説明

樹脂微粒子の水系分散体とその製造方法、及び樹脂微粒子の水系分散体を用いたトナーとその製造方法

【課題】大気圧下で、有機溶剤や特殊装置を使用せずに、従来の方法に比べ、より少量の界面活性剤で、生産性が良好な樹脂微粒子の水系分散体を製造する方法、該樹脂微粒子の水系分散体の製造方法によって得られる樹脂微粒子の水系分散体、該樹脂微粒子の水系分散体を使用して製造される電子写真用トナー、及び該トナーの製造方法。
【解決手段】100.0質量部の樹脂、界面活性剤、5.0質量部以上10.0質量部以下のアミンを少なくとも含有し、水の含有量が5.0質量部以下である混合物を、前記樹脂のガラス転移点の10℃以上、且つ100℃未満の温度範囲で攪拌することで、加熱混合物を得る第一工程と、前記加熱混合物を、前記樹脂のガラス転移点の10℃以上、且つ100℃未満の温度範囲で攪拌しながら、水系媒体を添加することで、樹脂微粒子の水系分散体を得る第二工程と、を少なくとも有することを特徴とする、樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナー及びインキのような印刷材料や塗料、接着剤、粘着剤のような分野に用いられる樹脂微粒子の水系分散体の製造方法、該製造方法によって得られる樹脂微粒子の水系分散体、該樹脂微粒子の水系分散体を用いた電子写真用トナーの製造方法、及び該電子写真用トナーの製造方法によって得られる電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のデジタル化技術の急速な普及により、一般家庭、オフィス、パブリッシング領域のユーザーにおけるプリントやコピーのようなアウトプットにおける高画質化の要求が日々高まっている。その高画質化の要求に答えるため、例えば、電子写真に用いるトナーにおいては、その粒子径を小さくし、粒度分布をシャープ化して解像度を向上させることが技術的に重要なアプローチの一つとなっている。
【0003】
そのため、近年、トナーの製法としては、トナーの小粒径化や粒度分布のシャープ化が容易な、懸濁重合法、溶解懸濁法、及び乳化凝集法のようないわゆる化学製法が採用されるようになってきた。中でも、乳化凝集法は、トナーの粒径、粒度分布に加え、形状、及びトナー中の着色剤やワックスといった構成材料の分散性を意図的に制御することが可能であり、注目されている。
【0004】
一般に、上記乳化凝集法を用いて得られるトナーは、樹脂、顔料、及びワックスのようなトナー構成材料を別々に水系媒体中で粒子化し、得られたそれらの水系分散体を混合し、再合一させることにより作製される。乳化凝集法で使用される樹脂の水系分散体を作製する方法としては、従来、乳化重合法や転相乳化法が用いられてきた。乳化重合法は、モノマーを水または貧溶媒に分散し、O/W型エマルジョンを形成し、分散したモノマー群粒子をラジカル重合することによって、樹脂微粒子の水系分散体を生成させる方法である。このため、乳化重合法は、ラジカル重合によって重合可能なモノマー(例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、または、ビニル系モノマー)に対してのみ適用可能な樹脂微粒子の水系分散体の製造方法であった。従って、上記乳化重合法による樹脂微粒子の水系分散体は、そのモノマーの種類が制限されてしまうために、得られる樹脂の種類が限られていた。
【0005】
また、転相乳化法では、大量の有機溶剤を使用するため、環境負荷が大きくなる場合があり、好ましくない。そこで、近年、有機溶剤を使用せずに樹脂分散体を作製する製造方法の開発が盛んに行われている。
【0006】
例えば、高温で溶融した樹脂を高圧下で中和剤を含む水系媒体と混合し、せん断力を加えることにより、樹脂微粒子の水系分散体を製造する方法がある(例えば、特許文献1)。しかし、該方法は、高温高圧下、高速回転型連続式乳化分散機のような特殊な装置を使用して、樹脂分散を行う技術に関するものであるため、大気圧下、特殊な装置を使用しない簡易な製造方法が求められていた。
【0007】
有機溶剤、及び特殊な装置を使用せずに樹脂微粒子の水系分散体を作製する手法としては、樹脂を、塩基性水性媒体中において、前記樹脂の軟化点未満の温度に加熱し、樹脂の軟化状態を保ちつつ、更に、水性媒体を添加することにより、樹脂微粒子の水系分散体を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2)。その中でも、水系媒体中における樹脂微粒子の分散安定性の向上を目的として、塩基として、アミンを使用した樹脂微粒子の水系分散体の作製法が提案されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、該作製法では、多量の界面活性剤を添加しないと、分散が困難な場合があった。
【0008】
このような多量の界面活性剤を含有した樹脂微粒子の水系分散体を使用して、乳化凝集法により、トナーを作製する場合、トナー中に界面活性剤が残存しやすく、トナーの帯電性や保存安定性の悪化を招くといった問題が生じやすい。そこで、トナー中の界面活性剤を出来るだけ除去しようとすると、莫大な量の洗浄水が必要となり、環境負荷の観点からも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−256077号公報
【特許文献2】特開2007−106906号公報
【特許文献3】特開2007−264577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述のごとき、課題を解決し、大気圧下で、有機溶剤及び特殊な装置を使用することなく、従来の方法に比べ、より少量の界面活性剤の使用で、生産性が良好な樹脂微粒子の水系分散体を製造する方法、該樹脂微粒子の水系分散体の製造方法によって得られる樹脂微粒子の水系分散体、該樹脂微粒子の水系分散体の製造方法を含む電子写真用トナーの製造方法、及び該樹脂微粒子の水系分散体を使用して製造される電子写真用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、有機溶剤及び特殊な装置を使用せずに樹脂微粒子の水系分散体を製造する手法において、樹脂を、アミンを含有する水性媒体中で、前記樹脂の軟化点未満の温度で加熱する際、系内の水の含有量を特定の範囲とし、且つ、アミンの添加量を特定の範囲とすることで、従来の方法に比べ、分散に必要な界面活性剤量を低減できることを見出して、本発明に至った。すなわち、本発明の構成は、以下の通りである。
【0012】
本発明は、100.0質量部の樹脂、界面活性剤、5.0質量部以上10.0質量部以下のアミンを少なくとも含有し、水の含有量が5.0質量部以下である混合物を、前記樹脂のガラス転移点をTgとした時、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲で攪拌することで、加熱混合物を得る第一工程と、前記加熱混合物を、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲で攪拌しながら、水系媒体を添加することで、樹脂微粒子の水系分散体を得る第二工程と、を少なくとも有することを特徴とする、樹脂微粒子の水系分散体の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、上記の製造方法で得られる樹脂微粒子の水系分散体、該水系分散体を用いるトナーの製造方法及び該製造方法によって得られるトナーに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大気圧下で、有機溶剤及び特殊な装置を使用することなく、従来の方法に比べ、より少量の界面活性剤の使用で、樹脂微粒子の水系分散体を生産性良く製造する方法、該樹脂微粒子の水系分散体の製造方法によって得られる樹脂微粒子の水系分散体、該樹脂微粒子の水系分散体の製造方法を含む電子写真用トナーの製造方法、及び該樹脂微粒子の水系分散体を使用して製造される電子写真用トナーを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0016】
本発明における樹脂微粒子の水系分散体の製造方法は、100.0質量部の樹脂、界面活性剤、5.0質量部以上10.0質量部以下のアミンを少なくとも含有し、水の含有量が5.0質量部以下である混合物を、前記樹脂のガラス転移点をTgとした時、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲で攪拌することで、加熱混合物を得る第一工程と、前記加熱混合物を、前記樹脂のガラス転移点をTgとした時、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲で攪拌しながら、水系媒体を添加することで、樹脂微粒子の水系分散体を得る第二工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0017】
<本発明に用いられる樹脂>
本発明で使用可能な樹脂としては、スチレン−アクリル系共重合樹脂、スチレン−メタクリル系共重合樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタンのような公知の樹脂が例示できる。中でも、分散性の観点と樹脂設計の自由度の観点とからポリエステル、スチレン−アクリル系共重合樹脂が好ましいが、本発明の樹脂は前記樹脂に限定されるものではなく、単独でも2種以上を組み合わせて使用しても良い。また樹脂は、結晶性であっても非晶性であってもよい。
【0018】
本発明においては、得られるトナーの帯電性を考慮して酸価を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
本発明における酸価を有する樹脂とは、分子中に、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基のような置換基を有する樹脂であり、分散性の観点から、スルホン酸基、カルボキシル基を有する高分子化合物である。
【0020】
本発明における樹脂の酸価の範囲としては、2.0mg・KOH/g以上35.0mg・KOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは2.5mg・KOH/g以上20.0mg・KOH/g以下、更に好ましくは、3.0mg・KOH/g以上13.0mg・KOH/g以下である。酸価が2.0mg・KOH/g未満であると、中和による樹脂の親水化が不十分で分散が困難となる場合がある。分散できたとしても平均粒径が大きくなり易く、粒径分布も不均一となる場合がある。このような、不均一な粒径分布を有する樹脂微粒子の水系分散体を使用して、トナーを作製する場合、トナーの粒径分布がブロードとなりやすくなるため、好ましくない。酸価が35.0mg・KOH/gより大きい場合、分散体の増粘が顕著であり、ゲル状の凝集塊が生成する場合がある。このような、樹脂微粒子の水系分散体を使用して、トナーを作製する場合には、樹脂の吸湿性が高く、帯電特性、流動性のようなトナー特性が劣化するため、好ましくない。また、これまで、酸価が低いほど樹脂微粒子を水系媒体中に分散させることが困難になる傾向があり、酸価が13.0mg・KOH/g以下の樹脂を分散させることは、特に困難であった。
【0021】
上記酸価を有する樹脂は、トナーとした場合の低温定着性、及び保存安定性の観点から、以下の(1)〜(3)の物性を有することが、好ましい。(1)軟化温度(Tm)が、60〜140℃、より好ましくは、70〜130℃であること。(2)数平均分子量(Mn)が、1,000〜50,000、より好ましくは、2,000〜20,000であること。(3)ガラス転移温度(Tg)が、35.0〜70.0℃、より好ましくは、45℃〜70℃であること。
【0022】
<本発明に用いられる界面活性剤>
本発明では、樹脂の分散性を促進する目的で、界面活性剤を添加して分散を行う。使用可能な界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムのような水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムのようなアニオン性界面活性剤;ラウリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのようなカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイドのような両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンに代表されるノニオン性界面活性剤のような界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムのような無機化合物が挙げられる。これらの中でも、分散安定性の観点から、ノニオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤が、より好ましく、ノニオン性界面活性剤が、さらに好ましい。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いても良く、また、必要に応じて2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0023】
また、ノニオン性界面活性剤としては、後述する第2工程における加熱攪拌温度以上の曇点を有するものが、より均一な粒度分布を有する樹脂微粒子の水系分散体が得られるため好ましい。
【0024】
界面活性剤の添加量としては、樹脂100.0質量部に対して、0.1〜3.0質量部が好ましく、0.3〜2.5質量部がより好ましく、0.5〜2.0質量部がさらに好ましい。界面活性剤の添加量が、0.1質量部未満であると、樹脂の分散性が低下するため好ましくない。3.0質量部より大きいと、トナーとした際に、界面活性剤が、トナー粒子中へ残留する場合があり、その結果、トナーの帯電性や保存安定性の低下を招く場合があるため、好ましくない。また、トナー中の界面活性剤を出来るだけ除去するには、多量の洗浄水が必要となり、環境負荷の観点からも好ましくない。
【0025】
<本発明に用いられるアミン>
本発明におけるアミンの主たる役割としては、酸価を有する樹脂の酸性基のカウンターイオンとして作用し、樹脂の親水性を向上させることである。また、カウンターイオンとしてアミンを選択した理由としては、我々の鋭意検討の結果、他の無機塩基と比較して高い分散性を発現することが判明したためである。これは、無機塩基に比べ、疎水性の高いアミンは、水系媒体中において、樹脂表面に局在化しやすく、効果的に酸性基を中和することができるためと考えられる。
【0026】
本発明において使用可能なアミンとしては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン(DMAE)、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンが例示できる。これらのアミンは、1種を単独で用いても良く、また、必要に応じて2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0027】
本発明におけるアミンの添加量としては、前記樹脂100.0質量部に対し、5.0〜10.0質量部であることが好ましい。5.0質量部より少ない場合は、アミンによる酸性基の中和が不十分で、分散が進行しない場合や、進行したとしても、後述の第二工程を経て得られる分散体が、粗大粒子の多い不均一な粒度分布を有したものとなり易く、生産性が低下するため好ましくない。
【0028】
一方、5.0質量部より多い場合、アミンの添加量の増加と共に、後述する樹脂粒子の粒子径(D50)は、小さくなり、粗大粒子も減少する傾向にあるものの、樹脂粒子分散体の粘度は、徐々に増加する傾向にあり、ゲル状の凝集塊が発生する場合がある。特に、アミンの添加量が、10.0質量部より多い場合は、分散体の増粘が顕著であり、ゲル状の凝集塊が多量に発生してしまい、生産性が低下する場合があるため好ましくない。このような傾向は、酸価が高い樹脂ほど顕著であり、樹脂の酸価が30.0mg・KOH/gよりも高い場合には、分散液全体がゲル化して、流動性を失う場合があるため、好ましくない。
【0029】
<本発明における第一工程>
本発明における第一工程は、前記樹脂、前記アミン、前記界面活性剤、及び必要に応じて水の混合物の均一化とアミンによる酸性基の中和とを行う工程である。このため、加熱攪拌を行うことで、前記混合物を液体あるいは粘性を有する固体とし、効率的に前記目的を達成することができる。
【0030】
前記混合物に含まれる水の含有量としては、樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以下であり、より好ましくは、3.0質量部以下、さらには、水を使用しないことが、最も好ましい形態である。
【0031】
前記混合物に含まれる水の含有量が多くなるほど、後述の第二工程を経て得られる分散体は、粗大粒子の多い不均一な粒度分布を有したものとなりやすい。この傾向は、酸価が低い樹脂ほど顕著であり、水の含有量が、5.0質量部より多い場合には、実質的に使用不可能なレベルまで、粗大粒子が増加し、生産性が低下する場合があるため好ましくない。
【0032】
水の添加量を前記範囲とすることで、従来の方法より、少ない界面活性剤量で分散が可能となる。この理由は、必ずしも明確ではないが、水の含有量を前記範囲とすることで、樹脂に対するアミンの吸着が、前記範囲より多量の水が系内に存在する場合に比べて、促進されるためと考えられる。その結果、酸性基の中和が、十分に進行し、従来の方法に比べ、より少量の界面活性剤の使用で分散が可能となると考えられる。なお、本明細中における水とは、蒸留水、イオン交換水を意味する。
【0033】
第一工程において前記混合物を加熱攪拌して加熱混合物を調製する際の加熱温度としては、前記樹脂のガラス転移点をTgとした時、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲であることが好ましい。加熱温度がTg+10℃未満であると、樹脂の粘度が十分に低下しないため、前記混合物の均一化が不十分となり、粗大粒子の多い、不均一な粒度分布を有した分散体となりやすく、生産性が低下するため好ましくない。一方、加熱温度が、Tg+100℃以上である場合、耐圧仕様の特殊な装置を使用する必要があるため、好ましくない。
【0034】
第一工程における加熱混合物を調製する際の加熱攪拌時間としては、材料の仕込み量や樹脂種にもよるが、前記混合物を液体あるいは粘性を有する固体とし、界面活性剤及びアミンを樹脂へ十分吸着させる観点から、60分以上、好ましくは、90分以上である。第一工程において前記混合物を加熱攪拌する装置としては、適度な攪拌ができるものであれば特に限定されない。
【0035】
<本発明における第二工程>
本発明における第二工程は、前記第一工程で加熱攪拌された加熱混合物に、加熱攪拌下、水系媒体を添加して、樹脂の分散を進行させる工程である。
【0036】
上記水系媒体とは、水を主成分とするものであるが、樹脂微粒子の粒子径や粒径分布を制御する目的で、前記界面活性剤、前記アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムのような水酸化アルカリ金属、それらの炭酸塩や酢酸塩のような弱酸の塩、部分中和塩のような無機塩基性化合物、あるいは、アンモニアを添加することが可能である。
【0037】
上記水系媒体の添加速度としては、分散を効果的に促進する観点から、樹脂100gに対し、好ましくは1〜30g/分、より好ましくは、1〜20g/分、さらに好ましくは1〜10g/分である。
【0038】
第二工程において混合物を加熱攪拌する際の加熱温度としては、前記樹脂のガラス転移点をTgとした時、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲であることが好ましい。Tg+10℃未満であると、樹脂の粘性が高すぎて、分散が進行しない場合がある。一方、加熱温度が、Tg+100℃以上である場合、耐圧仕様の特殊な装置を使用する必要があるため、好ましくない。
【0039】
前記、第二工程を経て得られた水系媒体中の樹脂微粒子の粒子径としては、分散粒子の沈降分離を抑制する観点から、累積体積分布における小粒径側からの累積体積が50%となる粒径(D50V)が、好ましくは、1.00μm未満であり、より好ましくは、0.50μm未満である。また、累積体積分布における小粒径側からの累積体積が95%となる粒径(D95V)が、好ましくは、1.00μm未満であり、より好ましくは、0.60μm未満である。また、D50V及びD95Vが、1.00μm以上であると、乳化凝集法トナー用として使用する場合には、トナーの粒度分布や、着色剤やワックスといった構成材料の分散が不均一となりやすく、帯電特性、定着性、保存安定性、色特性のような諸特性が劣化するため、好ましくない。D50V及びD95Vを上記範囲内で調製するには、界面活性剤量、アミン種、アミン量、第一工程における加熱温度、第二工程における加熱温度を適宜調整するとよい。
【0040】
前記第二工程を経て得られた樹脂微粒子の水系分散体は、必要な温度まで冷却して使用することができる。冷却方法及び冷却速度としては、特に限定されず適宜選択すればよい。
【0041】
樹脂微粒子の水系分散体中の固形分含有量としては、10〜60質量%が好ましい。60質量%より多いと、第二工程における分散体の粘度が著しく高くなるため、このような場合、粒径分布が不均一となりやすく好ましくない。このような樹脂微粒子の水系分散体を使用して、乳化凝集法トナーを作製する場合、トナーの粒度分布がブロードとなり、画像カブリやトナー飛散といった問題が顕在化するため好ましくない。
【0042】
<本発明のトナーの製造方法>
次に、本発明のトナーの製造方法に関して説明する。本発明のトナーの製造方法は、樹脂微粒子の水系分散体と着色剤微粒子の水系分散体とを少なくとも混合し、樹脂微粒子及び着色剤微粒子を水中で凝集させ凝集体を形成する凝集工程と、前記凝集体を加熱し融合する融合工程とを含むトナーの製造方法である。本発明のトナー製造方法においては、必要に応じて離型剤や荷電制御剤を用いることも可能である。
【0043】
上記着色剤としては、以下の顔料または染料が好適に挙げられる。
【0044】
シアン系の顔料または染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66が挙げられる。
【0045】
マゼンタ系の顔料または染料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254が挙げられる。
【0046】
イエロー系の顔料または染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194が挙げられる。
【0047】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、あるいは上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものを利用することができる。これらの着色剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
また上記着色剤の添加量としては、印字濃度、トナーの帯電性、トナーへの分散性のような観点から、樹脂100質量部に対し1〜30質量部添加して用いることが好ましい。
【0049】
上記のような着色剤微粒子の水系分散体は、例えば、着色剤と水系媒体と界面活性剤とを公知の攪拌機、乳化機、分散機により混合することで調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。また、混合する界面活性剤の量は、着色剤100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、分散安定性とトナーの洗浄効率とを両立する観点から、2〜10質量部がより好ましい。
【0050】
着色剤の分散時に用いる攪拌機、乳化機及び分散機としては、例えば、公知の超音波ホモジナイザー、ジェットミル、圧力式ホモジナイザー、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカーが挙げられ、これらを単独もしくは組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記荷電制御剤としては、例えば、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミニウム、鉄、クロム、亜鉛、ジルコニウムのような錯体からなる化合物が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記荷電制御剤としては、凝集時や融合時の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水再利用との観点から、水に溶解しにくいものが好ましい。上記荷電制御剤は、帯電性向上の観点から、結着樹脂100.0質量部に対して0.1〜5.0質量部使用することが好ましい。
【0052】
上記離型剤としては、例えば、ポリエチレンのような低分子量ポリオレフィン類;加熱により融点(軟化点)を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;ステアリン酸ステアリルのようなエステルワックス類;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油のような植物系ワックス;ミツロウのような動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、エステルワックスのような鉱物・石油系ワックス;及びそれらの変性物が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記離型剤は、添加効果及び帯電性への影響を考慮して、結着樹脂100質量部に対して1〜20質量部使用することが好ましい。
【0053】
離型剤の添加方法としては、上記樹脂、着色剤同様、水系分散体として混合する。離型剤微粒子の水系分散体は、例えば、界面活性剤を含有した水に離型剤を加え、前記離型剤の融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(例えば、ゴーリンホモジナイザー:ゴーリン社製)で粒子状に分散させ、作製することができるが、これらの手法に限定されるものではない。
【0054】
以下に、トナーの製造方法について更に詳細に説明するが、下記方法に限定されない。
【0055】
(凝集工程)
凝集工程では、本発明の樹脂微粒子の水系分散体及び着色剤微粒子の水系分散体、必要に応じて離型剤微粒子の水系分散体及びその他荷電制御剤のようなトナー成分を混合し、混合液を調製する。ついで該混合液中で、凝集粒子を形成させ、凝集粒子分散体を調製する。前記凝集粒子は、例えばpH調整剤、凝集剤、安定剤を上記混合液中に添加し、温度、機械的動力を適宜加えることにより該混合液中に形成することができる。
【0056】
上記pH調整剤としては、アンモニアや水酸化ナトリウムのようなアルカリ、硝酸やクエン酸のような酸が挙げられる。上記凝集剤としては、ナトリウム、カリウムのような1価の金属塩;カルシウム、マグネシウムのような2価の金属塩;鉄、アルミニウムのような3価の金属塩;メタノール、エタノール、プロパノールのようなアルコール類があげられる。上記安定剤としては、主に界面活性剤そのもの、またはそれを含有する水系媒体が挙げられる。
【0057】
上記の添加・混合は、混合液中に含まれる樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で上記混合を行うと、凝集が安定した状態で進行する。上記混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサーを用いて行うことができる。
【0058】
ここで形成される凝集粒子の平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナーの粒径と同じ程度になるように制御するとよい。制御は、例えば、温度と上記攪拌混合の条件とを適宜設定・変更することにより容易に行うことができる。以上の凝集工程において、トナーの粒径とほぼ同じ粒径を有する凝集粒子が形成され、凝集粒子を分散させてなる凝集粒子分散体が調製される。
【0059】
(融合工程)
融合工程は、上記凝集粒子を加熱して融合する工程である。融合工程に入る前に、トナー粒子間の融着を防ぐため、前記pH調整剤、前記凝集剤、前記安定剤を適宜添加することができる。
【0060】
加熱の温度としては、凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)の温度から樹脂の分解温度の間であればよい。
【0061】
融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。即ち、前記融合の時間は、前記加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分〜10時間である。
【0062】
本発明においては、融合工程の終了後に得られたトナーを、適切な条件で洗浄、ろ過、乾燥することにより、トナー粒子を得る。更に、得られたトナー粒子の表面に、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムのような無機粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂のような樹脂粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加してもよい。これらの無機粒子や樹脂粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤のような外添剤として機能し、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
本発明のトナーの製造方法で得られるトナー粒子の重量平均粒子径(D4)は3.0〜9.0μmであることが好ましく、3.5〜7.5μmであることがより好ましい。
【0064】
トナー粒子の重量平均粒子径(D4)が3.0μmより小さいと、流動性低下による帯電量分布の広がりにより、画像カブリやトナー飛散が生じやすくなる。一方、トナー粒子の重量平均粒子径(D4)が9.0μmより大きいと、解像度が低下し、十分な画質が得られ難くなる場合があるため、好ましくない。また、粒度分布の広がりを表す重量平均粒子径(D4)と個数平均粒径(D1)との比(D4/D1)としては、同様の観点から1.45以下が好ましく、1.35以下がより好ましい。D4/D1が、1.45を超える場合、トナーの帯電量分布がブロードとなり、画像カブリやトナー飛散といった問題が生じやすくなるため好ましくない。
【0065】
以下に本発明における各物性の測定方法を説明する。
【0066】
<樹脂の数平均分子量(Mn)の測定>
樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、以下に示す条件で数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0067】
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料(例えば、東ソー社製或いは、昭和電工社製:分子量が10〜10程度のもの)を用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えばカラム(shodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807,800Pの組み合わせ:昭和電工社製)や、カラム(TSKgelG1000H(HXL),G2000H(HXL),G3000H(HXL),G4000H(HXL),G5000H(HXL),G6000H(HXL),G7000H(HXL),TSKguardcolumnの組み合わせ:東ソー社製)が挙げられる。
【0068】
試料は以下のようにして作製した。樹脂をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、数時間放置した後、十分振とうし、THFと良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に12時間以上静置する。この時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45〜0.50μm、例えば、マイショリディスクH−25−5:東ソー社製、エキクロディスク25CR:ゲルマン・サイエンス・ジャパン社製が利用できる)を通過させたものを、GPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調製して測定を行った。
【0069】
<樹脂の酸価の測定>
樹脂の酸価は、以下のように算出した。なお、基本操作は、JIS−K0070に準ずる。酸価は、試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。
(1)試薬
(a)溶剤:エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)を使用直前にフェノールフタレインを指示薬として0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液:フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95V/v%)100mlに溶かす。
(c)0.1モル/リットル水酸化カリウム−エチルアルコール溶液:水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95V/v%)を加えて1リットルとし、2〜3日放置後ろ過する。標定はJIS−K8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
(2)操作
樹脂(試料)1〜20gを正しくはかりとり、これに溶剤100ml及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これを0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
(3)計算式
次の式によって酸価を算出する。
A=B×f×5.611/S
A:酸価
B:0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:0.1モル/リットル水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
【0070】
<樹脂のガラス転移点(Tg)の測定>
上記ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)測定装置を用いて測定することが可能である。DSC測定では、測定原理から、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法は、ASTMのD3418−82に準じて行う。具体的には、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、10℃/minで昇温させた時に測定されるDSC曲線からガラス転移点(Tg(℃))を計算する。吸熱前後のベースラインと吸熱による曲線の接線との交点の中心値をTg(℃)とする。
【0071】
<樹脂の軟化温度(Tm)の測定>
樹脂の軟化温度(Tm)は、フローテスター(CFT−500D:島津製作所社製)を用いて測定する。具体的には、測定する試料1.2gを秤量し、高さが1.0mmで直径1.0mmのダイを使用し、昇温速度4.0℃/min、予熱時間300秒、荷重5kg、測定温度範囲60〜200℃の条件で測定を行う。上記の試料が半分量流出したときの温度を軟化温度とする。
【0072】
<水系分散体中における樹脂粒子の粒度分布測定>
水系分散体中における樹脂粒子の粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−950:堀場製作所社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定する。具体的には、前記測定装置の試料導入部で、透過率が測定範囲内(70〜95%)になるように、測定試料を調製し、D50V、及びD95Vを測定した。尚、測定試料は、目開き105μmの金属製メッシュに通したものを使用した。
【0073】
<トナー粒子の個数平均粒径(D1)及び重量平均粒径(D4)の測定>
上記トナー粒子の個数平均粒径(D1)及び重量平均粒径(D4)はコールター法による粒度分布解析にて測定する。測定装置として、コールターカウンターTA−II或いはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定する。電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて、約1%塩化ナトリウム水溶液を調製する。例えば、ISOTON−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。具体的な測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として、界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を、0.1〜5ml加え、さらに測定試料(トナー粒子)を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行う。得られた分散処理液を、アパーチャーとして100μmアパーチャーを装着した前記測定装置により、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定してトナーの体積分布と個数分布とを算出する。それから、個数平均粒径(D1)及び重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。
【0074】
上記チャンネルとしては、2.00〜2.52μm;2.52〜3.17μm;3.17〜4.00μm;4.00〜5.04μm;5.04〜6.35μm;6.35〜8.00μm;8.00〜10.08μm;10.08〜12.70μm;12.70〜16.00μm;16.00〜20.20μm;20.20〜25.40μm;25.40〜32.00μm;32.00〜40.30μmの13チャンネルを用いる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
<樹脂製造例1>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:550.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:180.0質量部
・テレフタル酸:292.0質量部
・無水トリメリット酸:1.5質量部
・ジブチルスズオキシド:0.1質量部
上記材料を2リットルのガラス製4つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で、窒素気流下にて230℃で22時間反応させることで、Mn=3810、Tg=57.2℃、Tm=96.1℃、酸価=2.4mg・KOH/gであるポリエステル樹脂Aを得た。
【0077】
<樹脂製造例2>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:550.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:180.0質量部
・テレフタル酸:290.0質量部
・無水トリメリット酸:3.0質量部
・ジブチルスズオキシド:0.1質量部
上記材料を用いた以外は、製造例1と同様な方法で、Mn=3890、Tg=57.8℃、Tm=97.5℃、酸価=3.7mg・KOH/gであるポリエステル樹脂Bを得た。
【0078】
<樹脂製造例3>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:390.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:350.0質量部
・テレフタル酸:270.0質量部
・無水トリメリット酸:50.0質量部
・ジブチルスズオキシド:0.1質量部
上記材料を用いた以外は、製造例1と同様な方法で、Mn=3920、Tg=58.1℃、Tm=99.1℃、酸価=11.8mg・KOH/gであるポリエステル樹脂Cを得た。
【0079】
<樹脂製造例4>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:380.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:270.0質量部
・テレフタル酸:270.0質量部
・無水トリメリット酸:80.0質量部
・ジブチルスズオキシド:0.1質量部
上記材料を用いた以外は、製造例1と同様な方法で、Mn=3970、Tg=57.2℃、Tm=105.2℃、酸価=32.0mg・KOH/gであるポリエステル樹脂Dを得た。
【0080】
<樹脂製造例5>
・スチレン:70.0質量部
・アクリル酸n−ブチル:25.0質量部
・マレイン酸モノブチル:5.0質量部
・ジ−t−ブチルパーオキサイド:2.0質量部
四つ口フラスコ内にキシレン300質量部を投入し、攪拌しながら容器内を十分に窒素で置換した後、昇温して還流させ、この還流下で、上記材料の混合物を4時間かけて滴下した後、2時間保持し重合を完了した後、脱溶剤することで、Mn=4600、Tg=55.1℃、Tm=100.8℃、酸価が12.0mg・KOH/gであるスチレン−アクリル共重合樹脂Eを得た。
【0081】
<実施例1>
・ポリエステル樹脂A:100.0質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノイゲンXL−160:第一工業製薬製、曇点98℃):2.0質量部
・ジメチルアミノエタノール(以下、DMAEと記す)(キシダ化学社製):7.5質量部
上記材料を、500mlのビーカーに投入し、カイ型の攪拌機で200r/minの攪拌下、95.0℃で120分間、混合した(第一工程)。その後、温度を保ちつつ、カイ型の攪拌機で200r/minの攪拌下、95.0℃に加熱したイオン交換水200.0質量部を、2時間かけて滴下し(第二工程)、樹脂微粒子の水系分散体1を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通し、粗大粒子成分又はゲル状の成分の含有割合を確認したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体1におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.25μm、0.36μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0082】
<実施例2>
第一工程における処理温度を85.0℃、第二工程における処理温度を85.0℃とした以外は、実施例1と同様の方法で処理した結果、樹脂微粒子の水系分散体2を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体2におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.28μm、0.38μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0083】
<実施例3>
第一工程における処理温度を70.0℃、第二工程における処理温度を70.0℃とした以外は、実施例1と同様の方法で処理した結果、樹脂微粒子の水系分散体3を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体3におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.29μm、0.41μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0084】
<実施例4>
・ポリエステル樹脂A:100.0質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノイゲンXL−160:第一工業製薬製、曇点98℃):2.0質量部
・DMAE:7.5質量部
・イオン交換水:2.5質量部
上記材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体4を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して1.0質量部の粗大粒子成分が残った。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体4におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.32μm、0.43μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0085】
<実施例5>
イオン交換水の添加量を、4.5質量部とした以外は、実施例4と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体5を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して4.6質量部の粗大粒子成分が残った。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体5におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.39μm、0.58μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0086】
<実施例6>
DMAEの添加量を、9.5質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体6を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して0.8質量部のゲル状成分が残った。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体6におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.18μm、0.30μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0087】
<実施例7>
・ポリエステル樹脂A:100.0質量部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンR−K:第一工業製薬製、固形分60%):3.3質量部
・DMAE:7.5質量部
上記材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体7を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体7のD50V 及びD95V値は、それぞれ0.32μm、0.47μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0088】
<実施例8>
ノニオン性界面活性剤の添加量を、10.0質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体8を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体8のD50V 及びD95V値は、それぞれ0.19μm、0.33μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0089】
<比較例1>
第一工程における処理温度を63.0℃とした以外は、実施例1と同様の方法で処理した結果、材料の均一化が不十分となった。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して13.5質量部の粗大粒子成分が残った。生産性が不良と判断し、粒径は測定しなかった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0090】
<比較例2>
第二工程における処理温度を63.0℃とした以外は、実施例1と同様の方法で処理した結果、第二工程における樹脂の粘度が高いため、分散が進行せず、固液が分離した。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0091】
<比較例3>
イオン交換水の添加量を、8.0質量部とした以外は、実施例4と同様の方法で比較用樹脂微粒子の水系分散体を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して30.1質量部の粗大粒子成分が残った。生産性が不良と判断し、粒径は測定しなかった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0092】
<比較例4>
DMAEの添加量を、4.0質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で比較用樹脂微粒子の水系分散体を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して10.9質量部の粗大粒子成分が残った。生産性が不良と判断し、粒経は測定しなかった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0093】
<比較例5>
DMAEの添加量を、12.0質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で比較用樹脂微粒子の水系分散体を得た。結果、アミン量が過剰のため、第二工程において、ゲル状の塊が生成した。この分散体を目開き105μmの金属製メッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して9.3質量部のゲル状成分が残ったため、生産性が不良と判断し、粒経は測定しなかった。上記条件、及び得られた結果を、表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
<実施例9>
・ポリエステル樹脂B:100.0質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノイゲンXL−160:第一工業製薬製、曇点98℃):1.5質量部
・DMAE:7.0質量部
上記材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体9を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体9におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.21μm、0.34μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0096】
<実施例10>
・ポリエステル樹脂C:100.0質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノイゲンXL−160:第一工業製薬製、曇点98℃):1.0質量部
・DMAE:6.0質量部
上記材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体10を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体10におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.10μm、0.12μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0097】
<実施例11>
・ポリエステル樹脂D:100.0質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノイゲンXL−160:第一工業製薬製、曇点98℃):0.1質量部
・DMAE:5.2質量部
上記材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子分散体11を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体11におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.08μm、0.09μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0098】
<実施例12>
・スチレン−アクリル共重合樹脂E:100.0質量部
・ノニオン性界面活性剤(ノイゲンXL−160:第一工業製薬製、曇点98℃):1.0質量部
・DMAE:5.8質量部
上記材料を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、樹脂微粒子の水系分散体12を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、何も残らなかった。メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体12におけるD50V 及びD95V値は、それぞれ0.19μm、0.32μmであり、良好であった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0099】
<比較例6>
イオン交換水の添加量を、8.0質量部とした以外は、実施例9と同様の方法で比較用樹脂微粒子の水系分散体を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して25.6質量部の粗大粒子成分が残った。生産性が不良と判断し、粒経は測定しなかった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0100】
<比較例7>
イオン交換水の添加量を、10.0質量部とした以外は、実施例10と同様の方法で比較用樹脂微粒子の水系分散体を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して23.5質量部の粗大粒子成分が残った。生産性が不良と判断し、粒径は測定しなかった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0101】
<比較例8>
DMAEの添加量を、2.5質量部とした以外は、実施例11と同様の方法で、比較用樹脂微粒子の水系分散体を得た。得られた分散体を目開き105μmの金属製のメッシュに通したところ、メッシュ上には、仕込んだ樹脂100.0質量部に対して9.5質量部の粗大粒子成分が残った。生産性が不良と判断し、粒径は測定しなかった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0102】
<比較例9>
DMAEの添加量を、10.5質量部とした以外は、実施例11と同様の方法で処理したところ、アミン量が過剰で、且つ樹脂の酸価が高いため、第二工程において、著しく増粘した。25℃まで冷却した際、分散体全体が、ゲル状の塊となったため、メッシュで濾過できなかった。上記条件、及び得られた結果を、表2に示す。
【0103】
【表2】

【0104】
次に、上記のメッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体、及び着色剤粒子の水系分散体とを少なくとも混合し、樹脂粒子及び着色剤を水中で凝集させ凝集体を形成する凝集工程と、前記凝集体を加熱し融合する融合工程とを含むトナーの製造方法、及び該製造方法によって得られるトナーについて説明する。
【0105】
<トナー製造例1>
(着色剤粒子の水系分散体)
・シアン顔料(Pigment Blue 15:3:大日精化社製):100質量部
・アニオン界面活性剤(ネオゲンRK:第一工業製薬社製):15質量部
・イオン交換水:885質量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業社製)を用いて約1時間分散して、着色剤を分散させてなる着色剤微粒子の水系分散体を調製した。着色剤粒子の体積平均粒径は0.20μmであった。
【0106】
(離型剤粒子の水系分散体)
・エステルワックス(ベヘン酸ベヘニル、融点75℃):100質量部
・アニオン性界面活性剤(ネオゲンRK:第一工業製薬社製):10質量部
・イオン交換水:880質量部
以上を攪拌装置付きの混合容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社製)へ循環しながらローター外径が3cm、クリアランスが0.3mmの剪断攪拌部位にて、ローター回転数19000r/min、スクリーン回転数19000r/minの条件にて攪拌し、60分間分散処理した。その後、ローター回転数1000r/min、スクリーン回転数0r/min、冷却速度10℃/minの冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、離型剤微粒子の水系分散体を得た。離型剤微粒子の体積平均粒径は0.15μmであった。
【0107】
(混合液調製工程)
・メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体1:60質量部
・着色剤微粒子の水系分散体:10質量部
・離型剤微粒子の水系分散体:20質量部
・イオン交換水:90質量部
以上をステンレス製フラスコ中においてホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて、室温下、5000r/minで攪拌し、混合した。
【0108】
(凝集工程)
この混合液に、100質量部の硫酸マグネシウムの1質量%水溶液を滴下、滴下後もホモジナイザーで分散操作を継続した。加熱用オイルバスで攪拌しながら昇温した。43.5℃で昇温を停止し、その温度で60分間保持した。
【0109】
(融合、洗浄、乾燥工程)
次いで、600質量部のクエン酸3Naの5質量%水溶液を添加した後、攪拌を継続しながら85℃まで昇温して3時間保持した。冷却後、生成物をろ過し、600質量部のイオン交換水で洗浄する操作を5回繰り返した後、乾燥させることにより、トナー粒子1を得た。得られたトナー粒子について、該トナー粒子100質量部に、BET法で測定した比表面積200m/gである疎水化処理されたシリカ粒子1.8質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で乾式混合してトナー1を得た。
【0110】
<トナー製造例2〜12>
混合液調製工程において、メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体1を、メッシュをパスした樹脂微粒子の水系分散体2〜12に変更した以外は、トナー製造例1と同様にして、トナー2〜12を得た。
【0111】
上記各トナーについて、下記トナー飛散の評価を実施した。評価は、上記トナーと、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(体積平均粒径42μm)とを、トナー濃度が6質量%になるように混合し、二成分系現像剤を調製し、市販のフルカラーデジタル複合機(以下、現像装置)(CLC1000:キヤノン製)を使用して行った。結果を表2に示す。
【0112】
(トナー飛散の評価)
印字率5%以上10%未満のライン画像を10万枚出力した後の現像装置、及び本体内現像装置周辺のトナーによる汚れ具合を目視にて観察する。
(評価基準)
A:現像装置、及び本体内現像装置周辺にはトナーによる汚れが全く観察されない。
B:現像装置にはトナーによる微量の汚れが観察される。
C:現像装置、及び本体内現像装置周辺がトナーによって著しく汚れる。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
100.0質量部の樹脂、界面活性剤、及び5.0質量部以上10.0質量部以下のアミンを少なくとも含有し、水の含有量が5.0質量部以下である混合物を、前記樹脂のガラス転移点をTgとした時、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲で攪拌することで、加熱混合物を得る第一工程と、
前記加熱混合物を、Tg+10℃以上、且つTg+100℃未満の温度範囲で攪拌しながら、水系媒体を添加することで、樹脂微粒子の水系分散体を得る第二工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。
【請求項2】
前記混合物が、100.0質量部の樹脂に対し、3.0質量部以下の水を含有することを特徴する、請求項1に記載の樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。
【請求項3】
前記混合物が、水を含有しないことを特徴する、請求項1に記載の樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂の酸価が、2.0mg・KOH/g以上35.0mg・KOH/g以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂の酸価が、3.0mg・KOH/g以上13.0mg・KOH/g以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂がポリエステルであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂微粒子の水系分散体の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる、樹脂微粒子の水系分散体。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂微粒子の水系分散体と着色剤微粒子の水系分散体とを少なくとも混合し、樹脂微粒子及び着色剤微粒子を水系媒体中で凝集させ、融合してトナー粒子を得ることを特徴とする、トナーの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のトナーの製造方法によって得られる、トナー。

【公開番号】特開2012−46617(P2012−46617A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189373(P2010−189373)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】