説明

樹脂ペレットの製造方法

【課題】高分子電解質等の電気化学分野における材料を製造する際に、原料として好適に用いられる樹脂ペレットの製造に好適な樹脂ペレットの製造方法を提供する。
【解決手段】溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面13,14に接触させて冷却する工程、該フッ素樹脂面からアルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離する工程、及び、該水溶性樹脂を切断してペレット化する工程を含む樹脂ペレットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットの製造方法に関する。より詳しくは、樹脂のペレットを効率的に製造することができる樹脂ペレットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂ペレットは、樹脂を粒状(ペレット状)に加工したものであり、樹脂を様々な工業用材料に成形加工する際、成形加工工程に供給される樹脂原料として好適に用いられるものである。特に近年においては、情報技術(IT)に関連した電気化学分野においてアルキレンオキシド系水溶性樹脂の活用が期待されており、それに伴いその樹脂ペレットの需要も増加してきているところである。
【0003】
そのような樹脂ペレットを製造する従来の方法としては、例えば、溶媒を用いた重合により得られ、加温下の脱揮により前記溶媒が除かれている、流動状態のノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を金属板に接触させて冷却固化させる工程を含むノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂の製造方法により得られたノニオン性アルキレンオキシド系水溶性樹脂を粒状化(ペレット化)して樹脂ペレットを製造する方法(例えば、特許文献1参照。)や、親水性樹脂を溶融させてTダイを用いて一定厚さの板状に押し出す押出工程と、該押し出した樹脂を金属板に接触させて冷却固化させることにより固化樹脂を得る冷却工程と、該固化樹脂を粒状化して樹脂粒状体を得る粒状化工程とを含む製造方法により親水性樹脂粒状体を製造する方法(例えば、特許文献2参照。)、結晶化温度が10〜60℃の範囲内であるエチレンオキシド−ブチレンオキシド系共重合体樹脂を溶融状態にして所定の厚みに押し出し、この押し出された溶融樹脂を、この樹脂の結晶化温度以下の温度を有する金属面に接触させることにより冷却して固化させ、この固化した樹脂を切断することでペレットを製造する方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。また、溶液重合により得ておいたノニオン性アルキレンオキシド系樹脂の溶液から溶媒を揮発させて流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を得る工程と、前記流動性を有するノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を用いてペレット化を行う工程とによってペレット状のノニオン性アルキレンオキシド系樹脂を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−232318号公報(第1−2、9頁)
【特許文献2】特許第4215747号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2005−231253号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開2006−335905号公報(第1−2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を種々の工業用材料の樹脂材料として供給、使用するに際し、取扱い易さの観点から、溶融ポリマーをペレット化する工程を実施して樹脂ペレットとすることが求められる場合がある。特に、電気化学分野等においては、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を高分子電解質として用いることが検討されているが、そのような用途に用いるためには、ペレット化したものを樹脂原料として用いるのが好適である。例えば、ペレット状のポリマーにリチウム化合物などの原料を配合し、シート状・フィルム状に成形加工して高分子電解質シート・フィルム等の形態で用いることが想定されている。また近年、環境問題への関心の高まりを背景に、石油や石炭等の化石燃料からのエネルギー資源の転換が検討されており、これらに代わるエネルギー源を貯蔵して使用するために、繰り返し充放電のできる二次電池が注目されているが、その二次電池に用いられる高分子電解質としてのアルキレンオキシド系水溶性樹脂の利用が期待されている。したがって、高分子電解質等の電気化学デバイス用途に好適な形態で安定してアルキレンオキシド系水溶性樹脂を供給できるようにすることは、当該技術分野において重要な技術的意義を持つこととなる。
そこで、上述のように樹脂ペレットの製造方法が様々検討されているが、更に効率的にペレットを生産することができる製造方法とする改善の余地があり、アルキレンオキシド系水溶性樹脂のペレットを従来よりも効率的に製造することができる方法が求められるところであった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高分子電解質等の電気化学分野における材料を製造する際に、原料として好適に用いられる樹脂ペレットの製造に好適な樹脂ペレットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、樹脂ペレットの製造方法について種々検討し、製造工程の中でも特に溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を冷却する工程に着目した。そしてこの工程を、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂をフッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面に接触させることにより行うものとすると、溶融状態の水溶性樹脂が結晶化するのを待たずに、水溶性樹脂が柔軟な状態でフッ素樹脂面から剥離することができることを見出した。これによって、水溶性樹脂の冷却工程に掛かる時間を短縮することができ、樹脂ペレットの製造工程を従来よりも効率的に行うことができることを見出した。更に、冷却工程に掛かる時間の短縮が可能となったことに伴い、製造装置のダウンサイジングが可能となることも見出した。このように、アルキレンオキシド系水溶性樹脂をペレット化して樹脂ペレットを製造する場合において、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面に接触させて冷却し、その後、そのフッ素樹脂面からアルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離し、剥離した水溶性樹脂を切断してペレット化することにより、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
従来、溶融状態の樹脂を接触させる金属面をフッ素樹脂加工した場合には、フッ素樹脂の性質上、樹脂の剥離性は向上するが、樹脂への熱伝導性が低下してしまうために、樹脂の結晶化が進まず、冷却工程に時間が掛かることとなり、金属面をフッ素樹脂加工すると樹脂ペレット生産の生産効率は下がるものと考えられていた。そうしたところ、本発明者は、溶融状態の樹脂を接触させる金属面をフッ素樹脂で被覆した場合には、樹脂の結晶化を待たずに金属を被覆するフッ素樹脂面から樹脂を剥離することが可能であることを見出し、これによって、フッ素樹脂面への樹脂の接触時間を短縮することができ、製造装置のダウンサイジングにも繋がることを本発明において初めて見出したものである。このような効果は、上述した理由から従来の製造方法からは予想することのできなかった効果といえる。
【0008】
すなわち本発明は、アルキレンオキシド系水溶性樹脂をペレット化して樹脂ペレットを製造する方法であって、上記製造方法は、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面に接触させて冷却する工程、上記フッ素樹脂面からアルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離する工程、及び、上記水溶性樹脂を切断してペレット化する工程を含むことを特徴とする樹脂ペレットの製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の樹脂ペレットの製造方法は、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面に接触させて冷却する工程(以降、単に「冷却工程」ともいう。)、上記フッ素樹脂面からアルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離する工程(以降、単に「剥離工程」ともいう。)、及び、上記水溶性樹脂を切断してペレット化する工程(以降、単に「ペレット化工程」ともいう。)を含むものであるが、上記3つの工程を含む限りその他の工程を含んでいてもよい。また、上記3つの工程は、上述した順番に行われるものであるが、いずれの工程も、その前に行われる工程が完全に終了した後に行われてもよいし、その前に行われる工程が完全に終了する前に始められ一部並行して工程が進められてもよい。
なお、本発明におけるアルキレンオキシド系水溶性樹脂の構造及び重合方法については、後述する。
【0010】
上記溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面に接触させて冷却する工程は、溶融状態、すなわち結晶化温度以上の温度となっているアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面に接触させることで冷却する工程であればよく、通常、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面上にアルキレンオキシド系水溶性樹脂を吐出して、該フッ素樹脂面上を搬送しながら冷却することによって行われるものである。該冷却工程により、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂は固化することとなるが、特許文献1〜4のように金属面に溶融状態の樹脂を接触させて冷却固化させる従来の製造方法の場合には、樹脂は冷却され結晶化して硬くなった状態となってから金属面からの剥離が可能となるのに対して、本発明における冷却工程においては、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂が接触するのはフッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面であるため、樹脂が結晶化するのを待たずに、結晶化する前の柔軟な状態で冷却工程に続く剥離工程を実施することが可能となるものである。このように、本発明の製造方法では、樹脂が結晶化するのを待たずに、柔軟な状態のまま樹脂を剥離することができるために、従来の樹脂ペレットの製造方法とは剥離工程に供される時点での樹脂の状態を異なったものとすることが可能である。これによって、柔軟で扱い易い状態で剥離工程後の工程に樹脂を供給することができる。また、後述するように冷却工程がロール表面にフッ素樹脂面を被覆した金属ロールを用いて行われる場合には、冷却するための金属ロールのフッ素樹脂面への接触時間を短くしても剥離することができ、該接触時間は金属ロールの大きさと回転速度に依存するものであることから、このことは金属ロールの大きさを従来よりも小さくすることが可能となることを意味し、製造装置のダウンサイジングに繋がるものである。
上記冷却工程においては、フッ素樹脂で被覆された金属が用いられるが、該金属は、溶融状態の樹脂が接触する面の全てが完全にフッ素樹脂によって覆われていてもよいし、本発明の効果を奏する限り、部分的にはフッ素樹脂によって覆われておらずに金属が一部露出した状態であってもよい。
なお、本発明の製造方法においては、冷却工程後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂が冷却固化された状態とは、アルキレンオキシド系水溶性樹脂が溶融状態からは固化されているが、従来の方法のように、樹脂が冷却され結晶化して硬くなった状態となる前の柔軟な状態も含むものである。
【0011】
上記金属を被覆したフッ素樹脂は、厚みが、1〜100μmであることが好ましい。金属を被覆するフッ素樹脂の厚みがこのような範囲であれば、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂と上記フッ素樹脂面との接触時間を従来より短縮しても、該水溶性樹脂を充分に冷却することが可能である。金属を被覆するフッ素樹脂の厚みとしては、5〜80μmであることがより好ましく、10〜50μmであることが更に好ましい。
【0012】
上記冷却工程は、ロール表面にフッ素樹脂を被覆した金属ロールを用いて行うことが好ましい。これによって、本発明における樹脂ペレットの製造をより効率的に行うことが可能となる。
【0013】
上記冷却工程は、水分及びほこりを除去した雰囲気下で行うことが好ましい。冷却工程が水分を除去しない雰囲気下で行われると、アルキレンオキシド系水溶性樹脂に雰囲気中の水分が混入する可能性があり、それによって該水溶性樹脂の水分含有量が高くなってしまい、製造される樹脂ペレットの水分含有量を後述する適当な範囲とすることができなくなるおそれがある。また、冷却工程がほこりを除去しない雰囲気下で行われると、アルキレンオキシド系水溶性樹脂に雰囲気中のほこりが混入する可能性が高まり、製造される樹脂ペレットの品質に悪影響を及ぼすおそれがある。特に、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の結晶化を待たずに、金属を被覆するフッ素樹脂面からアルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離する場合には、該水溶性樹脂は、結晶化せずに柔軟な状態のまま剥離されることとなるため、結晶化して硬くなっている樹脂に比べて、一旦ほこりが付着してしまうとその除去が非常に困難となってしまうことから、ほこりを除去した雰囲気下で冷却工程を行うことの意義は大きいものである。また特に、上記フッ素樹脂として、テフロン(登録商標)を用いた場合には、テフロン(登録商標)の使用により静電気が発生しやすくなり、雰囲気中のほこりがテフロン(登録商標)の表面に集まり、更にアルキレンオキシド系水溶性樹脂に付着しやすくなることから、この場合においてもほこりを除去した雰囲気下で冷却工程を行うことの意義が大きいものとなる。
なお、上記冷却工程時だけではなく、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を製造するところから、樹脂ペレットが製造されるまでのその他の工程の一部又は全てを水分及びほこりを除去した雰囲気下で行ってもよい。少なくとも上記冷却工程から(ただし、冷却工程の前に後述する脱揮工程を行う場合には脱揮工程から)、樹脂ペレットが製造されるまでの全ての工程が、水分及びほこりを除去した雰囲気下で行われることが好ましく、特に、本発明の樹脂ペレットの製造方法において、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を製造するところから、樹脂ペレットが製造されるまでの全ての工程を水分及びほこりを除去した雰囲気下で行うことは好ましい実施形態の1つである。
【0014】
上記冷却工程を、水分を除去した雰囲気下で行うためには、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の吸湿を防止する処理、及び/又は、乾燥処理を行うことが好ましい。
なお、上記吸湿防止処理とは、上記水溶性樹脂が雰囲気中から取り込む水分量をできるだけ低減し得る処理であって、上記水溶性樹脂の水分含有量の増加を完全に抑制する場合だけでなく、吸湿防止処理を施さなかった場合と比べて上記水溶性樹脂の水分含有量の増加を抑えているといえる場合も含まれる。
上記水分を除去した雰囲気は、露点が−30℃以下の雰囲気であることが好ましい。このような雰囲気下で冷却工程を行うことで、水溶性樹脂中の水分量を後述する好ましい範囲にすることができる。より好ましくは、露点が−40℃以下の雰囲気であり、更に好ましくは露点−50℃以下である。
【0015】
上記吸湿防止処理としては、例えば、膜式の除湿処理、吸着剤式の除湿処理、冷凍式の除湿処理等が挙げられる。
上記吸湿防止処理としては、これら処理方法の1種を用いて行われてもよいし、2種以上を併用して行われてもよい。
【0016】
上記膜式の除湿処理とは、中空糸膜に圧縮空気(飽和相対湿度が100%である飽和空気)中の水分を吸収させ、それによって得た乾燥空気を用いるものであり、冷却工程を行う部位を気密性の高い材料で覆い、その中にコンプレッサーを用いて乾燥空気を送り込んで水分を除去した雰囲気とするものである。乾燥空気は、露点−30℃以下であることが好ましい。より好ましくは露点−40℃以下であり、更に好ましくは露点−50℃以下である。上記乾燥空気が、露点−30℃を超える場合には、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の水分含有量が高くなり性能低下を引き起こすおそれがある。また、上記乾燥空気の他、窒素等の不活性ガスを用いることもできる。
当該処理は、例えば、中空糸膜分離方式圧縮空気用ドライヤー(MACDASS、製品名、東芝プラント建設社製)を用いて行うことができる。
【0017】
上記吸着剤式の除湿処理とは、活性アルミナ等の水分を吸着する吸着剤に空気中の水分を吸着させて水分を除去した雰囲気とする処理であり、上記冷凍式の除湿処理とは、冷凍機で圧縮空気を冷却し、圧縮空気中の水分を凝縮させて除くことで水分を除去した雰囲気とする処理である。
【0018】
上記吸湿防止処理は、処理を行っている雰囲気下にある間のアルキレンオキシド系水溶性樹脂の含有水分の濃度増加が、1000ppm以下であることが好ましい。より好ましくは500ppm以下であり、更に好ましくは400ppm以下である。上記濃度増加が1000ppmを超える場合には、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の水分含有量が高くなり性能低下を引き起こすおそれがある。
【0019】
上記冷却工程においては、金属の冷却用として水を用いることがあり、そのような場合には、吸湿防止処理よりも雰囲気中の水分含有量を減少させる効果の高い乾燥処理を行うことが好ましい。
上記乾燥処理を行う方法としては、例えば、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、コニカルドライヤーに投入した後、圧縮空気を通気させて乾燥させる方法、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、サイロに投入した後、圧縮空気を上下から吹きかけ、循環させて乾燥させる方法、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を、ロータリーキルン等の通気回転乾燥機に投入した後、圧縮空気を通気させて乾燥させる方法等が挙げられる。
上記乾燥処理としてはこれら操作のうち1種を行ってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記乾燥処理において減らされる水分量は特に限定されないが、乾燥処理前後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂において、27000ppm以下の濃度減少が好ましい。より好ましくは7000ppm以下であり、更に好ましくは4700ppm以下である。この範囲を超える濃度減少となるように乾燥処理を行うと、経済性、生産性に劣ることとなる他、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の物性にも悪影響を及ぼすおそれがある。
【0021】
上記冷却工程を、水分を除去した雰囲気下で行うための方法として、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を接触させる金属を、ロール表面にフッ素樹脂を被覆した金属ロールとし、該ロールの内部に冷却水を入れて密閉し、金属を冷却するようにすると、金属を冷却するための冷媒として水を用いた場合であっても、金属ロール内に冷媒を閉じ込めることができ、水分が冷却工程雰囲気中に混入するのを防ぐことができる。
【0022】
上記冷却工程を、ほこりを除去した雰囲気下で行うためには、HEPAフィルタ又はULPAフィルタで清浄化した気体を作業雰囲気に吹き込む装置や作業雰囲気内の装置の駆動部・摺動部からの発塵を除外する装置、循環フィルター等の作業雰囲気を清浄化する装置を冷却工程雰囲気中に設置することの他、作業員や原材料・包装材・工具・道具・物品等作業雰囲気に移動する前のゴミを除去する作業場所や設備を設けることが好ましい。これらを設置することにより冷却工程雰囲気中のほこりを充分に除去することが可能である。上記冷却工程における雰囲気中のほこりを除去する方法としては、上記装置や設備を1種用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ほこりを除去した雰囲気としては、旧FED−STD−209D規格において、クラス1,000,000(JIS B9920において、クラス9)より清浄な雰囲気であることが好ましい。更に好ましくは、旧FED−STD−209D規格において、クラス100,000(JIS B9920において、クラスM8)より清浄な雰囲気であることが好ましい。
【0023】
上記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソール共重合体(テフロン(登録商標)AF)であることが好ましい。フッ素樹脂としてこれらを用いることによって、より充分に本発明の効果を発揮することが可能となる。上記フッ素樹脂としてより好ましくは、熱可塑性を有し、加工性に優れるPFA、ETFE、FEP、テフロン(登録商標)AFであり、更に好ましくは、PFA、ETFEである。
上記フッ素樹脂として、これらの1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記金属としては、例えば、COMPACT CONTI COOLER(製品名、ツバコー・ケー・アイ社製)、ドラムクーラーDC(製品名、三菱化学エンジニアリング社製)、ラミネーター(製品名、モダンマシナリー社製)等のドラムクーラー;スチールベルトクーラー(製品名、サンドビック社製)、スチールベルトシングルクーラー(製品名、日本スチールコンベア社製)等のシングルベルトクーラー;ダブルスチールベルトクーラー(製品名、サンドビック社製)等のダブルベルトクーラーなどの冷却装置における冷却用の金属板、金属面が挙げられる。
上記冷却装置を用いた場合には、冷却ベルト、冷媒の温度、冷媒の種類、ベルト若しくはドラムの幅等を適宜設定することにより、樹脂ペレットを所定量生産するための条件を容易に得ることができる。
また、上記金属ロールとしては、例えば、上記ドラムクーラーの冷却装置における冷却用の金属ロールが挙げられる。
上記金属、及び、金属ロールとしては、上述したもののうち1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また、金属ロールを用いる場合には、金属ロールを直列、及び/又は、並列に並べて冷却工程を行ってもよい。
【0025】
上記金属は、アルキレンオキシド系水溶性樹脂がフッ素樹脂を介して接触する面の裏側から冷媒を吹き付ける等により冷却することが可能である。
上記冷媒としては、例えば、冷却エアー、水、エチレングリコール等が挙げられ、これらを1種用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記金属の冷却温度としては、少なくとも溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を結晶化しない程度まで冷却することができる温度であれば、適宜設定することができるが、例えば、金属を被覆するフッ素樹脂面の温度が0〜30℃であることが好ましく、3〜25℃であることがより好ましい。更に好ましくは、5〜20℃である。
【0026】
上記冷却工程における雰囲気温度としては、特に制限されず、適宜設定することができるが、例えば、0〜30℃であることが好ましく、3〜25℃であることがより好ましく、更に好ましくは、5〜20℃である。
なお、上記冷却工程だけではなく、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を製造するところから、樹脂ペレットが製造されるまでのその他の工程においても上記雰囲気温度で行うことができる。
【0027】
本発明の樹脂ペレットの製造方法においては、上記冷却工程に供されるアルキレンオキシド系水溶性樹脂を溶融状態とする方法は特に制限されないが、メルターにより溶融状態とすることができる。メルターとしては、バルクメルターBMシリーズBM20(製品名、ノードソン社製)等を用いることができる。また、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を冷却工程に供給する速度を調整するための流量調整ユニットを設けてもよく、冷却工程に供給される溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂からゴミを取り除くためのフィルターを設けてもよい。
また、冷却工程を行う前に、あらかじめ溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を成形する成形工程を行ってもよい。
上記成形工程としては特に制限されないが、例えば、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、押出機等であらかじめシート状、ストランド状、板状、粒状等に成形する方法が挙げられる。このうち粒状に成形する方法としては、側面に複数の所定の大きさの孔を有する円筒ドラム内に溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を仕込み、該ドラムの軸を水平にした状態で回転させて、該孔から出てくる溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を上記冷却工程におけるフッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面上に滴下し、粒状の樹脂を成形する方法が挙げられる。
また、その他の方法として、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、成形用の型に流し込んで成形する方法などが挙げられる。
これら成形工程の中でも、それに続く冷却工程において充分に冷却を行うことができるという点から、シート状、又は、板状に成形する方法が好ましい。
【0028】
上記溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、押出機等であらかじめシート状、ストランド状、板状、粒状等に成形する方法において、該水溶性樹脂を押し出す方法としては、樹脂を排出する箇所にエクストルーダー、ポリマーポンプ、ギアポンプ等を取り付け、更に押出機を連結して上記水溶性樹脂を押し出す方法が好ましい。
【0029】
上記押出機としては、例えば、SUPERTEXαII(製品名、日本製鋼所社製)、BT−30−S2(製品名、プラスティック工学研究所社製)等の単軸型又は二軸型押出機、SCRセルフクリーニング式リアクター(製品名、三菱重工社製)などが挙げられる。ここで一定の厚さのシート状又は板状に押し出すためには、押出機にTダイを設置して押し出すことが好ましく、粒状に押し出すためには、押出機にロットフォーム(製品名、サンドビック社製)等のドロップフォーマーを設置して押し出すことが好ましい。
【0030】
上記溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を一定の厚みで押し出す場合の該水溶性樹脂の厚みとしては、この後に行われる冷却工程での冷却効率、及び、最終的に製造される樹脂ペレットのサイズ等を考慮して、0.5〜4mmであることが好ましく、1〜3mmであることがより好ましく、1.5〜2.5mmであることが更に好ましい。
【0031】
本発明の樹脂ペレットの製造方法においては、上記冷却工程の前、上記成形工程を行う場合には成形工程前に、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂に添加剤を添加する添加工程を行ってもよい。
上記添加剤としては、例えば、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、耐光性向上剤、可塑剤、充填剤、界面活性剤、滑剤等が挙げられる。
上記添加工程においては、上記添加剤の他、有機質微粒子、無機質微粒子、低分子化合物等を添加することもできる。上記有機質微粒子、無機質微粒子は、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の使用目的や使用形態に応じて、ブロッキング防止等の機能を発揮することができる。
【0032】
上記有機質微粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微粒子が挙げられ、また、上記無機質微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物又はこれらの複合酸化物の微粒子が挙げられる。
【0033】
上記添加工程においては、添加した添加剤等を上記水溶性樹脂中に均一に混合させる場合には、混練機等を用いて混練し、均一混合することができる。
上記添加工程において用いることができる混練機としては、例えば、スタテックミキサー(製品名、ノリタケ社製)、スルザーミキサー(製品名、スルザー社製)等の混練機;GTシリーズ(製品名、プラスティック工学研究所社製)等の単軸型押出機;ニーダー、特殊ニーダーや、S2KRCニーダー(製品名、栗本鉄工所社製)、BTシリーズ(製品名、プラスティック工学研究所社製)、ニーダールーダー(製品名、森山製作所社製)といったKRCニーダー等の二軸型押出機又は二軸型混練機;などが挙げられる。これらは、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を重合するために用いる重合槽や樹脂溶融槽等、添加工程の前の工程において用いられる装置に、ポリマーポンプやギアポンプ等を介して連結して用いられることが好ましい。
また、混練後に更に上記成形工程を行う場合には、上記混練機の底にポリマーポンプやギアポンプ等を取り付けて、水溶性樹脂を上記機器から抜き取りながら、更に押出機を連結しておくことが好ましい。
【0034】
上記フッ素樹脂面からアルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離する工程は、冷却固化したアルキレンオキシド系水溶性樹脂を上記フッ素樹脂面から剥離する工程であれば特に制限されない。通常、該剥離工程は、冷却工程と連続して行われる。
剥離工程において、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離する方法としては、アルキレンオキシド系水溶性樹脂をフッ素樹脂面から剥離することができる方法であれば特に制限されず、アルキレンオキシド系水溶性樹脂がシート状である場合には、フッ素樹脂面とは離れた位置にあるロールにアルキレンオキシド系水溶性樹脂を誘導することでフッ素樹脂面から剥離する方法等を用いることができる。
【0035】
上記水溶性樹脂を切断してペレット化する工程は、上記剥離されたアルキレンオキシド系水溶性樹脂を切断して樹脂ペレットを製造することができれば、特に制限されず、後述するペレット化工程に用いることができる装置に上記水溶性樹脂を導入して切断することにより樹脂ペレットを製造することができる。ここでペレットとは、通常、粉体と区別することができる程度に粒状の形態を有しているものを指し、その形態は特に制限されないが、そのような形態としては、球状、半球状、楕円球状、円柱状、直方体状等の定形性を有する形態や、樹脂を砕いたチップ状の形態、フレーク状の形態等の不定形な形態等が挙げられる。
【0036】
上記ペレット化工程に用いることができる装置としては特に限定されないが、例えば、シートペレタイザーSG(E)−220(製品名、ホーライ社製)等のシートペレタイザー、ホーライ社製のクラッシャー等のクラッシャーなどが挙げられる。これらの中でも、製造されるペレットの大きさを揃えやすいという観点から、シートペレタイザーを用いることが好ましい。
上記シートペレタイザーとしては特に制限されないが、カッター部分、特にスリッターロール部分を冷媒で冷却したり、カッター部分、特にスリッターロール部分にある水溶性樹脂を冷風で冷却したりすることができるような機能を有するものがより好ましい。この際の冷却温度としては適宜設定することができるが、特にペレット化工程に供されているアルキレンオキシド系水溶性樹脂を融点以下の温度にすることができる温度であることが好ましい。具体的には、0〜30℃であることが好ましく、3〜25℃であることがより好ましい。更に好ましくは、5〜20℃である。
【0037】
本発明の樹脂ペレットの製造方法においては、上記剥離工程の後、それに続くペレット化工程に入る前に、樹脂を更に冷却する工程(養生工程)を行ってもよい。当該工程においては、フッ素樹脂面から剥離されたアルキレンオキシド系水溶性樹脂を雰囲気にさらし、該水溶性樹脂を更に冷却することで該水溶性樹脂の結晶化が進行することとなる。
上記水溶性樹脂を雰囲気にさらす条件としては特に制限されず、適宜、温度、湿度等の管理された装置内に入れることにより行うことができる他、風乾としてもよい。
【0038】
本発明の樹脂ペレットの製造方法においては、必要に応じて、ペレット化工程により得られた樹脂ペレットを所定の粒径に選り分ける選別工程を行ってもよい。上記選別工程は、通常、ふるいを用いて行うことができるが、振動する傾斜面のふるいの上にペレット化工程により得られた樹脂ペレットを流して選別を行う方法や、円錐状でありかつ横型であるふるいを用いて、ふるいの傾斜面をペレット化工程により得られた樹脂ペレットが回転することで選別が行われる方法等が樹脂ペレットの生産性の観点からは好ましい。上記選別工程は、通常、ペレット化工程後に連続的に行われることが好ましい。
上記選別工程を経たペレットは、例えば、その後、配管を通って製品タンクに輸送され、当該製品タンクによってペレットの充填が行われることとなる。なお、選別工程からペレットの充填までの工程においても、上述したような水分及びほこりを除去した雰囲気下で行うことが好ましい。
【0039】
次に、本発明におけるアルキレンオキシド系水溶性樹脂の構造及び重合方法について説明する。
本発明におけるアルキレンオキシド系水溶性樹脂としては、その構造は特に制限されないが、下記一般式(1);
AxByCz (1)
(式中、Aは、−CHCHO−を表す。Bは、−CHCH(R)O−を表し、Rは、−Re−Rf−Rを表す。Reは、−(CHCHO)p−を表し、pは、同一又は異なって、0〜10の整数を表す。Rfは、−(CHO)q−を表し、qは、同一又は異なって、0又は1を表す。Rは、同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜16のアルキル基、炭素数3〜16のシクロアルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数7〜16のアラルキル基、又は、炭素数2〜16のアシロキシ基を表す。Cは、−CHCH(R)O−を表し、Rは、−Re−Rf−Rを表す。Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルケニル基、又は、(メタ)アクリロイル基を表す。xはAの、yはBの、zはCのモル分率をそれぞれ表し、xは、0.80〜0.98であり、yは、0.02〜0.20であり、zは、0〜0.05である。)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0040】
上記一般式(1)におけるBは、−CHCH(R)O−を表し、Rは、−Re−Rf−Rを表すものである。上記Reは、−(CHCHO)p−を表し、pは、同一又は異なって、0〜10の整数を表す。上記pとして好ましくは、0〜5であり、より好ましくは、0〜3である。特に好ましくは、0である。上記Rfは、−(CHO)q−を表し、qは、同一又は異なって、0又は1を表す。上記Rは、同一若しくは異なって、置換基を有していてもよい炭素数1〜16のアルキル基、炭素数3〜16のシクロアルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数7〜16のアラルキル基、又は、炭素数2〜16のアシロキシ基を表す。上記Rにおける置換基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜16のアシロキシ基が挙げられる。これらの中でも上記Rとしては、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数2〜10のアシロキシ基が好ましく、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数7〜9のアラルキル基、炭素数2〜6のアシロキシ基である。更に好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、フェニル基であり、特に好ましくは、炭素数1又は2のアルキル基である。
なお上記Bにおいて、Rを構成する炭素原子と、R以外の2つの炭素原子とで環構造が形成されていてもよい。
【0041】
上記Bとして具体的に好ましい形態としては、アルキレンオキシド系水溶性樹脂中に上記Bを導入するために用いられる原料単量体で例示すると、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシへキサン、1,2−エポキシオクタン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、エチレングリコールメチルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、メチルグリシジルエーテル、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、1,2−エポキシペンタンがより好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが更に好ましい。
【0042】
上記一般式(1)におけるCは、−CHCH(R)O−を表し、Rは、−Re−Rf−Rを表す。上記Re及びRfは、上述したRe及びRfと同様である。上記Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルケニル基、又は、(メタ)アクリロイル基を表す。上記Rにおける置換基としては、炭素数2〜16のアルケニル基、炭素数3〜16のシクロアルケニル基、−(OCHCH)r−O−Rgで表される基(rは、0〜10の整数を表す。Rgは、炭素数2〜16のアルケニル基を表す。)等が挙げられる。このように、上記Rは架橋性官能基であり、これらの中でも、上記Rとしては、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、(メタ)アクリロイル基が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜7のシクロアルケニル基、(メタ)アクリロイル基であり、特に好ましくは、炭素数3〜6のアルケニル基である。
なお上記Cにおいて、Rを構成する炭素原子と、R以外の2つの炭素原子とで環構造が形成されていてもよい。
【0043】
上記Cとして具体的に好ましい形態としては、アルキレンオキシド系水溶性樹脂中に上記Cを導入するために用いられる原料単量体で例示すると、エポキシブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロへキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキサノエート、又は、ビニルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−アリルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールアリルグリシジルエーテル、エチレングリコールビニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールビニルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、エポキシブテン、アリルグリシジルエーテルがより好ましく、アリルグリシジルエーテルが更に好ましい。
【0044】
上記一般式(1)におけるxはAの、yはBの、zはCのモル分率をそれぞれ表し、xは、0.80〜0.98であり、yは、0.02〜0.20であり、zは、0〜0.05である。これらのうちでも、xは、0.85〜0.97であり、yは、0.03〜0.15であり、zは、0〜0.03であることが好ましく、更に好ましくは、xは、0.90〜0.96であり、yは、0.04〜0.10であり、zは、0〜0.02であることである。
なお、上記一般式(1)において、A、B、及び、Cは、それぞれ1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。2種類以上である場合の結合状態としては、ブロック状であってもよいし、ランダム状であってもよいし、交互に結合するものであってもよい。また、A、B、及び、Cの結合状態としても、ブロック状であってもよいし、ランダム状であってもよいし、交互に結合するものであってもよい。なお、どのような結合状態とするかによって、得られるアルキレンオキシド系水溶性樹脂の結晶化温度を調整することが可能であることから、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を製造するための原料単量体の種類及び単量体混合物中の各単量体の配合割合に応じてそれらの結合状態を適宜設定することで、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の結晶化温度を後述するような好ましい範囲のものとすることができる。
【0045】
上記一般式(1)で表される構造を有するアルキレンオキシド系水溶性樹脂は、後述するように、例えば、一般式(1)におけるAを導入するために用いられるエチレンオキシド、上述した一般式(1)におけるBを導入するために用いられる原料単量体、及び、上述した一般式(1)におけるCを導入するために用いられる原料単量体を、一般式(1)におけるx、y、zのモル分率となるような割合で含む単量体混合物を溶媒中で攪拌重合することにより製造することができるものである。そのようにして得られた上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂においては、その末端構造は、上記単量体混合物に含まれる単量体のうち、末端部に結合している単量体、又は、単量体混合物を重合する際に用いられる反応開始剤の残基等に由来することとなり、例えばアルコキシ基、水酸基、−O−Na+等の水酸基のアルカリ金属塩などが挙げられる。なお、上記末端構造は、更に置換反応等により置換されていてもよく、該置換反応は、置換反応として通常用いられる試薬、反応条件等により行うことができる。
また更には、上記一般式(1)で表される構造を有するアルキレンオキシド系水溶性樹脂は、A、B及びCを導入するために用いられる原料単量体に加えて、それら原料単量体以外のその他の単量体成分を含む単量体混合物を重合して得られるものであってもよい。すなわち、上記一般式(1)で表される構造を有するアルキレンオキシド系水溶性樹脂は、上記A、B及びCで表される構造部位に加えて、上記その他の単量体成分に由来する構造部位を有していてもよい。
ただし、上記一般式(1)で表される構造を有するアルキレンオキシド系水溶性樹脂全体に対して、上記一般式(1)で表される構造部分の占める割合は、99〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、99.5〜100質量%であり、更に好ましくは、99.9〜100質量%である。
【0046】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂は、結晶化温度が10〜30℃であることが好ましい。結晶化温度がこのような範囲であると、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の成形性を良好なものとすることができる。結晶化温度としてより好ましくは、12〜28℃であり、更に好ましくは、15〜25℃である。
なお、上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂の結晶化温度は、後述する実施例と同様の方法により測定することが可能である。
【0047】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂は、重量平均分子量が10,000〜300,000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の成形性を良好なものとすることができる。重量平均分子量としてより好ましくは、30,000〜250,000であり、更に好ましくは、30,000〜200,000、特に好ましくは50,000〜150,000である。
なお、上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂の重量平均分子量は、後述する実施例と同様の方法により測定することが可能である。
【0048】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂は、100℃で剪断速度が100(1/秒)以上500(1/秒)以下であるときのせん断粘度が10〜50,000Pa・sであることが好ましい。粘度がこのような範囲であると、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の成形性を良好なものとすることができる。粘度としてより好ましくは、50〜10,000Pa・sであり、更に好ましくは、100〜5,000Pa・sである。
なお、上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂の粘度は、動的粘弾性測定装置(製品名「ARESレオメーター」、ティ エー インスツルメント社製)やキャピラリー粘度計(ROSAND社製)を用いて測定することができる。
【0049】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂を製造する方法としては、上述した構造を有するアルキレンオキシド系水溶性樹脂が得られれば特に制限されず、通常用いられる重合方法により行うことができる。上記製造方法としては、例えば、得られるアルキレンオキシド系水溶性樹脂に一般式(1)におけるAを導入するために用いられるエチレンオキシド、上述した一般式(1)におけるBを導入するために用いられる原料単量体、及び、上述した一般式(1)におけるCを導入するために用いられる原料単量体を一般式(1)におけるx、y、zのモル分率となるような割合で含む単量体混合物を、溶媒中で攪拌重合する方法等が挙げられる。重合方法としては、特に制限されず、溶液重合法、沈殿重合法、懸濁重合法等が挙げられる。これらの中でも、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の生産性の観点から溶液重合法により行うことが好ましい。
なお、上記単量体混合物には、エチレンオキシド及び上記原料単量体の他にその他の成分が含まれていてもよい。単量体混合物が上記その他の成分を含む場合には、単量体混合物100質量%におけるその他の成分の含有量は、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以下である。
【0050】
また、上記単量体混合物の反応系への添加方法としては、特に制限されないが、溶媒を仕込んだ反応系に単量体混合物を一括して供給してもよいし、連続的に又は断続的に供給する方法としてもよい。更に単量体混合物を連続的に又は断続的に供給する場合には、単量体混合物をあらかじめ調整しておいて供給してもよいし、単量体混合物に含まれる原料単量体等を各々独立して供給し、反応系中に添加された後に混合物となる形態であってもよい。
上述した製造方法の中でも、あらかじめ仕込んだ溶媒中に単量体混合物を連続的に供給しながら溶液重合を行う方法が、生産性、安全性の観点から、好ましい形態である。
【0051】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂の製造方法において、溶媒の存在下に重合反応を行う場合に用いられる溶媒としては、通常重合反応に用いられる溶媒を用いることができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘプタン、オクタン、n−へキサン、n−ペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメトキシエタン等のエチレングリコールジアルキルエーテル類の溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレンが好ましい。
【0052】
上記溶媒の使用量としては、特に制限されず、反応に用いる単量体混合物の種類や、反応形態等に応じて適宜設定することができるが、例えば、単量体混合物の仕込み量100質量部に対して、溶媒を0〜300質量部使用することが好ましい。より好ましくは、10〜250質量部であり、更に好ましくは、50〜200質量部である。
【0053】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂の製造方法においては、重合反応の際に通常用いられる反応開始剤、酸化防止剤、可溶化剤等を用いて行うことができる。
上記反応開始剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムアルコラート、ナトリウムアルコラート、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性触媒;金属カリウム、金属ナトリウム等の金属;水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等のAl−Mg系複合酸化物触媒又はそれらを表面改質した触媒;バリウム酸化物、バリウム水酸化物、層状化合物、ストロンチウム酸化物、ストロンチウム水酸化物、カルシウム化合物、セシウム化合物、複合金属シアン化錯体、ルイス酸やフリーデルクラフツ触媒等の酸触媒;等が挙げられる。反応開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤としては、4,4−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等が挙げられる。
【0054】
反応開始剤の使用量は、合成されるアルキレンオキシド系水溶性樹脂の分子量に影響するため、上記反応開始剤の使用量としては、合成するアルキレンオキシド系水溶性樹脂の分子量に応じて適宜設定することができるが、例えば、単量体混合物の仕込み量100質量%に対して、反応開始剤を0.01〜1.0質量%使用することが好ましい。このような使用量とすることによって、上述した好ましい分子量を持ったアルキレンオキシド系水溶性樹脂を製造することができる。反応開始剤の使用量としてより好ましくは、単量体混合物の仕込み量100質量%に対して、0.01〜0.5質量%であり、更に好ましくは、0.02〜0.1質量%である。
【0055】
反応開始剤の添加方法としては、特に制限されず、単量体混合物を反応系中に供給する前に、溶媒と共に仕込んでいてもよいし、単量体混合物の供給を開始した後に一括して投入する、又は、連続的にあるいは断続的に供給することとしてもよい。
【0056】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂を製造する重合反応時の反応温度としては、50〜150℃であることが好ましい。より好ましくは、60〜120℃であり、更に好ましくは、70〜110℃である。また、反応時間は、1〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、2〜20時間であり、更に好ましくは、3〜15時間である。
また、上記重合反応時の反応系中の雰囲気は、不活性ガス雰囲気であることが好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスが好ましい。
なお、上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂の製造方法は、上述した重合反応を行う工程に引き続いて熟成工程を行ってもよいし、更には反応系から溶媒成分を蒸発させ、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を精製回収する工程をおこなってもよい。
【0057】
上記重合反応によって得られるアルキレンオキシド系水溶性樹脂の水分含有量は、7000ppm未満となるようにすることが好ましい。このような水分含有量に調整することによって、本発明において最終的に製造される樹脂ペレットの水分含有量を制御し易くなる。上記重合反応後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂の水分含有量としてより好ましくは、200ppm未満であり、更に好ましくは、50ppm未満である。
【0058】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂の水分含有量を上述した範囲に調整するための方法としては、例えば、重合反応に用いる単量体成分や溶媒の水分含有量や、反応釜、原料タンク、配管、パルプ等の重合反応を行うために用いる装置に付着している水分を管理する方法、後述する脱揮工程により水分含有量を調整する方法が挙げられる。
【0059】
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂は、例えば、上述した重合方法により製造することができるが、製造後、上記冷却工程に供する前に、加温下で脱揮することによって、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を得ることができる。この方法によれば、重合反応後に一度回収したアルキレンオキシド系水溶性樹脂を溶融させる必要がなく、溶融状態で回収することができることから、冷却工程に供する前に、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を含む重合反応液を加温下で脱揮する工程に供する方法は、生産性及び経済性に優れた方法であるといえる。
上記加温下で脱揮する工程(以降、単に「脱揮工程」ともいう。)とは、上述した重合反応を行った後、重合反応に引き続いて熟成工程を行った場合には熟成反応を行った後、製造されたアルキレンオキシド系水溶性樹脂、溶媒及び残存する単量体成分を含む重合反応液から溶媒成分及び残存単量体成分を揮発して除去することで、アルキレンオキシド系水溶性樹脂を得る工程である。
なお、脱揮後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂は、完全に溶媒を含まないものであってもよいし、後述する溶媒の濃度範囲となるまで溶媒が除去されたものであってもよい。
【0060】
上記脱揮工程後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂における溶媒の濃度は、脱揮工程後の重合反応液100質量%に対して、0.001〜30質量%であることが好ましい。溶媒濃度を0.001質量%未満とする程の厳しい条件で脱揮を行うと、水溶性樹脂が熱劣化してしまい、性能低下に繋がるおそれがある。また、溶媒濃度を30質量%より高い濃度とすると、脱揮工程後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂にタックが生じ、ブロッキング等が生じるおそれがある。脱揮工程後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂における溶媒の濃度としてより好ましくは、0.003〜20質量%であり、更に好ましくは、0.005〜10質量%である。
【0061】
上記脱揮工程は、40〜300℃の加温下で行うことが好ましい。このような温度範囲で脱揮工程を行うことにより、脱揮工程後に、上述した溶媒濃度範囲となるように調整することが可能となり、また、上述したアルキレンオキシド系水溶性樹脂の水分含有量についても調整することが可能となる。脱揮工程時の温度としてより好ましくは、60〜250℃であり、更に好ましくは、90〜200℃である。
なお、上記脱揮工程時の温度とは、脱揮を行う装置内のアルキレンオキシド系水溶性樹脂の温度を表している。
【0062】
上記脱揮工程は、13〜100,000Paの圧力下で行うことが好ましい。このような圧力範囲で脱揮工程を行うことにより、脱揮工程後に、上述した溶媒濃度範囲となるように調整することが可能となり、また、上述したアルキレンオキシド系水溶性樹脂の水分含有量についても調整することが可能となる。脱揮工程時の圧力としてより好ましくは、133〜70,000Paであり、更に好ましくは、1333〜40,000Paである。
なお、上記脱揮工程時の圧力とは、脱揮を行う装置の槽内圧力を表している。
【0063】
上記脱揮工程を行うための方法としては、通常脱揮を行うために用いられる装置、条件によって行うことができ特に制限されないが、脱揮を行う装置としては、例えば、攪拌槽蒸発器、下流液柱蒸発器、薄膜蒸発器、高粘度用薄膜蒸発器、表面更新型重合器、ニーダー、ロールミキサー、インテンシブミキサー、KRCニーダー、押出機などが挙げられる。また、脱揮工程を行うための脱揮条件としては、用いる装置により適宜設定することができる。
【0064】
上記脱揮工程後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂の温度は特に限定されないが、例えば、40〜300℃であることが好ましく、より好ましくは60〜250℃であり、更に好ましくは、90〜200℃である。
【0065】
上記脱揮工程後のアルキレンオキシド系水溶性樹脂は、上記冷却工程に移送されて直ちにペレット化されることが好ましいが、一旦、ドラム缶やコンテナなどの容器に充填・保管後、容器から抜き出したアルキレンオキシド系水溶性樹脂をペレット化工程に供することも好ましい形態として挙げることができる。
上記アルキレンオキシド系水溶性樹脂を容器から抜き出す装置としては、アルキレンオキシド系水溶性樹脂の熱履歴を抑えられる点で、ノードソン社製バルクメルター(製品名;デュラドラム、バーサドラム等)やイコシステム社製FS200(製品名)やロバテック社製RMD200(製品名)などを用いることが好ましい。
【0066】
本発明の樹脂ペレットの製造方法において最終的に生産される樹脂ペレットの大きさとしては特に制限されず、その使用目的等により適宜設定することができる。上記樹脂ペレットの大きさとしては、例えば、最大外径が1.0〜50mmであることが好ましく、1.0〜30mmであることがより好ましい。
【0067】
また上記樹脂ペレットは、水分含有量が1,000ppm以下であることが好ましい。樹脂ペレットの水分含有量が1,000ppmより多い場合、金属イオンが水分に触れると水酸化物が生成するため、水分含有量の多い樹脂ペレットを用いて電池の電解質を製造すると、金属−電解質層の界面に絶縁層を形成し、電位の低下、サイクル特性の悪化を引き起こすことになり、好ましくない。また、樹脂ペレットの水分含有量が多いと樹脂の誘電率が大きくなって導電性を有するものとなるため、カラーフィルターの保護膜として使用するのに適さないものとなる。更に半導体用粘着テープに用いた場合にも水分が誤作動の原因となり、ウレタンフォームの原料として用いた場合には、水分がイソシアネート基と反応することで反応の進行が妨げられるため、得られるウレタンフォームの物性が低下したり発泡が生じたりする。樹脂ペレットの水分含有量は、より好ましくは、500ppm以下であり、更に好ましくは、400ppm以下である。
【0068】
本発明の製造方法により得られる樹脂ペレットは、例えば、接着剤、塗料、シーリング剤、エラストマー、床材等のポリウレタン樹脂の他、硬質、軟質若しくは半硬質のポリウレタン樹脂、界面活性剤、サニタリー製品、脱墨剤、潤滑油、作動液、ポリマー電池に用いるセパレーター、電極及び高分子電解質層、カラーフィルター保護膜、レジスト及びフレキソ印刷版材等に用い得る感光性樹脂、半導体用粘着テープ、ウレタンフォーム等の広範囲な用途に対する高分子材料、特に高分子電解質等の電気化学分野における高分子材料を製造するための樹脂原料として好適に使用することができる。
【0069】
本発明の樹脂ペレットの製造方法を用いた樹脂ペレットの製造の一例を図1を用いて説明する。
ドラム缶からメルターを用いてアルキレンオキシド系水溶性樹脂を融解、抜出し、流量調整ユニットで流量を調整しながら、ギアポンプへ供給する。ギアポンプで融解した水溶性樹脂を抜き出し、ポリマーフィルターでゴミを取り除いて、ダイスに供給する。なお、水溶性樹脂の入っているドラム缶、及び、メルターはパーテーションによって区切られ、物の移動が制限された空間に設置されている。パーテーション内は建て屋内空気で陽圧となっており、更に、循環フィルターにより、清浄な雰囲気(クリーン度クラス10万)が保たれている。ここまでが成形工程である。
次に冷却工程に水溶性樹脂は供給される。ダイスよりシート状に押し出された水溶性樹脂は、直列に2つ設置されたフッ素樹脂コーティングされた金属ロール上に供給され、金属ロールのフッ素樹脂面に接触しながら進む。金属ロール内には金属のフッ素樹脂面を冷却するためのチラー水が供給されている。当該冷却工程の後、フッ素樹脂面から離れた位置にあるロールに水溶性樹脂を誘導して剥離工程を行い、更に離れた位置にあるロールに誘導していくことで水溶性樹脂を雰囲気にさらし、養生工程が行われる。養生工程を経た水溶性樹脂は、ペレタイザーに供給され、ペレット化工程に供される。なお、冷却工程からペレット化工程までは一つのパーテーション内で行われ、水分及びほこりを除去した雰囲気下で行われている。更に、ペレット化工程を行うペレタイザーには水分及びほこりを除去した空気が直接吹き付けられ、特に水分及びほこりの除去された雰囲気でペレット化工程は行われる。
【発明の効果】
【0070】
本発明の樹脂ペレットの製造方法は、上述の構成よりなり、樹脂ペレットを効率的に生産することが可能であるため、高分子電解質等の電気化学分野における材料を製造する際に、原料として好適に用いられる樹脂ペレットの製造方法として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の樹脂ペレットの製造方法を用いた樹脂ペレットの製造の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0073】
下記実施例及び比較例に用いるアルキレンオキシド系水溶性樹脂を以下のようにして調製した。
重合・脱揮においては、孔径;5μmのフィルターで処理した窒素や原料を使用するとともに、脱揮以降の工程の検討においては、特に記載のない限り、HEPAフィルターで乾燥空気を処理したクラス10万の雰囲気で作業した。
〔モレキュラーシーブによる脱水処理〕
乾燥する原料単量体や溶媒等に対して、10wt%のモレキュラーシーブ(ユニオン昭和社製、製品名:モレキュラーシーブ(タイプ:4A 1.6))を添加後、窒素置換し、室温で12時間以上静置した。
【0074】
また、後述する合成例1,2において得られた反応混合物(重合体A、B)について、以下に示す測定を行った。これらの結果を表1に示す。
〔重量平均分子量(Mw)の測定〕
得られた反応混合物(アルキレンオキシド系水溶性樹脂を含む)を、所定の溶媒に溶解後、ポリエチレンオキシドの標準分子量サンプルを用いて検量線を作成したGPC装置(東ソー社製、製品名;HLC−8220 GPC、カラム:TSKgel SuperAW5000、TSKgel SuperAW4000、TSKgel SuperAW3000、TSKgel SuperAW2500(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用)を用いて、重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0075】
〔融点、結晶化温度の測定〕
示差熱分析装置を用いて、下記温度パターンで、ポリマーの結晶化温度を測定した。サンプルとするアルキレンオキシド系水溶性樹脂は、得られた反応混合物を減圧乾燥機で80℃、2h乾燥を行い、反応混合物中の揮発分を除くことにより調製した。
温度パターン:分析装置(セイコー電子工業社製、製品名:熱分析装置 SSC5200Hシステム)内で100℃まで急熱(急加熱)することにより一旦ポリマーを融解後、−150℃まで急冷することにより結晶化したポリマーを5℃/minで100℃まで昇温する際の結晶の融解挙動から融点を求めた。さらに、100℃から5℃/minで−20℃まで冷却する際に現れる結晶化に伴う発熱ピークから結晶化温度を求めた。
【0076】
〔合成例1〕
マックスブレンド翼(住友重機械工業社製)、並びに添加口を備えた100Lの反応器を溶媒で洗浄した後、加熱乾燥・窒素置換を行った。この反応器に、モレキュラーシーブにより脱水処理を施したトルエン46.42部と、反応開始剤としてt−ブトキシカリウム(20wt%テトラヒドロフラン(THF)溶液)0.085部(総単量体仕込量に対して440ppm)とを順次投入した。投入後、反応器内の窒素置換を行い、反応器内の圧力が0.3MPaになるまで窒素で加圧し、マックスブレンド翼を回転させて撹拌しながら、オイルバスを用いて昇温した。内温が90℃になったことを確認後、下記の供給速度でエチレンオキシドとモレキュラーシーブにより脱水処理を施したブチレンオキシドを供給した(エチレンオキシドの供給量:計258部、ブチレンオキシドの供給量:計27.5部)。
[供給条件]
・エチレンオキシド
0〜 40分:10.25部/hr
40〜100分: 6.84部/hr
100〜180分: 5.13部/hr
180〜300分: 3.42部/hr
300〜450分: 2.73部/hr
・ブチレンオキシド
20〜 40分:2.28部/hr
40〜100分:1.52部/hr
100〜180分:1.14部/hr
尚、供給中は、重合熱による内温上昇及び内圧上昇を監視・制御しながら、100℃±5℃の範囲内の温度で反応を行った。供給終了後、さらに90℃以上100℃以下の範囲内で5時間保持して熟成して、アルキレンオキシド系水溶性樹脂(重合体A)を含む反応混合物を得た。
上述した方法により、分子量測定並びに熱分析を行った結果、重量平均分子量(Mw)は117,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.35であり、ガラス転移温度(Tg)は−61.1℃であり、結晶化温度(Tc)は21.6℃であり、融点(Tm)は46.7℃であった。
得られた反応混合物に、重合体に対して5,000ppm相当の酸化防止剤(4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール))を添加し溶解した後、反応混合物から5μmのフィルターで異物を除き、ダブルヘリカルリボン翼を供えたジャケット付高粘度用撹拌槽(250L)に移送して、トルエンを脱揮し重合体Aを得た。
脱揮に際しては、起泡に注意しながら脱揮槽内の品温・減圧度・回転数を調整し、最終的には140℃・6.7kPa・5rpmに到達し、残存トルエン量は0.58%、水分量は74ppmであった。また、脱揮処理の前後において、重合体Aの物性に変化はなかった。
重合体Aは、脱揮終了後、内面に防食塗装を施した20Lオープンストレートペール缶に充填した。
【0077】
〔合成例2〕
エチレンオキシド及び単量体混合物(混合比(wt/wt):ブチレンオキシド/アリルグリシジルエーテル=8/3)の供給条件を下記の通りとしたことと脱揮時の最終到達温度を120℃にした以外は合成例1と同様の重合・脱揮操作を行い、アルキレンオキシド系水溶性樹脂(重合体B)を得た(エチレンオキシドの供給量:計255部、単量体混合物の供給量:計31.5部)。
[供給条件]
・エチレンオキシド
0〜150分:7.52部/hr
150〜450分:3.76部/hr
・ブチレンオキシド
30〜150分:0.85部/hr
150〜450分:0.34部/hr
上述した方法により、分子量測定並びに熱分析を行った結果、重量平均分子量(Mw)は97,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.76であり、ガラス転移温度(Tg)は−62.6℃であり、結晶化温度(Tc)は17.9℃であり、融点(Tm)は46.7℃であった。また、残存トルエン量は0.64%、水分量は86ppmであった。
【0078】
【表1】

【0079】
〔実施例1〕
20Lオープン・ストレートタイプのペール缶からバルクメルター(製品名:バルクメルターBMシリーズBM20、ノードソン社製)を用いて重合体Aの融解・抜出をおこなった。
140℃に加熱したフィンタイプのプラテンを重合体Aに当接・押圧させながら、内蔵されているギアポンプで融解した重合体Aを抜き出し、冷却工程に供した。
バルクメルターから排出された樹脂をドラムクーラーにより冷却した。
140℃、2mm厚で供給された樹脂を、ブライン(温度;13℃、流量;9L/min)で冷却した30μmPFAで被覆した金属ドラム(表面温度15℃)に供給し、ロール上で1分間冷却することによりシート状に成形された重合体Aが容易に剥離された。剥離された重合体Aのシートのフッ素樹脂と接触していなかった面を1分間冷却し、更に20℃の雰囲気で3分間空冷し結晶化を進めた後、ホーライ社製のシートペレタイザーを用いてペレット化した。
このペレタイザーによる切断の結果、〔縦×横×高さ〕がそれぞれ平均値で〔1.5〜2.0mm×3mm×2.0〜4.5mm〕である角ペレットを得た。
【0080】
〔実施例2〕
重合体Bを用いて、プラテンの温度を120℃にすること以外は実施例1と同様の操作を行い重合体Bのペレットを得た。
【0081】
〔比較例1〕
冷却ロールにフッ素加工していないSUS304製ドラムを使用する以外、実施例1と同様の操作を行ったが、冷却ロールから樹脂を引き剥がすことができず、ペレット化することができなかった。
【0082】
実施例及び比較例の結果から、以下のことが分かった。
溶融状態にあるアルキレンオキシド系水溶性樹脂が、フッ素樹脂で被覆された金属のフッ素樹脂面に接触するようにして冷却工程を行う場合には、ペレットを製造することができるのに対して、溶融状態にあるアルキレンオキシド系水溶性樹脂が、フッ素樹脂で被覆されていない金属の面に接触するようにする以外は同様の条件で冷却工程を行うと、冷却ロールから樹脂を引き剥がすことができずに、ペレットを製造することができないことが分かった。これは、上述したように、フッ素樹脂で被覆されていない金属面に溶融状態の樹脂を接触させて冷却固化させる場合には、樹脂は冷却され結晶化して硬くなった状態となってから金属面からの剥離が可能となるのに対して、フッ素樹脂で被覆された金属のフッ素樹脂面に溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を接触させて冷却した場合には、樹脂が結晶化するのを待たずに、結晶化する前の柔軟な状態で剥離することが可能である、という差異に拠るものである。このように、冷却工程において、溶融状態にあるアルキレンオキシド系水溶性樹脂が、フッ素樹脂で被覆された金属のフッ素樹脂面に接触するようにすることにより、フッ素樹脂で被覆されていない金属の面に接触するようにするのに比べて、冷却時間を短縮することが可能となり、生産効率良く樹脂ペレットを製造することができることが実証された。
なお、上記実施例においては、アルキレンオキシド系水溶性樹脂として特定のものが用いられ、また、樹脂ペレット製造に用いられる装置、特に冷却工程において用いられる金属、フッ素樹脂として特定のものが用いられているが、冷却工程において、フッ素樹脂で被覆された金属のフッ素樹脂面に溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂が接触するようにすることによって、冷却時間が短くてすみ、生産効率の良い製造方法となる機構は、全て同様である。
従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。
【符号の説明】
【0083】
1、2:メルター
3、4:ドラム缶
5:流量調整ユニット
6:ギアポンプ
7:ポリマーフィルター
8:ダイス
9、10、20:パーテーション
11:循環フィルター
12:水溶性樹脂
13、14:フッ素樹脂コーティングされた金属ロール
15、16、17、18:ロール
19:ペレタイザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキシド系水溶性樹脂をペレット化して樹脂ペレットを製造する方法であって、
該製造方法は、溶融状態のアルキレンオキシド系水溶性樹脂を、フッ素樹脂で被覆した金属のフッ素樹脂面に接触させて冷却する工程、該フッ素樹脂面からアルキレンオキシド系水溶性樹脂を剥離する工程、及び、該水溶性樹脂を切断してペレット化する工程を含むことを特徴とする樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
前記アルキレンオキシド系水溶性樹脂は、結晶化温度が、10〜30℃であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
前記アルキレンオキシド系水溶性樹脂は、重量平均分子量が、10,000〜300,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程は、ロール表面にフッ素樹脂を被覆した金属ロールを用いて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
前記冷却工程は、水分及びほこりを除去した雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、及び、テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソール共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。
【請求項7】
前記金属を被覆したフッ素樹脂は、厚みが1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂ペレットの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−224031(P2012−224031A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95226(P2011−95226)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】