説明

樹脂成形体及び該成形体を含む複合樹脂製品並びにこれらの製造方法

【課題】軽量でリサイクル性に優れ、意匠性が良好な樹脂成形体を効率良く提供する。
【解決手段】カーボンファイバーを主成分とする繊維状材料からなる芯材を、直接樹脂で被覆成形することにより、軽量でリサイクル性に優れ、意匠性が良好な樹脂成形体を効率良く提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内外装部品に関し、より詳しくは、自動車のドアモール(ウェストサイドモール)、ウィンドモール、ルーフモール等のように押出成形して得られる樹脂成形体及び該成形体を含む複合樹脂製品並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフモール、ウィンドモール、ドアモール等のモール部品に代表される複合樹脂製品は、通常、複数の樹脂成形体により構成されている。ここで、自動車のルーフモールは、図10のA付近の拡大図である図11に示すような部品である。また、ウィンドモールは、図10のB付近の拡大図である図12に示すような部品であり、ドアモールは、図10のC付近の拡大図である図13に示すような部品である。従来、これらのモール部品は、金属と樹脂との組合せからなる樹脂成形体により構成されており、具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリプロヒレン(PP)等に対して、ステンレス(SUS)、鉄(SP)、アルミニウム(AL)、銅線等を組み合わせたものである。いずれも断面が均一な長尺の形状を有しており、金属に樹脂を押出被覆成形することにより製造される。また、基本的に金属を樹脂で包む構造となっており、金属は芯材として用いられる。芯材としての金属は、部品の線膨張を抑制し、部品の剛性及び形状を保持する役割を担う。
【0003】
しかしながら、金属と樹脂との組合せにより構成される樹脂成形体は、金属が骨格となっているため、重量が嵩んでしまい、軽量化に限界がある。特に、自動車用部品としては燃費向上の観点から好ましくない。また、金属に樹脂を押出被覆成形する際には、金属と樹脂とを接着する目的で接着剤が用いられるため、金属と樹脂との分別が困難であり、リサイクル性に劣る。さらには、金属と接着剤あるいは樹脂と接着剤との界面において割れが発生することもある。
【0004】
これに対して、金属が用いられていない樹脂成形体として、カーボンファイバー等の短い繊維や充填材をポリプロピレン(PP)等の樹脂に混ぜ込み、押出成形したものが提案されている(特許文献1参照)。この樹脂成形体は、図14に示すような複合樹脂製品の一部として利用される。この樹脂成形体は、軽量のカーボンファイバーを用いているため、重量が嵩むことはない。そのうえ、粉砕するだけで補強樹脂として再利用が可能であるため、リサイクル性に優れる。
【0005】
しかしながら、金属並みの線膨張係数を得るには、樹脂に多量のカーボンファイバーを添加しなければならないため、押出成形時の抵抗が増して押出性が悪化し、生産効率が低下する。さらには、カーボンファイバーが樹脂成形体の全体に分布しており、樹脂成形体の表面にカーボンファイバーが露出するため、表面が粗く、意匠性が劣る。
【特許文献1】特開2003−49026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、軽量でリサイクル性に優れ、意匠性が良好な樹脂成形体を効率良く提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、カーボンファイバーを主成分とする繊維状材料からなる芯材を、直接樹脂で被覆成形することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) 芯材と、この芯材を直接的に被覆する樹脂層と、を備える線状の樹脂成形体であって、前記芯材は、繊維状材料により形成され、前記繊維状材料の主成分は、カーボンファイバーである樹脂成形体。
【0009】
(1)の樹脂成形体は、従来のように金属からなる芯材の代わりに、カーボンファイバーを主成分とする繊維状材料からなる芯材を樹脂で被覆成形したものである。カーボンファイバーを主成分とする繊維状材料は、線膨張係数が小さいため、樹脂を成形する際に高温下に曝されるような樹脂成形体に好適に用いることができる。このため、本発明に係る樹脂成形体の線膨張係数は小さく、3×10−5/℃以下である。従って、本発明に係る樹脂成形体は、温度変化に対する線膨張が抑制され、寸法安定性に優れる。また、軽量のカーボンファイバーを用いているため、重量が嵩むことはない。そのうえ、粉砕するだけで補強樹脂として再利用が可能であるため、リサイクル性に優れる。さらには、カーボンファイバーは芯材として用いられるため、樹脂成形体の表面に露出することはなく、意匠性も良好である。
【0010】
(2) 前記繊維状材料は、1束当り、1000本以上10万本以下のカーボンファイバーのフィラメント材の束である(1)記載の樹脂成形体。
【0011】
(2)の樹脂成形体の芯材は、1束当り、1000本以上10万本以下のカーボンファイバーのフィラメント材の束で構成されている。カーボンファイバーのフィラメント材の1束当りの本数は、上記の範囲内において選択し、芯材の束数は樹脂成形体の形状や大きさに応じて適宜決定する。このように、カーボンファイバーのフィラメント材を束ねたものを芯材として用いることにより、(1)の樹脂成形体で得られる効果をより効果的に発揮することができる。
【0012】
(3) 前記繊維状材料は、カーボンファイバーのフィラメント材の編物又は織物である(1)記載の樹脂成形体。
【0013】
(3)の樹脂成形体の芯材は、カーボンファイバーのフィラメント材の編物又は織物で構成されている。カーボンファイバーのフィラメント材の編物又は織物を芯材として用いることにより、(1)の樹脂成形体で得られる効果をより効果的に発揮することができる。
【0014】
(4) 前記繊維状材料は、表面がサイズ処理されている(1)から(3)いずれか記載の樹脂成形体。
【0015】
(4)の樹脂成形体の芯材として用いられる繊維状材料は、表面がサイズ処理されたものである。表面がサイズ処理された繊維状材料は、樹脂との接着性が良好であるため、従来のように接着剤の使用が不要である。また、芯材と樹脂との界面で発生し易い割れをより効果的に防止することができる。
【0016】
(5) 前記繊維状材料は、プリプレグである(1)から(4)いずれか記載の樹脂成形体。
【0017】
(5)の樹脂成形体の芯材として用いられる繊維状材料は、予めカーボンファイバーに樹脂を含浸させたプリプレグである。プリプレグは、予め帯状になっているため製造時の取り扱いが容易であるという利点を有する。特に、芯材に樹脂を押出被覆成形する場合にあっては、カーボンファイバーのほつれを気にする必要がないうえ、成形開始時のカーボンファイバーの位置決めが容易である。
【0018】
(6) 前記樹脂層を形成する樹脂は、変性基が導入されている(1)から(5)いずれか記載の樹脂成形体。
【0019】
(6)の樹脂成形体の樹脂層を形成する樹脂は、変性基が導入されたものである。具体的には、ジカルボン酸基を有する無水マレイン酸等により変性された樹脂が好適に用いられる。このような変性樹脂を用いることにより、さらに芯材との接着性を向上させることができる。
【0020】
(7) 前記樹脂層は、前記芯材に前記樹脂を連続的に押出被覆成形して得られたものである(1)から(6)いずれか記載の樹脂成形体。
【0021】
(7)の樹脂成形体は、カーボンファイバーを主成分とする繊維状材料からなる芯材に、樹脂層を連続的に押出被覆成形して得られたものである。このように押出被覆成形して樹脂層を形成することにより、(1)の樹脂成形体で得られる効果をより効果的に発揮することができる。また、この押出被覆成形によれば、カーボンファイバーの投入量や投入場所を任意に設定できるため、樹脂成形体の任意の箇所にカーボンファイバーを配置することができる。
【0022】
(8) 芯材に、樹脂を連続的に押出被覆成形して得られる樹脂成形体の製造方法であって、前記芯材を、繊維状材料により形成し、前記繊維状材料の主成分を、カーボンファイバーとする樹脂成形体の製造方法。
【0023】
(8)の樹脂成形体の製造方法は、カーボンファイバーを主成分とする芯材に、樹脂を連続的に押出被覆成形することを特徴とする。この製造方法によれば、軽量でリサイクル性に優れ、意匠性が良好な樹脂成形体を連続的に製造することができる。
【0024】
(9) 二つ以上の樹脂成形体が一体化した複合樹脂製品であって、前記樹脂成形体の少なくとも一つは、芯材と、この芯材を被覆する樹脂層と、を備え、前記芯材は、繊維状材料により形成され、前記繊維状材料の主成分は、カーボンファイバーである複合樹脂製品。
【0025】
(9)の複合樹脂製品は、カーボンファイバーを主成分とする繊維状材料からなる芯材を樹脂で被覆成形した樹脂成形体を少なくとも一つ組み合わせたものである。このような複合樹脂製品は、軽量でリサイクル性に優れ、意匠性が良好であるため、自動車のモール部品等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、軽量でリサイクル性に優れ、意匠性が良好な樹脂成形体を効率良く提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
<カーボンファイバー>
本発明に係る樹脂成形体では、芯材としてカーボンファイバーが用いられる。カーボンファイバー(炭素繊維)は、レーヨンやアクリル繊維等の合成樹脂からなる繊維を、無酸素下で蒸し焼きにし、炭化させることにより得られる。カーボンファイバーを、エポキシ樹脂等を母材とする複合材料の強化材として用いたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等はよく知られている。カーボンファイバーは、軽量であるうえ、炭素原子間の結合力が強く、非常に丈夫な繊維である。さらには、温度1℃の変化によって生ずる物体の単位長さ当たりの伸縮量を意味する「線膨張係数」が低いため、押出成形の際に高温下に曝される樹脂成形体の芯材として好適に用いることができる。
【0029】
本発明で用いるカーボンファイバーは、フィラメント材の束であることが好ましい。ここで、「カーボンファイバーのフィラメント材」とは、カーボンファイバーの連続長繊維を意味し、繊維の長さにより短繊維のチョップ材と区別される。本発明では、このフィラメント材を1束当り、1000本以上5万本以下束ねたものがより好ましく用いられ、1束当り、12000本以上24000以下束ねたものがさらに好ましく用いられる。なお、カーボンファイバーのフィラメント材を束ねたもの以外にも、カーボンファイバーのフィラメント材の編物又は織物を芯材として用いることもできる。
【0030】
また、本発明で用いるカーボンファイバーは、サイズ処理されたものであることが好ましい。ここで、「サイズ処理」とは、カーボンファイバーの表面処理を意味し、樹脂との接着性を向上させる目的でなされるものである。具体的には、液相酸化、電解酸化、気相酸化等の酸化処理を施すことにより、カーボンファイバーの表面に水酸基やカルボキシル基を生成させて、樹脂との接着性を向上させる処理である。あるいは、カーボンファイバーの表面に、有機化合物や無機化合物をコーティングさせることにより、樹脂との接着性を向上させる処理である。
【0031】
本発明に係る樹脂成形体では、芯材としてプリプレグを用いることもできる。「プリプレグ」とは、適宜サイズ処理等を施したカーボンファイバーに、予め樹脂を含浸させたものである。プリプレグはシート状で、厚みは0.02mm〜1mm程度まで様々である。プリプレグは、カーボンファイバーの束を広げて1方向に配列させたものの他、2方向に配列させたものや編物/織物があるが、本発明においては、1方向配列のプリプレグが好ましい。また、同じカーボンファイバーの量でもプリプレグする樹脂の種類や樹脂の含有率により特性は変化する。プリプレグに使用される樹脂は、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等があるが、本発明においては、樹脂成形体の他の材料との相溶性の良いポリプロピレンのプリプレグが最も好ましい。プリプレグの利点は、予め樹脂の帯状になっているため、製造時の取り扱いが容易であることである。特に、芯材に樹脂を押出被覆成形する場合にあっては、カーボンファイバーのほつれを気にする必要がなく、成形開始時のカーボンファイバーの位置決めが容易である。
【0032】
<樹脂>
本発明に係る樹脂成形体で用いられる樹脂としては、特に限定されず、種々の樹脂を用いることができる。具体的には、ポリプロヒレン(PP)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。ここで、「熱可塑性エラストマー」とは、常温下ではゴムの機能を有するが、高温下において可塑化し、各種の成形加工ができる高分子材料である。なお、本発明においては、これらの樹脂に変性基を導入したものがより好ましく用いられる。変性基としては、ジカルボン酸基等の極性基が一例として挙げられる。具体的には、ポリプロヒレンに無水マレイン酸を導入した無水マレイン酸変性ポリプロピレン等が好ましく用いられる。
【0033】
<その他添加剤>
本発明に係る樹脂成形体では、線膨張防止の観点から、樹脂中に粉末状充填材等を添加してもよい。具体的には、粘土鉱物の一種であるタルク等が好適に添加される。また、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、潤滑剤、スリップ剤、難燃剤、着色剤、強化材等の各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0034】
<押出被覆成形>
本発明でいう「押出被覆成形」とは、芯材のカーボンファイバーを、樹脂が被覆するように押出成形することを意味する。従って、本発明に係る樹脂成形体は線状であり、押出成形の際に所定の形状に成形された後、適宜切断されて複合樹脂製品として利用される。この押出被覆成形によれば、樹脂成形体の連続生産が可能であるうえ、カーボンファイバーの投入量や投入場所を任意に設定できるため、要求に応じた箇所にのみカーボンファイバーを配置することができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
<実施例1〜6>
[芯材にカーボンファイバーを用いた樹脂成形体]
実施例1〜6として、芯材のカーボンファイバーに樹脂が押出被覆成形された樹脂成形体を製造した。実施例1〜6いずれにおいても、カーボンファイバーとしては、カーボンファイバー(東邦テナックス(株)製ベスファイトHTA)のフィラメント材の束を用いた。具体的には、表1に示すように、実施例1では1000本(表1における1Kは1000本を意味する)、実施例2では6000本、実施例3及び5では12000本、実施例4及び6では24000本のカーボンファイバーのフィラメント材の束を用いた。また、実施例5及び6のみ、カーボンファイバーにサイズ処理を施した。
【0037】
樹脂としては、実施例1〜6いずれにおいても、ポリプロピレン樹脂(出光石油化学(株)製E−150GK)を用い、実施例1〜4のみ、無水マレイン酸を添加して無水マレイン酸変性のポリプロピレン樹脂とした。無水マレイン酸の配合量は表1に示す通りであり、実施例1〜4いずれも同量を配合した。また、実施例1〜6いずれにおいても、樹脂中にタルク(富士タルク工業(株)製PKP−80)を添加した。
【0038】
実施例1〜6に係る樹脂成形体の製造工程を図1に示す。図1に示すように、先ず、芯材のカーボンファイバー110を口金140から連続的に投入した。それと同時に、ペレット状の樹脂120を、押出機130(L/D:25)に投入し、口金140の押出口から、芯材のカーボンファイバー110に樹脂120が被覆するように、押出被覆成形した。押出成形の際の温度は190℃〜200℃、ラインスピードは10m/minに設定した。押押出被覆成形直後の樹脂成形体は高温であるため、形状を保持させる目的で、冷却機150に投入して冷却した。冷却後、完全に冷却した樹脂成形体を切断機160で一定の長さに切断した。
【0039】
本実施例により得られた樹脂成形体170の断面図を図2に示す。図2から明らかであるように、本実施例により得られた樹脂成形体170は、芯材のカーボンファイバー210が直接的に樹脂220により被覆された構造であった。
【0040】
<比較例1>
[カーボンファイバーを混ぜ込んだ樹脂成形体]
比較例1として、カーボンファイバーを混ぜ込んだ樹脂成形体を製造した。カーボンファイバーとしては、カーボンファイバー(東邦テナックス(株)製ベスファイトHTA)のチョップ材(数cm以下の短繊維)を用いた。樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(出光石油化学(株)製E−150GK)を用い、樹脂中にタルク(富士タルク工業(株)製PKP−80)を添加した。
【0041】
比較例1に係る樹脂成形体の製造工程を図3に示す。図3に示すように、先ず、押出機330(L/D:25)に、ペレット状の樹脂320と、カーボンファイバーのチョップ材310を所定の配合量で投入した。押出機330で加熱、ミキシングしながら、口金340より製品形状に押出成形した。押出成形の際の温度は、190℃〜200℃に設定した。また、ラインスピードは、カーボンファイバー310の添加によって押出時の抵抗が増して押出性が悪化するため、2m/minに遅く設定して押出成形を行った。口金340から押出された直後は、製品が高温であるため、冷却機350へ投入して冷却した。冷却後、完全に冷却した樹脂成形体を切断機360で一定の長さに切断した。
【0042】
比較例1により得られた樹脂成形体370の断面図を図4に示す。図4から明らかであるように、本比較例により得られた樹脂成形体370は、カーボンファイバー410が樹脂成形体370の全体に分布しており、樹脂成形体370の表面にカーボンファイバー410が露出していた。
【0043】
<比較例2>
[芯材及びカーボンファイバーが用いられていない樹脂成形体]
比較例2として、芯材及びカーボンファイバーが用いられていない樹脂成形体を製造した。カーボンファイバーや金属を使用しない点を除いて、製造方法は比較例1と同様の手順により製造した。但し、樹脂のみ押出しをする際は押出性が若干低下するため、ラインスピードは実施例よりも遅く、6m/minに設定した。
【0044】
<比較例3>
[芯材に金属を用いた樹脂成形体]
比較例3として、芯材の金属に樹脂が押出被覆成形された樹脂成形体を製造した。芯材の金属としてアルミ押出材を用い、樹脂としては、ポリプロピレン樹脂(出光石油化学(株)製E−150GK)を用いた。また、樹脂中にタルク(富士タルク工業(株)製PKP−80)を添加した。
【0045】
製造工程を図5に示す。図5に示すように、先ず、芯材となるアルミ金属510に、接着剤を連続的にローラーコーター570で塗布した。接着剤の塗布はローラーコーター570に限られるものではなく、ハケで塗布しても同様のものが得られた。次いで、電熱炉や高周波等を利用した焼付機580により、300℃×5秒の条件で加熱し、接着剤を硬化させた。接着剤が硬化した芯材のアルミ金属510を、口金540に連続的に挿入した。それと同時に、ペレット状の樹脂520を押出機530(L/D:25)に投入し、アルミ金属510を樹脂520が被覆するように、押出被覆成形した。押出成形の際の温度は190℃〜200℃、ラインスピードは12m/minに設定した。押出被覆成形された樹脂成形体は高温のため、形状を保持させる目的で、冷却機550に投入して冷却した。冷却条件は、水温を20℃〜25℃、冷却時間を30秒とした。冷却後、完全に冷却した樹脂成形体を切断機560で一定の長さに切断することにより、芯材のアルミ金属510に樹脂520が押出被覆成形された樹脂成形体を得た。
【0046】
比較例3により得られた樹脂成形体590の断面図を図6に示す。図6から明らかであるように、本比較例により得られた樹脂成形体590は、芯材のアルミ金属610が接着剤630を介して樹脂620により被覆された構造であった。
【0047】
<評価>
実施例1〜6、及び、比較例1〜3により得られた樹脂成形体それぞれについて、線膨張係数、表面粗さ、重量、リサイクル性の評価を行った。なお、表面粗さについては目視により判断し、リサイクル性についてはリサイクルに要する手間を考慮して判断した。評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示す通り、比較例1では、樹脂成形体の表面にカーボンファイバーが露出していたため意匠性が悪いうえ、ラインスピードを早く設定することができず、生産効率も悪かった。また、比較例2では、芯材やカーボンファイバーを用いていないため線膨張係数が高く、寸法安定性が悪いため押出成形には不向きであった。さらには、比較例3では、芯材としてアルミ金属を用いているため、重量が嵩むうえ、アルミ金属と樹脂との分別が困難であり、リサイクル性も良くなかった。これに対して、実施例1〜6によれば、軽量でリサイクル性に優れ、意匠性も良好な樹脂成形体を効率良く提供できた。
【0050】
実施例1〜6により得られた本発明に係る樹脂成形体を、少なくとも一部に用いた複合樹脂製品を図7〜9に示す。図7は、本発明に係る樹脂成形体を用いた自動車のルーフモール700の部分断面図であり、図8は、本発明に係る樹脂成形体を用いた自動車のウィンドモール800の部分断面図である。また、図9は、本発明に係る樹脂成形体を用いた自動車のドアモール900の部分断面図である。このように、本発明に係る樹脂成形体は、自動車のルーフモール、ウィンドモール、ドアモール等に好適に用いることができた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る樹脂成形体の製造工程を示す図面である。
【図2】本発明に係る樹脂成形体の断面図である。
【図3】比較例1の樹脂成形体の製造工程を示す図面である。
【図4】比較例1の樹脂成形体の断面図である。
【図5】比較例3の樹脂成形体の製造工程を示す図面である。
【図6】比較例3の樹脂成形体の断面図である。
【図7】本発明に係る樹脂成形体を用いたルーフモールの部分断面図である。
【図8】本発明に係る樹脂成形体を用いたウィンドモールの部分断面図である。
【図9】本発明に係る樹脂成形体を用いたドアモールの部分断面図である。
【図10】樹脂成形体の使用態様を示す図面である。
【図11】従来のルーフモールの部分断面図である。
【図12】従来のウィンドモールの部分断面図である。
【図13】従来のドアモールの部分断面図である。
【図14】特許文献1に記載された樹脂成形体の使用態様を示す図面である。
【符号の説明】
【0052】
10 自動車
11、21、31、610 金属
12、22、32、220、420、620 樹脂層
15、700 ルーフモール
25、800 ウィンドモール
35、900 ドアモール
41 カーボンファイバーが全体に分布した樹脂層
110、210、310、410、510、710、810、910 カーボンファイバー
120、320、520 樹脂
130、330、530 押出機
140、340、540 口金
150、350、550 冷却機
160、360、560 切断機
170、370、590 樹脂成形体
570 ローラーコーター
580 焼付機
630 接着剤
720、820、920 タルクが添加されたポリプロピレン
730、830、930 オレフィン系熱可塑性エラストマー
940 ナイロン植毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、この芯材を直接的に被覆する樹脂層と、を備える線状の樹脂成形体であって、
前記芯材は、繊維状材料により形成され、
前記繊維状材料の主成分は、カーボンファイバーである樹脂成形体。
【請求項2】
前記繊維状材料は、1束当り、1000本以上10万本以下のカーボンファイバーのフィラメント材の束である請求項1記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記繊維状材料は、カーボンファイバーのフィラメント材の編物又は織物である請求項1記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記繊維状材料は、表面がサイズ処理されている請求項1から3いずれか記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記繊維状材料は、プリプレグである請求項1から4いずれか記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記樹脂層を形成する樹脂は、変性基が導入されている請求項1から5いずれか記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記樹脂層は、前記芯材に前記樹脂を連続的に押出被覆成形して得られたものである請求項1から6いずれか記載の樹脂成形体。
【請求項8】
芯材に、樹脂を連続的に押出被覆成形して得られる樹脂成形体の製造方法であって、
前記芯材を、繊維状材料により形成し、
前記繊維状材料の主成分を、カーボンファイバーとする樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
二つ以上の樹脂成形体が一体化した複合樹脂製品であって、
前記樹脂成形体の少なくとも一つは、芯材と、この芯材を被覆する樹脂層と、を備え、
前記芯材は、繊維状材料により形成され、
前記繊維状材料の主成分は、カーボンファイバーである複合樹脂製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−44037(P2006−44037A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227746(P2004−227746)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】