説明

樹脂ダイヤフラム式流体制御弁

【課題】樹脂ダイヤフラム式流体制御弁として、弁開閉に伴うダイヤフラム弁体の可変膜部の疲労劣化が進みにくく、開弁時の流体圧による該可変膜部の歪みが発生せず、ダイヤフラム弁体が高耐久性で長期にわたって継続使用でき、開弁時の圧損も低減されるものを提供する。
【解決手段】弁作動軸2の先端部に合成樹脂製のダイヤフラム弁体3の中央部3aが保持され、ダイヤフラム弁体3の周辺部3bが弁ケース1側に挟持され、弁作動軸2の進退駆動により、ダイヤフラム弁体3の中央部3aが弁座11に対して離接して閉開弁する樹脂ダイヤフラム式流体制御弁において、ダイヤフラム弁体3の背面側に、弁ケース1内周側の環状段部13との間でダイヤフラム弁体3の周辺部3bを挟持する押えリング4が配設され、押えリング4の内周側がダイヤフラム弁体3の可変膜部30の背面側に対して開弁時に密接して閉弁時に離れる背面受け部40を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のダイヤフラム弁体を備え、例えば食品工業や薬品工業等における各種液体の輸送配管に介在して流路を開閉制御する樹脂ダイヤフラム式流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ダイヤフラム式流体制御弁は、弁室内の弁座に対向配置した弁作動軸の先端部にダイヤフラム弁体の中央部が保持されると共に、該ダイヤフラム弁体の周辺部が弁ケース側に挟持され、弁作動軸の進退駆動により、該ダイヤフラム弁体の中央部が前記環状弁座に対して離接して流路を開閉するようになっている(特許文献1,2)。
【0003】
従来、このようなダイヤフラム弁体としてはゴム製のものが汎用されていたが、食品工業や薬品工業等では取り扱う液体にゴム特有の臭気が移ることが嫌忌されるため、近年ではフッ素系樹脂等の耐蝕性の高い合成樹脂製のものが多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−224984号公報
【特許文献2】特開2008−190546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、合成樹脂製のダイヤフラム弁体はゴム製に比較して変形耐力が大幅に劣る上に弾力性及び伸縮性に乏しく、従来の弁構成では、弁開閉に伴うダイヤフラム弁体の可変膜部の変形量が大きくなるため、開閉弁の繰り返しによって該可変膜部の疲労劣化が速く進むことに加え、開弁時に該可変膜部が大きな流体圧を受けて歪みを発生し易いため、早期にダイヤフラム弁体の交換を余儀なくされてランニングコストが高く付くと共に、その交換作業に多大な労力および時間を費やすという問題があり、また構造的に開弁時の該可変膜部の変形による圧損が大きくなるという難点もあった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、樹脂ダイヤフラム式流体制御弁として、弁開閉に伴うダイヤフラム弁体の可変膜部の疲労劣化が進みにくい上、開弁時の流体圧による該可変膜部の歪みが発生せず、もってダイヤフラム弁体が高耐久性で長期にわたって継続使用でき、また開弁時の圧損も低減されるものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段を図面の参照符号を付して示せば、請求項1の発明は、弁座11に対向配置した弁作動軸2の先端部に、合成樹脂製のダイヤフラム弁体3の中央部3aが保持されると共に、該ダイヤフラム弁体3の周辺部3bが弁ケース1側に挟持され、弁作動軸2の進退駆動により、該ダイヤフラム弁体3の中央部3aが弁座11に対して離接して流路(12A,12B)を開閉する樹脂ダイヤフラム式流体制御弁において、ダイヤフラム弁体3の背面側に、弁ケース1内周側の環状段部13との間でダイヤフラム弁体3の前記周辺部を挟持する押えリング4が配設され、この押えリング4の内周側が、開弁時にダイヤフラム弁体3の可変膜部30の背面側に密接して、且つ閉弁時に該可変膜部30から離れる背面受け部40を構成してなるものとしている。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁は、押えリング4の背面側に、該押えリング4をダイヤフラム弁体3に対する押接方向に付勢する皿ばね5が配置してなる構成としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁において、押えリング4の周辺部4bに弁ケース1内周側の環状段部13に対向する環状凹段部41が形成されると共に、ダイヤフラム弁体3の背面側の周辺部に押えリング4の環状凹段部41に嵌合する環状凸部31が形成されてなる構成としている。
【0010】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3の何れかの樹脂ダイヤフラム式流体制御弁において、ダイヤフラム弁体3の可変膜部30が開弁時及び閉弁時共に半径方向断面で弁室10の流路空間10a側へ凸に湾曲すると共に、押えリング4の背面受け部40の表面が凸曲面40aをなす構成としている。
【0011】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4の何れかの樹脂ダイヤフラム式流体制御弁において、弁座11が弁室10内に開口した流体入口12aの周縁に形成された環状弁座である構成としている。
【0012】
請求項6の発明は、上記請求項1〜5のいずれかの樹脂ダイヤフラム式流体制御弁において、ダイヤフラム弁体3の中央部3aの背面側に有底筒状部31が形成され、この有底筒状部31の内側にエンザート6が螺着されると共に、該エンザート6を螺着した有底筒状部31が中心孔70付きのカップ状リテーナ7の内側に挿嵌される一方、弁作動軸2の先端部が内周に環状段部2aを有する筒状に形成され、該弁作動軸2の先端部内に取付ボルト8が頭部8aを環状段部2aに係止するように装填され、該弁作動軸2の先端から突出した取付ボルト8の雄ねじ部8bをカップ状リテーナ7の中心孔70を通してエンザート6に螺挿緊締することにより、ダイヤフラム弁体3が該弁作動軸2の先端部に固着されてなる構成としている。
【発明の効果】
【0013】
次に、本発明の効果について図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明に係る樹脂ダイヤフラム式流体制御弁では、合成樹脂製のダイヤフラム弁体3の周辺部3bを弁ケース1内周側の環状段部13との間で挟持する押えリング4を備え、この押えリング4の内周側に設けた背面受け部40が開弁時にダイヤフラム弁体3の可変膜部30の背面側に密接し、該可変膜部30のより以上の背面側への膨出変形を防止すると共に、閉弁時には押えリング4の背面受け部40が該可変膜部30から離れる形になっているから、弁開閉に伴う該可変膜部30の変形量が小さくなり、もってダイヤフラム弁体3の疲労劣化が進みにくい上、開弁時の流体圧が押えリング4で受け止められるから、該可変膜部30の歪みを発生しない。従って、ダイヤフラム弁体3は、合成樹脂製であるにも拘らず優れた耐久性を発揮して長期にわたって継続使用でき、それだけランニングコストを低減できると共に、交換頻度の低下で稼働効率も上昇する。また、上記のように開弁時のダイヤフラム弁体3の該可変膜部30の変形が抑えられるから、該変形による圧損も低減されてエネルギー効率が向上する。
【0014】
請求項2の発明によれば、押えリング4が背面側の皿ばね5によってダイヤフラム弁体3に対する押接方向に付勢されているから、開弁時の圧力衝撃が皿ばね5によって吸収されると共に、その流体圧に対する反力が押えリング4を介してダイヤフラム弁体3の可変膜部30から周辺部3bの全体に均等に加わり、もってダイヤフラム弁体3の局部的疲労が回避される。また、流体に脈動があっても、該皿ばね5による緩衝作用でダイヤフラム弁体3の可変膜部30が無理なく追従変形できるから、該ダイヤフラム弁体3の疲労劣化が軽減される。
【0015】
請求項3の発明によれば、押えリング4の周辺部4bに弁ケース1内周側の環状段部13に対向する環状凹段部41が形成され、この環状凹段部41にダイヤフラム弁体3の周辺部3bの背面側に設けた環状凸部31が嵌合するから、ダイヤフラム弁体3に弁開閉に伴って中心側への引張力が作用したり、樹脂材料がフッ素系樹脂等である場合の熱収縮力が作用しても、該ダイヤフラム弁体3の周辺部3bが内側へ移動することがなく、もって該周辺部3bの内側移動による漏液が確実に防止される。
【0016】
請求項4の発明によれば、ダイヤフラム弁体3の可変膜部30が閉弁時に半径方向断面で弁室10の流路空間10a側へ凸に湾曲すると共に、押えリング4の背面受け部40の表面が凸曲面40aをなすから、弁開閉に伴う該ダイヤフラム弁体3の可変膜部30の変形が湾曲度合の拡縮だけになり、もって該ダイヤフラム弁体3の疲労劣化がより進みにくく、その耐久性が更に向上する。
【0017】
請求項5の発明によれば、弁座11が弁室10内に開口した流体入口12aの周縁に形成された環状弁座であるから、開弁時の直接的な圧力衝撃がダイヤフラム弁体3の中央部3aに加わり、可変膜部30への圧力衝撃は小さく且つ周方向に均等にかかる形になるから、該ダイヤフラム弁体3の耐久性がより向上する。
【0018】
請求項6の発明によれば、ダイヤフラム弁体3の背面側の有底筒状部32内にエンザート6が螺着され、この有底筒状部32をカップ状リテーナ7の内側に挿嵌し、弁作動軸2の筒状の先端部から突出する取付ボルト8を該エンザート6に螺挿緊締することにより、当該ダイヤフラム弁体3を弁作動軸2の先端部に固着する構造であるから、取付ボルト8の脱着操作で簡単にダイヤフラム弁体3を着脱交換できる上、エンザート6介して合成樹脂製のダイヤフラム弁体3を確実に保持できると共に、取付ボルト8でダイヤフラム弁体3を引き付けることにより、有底筒状部32の樹脂を圧縮状態として強固で安定した取付状態を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂ダイヤフラム式流体制御弁の縦断面図であって、左半部に開弁状態、右半部に閉弁状態を示す。
【図2】同樹脂ダイヤフラム式流体制御弁の開弁状態における要部の縦断面図である。
【図3】本発明の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁を適用する流路構成例を示す概略平面図であり、(a)は単流路の接続部、(b)は1流路から他の1流路への分岐接続部、(c)は1流路から他の2流路への分岐接続部、(d)は1流路から3流路への分岐部をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1で示す樹脂ダイヤフラム式流体制御弁は、内部に入口側流路12A及び出口側流路12Bとこれらに連通する弁室10を備えた弁ケース1の上部に、弁駆動部としてのエアシリンダ20が取り付けられており、エアシリンダ20内のピストン21の下部に一体形成された筒状の弁作動軸2が弁室10内の中心位置に進退自在に突入配置し、この弁作動軸2の下端部にカップ状リテーナ7及び取付ボルト8を介して、円形のダイヤフラム弁体3が中央部3aにおいて装着されている。そして、弁室10の底部には、中央位置に入口側流路12Aの流体入口12aが円形に開口すると共に、その側方に出口側流路12Bの流出口12bが円形に開口しており、流体入口12aの周縁部がダイヤフラム弁体3の中央部3aの離接によって開閉弁する環状弁座11を構成している。
【0021】
ダイヤフラム弁体3は、フッ素系樹脂等の合成樹脂成形物からなり、図2でも示すように、厚肉円盤状の中央部3aと厚肉円環状の周辺部3bとの間が薄肉の可変膜部30を構成し、中央部3aの背面側に有底筒状部32が形成されており、内外周面にねじ溝を形成した金属製筒体であるエンザート6が該有底筒状部32内に螺嵌されている。
【0022】
このダイヤフラム弁体3の中央部3aは、エンザート6を螺嵌した有底筒状部32を下向きに開放したカップ状リテーナ7の内側に嵌合し、このリテーナ7の上端の筒軸部7aを弁作動軸2の下端開口部に挿嵌した状態で、該弁作動軸2の内部に上方から装填した取付ボルト8の雄ねじ部8bを当該リテーナ7の中心孔70を通してエンザート6に螺挿緊締することにより、弁作動軸2の下端部に装着されている。なお、取付ボルト8は、弁作動軸2の下端部内周に設けた環状段部13に、平ワッシャ81及びスプリングワッシャ82を介して頭部8aを係止している。
【0023】
また、ダイヤフラム弁体3の周辺部3bは、弁ケース1の内周に形成された上向きの環状段部13と、当該ダイヤフラム弁体3の背面側(上側)に配置した金属製の押えリング4の外周部4aとの間で挟持されることにより、弁ケース1側に保持されている。従って、弁室10の内部は、該ダイヤフラム弁体3によって下部側の流路空間10aと上部側の通気空間10bとに隔絶されている。なお、弁ケース1には、上部側の通気空間10bと外部とを連通する空気孔14が設けてある。
【0024】
しかして、押えリング4の内周側は、下面側が凸曲面40aをなす背面受け部40として、図1の右半部及び図2の実線で示すように開弁時のダイヤフラム弁体3の可変膜部30の背面側に密接し、且つ図1の左半部及び図2の仮想線で示すように閉弁時に該可変膜部30から離れるように構成されている。また、図1及び図2で示すように、該押えリング4の外周部4aの下面側には環状凹段部41が形成され、この環状凹段部41にダイヤフラム弁体3の周辺部3bの背面側に設けた環状凸部31が嵌合している。
【0025】
更に、弁室10の通気空間10b内には、弁ケース1の内周に設けた下向きの環状段部15と押えリング4との間に、2枚の皿ばね5が圧縮状態で外周縁側を係止する形で装填されており、これら皿ばね5の弾発力によって押えリング4がダイヤフラム弁体3への押接方向に付勢されている。なお、押えリング4及び皿ばね5は、弁作動軸2と一体に昇降作動するカップ状リテーナ7に対して接触しない内径に設定されている。
【0026】
エアシリンダ20内には、その上壁部20aとピストン21との間に、該ピストン21を下動方向に付勢する圧縮コイルスプリング22が装填されると共に、シリンダ中心位置に、下部側を弁作動軸2の内周の雌ねじ部2bに螺着して該ピストン21に一体化したピストンシャフト23が配置している。このピストンシャフト21は、上端部内周に雌ねじ21aを設けた筒軸状をなし、上部側がエアシリンダ20の上壁部20aを昇降自在に貫通し、その上端部にボルト状の栓体24が螺着されており、シリンダ内の配置部分の上部外周には、上壁部20aとの当接によってピストン21の上限位置を規定する環状ストッパー23bが突設されると共に、同下部外周にはピストン21の内底部に当接して当該ピストン21に位置決めするフランジ部23cを備えている。25はピストン21の下方側のシリンダ前室26aに対する作動用圧縮空気の給排口、27は同上部側のシリンダ後室26bの通気口である。
【0027】
なお、ピストンシャフト21の上部側がエアシリンダ20の上壁部20aを貫通する部分、ならびに弁作動軸2がエアシリンダ20の底壁部20b及び弁ケース1の上壁部1aを貫通する部分は、それぞれシールリング9によって気密に封止されている。
【0028】
上記構成の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁では、エアシリンダ20のシリンダ前室26aに圧縮空気が導入されてないとき、圧縮コイルスプリング22の付勢によってピストン21と一体に弁作動軸2が下動し、図1の右半部及び図2の実線で示すように、ダイヤフラム弁体3の中央部3aが環状弁座11に押接した閉弁状態となり、入口側流路12Aに供給される流体Lは流出口21aの封鎖によって出口側流路12Bへの流れが遮断される。この閉弁状態において、ダイヤフラム弁体3の可変膜部30は、流路空間10a側へ凸に湾曲した状態で押えリング4の背面受け部40から開離している。
【0029】
一方、エアシリンダ20のシリンダ前室26aに圧縮空気が導入されると、圧縮コイルスプリング22の付勢に抗してピストン21と一体に弁作動軸2が上動し、図1の左半部及び図2の仮想線で示すように、ダイヤフラム弁体3の中央部3aが環状弁座11から離れた開弁状態となり、入口側流路12Aに供給される流体Lが流出口21aから流路空間10aを経て流出口12bより出口側流路12Bへ流入する。
【0030】
この開弁状態では、流体Lの圧力がダイヤフラム弁体3の可変膜部30に加わるが、該可変膜部30は押えリング4の背面受け部40に密接するため、流体圧は押えリング4で受け止められて該可変膜部30を引き延ばすようには作用しない上、該可変膜部30自体の背面側への膨出変形も阻止される。しかも、押えリング4の背面受け部40の表面が凸曲面40aになっているから、開弁時のダイヤフラム弁体3の可変膜部30は、閉弁時の状態から少し湾曲度合を強めただけになる。
【0031】
従って、ダイヤフラム弁体3は、ゴム製に比較して変形耐力が劣る上に弾力性及び伸縮性に乏しいフッ素樹脂等の合成樹脂製であるにも拘らず、弁開閉に伴う可変膜部30の変形が非常に小さいために疲労劣化を生じにくく、且つ開弁時の流体圧が押えリング4で受け止められることで該可変膜部30の歪みも発生しない。更に、押えリング4が背面側の皿ばね5によってダイヤフラム弁体3に対する押接方向に付勢されているから、開弁時の圧力衝撃が皿ばね5によって吸収されると共に、その流体圧に対する反力が押えリング4を介してダイヤフラム弁体3の可変膜部30から周辺部3bの全体に均等に加わり、もってダイヤフラム弁体3の局部的疲労も回避される。また、流体Lに脈動があっても、該皿ばね5による緩衝作用でダイヤフラム弁体3の可変膜部30が無理なく追従変形できるから、該ダイヤフラム弁体3の疲労劣化がより軽減される。
【0032】
そして、この樹脂ダイヤフラム式流体制御弁においては、上述のようにダイヤフラム弁体3が優れた耐久性を発揮して長期にわたって継続使用できるから、それだけランニングコストを低減できると共に、ダイヤフラム弁体の交換頻度の減少で稼働効率も上昇し、また開弁時のダイヤフラム弁体3の可変膜部30の変形が抑えられるから、該変形による圧損も低減されてエネルギー効率も向上する。更に、押えリング4の環状凹段部41にダイヤフラム弁体3の周辺部3bが環状凸部31で嵌合するから、ダイヤフラム弁体3に弁開閉に伴って中心側への引張力が作用したり、樹脂材料がフッ素系樹脂等である場合の熱収縮力が作用しても、該ダイヤフラム弁体3の周辺部3bが内側へ移動することがなく、もって該周辺部3bの内側移動による漏液が確実に防止される。
【0033】
ダイヤフラム弁体3を構成する合成樹脂としては、フッ素系樹脂が特に好適であるが、耐薬品性のよいものであれば、他の種々の合成樹脂も使用できる。なお、好ましいフッ素系樹脂としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂(商品名…テフロンPTFE、フルオン等)、四フッ化エチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体樹脂(商品名…テフロンPFA)、四フッ化エチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルと六フッ化プロピレンの三元共重合体樹脂(商品名…テフロンEPE)、四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンの共重合体樹脂(商品名…テフロンFEP)、四フッ化エチレンとエチレンとの共重合体樹脂(商品名…テフロンETFE、テフゼル)ポリフッ化ビニリデン樹脂(商品名…テフロンPVDF、カイナー)、トリフルオロモノクロルエチレンとエチレンの共重合体(商品名…テフロンECTFE)、モノフルオロエチレン樹脂(商品名…テフロンPVF)等が挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁は、種々の弁座形態に適用できるが、上記実施形態のように弁座11が弁室10内に開口した流体入口12aの周縁に形成された環状弁座である場合、開弁時の直接的な圧力衝撃がダイヤフラム弁体3の中央部3aに加わり、可変膜部30への圧力衝撃は小さく且つ周方向に均等にかかる形になるから、該ダイヤフラム弁体3の耐久性がより向上するという利点がある。また、上記実施形態のように、ダイヤフラム弁体3の背面側の有底筒状部32内にエンザート6を螺着し、この有底筒状部32をカップ状リテーナ7の内側に挿嵌し、弁作動軸2の筒状の先端部から突出する取付ボルト8を該エンザート6に螺挿緊締して当該ダイヤフラム弁体3を弁作動軸2の先端部に固着する構造とすれば、取付ボルト8の脱着操作で簡単にダイヤフラム弁体3を着脱交換できる上、エンザート6介して合成樹脂製のダイヤフラム弁体3を確実に保持できると共に、取付ボルト8でダイヤフラム弁体3を引き付けることにより、有底筒状部32の樹脂を圧縮状態として強固で安定した取付状態を実現できる。
【0035】
更に、本発明の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁を適用する流路接続部の構成は、特に制約されないが、図3(a)〜(d)に例示するように、弁室10に開口した一つの流体入口12aが環状弁座11をなし、その側方に1本又は複数本の流出側流路に繋がる流体出口12bを有する構成が好適である。なお、図3では弁室10を仮想線円で、流体の流れを矢印で、それぞれ示している。図中、(a)の構成は前記実施形態に相当する単流路の接続部、(b)の構成は1流路の途中に開口した流体入口12aから他の1流路への分岐接続部、(c)の構成は1流路の途中に開口した流体入口12aから他の2流路への分岐接続部、(d)の構成は1流路から3流路への分岐部である。
【0036】
なお、実施形態では弁作動機構としてエアシリンダ方式を採用しているが、本発明では油圧シリンダ方式や電磁駆動方式等の他の種々の弁作動機構も採用可能である。その他、本発明の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁の細部構成については、実施形態以外に種々設計変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 弁ケース
10 弁室
10a 流路空間
11 環状弁座11
12A 入口側流路
12a 流体入口
13 環状段部
2 弁作動軸
2a 環状段部
3 ダイヤフラム弁体
3a 中央部
3b 周辺部
30 可変膜部
31 環状凸部
32 有底筒状部
4 押えリング
4a 周辺部
40 背面受け部
40a 凸曲面
41 環状凹段部
5 皿ばね
6 エンザート
7 カップ状リテーナ
70 中心孔
8 取付ボルト
8a 頭部
8b 雄ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に対向配置した弁作動軸の先端部に、合成樹脂製のダイヤフラム弁体の中央部が保持されると共に、該ダイヤフラム弁体の周辺部が弁ケース側に挟持され、弁作動軸の進退駆動により、該ダイヤフラム弁体の中央部が前記弁座に対して離接して流路を開閉する樹脂ダイヤフラム式流体制御弁において、
前記ダイヤフラム弁体の背面側に、弁ケース内周側の環状段部との間でダイヤフラム弁体の前記周辺部を挟持する押えリングが配設され、この押えリングの内周側が、開弁時にダイヤフラム弁体の可変膜部の背面側に密接して、且つ閉弁時に該可変膜部から離れる背面受け部を構成してなる樹脂ダイヤフラム式流体制御弁。
【請求項2】
前記押えリングの背面側に、該押えリングをダイヤフラム弁体に対する押接方向に付勢する皿ばねが配置してなる請求項1に記載の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁。
【請求項3】
前記押えリングの周辺部に前記弁ケース内周側の環状段部に対向する環状凹段部が形成されると共に、ダイヤフラム弁体の背面側の周辺部に押えリングの環状凹段部に嵌合する環状凸部が形成されてなる請求項1又は2に記載の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁。
【請求項4】
前記ダイヤフラム弁体の可変膜部が閉弁時に半径方向断面で弁室の流路空間側へ凸に湾曲すると共に、前記押えリングの背面受け部の表面が凸曲面をなす請求項1〜3の何れかに記載の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁。
【請求項5】
前記弁座が弁室内に開口した流体入口の周縁に形成された環状弁座である請求項1〜3の何れかに記載の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁。
【請求項6】
前記ダイヤフラム弁体の中央部の背面側に有底筒状部が形成され、この有底筒状部の内側にエンザートが螺着されると共に、該エンザートを螺着した有底筒状部が中心孔付きのカップ状リテーナの内側に挿嵌される一方、前記弁作動軸の先端部が内周に環状段部を有する筒状に形成され、該弁作動軸の先端部内に取付ボルトが頭部を前記環状段部に係止するように装填され、該弁作動軸の先端から突出した前記取付ボルトの雄ねじ部を前記カップ状リテーナの中心孔を通して前記エンザートに螺挿緊締することにより、ダイヤフラム弁体が該弁作動軸の先端部に固着されてなる請求項1〜5の何れかに記載の樹脂ダイヤフラム式流体制御弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−266012(P2010−266012A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118759(P2009−118759)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000222336)トーステ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】