説明

樹脂成形品の製造方法および有機系廃材の再利用方法

【課題】有機系廃材を有効利用し、寸法安定性や機械的強度などの品質が安定した樹脂成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】充填材と樹脂とを混合し、成形する樹脂成形品の製造方法であって、以下の工程を含む。
(1)有機系廃材を加熱して炭化物を得る工程
(2)前記炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得る工程
(3)前記充填材と樹脂とを混合し、成形する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法および有機系廃材の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンクリート壁の内層構造に利用可能な炭化物成形多孔質ボードが記載されている。この炭化物成形多孔質ボードは、炭化物を石油化学系高分子などの樹脂製バインダーを併用して板状に成形している。そして、炭化物成形多孔質ボードを構成する炭化物には、各種の有機系廃材、例えば、間伐材、木工廃材、剪定枝葉などから製造された粉粒状または繊維状(両者を混合したものを含む)炭化物が使用されており、有機系廃材が有効に再利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−207557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された炭化物成形多孔質ボードでは、各種の有機系廃材に由来する様々な形状、大きさの炭化物が混在した状態で使用されている。このため、このような炭化物を樹脂とともに成形すると、成形後の炭化物成形多孔質ボードの寸法安定性や機械的強度にバラツキが生じるため、成形品の品質安定性を確保することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、有機系廃材を有効利用し、寸法安定性や機械的強度などの品質が安定した樹脂成形品の製造方法を提供することを課題としている。また、新しい有機系廃材の再利用方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の樹脂成形品の製造方法は、充填材と樹脂とを混合し、成形する樹脂成形品の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴としている。
(1)有機系廃材を加熱して炭化物を得る工程
(2)前記炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得る工程
(3)前記充填材と樹脂とを混合し、成形する工程
【0007】
この樹脂成形品の製造方法では、前記工程(2)における前記充填材の粒径が、100μm〜1mmであることが好ましい。
【0008】
この樹脂成形品の製造方法では、前記工程(1)において、前記有機系廃材を700℃〜900℃で加熱することが好ましい。
【0009】
本発明の有機系廃材の再利用方法は、有機系廃材を樹脂成形品用の充填材として再利用する有機系廃材の再利用方法であって、前記有機系廃材を加熱して得た炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得て、この充填材と樹脂とを混合し、成形して樹脂成型品を得ることによって、前記有機系廃材を再利用することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂成形品の製造方法および有機系廃材の再利用方法によれば、有機系廃材を有効利用することができるとともに、寸法安定性や機械的強度などの物性が安定した樹脂成形品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、以下の工程、(1)有機系廃材を加熱して炭化物を得る工程、(2)前記炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得る工程、(3)前記充填材と樹脂とを混合し、成形する工程を含む。
【0012】
以下、各工程について説明する。
【0013】
工程(1)では、有機系廃材を加熱して炭化物を得る。
【0014】
有機系廃材は、例えば、MDF(Medium Density Fiberboard)やパーティクルボードなどの建材の加工時に生じる切り屑や端材、間伐材、剪定枝葉などの木質系廃材、籾殻などの農業用廃材などのうちの1種または2種以上を適宜使用することができる。また、例えば、木質系廃材では、接着剤や塗料、樹脂シートなどが付着しているものも適宜使用することができる。
【0015】
このような有機系廃材を、例えば、熱風乾燥機やロータリーキルンなどの焼却窯に投入して加熱することで炭化させ、残渣としての炭化物を得ることができる。この炭化物は、粉砕が容易な状態にまで脱水、炭化されていることが望ましい。
【0016】
有機系廃材を炭化させるための加熱における酸素濃度、加熱温度、加熱時間などの条件は、材料となる有機系廃材の種類、量などに応じて適宜設定することができる。具体的には、有機系廃材を確実に炭化させ、炭化物の物性のバラツキを抑制するためには、例えば加熱温度は、700℃以上が好ましく、700℃〜900℃程度がより好ましい。
【0017】
有機系廃材を炭化させることで、材料として様々な種類の有機系廃材が混在している場合にも、機械的強度などの物性が略均一な炭化物を得ることができる。具体的には、例えば、木質系廃材に接着剤、塗料、樹脂シートなどの付着物が存在する場合にも、これらの付着物は炭化物となるか、あるいは一部が排ガスとして排出されるなどする。このため、結果として得られる炭化物の物性を略均一なものとすることができる。
【0018】
工程(2)では、前記工程(1)で得た炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得る。
【0019】
工程(1)で得た炭化物は物性が略均一であるものの、形状、大きさ(粒径)などが異なるものが混在している。工程(2)では、工程(1)で得た炭化物を、例えば粉砕羽根(スクリュー)を備えた粉砕機などに投入し、粉砕羽根(スクリュー)を高速回転させることで所定の粒径を有する粉粒状に粉砕することができる。所定の粒径に粉砕した炭化物は、樹脂成形品の充填材として使用される。
【0020】
ここで、「所定の粒径に粉砕する」とは、充填材(炭化物)が略均一な大きさの粒径を有するものとなるように粉砕することをいう。具体的には、例えば、充填材の粒径が、100μm〜1mmの範囲に粉砕することが好ましく、この範囲内で略均一な大きさの粒径に粉砕することが特に好ましい。
【0021】
工程(3)では、前記工程(2)で得た充填材と樹脂とを混合し、成形する。
【0022】
樹脂は、公知の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を適宜使用することができる。熱可塑性樹としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのα−オレフィン系樹脂、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂などのアクリル系樹脂などを1種または2種以上使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などを1種または2種以上使用することができる。
【0023】
充填材と樹脂との混合は、例えば、成形機の中に充填材と樹脂とを投入して行うことができる。充填材の配合量は、製造する樹脂成形品の性状に応じて適宜設計することができる。一応の目安としては、例えば、樹脂成形品の全量に対し、20〜80重量%程度配合することができる。
【0024】
充填材と樹脂との混合物の成形は、例えば、射出成形や押出成形などの方法によって行うことができる。
【0025】
具体的には、樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合には、例えば、まず、所定の量に調整した充填材と熱可塑性樹脂とを含む材料を成形機のホッパーから投入する。そして、成形機内で、熱可塑性樹脂が溶融状態となるように一定温度で加熱し、スクリューなどで撹拌することで混練物を得る。混練時の温度の目安としては、例えば、100℃〜250℃の範囲を例示することができる。そして、この混練物をシリンダーから金型内へ圧入し、冷却固化させて樹脂成形品を得ることができる。また、サイジング装置などを使用して適宜、所定の形状に加工することもできる。
【0026】
一方、樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合には、例えば、充填材と熱硬化性樹脂とを含む材料を成形機のホッパーから投入し、常温を保ち熱硬化性樹脂の流動性を維持しながら、スクリューなどで撹拌することで混練物を得る。そして、この混練物をシリンダーから金型内へ圧入し、熱硬化性樹脂が硬化状態となる温度で加熱することで樹脂成形品を得ることができる。
【0027】
本発明の樹脂成形品の製造方法では、有機系廃材に由来する炭化物としての充填材は、所定の粒径を有し、物性が略均一となっている。このため、充填材と樹脂とを混合し成形した場合にも、寸法安定性や機械的強度などの品質が安定した樹脂成形品を製造することができる。このような樹脂成形品は、例えば、住宅などの建物の壁や床などの内装建材として広く利用することができる。
【0028】
また、本発明の有機系廃材の再利用方法は、有機系廃材を樹脂成形品用の充填材として再利用する。具体的には、樹脂成形品の製造方法と同様に、有機系廃材を加熱して得た炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得て、この充填材と樹脂とを混合し、成形して樹脂成型品を得ることによって、有機系廃材を再利用する。
【0029】
本発明の有機系廃材の再利用方法では、有機系廃材から得た充填材は所定の粒径を有し、物性が略均一となっているため、寸法安定性や機械的強度などの品質が安定した樹脂成形品を得ることができ、有機系廃材を有効利用することができる。
【0030】
さらに、本発明の樹脂成形品の製造方法および有機系廃材の再利用方法においては、有機系廃材の炭化物を所定の粒径に粉砕して得た充填材に加え、その他の公知の充填材や安定剤などを適宜配合することもできる。
【0031】
その他の充填材としては、例えば、水酸化アルミニウム、エトリンガイト、硅砂、ホウ砂、アルミナ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化マグネシウム、マイカ、フライアッシュ、ケイ酸カルシウム、雲母、二酸化モリブデン、滑石、ガラス繊維、ガラスビーズ、酸化チタン、アスベスト、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、クレイ、ドロマイト、ケイ酸カルシウム、カルシウム・アルミネート水和物、鉄粉などの金属粉などのうちの1種または2種以上を配合することもできる。
【0032】
安定剤としては、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができる。これらを配合することで、樹脂成形品の機械的強度、成形性、耐熱性および耐久性などを向上させることができる。
【0033】
本発明の樹脂成形品の製造方法および有機系廃材の再利用方法は、以上の実施形態に限定されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材と樹脂とを混合し、成形する樹脂成形品の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
(1)有機系廃材を加熱して炭化物を得る工程
(2)前記炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得る工程
(3)前記充填材と樹脂とを混合し、成形する工程
【請求項2】
前記工程(2)における前記充填材の粒径が、100μm〜1mmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)において、前記有機系廃材を700℃〜900℃で加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
有機系廃材を樹脂成形品用の充填材として再利用する有機系廃材の再利用方法であって、前記有機系廃材を加熱して得た炭化物を所定の粒径に粉砕して充填材を得て、この充填材と樹脂とを混合し、成形して樹脂成型品を得ることによって、前記有機系廃材を再利用することを特徴とする有機系廃材の再利用方法。

【公開番号】特開2013−86312(P2013−86312A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227393(P2011−227393)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】