説明

樹脂成形品の成形方法

【課題】樹脂成形品を金型を用いて成形する際に、硬化収縮性を有する樹脂組成物であっても、硬化収縮により発生する表面ヒケを防止するとともに、金型からの脱型が良好な樹脂成形品の成形方法を提供すること。
【解決手段】金型を用いて成形する樹脂成形品の成形方法であって、樹脂成分100質量部に対して0.05〜0.8質量部のシランカップリング剤を、樹脂成分と直接混合することにより配合した樹脂組成物を金型に供給して成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品表面のヒケを防止する樹脂成形品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物を加熱した金型内に注型して成形する樹脂成形品の成形方法では、硬化収縮により樹脂成型品の表面が部分的に凹むヒケが生じることがある。
【0003】
特に肉厚の樹脂成形品や断面形状が複雑な樹脂成形品を成形する場合には、ヒケの発生によって樹脂成形品表面が平滑とならず、美観が損なわれるという問題があった。
【0004】
そこで、ヒケの発生を防止する手段として、樹脂組成物の成分に特定の無機充填材を配合して、樹脂成形品自体の硬化収縮を抑えることにより、ヒケの発生を防止するものが提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−277451号公報
【特許文献2】特開2006−328291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら従来の提案によれば、樹脂成形品自体の硬化収縮を抑制することにより、ヒケの発生をある程度防止することは可能であるが、樹脂成分の汎用性が少なかったり、無機充填材の高充填により樹脂組成物の粘度が高くなり金型からの脱型に支障をきたすことがあるといった問題があった。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、樹脂成形品を金型を用いて成形する際に、硬化収縮性を有する樹脂組成物であっても、硬化収縮により発生するヒケを防止するとともに、金型からの脱型が良好な樹脂成形品の成形方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0009】
即ち、本発明の樹脂成形品の成形方法は、金型を用いて成形する樹脂成形品の成形方法であって、樹脂成分100質量部に対して0.05〜0.8質量部のシランカップリング剤を、樹脂成分と直接混合することにより配合した樹脂組成物を金型に供給して成形することを特徴とする。
【0010】
この樹脂成形品の成形方法において、シランカップリング剤が、金型の材質と反応する官能基を3個有することが好ましい。
【0011】
さらに、前記樹脂成形品の成形方法において、成形時の金型温度が80℃以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂成形品の成形方法によれば、樹脂成形品を金型を用いて成形する際に、硬化収縮により発生する樹脂組成物表面のヒケを防止するとともに、金型からの脱型を良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂成形品の成形方法について詳細に説明する。
【0014】
本発明の樹脂成形品の成形方法で用いられる樹脂組成物の樹脂成分としては、金型(金属製の型)による成形において硬化収縮性を有する樹脂成分であれば、特に制限なく用いることができ、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれの樹脂成分であってもよい。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂等を挙げることができ、熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0016】
また、これらの樹脂成分のうち、硬化剤を用いて硬化させるものに対しては樹脂成分に対応する硬化剤を適宜配合することができる。
【0017】
これらの樹脂成分に対応する硬化剤としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂に対しては、有機過酸化物硬化剤としてケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類等の硬化剤を挙げることができる。
【0018】
また、エポキシ樹脂に対応する硬化剤としては、アミン系硬化剤、ポリアミド樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等を挙げることができる。
【0019】
本発明の樹脂成形品の成形方法では、必要に応じて無機充填材を配合することができる。これらのものとしては、例えば水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、ガラス繊維、硅砂、タルク等を挙げることができ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
本発明の樹脂成形品の成形方法で用いられる樹脂組成物に配合するシランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0021】
また、本発明においては、上記のシランカップリング剤の中でも、特に金型の材質と反応する官能基を有するものが好ましく、これらの官能基としてはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等を挙げることができる。
【0022】
さらに上記のシランカップリング剤の中でも、特に金型の材質と反応する官能基が3個のものがより好ましい。官能基が3個であると、金型と樹脂組成物の適度なカップリング効果を得ることができる。
【0023】
シランカップリング剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対して0.05〜0.8質量部の範囲である。この範囲であれば、適度なカップリング効果により樹脂成形品表面のヒケの発生を防止することができるとともに、金型からの良好な脱型を行うことが可能となる。
【0024】
本発明の樹脂成形品の成形方法は、樹脂成分に対して、金型の材質と反応する官能基を有するシランカップリング剤を配合することにより、硬化時に金型中の樹脂組成物と金型がシランカップリング剤の適度なカップリング効果により密着し、ヒケの発生を防止することができるものである。
【0025】
即ち、本発明で用いるシランカップリング剤は、通常の樹脂組成物に配合するシランカップリング剤の配合目的である、樹脂成分と無機充填材とのカップリング効果を目的とするものではなく、樹脂組成物と金型とのカップリング効果を目的とするものである。
【0026】
従って、本発明で用いるシランカップリング剤については、配合する無機充填材とは反応しないものが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂成形品の成形方法における、樹脂成形品の成形時の金型温度は、用いる樹脂組成物に応じて適宜設定することが可能であるが、通常80℃以上、好ましくは80〜150℃の範囲である。
【0028】
金型温度をこの範囲に設定することにより、樹脂組成物中のシランカップリング剤と金型の適切なカップリング効果を得ることができる。
【0029】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0030】
<実施例1>
樹脂成分として、不飽和ポリエステル樹脂(昭和高分子式会社製、リゴラックス158BQT)100質量部に対し、シランカップリング剤:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−603(メトキシ基3個))0.07質量部、炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製、SS#30)90質量部を混合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0031】
その不飽和ポリエステル樹脂組成物に対し、硬化剤:アルキルパーエステル(化薬アクゾ株式会社製、トリゴノックス121−50E(分解温度:10時間半減期温度70℃))1.0質量部を配合した不飽和ポリエステル樹脂組成物を、樹脂成形品の厚みが7mm、金型温度を上型100℃、下型120℃とした平板形状をした金型内に流し込み、1時間加熱することで樹脂成形品を得た。
<実施例2>
シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM−603)を0.6質量部にした以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を得た。
<実施例3>
シランカップリング剤を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503(メトキシ基3個))にした以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を得た。
<実施例4>
シランカップリング剤をN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−602(メトキシ基2個))にした以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を得た。
<比較例1>
シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM−603)を0.03質量部にした以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を得た。
<比較例2>
シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、KBM−603)を1.0質量部にした以外は実施例1と同様にして樹脂成形品を得た。
【0032】
作成した樹脂成形品について、外観及び金型からの脱型について下記評価基準により評価した。なお外観の評価は目視により行った。
樹脂成形品表面にヒケがなく、金型からの脱型が良好:○
樹脂成形品表面に一部ヒケがあるが、金型からの脱型が良好:△
樹脂成形品表面にヒケが多数あるか、金型からの脱型が不良:×
以上の結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
評価結果から、本発明の樹脂成形品の成形方法の条件である、シランカップリング剤を樹脂成分に対して0.05〜0.8質量部配合した実施例1〜3については、この範囲から外れた比較例1、2と比較して樹脂成形品表面のヒケがなく、金型からの脱型が良好であることが確認された。
【0035】
なお、実施例4ではヒケの評価は中位評価(△)の「一部ヒケがある」との結果を示しているが、これは樹脂成形品として十分に実用的に有意である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて成形する樹脂成形品の成形方法であって、樹脂成分100質量部に対して0.05〜0.8質量部のシランカップリング剤を、樹脂成分と直接混合することにより配合した樹脂組成物を金型に供給して成形することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
シランカップリング剤が、金型の材質と反応する官能基を3個有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
成形時の金型温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。

【公開番号】特開2013−86474(P2013−86474A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231988(P2011−231988)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】