説明

樹脂封止型コンデンサ

【課題】充放電電流が流れるときに最大温度となるコンデンサ間の領域の温度を下げることができ、信頼性の高い樹脂封止型コンデンサを提供する。
【解決手段】外部端子16〜19に接続する複数のフィルムコンデンサをケース14内に収納して封止樹脂15を充填し、複数のコンデンサには外部端子16〜19を介して電気的に並列接続可能に設けられた2つの第1のコンデンサ11、12と、第1のコンデンサ11、12より発熱が小さくなるように第1のコンデンサ11、12よりインピーダンスが10倍以上の第2のコンデンサ13とを設けて、第2のコンデンサ13を第1のコンデンサ11、12間に並置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両において、電気エネルギーによる駆動力は、高電圧の電池から供給される直流電力をインバータによって3相交流電力に変換し、これにより3相交流モータを回転させることにより得ている。
【0003】
このようなインバータに用いる平滑用コンデンサとしてフィルムコンデンサ、電解コンデンサが知られている。特にフィルムコンデンサは損失が小さく耐リップル性に優れ、また誘電体のフィルムの耐圧が高いため450V以上の高い電圧のインバータ回路の使用に適している。
【0004】
このフィルムコンデンサを用いた従来の樹脂封止型コンデンサは図7、図8に示されるように2つの平滑用コンデンサ31を隣接させて並置し、さらに一方の平滑用コンデンサ31の側面にノイズ吸収用コンデンサ33を配置してケース34内に収納して封止樹脂35を充填したものである。また図9に示すように平滑用コンデンサ31は夫々1対の外部端子36〜39に接続し、ノイズ吸収コンデンサ33は隣接する平滑用コンデンサ31に接続する外部端子38、39に接続している。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−12769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の樹脂封止型コンデンサでは、スイッチングによって頻繁に充放電の大電流がコンデンサに流れると、高温環境に置かれた樹脂封止型コンデンサが過度に温度上昇してコンデンサの許容温度を超えてしまい絶縁抵抗が劣化し信頼性が十分でないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決し、信頼性が優れた樹脂封止型コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、外部端子に接続する複数のコンデンサをケース内に収納した樹脂封止型コンデンサにおいて、前記複数のコンデンサは前記外部端子を介して電気的に並列接続可能に設けられた2つの第1のコンデンサと、第1のコンデンサよりインピーダンスが大きい第2のコンデンサとを有し、第2のコンデンサを第1のコンデンサ間に並置した樹脂封止型コンデンサである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、第1のコンデンサ間に第1のコンデンサよりインピーダンスが大きい第2のコンデンサを並置することにより、第1のコンデンサを隣接した場合に比較し各コンデンサ間の領域の発熱が抑制されるため、最大温度となるコンデンサ間の領域の温度を下げることができ樹脂封止型コンデンサの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における樹脂封止型コンデンサの平面透視図
【図2】図1の樹脂封止型コンデンサのA−A断面図
【図3】本発明の実施の形態1における樹脂封止型コンデンサの斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における樹脂封止型コンデンサの回路図
【図5】本発明の実施の形態2における樹脂封止型コンデンサの平面透視図
【図6】図5の樹脂封止型コンデンサのA−A断面図
【図7】従来の樹脂封止型コンデンサの平面透視図
【図8】従来の樹脂封止型コンデンサの正面透視図
【図9】従来の樹脂封止型コンデンサの回路図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の樹脂封止型コンデンサについて説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態1における樹脂封止型コンデンサの平面透視図で、図2は図1におけるA−A断面図、図3は実施の形態1の樹脂封止型コンデンサの斜視図、図4は同回路図である。
【0014】
図1に示すように樹脂封止型コンデンサ10aは、複数のコンデンサが絶縁性樹脂のケース14内に収納され、図2、図3に示すように封止樹脂15により複数のコンデンサを被覆するように充填されている。
【0015】
樹脂封止型コンデンサ10aには少なくとも1つの1対の外部端子が設けられ、1対の外部端子はP極とN極とからなりコンデンサと電気的に接続される。実施の形態1では1対の外部端子16、17と1対の外部端子18、19がケース14の開口部14aから突出して設けられている。
【0016】
複数のコンデンサは外部端子16〜19を介して電気的に並列接続可能に設けられた第1のコンデンサ11、12と、第1のコンデンサ11、12よりインピーダンスが大きい第2のコンデンサ13と、を有し、さらに第2のコンデンサ13は第1のコンデンサ11、12間に並置され第1のコンデンサ11、12に隣接して配置されている。2つの第1のコンデンサ11、12のインピーダンスは互いに同じ方が量産上好ましいが、異なっていてもよい。ここでインピーダンスは周波数10kHzの値である。
【0017】
この第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13は金属化フィルムコンデンサであり、金属化フィルムコンデンサはポリプロピレン等からなる誘電体フィルムの少なくとも片面に金属蒸着膜よりなる蒸着電極が設けられた金属化フィルムを巻回して、この巻回した両端面に外部電極となるメタリコン部を形成したものである。
【0018】
コンデンサを隣接して配置した樹脂封止型コンデンサにおいて最大温度となる領域は、熱がこもり易い隣接したコンデンサ間の領域であり、実施の形態1では図2に示すように第1のコンデンサ11、12の外周側面と第2のコンデンサ13の外周側面間の領域26であり、従来例では図8に示すように第1のコンデンサに相当する平滑用コンデンサ31間の領域40である。
【0019】
外部端子16〜19を介して第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13を電気的に並列接続させて第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13とを充放電させるとき、第2のコンデンサ13に流れる充放電電流が第1のコンデンサ11、12に比較し小さいため、第2のコンデンサ13の方が第1のコンデンサ11、12に比較し発熱が小さくなる。
【0020】
そのため第1のコンデンサ11、12間に第2のコンデンサ13を並置することにより、第1のコンデンサ11、12同士が隣接した場合に比較し、コンデンサ間の領域の温度の上昇を抑制することができる。またコンデンサ間の領域の温度が過度に上昇することを抑制するために、第2のコンデンサ13のインピーダンスを第1のコンデンサ11、12の10倍以上とすることが好ましい。
【0021】
また樹脂封止型コンデンサ10aをモータ駆動用のインバータに用いる場合、充放電電流は、主要な周波数領域が10kHz付近にある疑似正弦波となる。このとき第1のコンデンサ11、12を平滑用コンデンサとし第2のコンデンサ13をノイズ吸収等のXコンデンサ又はYコンデンサとして用いることにより、樹脂封止型コンデンサ10aのインピーダンス特性を向上させつつコンデンサ間の領域の温度を下げることができる。
【0022】
樹脂封止型コンデンサ10aのノイズ吸収の性能向上のために第2のコンデンサ13のインピーダンスは第1のコンデンサ11、12の50倍〜2500倍とすることが好ましい。
【0023】
第2のコンデンサは第1のコンデンサ間に1つ以上設けることができ、2つ以上設ける場合は外部端子を介して電気的に並列接続するとき第2のコンデンサ同士は電気的に直列接続または並列接続とすることができる。
【0024】
また第2のコンデンサの発熱を小さくするために等価直列抵抗を小さくすることが好ましく、第1のコンデンサ11、12より蒸着電極の厚みを厚くしたりコンデンサ素子メタリコン間距離を短くしたりすることにより等価直列抵抗を小さくすることができる。
【0025】
実施の形態1では第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13は扁平円筒形であり、図2に示すように第1のコンデンサ11、12は断面扁平の長径方向がケース14の底面14bに平行となるように横置され、第2のコンデンサ13は断面扁平の長径方向がケース14の底面14bに直交するように配設されている。
【0026】
このように第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13の断面扁平の長径が互いに直交するように配置することにより樹脂封止型コンデンサ10aのコンデンサ間の領域の温度を下げつつ小形化することができる。なお図2は第1のコンデンサを2つ設けたものであるが、第1のコンデンサを3つ以上設けて第1のコンデンサ間に第2のコンデンサを並置してもよい。
【0027】
第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13とは間隔を設けて近接させている。この間隔の距離は0.1mm〜7mmに設けることが好ましく樹脂封止型コンデンサ10aを小形化させつつ過度の温度上昇を抑制することができる。更にこの間隔の空隙には封止樹脂が充填されることが好ましく放熱性を向上することができる。なお第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13とを接触させて並置してもよい。
【0028】
図4は実施の形態1における樹脂封止型コンデンサの回路図であり、第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13を外部端子16〜19を介して並列接続可能に設けた回路図の例を示している。
【0029】
図4に示すように、2つの第1のコンデンサ11、12の夫々のP極、N極は異なる外部端子16〜19に接続し、第2のコンデンサ13のP極とN極は一方の第1のコンデンサ12のP極と他方の第1のコンデンサ11のN極に夫々電気的に接続している。外部端子16〜19のP極同士、N極同士を夫々互いに電気的に接続すると、第1のコンデンサ11、12と第2のコンデンサ13は並列接続される。
【0030】
また図4に示す回路構成とすることにより、樹脂封止後においても第1のコンデンサと第2のコンデンサの特性を個々に検査することが出来る。
【0031】
図1に示すように外部端子16〜19はケース14の一方辺側に設けられ、第1のコンデンサ11、12のバスバー20、22は第1のコンデンサ11、12の端面に沿って導出され夫々外部端子16、18と接続し、他方のバスバー21、23は第1のコンデンサ11、12の上面に沿って一方のメタリコン部から外部端子17、19に向かって幅が小さくなるように略三角形状に設けられ夫々外部端子17、19に接続している。
【0032】
第2のコンデンサ13のバスバー25は一方の第1のコンデンサ11の側面に沿って略三角形状のバスバー21の底面側に接合し、第2のコンデンサ13の他方のバスバー24は第2のコンデンサ13の端面に沿って他方の第1のコンデンサ12のバスバー22に接合している。
【0033】
封止樹脂15は、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂であり耐熱性、耐湿性、熱伝導性に優れることがより好ましい。
【0034】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の樹脂封止型コンデンサについて説明する。
【0035】
図5は本発明の実施の形態2における樹脂封止型コンデンサの平面透視図で、図6は図5におけるA−A断面図であり、実施の形態1と同一部分には同一符号を付与しその説明を省略し、異なる構成のみ図を参照しながら説明する。
【0036】
樹脂封止型コンデンサ10bは図5、図6に示すように板厚が所定厚さのケース板をケース27の内側に曲げ込むように形成された凹部28をケース27の底面27b側に設けたものである。凹部28は第1のコンデンサ11、12間に挿入されて凹部28におけるケース27内周側の側面には第1のコンデンサ11、12が近接して設けられ、凹部28におけるケース27外周側は開口し空隙を設けている。
【0037】
凹部28は第2のコンデンサ13と並置されるように第2のコンデンサ13の扁平円筒形の軸方向に配置され、凹部28の頂点28aは、ケース27の開口部27a側における第1のコンデンサ11、12の上面間を結ぶ直線に重なるか又は超えるように設けられている。
【0038】
このように凹部28を設けることより、コンデンサ間の高温領域の放熱性を高めることができると共に、封止樹脂量を減らすことができ軽量化することができる。
【0039】
図5では凹部28をケース27の一辺側に設けたものであるが、凹部を対向する両辺側に2つ設けて、この2つの凹部間に第2のコンデンサ13を並置してもよく、放熱性を更に高めることができる。また凹部28におけるケース27の内周側と夫々第1のコンデンサ11、12及び第2のコンデンサ13との間には隙間を設け、この隙間には封止樹脂15が充填されることが好ましく放熱性を向上することができる。
【0040】
(実施例)
実施例1、実施例2、比較例の樹脂封止型コンデンサについて説明する。
【0041】
実施例1の樹脂封止型コンデンサは図1に示す実施の形態1の構造であり、実施例2は図5に示す実施の形態2の構造であり、比較例は図7に示す従来の構造のものである。
【0042】
実施例1では第1のコンデンサと第2のコンデンサの誘電体フィルムとして同じポリプロピレンを用い、第2のコンデンサは10kHzのインピーダンスが第1のコンデンサの300倍、等価直列抵抗を第1のコンデンサの2〜5倍として、コンデンサの発熱を調整した。また第1のコンデンサと第2のコンデンサの許容温度は105℃である。
【0043】
実施例2の樹脂封止型コンデンサはケースの底面側に凹部を設けた以外は実施例1と同様とした。
【0044】
比較例については、平滑用コンデンサとノイズ吸収用コンデンサは夫々実施例1の第1のコンデンサと第2のコンデンサを用い、2つの第1のコンデンサ、第2のコンデンサが順次並置するように設けた。
【0045】
実施例1、2における第1のコンデンサと第2のコンデンサ間の隙間は0.5mm〜1mmとし第1のコンデンサ同士間の距離は20mm〜22mmとした。比較例における第1のコンデンサ同士間の距離は3mm〜4mmとなるように配置した。
【0046】
次に、実施例1、実施例2、比較例の第1のコンデンサと第2のコンデンサとを外部端子を介して並列接続した。次に樹脂封止型コンデンサの周囲の環境温度を70℃〜90℃とし、最大電流値が60Aとなるように10kHzのリプル電流を印加して樹脂封止型コンデンサの温度の最大値を測定した。
【0047】
その結果、環境温度を基準とした樹脂封止型コンデンサの温度の最大値との差を過熱温度ΔTとすると、実施例1、実施例2は第1のコンデンサと第2のコンデンサ間の領域で最大温度となりΔTはそれぞれ4.7℃、4.2℃であった。一方、比較例は第1のコンデンサ間の領域で最大温度となりΔTは7℃であった。
【0048】
以上のように、実施例1、実施例2のように発熱の大きい第1のコンデンサ間に温度の小さい第2のコンデンサを並置することにより比較例に比べ最大温度となる領域の温度を下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の樹脂封止型コンデンサは最大温度となる領域の温度を下げ信頼性を高める効果を有し、複数のコンデンサを有するコンデンサユニットに有用である。
【符号の説明】
【0050】
10a、10b 樹脂封止型コンデンサ
11、12 第1のコンデンサ
13 第2のコンデンサ
14、27 ケース
14a、27a 開口部
14b、27b 底面
15 封止樹脂
16、17、18、19 外部端子
20、21、22、23、24、25 バスバー
26 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端子に接続する複数のコンデンサをケース内に収納した樹脂封止型コンデンサにおいて、前記複数のコンデンサは前記外部端子を介して電気的に並列接続可能に設けられた2つの第1のコンデンサと、第1のコンデンサよりインピーダンスが大きい第2のコンデンサとを有し、第2のコンデンサを第1のコンデンサ間に並置した樹脂封止型コンデンサ。
【請求項2】
第2のコンデンサのインピーダンスは、第1のコンデンサの10倍以上である請求項1に記載の樹脂封止型コンデンサ。
【請求項3】
第1、第2のコンデンサは扁平円筒形であり、第1のコンデンサと第2のコンデンサの断面扁平の長径が互いに直交するように設けた請求項1に記載の樹脂封止型コンデンサ。
【請求項4】
前記ケースに凹部が設けられ、前記凹部は第1のコンデンサ間に挿入され第2のコンデンサに並置された請求項1に記載の樹脂封止型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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