説明

樹脂の溶着方法およびこれを使用したタンク製造方法

【課題】溶着時間を短縮させ、尚かつ溶着品質をより安定化させる。
【解決手段】所定値よりも波長の長いレーザ光L2と、所定値よりも波長の短いレーザ光L1とを当該樹脂の溶着対象部分22に照射する。例えば、波長の短いレーザ光L1として半導体レーザ光を用い、波長の長いレーザ光L2としてYAGレーザ光またはCO2レーザ光を用いることができる。樹脂ライナ20を対象とする場合、波長の長いレーザ光L2を樹脂ライナ20の外側から、波長の短いレーザ光L1を樹脂ライナ20の内側からそれぞれ照射することが好ましい。また、レーザ光が照射される部分の温度ないしはレーザ光照射量を測定装置50により測定し、測定結果に基づいて当該レーザ光の照射量を調整。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の溶着方法およびこれを使用したタンク製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、レーザ光を用いた樹脂の溶着方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量化等の観点から、配管などを構成するパイプ形状品や、ガス容器の内殻(ライナ)を樹脂化して樹脂成形品にすることが行われる。この種の樹脂成形品は、予め分割して成形された分割成形品を互いに接合することで構成されることが多く、その場合の接合方法としてレーザ溶着方法が利用されている。
【0003】
このような樹脂成形品のレーザ溶着方法としては、レーザ溶着中の接合部分に不活性ガスを吹き付けるものが知られている。また、分割樹脂ライナどうしをレーザ溶着する際、接合部分の近傍において不活性ガスの温度調整がなされる場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−223087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不活性ガスでは接合部分近傍の空気を加熱するだけであり、分割樹脂ライナの接合部分を直接加熱しているわけではないことから、溶着に時間を要する場合がある。また、直接加熱できない場合には、溶着品質が安定しない場合もある。
【0005】
そこで、本発明は、溶着時間を短縮させ、尚かつ溶着品質をより安定化させることを可能とした樹脂の溶着方法およびこれを使用したタンク製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。実際のレーザ溶着の場面を鑑みると、レーザ溶着する樹脂材の一方をレーザ光透過材、他方をレーザ光吸収材(レーザ光不透過材)で形成し、両者を突き合わせた状態としてレーザ光不透過材側からレーザ光を照射し、吸収材側にて発熱させることによって溶着が行われている(図4参照)。しかし、(1)透過材側から半導体レーザが照射され、(2)レーザ光透過材を透過したレーザ光がレーザ光吸収材に届き、レーザ光吸収材が発熱し、(3)レーザ光吸収材の熱がレーザ光透過材にも伝わり、(4)これによって両材料が溶融して混ざり合い接合する、という過程を経ることから、レーザ光吸収材を直接加熱することはできずその分だけ溶着に時間を要している。また、従来のレーザ溶着によると、レーザ溶着したい局所以外の部位にも熱が広がることからバリや焦げなどが発生する原因にもなっており、加熱温度の管理が難しく、溶着品質が安定しない場合がある。さらに、溶着サイクルを短くするべくレーザ照射量を増やそうとしても、透過材側のレーザ光透過率には限界があるとともに、樹脂劣化の懸念もあり、現状、レーザ照射量を大きく上げることは効果的ではない。このような状況下、樹脂溶着の高速化と品質向上について検討を重ねた本発明者は、課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくものであり、樹脂の溶着方法であって、所定値よりも波長の長いレーザ光と、所定値よりも波長の短いレーザ光とを当該樹脂の溶着対象部分に照射する、というものである。
【0008】
波長の長いレーザ光は、波長の短いレーザ光に比べて透過性に劣るため吸収されやすい。そこで本発明においては、所定値よりも波長の短いレーザ光(例えば従来の半導体レーザ光)に加え、所定値よりも波長の長いレーザ光も溶着対象部分に照射し、レーザ波長の違いを利用して樹脂を局所的かつ効果的に加熱することを可能としている。すなわち、波長の短いレーザ光であれば透過してしまうレーザ光透過材に対し、所定値よりも波長が長いレーザ光を照射することにより、レーザ光透過材においても発熱させることを可能としている。
【0009】
この溶着方法においては、例えば波長の短いレーザ光として半導体レーザ光を用い、波長の長いレーザ光としてYAGレーザ光またはCO2レーザ光を用いることができる。YAGレーザ光およびCO2レーザ光は半導体レーザ光よりも波長が長いことから、半導体レーザ光であれば透過していたレーザ光透過材にて吸収され、当該レーザ光透過材自体を発熱させることが可能である。
【0010】
本発明の溶着対象たる樹脂は、例えば少なくとも2つの樹脂ライナである。また、この場合には、波長の長いレーザ光を樹脂ライナの外側から、波長の短いレーザ光を樹脂ライナの内側からそれぞれ照射することが好ましい。本発明にかかる溶着方法の場合、波長の長いレーザ光を照射した部位の方が、波長の短いレーザ光を照射した部位よりも温度が上昇しやすい。この点、湾曲した樹脂ライナの外側に波長の短いレーザ光を照射する本発明においては、より高温となりやすい樹脂ライナの外側の温度計測等を行いやすい。さらに、この場合においては、レーザ光を反射鏡にて反射させて樹脂ライナに照射することにより、当該レーザ光を樹脂ライナ内側の所望位置に所望角度で照射しやすくなる。
【0011】
また、レーザ光が照射される部分の温度ないしはレーザ光照射量を測定装置により測定し、測定結果に基づいて当該レーザ光の照射量を調整することが好ましい。これによれば加熱温度を制御して溶着状態をより精度よく管理することができる。
【0012】
さらに、樹脂どうしを密着させるための外力を作用させながらレーザ光を照射することも好ましい。
【0013】
また、本発明にかかるタンク製造方法は、上述した溶着方法を使用して分割樹脂ライナを溶着するというものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶着時間を短縮させ、尚かつ溶着品質をより安定化させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1〜図3に本発明にかかる樹脂の溶着方法の一実施形態を示す。以下では、本発明にかかる溶着方法を、燃料電池システムの水素タンクを構成する樹脂ライナの成形に適用した場合について説明する。
【0017】
水素タンク(以下、高圧タンクともいう)1は、例えば燃料電池車の燃料ガス供給用タンクとして好適なものであり、特に図示はしないが例えば3つの高圧タンク1が車体のリア部に搭載される等して用いられる。高圧タンク1は、燃料電池システムの一部を構成し、燃料ガス配管系を通じて燃料電池に燃料ガスを供給する。高圧タンク1に貯留される燃料ガスは、例えば水素ガス、圧縮天然ガスといった可燃性の高圧ガスである。
【0018】
図1は、高圧タンク1の概略構成を示す断面図である。高圧タンク1は、例えば両端が略半球状である円筒形状のタンク本体10と、当該タンク本体10の長手方向の一端部に取り付けられた口金部11,18を有する。タンク本体10は例えば二層構造の壁層を有し、内壁層である樹脂ライナ20とその外側の外壁層である樹脂繊維層(補強層)としての例えばCFRP層21を有している。
【0019】
樹脂ライナ20は、タンク本体10とほぼ同じ形状に形成される。樹脂ライナ20は、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、またはその他の硬質樹脂などにより形成されている。
【0020】
本実施形態では、タンク軸方向の略中心で分割されたのと同じ形状の2種類の分割樹脂ライナをあらかじめ成形し、これらを溶着することによって両端が略半球状である円筒形状の樹脂ライナ20を得ることとしている。これら分割樹脂ライナのうち、一方は透過性樹脂ライナ20aであり、他方は吸収性樹脂ライナ20bである(図2参照)。
【0021】
本実施形態の透過性樹脂ライナ20aは、半導体レーザ光L1を透過させるがYAGレーザ光L2を吸収する(透過させない)ように成形された分割樹脂ライナであり、吸収性樹脂ライナ20bは、半導体レーザ光L1をも透過させずに吸収するように成形された分割樹脂ライナである。透過性樹脂ライナ20aが例えばナイロン(登録商標)製である場合、吸収性樹脂ライナ20bを例えばカーボン材を含むナイロン(登録商標)製とすることで、両分割樹脂ライナ20a,20bの物性を合わせつつレーザ光の透過性を異ならせることができる。なお、本明細書では「透過」、「吸収」といった表現を用いて本発明を説明しているが、これらはレーザ光のすべてが透過しあるいは吸収されることだけを意味するものではなく、レーザ光の一部が透過しあるいは吸収されることをも当然に含む。
【0022】
CFRP層21は、例えばFW成形(フィラメントワインディング成形)により、樹脂ライナ20の外周面と口金部11の凹み部11bに、樹脂の含浸した補強繊維を巻き付け、当該樹脂を硬化させることにより形成されている。CFRP層21の樹脂には、例えばエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。また、補強繊維としては、炭素繊維、金属繊維などが用いられる。
【0023】
口金部11は、略円筒形状を有し、樹脂ライナ20の開口部に嵌入されている。口金部11は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、例えばダイキャスト法等により所定の形状に製造されている。口金部11は、例えばインサート成形により樹脂ライナ20に取り付けられている。なお、CFRP層21と接触する凹み部11bの表面には、フッ素系の樹脂などの固体潤滑コーティングが施されており、これにより、CFRP層21と凹み部11bとの間の摩擦係数が低減されている。
【0024】
続いて、上述した樹脂ライナ20の溶着方法について説明する(図3等参照)。
【0025】
まず、2種類の分割樹脂ライナである透過性樹脂ライナ20aおよび吸収性樹脂ライナ20bの溶着対象部分(図3において符号22で示す)たる端面どうしを突き合わせる(図3参照)。ここで、両樹脂ライナ20a,20bの端面は例えば一方が他方の周囲に被さるように段差が設けられた形状であるが(図4参照)、この他、特に図示はしないが一方を楔状、他方を二股状として他方側の溝に楔の先端を入り込ませる形状などとしてもよい。
【0026】
次に、樹脂ライナ20を相対的に回転させながら、接合部分(溶着対象部分22)に2種類のレーザ光L1,L2を照射し、透過性樹脂ライナ20aおよび吸収性樹脂ライナ20bの溶着対象部分22を溶融させて混ぜ合わせ、接合する。本実施形態では、樹脂ライナ20の外側に配置したYAGレーザ光発振器40からYAGレーザ光L2を照射し、高圧タンク1のタンク軸上に配置した半導体レーザ光発振器30から半導体レーザ光L1を照射することとしている(図3参照)。YAGレーザ光発振器40は、両分割樹脂ライナ20a,20bの突き合わされた端面(溶着対象部分22)に対し、タンク軸方向と垂直にYAGレーザ光L2を照射するように配置されていることが好ましい。このYAGレーザ光発振器に代え、CO2レーザ光を発振するCO2レーザ光発振器を用いてもよい。なお、従来のYAGレーザ光やCO2レーザ光は、一般的には樹脂材を切断する際に利用されているものであるから、YAGレーザ光発振器、CO2レーザ光発振器とも比較的容易に準備することができるレーザ光発振源である。
【0027】
また、半導体レーザ光発振器30は、口金11の開口から樹脂ライナ20の内部へと向かう半導体レーザ光L1をタンク軸に沿って照射する。本実施形態では、樹脂ライナ20の内部に反射鏡60を設置し、半導体レーザ光L1を反射させ、溶着対象部分22の内側にレーザ光が照射されるようにしている(図3参照)。
【0028】
半導体レーザ光L1の波長はおよそ800〜1000nmの範囲にある。既述のように、この半導体レーザ光L1は、透過性樹脂ライナ20aを透過し、吸収性樹脂ライナ20bに吸収されて当該吸収性樹脂ライナ20bを発熱させる(図4参照)。一方、YAGレーザ光L2およびCO2レーザ光の波長はおよそ1000nm以上である。このように本実施形態で用いているYAGレーザ光(またはCO2レーザ光)L2は半導体レーザ光L1よりも波長が長いため、半導体レーザ光L1のように透過性樹脂ライナ20aを透過することはなく、その一部または全部が吸収されることによって当該透過性樹脂ライナ20aを発熱させる。なお、吸収性樹脂ライナ20bに直接照射された場合のYAGレーザ光(またはCO2レーザ光)L2は、当然ながら吸収性樹脂ライナ20bに吸収されて当該吸収性樹脂ライナ20b自体を発熱させる。
【0029】
つまり、本実施形態の溶着方法においては、樹脂ライナ20の表面側から半導体レーザ光L1を照射して吸収性樹脂ライナ20bを発熱させるばかりでなく、裏面側からはYAGレーザ光L2を照射して透過性樹脂ライナ20aをも発熱させる(直接的に加熱する)ことにより、溶着に要する時間を短縮することを可能としている。参考までに具体例を挙げれば、従来手法によれば十分な溶着を行うために樹脂ライナ20を5〜10周程度(例えば9周)回転させることを要していたが、本実施形態によれば2〜3周程度回転させた時点で十分に溶着させることが可能である。
【0030】
しかも、このように透過性樹脂ライナ20aを直接的に加熱することを可能とした本実施形態の溶着方法によれば、レーザ溶着したい局所以外の部位に熱が広がることを抑えることができる。したがって、溶着対象部分22やその周囲においてバリなどが発生するのを抑制し、これによって従来よりも溶着品質を安定させることが可能である。
【0031】
また、本実施形態では、レーザ光が照射される部分の温度ないしはレーザ光照射量を測定装置により測定し、測定結果に基づいて当該レーザ光の照射量を調整することとしている。具体的には、樹脂ライナ20の外側に計測カメラ50を配置し、当該計測カメラ50にて溶着対象部分22の例えば温度を測定している(図3参照)。計測カメラ50には、測定対象の物質に赤外線を照射し、透過光あるいは反射光を分光することでスペクトルを得て対象物の特性を検出するIR(赤外分光法)熱画像装置などを利用することができる。このように測定結果に基づきレーザ光の照射量を調整する本実施形態の溶着方法によれば、加熱温度をフィードバック制御して溶着状態をより精度よく緻密に管理することが可能となる。特に、樹脂ライナ20の外側にYAGレーザ光(あるいはCO2レーザ光)L2を照射して透過性樹脂ライナ20aを直接的に加熱する本実施形態の場合においては、溶着対象部分22の温度が上がりすぎてしまうのを抑制できるという点でも好適である。加えて、発熱させたい吸収性樹脂ライナ20bにも直接レーザ光を照射する部位を測定するため、温度管理がしやすい。
【0032】
溶着後は、口金部11,18が組み付けられていない場合にはこれらを樹脂ライナ20に組み付け、FW(フィラメントワインディング)成形を行う。FW成形後、当該高圧タンク1を加熱硬化して完成品を得る。
【0033】
以上説明したように、複数種類のレーザ光L1,L2の波長の違いを利用する本実施形態の溶着方法においては、波長の短いレーザ光(L1)で従来と同様の加熱を行うと同時に、従来は間接的にしか加熱できなかった部分を波長の長いレーザ光(L2)によって直接的に加熱することが可能である。このような溶着方法によれば、溶着対象部分22やその周辺における温度管理がしやすく、例えば高圧タンク1の性能に影響するバリ等の発生を抑えることができる。また、溶着手段として2種類のレーザ光L1,L2を利用しているため、溶着したい部分においてのみ発熱させやすく、溶着品質を安定させやすい。さらに、樹脂ライナ20の表裏両面からレーザ光L1,L2を照射する本実施形態においては、従来よりも短い時間でレーザ溶着を完了させることが可能である。
【0034】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、透過性樹脂ライナ20aおよび吸収性樹脂ライナ20bの端面どうしを単に突き合わせた状態で溶着する場合について説明したが、必要に応じ、両樹脂を密着させるための外力を作用させながらレーザ光L1,L2を照射することが好ましい。特に、両樹脂の接合部分に隙間が発生しやすい場合は、溶着対象部分22以外にも熱が伝わりやすくバリ等が発生することがある等、加熱温度の管理が難しくなるので、外力を作用させてこのような問題を回避することが好適である。
【0035】
また、上述の実施形態では高圧タンク1を構成する2つの樹脂ライナ20a,20bを接合する際の溶着方法について説明したが、これは溶着対象の一例にすぎない。このような樹脂ライナ20a,20bの他、例えば自動車用のインテークマニホールド、ECUやセンサのボックス、ランプのケーシング、燃料タンクなど、樹脂部材どうしを接合することにより形成される各種部品に本発明にかかる溶着方法を適用することが可能である。しかも、これら各種部品にレーザ溶着方法を適用することには、締結部品や接着剤を廃止すること、形状の自由度を拡大し生産性を向上させることといったことが可能になるという利点もある。
【0036】
さらに、上述の実施形態で例示した溶着対象は湾曲している円筒状の樹脂ライナ20a,20bであるが、これも好適な一例にすぎず、この他、板状の樹脂部材どうしを接合させる等の場合にも本発明を適用することができる。また、上述の実施形態では、樹脂ライナ20a,20bの表裏両面からそれぞれ種類の異なるレーザ光L1,L2を照射したが、場合によっては片面からのみレーザ光L1,L2を照射することとしても構わない。例えば、ある基準面上で板状の樹脂部材を両側から加圧して接合部分どうしを突き合わせようとすると、裏側からレーザ光を照射することが困難な場合がある。このような場合であっても、種類の異なるレーザ光(例えば半導体レーザ光L1とYAGレーザ光L2)を表面側からのみ同時に照射することができ、こうすることによっても上述した実施形態と同様の作用により、溶着時間を短縮させ、溶着品質をより安定化させることが可能である。
【0037】
また、上述の実施形態では、波長の長いレーザ光(YAGレーザ光L2あるいはCO2レーザ光)を樹脂ライナ20a,20bの外側から、波長の短いレーザ光(半導体レーザ光L1)を樹脂ライナ20a,20bの内側からそれぞれ照射する例を示したが、外側と内側を逆にした態様によって溶着を行うことももちろん可能である。ただ、波長の長いレーザ光を照射した部位の方が波長の短いレーザ光を照射した部位よりも温度上昇しやすいことを勘案すると、外側から波長の短いレーザ光を照射することは、より高温となりやすい湾曲状樹脂ライナ20a,20bの外側面を計測カメラ50によって測定しやすくなるという利点がある。
【0038】
さらに、半導体レーザ光L1よりも波長の長いレーザ光として上述の実施形態で説明したのはYAGレーザ光L2およびCO2レーザ光であるが、これらも例示にすぎない。要は、本明細書でいう波長の長いレーザ光は、波長の短いレーザ光(例えば半導体レーザ光L1)が透過するレーザ光透過材において少なくとも一部が吸収され、当該レーザ光透過材自体を発熱させることのできるレーザ光であれば足りる。また、このような波長の長いレーザ光の具体例として上述の実施形態ではおよそ1000nm以上であると説明したが、これは波長の短いレーザ光の波長、レーザ光透過材およびレーザ光吸収材の材質や特性などに応じて変わりうるものであり、当該波長がこのような範囲に限定されることはない。ここで、レーザ光透過材およびレーザ光吸収材の材質の他の具体例を挙げておく。レーザ光透過材には例えばポリカーボネート、アクリル、PBT近似PE材などがある。また、レーザ光吸収材(非透過材)には例えばPBT、ABS、多層PE材、PAとポリオレフィンのアロイ材などがある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態における高圧タンクの断面を示す図である。
【図2】2種類の分割樹脂ライナの概略断面図である。
【図3】樹脂ライナ、レーザ発振器、計測カメラ等の全体を概略的に示す図である。
【図4】半導体レーザ光を用いた従来の溶着方法を説明するために参考として示す樹脂ライナの部分断面図である。
【符号の説明】
【0040】
20…樹脂ライナ(樹脂)、22…溶着対象部分、50…計測カメラ(測定装置)、L1…半導体レーザ光(所定値よりも波長の短いレーザ光)、L2…YAGレーザ光(所定値よりも波長の長いレーザ光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の溶着方法であって、所定値よりも波長の長いレーザ光と、前記所定値よりも波長の短いレーザ光とを当該樹脂の溶着対象部分に照射する、樹脂の溶着方法。
【請求項2】
前記波長の短いレーザ光として半導体レーザ光を用い、前記波長の長いレーザ光としてYAGレーザ光またはCO2レーザ光を用いる、請求項1に記載の樹脂の溶着方法。
【請求項3】
前記樹脂は、少なくとも2つの樹脂ライナである、請求項2に記載の樹脂の溶着方法。
【請求項4】
前記波長の長いレーザ光を前記樹脂ライナの外側から、前記波長の短いレーザ光を前記樹脂ライナの内側からそれぞれ照射する、請求項3に記載の樹脂の溶着方法。
【請求項5】
前記レーザ光を反射鏡にて反射させて前記樹脂ライナに照射する、請求項4に記載の樹脂の溶着方法。
【請求項6】
前記レーザ光が照射される部分の温度ないしはレーザ光照射量を測定装置により測定し、測定結果に基づいて当該レーザ光の照射量を調整する、請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂の溶着方法。
【請求項7】
前記樹脂どうしを密着させるための外力を作用させながら前記レーザ光を照射する、請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂の溶着方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の溶着方法を使用して分割樹脂ライナを溶着する、タンク製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−110985(P2010−110985A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285157(P2008−285157)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】