瘍または癌細胞を本発明の方法のいずれかで用いることができることを認識するであろう。
【0020】
ここでは、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含む実質的に純粋な集団であって、1つまたは複数の抗原を発現する腫瘍もしくは癌細胞に融合している樹状細胞を含むハイブリッド細胞によって教育された、教育された抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含む。好ましくは、樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は同じ種に由来し、樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、融合細胞の少なくとも半分は、免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7および(c)細胞表面抗原を発現する。生じた、教育された免疫エフェクター細胞は、その後抗CD3/CD28抗体の存在下の培養物で増殖し、培養でのこの増殖の後に、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して、集団におけるT細胞の増殖が少なくとも約7倍増加しているか、集団におけるT細胞の活性化が少なくとも約4倍増加しているか、集団における腫瘍反応性T細胞が少なくとも約13倍増加しているか、またはそれらの任意の組合せである。
【0021】
樹状細胞および腫瘍もしくは癌細胞は、同じ個体(すなわち同じヒト)または同じ種(すなわち、Homo sapiens)の異なる個体から得られる。
【0022】
一実施例では、腫瘍もしくは癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、集団におけるT細胞の増殖が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約13倍増加していること;集団における記憶エフェクター細胞の存在が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加していること、集団におけるT細胞の活性化が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約8倍増加していること;IFNγおよびグランザイムBを発現する細胞の集団における存在が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して、それぞれ少なくとも約2.5倍および3.75倍増加していること;ならびに、集団における腫瘍反応性T細胞が、ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約13倍増加していることが観察されている。
【0023】
当業者は、集団における様々な細胞の数の増加倍率が、本発明で用いる腫瘍もしくは癌細胞のタイプによって決まることを認識するであろう。さらに、特定の癌タイプ内で患者間の変動が存在する。
【0024】
DC/腫瘍融合単独による刺激と比較した、DC/腫瘍融合と、それに続く抗CD3/CD28とによる刺激の平均増加倍率を、下の表1に示す。
【0025】
【表1】
生じた、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団は、細胞集団および薬学的に許容される担体を含むことができるワクチンとして用いることもできる。
【0026】
ここでは、免疫応答を誘導するために、この増殖し、教育された免疫エフェクター細胞集団を個体に投与することによって、癌を治療する方法も提供される。例えば、治療される癌は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、肺癌、尿路上皮癌、結腸癌、直腸癌、脳癌(例えば、神経膠腫)または血液癌からなる群より選択される。例えば、適する血液癌には、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫および非ホジキンリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
当業者は、そのような治療方法が、複数のハイブリッド細胞の有効量の共投与(co−administration)を含むこともでき、ハイブリッド細胞のそれぞれは、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍細胞または癌細胞との間の融合によって生成され、樹状細胞および腫瘍細胞または癌細胞は同じ種に由来し、ハイブリッド細胞の少なくとも半分は、免疫系を刺激するのに有効な量で、(a)MHCクラスII分子、(b)B7および(c)細胞表面抗原を発現することを認識するであろう。例えば、共投与は、逐次的または同時に行われてもよい。
【0028】
さらに、治療が必要な個体に、集団の投与の前にリンパ球を枯渇させる治療を投与することができる。具体的には、この治療は、個体においてリンパ球減少を誘導する。適する治療の例には、それらに限定されないが、フルダラビンまたは放射線の投与が含まれる。
【0029】
増殖し、教育された免疫エフェクター細胞集団は、幹細胞移植の後に個体に投与することができる。
【0030】
本発明は、抗原性活性についてペプチドを試験する方法も特徴とする。具体的には、そのような方法は、樹状細胞と腫瘍もしくは癌細胞との融合産物を含み、その表面にB7を発現するハイブリッド細胞を提供する工程と;ハイブリッド細胞を免疫エフェクター細胞と接触させ、それによって教育された免疫エフェクター細胞を生成する工程と;教育された免疫エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と;ペプチドの存在下で標的細胞を教育された免疫エフェクター細胞と接触させる工程とを含む。当業者は、標的細胞の溶解が、前記ペプチドを抗原性ペプチドと同定することを認識するであろう。
【0031】
抗原性活性についてペプチドを試験する方法であって、複数の細胞を提供する工程であり、前記複数の細胞の少なくとも5%が、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍もしくは癌細胞との間の融合によって生成される融合細胞であり、融合細胞が、免疫応答を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(ii)B7および(iii)前記細胞表面抗原を発現する工程と;ヒトTリンパ球の集団を前記複数の細胞と接触させる工程であり、Tリンパ球の集団内のエフェクター細胞前駆体細胞の、細胞傷害性Tリンパ球を含むエフェクター細胞への分化を引き起こす工程と;細胞傷害性Tリンパ球を含むエフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と;複数の標的細胞を前記ペプチドの存在下でTリンパ球を含むエフェクター細胞と接触させる工程とを含む方法も提供される。そのような方法では、複数の標的細胞またはその一部の溶解は、前記ペプチドを、細胞傷害性Tリンパ球によって認識される抗原性ペプチドと同定する。
【0032】
最後に、本発明は、本明細書で開示される方法のいずれかによって特定される抗原性ペプチドおよび担体を含むワクチンも提供する。
【0033】
特に定義されていない場合は、本明細書で用いるすべての技術用語および学術用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書のすべての引用文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図、詳細な説明および請求項から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】単球由来の樹状細胞(DC)、腎細胞癌(「RCC」)細胞系、RCC 786および融合細胞の免疫組織化学的分析の結果を示す図である。DCは、正常な供与体から得られたロイコパック(leukopak)コレクションから単離された、接着性単核細胞から生成された。DCをGM−CSFおよびIL−4と5日間培養し、次に、TNFαへの48〜72時間の曝露によって成熟させた。DC調製物は、同時刺激分子の発現について、免疫組織化学的分析にかけた。CD86(青色)のDC発現を、図1Aに示す(60×)。RCC 786細胞をRPMI 1640完全培地で培養し、腫瘍関連抗原サイトケラチンおよびCAMの発現について、免疫組織化学的分析にかけた。CAM(赤色)の腫瘍発現を、図1Bに示す(60×)。PEGの存在下でのDCおよびRCC 786細胞の共培養によって、融合細胞を生成した。DC由来の同時刺激分子CD86(青色)および腫瘍関連抗原CAM(赤色)の同時発現について、融合細胞調製物を免疫組織化学的分析にかけた(図1C)。
【図2】T細胞増殖に及ぼす、融合細胞、抗CD3/CD28による刺激、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の影響を示す図である。T細胞を、1)1:10の融合対T細胞の比率で、融合細胞と7日間共培養した;2)抗CD3/CD28でコーティングしたプレート上で48時間培養した;3)融合細胞と5日間、その後抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した;または4)抗CD3/CD28と48時間培養し、その後、融合細胞で5日間刺激した。刺激の後、終夜パルス後のトリチウムチミジンの取込みによって、T細胞増殖を測定した。図2Aは、刺激指数(未刺激のT細胞の共培養/増殖の後のT細胞増殖)で表した結果を示す。9回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。融合細胞、抗CD3/CD28、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞を、ナイーブな(CD45RA)および記憶(CD45RO)T細胞集団の存在について評価するために、表現型分析にかけた。刺激されたT細胞をFITC結合CD4およびPE結合CD45RAもしくはCD45ROとインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。4回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と図2Bに示す。
【図3】融合細胞、抗CD3/CD28、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞の表現型分析の結果を示す図である。融合細胞、抗CD3/CD28、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞を、CD4およびCD25の同時発現について評価するために、多チャネルフローサイトメトリーによる表現型分析にかけた。図3Aは、二重発現細胞のパーセントを判定するために、FITC結合CD4およびサイクローム(cychrome)結合CD25で染色した刺激されたT細胞集団の結果を示す。11回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激が、調節T細胞(CD4+CD25+FOXP3+)と比較して活性化された(CD4+CD25+CD69+)の増殖をもたらすかを調べた。刺激されたT細胞調製物を、FITC結合CD4、サイクローム結合CD25およびPE結合CD69について染色した。あるいは、細胞をCD4/CD25について染色し、透過性にし、PE結合Foxp3またはマッチさせたアイソタイプ対照抗体とインキュベートした。CD4/CD25+T細胞をFACSゲーティングによって単離し、CD69およびFoxp3の発現を測定した。図3Bに示すように、結果を、全T細胞集団に対する活性化T細胞または調節T細胞のパーセントとして提示する。9回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。
【図4A】単球由来の樹状細胞(DC)の表現型分析の結果を示す図である。DCは、乳癌患者の末梢血から単離された接着性単核細胞から生成し、ロイコパックは正常な供与体から得た。細胞をGM−CSF(1000IU/ml)およびIL−4(1000IU/ml)と5〜7日間培養し(未熟DC)、サブセットをTNFα(25ηg/ml)で48〜72時間成熟させた。同時刺激および成熟マーカーの発現を調べるために、未熟および成熟DCをFACS分析にかけた。図4Aは、代表的な未熟および成熟DC調製物のFACs分析を示す。図4Bは、15回の実験からの、指示された表面マーカーを発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。成熟は、同時刺激(CD80およびCD86)および成熟(CD83)マーカーの発現の増加をもたらす。
【図4B】単球由来の樹状細胞(DC)の表現型分析の結果を示す図である。DCは、乳癌患者の末梢血から単離された接着性単核細胞から生成し、ロイコパックは正常な供与体から得た。細胞をGM−CSF(1000IU/ml)およびIL−4(1000IU/ml)と5〜7日間培養し(未熟DC)、サブセットをTNFα(25ηg/ml)で48〜72時間成熟させた。同時刺激および成熟マーカーの発現を調べるために、未熟および成熟DCをFACS分析にかけた。図4Aは、代表的な未熟および成熟DC調製物のFACs分析を示す。図4Bは、15回の実験からの、指示された表面マーカーを発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。成熟は、同時刺激(CD80およびCD86)および成熟(CD83)マーカーの発現の増加をもたらす。
【図5A】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5B】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5C】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5D】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5E】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図5F】DC/乳癌融合細胞の表現型分析の結果を示す図である。腫瘍細胞を、PEGの存在下での共培養によって未熟もしくは成熟DCと融合させた。図5Aは、融合細胞をサイトケラチン(CT)およびCD11c(左パネル)を同時発現する細胞の周辺をゲーティングすることによって単離した、代表的な実験の結果を示す。融合細胞によるCD86およびCD83の発現を測定した(右パネル)。図5Bは、DR、CD86およびCD83を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合の平均パーセント(±SEM)を示す。DC−腫瘍融合調製物の免疫組織化学的分析を、サイトスピン(cytospin)調製に続いて実施した。未熟なDC/乳癌融合を、アイソタイプをマッチさせたIgG対照(図5C);MUC1/HLA−DR(図5D);CT/CD86(図5E);およびCT/CD83(図5F)について染色した。
【図6A】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図6B】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図6C】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図6D】未熟もしくは成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞における、IL−10、IL−12およびCCR7の発現を示す図である。未熟もしくは成熟DCで生成した融合細胞調製物をCTおよびCD11cで染色し、その後、固定し、透過性にし、細胞内のIL−10およびIL−12について染色した。未固定の融合細胞を、CCR7の表面発現のために用いた。融合細胞をFACSゲーティングによって単離し、IL−10、IL−12およびCCR7の発現について分析した。IL−10(図6A)、IL−12(図6B)およびCCR7(図6C)を発現する未熟のおよび成熟したDC/乳癌細胞の平均のパーセント(±SEM)を、12回の実験について示す。図6Dは、未熟もしくは成熟DCで調製したDC/乳癌細胞による、T細胞増殖の誘導を示す。融合細胞をT細胞と共培養し、増殖を、3[H]=チミジン取込みによって測定した。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。
【図7A】DC/乳癌融合による自己由来T細胞の刺激の後の、培養上清のサイトカイン発現を示す図である。自己由来の非接着性細胞と共培養した未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合細胞の培養上清のTh1、Th2および炎症性サイトカインのプロフィールを、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析キットを用いて定量化した。図7Aにおいて、上のパネルは、BD CellQuestソフトウェアによるデータ収集と、それに続くデータフォーマットおよびその後のBD CBAソフトウェアを用いての分析との後の、Th1/Th2および炎症性サイトカインの蛍光ビーズアレイドット−プロットアッセイディスプレイを表す、単一の実験からの代表的な実施例を示す。図7Bでは、培養上清中のIL−2、IL−4、IL−10、IL−12、TNFαおよびIFNγサイトカイン(pg/ml)の平均(±SEM)濃度は、一連の4回(対照としてDC+自己由来非接着性細胞共培養)、および11回(自己由来非接着性細胞と共培養した未熟および成熟DC/乳癌融合細胞)の別々の実験から提供される(IM−DC融合:未熟な樹状細胞融合;M−DC融合:成熟した樹状細胞融合)。
【図7B】DC/乳癌融合による自己由来T細胞の刺激の後の、培養上清のサイトカイン発現を示す図である。自己由来の非接着性細胞と共培養した未熟のおよび成熟したDC/乳癌融合細胞の培養上清のTh1、Th2および炎症性サイトカインのプロフィールを、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)分析キットを用いて定量化した。図7Aにおいて、上のパネルは、BD CellQuestソフトウェアによるデータ収集と、それに続くデータフォーマットおよびその後のBD CBAソフトウェアを用いての分析との後の、Th1/Th2および炎症性サイトカインの蛍光ビーズアレイドット−プロットアッセイディスプレイを表す、単一の実験からの代表的な実施例を示す。図7Bでは、培養上清中のIL−2、IL−4、IL−10、IL−12、TNFαおよびIFNγサイトカイン(pg/ml)の平均(±SEM)濃度は、一連の4回(対照としてDC+自己由来非接着性細胞共培養)、および11回(自己由来非接着性細胞と共培養した未熟および成熟DC/乳癌融合細胞)の別々の実験から提供される(IM−DC融合:未熟な樹状細胞融合;M−DC融合:成熟した樹状細胞融合)。
【図8】未熟および成熟DC/乳癌融合は、腫瘍標的の溶解およびMUC−1特異的T細胞の増殖を刺激することを示す図である。図8Aでは、未熟および成熟DC/乳癌融合細胞を、30:1の比率で自己由来T細胞と7〜10日間共培養した。T細胞を、51Cr標識自己由来乳房腫瘍細胞、または半自己由来のDC/乳癌融合細胞とインキュベートした。標識細胞の溶解は、クロム放出アッセイで測定した。未熟もしくは成熟DC/乳癌融合細胞による刺激の後の、平均細胞毒性のパーセント(±SEM)を提供する。図8Bは、成熟DC/乳癌融合による刺激が、MUC1四量体に結合するT細胞の増殖をもたらすことを示す。HLA*0201供与体から生成されたDCを乳癌細胞と融合させ、自己由来のT細胞と5日間培養した。融合細胞による刺激の前後におけるMUC1四量体に結合するCD8+T細胞のパーセントを二次元FACS分析で測定し、対照四量体で見られるものと比較した。
【図9A】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図9B】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図9C】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図9D】DC/乳癌融合による刺激は、活性化T細胞および調節T細胞の増殖をもたらすことを示す図である。図9Aでは、自己由来の非接着性T細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間刺激した。CD4+T細胞を、磁気ミクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて選択し、PE結合CD4およびFITC結合CD25抗体で標識した。CD4+CD25+細胞を、非刺激T細胞および融合刺激T細胞について、二次元FACS分析によって定量化した。データを、代表的なドットプロット実験から提供する。図9Bは、CD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。自己由来(図9C)または同種異系(図9D)のT細胞を、DC/乳癌融合細胞と5日間培養し、磁性ビーズ分離によってCD4+T細胞を単離した。CD25/CD69、CD25/CITRおよびCD25/CTLA−4を同時発現する細胞の平均パーセント(±SEM)を、二次元フローサイトメトリーで測定した。データは、5回の別々の実験を表す(平均±SEM)。
【図10A】DC/乳癌融合細胞による刺激の後の、IFNγ、IL−10およびFoxp3に続くT細胞の増殖を示す図である。自己由来T細胞を、DC/乳癌融合と5〜7日間共培養した。磁気ミクロビーズを用いたCD4+T細胞の選択の後に、細胞をFITC結合CD25で染色し、Cytofix/Cytoperm溶液で透過性にし、PE結合IFNγ、IL−10またはFoxp3抗体で染色した。図10Aは、IFNγ、IL−10またはFoxp3を発現する、未刺激の(上のパネル)および融合によって刺激されたCD4+CD25+ T細胞(下のパネル)の代表的なFACS分析を示す。図10Bは、一連の9〜14回の実験のスタッキングドットプロットグラフを示す。実験の各ドットプロット群を覆う影付きのヒストグラムは、その群の平均を表す。
【図10B】DC/乳癌融合細胞による刺激の後の、IFNγ、IL−10およびFoxp3に続くT細胞の増殖を示す図である。自己由来T細胞を、DC/乳癌融合と5〜7日間共培養した。磁気ミクロビーズを用いたCD4+T細胞の選択の後に、細胞をFITC結合CD25で染色し、Cytofix/Cytoperm溶液で透過性にし、PE結合IFNγ、IL−10またはFoxp3抗体で染色した。図10Aは、IFNγ、IL−10またはFoxp3を発現する、未刺激の(上のパネル)および融合によって刺激されたCD4+CD25+ T細胞(下のパネル)の代表的なFACS分析を示す。図10Bは、一連の9〜14回の実験のスタッキングドットプロットグラフを示す。実験の各ドットプロット群を覆う影付きのヒストグラムは、その群の平均を表す。
【図11A】CPG−ODN、IL12およびIL18の添加が、DC/乳癌融合による調節T細胞の増殖の枯渇をもたらすことを示す図である。DC/乳癌融合細胞を、CpG ODN、IL−12またはIL−18の存在下または非存在下で、自己由来T細胞と5日間共培養した。図11Aは、CD4+細胞の選択の後、CD4+/CD25+のパーセントを各条件について二次元FACS分析で測定したことを示す。図11Bは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。図11Cは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。
【図11B】CPG−ODN、IL12およびIL18の添加が、DC/乳癌融合による調節T細胞の増殖の枯渇をもたらすことを示す図である。DC/乳癌融合細胞を、CpG ODN、IL−12またはIL−18の存在下または非存在下で、自己由来T細胞と5日間共培養した。図11Aは、CD4+細胞の選択の後、CD4+/CD25+のパーセントを各条件について二次元FACS分析で測定したことを示す。図11Bは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。図11Cは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。
【図11C】CPG−ODN、IL12およびIL18の添加が、DC/乳癌融合による調節T細胞の増殖の枯渇をもたらすことを示す図である。DC/乳癌融合細胞を、CpG ODN、IL−12またはIL−18の存在下または非存在下で、自己由来T細胞と5日間共培養した。図11Aは、CD4+細胞の選択の後、CD4+/CD25+のパーセントを各条件について二次元FACS分析で測定したことを示す。図11Bは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。図11Cは、細胞内FACS分析によって決定された各条件について、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセント(±SEM)を示す。
【図12A】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12B】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12C】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12D】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12E】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図12F】DC/乳癌融合細胞およびCD3/CD28連結による複合刺激の結果を示す図である。自己由来のT細胞を、DC/乳癌融合細胞で5日間;抗CD3/CD28でコーティングしたプレートで48時間;抗CD3/CD28と続くDC/乳癌融合;またはDC/乳癌融合と続く抗CD3/CD28で、培養によって刺激した。結果を、未刺激T細胞と比較した。図12Aは、すべての培養条件についての(n=6〜7)平均T細胞増殖を示す。T細胞を1×105/ウェルで96ウェル組織培養プレートにトリプリケートで分注し、18〜24時間の間、1uCi/mlの3[H]−チミジンをパルスで加えた。刺激指数(SI)の計算によって結果を正規化した。PE結合MUC1特異的四量体を用いたCD8+MUC1+T細胞(図12B);CD4+CD25+T細胞(n=6)(図12C);CD4+CD25+CD69+T細胞(n=6)(図12D);IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞(n=5)(図12E);および、Foxp3を発現するCD4+CD25+T細胞(図12F)の平均発現を、記載の各培養条件について提供する。
【図13】T細胞増殖に及ぼす、DC/骨髄腫融合細胞による刺激、または融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の影響を示す図である。多発性骨髄腫(MM)を有する患者に由来するT細胞を、1:10の融合対T細胞の比率で融合細胞と7日間共培養するか、融合細胞と5日間共培養した後、抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した。刺激の後、終夜パルスの後のトリチウムチミジンの取込みによって、T細胞増殖を測定した。
【図14】自己由来の腫瘍標的細胞の溶解に及ぼす、DC/骨髄腫融合細胞によって刺激された、または融合および抗CD3/CD28によって逐次的に刺激された自己由来のT細胞の影響を示す図である。DC、腫瘍およびT細胞は、多発性骨髄腫の患者に由来した。自己由来のT細胞を、抗CD3CD28単独で48時間、抗CD3CD28で48時間の後DC/MM融合刺激で5日間、DC/MM融合細胞単独で7日間、または、DC/MM融合細胞で5日間の後抗CD3CD28への曝露によって48時間刺激した。図14は、標準の51Cr放出アッセイで測定された、自己由来の腫瘍標的の溶解率を示す。
【図15】DC/乳癌融合細胞および抗CD3/CD28による刺激の後の、平均T細胞増殖を示す図である。
【図16】IFNγの細胞内発現を示す図である。刺激されたT細胞調製物を、FITC結合CD4について染色した。次に細胞を洗浄し、透過性にし、PE結合抗ヒトIFNγまたはマッチさせたアイソタイプ対照抗体とインキュベートした。IFNγの細胞内発現を、フローサイトメトリー分析で測定した。8回の実験の平均値を、関連する平均値の標準誤差と提供する。
【図17】MUC1四量体に結合するCD8+細胞のパーセントを示す図である。HLA*0201+自己由来非接着性細胞を、融合細胞、抗CD3CD28、融合と、それに続く抗CD3CD28と、それに続く融合細胞、および抗CD3/CD28と、それに続く融合細胞と共培養した。細胞を収集し、MUC1特異的PE結合四量体または対照四量体を用いて、および適当なCD8+T細胞ゲーティングを用いて、MUC1+CD8+T細胞について分析した。MUC1四量体に結合するCD8+細胞のパーセント(対照四量体への非特異的結合を差し引いた後)を提供する。2回の実験からの平均値を提供する。
【図18】グランザイムBを発現する、陽性のCD8+細胞のパーセントを示す図である。T細胞を、融合細胞、抗CD3/CD28、融合細胞と、それに続く抗CD3/CD28、および抗CD3CD28と、それに続く融合細胞と共培養した。細胞をFITC結合CD8抗体で染色し、固定し、透過性にし、PE結合グランザイムB抗体またはマッチさせたアイソタイプ対照とインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。棒グラフは、グランザイムBを発現する、陽性のCD8+細胞のパーセントの平均増加倍率(±SEM)を示す。
【図19】融合細胞の免疫組織化学染色を示す図である。急性骨髄性白血病患者の骨髄穿刺液または末梢血採集物から、骨髄性白血病細胞を単離した。PEGを用いて、白血病細胞を成熟DCと融合させた。融合細胞は、免疫細胞化学染色(100×)により、腫瘍マーカーCD117(青色)およびDCマーカーCD11C(赤色)の同時発現を示す。
【図20】DC/AML融合、DC/AML融合と、それに続く抗CD3/CD2K、および抗CD3/CD28と、それに続くDC/AML融合で刺激したT細胞についての、T細胞増殖(刺激指数によって測定した)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
様々な刊行物、特許および公開特許明細書が、特定引用文献によって本明細書内で参照される。これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示物は、本発明が関係する最新技術をより完全に記載するために、ここに参照により本開示に組み込まれる。
【0037】
定義
本発明の実施は、特に明記しない限り、当技術分野の範囲内である、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の技術を使用する。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版(1989年);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F. M. Ausubelら編、(1987年));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press, Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(Mi. MacPherson、B.D. HamesおよびG.R. Taylor編(1995年))およびANIMAL CELL CULTURE(Rd. Freshney編(1987年))を参照。
【0038】
本明細書で用いるように、特定の用語は、以下の定義された意味を有する。本明細書および特許請求の範囲で用いるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、複数体を含む。例えば、用語「細胞」は、その混合物を含む複数の細胞を含む。
【0039】
用語「免疫エフェクター細胞」は、例えば新生物または腫瘍細胞の上に存在する抗原を、特異的に認識する細胞を指す。本発明のために、免疫エフェクター細胞には、B細胞;単球;マクロファージ;NK細胞;ならびにT細胞、例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、例えば腫瘍、炎症部位または他の浸潤物からのCTL系、CTLクローンおよびCTLが含まれるが、これらに限定されない。「Tリンパ球」は、表現型的にCD3+であるリンパ球を表し、一般的に、適する標識化技術と組み合わせた抗CD3モノクローナル抗体を用いて検出される。本発明のTリンパ球は、一般的にCD4、CD8またはその両方にも陽性である。用語「ナイーブな」免疫エフェクター細胞は、抗原に遭遇していない免疫エフェクター細胞を指し、抗原刺激を受けていないおよびバージンと同義とされる。「教育された」は、抗原と相互作用した免疫エフェクター細胞を指し、したがってそれらは抗原特異的細胞に分化する。
【0040】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、好ましくはクラスI MHC分子と、1つまたは複数の抗原の提示を誘導することができる無傷の完全な細胞、ならびに他の分子の両方を含む。適するAPCの例は以下に詳細に述べられ、例えば、完全細胞、例えばマクロファージ、樹状細胞、B細胞;β2−マイクログロブリンと複合体を形成した精製MHCクラスI分子;およびフォスター抗原提示細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
樹状細胞(DC)は、強力なAPCである。DCは、様々な免疫器官、例えば脾臓、胸腺、リンパ節、表皮および末梢血のマイナーな構成要素である。例えば、DCは、粗脾臓(Steinmanら(1979年)J. Exp. Med149巻:1頁を参照)または表皮細胞懸濁液(Schulerら(1985年)J. Exp. Med161巻:526頁;RomaniらJ. Invest. Dermatol(1989年)93巻:600頁を参照)の約1%、および末梢血中の単核細胞の0.1〜1%だけに該当する(FreudenthalらProc. Natl Acad Sci USA(1990年)87巻:7698頁を参照)。末梢血または骨髄前駆体からDCを単離する方法は、当技術分野で公知である。(Inabaら(1992年)J. Exp. Med175巻:1157頁;Inabaら(1992年)J. Exp. Med176巻:1693〜1702頁;Romaniら(1994年)J. Exp. Med.180巻:83〜93頁;Sallustoら(1994年)J. Exp. Med179巻:1109〜1118頁)を参照)。DCの単離および培養のための好ましい方法は、Benderら(1996年)J.Immun. Meth.196巻:121〜135頁およびRomaniら(1996年)J. Immun. Meth196巻:137〜151頁に記載されている。
【0042】
樹状細胞(DC)は、主に一次免疫の開始および免疫応答の調節を担う、抗原提示細胞の複雑なネットワークである。(Avigan、Blood Rev.13巻:51〜64頁(1999年);Banchereauら、Nature392巻:245〜52頁(1998年)を参照)。部分的に成熟したDCは抗原捕捉部位に位置し、外来性抗原の内在化およびプロセシングに優れているが、T細胞応答の刺激因子としては劣る。未熟なDCによる抗原提示は、T細胞耐性を誘導することがある。(Dhodapkarら、J Exp Med.193巻:233〜38頁(2001年)を参照)。活性化後、DCは、同時刺激分子および、流入領域リンパ節におけるT細胞輸送部位への移動を促進するケモカイン受容体CCR7の発現の増加によって特徴づけられる成熟を経る。腫瘍もしくは癌細胞は、IL−10、TGF−βおよびVEGFの分泌を通して、DCの発達を阻害し、抗腫瘍応答を潜在的に抑制する腫瘍層での未熟なDCの蓄積をもたらす。(Allavenaら、Eur. J. Immunol.28巻:359〜69頁(1998年);Gabrilovichら、Clin Cancer Res.3巻:483〜90頁(1997年);Gabrilovichら、Blood92巻:4150〜66頁(1998年);Gabrilovich、Nat Rev Immunol4巻:941〜52頁(2004年)を参照)。逆に言えば、活性化DCは、エキソビボでDC前駆体のサイトカイン媒介性の分化によって生成することができる。DCの成熟および機能は、Toll様受容体9アゴニストCPG ODNへの曝露によって、さらに高めることができる。さらに、抗腫瘍免疫を強力に刺激する腫瘍抗原を提示するように、DCを操作することができる。(Asavaroenhchaiら、Proc Natl Acad Sci USA99巻:931〜36頁(2002年);Ashleyら、J Exp Med186巻:1177〜82頁(1997年)を参照)。
【0043】
「フォスター抗原提示細胞」は、それらが反応する免疫エフェクター細胞に通常接触する抗原提示細胞(「APC」)の代わりに利用される、抗原提示能力を有する任意の改変細胞または天然の細胞(野生型または突然変異体)を指す。言い換えると、それらは、T細胞がインビボで通常遭遇しないであろう任意の機能的APCである。
【0044】
DCは、T細胞の活性化および増殖のために必要とされるすべてのシグナルを提供することが示された。これらのシグナルを、2つの型に分類することができる。免疫応答に特異性を与える第一のタイプは、APC表面でのT細胞受容体/CD3(「TCR/CD3」)複合体と、主要組織適合性複合体(「MHC」)クラスIまたはIIタンパク質によって提示される抗原性ペプチドとの間の相互作用を通して媒介される。この相互作用は、T細胞の活性化が起こるために必要であるが、十分でない。実際、第二のタイプのシグナルがないと、第一のタイプのシグナルは、T細胞アネルギーをもたらすことができる。同時刺激シグナルと呼ばれる第二のタイプのシグナルは、抗原特異的でもMHC限定でもなく、第一のタイプのシグナルの存在下で、T細胞の完全な増殖応答およびT細胞エフェクター機能の誘導をもたらすことができる。
【0045】
したがって、用語「サイトカイン」は、細胞に対して様々な効果を発揮する、例えば成長または増殖を誘導する、多数の因子のいずれかを指す。サイトカインのそれには限定されない例には、IL−2、幹細胞因子(SCF)、IL−3、IL−6、IL−7、IL−12、IL−15、G−CSF、GM−CSF、IL−1α、IL−1β、MIP−1α、LIF、c−kitリガンド、TPOおよびflt3リガンドが含まれる。サイトカインは、いくつかの供給業者、例えばGenzyme Corp.(Framingham、Mass.)、Genentech(South San Francisco、CA)、Amgen(Thousand Oaks、CA)およびImmunex(Seattle、WA)から市販されている。常に明示されているわけではないが、野生型のサイトカインまたは精製されたサイトカイン(例えば、組換えで生成されたサイトカイン)と類似した生物活性を有する分子は、本発明の精神および範囲の中で用いられるものとし、したがって、野生型のまたは精製されたサイトカインの代用品であるものとする。
【0046】
「同時刺激分子」は、抗原提示細胞およびT細胞の表面で発現される受容体−リガンド対の間の相互作用に関与する。1つの例示的な受容体−リガンド対は、DC表面のB7同時刺激分子およびT細胞上のその反受容体CD28またはCTLA−4である。(Freemanら(1993年)Science262巻:909〜911頁;Youngら(1992年)J. Clin. Invest90巻:229頁;NabaviらNature360巻:266頁を参照)。他の重要な同時刺激分子には、例えば、CD40、CD54、CD80およびCD86が含まれる。これらは、上で特定した供給業者から市販されている。
【0047】
「ハイブリッド」細胞は、両方の抗原提示能力を有し、さらに1つまたは複数の特異的抗原を発現する細胞を指す。一実施形態では、これらのハイブリッド細胞は、APCを、関心の1つまたは複数の抗原を発現することが公知である細胞とインビトロで融合することによって形成される。本明細書で用いるように、用語「ハイブリッド」細胞および「融合」細胞は、互換的に用いられる。
【0048】
「対照」細胞は、抗原発現細胞の集団と同じ抗原を発現しない細胞を指す。
【0049】
用語「培養する」は、様々な種類の培地の上または中での細胞または生物体のインビトロ増殖を指す。培養で増殖させた細胞の30代子孫は、親細胞と完全に同一ではない(すなわち、形態学的、遺伝的または表現型的に)ものと理解される。「増殖した」は、細胞の任意の増殖または分裂を意味する。
【0050】
「有効量」は、有益または所望の結果を達成するのに十分な量である。有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬で投与することができる。本発明の目的のために、ハイブリッド細胞の有効量は、抗原特異的な免疫エフェクター細胞、例えばT細胞の増殖を促進する量である。
【0051】
「単離された」細胞集団は、それが本来関連している細胞および物質を「実質的に含まない」。「実質的に含まない」または「実質的に純粋な」は、集団の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%が所望の細胞タイプであることを意味する。「濃縮」細胞集団は、少なくとも5%が融合細胞である。好ましくは、濃縮集団は少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%の融合細胞を含む。
【0052】
本明細書で用いる用語「自己由来」または「自原性」は、細胞の起源を示す。したがって、個体(「レシピエント」)に投与される細胞は、その細胞がその個体(「ドナー」)または遺伝的に同一の個体(すなわち、その個体の一卵性双子)に由来するならば自原性である。自原性細胞は、自原性細胞の後代であってもよい。この用語は、異なる細胞型の細胞が、同じ供与体または遺伝的に同一の供与体に由来することも示す。したがって、エフェクター細胞および抗原提示細胞は、それらが同じ供与体もしくは供与体に遺伝的に同じ個体に由来する場合、またはそれらが同じ供与体もしくは供与体に遺伝的に同じ個体に由来する細胞の後代である場合、自原性であると言われる。
【0053】
同様に、本明細書で用いる用語「同種異系」は、細胞の起源を示す。したがって、個体(「レシピエント」)に投与される細胞は、その細胞がレシピエントと遺伝的に同一でない個体に由来する場合、同種異系である。詳細には、この用語は発現されるMHC分子の非同一性に関する。同種異系細胞は、同種異系細胞の後代であってもよい。この用語は、異なる細胞型の細胞が遺伝的に同一でない供与体に由来すること、または、それらが遺伝的に同一でない供与体に由来する細胞の後代である場合も示す。例えば、APCは、それらが遺伝的に同一でない供与体に由来する場合、エフェクター細胞に同種異系であると言われる。
【0054】
「対象」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、マウス、サル、ヒト、畜産動物、スポーツ動物およびペットが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で用いるように、「遺伝子改変」は、細胞の内因性ヌクレオチドに対する任意の付加、欠失または破壊を指す。
【0056】
「ウイルスベクター」は、インビボ、エキソビボまたはインビトロで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む、組換えで生成されたウイルスまたはウイルス粒子と定義される。ウイルスベクターの例には、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどが含まれる。遺伝子導入がレトロウイルスベクターによって媒介される態様では、ベクター構築物は、レトロウイルスゲノムまたはその一部および治療的な遺伝子を含むポリヌクレオチドを指す。
【0057】
本明細書で用いるように、用語「レトロウイルス媒介遺伝子導入」または「レトロウイルス形質導入」は同じ意味を含み、遺伝子または核酸配列が、細胞に入って宿主細胞ゲノムにそのゲノムを組み込むウイルスによって、宿主細胞に安定して導入される過程を指す。ウイルスは、その感染の正常な機構を通して宿主細胞に入ることができるように、またはそれが異なる宿主細胞表面受容体またはリガンドに結合して、細胞に入るように改変することができる。
【0058】
レトロウイルスは、それらの遺伝情報をRNAの形で運ぶ。しかし、ウイルスが細胞に感染すると、RNAは、感染細胞のゲノムDNAに組み込まれるDNAの形態に逆転写される。組み込まれたDNAの形態は、プロウイルスと呼ばれる。
【0059】
遺伝子導入がアデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)などのDNAウイルスベクターによって媒介される態様では、ベクター構築物は、ウイルスゲノムまたはその一部および治療的な遺伝子を含むポリヌクレオチドを指す。アデノウイルス(Ad)は、比較的よく特徴づけられた均質の群のウイルスであり、50以上の血清型を含む。(例えば、WO95/27071を参照)。Adは増殖させるのが簡単で、宿主細胞ゲノムに組み込まれない。組換え体Ad由来のベクター、特に野生型ウイルスの組換えおよび生成の可能性を減少させたものも構築した。(WO95/00655;WO95/11984を参照)。野生型AAVは、高い感染性および特異性を有し、宿主細胞ゲノムに組み込まれる。(Hermonat and Muzyczka(1984年)PNAS USA81巻:6466〜6470頁;Lebkowskiら、(1988年)Mol Cell Biol8巻:3988〜3996頁を参照)。
【0060】
プロモーターおよびポリヌクレオチドを作動可能に連結することができるクローニング部位の両方を含むベクターは、当技術分野で周知である。そのようなベクターはRNAをインビトロまたはインビボで転写することができ、Stratagene(La Jolla、CA)およびPromega Biotech(Madison、Wl)などの販売元から市販されている。発現および/またはインビトロ転写を最適化するために、余分の、潜在的な不適当な代替翻訳開始コドンを除去するために、または、転写または翻訳のレベルで発現を妨害または低減することができる他の配列を除去するために、クローンの5’および/または3’非翻訳部分を除去するか、加えるか、変化させることが必要であろう。あるいは、発現を強化するために、コンセンサスリボソーム結合部位を開始コドンの5’に直に挿入することができる。適するベクターの例は、様々な真核および原核生物の宿主での発現について記載され、遺伝子治療ならびに単なるタンパク質発現のために用いることができる、当技術分野で一般的に用いられるバキュロウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、真菌類のベクター、および他の組換え媒体である。
【0061】
これらには、DNA/リポソーム複合体および標的ウイルスタンパク質DNA複合体を含む、いくつかの非ウイルスベクターが含まれる。細胞への送達を高めるために、本発明の核酸またはタンパク質を、細胞表面抗原、例えばTCR、CD3またはCD4に結合する抗体またはその結合性断片にコンジュゲートさせることができる。また、ターゲティング抗体またはその断片も含むリポソームを、本発明の方法で用いることができる。本発明は、本明細書で開示される方法で使用するための、ターゲティング複合体も提供する。
【0062】
当技術分野で周知の方法を用いて、ポリヌクレオチドをベクターゲノムに挿入する。例えば、適する条件下で、挿入断片およびベクターDNAを制限酵素と接触させて、互いと対になること、およびリガーゼで結合することができる相補的末端を各分子の上に形成することができる。あるいは、切断されたポリヌクレオチドの末端に、合成核酸リンカーを連結することができる。これらの合成リンカーは、ベクターDNAの特定の制限部位に対応する核酸配列を含む。さらに、終結コドンおよび適当な制限部位を含むオリゴヌクレオチドを、例えば以下のいくつかまたは全部を含むベクターへの挿入のために連結することができる:選択可能なマーカー遺伝子、例えば哺乳動物細胞での安定したまたは一時的なトランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子;高レベル転写のためのヒトCMVの極初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40からの転写終結およびRNAプロセシングシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマ複製開始点およびColEI;多用途の複数のクローニング部位;ならびに、センスおよびアンチセンスRNAのインビトロ転写のためのT7およびSP6 RNAプロモーター。他の手段が当技術分野で周知であり、利用可能である。
【0063】
本明細書で用いるように、「発現」は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写され、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳される過程を指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、適当な真核生物の宿主が選択されるならば、発現はmRNAのスプライシングを含むことができる。発現のために必要とされる調節要素には、RNAポリメラーゼに結合するためのプロモーター配列、およびリボソーム結合のための転写開始配列が含まれる。例えば、細菌発現ベクターは、ラックプロモーターなどのプロモーターを、ならびに、転写開始のために、シャイン−ダルガノ配列および開始コドンAUGを含む(Sambrookら(1989年)、上記)。同様に、真核生物の発現ベクターは、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種のプロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボソームの分離のための終結コドンを含む。そのようなベクターは、市場から得ること、または、当技術分野で周知の方法、例えばベクター一般を構築するために上に記載した方法に記載の配列によって組み立てることができる。
【0064】
用語「主要組織適合複合体」または「MHC」は、T細胞などの免疫エフェクター細胞への抗原提示のために、および急激な移植片拒絶のために必要とされる細胞表面分子をコードする遺伝子の複合体を指す。ヒトでは、MHC複合体は、HLA複合体としても公知である。MHC複合体によってコードされるタンパク質は、「MHC分子」として公知であり、クラスIおよびクラスIIのMHC分子に分類される。クラスI MHC分子は、β2−マイクログロブリンと非共有結合しているMHCでコードされるα鎖で構成される膜ヘテロダイマータンパク質を含む。クラスI MHC分子は、ほとんどすべての有核細胞によって発現され、CD8+T細胞への抗原提示で機能することが示された。ヒトでは、クラスI分子には、HLA−A、−Bおよび−Cが含まれる。MHCクラスII分子も、非共有結合しているJ3鎖からなる膜ヘテロダイマータンパク質を含む。クラスII MHCはCD4+ T細胞で機能することが公知であり、ヒトでは、HLA−DP、−DQおよびDRが含まれる。用語「MHC限定」は、それがプロセシングされた後にT細胞に抗原だけを認識させるT細胞の特徴を指し、生じた抗原性ペプチドは、クラスIまたはクラスIIのMHC分子に結合して提示される。MHCを特定して比較する方法は当技術分野で周知であり、Allen M.ら(1994年)Human Imm.40巻:25〜32頁;Santamaria P.ら(1993年)Human Imm.37巻:39〜50頁;およびHurley C.K.ら(1997年)Tissue Antigens50巻:401〜415頁に記載されている。
【0065】
用語「配列モチーフ」は、15の分子(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)の群に存在するパターンを指す。例えば、一実施形態では、本発明は、抗原に存在するペプチドの間で、配列モチーフの同定を可能にする。この実施形態では、一般的なパターンは、疎水性、親水性、塩基性、酸性などの特徴のあるアミノ酸残基によって同定することができる。
【0066】
用語「ペプチド」は、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド様物質の化合物を指すものとして、その最も広い意味で用いられる。サブユニットは、ペプチド結合によって連結することができる。別の実施形態では、サブユニットは、例えばエステル、エーテルなど、他の結合によって連結することができる。
【0067】
本明細書で用いるように、用語「アミノ酸」は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方を含む天然および/または25の非天然のもしくは合成されたアミノ酸、およびアミノ酸類似体およびペプチド様物質を指す。3つ以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短い場合、通常オリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長い場合、ペプチドは通常ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
【0068】
本明細書で用いるように、「固相支持体」は「担体」の例として用いられ、特定のタイプの支持体に限定されない。むしろ、多数の支持体が利用可能であり、当業者に公知である。固相支持体には、シリカゲル、樹脂、誘導体化されたプラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲルが含まれる。適する固相支持体は、所望の最終使用および様々な合成プロトコルとの適合性に基づいて選択することができる。例えば、ペプチド合成のために、固相支持体は、ポリスチレン(例えば、Bachem Inc.、Peninsula Laboratoriesから得られるPAM樹脂など)、POLYHIPE(登録商標)樹脂(Aminotech、Canadaから得られる)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから得られる)、ポリエチレングリコールを接いだポリスチレン樹脂(TentaGel(登録商標)、Rapp Polymere、Tubingen、Germany)またはポリジメチルアクリルアミド樹脂(MilligenlBiosearch、Californiaから得られる)などの樹脂を指すことができる。ペプチド合成のための好ましい実施形態では、固相支持体は、ポリジメチルアクリルアミド樹脂を指す。
【0069】
用語「異常に発現される」は、同じ組織型であるかないかに関係なく異なる細胞または組織と比較して、すなわち、肺組織対肺癌組織で差別的に発現される(過剰発現または過小発現される)細胞または組織中のポリヌクレオチド配列を指す。
【0070】
「宿主細胞」または「レシピエント細胞」には、ベクター、または外来性の核酸分子、ポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質の組込みのためのレシピエントであることができるか、レシピエントであった、任意の個々の細胞または細胞培養物が含まれるものとする。それには単一の細胞の後代も含まれるものとし、後代は、自然、偶然または故意の突然変異のために、元の親細胞と完全に同一(形態上、またはゲノムもしくは総DNA補体において)でなくてもよい。細胞は原核生物または真核生物であってよく、例には、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞および哺乳動物細胞、例えばマウス、ラット、サルまたはヒトが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
「抗体」は、抗原に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で用いるように、この用語は無傷の免疫グロブリン分子だけでなく、必要とされる特異性の抗原認識部位を含む、免疫グロブリン分子の抗イディオタイプ抗体、突然変異体、断片、融合タンパク質、ヒト化タンパク質および改変形態を包含する。
【0072】
「抗体複合体」は、抗体およびその結合パートナーまたはリガンドの組合せである。
【0073】
「自然抗原」は、対象で免疫応答を誘導するエピトープを含むポリペプチド、タンパク質または断片である。
【0074】
用語「単離された」は、通常、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片が本来結合する、細胞およびその他の構成要素から分離されたことを意味する。当業者に明らかであるように、非天然のポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、その天然の対応物からそれを区別するために「単離」を必要としない。さらに、「濃縮された」、「分離された」または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、容量あたりの分子の濃度または数が、その天然の対応物のそれよりも「濃縮された」もので大きく、または「分離された」もので小さい点で、その天然の対応物から識別可能である。その一次配列、または、例えばそのグリコシル化パターンがその天然の対応物から異なるポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片は、それが、その一次配列、あるいは、グリコシル化パターンなどの別の特徴によってその天然の対応物から識別可能であるので、その単離された形態で存在する必要がない。本明細書で開示される本発明の各々のために明示されていないが、下でおよび適当な条件下で開示される各組成物の上記の実施形態のすべてが、本発明によって提供されることを理解すべきである。したがって、非天然のポリヌクレオチドは、単離された天然のポリヌクレオチドとは別の実施形態として提供される。細菌細胞で生成されるタンパク質は、それが本来生成される真核細胞から単離された天然のタンパク質とは別の実施形態として提供される。
【0075】
「組成物」は、活性剤および、アジュバントなどの不活性(例えば、検出可能な剤、担体、固体支持体または標識)または活性な別の化合物または組成物の組合せを意味するものとする。
【0076】
「医薬組成物」は、活性剤と、組成物をインビトロ、インビボまたはエキソビボでの診断上または治療上の使用に適するようにする、不活性または活性な担体との組合せを含むものとする。
【0077】
本明細書で用いるように、用語「薬学的に許容される担体」は、リン酸緩衝食塩水溶液、水および乳剤、例えば油/水または水/油乳剤、ならびに様々なタイプの湿潤剤などの標準の薬用担体のいずれも包含する。組成物は、安定剤および防腐剤を含むこともできる。担体、安定剤およびアジュバントの例については、Martin、REMINGTON’S PHARM. SCI、第15版(Mack Publ. Co.、Easton(1975年))を参照。
【0078】
本明細書で用いるように、用語「対象で免疫応答を誘導する」ことは当技術分野でよく理解されている用語であり、対象への抗原(またはエピトープ)の導入の前の免疫応答(ある場合)と比較して、抗原(またはエピトープ)を対象に導入した後に、抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約100倍、より好ましくは少なくとも約500倍、より好ましくは少なくとも約1000倍以上の増加を検出(測定)することができることを意味する。抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答には、抗原特異的(またはエピトープ特異的)抗体の生成、および、抗原(またはエピトープ)に特異的に結合する分子をその表面に発現する免疫細胞の生成が含まれるが、これらに限定されない。所与の抗原(またはエピトープ)に対する免疫応答が誘導されているかどうかを判断する方法は、当技術分野で周知である。例えば、抗原特異的抗体は、それに限定されないが、例えば試料中の抗体の固定化抗原(またはエピトープ)への結合が、検出可能に標識された第二の抗体(例えば、酵素標識マウス抗ヒトIg抗体)によって検出されるELISAを含む、当技術分野で公知である様々なイムノアッセイ法のいずれかを用いて検出することができる。抗原に特異的な免疫エフェクター細胞は、それらに限定されないが、FACS、またはCTLの場合には51CR放出アッセイ、または3H−チミジン取込みアッセイを含む、当業者に公知である様々なアッセイのいずれかで検出することができる。
【0079】
融合
DCは、当技術分野で公知であるプロトコルを用いて、哺乳動物の骨髄培養、末梢血、脾臓または他の任意の適当な組織から得ることができる。骨髄はDC前駆体を含み、それは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)およびインターロイキン4(「IL−4」)などのサイトカインによる処理の後に増殖して、DCに分化する。腫瘍壊死細胞因子(TNF)は、DCの成熟を促進するために、任意選択で、単独で用いられるか、またはGM−CSFおよび/またはIL−4と併用される。骨髄から得られるDCは、(例えば脾臓DCと比較して)比較的未熟である。GM−CSF/IL−4によって刺激されたDCは、MHCクラスIおよびクラスIIの分子、B7−1、B7−2、ICAM、CD40および様々なレベルのCD83を発現する。これらの未熟なDCは、脾臓で見られるより成熟したDCよりも融合(または抗原取込み)に適合するが、より成熟したDCは比較的より有効な抗原提示細胞である。末梢血も比較的未熟なDCまたはDC前駆体を含み、それらは、GM−CSFなどの適当なサイトカインの存在下で増殖および分化することができ、融合で用いることもできる。
【0080】
本発明で用いられる非樹状細胞は、任意の組織または癌(例えば、それに限定されないが、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、神経癌、尿生殖器癌、血液癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃腸癌および脳腫瘍(すなわち、神経膠腫))から周知の方法によって誘導することができ、不死化させることができる。関心の細胞表面抗原を発現する非樹状細胞は、抗原を含むポリペプチドをコードする核酸分子で所望のタイプの非樹状細胞をトランスフェクトすることによって生成することができる。例示的な細胞表面抗原は、MUC1、α−フェトプロテイン、γ−フェトプロテイン、癌胎児性抗原、胎児スルホグルコプロテイン抗原、α2H−鉄タンパク、胎盤アルカリホスファターゼおよび白血病関連膜抗原である。トランスフェクションおよび抗原の同定のための方法は、当技術分野で周知である。
【0081】
所与の試薬の存在下で非樹状細胞が死に至るか、少なくとも増殖することができない場合、および、この感受性をDCとの融合によって克服することができる場合、任意選択で、大部分の未融合細胞を除去するのに十分な時間、融合細胞ならびに親の細胞を含む融合後細胞混合物を、この試薬を含む培地でインキュベートしてもよい。例えば、いくつかの腫瘍細胞系は、機能的ヒポキサンチングアニンフォスフォリボシル転移酵素(「HGPRT」)の欠如のために、HATに感受性である。DCは機能的HGPRTを付与するので、DCおよびこれらの腫瘍細胞系によって形成される融合細胞は、HAT耐性になる。したがって、未融合の親の細胞を除去するために、融合の後にHAT選抜を実施することができる。長期培養は融合細胞上のMHCクラスIIタンパク質および/またはB7同時刺激分子の喪失をもたらすので、標準のHAT選抜技術に反し、このHAT選抜は一般に12日を超えて持続するべきでない。融合産物は、融合工程の直後に(例えば、抗原発見スクリーニング法で、または治療法で)、または短い培養期間の後に用いられる。
【0082】
任意選択で、融合細胞は、臨床使用の前に照射される。照射はサイトカインの発現を誘導し、それは、免疫エフェクター細胞活性を促進する。
【0083】
融合細胞がAPC特異的T細胞刺激分子の発現などのあるDC特性を失う場合、DC表現型を回復するために一次融合細胞を樹状細胞と再融合させることができる。再融合された細胞(すなわち、二次融合細胞)は、非常に強力なAPCであることが分かる。融合細胞は、樹状または非樹状の親の細胞と所望の回数、再融合させることができる。
【0084】
MHCクラスII分子、B7または他の所望のT細胞刺激分子を発現する融合細胞は、これらの分子に対する抗体によるパニングまたはFACS(fluorescence−activated cell sorting)によって選択することもできる。
【0085】
細胞内の病原体に感染した細胞を、その病原体に起因する疾患の治療のための融合の非樹状パートナーとして用いることもできる。病原体の例には、ウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス;A、BまたはC型肝炎ウイルス;乳頭腫ウイルス;ヘルペスウイルス;または麻疹ウイルス)、細菌(例えば、Corynebacterium diphtheria、Bordetella pertussis)および細胞内真核生物寄生虫(例えば、Plasmodiuin種、Schistosoina種、Leishmania種、Trypanosoma種またはMycobacterium lepre)が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
あるいは、それぞれは1つまたは複数の同定された癌抗原または病原体からの抗原をコードする、1つまたは複数の核酸構築物でトランスフェクトした非樹状細胞を、融合の非樹状パートナーとして用いることができる。抗原が融合細胞上でMHCクラスIまたはII分子によって提示される限り、これらの抗原は、癌細胞または病原体の表面に発現される必要はない。
【0087】
融合の作製方法
DCと非樹状細胞との間の融合は、ポリエチレングリコール(「PEG」)、センダイウイルスまたは電気融合を用いるものなどの、周知の方法で実行することができる。DCは自己由来であるか、同種異系である。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第6,653,848号を参照)。融合の非樹状細胞に対するDCの比率は、1:100〜1000:1と異なることができ、非樹状細胞が培養で激しく増殖する1:1より高い比率が好ましい。最も好ましくは、比率は1:1、5:1または10:1である。融合の後、未融合のDCは培養中で通常2、3日中に死滅するので、融合細胞は下記2つの方法によって未融合の親の非樹状細胞から分離することができ、両方法は、約50%以上の純度の融合細胞を生成し、すなわち、融合細胞調製物は50%未満、しばしば30%未満の未融合細胞を含有する。
【0088】
具体的には、未融合の細胞を融合細胞から分離する1つの方法は、融合細胞と非樹状親細胞との間で異なる接着特性に基づく。融合細胞は一般に、組織培養容器への接着性が弱いことが分かっている。したがって、非樹状親細胞がずっとより接着性である場合、例えば癌細胞の場合、融合後細胞混合物を短期間(例えば、5〜10日)適当な培地(HATは必要ではないが、それが未融合細胞の増殖を遅くするならば加えてもよい)で培養してもよい。その後、融合細胞を静かに剥がし、吸い出すことができるが、未融合細胞は組織培養容器に密着して増殖する。逆に、非樹状親細胞が懸濁液中で増殖する場合、培養期間の後、融合細胞を容器に弱く結合させたまま、それらを静かに吸い出すことができる。あるいは、インビトロの細胞培養工程なしで、ハイブリッドが直接用いられる。融合細胞は機能的ヒポキサンチングアニンフォスフォリボシル転移酵素(「HGPRT」)酵素を欠き、したがって、化合物HAT処理に耐性であることが示された。したがって、これらの細胞を選択するために、HATを培地に加えてもよい。しかし、従来のHAT選抜とは異なり、ハイブリッド細胞培養物は、12日を超えて化合物に曝露させるべきでない。
【0089】
上記の方法によって得られる融合細胞は、DCの表現型特性を一般的に保持する。例えば、これらの融合細胞は、MHCクラスIIタンパク質、B7−1、B7−2および、ICAM−1など、APCに特有の接着分子などのT細胞刺激分子を発現する。融合細胞は、親の非樹状細胞の細胞表面抗原を続けて発現し、それによって、細胞表面抗原に対する免疫を誘導するのに有用である。特に、非樹状融合パートナーが腫瘍細胞である場合、融合細胞の腫瘍形成性は親の腫瘍細胞に比較してしばしば弱められている。
【0090】
融合細胞がAPC特異的T細胞刺激分子の発現などのあるDC特性を失う場合、DC表現型を回復するために、それら(すなわち一次融合細胞)を樹状細胞と再融合させることができる。再融合された細胞(すなわち、二次融合細胞)は、非常に強力なAPCであることが分かり、場合によっては一次融合細胞よりも腫瘍形成性が低いことさえある。融合細胞は、樹状または非樹状の親細胞と所望の回数、再融合させることができる。
【0091】
あるいは、それぞれは1つまたは複数の同定された癌抗原または病原体からの抗原をコードする、1つまたは複数の核酸構築物でトランスフェクトした非樹状細胞を、融合の非樹状パートナーとして用いることができる。抗原が融合細胞上でMHCクラスIまたはII分子によって提示される限り、これらの抗原は、癌細胞または病原体の表面に発現される必要はない。
【0092】
融合の使用方法
本発明の融合細胞は、疾患の治療または予防のために、哺乳動物の免疫系を刺激するために用いることができる。例えば、ヒトで原発性または転移性の腫瘍を治療するために、患者自身のDCおよび腫瘍細胞によって形成される融合細胞を含む組成物を患者に、例えばリンパ系組織の近くの部位に投与することができる。組成物は、適当な間隔(例えば、2〜3週間ごと)および投薬量(例えば、1投与につき約105〜108、例えば約0.5×106〜1×106個の融合細胞)で複数回(例えば、3〜5回)投与されてもよい。癌に対する予防(すなわち、ワクチン接種)のために、同系DCおよび同種異系もしくは異種の癌細胞、または同種異系DCおよび癌細胞によって形成されるものなどの、非同系融合細胞を投与することができる。ワクチン接種の効果を監視するために、治療される個体から得られる細胞傷害性Tリンパ球を、癌細胞に対するそれらの効力について細胞傷害性アッセイで試験することができる。細胞傷害性Tリンパ球の効力を高めるために、複数のブーストが必要かもしれない。
【0093】
適当な融合細胞を含む組成物は、適宜当業者によって決定されるレジメンで個体(例えば、ヒト)に投与される。例えば、組成物は、適当な間隔(例えば、2〜3週間ごと)および投薬量(例えば、1投与につき約105〜108、好ましくは約107個の融合細胞)で複数回(例えば、3〜5回)投与されてもよい。
【0094】
DCおよびこれらのトランスフェクトされた細胞によって生成される融合細胞は、癌またはその病原体に起因する疾患の治療および予防のために用いることができる。それには限定されない例として、MUC1を発現する融合細胞は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、リンパ腫、ある種の白血病および骨髄腫を治療または予防するために用いることができ;α−フェトプロテインを発現する融合細胞は、肝癌または慢性肝炎を治療または予防するために用いることができ、そこで、α−フェトプロテインはしばしば高いレベルで発現され;前立腺特異抗原を発現する融合細胞は、前立腺癌を治療するために用いることができる。そのように生成された融合細胞を含む組成物の投与は、上に述べた通りである。
【0095】
腫瘍細胞は、一部、抗原提示細胞の発達および機能を撹乱することによって、宿主免疫を抑制する。したがって、DC/腫瘍融合ワクチンの有効性に関する潜在的な問題は、腫瘍細胞融合パートナーがDC分化を阻害し、融合ワクチンによる抗原提示を妨害することである。
【0096】
DC/腫瘍融合は、DC媒介性の同時刺激との関連で提示される広範な腫瘍抗原を発現し、抗腫瘍免疫の生成において非常に有効である。MHCクラスIおよびII経路との関連で内因的および内在化された抗原が提示され、平衡したヘルパーおよび細胞傷害性Tリンパ球応答をもたらす。(Parkhurstら、J Immunol170巻:5317〜25頁(2003年)を参照)。動物モデルでは、DC/腫瘍融合によるワクチン接種は、腫瘍細胞のさもなければ致死性の攻撃からの保護をもたらし、確立された疾患を効果的に根絶する。(Gongら、Nat Med3巻:558〜61頁(1997年);Gongら、Proc Natl Acad Sci USA95巻:6279〜83頁(1998年);Gongら、Blood99巻:2512〜17頁(2002年);Lespagnardら、Int J Cancer76巻:250〜58頁(1998年)を参照)。実際、患者由来の乳癌細胞およびDCによって刺激されたT細胞の融合は、インビトロで自己由来の腫瘍細胞の溶解を媒介した。(Gongら、Proc Natl Acad Sci USA97巻:2715〜18頁(2000年)を参照)。
【0097】
しかし、転移性乳癌患者の臨床試験では、自己由来DC/腫瘍融合によるワクチン接種は患者の大多数で抗腫瘍免疫を誘導したが、臨床応答は患者のサブセットだけで観察された。(Aviganら、Clin Cancer Res10巻:4699〜708頁(2004年);Aviganら、J Clin Oncol ASCO Annual Meeting Proceedings22巻:169頁(2004年)を参照)。このI/II相試験では、23人の転移性乳癌および腎癌患者が、アクセス可能な組織部位から採取された自己由来腫瘍細胞と融合された部分的に成熟したDCによるワクチン接種を受けた。(Aviganら、Clin Cancer Res.10巻:4699〜708頁(2004年)を参照)。融合細胞はMUC−1などの腫瘍特異抗原およびDC由来の同時刺激分子の同時発現を示したが、ワクチン接種は、18人中10人の評価可能患者で、腫瘍溶解物へのエキソビボ曝露の後のIFNγの増加が表す抗腫瘍免疫応答をもたらし、2人の患者は疾患退行を示し、6人の患者は転移性疾患が安定した。したがって、DC/乳癌融合によるワクチン接種は患者の大多数で抗腫瘍免疫応答を刺激したが、サブセットだけが臨床的に意味のある疾患応答を示した。
【0098】
DC/乳癌融合の表現型特性を、抗原提示細胞としてのそれらの機能に関して調べた。(Vasirら、Br. J. Hematol.129巻:687〜700頁(2005年)を参照)。具体的には、乳癌細胞とのDCの融合は、同時刺激マーカー、CD80、CD86および成熟マーカーCD83の発現を高める結果となった。未熟のおよび成熟したDCで生成された融合細胞は類似したレベルの成熟を示し、それによって、融合工程そのものがDC活性化を促進することを示唆した。実際、IL−12の相当な発現が両集団で観察され、一次免疫応答を刺激する能力を有する強力な抗原提示細胞としてのそれらの役割と一貫した。融合細胞集団によるCCR7の発現は、流入領域リンパ節におけるT細胞通行部位を刺激するそれらの能力を裏付ける。DC/乳癌融合は、高レベルのIFNγの関連する分泌を伴う、自己由来T細胞増殖も強力に刺激した。
【0099】
したがって、未熟なDCは乳癌細胞とのPEG媒介性融合の後に成熟を経、成熟DC/乳癌融合に類似した機能特性を示す。しかし、これらのDC/腫瘍融合は、活性化および調節性T細胞の混合応答を刺激する。融合細胞による刺激は、CD4/CD25+細胞の増加をもたらした。この集団の免疫表現型タイピングは、活性化(CD69+)ならびに阻害性(CTLA−4+、Foxp3)T細胞の存在を明らかにした。さらに、IFNγおよびIL−10生成細胞の相対的な増加も、観察された。
【0100】
腫瘍細胞は、無効なT細胞機能、ならびに、免疫性活性化を低下させ、癌ワクチンに対する応答を潜在的に制限する調節T細胞の存在の増加を特徴とする、免疫抑制環境を生成する。(Baccher−Allanら、J Immunol167巻:1245〜53頁 92001);Dieckmannら、J Exp Med.193巻:1303〜10頁(2001年);Jonuleitら、J Exp Med.193巻:128594頁(2001年)を参照)。調節T細胞の存在の増加は、癌患者の循環、流入領域リンパ節および腫瘍層で、疾患負担と相関するレベルで観察された。(Liyanageら、J Immunol.169巻:2756〜61頁(2002年);Sasadaら、Cancer98巻:1089〜99頁(2003年);Ormandyら、Cancer Res.65巻:2457〜64頁(2005年)を参照)。
【0101】
癌ワクチン療法は、インビボで腫瘍特異的T細胞応答を刺激するワクチンの能力に依存する。しばしば、悪性腫瘍を有する患者でのエフェクター細胞の機能不全は、癌ワクチンの効力および有効性を制限する。したがって、有効な癌ワクチン戦略の開発における主要な難題は、腫瘍を抱える患者で免疫応答を制限する内因性の免疫欠乏を克服することである。有効であるために、癌ワクチンは、刺激性シグナル伝達との関連で腫瘍抗原を提示し、T細胞通行部位に移動し、腫瘍標的を溶解する能力を有する活性化エフェクター細胞の増殖を誘導する能力を示さなければならない。
【0102】
腫瘍媒介性の免疫抑制の2つの中心的な要素には、DC成熟の阻害および調節T細胞の存在の増加が含まれる。(Gabrilovichら、Clin Cancer Res3巻:483〜90頁(1997年);Gabrilovichら、Blood92巻:4150〜66頁(1998年);Gabrilovich、Nat Rev Immunol4巻:941〜52頁(2004年)を参照)。
【0103】
DC/腫瘍もしくは癌細胞融合に関する1つの懸念は、ワクチン製剤中の腫瘍細胞が、抗原提示細胞としてのその機能を阻害することがあるということである。ワクチン接種に対する応答を制限する別の潜在的な問題は、T細胞活性化を抑制する調節T細胞の存在の増加である。
【0104】
調節T細胞は、正常な宿主での自己抗原に対する寛容性の媒介で重要な役割を演ずる。悪性腫瘍を有する患者では、それらの存在の増加は、宿主免疫応答の腫瘍関連抑制を媒介すると考えられる。(Baecher−Allanら、J Immunol.167巻:1245〜53頁(2001年);Piccirilloら、J Immunol167巻:1137〜40頁(2001年);Woodら、Nat Rev Immunol.3巻:199〜210頁(2003年)を参照)。GITRおよびCD25などの多くのマーカーが調節T細胞および活性化T細胞集団で共有されているので、調節T細胞の正確な定義は複雑である。調節細胞は、CD25high、GITR、CTLA−4およびFoxp3を含む一団のマーカー;混合リンパ球反応への応答の欠如;ならびに、インビトロで自己由来T細胞応答を抑制する能力によって同定される。
【0105】
調節T細胞は、直接細胞接触および腫瘍関連アネルギーの媒介で役割を果たすサイトカインの放出を通して、阻害シグナルを送達する。前述のように、調節T細胞は悪性腫瘍を有する患者の循環、腫瘍層およびリンパ節で増加し、それらの存在はより悪い予後に関連付けられた。(Curielら、Nat Med10巻:942〜49頁(2004年);Liyanageら、J. Immunol169巻:2756〜61(2002年);Ormandyら、Cancer Res65巻:2457〜64頁(2005年)を参照)。
【0106】
逆に、複数の研究が、DC/癌細胞融合によるワクチン接種が、免疫応答を究極的に鈍らせる調節T細胞の増殖をもたらすことができることを実証している。(Javiaら、J Imunother26巻:85〜93頁(2003年)を参照)。例えば、動物モデルでは、調節T細胞の除去、または、Toll様受容体(TLR)の連結を通しての先天性免疫の活性化は、腫瘍ワクチンへの応答を高めた。(Prasaら、J Immunol174巻:90〜98頁(2003年);Casaresら、J Immunol171巻:5931〜39頁(2003年);Tanakaら、J Immunother.25巻:207〜17頁(2002年);Dannullら、J. Clin Invest15巻:3623〜33頁(2005年)を参照)。さらに、T細胞/同時刺激複合体(CD3/CD28)の連結は、他の刺激性シグナルとの関連で投与されるとき、T細胞の活性化を促進することも示された。(Jungら、Blood102巻:3439〜45頁(2003年)を参照)。したがって、調節T細胞の存在は、悪性腫瘍を有する患者で、活性免疫化への応答を阻止することができる。
【0107】
過去の研究では、抗原パルス適用未熟DCによるワクチン接種は、抗原特異的T細胞で寛容性を誘導した。(Dhodapkarら、J Exp Med.193巻:233〜38頁(2001年)を参照)。さらに、複数の骨髄腫細胞との未熟なDCの融合は、DC融合パートナーのさらなる成熟をもたらした。(Vasirら、Br J Ahematol.129巻:687〜700頁(2005年)を参照)。
【0108】
これらの結果は、機能的に活性なT細胞を生成するためのワクチンのエキソビボの使用を調べるための、強い根拠を提供する。養子T細胞移入では、調節T細胞の数を変更することができ、エフェクター細胞の抗原特異的集団を移入することができる。転移性黒色腫患者での研究は、リンパ除去の後の自己由来黒色腫反応性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の移入が、持続する臨床応答をもたらすことを示した。(Zhouら、J Immunother.28巻:53〜62頁(2005年)を参照)。これらの研究は、腫瘍サプレッサー細胞の除去に続く腫瘍反応性T細胞の養子移入が、進行疾患を有する患者の50%で腫瘍退行を誘導することも示した。(Robbinsら、J Immunol.173巻:7125〜30頁(2004年)を参照)。しかし、TILのこの使用は、それらが入手できる少数の腫瘍型に限られている。したがって、養子免疫療法のために腫瘍ワクチンによってエキソビボで増殖したT細胞を利用することは、今でも大きな関心の的である。
【0109】
教育されたT細胞
本発明は、ハイブリッド細胞を代償にして培養で増殖する、教育された、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の集団も提供し、そこで、ハイブリッド細胞は、1つまたは複数の抗原を発現する細胞に融合している、抗原提示細胞(APC)を含む。一実施形態では、APCは樹状細胞(DC)であり、ハイブリッド細胞は培養で増殖する。別の実施形態では、抗原(複数可)を発現する細胞は腫瘍細胞であり、免疫エフェクター細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。DCは、血液、皮膚、脾臓、骨髄または腫瘍などの源から単離することができる。細胞集団を調製する方法も、本発明によって提供される。
【0110】
本発明の抗原特異的な免疫エフェクター細胞の一部もしくは全部、またはハイブリッド細胞は、外来性ポリヌクレオチドの挿入によって遺伝子操作することができるか、されている。例えば、細胞に導入されるポリヌクレオチドは、ペプチド、リボザイムまたはアンチセンス配列をコードする。
【0111】
抗原(複数可)を発現する細胞および免疫エフェクター細胞は、腫瘍から濃縮されていてもよい。さらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。本方法は、APCおよび抗原発現細胞が同じ対象または異なる対象(すなわち、自己由来または同種異系)に由来する実施形態も提供する。
【0112】
この方法のさらなる変更形態では、免疫エフェクター細胞は、サイトカイン、例えば、IL−2またはGM−CSFおよび/または同時刺激分子の存在下で培養される。
【0113】
本発明で用いられるハイブリッド細胞は、当技術分野で公知である任意の適する方法によって形成することができる。一実施形態では、腫瘍生検試料を細かく切り刻み、細胞懸濁液を作製する。好ましくは、細胞懸濁液は、少なくとも2つの分画に分離される。1つは免疫エフェクター細胞、例えばT細胞について濃縮され、1つは腫瘍細胞について濃縮される。免疫エフェクター細胞は、骨髄、血液または皮膚から、当技術分野で周知である方法を用いて単離することもできる。
【0114】
一般に、培養の前に新生細胞から最初の接種集団を単離することが望ましい。例えば、新生細胞からの様々な細胞型の分離は、例えばセルソータ、磁気ビーズおよび充填カラムの使用を含む、任意の数の方法によって実施することができる。分離のための他の方法には、それらに限定されないが、物理的分離、抗体コーティング磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、それらに限定されないが補体および細胞毒を含む、モノクローナル抗体に結合するかモノクローナル抗体と併用される細胞毒性剤、および固体マトリックス、例えばプレートに結合された抗体による「パニング」、エラトリエーション、または当業者に公知である他の任意の便利な技術が含まれる。
【0115】
物理的分離技術の使用には、物理的特性(密度勾配遠心法および逆流遠心エラトリエーション)、細胞表面特性(レクチンおよび抗体親和性)および生体染色特性(ミトコンドリア結合性色素ロー123およびDNA結合性色素Hoechst 33342)の差に基づくものが含まれるが、これらに限定されない。適する方法は、当業者に周知である。
【0116】
特定の細胞系および/または分化の段階に関連するマーカーを同定するための、別の有用な試薬であるモノクローナル抗体を用いることができる。大雑把な分離のために、抗体を固体支持体に結合することができる。使用する分離技術は、収集される分画の生存度の保持を最大にするべきである。異なる効力の様々な技術を、「比較的粗な」分離を得るために使用することができる。そのような分離では、マーカーを有しない存在総細胞数の最高10%、通常約5%以下、好ましくは約1%以下が、保持される細胞集団に残留することができる。使用される特定の技術は、分離効率、関連細胞毒性、実施の容易性および速度、ならびに高度な機器および/または技術の必要性に依存する。
【0117】
細胞分画を分離する別の方法は、所望の細胞集団の優先的増殖を可能にする培養条件を用いることである。例えば、抗原発現細胞を濃縮した分画を、次にAPCに、好ましくは樹状細胞に融合する。APCと抗原発現細胞との間の融合は、任意の適する方法、例えばポリエチレングリコール(PEG)、電気融合またはセンダイウイルスを用いて実行することができる。ハイブリッド細胞は、Gongら(1997年)Nat. Med3巻(5号):558〜561頁に記載のPEG方法、または当技術分野で公知である他の方法を用いて作製される。
【0118】
予備コミットされたDCを、例えばメトリザミド勾配;非粘着/粘着技術(Freduenthal, PSら(1990年)PNAS87巻:7698〜7702頁を参照);パーコール勾配分離(Mehta−Damaniら(1994年)J. Immunol153巻:996〜1003頁を参照)およびFACS技術(Thomasら(1993年)J. Immunol151巻:6840〜6852頁を参照)を用いて単離する。一実施形態では、DCは、基本的にFACS技術を用いてWO96/23060に記載の通りに単離される。ヒトDCの特異的細胞表面マーカーはないが、20個のマーカーの混合(例えばHLA−DR、B7.2、CD 13/33その他)がDCの上に存在することが公知である。さらに、DCは、CD3、CD20、CD56およびCD14抗原を欠くことが公知である。したがって、陰性および陽性のFACS技術を組み合わせることは、DCを単離する方法を提供する。
【0119】
1つまたは複数の抗原を発現するAPCおよび細胞は、自己由来でよく、すなわち、その腫瘍生検試料が得られた同じ対象に由来してもよい。樹状細胞は一次免疫応答の生成を促進することが公知であるので、抗原を発現するAPCおよび細胞は、同種異系でもよく、すなわち、異なる対象に由来してもよい。
【0120】
抗原特異的な免疫エフェクター細胞の増殖
本発明は、抗原特異的(すなわち、「教育された」)免疫エフェクター細胞の濃縮集団の生成を刺激するために、これらのハイブリッド細胞を利用する。抗原特異的な免疫エフェクター細胞は、培養中に死に至るハイブリッド細胞を代償にして増殖する。ナイーブな免疫エフェクター細胞が他の細胞によって教育される工程は、基本的にCoulie、Molec. Med Today261〜268頁(1997年)に記載されている。
【0121】
上に述べたように調製されるハイブリッド細胞は、ナイーブな免疫エフェクター細胞と混合される。好ましくは、免疫エフェクター細胞は腫瘍細胞を特異的に認識し、上に述べたように腫瘍生検試料から濃縮されている。任意選択で、細胞をサイトカイン、例えばIL−2の存在下で培養することができる。DCはIL−12などの強力な免疫賦活性サイトカインを分泌するので、初回のおよび続く増殖の間、補助的サイトカインを加える必要はないであろう。しかし、融合細胞がIL−12を形成しない場合、このサイトカインは培養に加えられる。いかなる場合でも、培養条件は、抗原特異的な免疫エフェクター細胞がハイブリッド細胞よりもずっと高い速度で拡張する(すなわち、増殖する)ような条件である。抗原特異的細胞の集団をさらに拡張するために、ハイブリッド細胞および任意選択のサイトカインの複数回の注入を実施することができる。
【0122】
第二の刺激性シグナルの添加は、調節T細胞の融合媒介性増殖を枯渇させ、したがって、活性化抗腫瘍免疫応答の発達を有利にする。適する二次刺激性シグナルには、IL−12;IL−18;TLR9アゴニスト、CPG−ODN;および抗CD3/CD28が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
例えば、動物モデルは、IL−12の共投与がDC/腫瘍融合ワクチンの効力を促進することを実証している。(Akasakiら、J Immunother.24巻:106〜113頁(2001年)を参照)。調節T細胞の影響を最小にする別の戦略は、Toll様受容体(TLR)の連結による先天性免疫の活性化を通したものである。動物モデルでは、TLR9を活性化するためのCPG ODNの投与が、拡大する腫瘍の負荷から生じる免疫抑制を克服することが示された。CPGへの曝露は、調節細胞の存在を枯渇させ、ワクチン応答を促進した。さらに、TLR7/8アゴニストへの曝露は、同時刺激マーカーおよび成熟マーカーの発現増加によって明らかにされる、DC活性化の増強をもたらした。同様に、TLR9アゴニスト(CpG)、IL−12およびIL−18の添加は、融合媒介刺激の後に、調節T細胞のレベルを低下させた。
【0124】
DC/腫瘍融合は、自己由来の腫瘍標的を溶解する能力を有する腫瘍反応性T細胞を刺激することが、前に実証されている。さらに、過去の試験は、抗CD3/CD28への最初の曝露がT細胞レパートリーの複合性を回復し、腫瘍反応性クローンを増殖させるDC/腫瘍融合の能力を潜在的に高めることも実証している。対照的に、融合媒介刺激の後の抗CD3/CD28への二次曝露は、活性化腫瘍反応性細胞のより特異的な増殖をもたらすことができる。
【0125】
CD3/CD28の連結は、NFκBを含むシグナル伝達経路の活性化をもたらす、T細胞受容体/同時刺激複合体によって媒介される強力な抗原非依存性刺激を提供する。(Bonyhadiら、J. Immunol.174巻:2366〜75頁(2005年);Wangら、Mol Cell Biol.24巻:164〜71頁(2004年);Herndonら、J Immunol.166巻:5654〜64頁(2001年);Khoshnanら、J Immunol165巻:6933〜40頁(2000年);およびYamada−Ohnishiら、Stem Cells Dev13巻:315〜22頁(2004年)を参照)。この工程は、HIVおよび悪性腫瘍を有する患者で、T細胞増殖、およびT細胞レパートリーの複合性の増強を誘導する、強力な活性化および増殖シグナルを送達する。(Bonyhadiら、J. Immunol.174巻:2366〜75頁(2005年);Kalamaszら、J Immunother.27巻:405〜18頁(2004年)を参照)。抗CD3/CD28によってエキソビボで増殖したT細胞を、腫瘍関連の細胞性免疫機能不全を逆転させる可能性のある戦略として探究した。しかし、抗CD3/CD28単独への曝露は、関連サイトカイン環境に依存して、活性化細胞または抑制細胞を増殖させることができる。(Jungら、Blood102巻:3439〜46頁(2003年)を参照)。
【0126】
抗CD3/CD28刺激のT細胞表現型に対する影響は複雑であり、調査するモデルによって多様で相反する影響をもたらす。抗CD3/CD28への曝露は、免疫環境の性質に依存して、活性化T細胞または抑制T細胞の増殖を促進する。(Jungら、Blood102巻:3439〜46頁(2003年)を参照)。例えば、抗CD3/CD28およびIL−15による刺激は、阻害性表現型を示す調節T細胞の増殖をもたらす。(Linら、Bone Marrow Transplant37巻:881〜87頁(2006年)を参照)。移植片対宿主疾患モデルでは、抗CD3/CD28刺激の後のTh1またはTh2表現型への分極は、サイトカイン曝露によって決定される(Jungら、Blood102巻:3439〜46頁(2003年)を参照)。抗CD3/CD28、IL−4およびIL−2と共培養されたCD4+細胞は、増加したレベルのIL−4およびIL−10を分泌する。対照的に、動物モデルでは、抗CD3/CD28への抗原特異的T細胞の曝露は、抗原への曝露後にIFNγを発現し、腫瘍抗原投与に対して保護的であった記憶エフェクター細胞の増殖をもたらした。(Hughesら、Cytotherapy7巻:396〜407頁(2005年)を参照)。
【0127】
したがって、DC/腫瘍融合は、腫瘍関連抗原に対して向けられた活性化T細胞を選択的に刺激することによって、抗CD3/CD28媒介増殖のための特異なプラットホームを提供するであろうと仮定された。このように、融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、増殖集団中の調節T細胞の存在を最小にしつつ、腫瘍反応性T細胞のかなりの収量の生成を潜在的に可能にする。腎癌細胞(RCC)または患者由来の骨髄性白血病細胞と融合させたDCによるインビトロ刺激を経たT細胞の、表現型特性および機能的特性を研究した。さらに、DC/乳癌と、続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、記憶エフェクター細胞のそれと一貫していた活性化表現型を主に表したT細胞集団をもたらした。
【0128】
したがって、DC/腫瘍融合および抗CD3/CD28は、活性化表現型を有する抗腫瘍T細胞を劇的に増殖させることにおいて、相乗効果を提供する。RCCおよび乳癌の両モデルにおいて、DC/腫瘍融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、DC/RCC融合または抗CD3/CD28単独による刺激の後に観察されたものをはるかに超える記憶エフェクターT細胞の劇的な増殖をもたらしたことも実証されている。
【0129】
さらに、その後抗CD3/CD28増殖を経た融合刺激T細胞は、MUC1反応性T細胞クローンの著しい増加を示し、培養中に融合細胞で抗原刺激をされた腫瘍反応性クローンがその後増殖していたことを示唆する。DC/腫瘍融合と、続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD69およびIFNγを発現するCD4+/CD25+細胞のかなり増加した収量から明らかなように、活性化T細胞の比較的選択的な増殖をもたらす。IL−10およびFoxp3を発現する細胞のより控え目な増加は、阻害性集団の増殖が起こることを示唆した。細胞溶解能力の尺度として、DC/腫瘍融合と、続く抗CD3/CD28によって刺激されたT細胞は、融合細胞または抗CD3/CD28単独による刺激の後に観察されたものを超える、高レベルのグランザイムB発現を示した。
【0130】
DC/腫瘍融合と、続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、活性化表現型が優勢な腫瘍反応性リンパ球の劇的な増殖をもたらすので、この戦略は、養子免疫療法の理想的なプラットホームを提供する。さらに、当業者は、増殖集団で調節T細胞をさらに枯渇させる追加の手法が、癌ワクチン効力をさらに高めるかもしれないことを認識するであろう。
【0131】
ハイブリッド細胞を記載のように用いて、免疫エフェクター細胞の強力な抗原特異的集団を得ることができる。これらの細胞は、腫瘍特異抗原に特異的であるT細胞であってよい。
【0132】
教育されたT細胞を用いる方法
本明細書で記載されるように、本明細書で記載される細胞の有効な量を、養子免疫療法を提供するために対象に投与することができる。サイトカインまたは他の同時刺激分子の有効な量を、対象に共投与することもできる。
【0133】
本発明の抗原特異的な免疫エフェクター細胞の増殖集団は、養子免疫療法体系で、およびワクチンとして使用することもできる。
【0134】
養子免疫療法は、例えば、ナイーブな免疫エフェクター細胞をハイブリッド細胞と培養することによって作製される、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の実質的に純粋な集団の有効量を対象に投与することであって、そこで、ハイブリッド細胞は、1つまたは複数の抗原を発現する細胞に融合している、抗原提示細胞(APC)であり、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞は、ハイブリッド細胞を代償にして増殖することと、その後、生じる教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体に曝露させて集団をさらに増殖させることを含む。好ましくは、APCはDCである。
【0135】
細胞は、自己由来または同種異系であってよい。例えば、本明細書で記載される養子免疫療法方法が自己由来性の場合、ハイブリッド細胞は、単一の対象から単離される親細胞を用いて作製される。増殖集団は、その対象から単離されるT細胞も使用する。最後に、抗原特異的細胞の増殖集団は、同じ患者に投与される。
【0136】
あるいは、養子免疫療法が同種異系の場合、ハイブリッド細胞を生成し、抗原特異的細胞の生成を刺激するために、2名以上の患者からの細胞を用いる。例えば、生検試料を提供する対象から自己由来のT細胞および/または樹状細胞を得ることができない場合、抗原特異的細胞を生成するために、他の健康対象または有病対象からの細胞を用いることができる。増殖集団は、細胞を単離した対象、または完全に別の対象のいずれか1名に投与することができる。
【0137】
遺伝子改変
本発明の方法は、ハイブリッド細胞、または、刺激因子としてハイブリッド細胞を用いて誘導される細胞の抗原特異的集団に対する、遺伝子導入の任意の方法を包含するものとする。遺伝子改変の例には、ウイルス媒介遺伝子導入、リポソーム媒介導入、形質転換、トランスフェクションおよび形質導入、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびヘルペスウイルスなどのDNAウイルスに基づくベクター、ならびにレトロウイルスに基づくベクターの使用などのウイルス媒介遺伝子導入が含まれるが、これらに限定されない。本方法は、核局在化要素もしくは配列を欠くので、核酸が細胞質にとどまるベクターまたは構築物に含まれる核酸の組込みに特に適している。これらの例では、核酸または治療的遺伝子は、核膜が破壊され、核酸または治療的遺伝子が宿主細胞染色体に接近することができるM(有糸分裂)相の間に、核に入ることができる。遺伝子改変はエキソビボで実施され、その後、組換え(すなわち、形質導入)細胞はレシピエントに投与される。したがって、本発明は、本明細書で開示される方法によってエキソビボまたはインビボで遺伝子を投与することによる、抗原特異的細胞への遺伝子導入に適合する疾患の治療を包含する。
【0138】
抗原特異的細胞の増殖集団は、遺伝子操作することができる。さらに、例えば、それらに限定されないが、ホルモン、酵素、インターフェロン、成長因子などを含む特定の分泌産物を供給するために、ハイブリッド細胞を遺伝子操作することもできる。適当な調節開始領域を使用することによって、欠乏するタンパク質の誘導可能な生成を達成することができ、したがって、生成がそのようなタンパク質を通常生成する細胞型とは異なる細胞型中で起こるとしても、タンパク質の生成は天然の生成に対応する。特定の遺伝子産物、または疾患、特に血リンパ系疾患への感受性を阻害するために、リボザイム、アンチセンスまたは他のメッセージを挿入することも可能である。
【0139】
適する発現および導入ベクターは、当技術分野で公知である。
【0140】
優性な阻害性オリゴヌクレオチドおよびペプチドをコードする治療的遺伝子、ならびに調節タンパク質およびオリゴヌクレオチドをコードする遺伝子も、本発明に包含される。一般に、遺伝子治療は単一の治療的遺伝子の導入を含むが、特定の疾患の治療のために複数の遺伝子が必要なこともある。治療的遺伝子は、野生型免疫抑制剤の優性な阻害性突然変異体である。あるいは、治療的遺伝子は、野生型、欠陥遺伝子のコピー、または機能的相同体でもよい。
【0141】
ベクターにつき複数の遺伝子を投与することができ、あるいは、いくつかの適合するベクターを用いて複数の遺伝子を送達することができる。遺伝子の欠陥次第で、治療的遺伝子は、調節配列および非翻訳配列を含むことができる。ヒト患者での遺伝子治療のために、一般に治療的遺伝子はヒト起源であるが、遺伝子産物がレシピエントで有害な免疫反応を誘導しないならば、ヒトで高い相同性および生物学的に同一のまたは同等な機能を示す、他の緊密に関連する種からの遺伝子を用いることができる。治療での使用に適する治療的遺伝子は、疾患で異なる。
【0142】
DNA構築物が組み込まれていない細胞に比較して、形質導入の成果を監視するために、およびDNAが組み込まれた細胞の選択のために、マーカー遺伝子がベクターに含まれてもよい。様々なマーカー遺伝子には、0418またはハイグロマイシンへの耐性などの抗生物質耐性マーカーが含まれるが、これらに限定されない。より不便であるが、それに限定されないが、マーカーが、細胞をアシクロビルおよびガンシクロビルなどの剤に感受性にするHSV−tk遺伝子である場合、陰性選択を用いることができる。あるいは、FACS選別によって導入遺伝子発現細胞を選択するための、安定細胞表面マーカーの使用によって選択を達成することができよう。NeoR(ネオマイシン/0418耐性)遺伝子が一般に用いられるが、その配列がレシピエント細胞にまだ存在していない任意の好都合なマーカー遺伝子を用いることができる。
【0143】
ウイルスベクターは、粒子安定性を改善し、宿主域を拡張するか、感染中に細胞型特異的ターゲティングを可能にするために、キメラエンベロープタンパク質または非ウイルス膜タンパク質をレトロウイルス粒子に組み込むように改変することができる。宿主域を変化させたレトロウイルスベクターの生成は、例えば、WO92/14829およびWO93/14188で教示されている。インビボで特異的細胞型を標的にすることができるレトロウイルスベクターも、例えば、Kasaharaら(1994年)Science266巻:1373〜1376頁で教示されている。Kasaharaらは、ウイルスエンベロープタンパク質と融合しているヒトエリスロポイエチン(EPO)からなるキメラエンベロープタンパク質を有する、モロニー白血病ウイルス(MoMLV)の構築を記載している。このハイブリッドウイルスは、EPOの受容体を運ぶヒト赤血球前駆体への組織向性を示し、したがって、鎌状赤血球貧血およびサラセミアの遺伝子治療で有用である。細胞の感染を特異的に標的にすることができるレトロウイルスベクターが、インビボ遺伝子治療のために好ましい。
【0144】
導入遺伝子の発現は、遺伝子導入の目的および所期の効果によって、様々な方法で制御することができる。したがって、特定の生理的条件の下でだけ、または特定の細胞型においてだけ、遺伝子が構成的に発現されるようにするプロモーターの支配下に、導入遺伝子を置くことができる。
【0145】
特定の細胞型で導入された配列の発現を引き起こすために用いることができるプロモーターの例には、T細胞およびNK細胞での発現のためのグランザイムA、幹細胞および前駆体細胞での発現のためのCD34プロモーター、細胞傷害T細胞での発現のためのCD8プロモーター、および骨髄細胞での発現のためのCD11bプロモーターが含まれる。
【0146】
ある生理的条件下での遺伝子発現のために、誘導可能なプロモーターを用いることができる。例えば、求電子性の分子に反応して化学療法抵抗性遺伝子の発現を誘導するために、求電子性の応答要素を用いることができる。適当な局在化配列を結合することによって適当な細胞の場所、例えば核を遺伝子産物の標的にすることによって、治療上の利点をさらに増加させることができる。
【0147】
ウイルス形質導入の後、形質導入細胞またはそれらの後代におけるウイルスベクターの存在は、例えばPCRによって検証することができる。マーカー遺伝子、または他のウイルスによって形質導入された配列を検出するために、PCRを実施することができる。一般に、定期血液試料を採取し、例えばNeoR遺伝子をマーカーとして用いる場合はNeoRプローブを用いて、PCRを都合よく実施する。骨髄細胞または成熟造血細胞中のウイルスによって形質導入された配列の存在は、形質導入細胞による再構成の成功の証拠である。PCR技術および試薬は当技術分野で周知であり(一般に、PCR PROTOCOLS, A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS. Innis、Gelfand、Sninsky & White編(Academic Press, Inc.、San Diego、1990年))、市販されている(Perkin Elmer)。
【0148】
候補ペプチドおよび抗原活性のためのペプチドのスクリーニング方法
上記のCTLおよびHTL(「エフェクター細胞」)は、本発明のエフェクター細胞を生成するために用いられる融合細胞の非樹状細胞パートナーによって発現される抗原を、当技術分野で用いられるいくつかの方法によって同定するために用いることができる。手短に言えば、エフェクター細胞を含有する細胞集団を候補ペプチドまたはポリペプチド、および、適当な標的細胞(細胞毒性をアッセイする場合)または抗原提示細胞(APC)(細胞増殖またはサイトカイン生成をアッセイする場合)と一緒に培養し、関連する活性を測定する。エフェクター活性を誘導するペプチドは抗原性のペプチドであり、それは、エフェクター細胞によって認識される。エフェクター活性を誘導するポリペプチドは抗原性のポリペプチドであり、そのペプチド断片はエフェクター細胞によって認識される。
【0149】
細胞傷害活性は、当技術分野で公知である様々な方法(例えば、実施例IおよびIII〜Vに記載される51Crまたは乳酸脱水素酵素(LDH)放出アッセイ)によって試験することができる。標的細胞は、様々な細胞型、例えば、線維芽細胞、リンパ球、レクチン(例えば、植物性凝集素(PHA)、コンカナバリンA(ConA)またはリポポリサッカライド(LPS))活性化リンパ芽球、マクロファージ、単球または腫瘍細胞系のいずれかでよい。標的細胞は抗原活性について試験する候補抗原を本来発現するべきでないが、それらは、組換えでそれらを発現することができるであろう。しかし、標的細胞は、CTLと共通する、MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子の少なくとも1種類(関連するCTLの制限次第で)を発現するべきである。標的細胞は適当なMHC分子を内因的に発現することができるか、または、それらは、そのような分子をコードするトランスフェクトされたポリヌクレオチドを発現することができる。選択された標的細胞集団は、アッセイの前に候補ペプチドまたはポリペプチドをパルス適用することができるか、または、候補ペプチドまたはポリペプチドを、CTLおよび標的細胞と一緒にアッセイ容器、例えばマイクロタイタープレートウェルまたは培養試験管に加えることができる。あるいは、候補ペプチドまたはポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクターでトランスフェクトまたは形質転換された標的細胞を、用いることができる。CTL含有細胞集団、標的細胞および候補ペプチドまたはポリペプチドを、約4〜約24時間一緒に培養する。標的細胞の溶解は、例えば標的細胞からの51CrまたはLDHの放出によって測定される。CTLによる標的細胞の溶解を引き出すペプチドは、CTLによって認識される抗原性ペプチドである。CTLによる標的細胞の溶解を引き出すポリペプチドは、抗原性ポリペプチドであり、そのペプチド断片はCTLによって認識される。
【0150】
候補ペプチドまたはポリペプチドは、CTLおよびHTLの両方で増殖応答を誘導するそれらの能力について、試験することができる。エフェクター細胞は、適当なMHCクラスIまたはクラスII分子を発現するAPCの存在下で、候補ペプチドまたはポリペプチドと一緒に培養される。そのようなAPCは、Bリンパ球、単球、マクロファージまたは樹状細胞、または完全なPBMCであってよい。APCは、Bリンパ球、単球、マクロファージまたは樹状細胞に由来する、不死化された細胞系であってもよい。APCは、適当なMEC分子を内因的に発現することができるか、または、それらは、そのような分子をコードするトランスフェクトされた発現ベクターを発現することができる。すべての場合において、APCは、アッセイの前に、例えば電離放射線またはマイトマイシンCによる処理によって、非増殖性にされてもよい。エフェクター細胞を含有する集団は、候補ペプチドまたはポリペプチドと一緒にまたはそれなしに培養され、細胞の増殖応答は、例えばそれらのDNAへの[3H]−チミジンの組込みによって測定される。
【0151】
細胞増殖の測定に代わるものとして、当業者に公知である方法によってエフェクター細胞によるサイトカイン生成を測定することができる。サイトカインには、限定されずに、インターロイキン−2(IL−2)、IFN−、IL−4、IL−5、TNF−、インターロイキン−3(IL−3)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−b)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)およびトランスフォーミング成長因子(TGF)が含まれ、それらを測定するアッセイには、限定されずに、ELISA、および関連するサイトカインに応答性である細胞が、試験試料の存在下で応答性(例えば、増殖)について試験されるバイオアッセイが含まれる。あるいは、エフェクター細胞によるサイトカイン生成は、細胞内免疫蛍光検査染色およびフローサイトメトリーによって直接に視覚化することができる。
【0152】
抗原性について試験される候補ペプチドおよびポリペプチドの選択は、融合細胞を作るために用いられた非樹状細胞によって決まる。非樹状細胞が腫瘍細胞である場合、候補ポリペプチドは、関連する腫瘍細胞によって発現されるそれらである。それらは、好ましくは、腫瘍細胞と同等の正常な細胞におけるよりもかなり高いレベルで腫瘍細胞において発現されるそれらである。候補ペプチドは、そのようなポリペプチドの断片である。したがって、例えば、黒色腫細胞については、候補ポリペプチドは、チロシナーゼ、またはMARTファミリーの分子の構成員でよく;結腸癌については、癌胎児性抗原;前立腺癌については、前立腺特異抗原;乳癌または卵巣癌については、HER2/neu;卵巣癌については、CA−125;または、ほとんどの癌腫については、ムチン−1(MUC1)でよい。
【0153】
他方、融合細胞を生成するために用いられる非樹状細胞が、感染細胞または病原体由来のポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞であった場合、候補ポリペプチドは、それぞれ適当な感染性微生物によって発現されるもの、またはトランスフェクトされた細胞によって発現されるものである。そのようなポリペプチドの例には、レトロウイルス(例えば、HIVまたはHTLV)膜糖タンパク質(例えば、gp160)またはgagタンパク質、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼまたは血球凝集素、Mycobacterium tuberculosisもしくはlepraeのタンパク質、または原生動物(例えば、PlasmodiumまたはTrypanosoma)のタンパク質が含まれる。ポリペプチドは、本明細書に記載される他の微生物からのものであってもよい。試験されるペプチドは、例えば、関心の完全長ポリペプチドの様々な断片に相当する一連のペプチド、例えば、一団で配列全体をカバーする重複配列を有するペプチドであってよい。試験されるペプチドは、任意の長さであることができる。エフェクター細胞のMHCクラスI制限応答を試験する場合、それらは、好ましくは長さが7〜20個(例えば、8〜12個)のアミノ酸である。他方、MHCクラスII制限応答の場合、ペプチドは、好ましくは長さが10〜30個(例えば、12〜25個)のアミノ酸である。
【0154】
あるいは、ペプチドのランダムなライブラリーを試験することができる。適当なエフェクター細胞で陽性応答を引き出すそれらの配列を、タンパク質配列データベースと比較することによって、ペプチド配列を含むポリペプチドを同定することができる。関連するポリペプチドまたは同定されたペプチド自体は、対応する疾患のための候補治療薬またはワクチン剤となるであろう(下記参照)。
【0155】
ポリペプチドおよびペプチドは、当技術分野で公知である様々な手段によって作製することができる。より小さなペプチド(長さが50個未満のアミノ酸)は、標準の化学手段によって都合よく合成することができる。さらに、ポリペプチドおよびペプチドの両方は、適当なポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を用いて、標準のインビトロ組換えDNA技術、およびインビボ遺伝子改変(例えば、遺伝子導入)によって生成することができる。当業者に周知である方法を用いて、関連するコード配列および適当な転写/翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。例えば、Maniatisら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.、1989年)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、(Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.、1989年)に記載の技術を参照。
【0156】
ペプチドおよびポリペプチドを発現させるために、様々な宿主−発現ベクター系を用いることができる。そのような宿主−発現系は、関心のポリペプチドを生成し、その後精製することができる媒体を表すだけでなく、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされると、インサイツで、関連するペプチドまたはポリペプチドを生成することができる細胞も表す。これらには、それらに限定されないが、ペプチドまたはポリペプチドコード配列を含む組換え体バクテリオファージDNA、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された、細菌などの微生物、例えばE.coliまたはB.subtilis;適当なコード配列を含む組換え体酵母発現ベクターで形質転換された酵母、例えばSaccharomycesまたはPichia;組換え体ウイルス発現ベクター、例えばバキュロウイルスに感染させた昆虫細胞系;適当なコード配列を含む組換え体ウイルス発現ベクター、例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)またはタバコモザイクウイルス(TMV)に感染させたか、組換え体プラスミド発現ベクター、例えばTiプラスミドで形質転換された植物細胞系;または、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター、例えばメタロチオネインプロモーター、または、哺乳動物のウイルスに由来するプロモーター、例えばアデノウイルス後期プロモーターもしくはワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを含む組換え体発現構築物を抱える哺乳動物細胞系、例えば、COS、CHO、BHK、293または3T3が含まれる。
【0157】
本発明のペプチドには、上記のものが含まれるが、関連するペプチドのインビボでの生存を促進するために、アミノ末端およびC末端の片方または両方でのブロッキング剤の付加によって、インビボ使用のために修飾される。これは、ペプチド末端が細胞またはミトコンドリアによる取込みの前にプロテアーゼによって分解される傾向がある状況で、有用であろう。そのようなブロッキング剤には、投与されるペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端残基に結合することができる、追加の関連するペプチドまたは無関係なペプチドの配列を含めることができるが、これらに限定されない。これは、ペプチドの合成の間に化学的に、または、当業者がなじんでいる方法による組換えDNA技術によって実行することができる。あるいは、ピログルタミン酸または当技術分野で公知である他の分子などのブロッキング剤を、アミノおよび/またはカルボキシル末端残基に結合することができるか、または、アミノ末端のアミノ基もしくはカルボキシル末端のカルボキシル基を異なる部分で置換することができる。同様に、投与の前に、ペプチドを薬学的に許容される「担体」タンパク質に、共有結合または非共有結合で結合することができる。
【0158】
ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計されるペプチド様化合物にも、関心がある。ペプチド様化合物は、選択されるペプチドの三次元の立体配座と実質的に同じである三次元の立体配座を有する合成化合物(すなわち、「ペプチドモチーフ」)である。ペプチドモチーフは、そのペプチド様物質が由来するペプチドまたはポリペプチドのそれと質的に同じ方法でT細胞を活性化する能力を有するペプチド様化合物を提供する。ペプチド様化合物は、細胞透過性の増加および長期生物学的半減期などの、それらの治療的有用性を高める追加の特性を有することができる。
【0159】
一般的に、ペプチド様物質は、部分的または完全に非ペプチドであるが、そのペプチド様物質が基づくペプチドで出現するアミノ酸残基の側鎖と同一である側鎖を有する骨格を有する。数種類の化学結合、例えば、エステル、チオエステル、チオアミド、レトロアミド、還元カルボニル、ジメチレンおよびケトメチレン結合は、一般に、プロテアーゼ耐性ペプチド様物質の構築において、ペプチド結合の有用な代用法であることが当技術分野で公知である。
【0160】
ワクチン
本明細書で記載される教育され、増殖したT細胞集団および方法は、細胞ベースのワクチンを開発するために用いることもできる。本発明による抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含むワクチンが、本発明によってさらに提供される。本明細書に記載の抗原特異的な免疫エフェクター細胞を利用する、エピトープまたは配列モチーフなどの抗原またはその断片を含むワクチンが、本発明によってさらに提供される。ワクチンの投与方法は当技術分野で公知であり、ワクチンは、許容される薬用担体と組み合わせることができる。サイトカインおよび/または同時刺激分子の有効な量も、ワクチンに加えて投与することができる。
【0161】
本発明によるポリヌクレオチド、遺伝子およびコードされるペプチドおよびタンパク質をさらにクローニングして、インビトロまたはインビボで発現させることができる。宿主細胞発現系から生成および単離されるタンパク質およびポリペプチドも、本発明の範囲内である。これらのポリヌクレオチドおよび遺伝子を含む発現およびクローニングベクターならびに宿主細胞、ならびに、それらを有効な量で対象に投与する方法も本明細書で請求される。これらの配列に対応するペプチドは、組換え技術によって生成することができ、それらはワクチンとして対象に投与すること、あるいは、APCに導入し、それを今度は有効な量で対象に投与することができる。遺伝子を用いてタンパク質を生成し、それを今度はAPCにパルス適用するために用いることができる。次に、APCを用いて、CTLなどの免疫エフェクター細胞を増殖させることができる。パルス適用したAPCおよび増殖したエフェクター細胞は、組成物の有効量を対象に投与することによって、免疫療法のために用いることができる。
【0162】
以下の実施例は、本発明の組成物および方法を例示するためのものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0163】
(実施例1):DCおよび腫瘍およびDC/腫瘍融合細胞調製物の生成
DCは、正常な供与体から得られたロイコパックコレクションから単離された、接着性単核細胞から生成された。末梢血単核細胞(PBMC)を、Histopaque(登録商標)−1077密度勾配遠心法によって、正常な供与体からのロイコパックから単離した。PBMCを、RPMI 1640完全培地に1×106/mlで懸濁させ、6ウェル組織培養プレートに5mlの一定量で平板培養し、5%CO2の加湿インキュベータ内において37℃で2時間インキュベートした。単球濃縮接着性分画を、GM−CSF(1000U/ml)およびIL−4(1000U/ml)を含有するRPMI 1640完全培地で5日間培養して、未熟なDCを生成した。TNFα(25ηg/ml)の存在下で細胞をさらに48時間培養することによって、DC調製物を成熟させた。
【0164】
腎癌(「RCC」)細胞系RCC786を、RPMI 1640培地で維持した。施設承認のプロトコルに従って、急性骨髄性白血病患者から得た骨髄穿刺液または末梢血採取物から、骨髄性白血病細胞を得た。白血病細胞をフィコール密度遠心分離によって単離し、RPMI 1640完全培地で培養した。下で概説するように、DCおよび腫瘍細胞を、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学による表現型分析にかけた。
【0165】
融合細胞を生成するために、腫瘍細胞を1:1〜1:3(細胞収量に依存する)の比でDC調製物と混合し、無血清RPMI 1640培地で3回洗浄した。最終洗浄の後、細胞ペレットを1mlの50%ポリエチレングリコール(PEG)溶液に再懸濁させた。室温で2分後に、PEG溶液を段々と希釈し、細胞を無血清培地で2回洗浄した。DC−腫瘍融合細胞を、GM−CSFの存在下でRPMI完全培地で培養した。DC/腫瘍融合は、特異なDCおよび腫瘍抗原を発現する細胞のパーセントを免疫組織化学的分析によって測定することによって定量した。
【0166】
免疫組織化学的分析によるDC、腫瘍および融合細胞調製物の分析
DC、腫瘍および融合細胞調製物は、腫瘍関連抗原ならびにDC関連同時刺激および成熟マーカーの存在について評価するために、免疫細胞化学分析にかけた。RCC細胞を、MUC1(PharMingen、San Diego、CA)、サイトケラチン(Boehringer Mannheim、Indianapolis、IN)およびCAM(Becton Dickson、San Jose、CA)に対する、マウスの一次モノクローナル抗体(mAb)による染色にかけた。骨髄性白血病細胞を、CD34、CD117およびMUC1について染色した。下で概説するDCマーカーの非存在が、確認された。(図1Bを参照)。DC調製物を、HLA−DR、CD80、CD83またはCD86(PharMingen)およびアイソタイプをマッチさせた陰性対照のための染色に60分間かけた。(図1Aを参照)。細胞をウマ抗マウスIgG(Vector Laboratories)のビオチン化F(ab’)2断片と45分間インキュベートし、PBSで2度洗浄し、ABC(アビジン−ビオチン複合体)試薬液、および続くAEC(3アミノ−9−エチルカルバゾール)溶液(Vector Laboratories)と30分間インキュベートした。融合細胞調製物では、ABC試薬による腫瘍関連抗原の検出に続いて、ABC−AP(アルカリホスファターゼ)キット(Vector Laboratories)によるDC関連マーカーのための染色を行った。スライドを洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、オリンパスAX70顕微鏡を用いて分析した。融合は、特異なDCおよび腫瘍抗原を同時発現する細胞のパーセントを測定することによって定量した。(図1Cを参照)。
【0167】
フローサイトメトリー分析
上で概説した抗原の発現について評価するために、DC、腫瘍および融合細胞調製物をフローサイトメトリー分析にもかけた。細胞を、指示された一次mAbまたはマッチさせたアイソタイプ対照と、4℃で30分間インキュベートした。結合した一次mAbは、二次親和性精製FITC結合ヤギ抗マウスIgG(Chemicon Intl、Temecula、CA)で検出し、続いて2%パラホルムアルデヒドで固定した。二次元フローサイトメトリーのために、細胞を、腫瘍関連抗原(RCC−MUC1、CAMまたはサイトケラチン、AML−CD34、CD117またはMUC1)に対する抗体、FITC結合二次抗体、およびPEとコンジュゲートさせたDRまたはCD86に対する抗体とインキュベートした。分析は、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いて、FACS Caliburフローサイトメータ(Becton Dickinson)で実施した。
【0168】
(実施例2):DC/腫瘍融合および/または抗CD3/CD28によるT細胞刺激および増殖
DC生成のために用いたロイコパックコレクションから非接着性PBMCを単離し、10U/mlのIL−2の存在下のRPMI完全培地において1×106/mlの密度で培養した。T細胞は、ナイロンウール分離によって単離した。T細胞を、固定化モノクローナル抗体、抗CD3(クローン−UCHT1;Pharmingen)および抗CD28(クローン−CD28.2;Pharmingen;CD3i/CD28i)に曝露させた。24ウェル非組織培養処理プレート(Falcon、Fisher)を抗体(PBSに1μg/ml)の各々でコーティングし、37℃で一晩放置した。T細胞を:1)抗CD3/CD28でコーティングしたプレート上で48時間培養した;2)1:10の融合対T細胞の比率で、融合細胞と5日間共培養した;3)融合細胞、およびその後抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した;または4)抗CD3/CD28と48時間培養し、その後、融合で5日間刺激した。刺激の後、下で概説するように、T細胞を表現型分析にかけた。
【0169】
刺激されたT細胞集団の増殖
刺激の後、T細胞を収集し、培養期間の終わりの18時間前に各ウェルに加えた[3H]−チミジン(1μCi/ウェル;37kBq;NEN−DuPont、Boston、MA)の取込みで増殖を測定した。その後、自動TOMTECハーベスター(Mach II、Hamden CT)を用いてガラス繊維ろ紙(Wallac Oy、Turku、Finland)の上に細胞を収集し、乾燥させ、10mlのScintiVerse(登録商標)(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)を含むBetaPlate試料バッグ(Wallac)中に入れて密封した。細胞に結合した放射活性を、液体シンチレーション計数器(Wallac、1205Betaplate(商標))で計数した。(図2を参照)。データを、刺激指数(「SI」)で表す。SIは、未刺激T細胞集団のバックグラウンド[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)に対する[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)の比率を計算することによって測定した。T細胞は、DC/RCC融合または抗CD3/CD28単独への曝露の後に有意な増殖を示さず、SIはそれぞれ0.9および1.0であった(N=9)。対照的に、DC/RCC融合による刺激とそれに続くCD3/CD28への曝露は、T細胞増殖の劇的で相乗的増加をもたらし、SIは13.2であった(融合単独による刺激と比較してp=0.03)。(図2Aを参照)。留意すべきは、融合細胞による刺激の前の抗CD3/CD28への曝露は、T細胞増殖を誘導しなかった(SI 1.0)。
【0170】
融合細胞、抗CD3/CD28または、融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激によって刺激したT細胞を、ナイーブ(CD45RA)、記憶(CD45RO)、活性化(CD69、IFNγ)または調節(Foxp3、IL−10)T細胞の存在について評価するために、多チャネルフローサイトメトリーによる表現型分析にかけた。細胞を洗浄し、ブロック緩衝剤(10%ヒトIgG;Sigma)とインキュベートし、FITC結合CD4またはCD8、およびPE結合CD45RAまたはCD45ROとインキュベートした。T細胞調製物を、FITC結合CD4、シトクロム結合CD25およびPE結合CD69(PharMingen)について染色した。あるいは、細胞をCD4/CD25について染色し、次に、Cytofix/Cytopermプラス(商標)(ホルムアルデヒドおよびサポニンを含む)(PharMingen)でのインキュベーションによって透過性化した。次に、細胞をPE結合抗ヒトIFNγ、IL−10またはFoxp3(Caltag、Burlingame、CA)、またはマッチさせたアイソタイプ対照抗体とインキュベートし、Perm/Wash(商標)溶液で洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで固定し、FACScan(Becton Dickinson)を用いてフローサイトメトリーによって分析した。
【0171】
DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激の、ナイーブな細胞および記憶細胞の相対的な増殖に対する効果を、その後研究した。(図2Bを参照)。4つの連続した研究で、未刺激T細胞は0.9のCD45RO/CDRA比を示し、それは、総CD4+T細胞集団のそれぞれ21%および24%の平均レベルを表す。DC/RCC融合による刺激はこの比率を変化させず、CD45RAおよびCD45ROの平均レベルはそれぞれ17%および22%であった(比率0.8)。抗CD3/CD28へのT細胞の曝露は、CD45RA細胞の相対的な抑制をもたらし、それはT細胞集団の9%に相当したが、CD45RO+細胞はほとんど不変であった(24%)。
【0172】
対照的に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD45RO+細胞の増殖をもたらし、それはT細胞の40%に相当し、CD45RAレベルはより控え目な枯渇を示した(2.9のCD45RO/CD45RA比)。抗CD3/CD28への最初の曝露と続くDC/RCC融合への曝露は、CD45RO集団の増殖をもたらさなかった(23%の平均レベル)が、CD45RA細胞の平均レベルの低下が観察された。これらのデータは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、記憶エフェクター細胞を特異的に増殖させることを示唆する。
【0173】
調節T細胞と比較した活性化T細胞の刺激
DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激が、調節T細胞と比較して活性化T細胞の増殖をもたらしたかの判定もした。これらの2つのT細胞集団は、CD4およびCD25を同時発現する。活性化T細胞は高レベルのCD69を特徴的に発現するが、Foxp3は、調節T細胞の比較的特異的なマーカーであることが分かった。DC/RCC融合、抗CD3/CD28、またはこれらの剤による逐次的な刺激によって刺激されたT細胞の表現型特性を調べた。(図3を参照)。11回の実験で、DC/RCC融合単独による刺激の後に、CD4+/CD25+の控え目な増加が観察された。総T細胞集団のCD4+/CD25+細胞の平均パーセントは、2.8%から6.4%に増加した。同様に、抗CD3/CD28単独によるT細胞の刺激の後に、CD4+細胞の7.8%は、CD4およびCD25の同時発現を示した。
【0174】
対照的に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後にCD4+/CD25+細胞の平均パーセントの著しい増加が観察され、総T細胞集団の25.3%のレベルに到達した(未刺激T細胞、融合によって刺激されたT細胞および抗CD3/CD28単独によって刺激されたT細胞と比較してそれぞれp=0.001、0.02および0.002)。抗CD3/CD28とそれに続く融合細胞による刺激がわずか10%のCD4+/CD25+発現細胞(融合とそれに続く抗CD3/CD28による刺激と比較してp=0.008)をもたらしたという点で、曝露の順番が重要であった。
【0175】
CD4+/CD25+細胞の性質をさらに明確にするために、CD4/CD25集団が活性化または抑制のマーカーを発現するかどうかを判定するために、多チャネルフローサイトメトリー分析を実施した。(図3を参照)。CD4+/CD25+T細胞をFACSゲーティングによって単離し、CD69およびFoxp3の発現を測定した。結果を、全CD4/CD25+T細胞集団に対する活性化T細胞または調節T細胞のパーセントとして提示した。DC/RCC融合単独または抗CD3/CD28単独によるT細胞の刺激は、CD4+/CD25+/CD69+細胞で定義される活性化T細胞のパーセントのそれぞれ5倍および6倍の増加をもたらした。注目すべきことに、融合細胞とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に、CD4+/CD25+/CD69+細胞のパーセントの42倍の増加が観察され、それによって、抗CD3/CD28単独(6倍の増加、p=0.01)、融合細胞単独(5倍の増加、p=0.05)、または抗CD3/CD28増殖とそれに続く融合による刺激の後(9倍の増加、p=0.02)と比較して、統計的に有意な増加が実証された。
【0176】
同様に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28の複合刺激の、CD4、CD25およびFOXP3を同時発現する細胞によって定義される調節T細胞の増殖に対する効果も調べた。(図3を参照)。9回の実験で、DC/腫瘍融合ワクチンによる刺激とそれに続く抗CD3/CD28による増殖の組合せは、調節T細胞の15倍の増殖をもたらし、それは、融合単独(1.9倍、p=0.008)、抗CD3/CD28単独(1.7倍、p=0.004)または抗CD3/CD28および融合による逐次的な刺激(3.4倍、p=0.03)による刺激の後に観察されたものよりも統計学的に大きかった。これらのデータは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、DC/RCC単独または抗CD3/CD28単独で観察されたものをはるかに超えて、T細胞増殖および活性化T細胞の増殖を相乗的に誘導することを示唆する。さらに、T細胞をDC/RCC融合で最初に刺激したときにこの結果が特異的に観察され、抗CD3/CD28複合体の連結によって生成される抗原非依存性増殖の前に、DC媒介抗原特異的刺激が重要であることが示唆された。留意すべきは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による複合刺激は、より低い程度ではあるが調節T細胞のパーセントも増加させた。
【0177】
MUC1四量体への結合による腫瘍特異的免疫応答およびグランザイムB発現による細胞溶解能力の評価
抗原特異的MUC1+CD8+T細胞を、それぞれMUC1特異的エピトープM1.2(MUC112〜20)LLLLTVLTV(配列番号1)(Beckman Coulter、Fullerton、CA)に結合している4つのHLA MHCクラスI分子で構成される、フィコエリトリン(PE)標識HLA−A*0201+iTAg(商標)MHCクラスIヒト四量体複合体を用いて同定した。対照PE標識四量体を、平行して用いた。抗CD3/CD28、融合、または抗CD3/CD28および融合への逐次的な曝露によって刺激したT細胞を、MUC1または対照四量体とインキュベートし、次に、FITC結合CD8抗体で染色した。細胞を洗浄し、二次元FACS分析によって分析した。刺激されたT細胞集団の細胞溶解能力を、FITC結合CD8およびPE結合グランザイムBによる染色によって評価した。合計3×105個の事象を、最終分析のために収集した。同様に、非接着性未刺激細胞を、平行して分析した。
【0178】
刺激されたT細胞集団の機能的特性
T細胞集団の機能的特性をさらに特徴づけるために、融合細胞、抗CD3/CD28またはそれらの組合せによって刺激されたT細胞による、Th−1およびTh−2サイトカインの細胞内発現を特定した。8回の連続した検査で、IFNγの細胞内発現が、未刺激CD4+T細胞集団の0.5%で観察された。抗CD3/CD28またはDC/RCC融合単独による刺激の後、IFNγ発現T細胞の平均パーセントは、それぞれ1.7%および1.8%に上昇した。対照的に、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、IFNγ発現細胞の平均レベルの統計的に有意な増加をもたらし(それぞれ抗CD3/CD28または融合による刺激と比較して4.7%、p=0.05)、それは、未刺激T細胞と比較して10.5倍の増加に相当する(p=0.008)(図16)。抗CD3/CD28単独によるT細胞の刺激は、IL−4の細胞内発現を示すCD4+T細胞のパーセントの、1.0%から2.4%への増加をもたらした。対照的に、DC/RCC融合単独への曝露またはDC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、IL−4発現の増加をもたらさなかった(それぞれ0.9%および0.6%)。IL−10の平均細胞内発現は、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による刺激の後、0.9から3.4%に増加した。比較では、DC/RCC融合単独による刺激の後、IL−10発現のいかなる増加も観察されなかった。これらのデータは、DC/RCC融合による逐次的な刺激が、IFNγを発現する活性化エフェクター細胞の増殖を誘導し、IL−10を発現するT細胞の増加は比較的より控え目であることを示唆する。
【0179】
細胞溶解能力を有する腫瘍反応性T細胞の増殖
DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、腫瘍反応性リンパ球の選択的な増殖をもたらしたかどうかを判断するために、腫瘍関連抗原、MUC1に特異的なT細胞が増殖後に増加したかどうかを調べた(図17)。この分析のために、DCおよびT細胞を、HLA−A2.1供与体から単離した。抗CD3/CD28単独による刺激の後に、CD8集団のわずか0.93%がMUC1四量体に結合した。対照的に、DC/RCC融合との共培養は、MUC1四量体+細胞の増加(2.3%)をもたらした。留意すべきは、DC/RCC融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、MUC1四量体+細胞の劇的な増加をもたらした(17.3%、融合または抗CD3/CD28単独による刺激と比較してそれぞれp=0.02および0.004)。対照的に、抗CD3/CD28による非特異的刺激とそれに続く融合との共培養は、MUC1四量体+細胞の増殖を誘導しなかった(0.19%)。これらのデータは、DC/RCCによる抗原特異的刺激剤への最初の曝露が、抗CD3/CD28を用いる腫瘍反応性T細胞の以降の増殖のために重要であったことを示唆する。
【0180】
その後、DC/RCC融合および抗CD3/CD28によって刺激したT細胞が、グランザイムBの発現によって明示される細胞溶解能力を実証するかどうかを調べた。グランザイムの発現は、パーフォリン媒介性の標的細胞の殺傷を示す活性細胞溶解性CD8+T細胞で上方制御される。DC/RCC融合による刺激は、グランザイムを発現するCD8+T細胞の5.6倍の増加をもたらした(図18)。抗CD3/CD28への曝露は、グランザイム+細胞のわずか2倍の増加をもたらした。しかし、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、グランザイム+細胞の21倍の増殖を誘導した。抗CD3/CD28への一次曝露とそれに続くDC/RCC融合への曝露は、抗CD3/CD28単独による刺激の後に観察されたものと比較して、グランザイム+細胞のさらなる増殖をもたらさなかった。これらのデータは、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、機能的に強力な細胞傷害性Tリンパ球の増殖において特異的に有効であることを示唆する。
【0181】
DC/AML融合および抗CD3/CD28による刺激
その後、患者由来の急性骨髄性白血病試料を用いたDC/腫瘍融合、および抗CD3/CD28による逐次的な刺激を受けたT細胞の表現型特性を調べた。高レベルの循環疾患を有する患者の末梢血または骨髄から骨髄性白血病細胞を得、正常なロイコパックコレクションから生成されたDCと融合させた。DC/AML融合は、DC(CD86)および骨髄性白血病に特異な抗原(CD117−ckitリガンド、CD34および/またはMUC1)を同時発現した細胞のパーセントの測定に従って定量化した(図19)。平均融合効率は、総細胞集団の28%であった。DC/AML融合は自己由来T細胞の控え目な増殖を誘導し、SIは3.3で、記憶エフェクター細胞(CD45RO+)は総T細胞集団の10%を構成した。DC/AML融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、T細胞増殖の統計的に有意な上昇(SI8.2)をもたらし、その39%はCD45ROを発現した(図20)。同様に、DC/AML融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に、CD4+/CD25+細胞の上昇が観察された(9.3%に対してDC/AML融合単独による刺激の後に2.7%)。さらに、融合細胞との共培養に続いて抗CD3/CD28に曝露させたとき、増加したパーセントのCD4+/CD25+細胞がIFNγを発現した。Foxp3+細胞のパーセントの上昇も観察されたが、これは統計的有意性を満たさなかった。DC/AML融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD8+集団の13%でグランザイムB発現を誘導した。対照的に、融合細胞単独、または抗CD3/CD28とそれに続く融合による刺激は、CD8+細胞の2.5%および2.7%でグランザイムB発現をもたらした。RCCモデルで観察された結果に類似して、これらのデータは、DC/AML融合による刺激とそれに続く抗CD3/CD28への曝露が、細胞溶解能力を有する活性化T細胞の有意な増加をもたらしたことを実証する。
【0182】
(実施例3):乳癌との樹状細胞の融合
単球由来のDCの生成
施設によって承認されたプロトコルに従って、正常な供与体からのロイコパック、および乳癌患者から収集された末梢静脈血から、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。試料をHistopaque(登録商標)−1077(Sigma)密度勾配遠心法にかけ、5%CO2加湿インキュベータ内の組織培養フラスコ(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)中の、2mM L−グルタミン(Mediatech、Herndon、VA)を含有し、熱不活性化10%ヒトAB雄血清(Sigma、St.Louis、MO)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Mediatech)を添加したRPMI 1640培地(完全培地)に、37℃で2時間平板培養した。単球濃縮接着性分画を、GM−CSF(1000U/ml)(Berlex、Wayne/Montville、NJ)およびIL−4(1000U/ml)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を含有する完全培地で5日間培養して、未熟なDCを生成した。DC調製物の分画を、TNFα(25ηg/ml)(R&D Systems)、またはTNFα(25ηg/ml)、IL−1β(10ηg/ml)、IL−6(1000U/ml)(R&D Systems)およびPGE2(1μg/ml)(Calbiochem−San Diego、CA)からなるサイトカインの組合せの存在下でさらなる48時間細胞を培養することによって、さらに成熟させた。成熟は、48〜96時間のTNFαへの曝露によって効果的に誘導され、CD80およびCD83の発現の増加がもたらされた。(図4Aを参照)。15回の連続した実験で、未熟のおよび成熟したDC調製物は、同時刺激分子、CD86を強く発現し(それぞれ75%および84%)、CD14の低いレベルの発現を示した。(図4Bを参照)。しかし、成熟したDCは、CD80(20%対9%、p=0.05)およびCD83(31%対7%、p=0.0003)の平均発現の統計的に有意な増加を示した。抗原提示細胞としてのそれらの機能的能力の尺度として、DC調製物を、同種異系T細胞増殖を刺激するそれらの能力について調べた。連続した研究で、未熟なDCとの比較で、成熟DCは同種異系T細胞の高いレベルの増殖を刺激した。
【0183】
T細胞の単離および培養
T細胞濃縮カラム(R&D Systems)またはナイロンウールカラム(Polysciences、Warrington、PA)を用いて、非接着性PBMC分画からT細胞を単離した。両方の方法によるT細胞の純度は、CD3表面発現のFACS分析による測定で、90%を超えた。T細胞は、第三者供与体に由来する場合は同種異系に、DC融合パートナーが由来するのと同じ供与体に由来する場合は自己由来に分類された。
【0184】
腫瘍細胞の単離および培養
施設によって承認されたプロトコルに従って、一次乳癌細胞を悪性の滲出液または切除された腫瘍病巣から得た。ヒト乳癌細胞系MCF−7およびZR75−1を、ATCC(Manassas、VA)から購入した。すべての腫瘍細胞系を、DMEM(高グルコース)、または2mMのL−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび10%熱不活性化ウシ胎児血清(HyClone、Logan、UT)を添加したRPMI 1640で維持した。
【0185】
DC/乳癌融合細胞の調製
腫瘍細胞を1:3〜1:10(細胞収量に依存する)の比で未熟もしくは成熟DC調製物と混合し、前もって加温した無血清RPMI 1640培地で3回洗浄した。細胞ペレットを、50%ポリエチレングリコール(PEG)溶液(分子量:1450)/DMSO溶液(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)に再懸濁した。室温で3分後に、前もって加温した無血清RPMI培地でPEG溶液を段々と希釈し、無血清培地で2回洗浄した。融合調製物を、GM−CSF(500IU/ml)を含む完全培地で、5%CO2において37℃で5〜7日間培養した。
【0186】
フローサイトメトリーによるDC、乳癌およびDC/乳癌融合調製物の特性評価
未熟および成熟DCで生成された融合細胞集団の表現型特性を、調べた。未熟および成熟DC集団を、PEGとの共培養によって、患者由来の一次乳癌細胞またはMCF−7ヒト乳癌細胞系と融合させた。DCおよび乳癌細胞を、HLA−DR、CD11c、CD14、CD80、CD86、CD83、CD40、CD54、MUC−1、サイトケラチン、およびマッチさせたアイソタイプ対照(Pharmingen−San Diego、CA)に対する一次マウス抗ヒトモノクローナル抗体とインキュベートし、洗浄し、FITC結合ヤギ抗マウスIgG1(Chemicon International−Temecula、CA)と培養した。細胞を2%パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、FACScan(Becton Dickinson、San Jose、CA)およびCellQuest Proソフトウェア(登録商標)(Becton Dickinson)を用いて、フローサイトメトリー分析にかけた。DC/乳癌融合調製物を、特異なDC(CD11c−Cychrome)および腫瘍抗原(MUC−1またはサイトケラチン−FITC)を同時発現した細胞のパーセントを定量化するために、二重染色にかけた。融合細胞は、特異な腫瘍(MUC−1および/またはサイトケラチン)およびDC(CD11c)抗原を同時発現した細胞のパーセントを測定することによって定量化した。
【0187】
約1.2×104個の細胞を遠心させてスライド(Cytospin(登録商標)、Shandon Lipshaw、Pittsburgh、PA)の上に置き、乾燥させ、アセトンで固定した。スライドを、一次マウス抗ヒトmAb MUC−1およびサイトケラチンおよびアイソタイプをマッチさせた陰性対照と室温で1時間インキュベートし、洗浄し、ウマ抗マウスIgG(Vector Laboratories、Burlingame、CA)の1:100のビオチン化F(ab’)2断片とインキュベートし、洗浄し、ABC(アビジン−ビオチン複合体)試薬液(Vector Laboratories)とそれに続くAEC(3アミノ−9−エチルカルバゾール)溶液(Vector Laboratories)と30分間インキュベートした。次に、HLA−DR、CD86またはCD83のために、細胞をABC−AP(アルカリホスファターゼ)キット(Vector Laboratories)で染色した。スライドを洗浄し、2%パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定し、オリンパスAX70顕微鏡(Melville、NY)を用いて分析した。
【0188】
融合細胞をFACSゲーティングにより単離し、CCR7、CD80、CD86またはCD83に対するPE結合マウス抗ヒト抗体で染色した。これらのマーカーを発現する滲出細胞のパーセントは、多チャネルフローサイトメトリー分析によって測定した。あるいは、融合細胞の一定分量にGolgiStop(1μg/ml;Pharmingen)をパルス適用し、Cytofix/Cytopermプラス(商標)(ホルムアルデヒドおよびサポニンを含む)(Pharmingen)中でのインキュベーションによって透過性にし、Perm/Wash(商標)溶液(Pharmingen)で洗浄した。次に、細胞をPE結合抗ヒトIL−10またはIL−12(Caltag Laboratories−Burlingame、CA)、またはマッチさせたアイソタイプ対照抗体と30分間インキュベートし、Perm/Wash(商標)溶液で2回洗浄し、2%パラホルムアルデヒド(Sigma)で固定した。分析のために、最小限で1×104個の事象を得た。
【0189】
12回の連続した検査で、腫瘍細胞の成熟(11%±1.6SEM)および未熟(7%±1.2SEM)DCとの融合の後に、同等の平均融合効率が観察された。融合細胞は、DCおよび腫瘍由来の抗原を同時発現した細胞のFACSゲーティングによって単離した。これらの研究では、未熟DC/乳癌(89%)および成熟DC/乳癌(82%)融合集団の両方で、CD86の発現が一様に観察された。(図5A、Bを参照)。成熟マーカーCD83は、未熟および成熟融合細胞集団のそれぞれ46%および51%で見られた(p=0.5、NS)。(図5Aおよび5Bを参照)。免疫細胞化学染色は、未熟DC/腫瘍融合による、DR、CD86およびCD83の顕著な発現を示した。(図5C〜5Fを参照)。これらの試験は、DCおよび乳癌細胞の融合が、成熟および活性化と一貫した表現型特性をもたらすこと、および、DC分化の阻害に関連しなかったことを証明する。
【0190】
未熟および成熟DC/腫瘍融合によるIL−12およびIL−10の発現
抗原提示細胞としてのそれらの効力およびTH1応答を刺激するそれらの能力の尺度として、融合細胞集団によるIL−12およびIL−10の発現を調べた。(図6Aおよび6Bを参照)。融合細胞は、DCおよび腫瘍由来の抗原を同時発現した細胞のFACSゲーティングによって単離した。成熟および未熟DCならびに乳癌で生成された融合細胞を、12回の別々の実験で比較した。IL−12およびIL−10を発現する融合細胞の平均パーセントは、融合細胞集団の間で異ならなかった。IL−12は、未熟および成熟DC/乳癌融合のそれぞれ約40%(±6.7SEM)および49%(±6.3SEM)(p=0.35、NS)で、IL−10は、それぞれ約36.3%(±6.4SEM)および40%(±6.4SEM;n=11)(p=NS)で発現された。
【0191】
未熟および成熟DC/腫瘍融合によるCCR7の発現
ケモカイン受容体CCR7は、流入領域リンパ節内のT細胞通行部位に細胞移動を誘導し、成熟および活性化を受けるDCによって特徴的に発現される。それらの移動能力の尺度として、未熟および成熟DCで生成された融合について、CCR7の発現を測定した。(図6Cを参照)。CCR7は未熟および成熟融合集団の上で顕著に発現され、腫瘍−DC融合が、成熟し、活性化された表現型の発現をもたらしたことが示唆される。12回の実験では、平均CCR7発現が、未熟および成熟DC/乳癌融合のそれぞれ33%(±9SEM)および38%(±7.3SEM;n=11)で観察された。
【0192】
(実施例4):DC、腫瘍およびDC/乳癌融合による同種異系T細胞増殖の刺激
同種異系T細胞の増殖を刺激するそれらの能力を評価するために、未熟および成熟DCならびにDC/乳癌融合細胞調製物を、96ウェルU底培養プレート(Costar、Cambridge、MA)内で、同種異系の正常な供与体由来のT細胞と1:10、1:30、1:100、1:300および1:1000の比率で、37℃および5%CO2で5日間共培養した。T細胞の増殖を、培養期間の終わりの18時間前に各ウェルに加えた[3H]−チミジン(1μCi/ウェル;37kBq;NEN−DuPont、Boston、MA)の取込みで測定した。その後、自動TOMTECハーベスター(Mach II、Hamden CT)を用いてガラス繊維ろ紙(Wallac Oy、Turku、Finland)の上に細胞を収集し、乾燥させ、10mlのScintiVerse(登録商標)(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)を含むBetaPlate試料バッグ(Wallac)中に入れて密封した。細胞に結合した放射活性を、液体シンチレーション計数器(Wallac、1205Betaplate(商標))で計数した。データを、刺激指数(SI)で表す。SIは、未刺激T細胞集団のバックグラウンド[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)に対する[3H]−チミジン取込み(トリプリケートの平均値)の比率を計算することによって測定した。
【0193】
未熟および成熟DC/乳癌融合によって刺激されたT細胞によるサイトカイン発現
未熟および成熟DC/乳癌融合と培養されたT細胞により分泌されたサイトカインのプロフィールを、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)キット(Becton Dickinson)を用いて測定した。未刺激T細胞、または未融合のDCおよび乳癌に曝露させた細胞からの上清は、対照の役目を果たした。上清は細胞回収の前に収集し、−80℃で凍結させた。IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IFNγ、TNFα、IL−12、IL−6、IL−1βおよびIL−8の濃度は、標準のプロトコルに従って炎症性CBAキットを用いて定量した。簡潔に、キットは各サイトカインに特異的な捕捉抗体でプレコートされている、異なる蛍光強度(FL−3)を有する6つのミクロビーズ集団の混合物を提供した。培養上清または提供された標準化サイトカイン調製物を、予備混合されたミクロビーズに加え、次に、二次PE結合抗体と培養した。個々のサイトカイン濃度をそれらの蛍光強度(FL−2)によって示し、次に、CellquestおよびCBAソフトウェア(BD Pharmingen)の標準参照曲線を用いて計算した。アッセイ間の再現性は、3回の別々の実験で3つの異なるレベルのヒト標準の2つの反復試料を用いて評価した。
【0194】
未熟DC/腫瘍融合集団と比較した成熟DC/腫瘍融合集団の機能的能力は、T細胞増殖およびサイトカイン生成を刺激するそれらの能力を比較することによって分析した。融合細胞集団を自己由来のT細胞と5日間共培養し、増殖は、終夜パルスの後のトリチウムチミジンの取込みを測定することによって測定した。(図6Dを参照)。増殖は、T細胞刺激指数(SI)(刺激されたT細胞/未刺激T細胞)で測定した。両未熟および成熟DC/乳癌融合は自己由来T細胞の増殖を刺激し、SIはそれぞれ3.3(±1.4SEM;n=6)および3.5(±1.4SEM;n=6)であった。刺激されたT細胞集団のサイトカイン分泌は、BDサイトメトリックアレイビーズシステム(BD Biosciences)を用いて定量した。(図7を参照)。未熟および成熟DC/乳癌融合による刺激の後のIFNγの平均レベルは、それぞれ2188および2252pg/mlであった。これらのレベルは、未融合の自己由来DCと培養されたT細胞で見られるもの(685pg/ml)よりも、有意に高かった。融合細胞調製物は、上清中のIL−12、IL−4、IL−10、IL−2およびTNFαの生成の統計的に有意な増加を誘導しなかった。
【0195】
未熟および成熟DC/乳癌融合による刺激の後のCTL応答
未熟および成熟DCで生成したDC/乳癌融合細胞調製物を、1:10の比率で自己由来T細胞と7〜10日間共培養した。標準の5時間51Cr放出アッセイで、T細胞エフェクターに自己由来であるDCで生成したDC/乳癌融合を標的細胞として用いた。標的細胞(2×104個の細胞/ウェル)を、51クロム(NEN−DuPont)と37℃で1時間インキュベートし、続いて反復洗浄をした。51Cr放出は、エフェクターおよび標的細胞集団の5時間の共培養の後に定量した。細胞毒性パーセントは、以下の通りに標準のアッセイによるトリプリケートの平均値を使用して計算した:比細胞毒性百分率=[(試料カウント−自然発生カウント)/(最大カウント−自然発生カウント)]×100。自然発生放出は、最大51Cr取込みの25%未満であった。
【0196】
腫瘍特異的CTL応答およびMUC−1特異的応答の刺激。
【0197】
自己由来の腫瘍または半自己由来の融合標的の溶解が証明するように、両未熟および成熟DC/腫瘍集団は、かなりのレベルの標的特異的殺滅を生成することができた。10回の別々の実験では、CTL活性は、融合集団の間で異ならなかった。30:1のエフェクター:T細胞比率のための平均CTL溶解は、成熟および未熟DC/乳癌融合で刺激されたT細胞では27%であった。(図8Aを参照)。特異的腫瘍抗原に対して誘導されるT細胞応答、DC/乳癌融合によるHLA−A2.1+T細胞刺激を刺激する融合ワクチンの能力を評価するために、認められたMUC1を評価した。MUC−1四量体に結合しているCD8+T細胞の選択的な増殖が、融合細胞刺激の後に観察された。(図8Bを参照)。要約すると、DC/乳癌融合は、同時刺激分子、刺激性サイトカイン、および、それらがT活性化部位に移動するのを可能にするケモカイン受容体の強い発現を伴う、活性化表現型を実証する。DC/乳癌融合は、既定の腫瘍抗原を標的にするT細胞の増殖を含む、抗腫瘍CTL応答を刺激する。
【0198】
四量体染色
抗原特異的MUC1+CD8+T細胞は、それぞれMUC1特異的エピトープM1.2(MUC12〜20)LLLLTVLTV(配列番号1)(Beckman Coulter、Fullerton、CA)に結合されている4つのHLA MHCクラスI分子で構成される、フィコエリトリン(PE)標識HLA−A*0201+iTAg(商標)MHCクラスIヒト四量体複合体を用いて同定された。対照PE標識四量体を、平行して用いた。非接着性細胞をDC/乳癌融合細胞と5日間共培養し、回収し、MUC1または対照四量体とインキュベートし、次に、FITC結合CD8抗体で染色した。細胞を洗浄し、二次元FACS分析によって分析した。合計3×105個の事象を、最終分析のために収集した。同様に、非接着性未刺激細胞を、平行して分析した。
【0199】
DC/乳癌融合による刺激への調節T細胞および活性化T細胞の応答の分析
自己由来および同種異系のT細胞調製物を、成熟DC/乳癌融合と10:1の比率で5日間共培養した。細胞調製物を、FITC結合抗CD4、シトクロム結合抗CD25、およびPE結合抗CD69、抗GITRまたは抗CTLA−4とインキュベートした。あるいは、細胞を透過性にし、IFNγ、IL−10、IL−4またはFOXP3に対するPE結合抗体と培養した。次に、細胞を多チャネルフローサイトメトリーによって分析した。一部の検査では、CD4+T細胞を磁気ミクロビーズ単離(Miltenyi Biotec)によって単離し、生じた集団をCD25抗体および指示されたマーカーによる2つの染色方法にかけた。
【0200】
活性化T細胞応答を引き出す能力を有する強力な抗原提示細胞としてDC/乳癌融合を特徴付けした後、ワクチン応答を抑制するであろう阻害要素も刺激する融合細胞の能力を調べた。具体的には、DC/腫瘍融合が、活性化T細胞と比較して調節T細胞の増殖を誘導するかどうかを調べた。活性化記憶エフェクター細胞および調節T細胞の両方はCD4およびCD25を同時発現するが、調節T細胞は、それらの比較的高いレベルのCD25発現、およびGITR、CTLA−4およびFoxp3などの他のマーカーの存在によって識別することができる。対照的に、CD69は、活性T細胞によって特徴的に発現される。成熟DCをヒト乳癌細胞系(MCF7またはZR75−1)に融合し、自己由来または同種異系のT細胞と5日間共培養した。CD4/CD25+細胞をフローサイトメトリー分析によって定量化し、細胞表面マーカーの発現およびサイトカインプロフィールに関してさらに特徴付けした。CD4+磁気ビーズを用いて、この集団からCD4+T細胞を積極的に選択した。生じたCD4+T細胞のFACS分析は、97%を超える純度を証明した。
【0201】
一連の13回の別々の実験では、DC/乳癌融合による刺激は、CD4+CD25+T細胞のパーセントの増加をもたらさなかった(未刺激T細胞6.9%±1.1SEMと比較して7%±1.3SEM)。(図9Aを参照)。しかし、融合細胞および自己由来T細胞の共培養は、CD69を発現したCD4+CD25+T細胞の6.3倍の増加をもたらし(4.7%−未刺激T細胞;29.5−融合刺激細胞、N=5;p=0.01)、これは活性化表現型と一貫した。成熟DC/乳癌融合による刺激は、GITRおよびCTLA−4を発現したCD4+CD25+T細胞の、それぞれ9倍および5.2倍の増加ももたらした。これらの知見は、DC/乳癌融合によって、活性化および阻害性の両T細胞集団が増殖することを示唆する。(図9Bを参照)。留意すべきは、同種異系T細胞の融合刺激は、CD4+25+69+T細胞で類似した増加(5倍)をもたらしたが、GITR(25倍)およびCTLA−4(15倍)陽性集団の有意により大きな増殖をもたらした。(図9Cを参照)。
【0202】
細胞内フローサイトメトリー分析を用いて、DC/乳癌融合による刺激の後の、CD4 +CD25+T細胞集団でのサイトカイン発現のプロフィールも調べた。14回の連続した研究では、融合細胞刺激の前および後の、IFNγを発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセントは、それぞれ40%(±6.9SEM)および68%(±6.1SEM)であった(p=0.005)。(図10Aおよび10Bを参照)。同様に、阻害性サイトカインIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞のパーセントは(図10Bを参照)は、20%(±4.9SEM)から59%(±8.4SEM)に上昇した(p=0.0002)。
【0203】
最後に、調節T細胞に特異的であると考えられるマーカー、Foxp3の細胞内発現に及ぼす融合細胞刺激の影響を評価した。Foxp3発現は、未刺激および融合刺激のCD4+CD25+T細胞集団のそれぞれ26.5%(±5.4SEM;n=9)から63%(±10.6SEM;n=9)(p=0.01)に増加した。(図10Bを参照)。このように、融合細胞は免疫賦活性および免疫抑制の両要素の増殖を誘導し、調節T細胞が持続的で有効な抗腫瘍免疫の発達を阻止することができる複合応答をもたらす。
【0204】
(実施例5):自己由来T細胞の融合媒介刺激に対する外来性のIL−12、IL−18およびCpG ODN(TLR9アゴニスト)の影響
二次刺激分子の添加の後に活性化T細胞の発生率の上昇があるかどうか判断するために、DC/乳癌融合および自己由来T細胞の共培養への、IL−12、IL−18およびTLRアゴニスト、イミダゾキノロン(TLR7/8)およびCPG−ODN(TLR9)の添加を調べた。DC/乳癌融合を、IL−12(10ηg/ml;R&D Systems)、IL−18(10ηg/ml)またはCPG ODN(10μg/ml、Coley Pharmaceutical Group、Ottawa、Canada)の存在下または非存在下で、自己由来のT細胞と5〜7日間共培養した。CpG ODN2395は、TスペーサーによってGCに富む回文配列5’−CGGCGCGCGCCG−3’(配列番号3)に連結された、六量体CpGモチーフ、5’−TCGTCGTTTT−3’(配列番号2)からなった。各実験で、刺激配列のない対照CpG ODNを同時に試験した。調節T細胞および活性化T細胞の集団を、上で概説される通りに定量した。
【0205】
DC成熟およびT細胞集団の融合媒介刺激に及ぼすTLRアゴニストの影響
T細胞応答を活性化表現型に傾かせ、調節T細胞の影響を制限しようとして、ワクチン応答に及ぼすTLR9アゴニスト、CPG ODNの影響、先天性免疫応答の要素を活性化し、ワクチン効力を増強することが示されたTLRアゴニストを試験した。具体的には、CD4/CD25+細胞でIL−10およびFoxp3と比較したIFNγの発現を定量化することによって、活性化T細胞および阻害性T細胞の集団の融合媒介刺激を調節するCPG ODNの能力を調べた。さらに、DC/乳癌融合と共培養したT細胞の表現型プロフィールに及ぼす刺激性サイトカインIL−12およびIL−18の添加の影響も評価した。CpG ODNおよびIL−18の存在下で、融合刺激CD4+CD25+T細胞においてそれぞれ2.5倍の増加が見られた(p=0.0004およびp=0.006)。対照的に、IL−12をT細胞およびDC/乳癌融合の共培養に加えた場合、CD4/CD25+細胞の有意な増加は見られなかった。(図11Aを参照)。
【0206】
CPG、IL−12またはIL−18の添加は、Foxp3発現(それぞれp=0.024、p=0.042、p=0.016)によって明示されるように、調節T細胞の表現型特性を明示するCD4/CD25+のパーセントを低下させた。これらの知見と一致して、CD4+CD25+T細胞でのIL−10の発現は、DC/乳癌融合単独で刺激したT細胞(59.3%±8.4、n=14)と比較して、CpG ODN(19.8%±4.1、n=7;p=0.002)およびIL−18(18.3%±5.1、n=4;p=0.0004)の添加をパルス適用した共培養で有意に低下した。(図11Bを参照)。留意すべきは、IFNγおよびIL−10を発現するCD4+CD25+T細胞の平均パーセントの枯渇が、融合および自己由来T細胞の共培養へのCpGおよびIL−18の添加の後にも見られた。(図11Cを参照)。これらの結果は、IL−12またはTLRアゴニストの添加が、免疫抑制調節細胞の存在を制限することによって、ワクチン効力を潜在的に高めることを証明する。
【0207】
(実施例6):DC/乳癌融合細胞応答に及ぼすT細胞の抗CD3/CD28刺激の影響
ワクチン応答を免疫活性化の方に傾かせる別の戦略として、DC/乳癌融合ワクチンに対する応答に及ぼす、CD3およびCD28の抗体媒介連結の影響を調べた。抗CD3/CD28は、周囲の免疫環境の性質によって活性化T細胞または阻害性T細胞の増殖をもたらす、抗原非依存性刺激を提供する。したがって、DC/乳癌融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、融合ワクチンによって最初に活性化されたT細胞の応答を増幅するであろうと仮定された。
【0208】
T細胞を、固定化モノクローナル抗体、抗CD3(クローン−UCHT1;Pharmingen)および抗CD28(クローン−CD28.2;Pharmingen;CD3i/CD28i)に曝露させることによって、48時間活性化させた。24ウェル非組織培養処理プレート(Falcon、Fisher)を0.5ml/ウェルの各抗体(PBSに1μg/ml)でコーティングし、4℃で一晩放置した。プレートを1%BSAでブロックし、T細胞調製物をウェルにつき2×106個の細胞密度でそれらの上に加えた。T細胞を、抗CD3/CD28(48時間)もしくはDC/乳癌融合単独(5〜7日間)、融合とそれに続く抗CD3/CD28への曝露、または、抗CD3/CD28とそれに続く融合細胞によって刺激した。T細胞を収集し、トリチウムチミジンの取込みで増殖を測定した。MUC1四量体に結合するT細胞を定量した。調節(Foxp3)および活性化(CD69、IFNγ)表現型と一貫したマーカーを発現するT細胞のパーセントを、定量した。
【0209】
一連の検査で、制限されたT細胞の増殖が、CD3/CD28単独(SI1.6)またはDC/乳癌融合(SI3.1)への曝露の後に観察された。(図12Aを参照)。対照的に、T細胞を先ずDC/乳癌融合で刺激し、次に抗CD3/CD28で増殖させたときに、T細胞増殖の顕著な増加が認められた(SI25.9)。留意すべきは、T細胞を抗CD3/CD28に最初に曝露させ、次にDC/乳癌融合と培養したときには、増殖の増加は観察されなかった(SI1.5)。DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、腫瘍反応性T細胞の特異的増殖をもたらした。3つの一連の研究で、融合細胞による刺激の後の抗CD3/CD28への曝露は、MUC1四量体結合細胞の13.7倍の平均増加率を誘導した。(図12Bを参照)。対照的に、MUC1四量体+細胞のパーセントは、抗CD3/CD28単独による刺激の後、ベースラインレベルにとどまった。
【0210】
その後、増殖集団のT細胞表現型を評価した。CD4/CD25を発現するT細胞のパーセントは、抗CD3/CD28(11%)または融合単独(10%)によって刺激したT細胞と比較して、DC/RCC融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に著しく増加した(28%)。(図12Cを参照)。抗CD3/CD28の添加は、CD4、CD25およびCD69を同時発現した細胞のパーセントの約5倍の増加をもたらし、これは、活性化表現型と一貫した(図12D)。同様に、それぞれ融合または抗CD3/CD28と比較して、融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激で、IFNγを発現した細胞のパーセントのそれぞれ4倍および3倍の増加が観察された。対照的に、Foxp3を発現したCD4/CD25+T細胞の増加が明らかにするように、調節T細胞の約5倍の増加も観察された。(図12Dを参照)。
【0211】
これらのデータは、融合媒介刺激とそれに続く抗CD3/CD28増殖が、活性化T細胞および調節T細胞の両方の上昇したレベルをもたらしたことを示唆する。
【0212】
(実施例7):IL−12と併用した樹状細胞/乳癌融合による転移性乳癌を有する患者のワクチン接種
樹状細胞(DC)/乳癌融合によるワクチン接種の安全性、免疫応答および臨床効果を検査するために、転移性乳癌を有する患者に、融合をIL−12と併用投与する。DC/乳癌融合細胞は、DC媒介同時刺激との関連で、広範囲の腫瘍関連抗原を提示する。融合細胞は、自己由来の腫瘍細胞を溶解する能力を有する、腫瘍特異的免疫を刺激する。臨床試験では、融合細胞によるワクチン接種は、良好な耐容性を示し、患者の大多数で免疫応答を誘導し、患者のサブセットで疾患退行をもたらす。IL−12と併用したワクチンの投与は、T細胞活性化を促進することによってさらにワクチン応答を高めると仮定された。
【0213】
抗原提示細胞としてのそれらの表現型特性に関するDC/乳癌融合の性質、および抗腫瘍免疫を刺激するそれらの能力を調べた。DC/乳癌融合は、同時刺激、接着および成熟マーカー、ならびに刺激性サイトカイン、IL−12およびIFNγを強く発現した。さらに、融合細胞は、流入領域リンパ節でのT細胞通行部位への細胞の移動のために必要な、CCR7を発現した。これらの知見と一致して、未熟および成熟DCで生成された融合は、自己由来の腫瘍標的のCTL媒介溶解を強力に刺激した。
【0214】
その後、活性化T細胞および調節T細胞の存在に関して、DC/乳癌融合に対するT細胞の応答の性質を調べた。DC/乳癌融合は、CD4/CD25/CD69およびCD4/CD25/Foxp3+細胞を特徴とする細胞の混合集団を刺激した。調節細胞の存在の増加は、融合細胞ワクチンのインビボ効力を潜在的に阻害すると考えられた。このように、融合媒介T細胞応答を活性化細胞の方に傾かせるために、いくつかの戦略を調べた。IL−12、TLR7/8アゴニスト、CPG ODNまたはIL−18の添加は、調節細胞と比較して活性化細胞の相対的な存在を増加させた。
【0215】
DC/乳癌融合に対するT細胞応答の性質をさらに明確にするために、CD4およびCD25を同時発現する増殖T細胞集団の機能的特性を調べた。融合細胞による刺激の後に、CD4/CD25/FOXP3細胞の存在の増加が認められ、融合共培養の前および後に、総CD4/CD25細胞のそれぞれ26%および63%の平均レベルが観察された。FOXP3を一様に発現するCD4/CD25high細胞をFACS選別によって単離し、CD4/CD25−細胞のマイトジェンおよび抗原特異的応答を阻害するそれらの能力を分析した。CD4/CD25−T細胞を、CD4/CD25high細胞の存在下または非存在下で、PHA(2μg/ml)または抗CD3と1:1の比率で3日間培養した。CD4/CD25high細胞の存在は、終夜パルスの後のチミジン取込みによって判断される、増殖のかなりの阻害をもたらした。同様に、末梢血単核細胞を、CD4/CD25high細胞の存在下または非存在下で、破傷風トキソイド(10μg/ml)と1:1の比率で5日間培養した。CD4/CD25high細胞の存在は、刺激指数(PBMCおよび破傷風トキソイドのチミジン取込み/PBMC単独のチミジン取込み)によって判断される、破傷風へのT細胞応答のかなりの阻害をもたらした。
【0216】
Foxp3発現は、FACSおよび免疫細胞化学的分析によって選別されたCD4/CD25high細胞で確認した。これらのデータは、DC/乳癌融合が、調節T細胞の表現型および機能的特性を有するT細胞集団の増殖を誘導することを証明する。
【0217】
DC/乳癌融合とそれに続く抗CD3/CD28による活性化T細胞の選択的増殖
抗腫瘍免疫を刺激し、調節T細胞の増殖を制限するDC/乳癌融合の能力を高めるために、いくつかの戦略を調べた。DC/腫瘍融合による抗原特異的刺激およびT細胞同時刺激複合体(CD3/CD28)の非特異的連結の組合せが、腫瘍特異性リンパ球の活性化をもたらすであろうと仮定された。DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による複合刺激は、活性化表現型が優先する腫瘍反応性T細胞の増殖をもたらすことが実証された。
【0218】
DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激を受けたT細胞の、表現型特性および機能的特性を調べた(図15)。制限されたT細胞増殖が、抗CD3/CD28単独(SI:1.5±0.5SEM;n=7)またはDC/乳癌融合(SI3.1±1.2SEM;n=7)への曝露の後に観察された。しかし、T細胞を先ずDC/乳癌融合で刺激し、次に抗CD3/CD28で増殖させたときに、T細胞増殖の顕著な増加が認められた(SI:23±8.73SEM;n=7)。留意すべきは、T細胞を抗CD3/CD28に最初に曝露させ、次にDC/乳癌融合と培養したときには、増殖の増加は観察されなかった(SI:1.6±0.3SEM;n=6)。
【0219】
DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、腫瘍反応性T細胞の特異的増殖をもたらした。融合細胞による刺激の後の抗CD3/CD28への曝露は、MUC1四量体結合細胞(n=3)の13.7倍の平均増加率を誘導した。MUC1四量体+細胞のパーセントは、抗CD3/CD28単独による刺激の後、ベースラインレベルにとどまった。
【0220】
増殖T細胞集団の表現型に関しては、CD4+CD25+表現型を発現するT細胞のパーセントは、抗CD3/CD28(11%)または融合単独(10%)(n=6)によって刺激したT細胞と比較して、DC/腫瘍融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に著しく増加した(28%)。融合細胞単独と比較して、DC/乳癌融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD69およびIFNγを同時発現したCD4+CD25+細胞の5倍および4倍の増加をもたらした。対照的に、Foxp3を発現したCD4+CD25+T細胞の増加が明らかにするように、調節T細胞の約5倍の増加も観察された。これらの結果は、融合媒介刺激とそれに続く抗CD3/CD28増殖が、活性化T細胞および調節T細胞の両方のレベルの上昇を誘導することを示唆する。
【0221】
将来の臨床試験は、IL−12と併用したDC/乳癌融合による転移性乳癌患者のワクチン接種を含む。
【0222】
(実施例8):DC/多発性骨髄腫融合による自己由来T細胞増殖の刺激
多発性骨髄腫(MM)の患者に由来する自己由来の融合およびT細胞を用いる実験で、類似した知見が観察された。DCを接着性単核細胞から生成し、本明細書に記載の方法を用いて自己由来の骨髄腫細胞と融合させた。自己由来のT細胞は、T細胞分離カラムを用いて単離した。多発性骨髄腫を有する患者に由来するT細胞を、1:10の融合対T細胞の比率で融合細胞と7日間共培養するか、融合細胞と5日間共培養した後、抗CD3/CD28でコーティングしたプレートと48時間共培養した。刺激の後、一晩の適用の後のトリチウムチミジンの取込みによって、T細胞増殖を測定した。DC/骨髄腫融合とそれに続く抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、融合細胞単独によって刺激したT細胞と比較して、T細胞増殖のレベルを著しく増加させた(図13)。
【0223】
DC/MM融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激は、CD4+/CD25+/CD69+細胞によって定義される活性化T細胞のレベルの増加をもたらした。抗CD3/CD28単独によって刺激された細胞と比較して、DC/MM融合単独による刺激またはDC/MM融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激の後に、CD4/25/CD69細胞の(総集団中の)パーセントの27倍および39倍の増加が観察された。その後、DC/MM融合および抗CD3/CD28によって刺激したT細胞の、自己由来のMM標的を溶解する能力を調べた。患者由来のT細胞を、自己由来のDC/MM融合単独によって7日間、またはDC/MM融合で5日間と以降の抗CD3/CD28への48時間の曝露によって刺激した。自己由来の骨髄腫細胞の溶解は、標準のクロム放出アッセイで測定した。DC/MM融合とそれに続く抗CD3/CD28によって刺激したT細胞は、自己由来の骨髄腫標的の、DC/MM融合単独で刺激したT細胞で観察されたものを超える、高レベルのCTL媒介性の溶解を示した(図14)。これらの知見は、DC/MM融合および抗CD3/CD28による逐次的な刺激が、腫瘍標的を溶解する能力を有する活性化された腫瘍特異的T細胞の選択的増殖をもたらすことを実証する。したがって、この手法は、多発性骨髄腫の養子免疫療法のための理想的なプラットホームを提供する。
【0224】
同等物
本発明を、その好ましい実施形態を参照して詳細に示し、記載したが、添付の請求項によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更をそこに加えることができることは、当業者によって理解されよう。当業者は、常用の実験しか用いずに、本明細書で具体的に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識するか、確認することができよう。そのような同等物は、特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な、教育され、増殖した抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する方法であって、前記免疫エフェクター細胞はTリンパ球であり、前記集団はCD4+免疫エフェクター細胞および細胞傷害性CD8+免疫エフェクター細胞を含み、
a)複数のハイブリッド細胞を提供する工程であり、前記ハイブリッド細胞のそれぞれは少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍細胞または癌細胞との間の融合によって生成され、前記樹状細胞および前記腫瘍細胞または癌細胞は同じ種に由来し、前記樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、前記ハイブリッド細胞の少なくとも半分は免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)前記細胞表面抗原を発現する、工程と、
b)免疫エフェクター細胞集団を前記複数のハイブリッド細胞と接触させ、それによって、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する工程と、
c)前記教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を抗CD3/CD28抗体と接触させ、それによって前記実質的に純粋な、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する工程であり、前記接触は、前記ハイブリッド細胞単独または前記抗CD3/CD28抗体単独への曝露と比較して、T細胞増殖、T細胞活性または腫瘍反応性T細胞の増加をもたらす、工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記集団を、増殖の後に調節T細胞の活性を除去または低減する化合物と接触させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物がサイトカインである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
選択方法の使用、またはsiRNAを用いる重要な遺伝子のサイレンシングによって調節T細胞の活性を除去または低減する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記集団を前記抗CD3/CD28抗体と接触させる工程が活性化T細胞の少なくとも2倍の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記集団を前記抗CD3/CD28抗体と接触させる工程が腫瘍反応性T細胞の少なくとも2倍の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記集団を前記抗CD3/CD28抗体と接触させる工程がT細胞増殖の少なくとも2倍の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD3/CD28抗体が平らな基材に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫エフェクター細胞が少なくとも24時間の間に増殖する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫エフェクター細胞が遺伝子改変細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイブリッド細胞が遺伝子改変細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子改変がポリヌクレオチドの導入を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドがペプチド、リボザイム、アンチセンス配列、ホルモン、酵素、成長因子またはインターフェロンをコードする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ハイブリッド細胞と培養する前に前記免疫エフェクター細胞がナイーブである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
サイトカインまたはアジュバントの存在下で前記免疫エフェクター細胞が前記ハイブリッド細胞とともに培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインがIL−7、IL−12、IL−15またはIL−18である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アジュバントがCPG ODN、TLR7/8アゴニストまたはTLR3アゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団が、サイトカインを含む細胞培養培地中で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記サイトカインがIL−7である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の抗原を発現する前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が自己由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の抗原を発現する前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同種異系である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記樹状細胞が末梢血、骨髄または皮膚から誘導または動員される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記樹状細胞が樹状細胞前駆体細胞から誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ個体から得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記種がヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ種の異なる個体から得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記種がHomo sapiensである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍または癌細胞が、乳癌細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、尿路上皮癌細胞、結腸癌細胞、直腸癌細胞または血液癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記血液癌細胞が、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、多発性骨髄腫細胞および非ホジキンリンパ腫細胞からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含む実質的に純粋な集団であって、前記集団は、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含み、前記免疫エフェクター細胞はハイブリッド細胞によって教育され、前記ハイブリッド細胞は、1つまたは複数の抗原を発現する腫瘍もしくは癌細胞に融合している樹状細胞を含み、前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞は同じ種に由来し、前記樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、前記融合細胞の少なくとも半分は、免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)前記細胞表面抗原を発現し、前記教育された免疫エフェクター細胞は抗CD3/CD28抗体の存在下の培養で増殖し、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるT細胞の増殖が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも2倍増加しているか、前記集団におけるT細胞の活性化が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも2倍増加しているか、前記集団における腫瘍反応性T細胞が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも2倍増加しているか、またはそれらの任意の組合せである集団。
【請求項31】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ個体から得られる、請求項30に記載の集団。
【請求項32】
前記種がヒトである、請求項31に記載の集団。
【請求項33】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ種の異なる個体から得られる、請求項30に記載の集団。
【請求項34】
前記種がHomo sapiensである、請求項33に記載の集団。
【請求項35】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるT細胞の増殖が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項36】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団における記憶エフェクター細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項37】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるT細胞の活性化が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項38】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるIFNγおよびグランザイムBを発現する細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項39】
抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるIFNγを発現する細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項38に記載の集団。
【請求項40】
抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるグランザイムBを発現する細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項38に記載の集団。
【請求項41】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団における腫瘍反応性T細胞が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項42】
請求項30に記載の増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の集団を含むワクチン。
【請求項43】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項42に記載のワクチン。
【請求項44】
個体において癌を治療する方法であって、請求項30に記載の集団を前記個体に投与する工程を含み、免疫応答が誘導され、前記癌は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、肺癌、尿路上皮癌、結腸癌、直腸癌、神経膠腫または血液癌からなる群より選択される方法。
【請求項45】
前記血液癌が、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記癌が乳癌である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ個体から得られる、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記種がヒトである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ種の異なる個体から得られる、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記種がHomo sapiensである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
複数のハイブリッド細胞の有効量を共投与する工程をさらに含み、前記ハイブリッド細胞のそれぞれは、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍もしくは癌細胞との間の融合によって生成され、前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞は同じ種に由来し、前記ハイブリッド細胞の少なくとも半分は免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)前記細胞表面抗原を発現する、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記共投与が逐次的に行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記共投与が同時に行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記個体に、前記集団の投与の前にリンパ球を枯渇させる治療が施される、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記治療が前記個体においてリンパ球減少を誘導する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記治療がフルダラビンまたは放射線の投与を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
幹細胞移植の後に前記細胞が前記個体に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
抗原活性についてペプチドを試験する方法であって、
(a)樹状細胞と腫瘍もしくは癌細胞との融合産物を含むハイブリッド細胞を提供する工程であり、前記ハイブリッド細胞がその表面にB7を発現する、工程と、
(b)前記ハイブリッド細胞を免疫エフェクター細胞と接触させ、それによって教育された免疫エフェクター細胞を生成する工程と、
(c)前記教育された免疫エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と、
(d)ペプチドの存在下で標的細胞を前記教育された免疫エフェクター細胞と接触させる工程であり、前記標的細胞の溶解が、前記ペプチドを抗原性ペプチドと同定する、工程とを含む、方法。
【請求項59】
抗原活性についてペプチドを試験する方法であって、
(a)複数の細胞を提供する工程であり、前記複数の細胞の少なくとも5%が、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍もしくは癌細胞との間の融合によって生成される融合細胞であり、前記融合細胞が、免疫応答を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(ii)B7および(iii)前記細胞表面抗原を発現する、工程と、
(b)ヒトTリンパ球の集団を前記複数の細胞と接触させる工程であり、前記接触させる工程は、前記Tリンパ球集団内のエフェクター細胞前駆体細胞の、細胞傷害性Tリンパ球を含むエフェクター細胞への分化を引き起こす、工程と、
(c)細胞傷害性Tリンパ球を含む前記エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と、
(d)複数の標的細胞を前記ペプチドの存在下で、Tリンパ球を含む前記エフェクター細胞と接触させる工程であり、前記複数の標的細胞またはその一部の溶解が、前記ペプチドを、前記細胞傷害性Tリンパ球によって認識される抗原性ペプチドと同定する、工程とを含む方法。
【請求項60】
請求項58に記載の方法によって同定されるペプチドと、担体とを含むワクチン。
【請求項61】
請求項59に記載の方法によって同定されるペプチドと、担体とを含むワクチン。
【請求項1】
実質的に純粋な、教育され、増殖した抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する方法であって、前記免疫エフェクター細胞はTリンパ球であり、前記集団はCD4+免疫エフェクター細胞および細胞傷害性CD8+免疫エフェクター細胞を含み、
a)複数のハイブリッド細胞を提供する工程であり、前記ハイブリッド細胞のそれぞれは少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍細胞または癌細胞との間の融合によって生成され、前記樹状細胞および前記腫瘍細胞または癌細胞は同じ種に由来し、前記樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、前記ハイブリッド細胞の少なくとも半分は免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)前記細胞表面抗原を発現する、工程と、
b)免疫エフェクター細胞集団を前記複数のハイブリッド細胞と接触させ、それによって、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する工程と、
c)前記教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を抗CD3/CD28抗体と接触させ、それによって前記実質的に純粋な、増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団を生成する工程であり、前記接触は、前記ハイブリッド細胞単独または前記抗CD3/CD28抗体単独への曝露と比較して、T細胞増殖、T細胞活性または腫瘍反応性T細胞の増加をもたらす、工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記集団を、増殖の後に調節T細胞の活性を除去または低減する化合物と接触させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物がサイトカインである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
選択方法の使用、またはsiRNAを用いる重要な遺伝子のサイレンシングによって調節T細胞の活性を除去または低減する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記集団を前記抗CD3/CD28抗体と接触させる工程が活性化T細胞の少なくとも2倍の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記集団を前記抗CD3/CD28抗体と接触させる工程が腫瘍反応性T細胞の少なくとも2倍の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記集団を前記抗CD3/CD28抗体と接触させる工程がT細胞増殖の少なくとも2倍の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗CD3/CD28抗体が平らな基材に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫エフェクター細胞が少なくとも24時間の間に増殖する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫エフェクター細胞が遺伝子改変細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイブリッド細胞が遺伝子改変細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子改変がポリヌクレオチドの導入を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドがペプチド、リボザイム、アンチセンス配列、ホルモン、酵素、成長因子またはインターフェロンをコードする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ハイブリッド細胞と培養する前に前記免疫エフェクター細胞がナイーブである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
サイトカインまたはアジュバントの存在下で前記免疫エフェクター細胞が前記ハイブリッド細胞とともに培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインがIL−7、IL−12、IL−15またはIL−18である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アジュバントがCPG ODN、TLR7/8アゴニストまたはTLR3アゴニストである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞集団が、サイトカインを含む細胞培養培地中で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記サイトカインがIL−7である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の抗原を発現する前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が自己由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
1つまたは複数の抗原を発現する前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同種異系である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記樹状細胞が末梢血、骨髄または皮膚から誘導または動員される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記樹状細胞が樹状細胞前駆体細胞から誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ個体から得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記種がヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ種の異なる個体から得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記種がHomo sapiensである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記腫瘍または癌細胞が、乳癌細胞、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、肺癌細胞、尿路上皮癌細胞、結腸癌細胞、直腸癌細胞または血液癌細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記血液癌細胞が、急性骨髄性白血病細胞、急性リンパ性白血病細胞、多発性骨髄腫細胞および非ホジキンリンパ腫細胞からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含む実質的に純粋な集団であって、前記集団は、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞を含み、前記免疫エフェクター細胞はハイブリッド細胞によって教育され、前記ハイブリッド細胞は、1つまたは複数の抗原を発現する腫瘍もしくは癌細胞に融合している樹状細胞を含み、前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞は同じ種に由来し、前記樹状細胞は抗原をプロセシングおよび提示することができ、前記融合細胞の少なくとも半分は、免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)前記細胞表面抗原を発現し、前記教育された免疫エフェクター細胞は抗CD3/CD28抗体の存在下の培養で増殖し、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるT細胞の増殖が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも2倍増加しているか、前記集団におけるT細胞の活性化が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも2倍増加しているか、前記集団における腫瘍反応性T細胞が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも2倍増加しているか、またはそれらの任意の組合せである集団。
【請求項31】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ個体から得られる、請求項30に記載の集団。
【請求項32】
前記種がヒトである、請求項31に記載の集団。
【請求項33】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ種の異なる個体から得られる、請求項30に記載の集団。
【請求項34】
前記種がHomo sapiensである、請求項33に記載の集団。
【請求項35】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるT細胞の増殖が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項36】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団における記憶エフェクター細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項37】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるT細胞の活性化が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項38】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるIFNγおよびグランザイムBを発現する細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項39】
抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるIFNγを発現する細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項38に記載の集団。
【請求項40】
抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団におけるグランザイムBを発現する細胞の存在が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項38に記載の集団。
【請求項41】
前記腫瘍または癌細胞が腎癌細胞である場合、抗CD3/CD28抗体の存在下の培養での増殖の後に、前記集団における腫瘍反応性T細胞が、前記ハイブリッド細胞単独に曝露させた免疫エフェクター細胞と比較して少なくとも約2倍増加している、請求項30に記載の集団。
【請求項42】
請求項30に記載の増殖し、教育され、抗原特異的な免疫エフェクター細胞の集団を含むワクチン。
【請求項43】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項42に記載のワクチン。
【請求項44】
個体において癌を治療する方法であって、請求項30に記載の集団を前記個体に投与する工程を含み、免疫応答が誘導され、前記癌は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、肺癌、尿路上皮癌、結腸癌、直腸癌、神経膠腫または血液癌からなる群より選択される方法。
【請求項45】
前記血液癌が、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記癌が乳癌である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ個体から得られる、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記種がヒトである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞が同じ種の異なる個体から得られる、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記種がHomo sapiensである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
複数のハイブリッド細胞の有効量を共投与する工程をさらに含み、前記ハイブリッド細胞のそれぞれは、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍もしくは癌細胞との間の融合によって生成され、前記樹状細胞および前記腫瘍または癌細胞は同じ種に由来し、前記ハイブリッド細胞の少なくとも半分は免疫系を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(b)B7、および(c)前記細胞表面抗原を発現する、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記共投与が逐次的に行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記共投与が同時に行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記個体に、前記集団の投与の前にリンパ球を枯渇させる治療が施される、請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記治療が前記個体においてリンパ球減少を誘導する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記治療がフルダラビンまたは放射線の投与を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
幹細胞移植の後に前記細胞が前記個体に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項58】
抗原活性についてペプチドを試験する方法であって、
(a)樹状細胞と腫瘍もしくは癌細胞との融合産物を含むハイブリッド細胞を提供する工程であり、前記ハイブリッド細胞がその表面にB7を発現する、工程と、
(b)前記ハイブリッド細胞を免疫エフェクター細胞と接触させ、それによって教育された免疫エフェクター細胞を生成する工程と、
(c)前記教育された免疫エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と、
(d)ペプチドの存在下で標的細胞を前記教育された免疫エフェクター細胞と接触させる工程であり、前記標的細胞の溶解が、前記ペプチドを抗原性ペプチドと同定する、工程とを含む、方法。
【請求項59】
抗原活性についてペプチドを試験する方法であって、
(a)複数の細胞を提供する工程であり、前記複数の細胞の少なくとも5%が、少なくとも1つの樹状細胞と、細胞表面抗原を発現する少なくとも1つの腫瘍もしくは癌細胞との間の融合によって生成される融合細胞であり、前記融合細胞が、免疫応答を刺激するのに有効な量で(a)MHCクラスII分子、(ii)B7および(iii)前記細胞表面抗原を発現する、工程と、
(b)ヒトTリンパ球の集団を前記複数の細胞と接触させる工程であり、前記接触させる工程は、前記Tリンパ球集団内のエフェクター細胞前駆体細胞の、細胞傷害性Tリンパ球を含むエフェクター細胞への分化を引き起こす、工程と、
(c)細胞傷害性Tリンパ球を含む前記エフェクター細胞を抗CD3/CD28抗体と接触させる工程と、
(d)複数の標的細胞を前記ペプチドの存在下で、Tリンパ球を含む前記エフェクター細胞と接触させる工程であり、前記複数の標的細胞またはその一部の溶解が、前記ペプチドを、前記細胞傷害性Tリンパ球によって認識される抗原性ペプチドと同定する、工程とを含む方法。
【請求項60】
請求項58に記載の方法によって同定されるペプチドと、担体とを含むワクチン。
【請求項61】
請求項59に記載の方法によって同定されるペプチドと、担体とを含むワクチン。
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2011−504101(P2011−504101A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533264(P2010−533264)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082750
【国際公開番号】WO2009/062001
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(592090692)ダナ ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド (20)
【出願人】(500342488)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082750
【国際公開番号】WO2009/062001
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(592090692)ダナ ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド (20)
【出願人】(500342488)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター (1)
【Fターム(参考)】
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