説明

樹脂射出成形用金型

【課題】金型を十分に冷却することにより、射出成形後の冷却時のひけ巣の発生を防止すること。
【解決手段】樹脂部品の外周側に対応し凹状に形成された外側金型20と、内周側に対応し、凸状に形成された内側金型30と、内側金型30のゲートG近傍を冷却するエアブローピン40とを具備し、エアブローピン40は、内側金型30の中心部を貫通配置されたピン本体41〜43と、ピン本体41の先端に設けられ樹脂部品の底面に対向配置された先端部41aと、ピン本体42の内部に形成された通風流路42aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂等の樹脂を射出成形により製品を形成するための樹脂射出成形用金型に関し、特にひけ巣の発生を防止できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
金型によって成形用キャビティを作り、キャビティ内に溶融樹脂を供給して成形された樹脂部品を得る射出成形用金型では、金型温度100〜150℃以上の高温で使用される(例えば、特許文献1参照)。また、成形された樹脂部品を冷却したり、金型温度を適正に保つために金型内部に冷却用の流体を通流させることが知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0003】
図4は有底筒状の樹脂品を成形するための射出成形用金型100の一例を示す断面図、図5は射出成形用金型100の内部に設けられたエアブローピン(冷却部材)130の底面図である。
【0004】
射出成形用金型100は、有底筒状の樹脂部品の外周側に対応し凹状に形成された外側金型110と、樹脂部品の内周側に対応し、凸状に形成された内側金型120とを備えている。内側金型120の中心部には、エアブローピン130が貫通配置されており、エアブローピン130の底部131に冷却風が供給され、エアブローピン130及び内側金型120を冷却する原理となっていた。なお、図4中132はエアブローピン130の先端側を示している。
【特許文献1】特開2005−335170号公報
【特許文献2】特開2005−74748号公報
【特許文献3】特開2005−205607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した射出成形用金型では、次のような問題があった。すなわち、エアブローピン130の底部131を冷却しても、先端側132が十分に冷却されないことがあった。このため、スプルーやゲートGの近傍では、溶融樹脂により部分的(例えば有底筒状の樹脂部品の底面付近)に金型表面が高温になり、冷却される際にひけ巣となりやすいという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、金型を部分的に十分に冷却することにより、射出成形後の冷却時のひけ巣の発生を防止できる射出成形用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の射出成形用金型は次のように構成されている。
【0008】
有底筒状の樹脂部品を成形するための射出成形用金型において、上記樹脂部品の外周側に対応し凹状に形成された外側金型と、内周側に対応し、凸状に形成された内側金型と、内側金型を冷却する冷却部材とを具備し、上記冷却部材は、上記内側金型の中心部を貫通配置された部材本体と、この部材本体の先端に設けられ上記樹脂部品の底面に対向配置された先端部と、上記部材本体の内部に形成された通風流路とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金型を部分的に十分に冷却することにより、射出成形後の冷却時のひけ巣の発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の一実施の形態に係る射出成形用金型10を示す縦断面図、図2は射出成形用金型10の内部に設けられたエアブローピン(冷却部材)40を別方向から示す側面図、図3は同エアブローピン40を示す上面図である。
【0011】
射出成形用金型10は、有底筒状の樹脂部品の外周側に対応し凹状に形成された外側金型20と、樹脂部品の内周側に対応し、凸状に形成された内側金型30とを備えている。内側金型30の中心部には内径の異なる貫通孔31〜33が設けられ、エアブローピン40が貫通配置されている。なお、図1中Cは溶融樹脂が導入されるキャビティを示している。
【0012】
エアブローピン40は、図1中上側から下側に向けて外径が異なる3つの円柱状のピン本体(部材本体)41〜43を備えている。ピン本体41〜43は熱伝導率の高い銅材等で形成されている。ピン本体42の上部と貫通孔32の上部とは例えば2〜3mm程度の隙間が設けられている。
【0013】
ピン本体41は、銅材に比べさらに熱伝導率の高いベリリウム銅で形成され、ゲートG近傍で樹脂部品の内周側に接する先端部41aが局所的に冷却される。また、ピン本体42には、軸方向及び周方向に沿って通風流路42aが形成されている。
【0014】
ピン本体43には、外部から冷却風を取り込むための切欠部43a及び外部へ冷却風を排出するための切欠部43bがそれぞれ設けられており、貫通孔33との隙間を介して通風流路42aと連通している。
【0015】
このように形成された射出成形用金型10によれば、射出成形により例えばフッ素樹脂等の溶融樹脂がキャビティC内に導入され充填された後、エアブローピン40が冷却風によって冷却される。このとき、冷却風が通風流路42aを通ってエアブローピン40の上方まで冷却するため、内側金型30のゲートG近傍を十分に冷却することができ、ひけ巣の発生を防止することができる。
【0016】
また、外部から冷却風を取り込むための切欠部43a及び外部へ冷却風を排出するための切欠部43bを独立して設けているため、昇温した冷却風が円滑に外部に放出され、内側金型30の冷却を促進することができる。さらに、ピン本体41の先端部41aは極めて熱伝導率が高いベリリウム銅が用いられているため、特にひけ巣が発生しやすい樹脂部材の底部に相当する部分の溶融樹脂を効果的に冷却することができ、ひけ巣の発生を防止することができる。
【0017】
上述したように、射出成形用金型10によれば、エアブローピン40によって内側金型30のゲートG近傍を十分に冷却することができ、射出成形後の冷却時のひけ巣の発生を防止することが可能となる。
【0018】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る射出成形用金型を示す縦断面図。
【図2】同射出成形用金型の内部に設けられたエアブローピンを別方向から示す側面図。
【図3】同エアブローピンを示す上面図。
【図4】射出成形用金型の一例を示す断面図。
【図5】射出成形用金型の内部に設けられたエアブローピンを示す底面図。
【符号の説明】
【0020】
10…射出成形用金型、20…外側金型、30…内側金型、40…エアブローピン、41〜43…ピン本体、41a…先端部、42a…通風流路、43a…切欠部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の樹脂部品を成形するための射出成形用金型において、
上記樹脂部品の外周側に対応し凹状に形成された外側金型と、
内周側に対応し、凸状に形成された内側金型と、
内側金型を冷却する冷却部材とを具備し、
上記冷却部材は、上記内側金型の中心部を貫通配置された部材本体と、この部材本体の先端に設けられ上記樹脂部品の底面に対向配置された先端部と、上記部材本体の内部に形成された通風流路とを備えていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
上記冷却機構の先端部は、上記部材本体に比べて熱伝導率が高い材質で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
上記材質は、ベリリウム銅であることを特徴とする請求項2に記載の射出成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−196640(P2007−196640A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21191(P2006−21191)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】