説明

樹脂ペレット製造用ダイス及びその温度調整方法

【課題】本発明は、追加ジャケットを加熱、断熱、冷却の何れかとして、造粒運転を円滑化することを目的とする。
【解決手段】本発明による樹脂ペレット製造用ダイス及びその温度調整方法は、押出機(2)のダイス本体(1)の裏面(4)から表面(5)へ貫通して形成され、溶融樹脂を供給するための多数のノズル孔(3)と、前記ダイス本体(1)に設けられノズル孔(3)の外周側(8)で前記加熱ジャケット(9)と表面(5)との間に設けられた追加ジャケット(20)とを備え、この追加ジャケット(20)は、温度調整装置(21)を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換える構成と方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレット製造用ダイス及びその温度調整方法に関し、特に、追加ジャケットを加熱、断熱、冷却の何れかとして、造粒運転を円滑化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成装置により生産された合成樹脂原料は、通常、原料の品質改善あるいは均質化等を目的として、スクリュを内挿したシリンダを主要構成部とするスクリュ式押出機(以下において、「押出機」と略して記述する。)により溶融混練される。溶融混練された高温溶融状態の合成樹脂原料は、原材料として取扱い易いように、シリンダの先端に設けられた造粒ダイスの多数のダイス孔から紐(ストランド)状に吐出され、造粒装置によりペレットに造粒されている。
【0003】
樹脂ペレット製造用ダイスとして、特許文献1に開示された図2に示すものがある。すなわち、板の厚み方向へ貫通する多数のノズル孔が形成された厚板円盤状のダイス本体において、厚み方向の中間部に加熱ジャケットを、この加熱ジャケットと吐出側の表面との間に断熱部が、それぞれのノズル孔の外周側に設けて構成されている。
【0004】
図2において、符号1で示されるものは押出機2の先端に設けられたダイス本体である。このダイス本体1は多数のノズル孔3が厚み方向すなわち裏面4から表面5へ形成された厚板円盤状であり、図2は、1個のノズル孔3およびその周辺部の概要を部分的に示している。ダイス本体1の裏面4は押出機2のシリンダ孔6に面しており、他方の表面5は造粒装置7に面している。
【0005】
前記ノズル孔3は、前記ダイス本体1の厚み方向すなわち裏面4と表面5との間を貫通して形成されている。このノズル孔3は、裏面4側の大径円筒孔部3a、表面5側の小径円筒孔部3b、大径円筒孔部3aと小径円筒孔部3bとを連結する中間部の円錐筒孔部3cの3部分により構成されている。前記小径円筒孔部3bの外周側8には、加熱ジャケット9、この加熱ジャケット9と表面5との間の外周側8に断熱部10がそれぞれ形成されている。上記加熱ジャケット9には、加熱流体供給装置11が連結され、断熱部10は、真空状態に密封されている。
【0006】
以上のように構成された樹脂ペレット製造用ダイスにおいて、押出機2のシリンダ孔6内で溶融混練された高温の溶融樹脂は以下のように造粒装置7へ吐出される。すなわち、加熱流体供給装置11から供給された溶融樹脂が加熱ジャケット9内を循環流動し、ノズル孔3の周囲が所定の温度に加熱維持され、前記表面5から造粒装置7の内部内へ紐状になって連続的に吐出される。
【0007】
前記造粒装置7の内部では、充満した状態の冷却水が表面5に沿って下方から上方へ、矢印Aの方向へ流動し、図示しない複数枚の図示しない切断刃が表面5に沿って等間隔で連続的に摺動し、ダイス本体1の表面5および近傍は矢印Aの方向に流れる冷却水により、合成樹脂原料の溶融流動温度以下に冷却された低温状態になっている。
【0008】
前記ダイス本体1のノズル孔3を流動し、表面5から造粒装置7の内部へ紐状になって連続的に吐出される図示しない溶融樹脂は、冷却され固化され、切断刃により切断され、ペレットに造粒される。
【0009】
【特許文献1】特開平08−192423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の樹脂ペレット製造用ダイスは以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、押出機の一時的な運転停止後に運転再開する場合、多くの手間が掛り、ダイス本体の温度調節が極めて困難であった。
【0011】
押出機の運転中、ノズル孔に対して加熱機能しかなく、高温溶融樹脂の溶融状態が流動性を失うことはないが、押出機が運転停止された場合でも、このような合成樹脂原料の流動性が維持されることになる。従って、運転停止後の所要の間、ダイス内部に残留した合成樹脂原料がダイス本体1表面から流出し、流出したそのままの状態で表面に付着し固化する。
すなわち、特に、押出機停止時、ポリエチレン、ポリプロピレンともにMI2.16kg(Melt Index)がおよそ20g/10min以上の柔らかい樹脂の場合には、押出機内の樹脂の残圧によってダイス表面に樹脂が継続して流れ出てきてしまい、これを防ぐことができなかった。このため押出機再運転時には、ダイス表面で酸化し付着した樹脂を清掃することが必要で、また、ダイスからの樹脂垂れによってダイス上部の残存樹脂が吐き出され、内部が樹脂の飢餓状態となってしまうため、押出機内部への酸素混入による樹脂の酸化劣化、押出機起動時のダイスからのペレット冷却水浸入などの問題があり、これらの対策のため再運転前に再度樹脂を上流からダイスへ詰める必要があった。また、運転中のダイスの温度調節についても加熱流体供給装置には、一つの加熱用熱媒体しかないために、製造する樹脂の特性に合わせたダイスの加熱調節が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による樹脂ペレット製造用ダイスは、押出機のダイス本体の裏面から表面へ貫通して形成され溶融樹脂を供給するための多数のノズル孔と、前記ダイス本体に設けられ前記ノズル孔の外周側に位置する加熱ジャケットと、前記ノズル孔の前記外周側で前記加熱ジャケットと前記表面との間に設けられた追加ジャケットと、を備え、前記追加ジャケットは、温度調整装置を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換えできる構成であり、また、 前記温度調整装置は、前記押出機運転時には、前記溶融樹脂の粘度に応じて前記追加ジャケットに熱媒体の供給のオン/オフを行い、前記押出機停止時には、前記溶融樹脂の溶融温度以下の熱媒体を前記追加ジャケットに供給して前記ノズル孔内の溶融樹脂を固化させる構成であり、また、本発明による樹脂ペレット製造用ダイスの温度調整方法は、押出機のダイス本体の裏面から表面へ貫通して形成され溶融樹脂を供給するための多数のノズル孔と、前記ダイス本体に設けられ前記ノズル孔の外周側に位置する加熱ジャケットと、前記ノズル孔の前記外周側で前記加熱ジャケットと前記表面との間に設けられた追加ジャケットと、を用い、前記追加ジャケットは、温度調整装置を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換えできる方法であり、また、前記温度調整装置は、前記押出機運転時には、前記溶融樹脂の粘度に応じて前記追加ジャケットに熱媒体の供給のオン/オフを行い、前記押出機停止時には、前記溶融樹脂の溶融温度以下の熱媒体を前記追加ジャケットに供給して前記ノズル孔内の溶融樹脂を固化させる方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による樹脂ペレット製造用ダイス及びその温度調整方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、押出機のダイス本体の裏面から表面へ貫通して形成され溶融樹脂を供給するための多数のノズル孔と、前記ダイス本体に設けられ前記ノズル孔の外周側に位置する加熱ジャケットと、前記ノズル孔の前記外周側で前記加熱ジャケットと前記表面との間に設けられた追加ジャケットと、を備え、前記追加ジャケットは、温度調整装置を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換えできると共に、前記温度調整装置は、前記押出機運転時には、前記溶融樹脂の粘度に応じて前記追加ジャケットに熱媒体の供給のオン/オフを行い、前記押出機停止時には、前記溶融樹脂の溶融温度以下の熱媒体を前記追加ジャケットに供給して前記ノズル孔内の溶融樹脂を固化させることができるため、押出機運転時には、樹脂の粘度に応じて、ダイス本体のノズル部の温度調節を行い、目詰まりし易い樹脂の時には追加ジャケットに熱媒体を流し加熱を行いダイス本体温度を高くする。そうでない場合は断熱運転を行い、特に追加ジャケット内を空気層にすると従来の加熱ジャケットとダイス表面との間に断熱効果を持たせた運転が可能となる。
押出機停止時は、追加ジャケットに樹脂の溶融温度以下の熱媒体を流し、ダイス本体のノズル孔を冷却することで、ノズル孔の樹脂を固化させ、ダイス本体のノズルをプラグすることによりダイス本体からの樹脂垂れを防止することができる。また、押出機再運転時には追加ジャケットの媒体を加熱することでダイスノズルの樹脂は再び溶融し、押出機の運転が可能となる。
また、押出機運転時には、生産する樹脂の粘度に応じて、加熱と断熱を使い分けることができるため、運転の幅が広がり、一つのダイス本体で様々な特性の樹脂に対して幅広く対応可能となる。押出機停止時には、ダイスのノズルを冷却することで、ノズル部の樹脂を固化させダイスからの樹脂垂れを防止することができるため、押出機内への酸素混入による樹脂酸化劣化を抑制し、押出機再運転時に必要であった清掃作業や樹脂詰め作業を軽減することができ、押出機立上げにおける作業・人員・時間を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、追加ジャケットを加熱、断熱、冷却の何れかとして、造粒運転を円滑化するようにした樹脂ペレット製造用ダイス及びその温度調整方法を提供することを目的とする。
以下、図面と共に本発明による樹脂ペレット製造用ダイス及びその温度調整方法の好適な実施の形態について説明する。なお、従来と同一又は同等部分については同一符号を用いて説明する。
図1において、符号1で示されるものは、押出機2の先端に設けられたダイス本体であり、このダイス本体1は多数のノズル孔3が厚み方向すなわち裏面4から表面5へ形成された厚板円盤状であり、図1は、1個のノズル孔3およびその周辺部の概要を部分的に示している。ダイス本体1の裏面4は押出機2のシリンダ孔6に面しており、他方の表面5は図示しない造粒装置7に面している。尚、前記ダイス本体1の裏面4は押出機2に接続され、前記表面5は造粒装置7に接続されている。
【0015】
前記ノズル孔3は、前記ダイス本体1の厚み方向すなわち裏面4と表面5との間を貫通して形成されている。このノズル孔3は、裏面4側の大径円筒孔部3a、表面5側の小径円筒孔部3b、大径円筒孔部3aと小径円筒孔部3bとを連結する中間部の円錐筒孔部3cの3部分により構成されている。前記小径円筒孔部3bの外周側8には加熱ジャケット9、この加熱ジャケット9と表面5との間の外周側8に温度調節をするための追加ジャケット20がそれぞれ形成されている。
【0016】
前記加熱ジャケット9には、図示しない加熱流体供給装置11が連結され、前記追加ジャケット20には、温度調整装置21が連結されている。この温度調整装置21は加熱流体供給部21a、真空吸引部21bおよび冷却流体供給部21cにより構成され、それらの何れかを第1〜第3切換弁22,23,24により選択的に接続できるように構成されている。
【0017】
以上のように構成されたダイス本体1において、定常運転中の押出機では、加熱流体供給装置11から供給される加熱流体が加熱ジャケット9を循環流動し、追加ジャケット20が温度調整装置21に連結されている。前記ノズル孔3の周囲が所定の温度に加熱され、その内部を流動して吐出される溶融樹脂の流動性が維持されている。この状態では、紐状の溶融樹脂が連続的に吐出されてノズル孔3の表面5から造粒装置7へ送られてペレット化される。
【0018】
本発明においては、前記追加ジャケット20が設けられているため、この追加ジャケット20は、温度調整装置21を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換えできる。すなわち、押出機運転時には、樹脂の粘度に応じて、ダイス本体1のノズル孔3の温度調節を行う。例えば、高粘度の目詰まりし易い樹脂の時には第1切換弁22のみを開弁(オン)して加熱流体供給部21aの熱媒体を追加ジャケット20に流して加熱を行いダイス本体1の温度を高くする。そうでない例えば、低粘度の樹脂の場合は第1切換弁22を閉弁(オフ)とし、第2切換弁23を開弁して追加ジャケット20内の熱媒体を除去して空気のみとして断熱運転を行う。特に追加ジャケット20内を空気層にすると従来の加熱ジャケット9とダイス本体1の表面5との間に断熱効果を持たせた運転が可能となる。
【0019】
また、押出機停止時は、第3切換弁24のみを開弁(オン)し、追加ジャケット20に樹脂の溶融温度以下の熱媒体、例えば冷却された液体を流し、ダイス本体1のノズル孔3を冷却することで、ノズル孔3の樹脂を固化させ、ダイス本体1のノズル孔3をプラグすることによりダイス本体1からの樹脂垂れを防止することができる。さらに、押出機再運転時には第1切換弁22を開弁(オン)して追加ジャケット20に加熱流体供給部21aの熱媒体を供給することでノズル部3の樹脂は再び溶融し、押出機の運転が可能となる。
【0020】
尚、前述の本発明によるダイス本体の構成と動作をまとめると、次の通りである。
すなわち、押出機2のダイス本体1の裏面4から表面5へ貫通して形成され溶融樹脂を供給するための多数のノズル孔3と、前記ダイス本体1に設けられ前記ノズル孔3の外周側8に位置する加熱ジャケット9と、前記ノズル孔3の前記外周側8で前記加熱ジャケット9と前記表面5との間に設けられた追加ジャケット20と、を備え、前記追加ジャケット20は、温度調整装置21を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換えできるように構成され、さらに、前記温度調整装置21は、前記押出機運転時には、前記溶融樹脂の粘度に応じて前記追加ジャケット20に熱媒体の供給のオン/オフを行い、前記押出機停止時には、前記溶融樹脂の溶融温度以下の熱媒体を前記追加ジャケット20に供給して前記ノズル孔3内の溶融樹脂を固化させることができるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による樹脂ペレット製造用ダイスのノズル孔部分を拡大してその概要を示す厚み方向部分断面図である。
【図2】従来の樹脂ペレット製造用ダイスのノズル孔部分を拡大してその概要を示す厚み方向部分断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ダイス本体
2 押出機
3 ノズル孔
4 裏面
5 表面
6 シリンダ孔
7 造粒装置
8 外周側
9 加熱ジャケット
11 加熱流体供給装置
20 追加ジャケット
21 温度調整装置
21a 加熱流体供給部
21b 真空吸引部
21c 冷却流体供給部
22,23,24 第1〜第3切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機(2)のダイス本体(1)の裏面(4)から表面(5)へ貫通して形成され溶融樹脂を供給するための多数のノズル孔(3)と、前記ダイス本体(1)に設けられ前記ノズル孔(3)の外周側(8)に位置する加熱ジャケット(9)と、前記ノズル孔(3)の前記外周側(8)で前記加熱ジャケット(9)と前記表面(5)との間に設けられた追加ジャケット(20)と、を備え、
前記追加ジャケット(20)は、温度調整装置(21)を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換えできることを特徴とする樹脂ペレット製造用ダイス。
【請求項2】
前記温度調整装置(21)は、前記押出機(2)運転時には、前記溶融樹脂の粘度に応じて前記追加ジャケット(20)に熱媒体の供給のオン/オフを行い、前記押出機(2)停止時には、前記溶融樹脂の溶融温度以下の熱媒体を前記追加ジャケット(20)に供給して前記ノズル孔(3)内の溶融樹脂を固化させることを特徴とする請求項1記載の樹脂ペレット製造用ダイス。
【請求項3】
押出機(2)のダイス本体(1)の裏面(4)から表面(5)へ貫通して形成され溶融樹脂を供給するための多数のノズル孔(3)と、前記ダイス本体(1)に設けられ前記ノズル孔(3)の外周側(8)に位置する加熱ジャケット(9)と、前記ノズル孔(3)の前記外周側(8)で前記加熱ジャケット(9)と前記表面(5)との間に設けられた追加ジャケット(20)と、を用い、
前記追加ジャケット(20)は、温度調整装置(21)を介して加熱状態、断熱状態及び冷却状態の何れかに切換えできることを特徴とする樹脂ペレット製造用ダイスの温度調整方法。
【請求項4】
前記温度調整装置(21)は、前記押出機(2)運転時には、前記溶融樹脂の粘度に応じて前記追加ジャケット(20)に熱媒体の供給のオン/オフを行い、前記押出機(2)停止時には、前記溶融樹脂の溶融温度以下の熱媒体を前記追加ジャケット(20)に供給して前記ノズル孔(3)内の溶融樹脂を固化させることを特徴とする請求項3記載の樹脂ペレット製造用ダイスの温度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−292043(P2009−292043A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148015(P2008−148015)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】