説明

樹脂成形体

【課題】構造色を呈すると共に当該構造色を観察可能な角度範囲を広くすることができる樹脂成形体を提供する。
【解決手段】樹脂成形体100は、表面100a側に配置された表面層110と、裏面100b側に配置された裏面層120と、表面層110及び裏面層120の間に配置された中間層130とを有し、表面層110,裏面層120及び中間層130は、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、表面層110,裏面層120及び中間層130のミクロドメインのそれぞれが、表面100a及び裏面100bの対向方向D1に振幅を有する波状であり、表面層110及び裏面層120のミクロドメイン112,122における所定の距離d1,d2の最大値が可視光領域の波長よりも大きく、中間層130のミクロドメイン132における所定の距離d3が可視光領域の波長以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体に関し、特に、構造色を呈する樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
構造色を呈する樹脂成形体として、構造発色体は、構造色を発現する発色体であり、発色体の微細構造に起因して光の反射、干渉、屈折、回折、散乱等の現象が生じて当該微細構造に固有の光を発色する。構造発色体としては、表面に凹凸を有する基板の当該表面上に、屈折率の互いに異なる膜を積層して得られる構造体(例えば、下記特許文献1〜3参照)や、湾曲した形状を有する多層膜(例えば、下記非特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
構造発色体を構成する構造色材料としては、ブロック共重合体が自己組織化することで形成されるミクロ相分離構造を屈折率周期構造として有するフォトニック結晶が知られている(例えば、下記特許文献4参照)。また、このようなフォトニック結晶の光学特性を左右するミクロ相分離構造の配向制御については例えば、下記非特許文献2〜4でずり流動場を印加するという方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−225935号公報
【特許文献2】特開2005−153192号公報
【特許文献3】特許第4427026号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/047514号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】比較整理化学 Vol.25、No.3
【非特許文献2】Polymer Journal 37,12,900−905(2005)
【非特許文献3】Macromolecules 32,3695−3711(1999)
【非特許文献4】Current Opinion in Colloid & Interface Science 5, 342−350(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ブロック共重合体のラメラ状ミクロ相分離構造による構造発色は1次元の多層膜構造の屈折率周期構造によるものであるため、ラメラ状ミクロドメインの法線方向から入射した光に対しては強い強度で反射し構造発色が観察されるが、法線方向から傾斜した方向から入射した光に対しては入射方向と正反対の方向に反射されることはないため構造発色が観察されにくいという問題がある。従って、ラメラ状ミクロ相分離構造を有する樹脂成形体を作製した場合、樹脂成形体の主面に対して平行に配向したラメラ状のミクロドメインを有する構造発色体の当該主面に可視光領域の光が入射する場合、構造色を観察可能な角度範囲は狭いものとなる傾向があり、十分な構造発色効果が得られない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、構造色を呈すると共に当該構造色を観察可能な角度範囲を広くすることができる樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂成形体は、互いに対向する第1の主面及び第2の主面を有する樹脂成形体であって、樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第1の樹脂層を有し、第1の樹脂層が、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、第1の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、第1の主面及び第2の主面の対向方向に振幅を有する波状であり、第1の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい。
【0009】
ところで、主面に対して平行に配向したラメラ状のミクロドメインを有する構造発色体の当該主面では、ブラッグの反射条件を満たす入射角の範囲が狭くなる傾向があることから、構造発色体の厚さ方向に対して傾斜した方向から可視光領域の光が上記主面に入射する場合に、構造色を観察し難くなる傾向がある。一方、本発明に係る樹脂成形体では、第1の樹脂層が、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有していることにより、構造発色体として構造色を呈することができる。そして、上記樹脂成形体では、第1の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが上記対向方向に振幅を有する波状であり、第1の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい。この場合、上記対向方向に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体の主面に入射する場合であっても、光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に光の入射方向に対して傾斜した領域が第1の樹脂層のミクロドメインに存在し易いことから、当該領域において光を反射することができる。したがって、上記樹脂成形体では、上記対向方向に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体の主面に入射する場合であっても、第1の樹脂層において反射された光を構造色として観察することができるため、構造色を観察可能な角度範囲を広くすることができる。
【0010】
また、上記樹脂成形体の一実施形態において、樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層及び第3の樹脂層を更に有し、第1の樹脂層が、第1の主面側に配置されており、第2の樹脂層が、第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、第3の樹脂層が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の間に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、第2の樹脂層及び第3の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、上記対向方向に振幅を有する波状であり、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きく、第3の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離が可視光領域の波長以下である。
【0011】
上記樹脂成形体では、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが上記対向方向に振幅を有する波状であり、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい。この場合、第1の樹脂層と同様に、上記対向方向に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体の主面に入射する場合であっても、第2の樹脂層において反射された光を構造色として観察することができる。また、上記樹脂成形体では、第3の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが上記対向方向に振幅を有する波状であり、第3の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離が可視光領域の波長以下である。この場合、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に比して第3の樹脂層に存在し難い。このような第3の樹脂層では、上記対向方向に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に比して、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。このような樹脂成形体では、上記対向方向から樹脂成形体の主面を観察した場合に、第1の樹脂層や第2の樹脂層で反射された光と共に、第3の樹脂層で反射された光を観察し易いのに対し、上記対向方向に対して傾斜した方向から樹脂成形体の主面を観察した場合には、第1の樹脂層や第2の樹脂層で反射された光は観察され易いものの、第3の樹脂層で反射された光を観察し難い。そのため、上記樹脂成形体では、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。また、上記樹脂成形体では、第1の主面及び第2の主面のいずれを観察した場合においても、構造色を観察可能な角度範囲が広くすることができると共に、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。
【0012】
また、上記樹脂成形体の一実施形態において、樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層及び第3の樹脂層を更に有し、第1の樹脂層が、第1の主面側に配置されており、第2の樹脂層が、第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、第3の樹脂層が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層の間に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、上記対向方向に振幅を有する波状であり、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きく、第3の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方に対して略平行に配向している。
【0013】
上記樹脂成形体では、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが上記対向方向に振幅を有する波状であり、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい。この場合、第1の樹脂層と同様に、上記対向方向に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体の主面に入射する場合であっても、第2の樹脂層において反射された光を構造色として観察することができる。また、上記樹脂成形体では、第3の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方に対して略平行に配向している。この場合、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に比して第3の樹脂層に存在し難い。このような第3の樹脂層では、上記対向方向に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、第1の樹脂層及び第2の樹脂層に比して、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。このような樹脂成形体では、上記対向方向から樹脂成形体の主面を観察した場合に、第1の樹脂層や第2の樹脂層で反射された光と共に、第3の樹脂層で反射された光を観察し易いのに対し、上記対向方向に対して傾斜した方向から樹脂成形体の主面を観察した場合には、第1の樹脂層や第2の樹脂層で反射された光は観察され易いものの、第3の樹脂層で反射された光を観察し難い。そのため、上記樹脂成形体では、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。また、上記樹脂成形体では、第1の主面及び第2の主面のいずれを観察した場合においても、構造色を観察可能な角度範囲が広くすることができると共に、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。
【0014】
また、上記樹脂成形体の一実施形態において、樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層を更に有し、第1の樹脂層が、第1の主面側に配置されており、第2の樹脂層が、第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、上記対向方向に振幅を有する波状であり、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離が可視光領域の波長以下である。
【0015】
上記樹脂成形体では、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが上記対向方向に振幅を有する波状であり、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における上記対向方向の距離が可視光領域の波長以下である。この場合、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、第1の樹脂層に比して第2の樹脂層に存在し難い。このような第2の樹脂層では、上記対向方向に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、第1の樹脂層に比して、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。このような樹脂成形体では、上記対向方向から樹脂成形体の主面を観察した場合に、第1の樹脂層で反射された光と共に、第2の樹脂層で反射された光を観察し易いのに対し、上記対向方向に対して傾斜した方向から樹脂成形体の主面を観察した場合には、第1の樹脂層で反射された光は観察され易いものの、第2の樹脂層で反射された光を観察し難い。そのため、上記樹脂成形体では、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。また、上記樹脂成形体では、第1の主面及び第2の主面のいずれを観察した場合においても、構造色を観察可能な角度範囲が広くすることができると共に、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。
【0016】
また、上記樹脂成形体の一実施形態において、樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層を更に有し、第1の樹脂層が、第1の主面側に配置されており、第2の樹脂層が、第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方に対して略平行に配向している。
【0017】
上記樹脂成形体では、第2の樹脂層のミクロドメインのそれぞれが、第1の主面又は第2の主面の少なくとも一方に対して略平行に配向している。この場合、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、第1の樹脂層に比して第2の樹脂層に存在し難い。このような第2の樹脂層では、上記対向方向に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、第1の樹脂層に比して、上記対向方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。このような樹脂成形体では、上記対向方向から樹脂成形体の主面を観察した場合に、第1の樹脂層で反射された光と共に、第2の樹脂層で反射された光を観察し易いのに対し、上記対向方向に対して傾斜した方向から樹脂成形体の主面を観察した場合には、第1の樹脂層で反射された光は観察され易いものの、第2の樹脂層で反射された光を観察し難い。そのため、上記樹脂成形体では、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。また、上記樹脂成形体では、第1の主面及び第2の主面のいずれを観察した場合においても、構造色を観察可能な角度範囲が広くすることができると共に、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。
【0018】
また、上記樹脂成形体の一実施形態において、樹脂成形体は第1の樹脂層からなる。この場合においても、第1の主面及び第2の主面のいずれを観察した場合において、構造色を観察可能な角度範囲を広くすることができる。
【0019】
上記樹脂成形体における上記対向方向の厚さは、1000μmを超え3000μm以下であることが好ましい。この場合、構造色を観察可能な角度範囲を広くし易くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹脂成形体は、構造色を呈すると共に当該構造色を観察可能な角度範囲(樹脂成形体の主面の対向方向に対する傾斜角度の範囲)を広くすることができる。また、本発明の樹脂成形体は、真空半導体プロセス等の煩雑な工程を要することなく簡便に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形体を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った模式断面図である。
【図3】樹脂成形体における一の樹脂層の断面の一例を示す図面である。
【図4】樹脂成形体における他の樹脂層の断面の一例を示す図面である。
【図5】本発明の一実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の工程を示す図面である。
【図6】本発明の一実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の工程を示す図面である。
【図7】本発明の一実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の工程を示す図面である。
【図8】本発明の他の一実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。
【図9】構造色の視認性を説明するための図面である。
【図10】本発明の他の一実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。
【図11】本発明の他の一実施形態に係る樹脂成形体の製造方法の工程を示す図面である。
【図12】本発明の他の一実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。
【図13】本発明の他の一実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
(樹脂成形体)
図1は、第1実施形態に係る樹脂成形体を示す斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿った模式断面図である。第1実施形態に係る樹脂成形体(構造発色体)100は、例えば円筒状であり、互いに略平行に対向する表面(第1の主面)100a及び裏面(第2の主面)100bを有している。表面100a及び裏面100bの対向方向D1における樹脂成形体100の厚さは、1000μmを超え3000μm以下が好ましい。
【0024】
樹脂成形体100は、表面100a側に配置された表面層(第1の樹脂層)110と、裏面100b側に配置された裏面層(第2の樹脂層)120と、表面層110及び裏面層120の間に配置された中間層(第3の樹脂層)130と、を有している。樹脂成形体100は、裏面層120,中間層130及び表面層110がこの順に積層されて形成されている。中間層130は、表面層110及び裏面層120の間において表面層110及び裏面層120に接している。
【0025】
表面層110及び裏面層120からなる群より選ばれる少なくとも一種の厚さは、300〜1000μmが好ましい。中間層130の厚さは、400〜1000μmが好ましい。
【0026】
樹脂成形体100の表面層110,裏面層120及び中間層130は、高分子フォトニック結晶によって形成されている。高分子フォトニック結晶は、ブロック共重合体(高分子ブロック共重合体)を含有している。表面層110,裏面層120及び中間層130は、例えば、互いに同種のブロック共重合体を含有している。「ブロック共重合体」とは、2種以上のポリマー鎖(セグメント)が結合した共重合体であり、例えば、モノマーAを構造単位とする第1ポリマー鎖と、モノマーBを構造単位とする第2ポリマー鎖とがポリマー鎖の末端同士で結合した共重合体が挙げられる。
【0027】
ブロック共重合体としては、例えば、ポリスチレン−b−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(エチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(プロピルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(イソプロピルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(ペンチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(デシルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(ドデシルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(メチルアクリレート)、ポリスチレン−b−ポリ(tert−ブチルアクリレート)、ポリスチレン−b−ポリブタジエン、ポリスチレン−b−ポリイソプレン、ポリスチレン−b−ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン−b−ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン−b−ポリジメチルシロキサン、ポリビニルピリジン−b−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリビニルピリジン−b−ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、ポリビニルピリジン−b−ポリブタジエン、ポリビニルピリジン−b−イソプレン、ポリブタジエン−b−ポリビニルナフタレン、ポリビニルナフタレン−b−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリビニルナフタレン−b−ポリ(tert−ブチルメタクリレート)等の2元ブロック共重合体、ポリスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリイソプレン−b−ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン−b−ポリイソプレン−b−ポリ(tert−ブチルメタクリレート)等の3元ブロック共重合体等が挙げられる。なお、ブロック共重合体は、ポリマー鎖間で屈折率が異なれば上記に限られるものではない。なお、図2では、表面層110,裏面層120及び中間層130がブロック共重合体として2元ブロック共重合体を含有する形態を一例として示している。
【0028】
表面層110、裏面層120及び中間層130からなる群より選ばれる少なくとも一種におけるブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)の下限値は、構造発色体としての発色性を発現させるために必要な周期構造が良好に得られる観点から、8.0×10(g/mol)以上が好ましく、9.0×10(g/mol)以上がより好ましく、1.0×10(g/mol)以上が更に好ましい。上記重量平均分子量の上限値は、構造発色体としての発色性を発現させるために必要な周期構造が良好に得られる観点から、3.0×10(g/mol)以下が好ましく、2.5×10(g/mol)以下がより好ましく、2.0×10(g/mol)以下が更に好ましい。表面層110、裏面層120及び中間層130におけるブロック共重合体の重量平均分子量が上記範囲を満たすことがより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算の重量平均分子量として得ることができる。
【0029】
表面層110,裏面層120及び中間層130は、ミクロ相分離構造を有している。「ミクロ相分離構造」とは、複数のミクロドメインが周期的に配置された集合体をいう。「ミクロドメイン」とは、ブロック共重合体の異種のポリマー鎖が互いに混じり合うことなく相分離して形成される相をいう。
【0030】
表面層110のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン112a及びミクロドメイン112bからなるラメラ状のミクロドメイン112を含んでおり、ミクロドメイン112aとミクロドメイン112bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。ミクロドメイン112aは、ブロック共重合体のうちの一のポリマー鎖を主成分として含んでおり、ミクロドメイン112bは、ブロック共重合体のうちの他のポリマー鎖を主成分として含んでいる。
【0031】
裏面層120のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン122a及びミクロドメイン122bからなるラメラ状のミクロドメイン122を含んでおり、ミクロドメイン122aとミクロドメイン122bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。ミクロドメイン122aは、ブロック共重合体のうちの一のポリマー鎖を主成分として含んでおり、ミクロドメイン122bは、ブロック共重合体のうちの他のポリマー鎖を主成分として含んでいる。
【0032】
中間層130のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン132a及びミクロドメイン132bからなるラメラ状のミクロドメイン132を含んでおり、ミクロドメイン132aとミクロドメイン132bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。ミクロドメイン132aは、ブロック共重合体のうちの一のポリマー鎖を主成分として含んでおり、ミクロドメイン132bは、ブロック共重合体のうちの他のポリマー鎖を主成分として含んでいる。
【0033】
表面層110のミクロドメイン112のそれぞれは、方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。ミクロドメイン112のそれぞれは、方向D1に突出する凸部114と、方向D1に凹む凹部116とを方向D1に略垂直な方向に沿って交互に有している。同様に、裏面層120のミクロドメイン122のそれぞれは、方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。ミクロドメイン122のそれぞれは、方向D1に突出する凸部124と、方向D1に凹む凹部126とを方向D1に略垂直な方向に沿って交互に有している。また、中間層130のミクロドメイン132のそれぞれは、方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。ミクロドメイン132のそれぞれは、方向D1に突出する凸部134と、方向D1に凹む凹部136とを方向D1に略垂直な方向に沿って交互に有している。
【0034】
ミクロドメイン112、ミクロドメイン122及びミクロドメイン132は、2次元配列又は1次元配列の凹凸を有している。例えば、各ミクロドメインにおける凸部及び凹部は、方向D1に略垂直な方向D2に沿って交互に配置されると共に、方向D1及び方向D2に略垂直な方向D3に沿って交互に配置された形態であってもよく(2次元配列の凹凸)、方向D3に長尺であると共に、方向D2に沿って交互に配置された形態であってもよい(1次元配列の凹凸)。また、各ミクロドメインの波長軸は、表面100a又は裏面100bの少なくとも一方と略平行であることが好ましい。各ミクロドメインは、方向D2及び方向D3に等方的に湾曲した凹凸を有していることが好ましく、凹凸の持続長は、方向D2及び方向D3において長いことが好ましい。
【0035】
表面層110,裏面層120及び中間層130のミクロドメインのそれぞれにおいて、ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における方向D1の距離は、所定の波長λ1に基づき調整されている。具体的には、表面層110のミクロドメイン112(ミクロドメイン112a,112b)のそれぞれにおいて、ミクロドメイン112の凸部114の頂部(例えば頂点)114aと凹部116の底部(例えば底点)116aとの間における方向D1の距離d1の最大値は、波長λ1よりも大きい。
【0036】
ここで、各ミクロドメイン112は頂部114a及び底部116aをそれぞれ複数有しているが、一つのミクロドメイン112における上記距離d1の最大値とは、当該ミクロドメイン112において複数の頂部114aのうちの一つと、複数の底部116aのうちの一つとをそれぞれ選択したときに得られる当該頂部114a及び底部116a間における方向D1の距離が最大である値を意味する。距離d1の最大値を与える頂部114a及び底部116aは、互いに隣接していてもよく、互いに隣接していなくてもよい。なお、樹脂成形体100を方向D1に略平行に切断して得られる一の断面において、波長λ1よりも大きい距離d1をミクロドメイン112が少なくとも一つ有している場合、当該ミクロドメイン112における距離d1の最大値は波長λ1よりも大きいものとなる。
【0037】
同様に、裏面層120のミクロドメイン122(ミクロドメイン122a,122b)のそれぞれにおいて、ミクロドメイン122の凸部124の頂部(例えば頂点)124aと凹部126の底部(例えば底点)126aとの間における方向D1の距離d2の最大値は、波長λ1よりも大きい。
【0038】
一方、中間層130のミクロドメイン132(ミクロドメイン132a,132b)のそれぞれにおいて、ミクロドメイン132の凸部134の頂部(例えば頂点)134aと凹部136の底部(例えば底点)136aとの間における方向D1の距離d3は、いずれも波長λ1以下である。このようなミクロドメイン132は、光学的にフラットな形状を有している。
【0039】
構造発色体の対象波長として波長λ1は、可視光領域の波長(例えば350〜700nm)である。例えば、距離d1,d2の最大値は350nmよりも大きく、距離d3は350nm以下である。また、高屈折率のミクロドメイン(屈折率n1、厚さt1)と低屈折率のミクロドメイン(屈折率n2(n2<n1)、厚さt2)とが交互に積層されて形成された構造発色体に対して、光が当該構造発色体の主面に垂直な方向から入射した場合、下記式(1)で表される波長λ2の光が当該構造発色体において選択的に強められて構造色として観察さる。波長λ1は、波長λ2であることがより好ましい。
波長λ2=2×(n1×t1+n2×t2) ・・・(1)
【0040】
図3は、樹脂成形体100における表面層110の断面の一例を示す図面(TEM写真)である。表面層110に含まれるミクロドメインMD1において、樹脂成形体100の主面の対向方向におけるミクロドメインMD1の凸部の頂部と凹部の底部との間の距離d1は、可視光領域の波長(波長:530nm)λ3よりも大きい。
【0041】
図4は、樹脂成形体100における中間層130の断面の一例を示す図面(TEM写真)である。中間層130に含まれるミクロドメインMD2において、樹脂成形体100の主面の対向方向におけるミクロドメインMD2の凸部の頂部と凹部の底部との間の距離d3は、可視光領域の波長λ3以下である。
【0042】
表面層110,裏面層120及び中間層130を構成する高分子フォトニック結晶は、ブロック共重合体以外の構成成分として、ブロック共重合体及び後述する光重合開始剤を可溶な光重合性モノマーを単量体成分として含む組成物を光重合開始剤の存在下で光重合させて得られる光硬化性樹脂(高分子化合物)を更に含有していることが好ましい。上記光重合性モノマーとしては、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。上記光重合性モノマーとしては、単官能性モノマー又は多官能性モノマーのいずれでもよく、例えばカルボキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート等の単官能モノマー、ジエチレングリコールアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングレコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、4,4′−ジアクリロイルオキシスチルベン、ジエチレングリコールメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。上記光重合性モノマーとしては、多官能モノマーが好ましく、ジシクロペンタニルアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートがより好ましい。上記光重合性モノマーは単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。光硬化性樹脂の含有量は、樹脂成形体100の全質量基準で40〜90質量%が好ましい。
【0043】
また、表面層110,裏面層120及び中間層130を構成する高分子フォトニック結晶は、可塑剤等の他の成分を含有していてもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化合物、ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。樹脂成形体100がこれらの可塑剤を含有することにより、ミクロ相分離構造の規則性を向上させることができる。可塑剤の含有量は、樹脂成形体100の全質量基準で5〜50質量%が好ましい。
【0044】
(樹脂成形体の製造方法)
第1実施形態に係る樹脂成形体100の製造方法は、例えば、互いに対向する第1部材の主面及び第2部材の主面の間に、ブロック共重合体と、光重合開始剤と、当該ブロック共重合体及び光重合開始剤を可溶な光重合性モノマーとを含有する溶液を介在させた状態で、第1部材の主面又は第2部材の主面の少なくとも一方に略平行な互いに異なる方向に第1部材及び第2部材を上記溶液に対して相対移動させて、ずり流動場を上記溶液に対して印加する流動場印加工程(第1工程)と、流動場印加工程の後、上記溶液に光を照射して光重合性モノマーを重合させ、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有する樹脂成形体(構造発色体)を得る光重合工程(第2工程)と、を備えている。上記製造方法は、流動場印加工程の前に溶液調製工程を更に備えていてもよい。また、上記製造方法は、流動場印加工程及び光重合工程の間にアニール工程を更に備えていてもよい。
【0045】
溶液調製工程では、まず、上述したポリマー鎖を有するブロック共重合体を重合する。ラメラ状のミクロドメインを形成可能なブロック共重合体の重合方法としては、例えばリビングアニオン重合等が挙げられる。
【0046】
次に、ブロック共重合体及び光重合開始剤を可溶な光重合性モノマーにブロック共重合体及び光重合開始剤を溶解させて、ブロック共重合体と光重合開始剤と光重合性モノマーとを含有するポリマー溶液を調製する。ポリマー溶液は、上記可塑剤等の他の成分を含有していてもよい。このようなポリマー溶液を調製した段階においてブロック共重合体は、配向制御されていない状態のミクロ相分離構造を形成していてもよい。
【0047】
ポリマー溶液中のブロック共重合体の含有量は、作製プロセスにおいて粘度を下げるために加熱する必要がなく、室温においてある程度低粘度で流動性を有するポリマー溶液とする観点から、ポリマー溶液の全質量基準で3〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、7〜15質量%が更に好ましい。ブロック共重合体の含有量が3質量%未満であると、ミクロ相分離構造を形成する際の偏析力が減少する傾向があり、ミクロ相分離構造の規則性が低下する傾向がある。ブロック共重合体の含有量が30質量%を超えると、偏析力は増大するものの、粘度が増加するため、流動場印加による配向制御が難化する傾向がある。
【0048】
光重合開始剤は、活性光線照射により活性化し得る重合開始剤である。光重合開始剤としては、活性光線照射により分子が開裂してラジカルとなり、光重合性を有するポリマー又はモノマーとラジカル重合反応を引き起こすことにより、材料を高分子量化(架橋)させてゲル化を進行させるラジカル型光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン等が挙げられる。光重合開始剤としては、より具体的にはIRGACURE651(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。光重合開始剤の含有量は、光重合性モノマーの全質量基準で0.05〜0.5質量%であることが好ましい。
【0049】
次に、図5を用いて流動場印加工程について説明する。まず、互いに略平行に対向する平坦な主面40a,40bを有する板状部材(第1部材)40と、互いに略平行に対向する平坦な主面50a,50bを有する板状部材(第2部材)50とを準備する。板状部材40,50は、例えば円形状であり、例えば石英ガラスにより形成されている。板状部材40,50の直径は、20〜500mmが好ましい。板状部材40,50の厚さは、0.5〜10mmが好ましい。板状部材40,50の形状、構成材料、大きさは、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
【0050】
続いて、円形状の開口60aを有する円環状(リング状)のスペーサ60を板状部材40の主面40a上に配置する。スペーサ60は、開口60aの中心が主面40aの中心と対向するように配置されることが好ましい。スペーサ60の外径は、例えば20〜500mmであり、スペーサ60の厚さは、作製する樹脂成形体の厚さに応じて調整される。
【0051】
次に、開口60a内にポリマー溶液70を展開した後、主面40bの中心点P1及び主面50bの中心点P2がポリマー溶液70の厚さ方向に対向することなく主面40aと主面50aとが互いに略平行に対向するように、ポリマー溶液70上に板状部材50を配置する。これにより、ポリマー溶液70が主面40a及び主面50aに接した状態で板状部材40及び板状部材50の間に保持される。なお、主面40aと主面50aとが互いに略平行になるように板状部材40及び板状部材50を対向配置させた後、主面40a及び主面50aの間にポリマー溶液70を注入してもよい。
【0052】
ポリマー溶液70の厚さは、構造発色体としての発色性を発現させるために必要な周期構造が良好に得られる観点から、1000μmを超え3000μm以下が好ましい。
【0053】
続いて、主面40a及び主面50aの間にポリマー溶液70を介在させた状態で、ポリマー溶液70に対してずり流動場を印加する。具体的には、主面40a又は主面50aの少なくとも一方に略平行な複数の方向に板状部材40及び板状部材50を互いに異なる方向にポリマー溶液70に対して相対移動させて、ずり流動場をポリマー溶液70に印加する。例えば、図5に示すように、主面40bの中心点P1及び主面50bの中心点P2を通過せず且つ主面40b,50bに略垂直な基準軸Aの周りに、主面40a,50aに対して略平行に、板状部材40を方向R1に旋回運動させると共に板状部材50を方向R1とは反対の方向R2に旋回運動させる。板状部材40及び板状部材50は、互いに逆方向に同一の回転速度で旋回運動させることが好ましい。
【0054】
流動場印加工程では、ポリマー溶液70の厚さ方向に略垂直な方向(主面40a,50aに略平行な方向)のずり流動場、及び、ポリマー溶液70の厚さ方向のずり流動場をポリマー溶液70に対して印加することにより、ポリマー溶液70の厚さ方向に振幅を有する波状のミクロドメインがポリマー溶液70に形成される。
【0055】
ポリマー溶液70の表層部に印加された流動場は、ポリマー溶液70の表層部から中心部にポリマー溶液70の厚さ方向に伝搬する。この場合、表層部に印加された流動場の大きさによっては、ポリマー溶液70の厚さ方向に伝搬する流動場の大きさは、ポリマー溶液70の表層部から離れるに伴い減衰する。この場合、ポリマー溶液70の表層部に印加される流動場の大きさと、ポリマー溶液70の中心部に印加される流動場の大きさとが異なることとなる。したがって、ずり流動場の印加方向や大きさを調整することにより、ポリマー溶液70の表層部と中心部とでミクロドメインの形状を異なるように調整することができる。
【0056】
流動場印加工程では、ずり流動場の印加方向や大きさを調整することにより、ポリマー溶液70における板状部材40側及び板状部材50側のそれぞれの領域(表層部の領域)に、ポリマー溶液70の厚さ方向におけるミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい表面層110及び裏面層120を形成し、ポリマー溶液70における表面層110及び裏面層120間の領域(中心部の領域)に、ポリマー溶液70の厚さ方向におけるミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間の距離が可視光領域の波長以下である中間層130を形成する。
【0057】
ポリマー溶液70にずり流動場を印加して樹脂成形体100を得る方法は、上記の方法に限られるものではなく、図6,7に示す方法が挙げられる。図6は、板状部材50を主面50aに略平行な面内において定常運動させる方法を例示している。ここで、「定常運動」とは、一定の速度で所定の運動が繰り返し行われる運動を意味し、例えば旋回運動、遊星運動が挙げられる。図7は、板状部材50を主面50aに略平行な面内において振動運動させる方法を例示している。なお、図6,7では、便宜上、板状部材50以外の部材の図示を省略している。図6の符号80は、板状部材50の回転運動の有無を明示するために記載したものであり、実際に表示されているものではない。
【0058】
ポリマー溶液70にずり流動場を印加して樹脂成形体100を得る方法としては、下記方法(a)〜(d)が挙げられる。
(a)「旋回運動」:主面50bの中心点P2を通過せず且つ主面50bに略垂直な基準軸Aの周りに板状部材50を旋回運動させる方法(図5,図6(a))。
(b)「遊星運動」:主面50bの中心点P2を通過する軸を基準として板状部材50を回転運動させつつ、基準軸Aの周りに板状部材50を旋回運動させる方法(図6(b))。
(c)「回転運動(自転運動)を伴わない複数方向への振動運動(往復運動)」:板状部材50を一方向に振動運動させた後、他方向に振動運動させる方法(図7(a))。
(d)「回転運動(自転運動)を伴う振動運動」:主面50bの中心点P2を通過する軸を基準として板状部材50を回転運動させつつ、少なくとも一軸方向に板状部材50を振動運動させる方法(図7(b))。
【0059】
流動場印加工程において、ポリマー溶液に対して複数方向にずり流動場を同時に印加してもよく、ポリマー溶液に対して複数方向にずり流動場を多段階に印加してもよい。複数方向にずり流動場を同時に印加する方法としては、上記方法(a)、(b)、(d)が挙げられる。複数方向にずり流動場を多段階に印加する方法としては、上記方法(c)が挙げられる。なお、2次元配列の凹凸は、上記方法(a)、(b)により得られ易く、1次元配列の凹凸は、上記方法(c)、(d)により得られ易い。
【0060】
流動場印加工程では、運動方向が互いに逆向きとなるように板状部材40,50を運動させて、板状部材40,50のそれぞれからポリマー溶液70に印加される流動場が互いに逆方向に印加されることが好ましい。板状部材40,50のそれぞれからポリマー溶液70に印加されるずり流動場の大きさが互いに略同一となりミクロドメインの形状を調整し易いことから、板状部材40,50の運動方法・運動条件は、運動方向を除いて互いに略同一であることが好ましい。
【0061】
図6(a),(b)では、主面50b内から基準点を選択し当該基準点を通過し主面50bに略垂直な基準軸の周りに板状部材50を旋回させているが、板状部材50の外側に位置する基準軸の周りに板状部材50を旋回させてもよい。図6(b)では、回転運動の回転方向と旋回運動の旋回方向とは互いに逆方向であることが好ましい。
【0062】
図7(a),(b)では、板状部材40及び板状部材50を同一振動数で互いに逆方向に単振動させることが好ましい。また、図7(b)では、板状部材40及び板状部材50は、互いに逆方向に同一の回転速度で回転運動させることが好ましく、例えば、主面40bの中心点P1を通過する軸を基準として一方向に板状部材40を回転させると共に、主面50bの中心点P2を通過する軸を基準として板状部材40の回転方向とは反対の方向に板状部材50を回転させる。
【0063】
ポリマー溶液70に印加されるずり流動場の大きさは、板状部材40,50の運動速度や運動時間により適宜調整することができる。第1実施形態において板状部材40,50の運動方法・運動条件は、ポリマー溶液70の厚さに応じて適宜選択されるが、ポリマー溶液70の厚さが1000μmを超え3000μm以下である場合には、以下のように調整されることが好ましい。旋回運動の回転数は、300rpm以上350rpm未満が好ましい。振動運動の振動数は、25s−1以上30s−1未満が好ましい。回転運動の回転数は、170rpm以上200rpm未満が好ましい。ポリマー溶液70の温度は20〜30℃が好ましく、流動場の印加時間は5〜10分が好ましい。
【0064】
アニール工程では、ミクロ相分離構造を有するポリマー溶液をアニールして、ミクロ相分離構造の規則性を向上させる。アニール温度としては、15〜100℃が好ましい。
【0065】
光重合工程では、ポリマー溶液に活性光線(例えば紫外線)を照射することにより、ポリマー溶液中の光重合性モノマーを重合させる。これにより、流動場印加工程において形成されたミクロ相分離構造を保持しつつ簡易な方法でミクロ相分離構造を固定化することができる。以上により、樹脂成形体100を得ることができる。
【0066】
<第2実施形態>
(樹脂成形体)
図8は、第2実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。第2実施形態に係る樹脂成形体(構造発色体)150は、中間層130に代えて中間層(第3の樹脂層)140を有していることを除き、第1実施形態に係る樹脂成形体100と同様の構成を有している。
【0067】
樹脂成形体150は、例えば円筒状であり、互いに略平行に対向する表面(第1の主面)150a及び裏面(第2の主面)150bを有している。表面150a及び裏面150bの対向方向D1における樹脂成形体150の厚さは、1000μmを超え3000μm以下が好ましい。
【0068】
中間層140は、表面層110及び裏面層120の間において表面層110及び裏面層120に接している。中間層140の厚さは、400〜1000μmが好ましい。中間層140は、第1実施形態の構成成分と同様の構成成分を含有する高分子フォトニック結晶によって形成されており、ミクロ相分離構造を有している。
【0069】
中間層140のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン142a及びミクロドメイン142bからなるラメラ状のミクロドメイン142を含んでおり、ミクロドメイン142aとミクロドメイン142bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。ミクロドメイン142aは、ブロック共重合体のうちの一のポリマー鎖を主成分として含んでおり、ミクロドメイン142bは、ブロック共重合体のうちの他のポリマー鎖を主成分として含んでいる。中間層140のミクロドメイン142のそれぞれは、表面150a又は裏面150bの少なくとも一方に対して略平行に配向した平板状である。
【0070】
(樹脂成形体の製造方法)
第2実施形態に係る樹脂成形体150の製造方法は、流動場印加工程が第1実施形態と異なり、その他の工程(溶液調製工程、アニール工程、光重合工程等)については第1実施形態と同様である。
【0071】
第2実施形態における流動場印加工程は、ずり流動場の大きさが第1実施形態と異なる。第2実施形態では、ポリマー溶液70の厚さ方向のずり流動場の大きさを第1実施形態よりも小さくすることで、ポリマー溶液70の中心部に対してポリマー溶液70の厚さ方向に印加される流動場の大きさが小さくなり易い。これにより、ポリマー溶液70における表面層110及び裏面層120間の領域(中心部の領域)に、板状部材40の主面40a又は板状部材50の主面50aの少なくとも一方に対して略平行に配向した平板状のミクロドメインを含む中間層140を形成することができる。
【0072】
第2実施形態において板状部材40,50の運動方法・運動条件は、ポリマー溶液70の厚さに応じて適宜選択されるが、ポリマー溶液70の厚さが1000μmを超え3000μm以下である場合には、以下のように調整されることが好ましい。旋回運動の回転数は、200rpm以上300rpm未満が好ましい。振動運動の振動数は、20s−1以上25s−1未満が好ましい。回転運動の回転数は、150rpm以上170rpm未満が好ましい。ポリマー溶液70の温度は20〜30℃が好ましく、流動場の印加時間は5〜10分が好ましい。
【0073】
図9は、構造色の視認性を説明するための図面であり、ラメラ状のミクロドメインを含む構造発色体に光が照射された場合の構造色の視認性を説明するための図面である。図9(a),(b)において、構造発色体ST1のミクロドメインのそれぞれは、構造発色体ST1の主面に対して平行に配向した平板状である。図9(c)において、構造発色体ST2のミクロドメインのそれぞれは、構造発色体ST2の厚さ方向に大きな振幅を有する波状である(例えば、凸部の頂部と凹部の底部との間における構造発色体ST2の厚さ方向の距離の最大値が可視光領域の波長より大きい波状のミクロドメイン)。
【0074】
図9(a)では、構造発色体ST1の厚さ方向から主面S1に照射された光Lが、構造発色体ST1のミクロドメインにおいて光Lの入射方向と反対の方向に反射している。図9(a)では、構造発色体ST1の厚さ方向から主面S1が観察されており、構造発色体ST1のミクロドメインにおいて反射した光Lが観察される。
【0075】
図9(b)では、構造発色体ST1の厚さ方向に交差する一の方向から主面S1に照射された光Lが、構造発色体ST1のミクロドメインにおいて構造発色体ST1の厚さ方向に交差する他の方向に反射している。図9(b)では、光Lの入射方向から主面S1が観察されているが、構造発色体ST1のミクロドメインにおいて反射した光Lは観察されない。
【0076】
図9(c)では、構造発色体ST2の厚さ方向に交差する一の方向から主面S2に照射された光Lが、構造発色体ST2の波状のミクロドメインにおいて光Lの入射方向と反対の方向に反射している。図9(c)では、光Lの入射方向から主面S2が観察されており、構造発色体ST2のミクロドメインにおいて反射した光Lが観察される。
【0077】
すなわち、大きな振幅を有する波状のミクロドメインを構造発色体が有している場合には、構造発色体の厚さ方向に対して傾斜した方向から可視光領域の光が構造発色体の主面に入射する場合であっても構造色を観察することができるため、構造色を観察可能な角度範囲が充分に広くなる。一方、ミクロドメインのそれぞれが構造発色体の主面に対して平行に配向した平板状である場合や、波状のミクロドメインの振幅が小さい場合(例えば、波状のミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における構造発色体の厚さ方向の距離が可視光領域の波長以下である場合)には、構造発色体の厚さ方向に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光が充分に反射しない傾向がある。
【0078】
樹脂成形体100,150では、表面層110及び裏面層120におけるミクロドメイン112,122のそれぞれが方向D1に振幅を有する波状であり、ミクロドメイン112のそれぞれにおいて、凸部114の頂部114aと凹部116の底部116aとの間における方向D1の距離d1の最大値が可視光領域の波長よりも大きく、ミクロドメイン122のそれぞれにおいて、凸部124の頂部124aと凹部126の底部126aとの間における方向D1の距離d2の最大値が可視光領域の波長よりも大きい。この場合、方向D1に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体100,150の主面に入射する場合であっても、光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に光の入射方向に対して傾斜した領域が表面層110及び裏面層120のミクロドメイン112,122に存在し易いことから、当該領域において光を反射することができる。したがって、樹脂成形体100,150では、方向D1に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体100,150の主面に入射する場合であっても、表面層110及び裏面層120において反射された光を構造色として観察することができるため、構造色を観察可能な角度範囲を広くすることができる。
【0079】
さらに、樹脂成形体100では、中間層130におけるミクロドメイン132のそれぞれが方向D1に振幅を有する波状であり、中間層130のミクロドメイン132のそれぞれにおいて、ミクロドメイン132の凸部134の頂部134aと凹部136の底部136aとの間における方向D1の距離d3が可視光領域の波長以下である。この場合、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、表面層110及び裏面層120に比して中間層130に存在し難い。このような中間層130では、方向D1に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、表面層110及び裏面層120に比して、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。
【0080】
また、樹脂成形体150では、中間層140におけるミクロドメイン142のそれぞれが表面150a又は裏面150bの少なくとも一方に対して略平行に配向している。この場合、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、表面層110及び裏面層120に比して中間層140に存在し難い。このような中間層140では、方向D1に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、表面層110及び裏面層120に比して、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。
【0081】
このような樹脂成形体100,150では、方向D1から樹脂成形体100,150の主面を観察した場合に、表面層110や裏面層120で反射された光と共に、中間層130又は中間層140で反射された光を観察し易いのに対し、方向D1に対して傾斜した方向から樹脂成形体100,150の主面を観察した場合には、表面層110や裏面層120で反射された光は観察され易いものの、中間層130又は中間層140で反射された光を観察し難い。そのため、樹脂成形体100,150では、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。また、このような樹脂成形体では、第1の主面及び第2の主面のいずれを観察した場合においても、構造色を観察可能な角度範囲が広くすることができると共に、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。また、樹脂成形体100,150では、表面100a,150a及び裏面100b,150bのいずれを観察した場合においても、構造色を観察可能な角度範囲が広くすることができると共に、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。
【0082】
<第3実施形態>
(樹脂成形体)
図10は、第3実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。第3実施形態に係る樹脂成形体(構造発色体)200は、例えば円筒状であり、互いに略平行に対向する表面(第1の主面)200a及び裏面(第2の主面)200bを有している。樹脂成形体200の厚さは、1000μmを超え3000μm以下が好ましい。
【0083】
樹脂成形体200は、表面200a側に配置された表面層(第1の樹脂層)210と、裏面200b側に配置された裏面層(第2の樹脂層)220と、を有している。樹脂成形体200は、裏面層220及び表面層210がこの順に積層されて形成されている。裏面層220は、表面層210に接している。
【0084】
表面層210の厚さは、300〜1000μmが好ましい。裏面層220の厚さは、700〜2000μmが好ましい。
【0085】
表面層210及び裏面層220は、第1実施形態の構成成分と同様の構成成分を含有する高分子フォトニック結晶によって形成されている。表面層210及び裏面層220は、ミクロ相分離構造を有している。表面層210のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン212a及びミクロドメイン212bからなるラメラ状のミクロドメイン212を含んでおり、ミクロドメイン212aとミクロドメイン212bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。裏面層220のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン222a及びミクロドメイン222bからなるラメラ状のミクロドメイン222を含んでおり、ミクロドメイン222aとミクロドメイン222bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。
【0086】
表面層210のミクロドメイン212のそれぞれは、表面200a及び裏面200bの対向方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。ミクロドメイン212のそれぞれは、方向D1に突出する凸部214と、方向D1に凹む凹部216とを方向D1に略垂直な方向に沿って交互に有している。同様に、裏面層220のミクロドメイン222のそれぞれは、方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。ミクロドメイン222のそれぞれは、方向D1に突出する凸部224と、方向D1に凹む凹部226とを方向D1に略垂直な方向に沿って交互に有している。
【0087】
ミクロドメイン212及びミクロドメイン222は、2次元配列又は1次元配列の凹凸を有している。また、各ミクロドメインの波長軸は、表面100a又は裏面100bの少なくとも一方と略平行であることが好ましい。各ミクロドメインは、方向D2及び方向D3に等方的に湾曲した凹凸を有していることが好ましく、凹凸の持続長は、方向D2及び方向D3において長いことが好ましい。
【0088】
表面層210及び裏面層220のミクロドメインのそれぞれにおいて、ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における方向D1の距離は、第1実施形態と同様の波長λ1に基づき調整されている。具体的には、表面層210のミクロドメイン212のそれぞれにおいて、ミクロドメイン212の凸部214の頂部(例えば頂点)214aと凹部216の底部(例えば底点)216aとの間における方向D1の距離d4の最大値は、波長λ1よりも大きい。
【0089】
一方、裏面層220のミクロドメイン222のそれぞれにおいて、ミクロドメイン222の凸部224の頂部(例えば頂点)224aと凹部226の底部(例えば底点)226aとの間における方向D1の距離d5は、いずれも波長λ1以下である。このようなミクロドメイン222は、光学的にフラットな形状を有している。
【0090】
構造発色体の対象波長として波長λ1は、可視光領域の波長(例えば350〜700nm)である。例えば、距離d4の最大値は350nmよりも大きく、距離d5は350nm以下である。波長λ1は、上記波長λ2であることがより好ましい。
【0091】
(樹脂成形体の製造方法)
第3実施形態に係る樹脂成形体200の製造方法は、流動場印加工程が第1実施形態と異なり、その他の工程(溶液調製工程、アニール工程、光重合工程等)については第1実施形態と同様である。
【0092】
第3実施形態に係る樹脂成形体200の製造方法は、例えば、互いに対向する第1部材の主面及び第2部材の主面の間に、ブロック共重合体と、光重合開始剤と、当該ブロック共重合体及び光重合開始剤を可溶な光重合性モノマーとを含有する溶液を介在させた状態で、第1部材の主面又は第2部材の主面の少なくとも一方に略平行な互いに異なる方向に第1部材又は第2部材を上記溶液に対して相対移動させて、ずり流動場を上記溶液に対して印加する流動場印加工程(第1工程)と、流動場印加工程の後、上記溶液に光を照射して光重合性モノマーを重合させ、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有する樹脂成形体(構造発色体)を得る光重合工程(第2工程)と、を備えている。
【0093】
次に、図11を用いて流動場印加工程について説明する。流動場印加工程では、まず、第1実施形態と同様に、互いに略平行に対向する平坦な主面40a,40bを有する板状部材(第1部材)40と、互いに略平行に対向する平坦な主面50a,50bを有する板状部材(第2部材)50とを準備した後に、円形状の開口60aを有する円環状(リング状)のスペーサ60を板状部材40の主面40a上に配置する。次に、開口60a内にポリマー溶液70を展開した後、主面40bの中心点P1及び主面50bの中心点P2がポリマー溶液70の厚さ方向に対向することなく主面40aと主面50aとが互いに略平行に対向するように、ポリマー溶液70上に板状部材50を配置して、主面40a及び主面50aの間にポリマー溶液70を介在させる。続いて、主面40a及び主面50aの間にポリマー溶液70を介在させた状態で、ポリマー溶液70に対してずり流動場を印加する。具体的には、主面40a又は主面50aの少なくとも一方に略平行な複数の方向に板状部材40又は板状部材50をポリマー溶液70に対して相対移動させて、ずり流動場をポリマー溶液70に印加する。例えば、図5に示すように、板状部材40を固定しつつ、主面40bの中心点P1を通過し且つ主面40b,50bに略垂直な基準軸Aの周りに、主面40a,50aに対して略平行に、板状部材50を方向R1に旋回運動させる。なお、板状部材50を固定しつつ板状部材40を旋回運動させてもよい。
【0094】
ポリマー溶液70の表面(板状部材50側の面)に印加された流動場は、ポリマー溶液70の表面から裏面(板状部材40側の面)にポリマー溶液70の厚さ方向に伝搬する。この場合、ポリマー溶液70の表面に印加された流動場の大きさによっては、ポリマー溶液70の厚さ方向に伝搬する流動場の大きさは、ポリマー溶液70の表面から離れるに伴い減衰する。この場合、ポリマー溶液70の表面側の領域に印加される流動場の大きさと、裏面側の領域に印加される流動場の大きさとが異なることとなる。したがって、ずり流動場の印加方向や大きさを調整することにより、ポリマー溶液70の表面側の領域と裏面側の領域とでミクロドメインの形状を異なるように調整することができる。
【0095】
流動場印加工程では、ずり流動場の印加方向や大きさを調整することにより、ポリマー溶液70における表面側の領域に、ポリマー溶液70の厚さ方向におけるミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい表面層210を形成すると共に、ポリマー溶液70における裏面側の領域に、ポリマー溶液70の厚さ方向におけるミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間の距離が可視光領域の波長以下である裏面層220を形成する。
【0096】
ポリマー溶液70にずり流動場を印加して樹脂成形体200を得る方法は、上記の方法に限られるものではなく、上記図6,7に示す方法が挙げられる。第3実施形態において板状部材40,50の運動方法・運動条件は、ポリマー溶液70の厚さに応じて適宜選択されるが、ポリマー溶液70の厚さが1000μmを超え3000μm以下である場合には、以下のように調整されることが好ましい。旋回運動の回転数は、300rpm以上350rpm未満が好ましい。振動運動の振動数は、25s−1以上30s−1未満が好ましい。回転運動の回転数は、170rpm以上200rpm未満が好ましい。ポリマー溶液70の温度は20〜30℃が好ましく、流動場の印加時間は5〜10分が好ましい。
【0097】
<第4実施形態>
(樹脂成形体)
図12は、第4実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。第4実施形態に係る樹脂成形体(構造発色体)250は、裏面層220に代えて裏面層(第2の樹脂層)230を有していることを除き、第3実施形態に係る樹脂成形体200と同様の構成を有している。
【0098】
樹脂成形体250は、例えば円筒状であり、互いに略平行に対向する表面(第1の主面)250a及び裏面(第2の主面)250bを有している。表面250a及び裏面250bの対向方向D1における樹脂成形体250の厚さは、1000μmを超え3000μm以下が好ましい。
【0099】
樹脂成形体250は、裏面層230及び表面層210がこの順に積層されて形成されている。裏面層230は、表面層210に接している。裏面層230の厚さは、700〜2000μmが好ましい。裏面層230は、第1実施形態の構成成分と同様の構成成分を含有する高分子フォトニック結晶によって形成されており、ミクロ相分離構造を有している。
【0100】
裏面層230のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン232a及びミクロドメイン232bからなるラメラ状のミクロドメイン232を含んでおり、ミクロドメイン232aとミクロドメイン232bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。ミクロドメイン232aは、ブロック共重合体のうちの一のポリマー鎖を主成分として含んでおり、ミクロドメイン232bは、ブロック共重合体のうちの他のポリマー鎖を主成分として含んでいる。裏面層230のミクロドメイン232のそれぞれは、表面250a又は裏面250bの少なくとも一方に対して略平行に配向した平板状である。
【0101】
(樹脂成形体の製造方法)
第4実施形態に係る樹脂成形体250の製造方法は、流動場印加工程が第3実施形態と異なり、その他の工程(溶液調製工程、アニール工程、光重合工程等)については第1実施形態と同様である。
【0102】
第4実施形態における流動場印加工程は、ずり流動場の大きさが第3実施形態と異なる。第4実施形態では、ポリマー溶液70の厚さ方向のずり流動場の大きさを第3実施形態よりも小さくすることで、ポリマー溶液70における裏面側の領域に対してポリマー溶液70の厚さ方向に印加される流動場の大きさが小さくなり易い。これにより、ポリマー溶液70における裏面側の領域に、板状部材40の主面40a又は板状部材50の主面50aの少なくとも一方に対して略平行に配向した平板状のミクロドメインを含む裏面層230を形成することができる。
【0103】
第4実施形態において板状部材40,50の運動方法・運動条件は、ポリマー溶液70の厚さに応じて適宜選択されるが、ポリマー溶液70の厚さが1000μmを超え3000μm以下である場合には、以下のように調整されることが好ましい。旋回運動の回転数は、200rpm以上300rpm未満が好ましい。振動運動の振動数は、20s−1以上25s−1未満が好ましい。回転運動の回転数は、150rpm以上170rpm未満が好ましい。ポリマー溶液70の温度は20〜30℃が好ましく、流動場の印加時間は5〜10分が好ましい。
【0104】
樹脂成形体200,250では、表面層210におけるミクロドメイン212のそれぞれが方向D1に振幅を有する波状であり、ミクロドメイン212のそれぞれにおいて、凸部214の頂部214aと凹部216の底部216aとの間における方向D1の距離d4の最大値が可視光領域の波長よりも大きい。この場合、方向D1に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体200,250の主面に入射する場合であっても、光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に光の入射方向に対して傾斜した領域が表面層210のミクロドメイン212に存在し易いことから、当該領域において光を反射することができる。したがって、樹脂成形体200,250では、方向D1に対して傾斜した方向から可視光領域の光が樹脂成形体200,250の主面に入射する場合であっても、表面層210において反射された光を構造色として観察することができるため、構造色を観察可能な角度範囲を広くすることができる。
【0105】
さらに、樹脂成形体200では、裏面層220におけるミクロドメイン222のそれぞれが方向D1に振幅を有する波状であり、裏面層220のミクロドメイン222のそれぞれにおいて、ミクロドメイン222の凸部224の頂部224aと凹部226の底部226aとの間における方向D1の距離d5が可視光領域の波長以下である。この場合、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、表面層210に比して裏面層220に存在し難い。このような裏面層220では、方向D1に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、表面層210に比して、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。
【0106】
また、樹脂成形体250では、裏面層230におけるミクロドメイン232のそれぞれが表面250a又は裏面250bの少なくとも一方に対して略平行に配向している。この場合、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に当該光の入射方向に対して傾斜した領域が、表面層210に比して裏面層230に存在し難い。このような裏面層230では、方向D1に入射する可視光領域の光を反射し易いものの、表面層210に比して、方向D1に対して傾斜した方向から入射する可視光領域の光を反射し難い。
【0107】
このような樹脂成形体200,250では、方向D1から樹脂成形体200,250の主面を観察した場合に、表面層210で反射された光と共に、裏面層220又は裏面層230で反射された光を観察し易いのに対し、方向D1に対して傾斜した方向から樹脂成形体200,250の主面を観察した場合には、表面層210で反射された光は観察され易いものの、裏面層220又は裏面層230で反射された光を観察し難い。そのため、樹脂成形体200,250では、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。また、樹脂成形体200,250では、表面200a,250a及び裏面200b,250bのいずれを観察した場合においても、構造色を観察可能な角度範囲が広くすることができると共に、観察角度に応じた多様な構造色を観察することができる。
【0108】
<第5実施形態>
(樹脂成形体)
図13は、第5実施形態に係る樹脂成形体を示す模式断面図である。第5実施形態に係る樹脂成形体(構造発色体)300は、例えば円筒状であり、互いに略平行に対向する表面(第1の主面)300a及び裏面(第2の主面)300bを有している。樹脂成形体300の全体は、樹脂層310からなり、樹脂成形体300の厚さ(樹脂層310の厚さ)は、1000μmを超え3000μm以下が好ましい。
【0109】
樹脂層310は、第1実施形態の構成成分と同様の構成成分を含有する高分子フォトニック結晶によって形成されている。樹脂層310は、ミクロ相分離構造を有している。樹脂層310のミクロ相分離構造は、ミクロドメイン312a及びミクロドメイン312bからなるラメラ状のミクロドメイン312を含んでおり、ミクロドメイン312aとミクロドメイン312bとが交互に積層されて形成された屈折率周期構造である。
【0110】
樹脂層310のミクロドメイン312のそれぞれは、表面300a及び裏面300bの対向方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。ミクロドメイン312のそれぞれは、方向D1に突出する凸部314と、方向D1に凹む凹部316とを方向D1に略垂直な方向に沿って交互に有している。
【0111】
ミクロドメイン312は、第1実施形態と同様に2次元配列又は1次元配列の凹凸を有している。また、各ミクロドメインの波長軸は、表面300a又は裏面300bの少なくとも一方と略平行であることが好ましい。各ミクロドメインは、方向D2及び方向D3に等方的に湾曲した凹凸を有していることが好ましく、凹凸の持続長は、方向D2及び方向D3において長いことが好ましい。
【0112】
樹脂層310のミクロドメインのそれぞれにおいて、ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における方向D1の距離d5は、第1実施形態と同様の波長λ1に基づき調整されている。具体的には、樹脂層310のミクロドメイン312のそれぞれにおいて、ミクロドメイン312の凸部314の頂部(例えば頂点)314aと凹部316の底部(例えば底点)316aとの間における方向D1の距離d6の最大値は、波長λ1よりも大きい。構造発色体の対象波長として波長λ1は、可視光領域の波長(例えば350〜700nm)である。例えば、距離d6の最大値は350nmよりも大きい。波長λ1は、上記波長λ2であることがより好ましい。
【0113】
(樹脂成形体の製造方法)
第5実施形態に係る樹脂成形体300の製造方法は、流動場印加工程が第3実施形態と異なり、その他の工程(溶液調製工程、アニール工程、光重合工程等)については第1実施形態と同様である。
【0114】
第5実施形態における流動場印加工程は、ずり流動場の大きさが第1実施形態と異なる。第5実施形態では、ポリマー溶液70の厚さ方向のずり流動場の大きさを第1実施形態よりも大きくすることで、ポリマー溶液70の全体に亘って一定以上の流動場が印加されるように調整する。すなわち、流動場印加工程では、ずり流動場の印加方向や大きさを調整することにより、ポリマー溶液70の全体において、ポリマー溶液70の厚さ方向におけるミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい樹脂層310を形成する。
【0115】
第5実施形態において板状部材40,50の運動方法・運動条件は、ポリマー溶液70の厚さに応じて適宜選択されるが、ポリマー溶液70の厚さが1000μmを超え3000μm以下である場合には、以下のように調整されることが好ましい。旋回運動の回転数は、350〜400rpmが好ましい。振動運動の振動数は、30〜35s−1好ましい。回転運動の回転数は、200〜250rpmが好ましい。ポリマー溶液70の温度は20〜30℃が好ましく、流動場の印加時間は5〜10分が好ましい。
【0116】
樹脂成形体300では、ミクロドメイン312のそれぞれが方向D1に振幅を有する波状であり、ミクロドメイン312のそれぞれにおいて、凸部314の頂部314aと凹部316の底部316aとの間における方向D1の距離d6の最大値が可視光領域の波長よりも大きい。この場合、方向D1に対して傾斜した方向から可視光領域の光が表面300aや裏面300bに入射する場合であっても、光の入射方向に垂直な領域や、ブラッグの反射条件を満たす程度に光の入射方向に対して傾斜した領域が樹脂層310のミクロドメイン312に存在し易いことから、当該領域において光を反射することができる。したがって、樹脂成形体300では、方向D1に対して傾斜した方向から可視光領域の光が表面300aや裏面300bに入射する場合であっても、樹脂層310において反射された光を構造色として観察することができるため、構造色を観察可能な角度範囲を広くすることができる。
【0117】
また、樹脂成形体300では、方向D1から表面300aや裏面300bを観察する場合と、方向D1に対して傾斜した方向から表面300aや裏面300bを観察する場合とにおいて、観察方向に対して垂直となる領域が樹脂層310のミクロドメイン312に存在し易いことから、観察角度に関わらず均一な構造色を観察することもできる。
【0118】
本発明は上述の実施形態に限られず、様々な変形態様が可能である。例えば、樹脂成形体150において中間層140は、表面層110及び裏面層120に接しているが、表面層110及び中間層140の間に中間層A(第4の樹脂層)が更に配置されていてもよく、裏面層120及び中間層140の間に中間層B(第5の樹脂層)が更に配置されていてもよい。中間層Aは、表面層110及び中間層140に接しており、中間層Bは、裏面層120及び中間層140に接している。中間層A,Bは、第1実施形態の構成成分と同様の構成成分を含有する高分子フォトニック結晶によって形成されており、ミクロ相分離構造を有している。中間層A,Bのミクロ相分離構造は、ラメラ状のミクロドメインを含んでおり、当該ミクロドメインのそれぞれは、方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。中間層130と同様に、中間層A,Bのミクロドメインのそれぞれにおいて、ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における方向D1の距離は、いずれも波長λ1以下である。このような中間層A,Bは、板状部材40,50の運動方法・運動条件を調節し、ポリマー溶液70の厚さ方向のずり流動場の大きさを調整することにより得ることができる。
【0119】
また、樹脂成形体250において裏面層230は、表面層210に接しているが、表面層210及び裏面層230の間に中間層C(第3の樹脂層)が更に配置されていてもよい。中間層Cは、表面層210及び裏面層230に接している。中間層Cは、第1実施形態の構成成分と同様の構成成分を含有する高分子フォトニック結晶によって形成されており、ミクロ相分離構造を有している。中間層Cのミクロ相分離構造は、ラメラ状のミクロドメインを含んでおり、当該ミクロドメインのそれぞれは、方向D1に振幅を有する波状(凹凸形状)である。裏面層220と同様に、中間層Cのミクロドメインのそれぞれにおいて、ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における方向D1の距離は、いずれも波長λ1以下である。このような中間層Cは、板状部材40,50の運動方法・運動条件を調節し、ポリマー溶液70の厚さ方向のずり流動場の大きさを調整することにより得ることができる。
【0120】
さらに、樹脂成形体の形状は、互いに対向する主面を有する形状を有していればよく、主面が互いに略平行に対向していることに限られない。樹脂成形体の形状は、円筒状であることに限られず、直方体状、立方体状、楕円体状、球状等であってもよく、カップ状、皿状、トレー状であってもよい。また、板状部材40,50、及び、スペーサ60の開口60aは円形状であることに限られるものではなく、例えば矩形状であってもよい。
【0121】
さらに、上述の実施形態では、互いに対向する2つの板状部材40,50を用いているが、3つ以上の板状部材を用いてポリマー溶液70にずり流動場を印加してもよい。例えば、ポリマー溶液の上に板状部材を2つ配置し、それぞれの板状部材を動かしてポリマー溶液70にずり流動場を印加してもよい。
【0122】
また、樹脂成形体100,150,200,250,300の作製方法は上記に限られるものではなく、成形用金型に充填されたポリマー溶液にずり流動場を印加してもよい。
【符号の説明】
【0123】
100,150,200,250,300…樹脂成形体、100a,150a,200a,250a,300a…表面(第1の主面)、100b,150b,200b,250b,300b…裏面(第2の主面)、110…表面層、120…裏面層、130,140…中間層、210…表面層、220,230…裏面層、310…樹脂層、112,122,132,142,212,222,232,312…ミクロドメイン、114,124,134,214,224,314…凸部、114a,124a,134a,214a,224a,314a…凸部の頂部、116,126,136,216,226,316…凹部、116a,126a,136a,216a,226a,316a…凹部の底部、D1…方向(主面の対向方向)、d1,d2,d3,d4,d5…距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1の主面及び第2の主面を有する樹脂成形体であって、
前記樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第1の樹脂層を有し、
前記第1の樹脂層が、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、
前記第1の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれが、前記第1の主面及び前記第2の主面の対向方向に振幅を有する波状であり、
前記第1の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における前記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きい、樹脂成形体。
【請求項2】
前記樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層及び第3の樹脂層を更に有し、
前記第1の樹脂層が、前記第1の主面側に配置されており、
前記第2の樹脂層が、前記第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、
前記第3の樹脂層が、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の間に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、
前記第2の樹脂層及び前記第3の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれが、前記対向方向に振幅を有する波状であり、
前記第2の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における前記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きく、
前記第3の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における前記対向方向の距離が可視光領域の波長以下である、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
前記樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層及び第3の樹脂層を更に有し、
前記第1の樹脂層が、前記第1の主面側に配置されており、
前記第2の樹脂層が、前記第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、
前記第3の樹脂層が、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の間に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、
前記第2の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれが、前記対向方向に振幅を有する波状であり、
前記第2の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における前記対向方向の距離の最大値が可視光領域の波長よりも大きく、
前記第3の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれが、前記第1の主面又は前記第2の主面の少なくとも一方に対して略平行に配向している、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層を更に有し、
前記第1の樹脂層が、前記第1の主面側に配置されており、
前記第2の樹脂層が、前記第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、
前記第2の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれが、前記対向方向に振幅を有する波状であり、
前記第2の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれにおいて、当該ミクロドメインの凸部の頂部と凹部の底部との間における前記対向方向の距離が可視光領域の波長以下である、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記樹脂成形体が、ブロック共重合体を含有する第2の樹脂層を更に有し、
前記第1の樹脂層が、前記第1の主面側に配置されており、
前記第2の樹脂層が、前記第2の主面側に配置されていると共に、ラメラ状のミクロドメインを含むミクロ相分離構造を有し、
前記第2の樹脂層の前記ミクロドメインのそれぞれが、前記第1の主面又は前記第2の主面の少なくとも一方に対して略平行に配向している、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記樹脂成形体が前記第1の樹脂層からなる、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項7】
前記樹脂成形体における前記対向方向の厚さが1000μmを超え3000μm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂成形体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−10315(P2013−10315A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145586(P2011−145586)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】