説明

樹脂チューブの拡管部形成方法

【課題】拡管時に曲がったり拡管後の金型が離型しずらくなく、拡管寸法の安定性が良好な樹脂チューブの拡管部形成方法を提供する。
【解決手段】樹脂チューブ1の拡管部形成方法において、長手方向に流路2aを有し一端が密閉されると共に一対の周溝3a,3aが形成され、これら周溝3a,3a間に前記流路2aと通じる開孔4が設けられた流体ノズル2を形成した後、この流体ノズル2の周溝3a,3aにシールリング3,3を装着し、次いで、この流体ノズル2を前記樹脂チューブ1に挿入して加圧空間5を形成する一方、内側の拡管空間7を形成する周面が拡管外側形状に一致して形成された割り型6a,6bを、前記樹脂チューブ1の加圧空間5外周に装着し、前記樹脂チューブ1を加熱する一方、前記割り型6a,6bに密着力を負荷し、前記流体ノズル2の開孔4を介して前記加圧空間5に加圧流体を導入して、前記樹脂チューブ1に拡管部1aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂チューブの拡管部形成方法に関し、更に詳しくは燃料用樹脂ホース等に用いられる樹脂チューブの拡管部形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用の燃料配管では、燃料輸送用の樹脂チューブは、コネクタを介して燃料ポンプユニットや燃料フィルター等に取り付けられた相手パイプに接続される。この様な従来例に係る樹脂チューブ付クイックコネクタにつき、以下添付図5,6を参照しながら説明する。図5は従来例に係る樹脂チューブ付クイックコネクタを相手パイプとの接続状態で示す図、図6は図5の樹脂チューブにおける被圧入部の形成方法を示す図である。
【0003】
この従来例に係る樹脂チューブ付クイックコネクタ16は、コネクタ本体18、リテーナ20及びシール部材としてのOリング22、ブッシュ24を有し、且つ前記樹脂チューブ10は、圧入部28の圧入される被圧入部10Aが、圧入前において予め拡管されており、拡管された該被圧入部10Aに対して前記圧入部28が抜止状態に圧入され一体化されている。
【0004】
そして、この従来例によれば、樹脂チューブ10の端部に、被圧入部10Aの内面形状に対応した形状を有する、予め加熱した拡管ピン48を軸方向に挿入する。即ち、拡管ピン48の持つ熱によって樹脂チューブ10の端部を軟化させ且つこれを拡管させながら、拡管ピン48を樹脂チューブ10内部に挿入する。その後、拡管ピン48を樹脂チューブ10から抜き取ることで、樹脂チューブ10の端部に拡管形状の被圧入部10Aを形成するのである(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この従来例に係る樹脂チューブ10の拡管方法は、拡管ピン48が熱いため樹脂チューブ10への挿入作業が難しい上、作業中に拡管ピン48の温度が低下して樹脂チューブ10の拡管部寸法が不安定になったり、挿入が固くなることで樹脂チューブ端末が曲がったり、拡管後の拡管ピン48が抜き取りずらく樹脂チューブ拡管部が変形し易いという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−180662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、拡管時に樹脂チューブが曲がったり、拡管後の金型が離型しずらくなく、拡管寸法の安定性が良好な樹脂チューブの拡管部形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る樹脂チューブの拡管部形成方法は、樹脂チューブの拡管部形成方法において、長手方向内部に流路を有し一端が密閉されると共に、長手方向の所定位置に所定間隔を有して一対の周溝が形成され、これら一対の周溝間に前記流路と通じる少なくとも1個の開孔が設けられた流体ノズルを形成した後、この流体ノズルに形成された一対の周溝に夫々シールリングを装着し、次いで、この流体ノズルを前記樹脂チューブに挿入して、前記流体ノズル外周と前記樹脂チューブ内周と前記一対のシールリングとにより加圧空間を形成する。
【0009】
その一方、内側の拡管空間を形成する周面が拡管外側形状に一致して形成された割り型を、前記樹脂チューブの加圧空間外周に装着し、前記樹脂チューブを加熱する一方、前記割り型を相互に密着させる密着力を負荷し、流体ノズルの流路から前記開孔を介して前記加圧空間に加圧流体を導入して、前記樹脂チューブに拡管部を形成することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係る樹脂チューブの拡管部形成方法は、請求項1に記載の樹脂チューブの拡管部形成方法において、前記割り型を離型した後、前記樹脂チューブの拡管部を切断することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る樹脂チューブの拡管部形成方法は、請求項1または2に記載の樹脂チューブの拡管部形成方法において、前記樹脂チューブの加熱が、樹脂チューブそのものを予め加熱するか、もしくは前記割り型、前記流体ノズルまたは加圧流体の何れか一つ以上の加熱を介してなされることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係る樹脂チューブの拡管部形成方法は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の樹脂チューブの拡管部形成方法において、前記割り型に冷却流体流路を設け、前記樹脂チューブの拡管後、即座にこの冷却流体流路に冷却流体を通して冷却することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る樹脂チューブの拡管部形成方法によれば、長手方向内部に流路を有し一端が密閉されると共に、長手方向の所定位置に所定間隔を有して一対の周溝が形成され、これら一対の周溝間に前記流路と通じる少なくとも1個の開孔が設けられた流体ノズルを形成した後、この流体ノズルに形成された一対の周溝に夫々シールリングを装着し、次いで、この流体ノズルを樹脂チューブに挿入して、前記流体ノズル外周と前記樹脂チューブ内周と前記一対のシールリングとにより加圧空間を形成する。
【0014】
その一方、内側の拡管空間を形成する周面が拡管外側形状に一致して形成された割り型を、前記樹脂チューブの加圧空間外周に装着し、前記樹脂チューブを加熱する一方、前記割り型を相互に密着させる密着力を負荷し、流体ノズルの流路から前記開孔を介して前記加圧空間に加圧流体を導入して、前記樹脂チューブに拡管部を形成するので、樹脂チューブの長手方向中間部における拡管作業が容易な上、作業中に割り型の温度変化が少ないので拡管部寸法が安定し、拡管作業中に挿入が固くなり樹脂チューブが曲がるといったことはなく、且つ拡管後の割り型の離型も簡単にでき、樹脂チューブ拡管部の変形を抑えることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る樹脂チューブの拡管部形成方法によれば、前記割り型を離型した後、前記樹脂チューブの拡管部を切断するので、樹脂チューブ端末の拡管部形成が確実にできる上、作業中に割り型の温度変化が少ないので拡管部寸法が安定し、拡管作業中に樹脂チューブが曲がるといったことはなく、且つ拡管後の割り型の離型も容易で、樹脂チューブ拡管部の変形を抑えることができる。
【0016】
更に、本発明の請求項3に係る樹脂チューブの拡管部形成方法によれば、前記樹脂チューブの加熱が、樹脂チューブそのものを予め加熱するか、もしくは前記割り型、前記流体ノズルまたは加圧流体の何れか一つ以上の加熱を介してなされるので、樹脂チューブの拡管部を確実に加熱できる。
【0017】
また更に、本発明の請求項4に係る樹脂チューブの拡管部形成方法によれば、前記割り型に冷却流体流路を設け、前記樹脂チューブの拡管後、即座にこの冷却流体流路に冷却流体を通して冷却するので、加熱、拡管した後の樹脂チューブの型崩れを防止し、早期の離型を可能とするものです。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂ホースの拡管部形成方法を説明するための工程図であって、図(a)は流体ノズルの先端を樹脂ホース端末に挿入する工程を示す図、図(b)は割り型を樹脂ホースの加圧空間部外周に装着する工程を示す図、図(c)は加圧空間に加圧流体を導入して樹脂ホースに拡管部を形成する工程を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る樹脂ホースの拡管部形成方法を説明するための図1に続く工程図であって、図2(d)は離型後、樹脂ホース端末に拡管部を形成する工程を示す図、図2(e)は得られた樹脂ホース端末の拡管部をコネクタへ圧入する工程を示す図である。
【図3】樹脂ホ―スの中間部に拡管部を形成する適用例に係り、クランプの位置決め用の拡管部を説明するための模式図であって、図(a)は正断面図、図(b)は図(a)の矢視A−Aを示す断面図である。
【図4】樹脂ホ―スの中間部にクランプの位置決め用拡管部を形成する拡管部形成方法を説明するための工程図の一部であって、図1(b)相当図である。
【図5】従来例に係る樹脂チューブ付クイックコネクタを相手パイプとの接続状態で示す図である。
【図6】図5の樹脂チューブにおける被圧入部の形成方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、燃料用樹脂ホース(以下、単に樹脂ホースとも言う。)とコネクタの接続を例に、以下添付図1,2を参照しながら説明する。
【0020】
図1,2は本発明の実施の形態に係る樹脂ホースの拡管部形成方法を説明するための工程図であって、図1(a)は流体ノズルの先端を樹脂ホース端末に挿入する工程を示す図、図1(b)は割り型を樹脂ホースの加圧空間部外周に装着する工程を示す図、図1(c)は加圧空間に加圧流体を導入して樹脂ホースに拡管部を形成する工程を示す図、図2(d)は離型後、樹脂ホース端末に拡管部を形成する工程を示す図、図2(e)は得られた樹脂ホース端末の拡管部をコネクタへ圧入する工程を示す図である。
【0021】
本発明の実施の形態に係る燃料用樹脂ホース1は、通常ポリアミド樹脂ホースの外周にEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)からなる保護カバーを被覆して構成され、今その樹脂ホース内径がd0、樹脂ホース外径がd1であるとする。また、この燃料用樹脂ホース1を圧入して接続するコネクタ8(図2(e)参照)は、図3を用いて説明した従来例に係るコネクタ本体18と同様の継手である。
【0022】
先ず、図1(a)に示す如く、長手方向内部に流路2aを有し先端が密閉されると共に、先端近傍の長手方向に所定間隔L2を有して一対の周溝3a,3aが形成され、これら一対の周溝3a,3a間に、前記流路2aに連通する少なくとも1個の開孔4が設けられた流体ノズル2を準備する。流体ノズルの材質としては、ステンレス鋼(SUS304等)が好適である。また、真鍮や機械構造用炭素鋼鋼材(S45C等)等も使用可能である。
【0023】
そして、前記一対の周溝3a,3aに夫々Oリング3,3を装着した後、この流体ノズル2の先端を,燃料用樹脂ホース1の端末に挿入する。すると、図1(b)に示す如く、前記流体ノズル2外周と樹脂ホース1内周と一対のOリング3,3とによって、密閉された加圧空間5が形成される。ここで、前記Oリング3,3は、前記樹脂ホース1が環状以外の断面、例えば多角形断面等を有する場合は、その断面の周形状に合致したシールリングを用いるのが好ましい。
【0024】
ここで、前記周溝3a,3aが形成される所定間隔L2とは、後述の樹脂ホース1を拡管して形成される拡管部1aの長手方向の長さ、即ち拡管長さL1(図1(c),図2(d)参照)に対して、L2>L1となる長さである。そして、所定間隔L2をこの様な寸法とすることが、後述の加圧流体導入時に前記加圧空間5から漏れを生じることのない様に構成する上で肝要である。また、周溝3a,3aに装着後の前記Oリング3,3の外径d2が樹脂ホース内径d0に対して、d2≧d0となる様に構成することも、上記同一の理由から肝要である。
【0025】
その後、両者の合わせ面を密着させたとき、内側に拡管空間7を形成する周面の内径が拡管外径D1に一致する寸法に形成された割り型6a,6bを、前記樹脂ホース1の加圧空間5外周に装着する(図1(b)参照)。
【0026】
ここで、前記拡管外径D1は、樹脂ホース1が相手方のコネクタ8先端外径を越えて拡管される拡管部1aの拡管内径D0(図2(e)参照)から定まる寸法である。また、前記割り型6a,6bの合わせ面を密着させたとき、拡管空間7を形成する周面以外の内周面の径、即ち割り型シール内径D2は、樹脂ホース1の外周に密着して、次に述べる加圧流体導入時に漏れを生じない様にするため、樹脂ホース外径d1に対して、D2<d1とすることが肝要である。
【0027】
次いで、図1(c)に示す様に、割り型6a,6bの合わせ面を相互に密着させるため、矢印で示す密着力を負荷すると共に、樹脂ホース1を温度200〜250℃に加熱しつつ、流体ノズル2の流路2aから開孔4を介して前記加圧空間5に、圧力1.5〜2.5MPaに加圧された加圧流体を導入する。すると、前記樹脂ホース1は加熱されて軟化しているので、拡管空間7内に膨張され、その外周が、割り型6a,6bの内周に形成された拡管外径D1にまで拡径される。
【0028】
前記樹脂ホース1の加熱は、前記割り型6a,6b、流体ノズル2または前記加圧流体の何れか一つ以上の加熱を介してなされるが好ましい。前記割り型6a,6aを埋設されたシーズヒータによって加熱する場合は、樹脂ホース1の拡管部1aを確実に加熱でき、予め加熱した前記加圧流体を介して加熱される場合は、前記樹脂ホース1への加圧と加熱が一つの媒体である加圧流体のみでなされるので効率的である。また、前記樹脂ホース1の加熱は、樹脂ホース1そのものを予めシーズヒータやエアヒータで加熱することもできる。
【0029】
また、前記加圧流体としては、加圧された気体や液体を用いることができるが、圧縮空気を用いるのが、加圧後に樹脂ホース1内を乾燥する必要もなく取り扱いも簡単なため、効率の良い加圧操作が可能である。
【0030】
そして、前記樹脂ホース1が拡径された後、前記割り型6a,6bを離型すると、図2(a)に示す如く、前記樹脂ホース1の中間部に拡管部1aが形成される。次いで、前記拡管部1aの端末側近傍を切断部Cとして切断すると、ホース端末に拡管部1bが形成される。この切断されたホース端末の拡管部1bを、コネクタ8の圧入部8aに圧入すれば、前記樹脂ホース1とコネクタ8を接続可能である。
【0031】
尚、前記樹脂ホース1の中間部に拡管部1aを形成する拡管部形成方法の適用例を、以下添付図3,4を参照しながら簡単に説明する。図3は樹脂ホ―スの中間部に拡管部を形成する適用例に係り、クランプの位置決め用の拡管部を説明するための模式図であって、図(a)は正断面図、図(b)は図(a)の矢視A−Aを示す断面図、図4は樹脂ホ―スの中間部にクランプの位置決め用拡管部を形成する拡管部形成方法を説明するための一部の工程図であって、図1(b)相当図である。
【0032】
即ち、この樹脂ホース1の中間部において、クランプ9の固定箇所を規制する拡管部1a−1,1a−2のうち、先ずホースの端末から遠い方の拡管部1a−1まで、上記本発明の実施の形態で説明した様に流体ノズル2を挿入し、所定の工程操作を経て拡管部1a−1を形成する。次いで、ホースの端末から近い方の拡管部1a−2まで、上記本発明の実施の形態で説明した様に流体ノズル2を挿入し、所定の工程操作を経て他の拡管部1a−2を形成する。
【0033】
或いはまた、前記拡管部1a−1,1a−2の形成は、図4に示す如く、Oリング3、3を一つの流体ノズル2に対して2対設け、前記拡管部1a−1,1a−2を同時に拡管しても良い。
【0034】
その後、前記拡管部1a−1,1a−2間に、予め用意したクランプを巻き付け、貫通孔9aに通したボルト等の締結具を図示しない固定箇所に締結して、前記樹脂ホース1の移動を防止し位置決めを行う。ここで、前記クランプ9は、予め樹脂ホース1に巻き付けておき、クランプ9の両側に前記拡管部1a−1,1a−2を形成しても良い。
【0035】
以上説明した通り、本発明の実施の形態に係る樹脂ホース1の拡管部形成方法によれば、長手方向内部に流路2aを有し一端が密閉されると共に、先端近傍の長手方向に所定間隔L2を有して一対の周溝3a,3aが形成され、これら一対の周溝3a,3a間に、前記流路2aと連通する少なくとも1個の開孔4が設けられた流体ノズル2の、前記一対の周溝3a,3aに夫々Oリング3,3を装着した後、この流体ノズル2の先端を前記樹脂ホース1端末に挿入して、前記流体ノズル2外周と前記樹脂ホース1内周と前記一対のOリング3,3とにより加圧空間5を形成する。
【0036】
その一方、内側の拡管空間7を形成する周面が拡管外径寸法D1に形成された割り型6a,6bを、前記樹脂ホース1の加圧空間5外周に装着し、前記割り型6a,6bを相互に密着させる密着力を負荷すると共に、前記樹脂ホース1を加熱しつつ、流体ノズル2の流路2aから前記開孔4を介して前記加圧空間5に加圧流体を導入して、前記樹脂ホース1を拡管し、前記割り型6a,6bを離型した後、前記樹脂ホース1の拡管部1aを形成する。更には、この拡管部1aを切断してホース端末の拡管部1bを形成する。
【0037】
その結果、樹脂ホースの拡管作業が容易な上、作業中に割り型の温度変化が少ないので、拡管部寸法が安定し、拡管作業中に挿入が固くなり樹脂ホースを曲げることなく、且つ拡管後の割り型の離型も簡単にでき、樹脂ホース端末部の変形を抑えることができる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明に係る樹脂ホースの拡管部形成方法に関し、燃料樹脂ホースの実施例を、以下添付図1,2を参照しながら工程を追って説明する。燃料樹脂ホースとコネクタの諸元は下記の通りである。
【0039】
(1)燃料樹脂ホース
・材質構成 :ポリアミド製樹脂ホース/EPDM製保護カバー
・ホース寸法:外径d1=6mm,内径d0=2.5mm
(2)コネクタ
・圧入部先端外径:3.0mm
・圧入部最大外径:4.9mm
【0040】
先ず、図1(a)に示す如く、長手方向に直径0.8mmの流路2aが設けられ密閉された先端近傍に、幅0.5mm、深さ0.3mmの一対の周溝3a,3aを、間隔L2=25mmを設けて形成すると共に、これら一対の周溝3a,3a間に、2個の開孔4を設けたSUS304製の流体ノズル2を削り出しと穿孔によって作製した。
【0041】
次いで、この流体ノズル2の一対の周溝3a,3aに、内径1.6mm,線径0.4mmのふっ素ゴム製Oリングを夫々装着し、装着後のOリング外径d2が2.6mmとなる様にした。
【0042】
そして、この流体ノズル2の先端を,燃料用樹脂ホース1の端末に挿入し、図1(b)に示す如く、流体ノズル2外周と樹脂ホース1内周と一対のOリング3,3とによって、密閉された加圧空間5を形成した。その後、内部にシーズヒータが埋設され、両者の合わせ面を密着させたとき、内周側に拡管空間7を形成する内面の直径が拡管外径D1=6.5mmに一致し、長さが拡管長さL1=20mmに形成された割り型6a,6bを、図1(c)に示す様に、前記樹脂ホース1の加圧空間5外周に装着する。
【0043】
そして、クランプを用いて割り型6a,6bの合わせ面を相互に密着させると共に、シーズヒータを温度200℃に加熱しつつ、流体ノズル2の流路2aから開孔4を介して前記加圧空間5に、2.0MPaの圧縮空気を導入する。すると、前記樹脂ホース1は加熱されて軟化しており、拡管空間7内に膨張して、その外周が、割り型6a,6bの内周の拡管外径D1=6.5mmにまで拡径される。
【0044】
そして、前記樹脂ホース1が拡径され、割り型を介して拡管部を冷却した後、前記割り型6a,6bを離型すると、図2(a)に示す如く、前記樹脂ホース1の先端近傍に、外径D1=6.5mm、内径D0=3.5mm、長さL1=20mmの拡管部1aが形成されていた。そこで、前記拡管部1aの先端から16mmの箇所を切断部Cとして切断してホース端末の拡管部1bを形成した。
【0045】
以上の通り、本発明に係る樹脂ホースの拡管部形成方法によれば、樹脂ホースの拡管作業が容易になる上、作業中に割り型の温度変化が少ないので、拡管部寸法が安定し、拡管作業中に挿入が固くなり樹脂ホースが曲がることなく、拡管後の割り型の離型も容易になし得、更に樹脂ホース拡管部の変形を抑えることができる様になった。
【0046】
尚、上記実施の形態においては、燃料用樹脂ホースの端末に拡管部を形成する拡管部形成方法を例に説明したが、本発明に係る樹脂チューブの拡管部形成方法は、樹脂チューブは燃料用樹脂ホースに限定することなく、熱可塑性樹脂を用いた樹脂チューブであれば用途に関係なく適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
C:切断部,
d0:樹脂ホース内径, d1:樹脂ホース外径,
d2:周溝装着後のOリング外径,
D0:拡管内径, D1:拡管外径,
D2:割り型シール内径,
L1:拡管長さ, L2:周溝が形成される所定間隔,
1:(燃料用)樹脂ホース, 1a,1b,1a−1,1a−2:拡管部,
2:流体ノズル, 2a:流路,
3:Oリング, 3a:周溝,
4:開孔,
5:加圧空間,
6a,6b:割り型,
7:拡管空間,
8:コネクタ, 8a:圧入部,
9:クランプ, 9a:貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂チューブの拡管部形成方法において、
長手方向内部に流路を有し一端が密閉されると共に、長手方向の所定位置に所定間隔を有して一対の周溝が形成され、これら一対の周溝間に前記流路と通じる少なくとも1個の開孔が設けられた流体ノズルを形成した後、
この流体ノズルに形成された一対の周溝に夫々シールリングを装着し、
次いで、この流体ノズルを前記樹脂チューブに挿入して、前記流体ノズル外周と前記樹脂チューブ内周と前記一対のシールリングとにより加圧空間を形成する一方、
内側の拡管空間を形成する周面が拡管外側形状に一致して形成された割り型を、前記樹脂チューブの加圧空間外周に装着し、
前記樹脂チューブを加熱する一方、前記割り型を相互に密着させる密着力を負荷し、
流体ノズルの流路から前記開孔を介して前記加圧空間に加圧流体を導入して、前記樹脂チューブに拡管部を形成することを特徴とする樹脂チューブの拡管部形成方法。
【請求項2】
前記割り型を離型した後、前記樹脂チューブの拡管部を切断し、この樹脂チューブ端末に拡管部を形成することを特徴とする請求項1に記載の樹脂チューブの拡管部形成方法。
【請求項3】
前記樹脂チューブの加熱が、樹脂チューブそのものを予め加熱するか、もしくは前記割り型、前記流体ノズルまたは加圧流体の何れか一つ以上の加熱を介してなされることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂チューブの拡管部形成方法
【請求項4】
前記割り型に冷却流体流路を設け、前記樹脂チューブの拡管後、即座にこの冷却流体流路に冷却流体を通して冷却することを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の樹脂チューブの拡管部形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31579(P2011−31579A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182633(P2009−182633)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】