説明

樹脂性部材の成形仕上げ方法

【課題】2つ割りの成形型で射出成形により形成される樹脂性部材を簡便な方法で外観美のある製品に成形仕上げする樹脂性部材の成形仕上げ方法を提供する。
【解決手段】成形型1の上型2の半球状の内輪郭面4と湯口7との交差部に面取り面8を形成することにより脱型された球体には後工程で簡単で、かつ円滑に除去可能な突起部が形成される。この突起部とパーティングラインの出張り部の除去により外観美のある球体を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ割りの成形型により射出成形される樹脂性部材の成形仕上げ方法に係り、特に、成形品の外輪郭面に凹凸部のない樹脂性部材の成形仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、「特許文献1」にあるように樹脂製の球体(樹脂球)は2つ割り成形型を用いて射出成形により成形される。
【特許文献1】特開平2−92377(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
「特許文献1」の特開平2−92377号の「球体内部に無数の独立小気泡を有する樹脂球及び該樹脂球の製造法」によれば、樹脂球は2つ割りの型を用いて射出成形によって成形される。また、球体でない樹脂性部材もその樹脂性部材の外輪郭面に見合う内輪郭面を有する2つ割りの型により射出成形される場合が多い。
【0004】
図6は従来の成形方法により成形される球体9bの形状を模式的に示したものである。この球体9bは図5に示す上型2aと下型3aとにより射出成形により成形される。また、図5に示すように、例えば、上型2a側から液状樹脂材を型内に導入する場合には、上型2aの半球状の内輪郭面4aの頂部に湯口7aが形成されており、液状樹脂材はこの湯口7aから型内に導入される。なお、下型3aにも上型2aと同じ半球状の内輪郭面5aが形成され、上型2aと下型3aとはパーティングライン6aで接し、内部に球体の外輪郭面と同じ球状の内輪郭面を形成する。
【0005】
以上の形状の成形型を用いて図6に示す球体9bが形成されるが、図示のように、この球体9bには上型2aの内輪郭面4aと湯口7aとの交差部の所に凹凸部14が形成されると共に両型のパーティングライン6aの部分に出張り部11aが形成される。前記の凹凸部14は射出成形のやり方により種々の形状のものからなるが、球体9bの外輪郭面12aから突起する凸状ものや外輪郭面12a内に食い込む凹状のもの等各種形状のもの等各種形状のものになるのが普通である。
【0006】
球体9bの用途により以上の凹凸部14や出張り部11aはそのままの状態で使用される場合もあるが、凹凸部14も出張り部11aも球体9bの品質を低下させる要因となることは勿論であり、かつ凹凸部14の部分には球体9bの使用によりゴミ等が溜り易く、外観美を大きく損ねる問題点がある。また、パーティングライン6aの出張り部11aは球体9bの手ざわりを低下させる原因となると共に、この部分にもゴミ等が付着し外観美を損ねる問題点がある。
【0007】
本発明は、以上の事情に鑑みて発明されたものであり、2つ割りの型により射出成形により成形される樹脂性部材の外観美を向上させる簡便な成形仕上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、2つ割りの成形型により射出成形される樹脂性部材の成形仕上げ方法であって、該方法は、前記成形型の内輪郭面と湯口との交差部に面取り面を形成した成形型により前記樹脂性部材を成形した後、成形された前記樹脂性部材の前記交差部に生ずる突起部と両型のパーティングラインにおける出張り部を除去して所定の外輪郭面を有する前記樹脂性部材を形成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記樹脂性部材が球体(ボール)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の樹脂性部材の成形仕上げ方法によれば、湯口のある成形型の湯口と型の内輪郭面との交差部に面取り面を形成することにより成形された樹脂性部材の外輪郭面には後工程で除去し易い突起部(凹形状でない)が形成される。このため、この突起部やパーティングラインの出張り部は後工程で綺麗に除去でき、外観美のある樹脂性部材を成形仕上げすることができる。
【0011】
また、請求項2の樹脂性部材の成形仕上げ方法によれば、樹脂性部材が球体であり、外観美があり、かつ手ざわりのよい球体を成形仕上げすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の樹脂性部材の成形仕上げ方法の実施の形態を図面を参照して詳述する。なお、この実施の形態では樹脂性部材とし球体を採用したが、樹脂性部材としては2つ割りの型で成形されるすべての樹脂性部材が含まれることは勿論である。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の樹脂性部材の成形仕上げ方法による成形型を示すものである。この成形型1は上型2と下型3とからなり、両型2,3共に内部に球体の形状に見合う半球の内輪郭面4,5が形成される。なお、射出成形時には両型2,3はパーティングライン6で接し、これにより内部に球体の外輪郭面に見合う球状の内輪郭面を形成する。
【0014】
下型3はその内部に半球状の内輪郭面5のみを形成するものからなるが、湯口7を有する上型2はその内輪郭面4と湯口7との交差部に面取り面8を形成する。本実施例では、この面取り面8はR状の面からなるが、これに限定するものではない。なお、この面取り面8の形状や大きさは上型2の内輪郭面4の形状,大きさや湯口7の形状,大きさを勘案し適宜の形状,大きさのものが採用される。
【0015】
図2は図1に示した成形型により成形された球体9を示す。図示のようにこの球体9の外面には突起部10と出張り部11が形成される。突起部10は湯口7の部分に生ずるものであるが、この突起部10は図6に示した凹凸部14とは異なり、球体9の外輪郭面12から突出した形状のものからなる。これは上型2の内輪郭面4と湯口7との交差部とに面取り面8を形成することにより成形されるものである。即ち、面取り面8により湯口7の出口の部分には面取り面8に沿う樹脂体が形成され、脱型時においてはこの部分に突起として残存することによる。なお、本実施例の場合も出張り部11としては図6に示した従来品の出張り部11aと同一のものが形成される。
【0016】
図3に示すように、図2に示す球体9の突起部10と出張り部11は共に球体9の外輪郭面12から突起した形状のものからなるため、この部分にヤスリ材やパフ材13を押圧することにより球体9の外輪郭面12に沿った仕上げ面が簡単に、かつ円滑に形成される。なお、ヤスリ材やパフ材13の内容やその仕上げ方法についても工夫がされているが、ノウハウ的の要素もあり、ここでは開示しない。以上により、図4に示すように、円滑な球形状の球体9aが成形仕上げされることになる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、樹脂性部材の成形仕上げ方法は球体に限らず2つ割りの型により射出成形されるすべての樹脂性部材に適用され、その利用範囲は広い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の樹脂性部材の成形仕上げ方法に使用される成形型の模式的断面図。
【図2】図1の成形型により成形直後の球体を示す模式図。
【図3】図2の球体の突起部や出張り部の仕上げ方法を示す模式図。
【図4】本発明の樹脂性部材の成形仕上げ方法によって成形仕上げされた完成品の球体を示す模式図。
【図5】従来の球体の成形型の一例を示す模式的断面図。
【図6】図5の成形型によって成形された球体を示す模式図。
【符号の説明】
【0019】
1 成形型
2 上型
3 下型
4 内輪郭面
5 内輪郭面
6 パーティングライン
7 湯口
8 面取り面
9 球体
9a 球体(完成品)
10 突起部
11 出張り部
12 外輪郭面
13 ヤスリ材やパフ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ割りの成形型により射出成形される樹脂性部材の成形仕上げ方法であって、該方法は、前記成形型の内輪郭面と湯口との交差部に面取り面を形成した成形型により前記樹脂性部材を成形した後、成形された前記樹脂性部材の前記交差部に生ずる突起部と両型のパーティングラインにおける出張り部を除去して所定の外輪郭面を有する前記樹脂性部材を形成することを特徴とする樹脂性部材の成形仕上げ方法。
【請求項2】
前記樹脂性部材が球体(ボール)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂性部材の成形仕上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−62111(P2006−62111A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244660(P2004−244660)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(502407598)
【出願人】(597154092)株式会社ビーアンドエフ (2)
【Fターム(参考)】