説明

樹脂フィルム及び太陽電池モジュール

【課題】400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域を含む広い範囲で紫外線遮蔽効果を有し、長期に亘り優れた耐光性能を維持する樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】支持体と、該支持体の少なくとも一方に設けられ、下記一般式(1)で表される化合物及びポリマーを含有するポリマー層とを有する樹脂フィルム〔R1a、R1b、R1c、R1d、R1e:OHを除く1価の置換基(R1a〜R1eの少なくとも1つはハメット則のσp値が正である置換基),水素原子、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、R1p:水素原子、1価の置換基〕である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、従来から種々の分野で用いられており、近年では太陽電池の分野にも用いられるようになっている。
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側に配置される透明性のガラス基板と、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される裏面保護用のいわゆるバックシートとの間に、太陽電池セルが挟まれた構造を有している。ガラスと太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルとバックシートとの間は、一般にEVA(エチレン−ビニルアセテート)樹脂などの封止剤を用いて封止されている。
【0003】
バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するものであり、コスト等の観点からポリエステルが用いられるようになってきている。ポリエステルを用いたバックシートとしては、例えばポリエステル支持体の太陽光が入射する側に、反射性能を持たせた着色層や封止材に対する易接着性の層を付与したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ポリエステルを用いたバックシートは、機械強度が大きく安価である点で好適なものと考えられている。ところが、屋外などで長期に亘り紫外線(UV)等の光に曝される環境下では、紫外線等によりポリエステルが劣化してひび割れを生じたりポリエステル上に塗布形成された塗布層が剥離する等の問題が生じる場合がある。
【0005】
このような問題に関連して、ポリエステル支持体に紫外線吸収剤を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
紫外線吸収剤としては、無機系及び有機系の紫外線吸収剤が知られている。このうち、有機系の紫外線吸収剤は、無機系の紫外線吸収剤に比べて、化合物構造の設計自由度が高いことから、分子構造を工夫することにより様々な吸収波長のものが得られる。そのため、従来から種々の有機系紫外線吸収剤が提案されており、その一例として、トリアゾール系の紫外線吸収剤が開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、特定の位置にアルコキシ基及びヒドロキシ基を有するトリスアリール−s−トリアジンに関する開示がある(例えば、特許文献4参照)。ところが、極大吸収波長が長波紫外線領域にあるものは、耐光性が悪い傾向があり、紫外線遮蔽効果は時間とともに減少する。そのため、紫外線曝光下に長期間置かれる使用形態では、遮蔽効果が維持できないために長期耐久性を大きく向上できない状況にあった。
【0007】
特に近年注目されている太陽電池等は、屋外で長時間太陽光の下に曝される使用形態が通常であり、長期経時で次第に劣化が進行すると、発電性能の低下を来たす。したがって、UV−A領域(400〜315nm)に至る広い紫外域で長期に亘って安定したUV遮蔽効果を示すような化合物が求められる。
【0008】
一方、従来から用いられているベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、比較的耐光性がよく、濃度や膜厚を大きくすれば、長波長領域まで比較的クリアに紫外線をカットすることができる(例えば、特許文献5〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−118267号公報
【特許文献2】特開2009−188105号公報
【特許文献3】特表2002−524452号公報
【特許文献4】特許第3965631号
【特許文献5】特開平6−145387号公報
【特許文献6】特開2003−177235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、従来、太陽電池等のように紫外線等に長時間連続的に曝されるような使用形態では、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域まで吸収が行なえず、紫外線吸収剤を用いても長期使用に耐える耐久性能を確保できるに至っていないのが現状である。太陽光は、その受光面のみならず、側部や裏面にも反射等により回り込むため、路面に配されるバックシートの耐久性にも大きな影響を与える。そのため、UV−A領域を含む広い紫外域で長期に亘って安定したUV遮蔽効果を保てる技術の確立に対する要求は高い。
【0011】
一方、紫外線吸収剤は一般に樹脂等と混合して用いられるが、上記のように紫外線吸収剤の濃度やそれを含む膜の厚みを増す方法では、膜厚は数十μm程度が限界であり、この範囲で長波長領域までカットするには通常以上に高濃度に紫外線吸収剤を添加しなければならない。しかしながら、単に高濃度に添加するのみでは、紫外線吸収剤の析出や長期使用によるブリードアウトを招くほか、臭気性が悪化する課題もある。
また、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、溶解性が低いものが多く、高濃度で樹脂等に混ぜて塗布することは難しいといった課題もある。
【0012】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域を含む広い範囲で紫外線遮蔽効果を有し、長期に亘り優れた耐光性能を維持する樹脂フィルム、及び設置環境に関わらず、長期に亘り安定的な発電性能が得られる太陽電池モジュールを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 支持体と、該支持体の少なくとも一方(好ましくは、支持体の太陽電池素子が配置される側と反対側の裏面)に設けられ、下記一般式(1)で表される化合物及びポリマーを含有するポリマー層と、を有する樹脂フィルムである。
【0014】
【化1】

【0015】
前記一般式(1)において、R1a、R1b、R1c、R1d、及びR1eは、各々独立に、水素原子、又はOHを除く1価の置換基を表し、R1a〜R1eの少なくとも1つはハメット則のσp値が正である基であり、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、及びR1pは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0016】
<2> 前記一般式(1)で表される化合物の前記ポリマー層中における含有量が0.2g/m以上5.0g/m以下である前記<1>に記載の樹脂フィルムである。
<3> 前記R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、R1pで表される1価の置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルキル部位の炭素数が1〜20のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル部位の炭素数が1〜20のアルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基(R1a、R1b、R1c、R1d、R1eを除く)、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基、又はアルキル部位の炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基である前記<1>又は前記<2>に記載の樹脂フィルムである。
<4> 前記R1b、R1c及びR1dの少なくとも一つは、ハメット則のσp値が正である置換基である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
<5>
前記一般式(1)中のR1b、R1c、及びR1dの少なくとも1つは、ハメット則のσp値が0.3〜1.2の範囲である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
<6> 前記ハメット則のσp値が正である基は、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、及びSOMより選択される基〔R及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Mは水素原子又はアルカリ金属を表す。〕である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
<7> 前記一般式(1)中におけるR1a、R1b、R1d、R1e、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、及びR1pが水素原子であり、R1cがCOOR〔Rは1価の置換基を表す。〕である前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
【0017】
<8> 前記支持体が、ポリエステル基材である前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
<9> 前記支持体上の前記ポリマー層の上に更に、ポリマーを含み、前記一般式(1)で表される化合物の含有量がバインダーの総量に対して1.0質量%以下である保護ポリマー層を有する前記<1>〜前記<8>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
<10> 120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びが、保存する前の破断伸びに対して50%以上である前記<1>〜前記<9>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
<11> 前記ポリマー層及び前記保護ポリマー層の少なくとも一方は、前記ポリマーの少なくとも一種として、フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーから選ばれるポリマーを含有する前記<1>〜前記<10>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムである。
<12> 太陽光が入射する透明性の基材と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子の前記基材が配された側と反対側に設けられた前記<1>〜前記<11>のいずれか1つに記載の樹脂フィルムとを備えた太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域を含む広い範囲で紫外線遮蔽効果を有し、長期に亘り優れた耐光性能を維持する樹脂フィルムを提供することができる。また、
本発明によれば、設置環境に関わらず、長期に亘り安定的な発電性能が得られる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】太陽電池モジュールの構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の樹脂フィルム及び太陽電池モジュールについて、詳細に説明する。
本発明の樹脂フィルムは、例えば、支持体の一方にポリマー層が設けられた太陽電池用バックシートに構成することができる。その場合、必要に応じて、例えば支持体のポリマー層が設けられた側と反対側に着色層等の他の層を有してもよい。
【0021】
<樹脂フィルム>
本発明の樹脂フィルムは、支持体と、該支持体の少なくとも一方に設けられ、以下に示す一般式(1)で表される化合物とポリマーとを含有するポリマー層とを設けて構成されたものである。本発明の樹脂フィルムは、支持体及びポリマー層のみで構成されてもよいし、支持体の面上又はポリマー層の面上に、必要に応じて、ポリマー層とは別の、例えば着色層、易接着性層、下塗り層等の他の層を更に有していてもよい。他の層は1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0022】
本発明においては、支持体の少なくとも一方の面(例えば太陽電池用バックシートに構成する場合は、好ましくは支持体の太陽電池素子が配置される側と反対側の裏面)に設けられるポリマー層の紫外線吸収剤として特定構造を有する有機紫外線吸収剤を含有することで、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域を含む広い範囲で紫外線遮蔽効果が得られ、長期に亘って耐光性能が保持されるので、特に太陽光の下に長期に亘り継続的に置かれる使用形態において長期耐久性が飛躍的に向上する。本発明の樹脂フィルムは、例えば、太陽電池の用途に適用され、太陽電池用バックシートとして用いられた場合には、太陽電池用バックシートの長期耐久性が飛躍的に向上する。これにより、太陽電池モジュールを構成して屋外などの紫外線に長時間曝される使用態様に置かれた場合でも、長期に亘って安定的に発電性能を確保することができる。
【0023】
本発明の樹脂フィルムは、120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、保存前の破断伸びに対する比が50%以上であることが好ましい(以下、当該条件により湿熱処理した樹脂フィルムの処理前後における破断伸びの保持率を、単に「破断伸び保持率」ともいう。)。破断伸び保持率が50%以上であることで、加水分解に伴う変化が抑えられ、長期使用の際に被着物との密着界面での密着状態が安定的に保持されることにより、経時での剥離等が防止される。これにより、例えば屋外等の高温、高湿環境や曝光下に長期に亘り置かれる場合でも、高い耐久性能を示す。
本発明における破断伸び保持率は、ポリマー支持体とポリマー層と(必要に応じて保護ポリマー層、着色層等の他の層と)が設けられた形態での保持率である。
本発明の樹脂フィルムの破断伸び保持率は、上記同様の理由から、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0024】
前記破断伸度保持率[%]は、下記の測定方法で測定される破断伸びの測定値L及びLから下記式により求められる値である。
破断伸び保持率[%]=(L/L)×100
具体的には、樹脂フィルムを幅10mm×長さ200mmに裁断して、測定用のサンプル片A及びBを用意する。このうち、サンプル片Aに対して、25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿を施し、テンシロン(ORIENTEC製、RTC−1210A)により、サンプル片の延伸長さ:10cm、引っ張り速度:20mm/分の条件にて引っ張り試験を行ない、得られたサンプル片Aの破断伸びをLとする。また別途、サンプル片Bに対して、120℃、100%RHの雰囲気で50時間湿熱処理を施し、サンプル片Aと同様に引っ張り試験を行ない、得られたサンプル片Bの破断伸びをLとする。
破断伸び保持率の調整は、支持体の厚み、例えば支持体がポリエステルの場合はそのカルボキシル基含量、熱固定温度、延伸倍率などにより行なえる。
【0025】
−支持体−
本発明の樹脂フィルムは、支持体を設けて構成されている。
支持体としては、従来から知られている支持基材を適宜選択することができるが、ポリマー層に特定の紫外線吸収剤を用いることによる耐光性能の向上効果をより一層高める観点からポリマー基材が好ましい。該ポリマー基材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、又はポリフッ化ビニルなどのフッ素系ポリマー等を用いた基材が挙げられる。これらの中では、コストや機械強度などの点から、ポリエステル基材が好ましい。
【0026】
本発明における支持体として用いられるポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。このうち、力学的物性やコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0027】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
【0028】
本発明におけるポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物をTi元素換算値が1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲となるように触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の使用量がTi元素換算で前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0029】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号等に記載の方法を適用できる。
【0030】
ポリエステル中のカルボキシル基含量は50当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量が50当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば着色層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0031】
本発明におけるポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を適用することができる。
【0032】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0033】
本発明におけるポリエステル基材は、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出を行なった後、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを「ガラス転移温度(Tg)〜(Tg+60)℃」で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180〜230℃で1〜60秒間の熱処理を行なったものでもよい。
【0034】
ポリマー基材(特にポリエステル基材)の厚みは、25〜300μm程度が好ましい。厚みは、25μm以上であると力学強度が良好であり、300μm以下であるとコスト的に有利である。
特にポリエステル基材は、厚みが増すに伴なって耐加水分解性が悪化し、長期使用に耐えない傾向にあり、本発明においては、厚みが120μm以上300μm以下であって、かつポリエステル中のカルボキシル基含量が2〜50当量/tである場合に、より湿熱耐久性の向上効果が奏される。
【0035】
−ポリマー層−
本発明の樹脂フィルムは、前記支持体の一方又は両方の側に、(好ましくは塗布方法により)少なくとも一層のポリマー層を設けて構成されている。このポリマー層は、下記一般式(1)で表される化合物(紫外線吸収剤)とポリマーとを少なくとも含み、必要に応じて、さらに架橋剤や顔料、前記一般式(1)で表される化合物以外の紫外線吸収剤等の各種添加剤などの他の成分を用いて構成することができる。ポリマー層は、単層で設けられてもよいし、二層以上が設けられた態様でもよい。
【0036】
(紫外線吸収剤)
本発明におけるポリマー層は、紫外線吸収剤として、下記一般式(1)で表される化合物の少なくとも一種を含有する。この紫外線吸収剤は、従来の紫外線吸収剤に比べてより長波の紫外線に吸収を持ち、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域を含む広い範囲で紫外線遮蔽効果が得られる。これにより、長期使用時において、従来に比べてより優れた耐光性能が保てる。
【0037】
【化2】

【0038】
前記一般式(1)において、R1a、R1b、R1c、R1d、及びR1eは、各々独立に、水素原子、又はヒドロキシ基(OH基)を除く1価の置換基を表す。R1a〜R1eの少なくとも1つは、前記置換基のうち、ハメット則のσp値が正である置換基であり、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0039】
1a、R1b、R1c、R1d、R1eで表される置換基のうち、1〜3個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことが好ましく、1〜2個がハメット則のσp値が正である置換基を表すことがより好ましい。
【0040】
前記一般式(1)における1価の置換基(以下、「置換基A」とする。)としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、アミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、置換スルホアミノ基)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、イミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基(R1a、R1b、R1c、R1d、R1eで表される1価の置換基には含まれない。)、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えばメトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、スルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ)、チオシアネート基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、炭素数6〜20のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。
前記1価の置換基は、無置換でもよいし、更に置換基で置換されていてもよく、置換基を複数有する場合は該複数の置換基は同じでも異なってもよい。置換基で置換されている場合の置換基の例としては、前記「1価の置換基A」の例として挙げられた各基を挙げることができる。また、置換基同士が結合して環が形成されてもよい。
【0041】
置換基同士が結合して形成される前記環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環等が挙げられる。
【0042】
前記一般式(1)における1価の置換基Aとしては、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルキル部位の炭素数が1〜20のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキル部位の炭素数が1〜20のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基(R1a、R1b、R1c、R1d、R1eで表される1価の置換基には含まれない。)、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキル部位の炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基が好ましい。これらの中でも、ヒドロキシ基(R1a、R1b、R1c、R1d、R1eで表される1価の置換基には含まれない。)、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基、アミド基がより好ましく、ヒドロキシ基(R1a、R1b、R1c、R1d、R1eで表される1価の置換基には含まれない。)、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアルキル基が更に好ましい。
アルコキシ基のアルキル部位は、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が更に好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0043】
前記R1a、R1b、R1c、R1d、R1eのうち、本発明における好ましい第一の態様として、R1a、R1c、R1eのうち少なくとも1つ、又はR1b、R1c、R1dのうち少なくとも1つが1価の置換基を表し、該置換基の少なくとも1つがハメット則のσp値が正である置換基を表す態様が挙げられる。中でも、R1cがハメット則のσp値が正である置換基を表す態様がより好ましい。また、R1cがハメット則のσp値が正である置換基であり、R1a、R1b、R1d、R1eが水素原子を表す態様が更に好ましい。R1cがハメット則のσp値が正である置換基を表す場合、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、耐光性が向上するため好ましい。
【0044】
第一の態様においては、一般式(1)中のR1a、R1c、R1eにおける「ハメット則のσp値が正である置換基」としては、好ましくはσp値が0.1〜1.2の電子求引性基である。σp値は、0.3〜1.2の範囲が好ましい。
σp値が0.1以上の電子求引性基の具体例としては、COOR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。)、CONR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。)、CN、ハロゲン原子、NO、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換されたイミノ基、カルボキシ基(又はその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えばCF)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、σ値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。
ハメットのσp値については、Hansch, C.; Leo, A.; Taft, R. W . Chem. Rev. 1991, 91, 165-195に詳しく記載されている。
【0045】
前記「ハメット則のσp値が正である置換基」としては、優れた耐光性と溶解性を有する観点から、ハメット則のσp値が0.3〜1.2の範囲である置換基が好ましく、より好ましくはCOOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、及びSOMから選択される。ここで、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す(Mに関して以下同様である)。この中でも、「ハメット則のσp値が正である置換基」は、上記同様の理由から、COOR又はCNが更に好ましく、COORが特に好ましい。
【0046】
前記R、Rは、水素原子又は1価の置換基を表し、ここでの1価の置換基としては前記置換基Aを挙げることができる。中でも、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
また、前記Mで表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、又はカリウムが挙げられ、特にナトリウム、カリウムが好ましい(以下、Mについて同様である)。
【0047】
前記一般式(1)で表される化合物においては、R1a、R1b、R1c、R1d、及びR1eの少なくとも1つは、ハメット則のσp値が0.3〜1.2の範囲である置換基が好ましい。
【0048】
中でも、R1cが、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、SOMのいずれかである態様が好ましく、更には、COOR又はCNである態様がより好ましく、CNである態様が更に好ましい。
【0049】
前記一般式(1)において、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、及びR1pは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0050】
1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pの少なくとも1つが、前記「ハメット則のσp値が正である置換基」を表すことが好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jの少なくとも1つが、前記「ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基」を表すことがより好ましく、更には、R1hが前記「ハメット則のσp値が正である置換基」を表すことが更に好ましい。
【0051】
本発明においては、優れた耐光性を示す点で、R1n及びR1hが前記「ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基」を表す場合が特に好ましい。
【0052】
また、本発明において、優れた耐光性を示す点で、R1h又はR1nが、それぞれ独立に、水素原子、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、SOMのいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。
【0053】
前記一般式(1)で表される化合物において、優れた耐光性を示す点で、R1cが「ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基」であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子である場合が好ましく、R1cがCOOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、又はSOMのいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子である場合がより好ましい。
【0054】
前記一般式(1)で表される化合物は、pKaが−5.0〜−7.0の範囲であることが好ましく、−5.2〜−6.5の範囲であることがより好ましく、−5.4〜−6.0の範囲であることが更に好ましい。
【0055】
本発明における好ましい第二の態様として、R1b、R1c及びR1dの少なくとも一つは、ハメット則のσp値が正である置換基であるのが好ましく、更にはσp値が0.3〜1.2の範囲が好ましい。
また、R1b及びR1dが、各々独立に1価の置換基を表し、R1a、R1c及びR1eが水素原子を表し、R1b及びR1dの少なくとも1つはハメット則のσp値が正である置換基である態様を挙げることができる。これにより、一般式(1)で表される化合物は、特に溶剤溶解性が優れる。ポリマーとの相溶性(特にポリエステルとの相溶性に優れることから、該化合物を含むポリエステル樹脂組成物としたときには、一般式(1)で表される化合物の析出又はブリードアウトが発生し難くいものとする効果を有する。
ここで、溶剤溶解性とは、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどの有機溶剤への溶解性を意味する。ポリマーとの相溶性(特にポリエステルとの相溶性)の点で、使用する溶剤に対して10質量%以上溶解することが好ましく、30質量%以上溶解することがより好ましい。
【0056】
第二の態様においては、前記一般式(1)中のR1b及びR1dにおける「ハメット則のσp値が正である置換基」としては、好ましくはCOOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、及びSOMから選択される。ここで、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。R、Rで表される1価の置換基としては、既述の置換基Aを挙げることができる。
【0057】
前記「ハメット則のσp値が正である置換基」としては、優れた耐光性と溶解性を示す点で、より好ましくはCOOR又はシアノ基であり、更にはCOORであることが好ましい。「ハメット則のσp値が正である置換基」がシアノ基である場合は、より優れた耐光性を示し、また「ハメット則のσp値が正である置換基」がCOORである場合は、より優れた溶剤溶解性を示す。
【0058】
は、水素原子又はアルキル基を表すことが好ましく、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜15の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が更に好ましい。また、Rは、溶媒に対する溶解性の観点からは、炭素数5〜15の分岐鎖のアルキル基がより好ましい。
分岐鎖のアルキル基は、2級炭素原子又は3級炭素原子を有し、2級炭素原子又は3級炭素原子を1〜5個含むことが好ましく、1〜3個含むことが好ましく、1又は2個含むことが好ましく、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含むことがより好ましい。また、不斉炭素を1〜3個含むことが好ましい。
は、溶媒に対する溶解性の観点からは、2級炭素原子及び3級炭素原子を1又は2個含み、不斉炭素を1又は2個含む炭素数5〜15の分岐鎖のアルキル基であることが特に好ましい。
これは、化合物構造の対称性が崩れ、溶解性が向上するためである。
【0059】
一方、紫外線吸収能の観点からは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、t−ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、i−オクチルを挙げることができ、メチル又はエチルが好ましく、メチルが特に好ましい。
【0060】
また、本発明において、優れた耐光性を示す点で、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが1価の置換基を表す場合は、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pの少なくとも1つが前記「ハメット則のσp値が正である置換基」を表すことがより好ましく、R1g、R1h、R1i及びR1jの少なくとも1つが前記「ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基」を表すことがより好ましく、R1hが前記「ハメット則のσp値が正である置換基」を表すことが更に好ましい。R1b又はR1d、及びR1hが前記「ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2)である置換基」を表すことが特に好ましい。
本発明において、優れた耐光性を示す点で、R1h又はR1nがそれぞれ独立に水素原子、COOR、CONR、シアノ基、CF、ハロゲン原子、ニトロ基、SOMのいずれかであることが好ましく、R1h又はR1nが水素原子であることがより好ましく、R1h及びR1nが水素原子であることが更に好ましく、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子を表すことが特に好ましい。
【0061】
前記一般式(1)で表される化合物においては、優れた耐光性を示す点で、R1b、R1c又はR1dが「ハメット則のσp値が正(好ましくは0.1〜1.2、更に好ましくは0.3〜1.2)である置換基」であって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子である場合が好ましく、R1b、R1c又はR1dがCOOR、CONR、シアノ基、CF、ハロゲン原子、ニトロ基、又はSOMのいずれかであって、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n及びR1pが水素原子である場合がより好ましい。
特に好ましくは、R1a、R1b、R1d、R1e、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、及びR1pが水素原子であり、R1cがCOOR〔Rは1価の置換基を表す。〕である。
【0062】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の具体例において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を、−C13はn−ヘキシルをそれぞれ表す。
【0063】
【化3】

【0064】
【化4】

【0065】
【化5】

【0066】
【化6】

【0067】
【化7】

【0068】
【化8】

【0069】
【化9】

【0070】
【化10】

【0071】
【化11】

【0072】
【化12】

【0073】
前記一般式(1)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得るが、一般式(1)で表される化合物には、互変異性体も含まれる。
【0074】
前記一般式(1)で表される化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0075】
前記一般式(1)で表される化合物は、任意の方法で合成することができる。
例えば、公知の特許文献や非特許文献(例えば、特開平7−188190号公報、特開平11−315072号公報、特開2001−220385号公報や、「染料と薬品」第40巻12号(1995)の325〜339ページなど)を参照して合成することができる。具体的には、前記例示化合物(16)は、サリチルアミドと3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾイルクロリドと2−ヒドロキシベンズアミジン塩酸塩とを反応させることにより合成できる。また、サリチルアミドとサリチル酸と3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミジン塩酸塩とを反応させることによっても合成できる。
【0076】
前記一般式(1)で表される化合物は、有機溶媒に対する溶解性に優れるという特徴を有すると共に、構造式中の特定位置に「ハメット則のσp値が正である置換基」を有するため、電子求引性基によりLUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、優れた耐光性を有している。したがって、紫外線吸収剤として用いた場合に、トリアジン系化合物等の従来より用いられている紫外線吸収剤では高濃度で含有すると析出や長期使用によるブリードアウトが生じたり或いは分解で黄変する等の悪影響を生じ易いが、本発明における既述の一般式(1)で表される化合物は優れた溶解性と耐光性を有するため、高濃度で含有する場合でも析出やブリードアウトが生じず、長時間使用した場合でも分解せず黄変を防ぐことができる。
【0077】
前記一般式(1)で表される化合物は、一種のみ用いてもよく、異なる構造を有する二種以上を併用することもできる。
【0078】
前記一般式(1)で表される化合物の極大吸収波長は、特に限定されないが、好ましくは250〜400nmであり、より好ましくは280〜380nmである。半値幅は、好ましくは20〜100nmであり、より好ましくは40〜80nmである。
前記極大吸収波長及び半値幅は、従来公知の方法により容易に測定される値である。測定方法に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座7分光II」(丸善,1992年)180〜186ページなどに記載されている。具体的には、適当な溶媒に試料を溶解し、石英製又はガラス製のセルを用いて試料用と対照用の2つのセルを使用し、分光光度計によって測定される。溶媒としては、試料の溶解性に合わせて、測定波長領域に吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が求められる。本発明における極大吸収波長及び半値幅は、酢酸エチルを用いて濃度約5×10−5mol・dm−3の溶液を調製し、光路長10mmの石英セルで測定される値である。
【0079】
スペクトルの半値幅に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座3 基本操作III」(丸善、1991年)154ページなどに記載がある。なお、成書では波数目盛りで横軸を取った例で半値幅の説明がなされる場合があるが、本発明における半値幅は波長目盛りで軸を取った場合の値を用いる。半値幅の単位は[nm]である。具体的には、極大吸収波長における吸光度の1/2の吸収帯の幅を表し、吸収スペクトルの形を表す値として用いられる。半値幅が小さいスペクトルはシャープなスペクトルを示し、半値幅が大きいスペクトルはブロードなスペクトルを示す。ブロードなスペクトルを与える紫外線吸収化合物は、極大吸収波長から長波側の幅広い領域にも吸収を有するので、黄色味着色がなく、長波紫外線領域を効果的に遮蔽するためには、半値幅が小さいスペクトルを有する紫外線吸収化合物の方が好ましい。
【0080】
光の吸収の強さ、すなわち振動子強度は、時田澄男著「化学セミナー9 カラーケミストリー」(丸善、1982年)154〜155ページに記載されるように、モル吸光係数の積分に比例し、吸収スペクトルの対称性がよいときは、振動子強度は極大吸収波長における吸光度と半値幅の積に比例する(但し、この場合の半値幅は波長目盛りで軸を取った値である)。このことは遷移モーメントの値が同じとした場合、半値幅が小さいスペクトルを有する化合物は極大吸収波長における吸光度が大きくなることを意味している。このような紫外線吸収化合物は少量使用するだけで極大吸収波長周辺の領域を効果的に遮蔽できるメリットがあるが、波長が極大吸収波長から少し離れると急激に吸光度が減少するために、幅広い領域を遮蔽することができない。
【0081】
前記一般式(1)で表される化合物は、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、50000以上であることが特に好ましい。モル吸光係数が20000以上であると、前記一般式(1)で表される化合物の質量当たりの吸収効率が高いため、紫外線領域を完全に吸収するのに要する「一般式(1)で表される化合物」の量を低減できる。これは、皮膚刺激性や生体内への蓄積を防ぐ観点、及びブリードアウトが生じにくい点から好ましい。
なお、モル吸光係数については、例えば日本化学会編「新版実験化学講座9 分析化学[II]」(丸善、1977年)244ページなどに記載されており、極大吸収波長及び半値幅を求める際に合わせて求めることができる。
【0082】
前記一般式(1)で表される紫外線吸収剤のポリマー層中における塗布量は、0.1〜7.5g/mが好ましく、0.15〜6.0g/mが更に好ましい。塗布量が0.1g/m以上であることで、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域を含む広い範囲で紫外線遮蔽効果に優れる。また、塗布量が7.5g/m以下であることで、ブリードアウトの発生を防ぐことができる。
【0083】
本発明におけるポリマー層は、紫外線吸収剤として異なる構造を有する2種以上の前記一般式(1)で表される化合物を含有してもよい。また、前記一般式(1)で表される化合物とそれ以外の1種以上の他の紫外線吸収剤とを併用してもよい。基本骨格構造の異なる2種(好ましくは3種)の紫外線吸収剤を併用すると、紫外線吸収剤の分散状態が安定化すると共に、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。
一般式(1)以外の他の紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、シアノアクリレート系、安息香酸エステル系などの化合物が挙げられる。具体的には、ファインケミカル(2004年5月号、28〜38ページ)、「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター調査研究部門発行、96〜140ページ、1999年)、「高分子添加剤の開発と環境対策」(大勝靖一監修、シーエムシー出版、54〜64ページ、2003年)などに記載の紫外線吸収剤が挙げられる。
【0084】
前記他の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、メロシアニン系化合物、トリアジン系化合物である。より好ましくはベンゾオキサジノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。特に好ましくは、ベンゾオキサジノン系化合物である。他の紫外線吸収剤は、特願2008−273950号公報の段落番号〔0117〕〜〔0121〕に詳細な記載があり、同公報に記載の材料を適用できる。
他の紫外線吸収剤を併用する場合、他の紫外線吸収剤の含有比率は、本発明の効果を損なわないように保つ観点から、一般式(1)で表される紫外線吸収剤の量に対して30質量%以下が好ましい。
【0085】
前記一般式(1)で表される化合物は、ベンゾオキサジノン系化合物と組み合わせて含有することが好ましい。一般式(1)で表される化合物は、長波長領域において優れた耐光性を有するため、より長波長領域まで遮蔽可能なベンゾオキサジノンの劣化を防ぐという効果を奏し、ベンゾオキサジノン系化合物と共に用いることで、より長波長領域まで長時間において遮蔽効果が持続できるため好ましい。
【0086】
前記一般式(1)で表される化合物を紫外線吸収剤として含有することで高い紫外線遮蔽効果が得られるが、更には、隠蔽力の強い白色顔料、例えば酸化チタンなどを併用してもよい。
また、外観、色調の観点あるいは好みにより、微量(0.05質量%以下)の着色剤を併用してもよい。また、透明あるいは白色であることが重要である用途では、蛍光増白剤を併用してもよい。蛍光増白剤としては市販のものや特開2002−53824号公報に記載の一般式[1]や具体的化合物例1〜35などが挙げられる。
【0087】
(ポリマー)
本発明におけるポリマー層は、バインダーとして、ポリマーの少なくとも一種を含有する。
ポリマーとしては、例えば、シリコーン系ポリマー(例えば、シリコーンとアクリルの複合ポリマー、シリコーンとポリエステルの複合ポリマー等)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等をのポリエステル)、ポリウレタン系ポリマー(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート又はトルエンジイソシアネートとエチレングリコール又はプロピレングリコールからなるポリマー等)、アクリル系ポリマー(例えば、ホリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等を含有するポリマー)、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレンとアクリル酸またはメタクリル酸からなるポリマー等)等の公知のポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0088】
これらの中でも、支持体との間又は着色層や下塗り層等の他の層との間の接着性、及び耐侯性(特に温湿度変化や熱や水分(湿度)を有する高い湿熱環境下での耐性)を確保する観点から、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、及びシリコーン系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。更には、耐侯性(特に温湿度変化や熱や水分(湿度)を有する高い湿熱環境下での耐性)の点で、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマーが特に好ましい。
【0089】
前記フッ素系ポリマーとしては、−(CFX−CX)−で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。なお、前記繰り返し単位において、X、X、及びXは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。
【0090】
フッ素系ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと表すことがある。)、ポリフッ化ビニル(以下、PVFと表すことがある。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと表すことがある。)、ポリ塩化3フッ化エチレン(以下、PCTFEと表すことがある。)、ポリテトラフルオロプロピレン(以下、HFPと表すことがある。)などが挙げられる。
【0091】
フッ素系ポリマーは、一種のモノマーを単独重合したホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーを共重合したものでもよい。共重合したポリマーの例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンとを共重合したコポリマー(P(TFE/HFP)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとを共重合したコポリマー(P(TFE/VDF)と略記する。)等を挙げることができる。
【0092】
さらに、−(CFX−CX)−の構造部分を有するフッ素系モノマーとそれ以外のモノマーとを共重合したポリマーでもよい。その例として、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(P(TFE/E)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体(P(TFE/P)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体(P(TFE/VE)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとの共重合体(P(TFE/FVE)と略記する。)、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体(P(CTFE/VE)と略記する。)、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとの共重合体(P(CTFE/FVE)と略記する。)等を挙げることができる。
【0093】
フッ素系ポリマーは、有機溶剤に溶解して用いられるものでもよいし、ポリマー粒子として水に分散させて用いられるものでもよい。環境負荷が少ない点で後者が好ましい。フッ素系ポリマーの水分散物については、例えば特開2003−231722号公報、特開2002−20409号公報、特開平9−194538号公報等に記載されている。
【0094】
前記フッ素系ポリマーは、上市されている市販品を用いてもよく、該市販品の例として、AGCコーテック(株)製のオブリガートSW0011Fなどを挙げることができる。
【0095】
前記シリコーン系ポリマーとしては、例えば、シリコーンとアクリルの複合ポリマー、シリコーンとポリエステルの複合ポリマー等が挙げられる。シリコーン系ポリマーとして、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、シリコーンとアクリルとの複合ポリマーの具体例として、DIC(株)製のセラネートWSA1060、同WSA1070等、旭化成ケミカルズ(株)製のH7620、H7630、H7650等、などを挙げることができる。
【0096】
本発明におけるポリマー層は、フッ素系ポリマー及び/又はシリコーン系ポリマーとこれらポリマー以外の他のポリマーとを併用してもよい。他のポリマーを併用する場合、フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマー以外の前記ポリマーを、バインダー全質量の50質量%以下の範囲で併用することが好ましい。他のポリマーの量が50質量%以下であることで、樹脂フィルム(好ましくは例えばバックシート)として良好な耐候性を発揮することができる。
【0097】
ポリマーのポリマー層中における含有量は、ポリマー層の全質量に対して、30質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。ポリマーの含有量は、30質量%以上であると、強度の良好な層が得られ、95質量%以下であると、紫外線吸収剤の量が相対的に少なくなり過ぎることがなく耐光性能を高く保持するうえで好ましい。
【0098】
(架橋剤)
ポリマー層は、層中のポリマーを架橋するための架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。これらのうち、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が好ましい。
【0099】
前記カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−プロピルカルボジイミド、N−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミド等が挙げられる。
また、上市されている市販品として、カルボジライトV−02−L2(日清紡績(株)製)などが挙げられる。
【0100】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、上市されている市販品として、エポクロスWS−700、エポクロスK−2020E(いずれも日本触媒(株)製)などを用いることができる。
【0101】
架橋剤のポリマー層中における含有量としては、バインダーに対して、0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、0.5質量%以上50質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは5.0質量%以上30質量%以下である。架橋剤の含有量は、0.5質量%以上であると、ポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、100質量%以下、特に50質量%以下であると、ポリマー層を形成するための塗布液を調整したときの液のポットライフをより長く保つことができる。
【0102】
(顔料)
本発明におけるポリマー層は、顔料を含有して着色層として形成されてもよい。この場合、後述する着色層における場合と同様の顔料を用いることができ、好ましい態様も同様である。例えば、所望の色相の顔料を含ませて意匠性を持たせてもよいし、また白色顔料を含ませることによりポリマー層に反射層としての機能を付与してもよい。
【0103】
(他の添加剤)
本発明におけるポリマー層は、必要に応じて、界面活性剤、フィラー等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0104】
前記界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を含有する場合、その含有量は0.1〜10mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜3mg/mである。界面活性剤の含有量は、0.1mg/m以上であると、層形成する場合にハジキの発生を抑えて良好な層が得られ、10mg/m以下であると、ポリマー支持体及びポリマー層との間の接着を良好に保つことができる。
【0105】
フィラーとしては、二酸化チタン等の公知のフィラー(無機微粒子)を用いることができる。フィラーを含有する場合、フィラーのポリマー層中における含有量は、ポリマー層中のバインダー量に対し、20質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの含有量が20質量%以下であると、塗布膜の膜面状がより良好に保てる。フィラーの含有量の下限は、0.5質量%であることが好ましい。フィラーの含有量が20質量%以下であると、良好な面状が得られる点で有利である。また、フィラーの含有量が0.5質量%以上であると、湿熱経時後の接着性が良好である。また、無機微粒子の含有量は、1質量%以上15質量%以下の範囲がより好ましい。
【0106】
本発明におけるポリマー層の厚みとしては、0.5〜10.0μmが好ましい。ポリマー層の厚みが0.5μm以上であると、より高い耐久性能が得られるほか、ポリマー支持体との間の接着力が良好になる。また、ポリマー層の厚みが10.0μm以下であると、面状がより良好なり、隣接層やポリマー基材との間の接着力に優れる。すなわち、ポリマー層の厚みが0.5〜10.0μmの範囲内であることにより、ポリマー層の耐久性と面状とが両立し、ポリマー基材とポリマー層との間の接着性により優れる。
ポリマー層の厚みは、特に1.0〜5.0μmの範囲がより好ましい。
【0107】
−保護ポリマー層−
本発明の樹脂フィルムは、支持体上の前記ポリマー層の上に更に、バインダーとして一種又は二種以上のポリマーを含み、前記一般式(1)で表される化合物の含有量がバインダーの総量に対して1.0質量%以下である保護ポリマー層を有する態様が好ましい。保護ポリマー層は、更に、一般式(1)で表される化合物を含む紫外線吸収剤の合計の含有量がバインダーの総量に対して1.0質量%以下である場合がより好ましい。
【0108】
紫外線吸収剤(一般式(1)で表される化合物を含む。)が主に含まれる前記ポリマー層が保護ポリマー層により保護された積層構造を有することにより、紫外線吸収剤を多く含有するポリマー層を表層に有する場合に比べて、紫外線の吸収がより安定し、長期経時での支持体のひび割れや、剥離等として現れる劣化を抑制することができる。
【0109】
保護ポリマー層は、本発明の効果を損なわない程度に紫外線吸収剤(一般式(1)で表される化合物を含む。)を含んでいてもよいが、一般式(1)で表される化合物の含有量、ひいては紫外線吸収剤の含有量を、全バインダー質量の1.0質量%以下とし、保護ポリマー層が紫外線吸収剤を実質的に含まないことが好ましく、紫外線吸収剤を含まない(0質量%)ことがより好ましい。紫外線吸収剤の含有量が全バインダー質量の1質量%以下とは、紫外線吸収剤の含有を全く除外しないものの、紫外線吸収剤を積極的に含有しないことを意味する。
【0110】
保護ポリマー層に含有されるポリマーとしては、例えば、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー等の公知のポリマーが挙げられ、適宜選択して用いることができる。前記ポリマーの具体例等の詳細及び好ましい態様については、前記ポリマー層において記載した通りである。
これらの中でも、温湿度変化や高い湿熱環境に曝されたときの耐久性能をより向上させる観点から、フッ素系ポリマー、及びシリコーン系ポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0111】
ポリマーの保護ポリマー層中における含有量は、保護ポリマー層の全質量に対して、50質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。ポリマーの含有量は、50質量%以上であると良好な耐久性が得られ、95質量%以下であると、架橋剤や界面活性剤の量を確保できるので、膜強度や塗布面状の点で有利である。
【0112】
保護ポリマー層は、前記ポリマーを架橋するための架橋剤の少なくとも一種をさらに含有することが好ましい。架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。これらのうち、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が好ましく、カルボジイミド系架橋剤がより好ましい。
なお、架橋剤の詳細、特にカルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤の詳細及び好ましい態様については、前記ポリマー層において記載した通りである。
【0113】
架橋剤の保護ポリマー層中における含有量としては、層を構成するポリマーに対して、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、0.5質量%以上35質量%以下がより好ましく、さらにより好ましくは5.0質量%以上30質量%以下である。架橋剤の含有量は、0.5質量%以上であると、ポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、40質量%以下、特に35質量%以下であると、ポリマー層を形成するための塗布液を調整したときの液のポットライフをより長く保つことができる。
【0114】
また、保護ポリマー層は、必要に応じて、更に界面活性剤、フィラー(無機微粒子)等の他の添加剤を含んでいてもよい。これらの詳細については、既述の通りである。
【0115】
保護ポリマー層の厚みとしては、0.5〜12μmが好ましい。保護ポリマー層の厚みは、0.5μm以上であるとより高い耐久性能が得られ、また12μm以下であると面状が良好で隣接層との接着性に優れる。保護ポリマー層の厚みは、1.0〜10μmがより好ましい。
【0116】
保護ポリマー層は、ポリマー等を含む塗布液を調製し、この塗布液を前記ポリマー層上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。乾燥後、加熱する等して硬化させてもよい。塗布方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。塗布方法は、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。塗布液の調製に用いる溶媒は、水、及びトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶媒の中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。保護ポリマー層の形成は、ポリマーを水分散した水系塗布液を調製しこれを塗布する方法によるのが好ましい。この場合、溶媒中の水の割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0117】
本発明の樹脂フィルムは、上記のほか、必要に応じて、着色層等の他の層を有してもよい。この場合、例えば、支持体の一方にポリマー層が設けられ、他方に着色層(特に光反射層)が設けられた太陽電池用バックシートに構成することができる。
【0118】
−着色層−
本発明の樹脂フィルムは、ポリマー基材の受光側に着色層を有していることが好ましい。この場合、本発明の樹脂フィルムの一例として、太陽電池用バックシートとして適用することができる。太陽電池用バックシートの具体例として、ポリマー基材の受光側(太陽電池素子が設けられた電池側基板と向き合う側)に着色層が設けられ、着色層が設けられた側と反対側に裏面保護層として既述の本発明におけるポリマー層が設けられた態様が好ましい。
【0119】
本発明における着色層は、少なくとも顔料とバインダーとを含有し、必要に応じて、更に各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
【0120】
本発明の樹脂フィルムを太陽電池用バックシートとする場合、着色層の機能としては、第1に、入射光のうち太陽電池セルを通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げること、第2に、太陽電池モジュールを太陽光が入射する側(オモテ面側)から見た場合の外観の装飾性を向上すること、等が挙げられる。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側(ガラス基板側)から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより、バックシート自体の装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0121】
(顔料)
着色層は、顔料の少なくとも一種を含有することができる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0122】
着色層を、太陽電池に入射して太陽電池セルを通過した光を反射して太陽電池セルに戻す反射層として構成する場合、白色無機粒子を含むことが好ましい。白色無機粒子としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の白色顔料が好ましい。中でも、二酸化チタンが好ましい。
【0123】
反射層を形成する場合、反射層中の白色無機粒子の含有量としては、バインダーポリマー及び白色無機粒子の合計質量に対して、30質量%〜90質量%の範囲が好ましく、より好ましい白色無機粒子の含有量の範囲は50〜85質量%である。白色無機粒子の反射層中の含有量は、30質量%以上であると良好な反射率が得られ、90質量%以下であることで太陽電池用バックシートの軽量化を図ることができる。
【0124】
顔料の着色層中における含有量は、2.5〜12g/mの範囲が好ましく、2.5〜8.5g/mの範囲がより好ましい。顔料の含有量が2.5g/m以上であると、必要な着色が得られ、反射率や装飾性を効果的に与えることができる。また、着色層中における顔料の含有量が12g/m以下であると、着色層の面状を良好に維持しやすく、膜強度により優れる。
【0125】
着色層を反射層として設ける場合、反射層中には、白色無機粒子を4〜12g/mの範囲で含有することが好ましい。白色無機粒子の含有量が4g/m以上であると、必要な反射率が得られ易く、含有量が12g/m以下であることで、樹脂フィルム(特にバックシート)の軽量化が図れる。中でも、反射層中の白色無機粒子のより好ましい含量は、5〜11g/mの範囲である。
なお、反射層が2種類以上の白色無機粒子を含有する場合は、反射層中の全白色無機粒子の含有量の合計を4〜12g/mの範囲とすることが好ましい。
【0126】
顔料の平均粒径としては、体積平均粒径で0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高い。体積平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0127】
着色層を構成するバインダーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。これらの中でも、高い接着性を確保する観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。また。複合樹脂を用いてもよく、例えばアクリル/シリコーン複合樹脂も好ましいバインダーである。
バインダー成分の含有量は、顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、着色層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0128】
(添加剤)
着色層には、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。架橋剤の詳細、特にカルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤の詳細及び好ましい態様については、前記ポリマー層において記載した通りである。架橋剤の添加量は、層中のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。
【0129】
前記界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の詳細及び好ましい態様については、前記ポリマー層において記載した通りである。界面活性剤を含有する場合の含有量は、0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/mである。
【0130】
フィラーとしては、コロイダルシリカ、二酸化チタン等の公知のフィラーを用いることができる。フィラーの含有量は、着色層のバインダー当たり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。
【0131】
着色層の形成は、顔料を含有するポリマーシートをポリマー支持体に貼合する方法、基材形成時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等により行なえる。具体的には、ポリマー支持体の表面に直にあるいは厚み2μm以下の下塗り層を介して、貼合、共押出し、塗布等することにより着色層を形成することができる。形成された着色層は、ポリマー支持体の表面に直に接した状態であっても、あるいは下塗り層を介して積層した状態であってもよい。
上記のうち、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。
【0132】
塗布による場合、塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。具体的には、例えば反射層を形成する場合、ポリマー支持体の前記ポリマー層及び前記保護ポリマー層が形成されていない側の面に、白色無機粒子、バインダー、及びその他必要に応じて含まれる成分を含有する反射層形成用塗布液を塗布することにより形成することができる。
【0133】
−易接着性層−
本発明の樹脂フィルムは、支持体の一方の側に、有機成分に対して易接着性の易接着性層が設けられていてもよい。本発明の樹脂フィルムは、例えば、易接着性層が(特に前記着色層の上に)設けられた太陽電池用バックシートであってもよい。この場合、易接着性層は、太陽電池素子を備えた電池側基板(電池本体)の太陽電池素子を封止する封止材との間で強固に接着し易くするための層である。
【0134】
易接着性層は、バインダー、無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。易接着性層は、電池側基板の発電素子を封止するエチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有するように構成されていることが好ましい。接着力が10N/cm以上であると、接着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすい。
なお、接着力は、易接着性層中のバインダー及び無機微粒子の量を調節する方法、バックシートの封止材と接着する面にコロナ処理を施す方法などにより調整が可能である。
【0135】
(バインダー)
易接着性層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0136】
好ましいバインダーの例としては、ポリオレフィンの具体例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0137】
バインダーの易接着性層中における含有量は、0.05〜5g/mの範囲とすることが好ましい。中でも、0.08〜3g/mの範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m以上であると所望とする接着力が得られやすく、5g/m以下であるとより良好な面状が得られる。
【0138】
(無機微粒子)
易接着性層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0139】
無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0140】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0141】
無機微粒子の含有量は、易接着性層中のバインダーに対して、5〜400質量%の範囲が好ましい。無機微粒子の含有量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持でき、400質量%以下であると、易接着性層の面状が良好である。中でも、無機微粒子の含有量は、50〜300質量%の範囲が好ましい。
【0142】
(架橋剤)
易接着性層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適な架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。
架橋剤の詳細、特にカルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤の詳細及び好ましい態様については、前記ポリマー層において記載した通りである。また、オキサゾリン基を有する化合物として、上市されている市販品としては、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも(株)日本触媒製)等も使用可能である。
【0143】
架橋剤の易接着性層中における含有量としては、易接着性層中のバインダーに対して、5〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0144】
(添加剤)
易接着性層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0145】
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを支持体に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0146】
易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、8μm以下であると面状がより良好になる。
また、本発明の易接着性層は、着色層の効果を低減させないために、透明であることが必要である。
【0147】
〜樹脂フィルムの製造〜
本発明の樹脂フィルムは、その製造法に特に制限はなく、例えば、下記工程により好適に製造することができる。すなわち、本発明の樹脂フィルムの好ましい製造方法は、(1)ポリマー基材の少なくとも片面に、フッ素系ポリマー及び/又はシリコーン系ポリマーとコロイダルシリカとを含有し、好ましくは溶媒の60質量%以上が水である塗布液を、ポリマー基材の表面に直接あるいは他の層を介して塗布する工程と、(2)ポリマー基材上に塗布形成された塗布膜を乾燥させてポリマー層とする工程と、を設けて構成することができる。ここで、ポリマー層を形成した後に該ポリマー層を硬化させることによって、湿熱経時後の接着性を高めることができる。
既述のように、易接着性層等の他の層を有している場合、上記の工程に加えて、他の層を形成するための工程がさらに設けられてもよい。他の層の形成態様の例としては、例えば、他の層を構成する成分を含有する塗布液を、ポリマー基材の上(例えばポリマー基材のポリマー層が形成されている側とは反対側)に塗布する方法が挙げられ、その例としては、易接着性層、及び着色層の形成方法として既述した方法が挙げられる。
【0148】
本発明の樹脂フィルムは、太陽電池用バックシートの用途に好適に用いられる。
本発明の太陽電池用バックシートの具体例として、ポリマー基材のポリマー層が形成されている面とは反対の面に白色顔料を含有する反射層を塗設したもの、ポリマー基材のポリマー層が形成されている面とは反対の面に着色顔料を含有する着色層を塗設したもの、ポリマー基材のポリマー層が形成されている面とは反対の面に、ポリマー基材側から順に白色顔料を含有する反射層と易接着層を塗設したものなどを挙げることができる。
また、他の層の形成態様の他の例として、他の層として所望される機能を発揮する層を1層又は2層以上有するシートやフィルムを被形成面に貼合する方法が挙げられる。この場合のシートやフィルムは、他の層を1層又は2層以上有するシートやフィルムである。
本発明の太陽電池用バックシートの具体例としては、ポリマー基材の一方の側にポリマー層が塗布形成されており、該ポリマー層が形成された側とは反対側の他方の側に、白色顔料(又は白色以外の着色顔料)を含有する白色フィルム(又は着色フィルム)を貼合したもの、太陽電池用バックシートのポリマー層が形成された側とは反対側にアルミニウム薄膜と白色顔料を含有する白色フィルムを貼合したもの、太陽電池用バックシートのポリマー層が形成された側とは反対側に無機バリア層を有するポリマーフィルムと白色顔料を含有する白色フィルムを貼合したもの、等が挙げられる。
【0149】
本発明の太陽電池用バックシートを作製する場合、ポリマー基材の上に本発明におけるポリマー層を塗布形成することができる方法であれば、いずれの態様であってもよい。例えば、本発明におけるポリマー層は、バインダーとしてフッ素系ポリマー及び/又はシリコーン系ポリマーとコロイダルシリカとを少なくとも含有する塗布液を調製した後、この塗布液をポリマー基材上に塗布し、乾燥させることにより好適に形成される。乾燥後、加熱する等して硬化させてもよい。塗布方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
【0150】
塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターを利用した塗布法を適用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。本発明においては、バインダーとして用いるフッ素系ポリマー及び/又はシリコーン系ポリマーを水分散した水系塗布液を調製し、これを塗布する方法が好ましい。この場合、溶媒中の水の割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0151】
また、ポリマー支持体が2軸延伸フィルムである場合は、2軸延伸した後のポリマー基材にポリマー層を形成するための塗布液を塗布した後、塗膜を乾燥させてもよい。また、1軸延伸後のポリマー基材に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後に、1軸延伸の方向と異なる方向に延伸するようにしてもよい。更に、延伸前のポリマー支持体に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後、2方向に延伸してもよい。
【0152】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールは、太陽光が入射する透明性の基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子の前記基板が配された側と反対側に設けられ、既述の本発明の太陽電池用バックシートとを設けて構成されている。本発明の太陽電池モジュールは、既述の本発明の太陽電池用バックシートを備えるので、耐候性、特に温湿度変化や高い湿熱環境下に曝された場合でも長期に亘り安定的な発電性能が得られる。
【0153】
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を概略的に示したものである。太陽電池モジュール10は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子20を、太陽光が入射する透明性の基板24とバックシート(既述の本発明の太陽電池用バックシート)5との間に配置し、基板24とバックシート5との間をエチレン−ビニルアセテート系封止材22で封止した構成となっている。本実施形態のバックシート5は、ポリマー基材16の一方の面側に該基材側から順に、紫外線吸収剤として既述の一般式(1)で表される化合物とポリマーとを含有する第1のポリマー層14と、ポリマー層14に接して設けられ、紫外線吸収剤(一般式(1)で表される化合物を含む)の総含有量がバインダー量に対し1.0質量%以下の(好ましくは紫外線吸収剤を含有しない)第2のポリマー層12とが設けられており、ポリマー基材16の他方の面側(太陽光が入射する側)には、着色層として白色の反射層18が設けられている。
【0154】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0155】
透明性の基板24は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0156】
太陽電池素子20としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0157】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0158】
(実施例1)
−支持体の作製−
(1)ポリエステルの合成
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0159】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してコバルト元素換算値が30ppm、マンガン元素換算が15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してチタン元素換算値が5ppmとなるように添加した。前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。
【0160】
その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力に到達するまでの時間はともに60分とした。そのまま3時間反応を続け、その後反応系を窒素パージし、常圧に戻して重縮合反応を停止した。そして、得られたポリマー溶融物を冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。
【0161】
(2)固相重合
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0162】
(3)ベース形成
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融押出して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約2.5mmの未延伸ベースを作製した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸した。さらに215℃で1分間、熱固定を行なって、厚み250μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体(以下、単に「PET支持体」と称する。)を得た。
【0163】
−下塗り層−
(1)下塗り層形成用塗布液の調製
下記組成中の各成分を混合し、下塗り層形成用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・ポリエステル系バインダー ・・・48.0部
(バイロナールDM1245、東洋紡(株)製、固形分:30質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・10.0部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:10質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・3.0部
(エポクロスWS700、(株)日本触媒製、固形分:25質量%)
・界面活性剤 ・・・15.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水 ・・・924.0部
【0164】
(2)下塗り層の形成
得られた下塗り層形成用塗布液をPET支持体の一方の面に、バインダー量が塗布量で0.1g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが約0.1μmの下塗り層を形成した。
【0165】
−着色層−
(1)二酸化チタン分散物の調製
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
<二酸化チタン分散物の組成>
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm)・・・39.9質量%
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール ・・・49.9質量%
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%)
・界面活性剤 ・・・0.5質量%
(デモールEP、花王(株)製、固形分:10質量%)
・蒸留水 ・・・9.7質量%
【0166】
(2)着色層用塗布液の調製
下記組成中の成分を混合し、着色層用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・前記二酸化チタン分散物 ・・・800.0部
・ポリオレフィンバインダー ・・・108.0部
(アローベースSE1010、ユニチカ(株)製、固形分:20質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・30.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物 ・・・20.0部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25%;架橋剤)
・蒸留水 ・・・42.0部
【0167】
(3)着色層の形成
得られた塗布液を、前記PET支持体上に形成された下塗り層の上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、着色層として、二酸化チタン量が8.0g/m、バインダー量が1.5g/mの反射層を形成した。
【0168】
−裏面層1−
(1)化合物(A)の分散物の調製
酢酸エチル35.4gとテトラヒドロフラン8.8gとを混合した混合溶媒に、下記化合物(A−1)(既述の一般式(1)で表される化合物)18.94gを添加し、50℃に加熱して10分間攪拌し、化合物(A−1)が溶解した油相液を調製した。
【0169】
【化13】

【0170】
続いて、400ccのステンレス容器に蒸留水116.5gを添加し、90℃に加熱した後、クラレポバールPVA−205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製)20.5gを添加し、90℃で3時間攪拌し溶解させ、水相液を調製した。
【0171】
続いて、得られた水相液をディゾルバーを用いて500rpmで攪拌しながら、上記の油相液を添加した。添加後、更に5分間攪拌を続けて均一状な液とした。ここで得られた液を、さらにディゾルバーを用いて20,000rpmで10分間攪拌し、乳化物1を得た。得られた乳化物1の平均粒子径を、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定したところ、メジアン径で120nmであった。
【0172】
乳化物1からエバポレーターを用いて有機溶剤を留去し、分散物1を得た。残留した有機溶剤の量をガスクロマトグラフィによって測定したところ、0.7質量%以下であった。また、化合物A−1の分散物1中における濃度は、13質量%であった。分散物1の平均粒子径を上記と同様の方法で測定したところ、メジアン径で121nmであった。
【0173】
(2)裏面層1形成用塗布液の調製
下記組成中の各成分を混合し、裏面層1形成用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・アクリル/シリコーン系バインダー(バインダーB−1)・・・362.3部
(セラネートWSA−1070、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・48.3部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:40質量%)
・界面活性剤 ・・・9.7部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・前記化合物A−1の分散物 ・・・296.9部
・蒸留水 ・・・282.8部
【0174】
(3)裏面層1の形成
得られた裏面層1形成用塗布液を、PET支持体の反射層が形成された側と反対側の支持体表面に、バインダー塗布量が3.0g/m、化合物A−1の塗布量が0.8g/mとなるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが約3μmの裏面層1(ポリマー層)を形成した。
【0175】
以上のようにして、PET支持体の両面に塗布により各層が形成されたバックシート試料を作製した。
【0176】
−太陽電池モジュールの作製−
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート〔SC50B、三井化学ファブロ(株)製〕と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート〔SC50B、三井化学ファブロ(株)製〕と、上記のように作製し、下記評価「3.接着性」の「(B)湿熱経時後の接着性」と同様の処理を行なった後のバックシート試料とをこの順に重ね、真空ラミネータ〔日清紡(株)製、真空ラミネート機〕を用いてホットプレスすることにより接着させた。但し、バックシート試料は、その着色層の表面がEVAシートと接触するように配置した。また、接着は、真空ラミネータにより、128℃で3分間の真空引きの後、2分間加圧して仮接着し、さらにドライオーブンにて150℃で30分間本接着処理する条件にて行なった。このようにして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。
作製した太陽電池モジュールを用いて発電運転を行なったところ、太陽電池として良好な発電性能を示した。
【0177】
(実施例2〜6、比較例1)
実施例1において、化合物A−1の量を下記表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様にして、バックシート試料を作製し、評価すると共に、太陽電池モジュールを作製した。評価結果は下記表1に示す。
【0178】
(実施例7〜11、比較例2〜4)
実施例1において、裏面層1形成用塗布液の調製に用いた化合物A−1を、以下に示す化合物A−2〜A−6、A−101〜A−103に変更したこと以外、実施例1と同様にして、バックシート試料を作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
【0179】
【化14】

【0180】
(実施例12)
実施例1において、裏面層1形成用塗布液の調製に用いたバインダーB−1をB−2に代えたこと以外、実施例1と同様にして、バックシート試料を作製し、評価すると共に、太陽電池モジュールを作製した。評価結果は下記表1に示す。
【0181】
(実施例13)
実施例1において、PET支持体の反射層が設けられた側とは反対側の面に形成された裏面層1(ポリマー層)の表面に、以下に示す手順にしたがって、裏面層2形成用塗布液を塗布することによりさらに裏面層2(保護ポリマー層)を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシート試料を作製すると共に、太陽電池モジュールを作製した。
【0182】
−裏面層2の形成−
(1)裏面層2形成用塗布液の調製
下記組成中の各成分を混合し、裏面層2形成用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・アクリル/シリコーン系バインダー(バインダーB−1)・・・362.3部
(セラネートWSA−1070、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・24.2部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:40質量%)
・界面活性剤 ・・・24.2部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水 ・・・589.3部
【0183】
(2)裏面層2の形成
得られた裏面層2形成用塗布液を裏面層1の上に、バインダー塗布量が2.0g/mになるように#10のメイヤーバーで塗布した後、180℃で1分間乾燥させて、保護ポリマー層として、乾燥厚み約2μmの裏面層2を形成した。このようにして、PET支持体の両面の各層が、塗布による塗布層として設けられたバックシート試料を作製した。
【0184】
(実施例14)
実施例13において、裏面層1及び裏面層2における化合物A−1の塗布量がそれぞれ0.4g/mとなるように、各塗布液中の化合物A−1の含有比率を変更したこと以外、実施例13と同様にして、バックシート試料を作製し、評価すると共に、太陽電池モジュールを作製した。評価結果は下記表1に示す。
【0185】
(実施例15〜16)
実施例13において、裏面層1及び裏面層2におけるバインダーを下記表1に示すように変更したこと以外、実施例13と同様にして、バックシート試料を作製し、評価すると共に、太陽電池モジュールを作製した。評価結果は下記表1に示す。
【0186】
(評価)
上記の実施例及び比較例で作製したバックシート試料について、下記の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0187】
−1.耐光性−
日本電色工業(株)製の分光式色差計「Spectro Color Meter SE2000」を用いて、各バックシート試料のYI値(YI−1)を測定した。その後、各バックシート試料に対し、岩崎電気(株)製の耐光性試験機「アイスーパーUVテスター W−151」を用い、照度900W/mで48時間、紫外光を照射した。但し、紫外光照射時における環境条件は、63℃、50%RHとした。
次いで、上記同様の分光式色差計(Spectro Color Meter SE2000、日本電色工業(株)製)を用い、再び各バックシート試料のYI値(YI−2)を測定した。
測定した値から、YI=(YI−2)−(YI−1)を求め、各バックシート試料の着色の度合いを示す指標とし、YI値をもとに、下記評価基準にしたがってランク付けした。このうち、ランク3〜5が実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:YI値が3未満であった。
4:YI値が3以上5未満であった。
3:YI値が5以上10未満であった。
2:YI値が10以上20未満であった。
1:YI値が20以上であった。
【0188】
−2.破断伸び保持率−
各バックシート試料について、以下の測定方法により得られた破断伸びの測定値L及びLに基づいて、下記式より破断伸び保持率[%]を算出した。実用上許容できる破断伸び保持率の範囲は50%以上である。
破断伸び保持率[%]=(L/L)×100
<破断伸びの測定方法>
バックシート試料を幅10mm×長さ200mmに裁断し、測定用の試料A及び試料Bを用意した。試料Aに対して、25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿を施した後、試料Aをテンシロン(ORIENTEC製、RTC−1210A)にて上下クリップに挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行なった。なお、引っ張り試験は、延伸される試料Aの長さを10cm、引っ張り速度を20mm/分として行なった。この試験で得られた試料Aの破断伸びをLとする。
別途、試料Bに対して、120℃、100%RHの雰囲気で50時間湿熱処理を施した後、試料Aと同様にして引っ張り試験を行なった。このときの試料Bの破断伸びをLとする。
【0189】
−3.接着性−
[A]湿熱経時前の接着性
各バックシート試料を20mm巾×150mmにカットして、サンプル片を2枚準備した。この2枚のサンプル片を、互いに反射層側が内側になるように配置し、その間に20mm巾×100mm長にカットしたEVAシート(三井化学ファブロ(株)製のEVAシート:SC50B)を挟み、真空ラミネータ(日清紡(株)製の真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンで150℃で30分間、本接着処理を施した。このようにして、互いに接着した2枚のサンプル片の一端から20mmの部分はEVAと未接着で、残りの100mmの部分にEVAシートが接着された接着評価用試料を得た。
【0190】
得られた接着評価用試料のEVA未接着部分を、テンシロン(ORIENTEC製、RTC−1210A)にて上下クリップに挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行ない、接着力を測定した。
測定された接着力をもとに以下の評価基準にしたがってランク付けした。評価ランク4、5が実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:密着が非常に良好であった(60N/20mm以上)。
4:密着は良好であった(30N/20mm以上60N/20mm未満)。
3:密着がやや不良であった(20N/20mm以上30N/20mm未満)。
2:密着不良が生じた(10N/20mm以上20N/20mm未満)。
1:密着不良が顕著であった(10N/20mm未満)。
【0191】
[B]湿熱経時後の接着性
上記で得た接着評価用試料を、120℃、100%RHの環境条件下で48時間保持(湿熱経時)した後、前記[A]と同様の方法にて接着力を測定した。測定された保持後の接着力について、同じ接着評価用試料の前記[A]湿熱経時前の接着力に対する比率〔%;=湿熱経時後の接着力/[A]湿熱経時前の接着力×100〕を算出した。また、測定された湿熱経時後の接着力をもとに、前記[A]と同様の方法にて接着力を評価した。
【0192】
【表1】

【0193】
【化15】

【0194】
前記表1に示すように、実施例では、既述の一般式(1)で表される化合物を用いない比較例に比べ、良好な耐光性を示した。
【符号の説明】
【0195】
5・・・太陽電池用バックシート
10・・・太陽電池モジュール
12,14・・・ポリマー層
16・・・ポリマー基材
18・・・反射層(着色層)
20・・・太陽電池素子
22・・・封止材
24・・・透明性の基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の少なくとも一方に設けられ、下記一般式(1)で表される化合物及びポリマーを含有するポリマー層とを有する樹脂フィルム。
【化1】


〔式中、R1a、R1b、R1c、R1d、及びR1eは、各々独立に、水素原子、又はヒドロキシ基を除く1価の置換基を表し、R1a〜R1eの少なくとも1つはハメット則のσp値が正である置換基であり、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、及びR1pは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物の前記ポリマー層中における含有量が0.2g/m以上5.0g/m以下である請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記R1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、R1pで表される1価の置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルキル部位の炭素数が1〜20のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル部位の炭素数が1〜20のアルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基(R1a、R1b、R1c、R1d、R1eを除く)、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基、又はアルキル部位の炭素数が1〜20のアルキルスルホニル基である請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記R1b、R1c及びR1dの少なくとも一つは、ハメット則のσp値が正である置換基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記一般式(1)中のR1b、R1c、及びR1dの少なくとも1つは、ハメット則のσp値が0.3〜1.2の範囲である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ハメット則のσp値が正である基は、COOR、CONR、CN、CF、ハロゲン原子、NO、及びSOMより選択される基〔R及びRは、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表し、Mは水素原子又はアルカリ金属を表す。〕である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
前記一般式(1)中におけるR1a、R1b、R1d、R1e、R1g、R1h、R1i、R1j、R1k、R1m、R1n、及びR1pが水素原子であり、R1cがCOOR〔Rは1価の置換基を表す。〕である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
前記支持体が、ポリエステル基材である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項9】
前記支持体上の前記ポリマー層の上に更に、ポリマーを含み、前記一般式(1)で表される化合物の含有量がバインダーの総量に対して1.0質量%以下である保護ポリマー層を有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項10】
120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びが、保存する前の破断伸びに対して50%以上である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項11】
前記ポリマー層及び前記保護ポリマー層の少なくとも一方は、前記ポリマーの少なくとも一種として、フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーから選ばれるポリマーを含有する請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂フィルム。
【請求項12】
太陽光が入射する透明性の基材と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子の前記基材が配された側と反対側に設けられた請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の樹脂フィルムとを備えた太陽電池モジュール。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−121999(P2012−121999A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274102(P2010−274102)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】