説明

樹脂成形品

【課題】耐磨耗性、耐候性に優れる表面保護層を有する可撓性のある樹脂成形品を、インモールド成形により得ること。
【解決手段】可撓性を有する樹脂基材3と、樹脂基材3の少なくとも表面の保護層2と、を有する樹脂成形品1であって、保護層2の構成要素として、脂環族イソシアネートとエステル系ポリオールと水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物とを必須成分とするウレタンアクリレート、及び光重合開始剤を含み、インモールド成形により、樹脂基材3に対して保護層2を積層させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性のある樹脂の表面に表面保護層を施した樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂性の基材上に印刷層を施し、表面を保護する表面保護層を有する樹脂成形品がある。樹脂成形品を成形するにあたり、インモールド成形は効率がよい。このため、前記樹脂製の基材の表面を保護するための表面保護層として紫外線硬化型の樹脂が用いられ、インモールド成形した成形品がある(例えば、特許文献1参照)。当該成形品の表面保護層(ハードコート層)のように、紫外線硬化型の樹脂にて構成された表面保護層は、一般的に硬く、耐磨耗性、耐候性に優れるものである。
【0003】
【特許文献1】特開平11−321478
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、前記樹脂性の基材として可撓性のある樹脂も用いられるようになった。前記基材の可撓性を活かすためには、当該基材を保護する表面保護層にも可撓性が必要とされる。しかしながら、従来のインモールド成形による成形品の表面保護層は、硬い樹脂で構成されている。このため、前記基材の可撓性が活かせなかった。また、無理に前記基材を撓ませると、従来の表面保護層は硬い樹脂であるため撓みにくく、前記基材と前記表面保護層の間にある印刷層に歪みが生じ、当該印刷層が割れるおそれがあった。
【0005】
一方、前記表面保護層を樹脂を薄く配設し、当該樹脂の下に印刷を施すことで、前記基材を撓ませることも考えられる。しかしながら、従来の樹脂を薄く構成するのみであると表面強度が弱くなるため、耐磨耗性、耐候性が低くなり、十分に基材を保護することができない。このため、成形品が実用性に優れないという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、耐磨耗性、耐候性に優れる表面保護層を有する可撓性のある樹脂成形品を、インモールド成形により得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の樹脂成形品の第1構成は、可撓性を有する樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも表面の保護層と、を有する樹脂成形品であって、前記保護層の構成要素として、脂環族イソシアネートとエステル系ポリオールと水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物とを必須成分とするウレタンアクリレート、及び光重合開始剤を含み、インモールド成形により、前記樹脂基材に対して前記保護層を積層させたことを特徴とする。
【0008】
また、樹脂成形品の第2構成は、第1構成の樹脂成形品であって、前記エステル系ポリオールは、水酸基として3官能以上のポリカプロラクトンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
前記第1構成によれば、前記保護層が可撓性を有する構成となる。このため、前記樹脂基材に可撓性を有する材質のものを用いても、前記樹脂基材の撓みに合わせて前記保護層が撓む。このため、前記保護層と前記樹脂基材との間に歪みが生じることはなく、前記保護層と前記樹脂基材との間に印刷層がある場合でも当該印刷層が割れることがない。
【0010】
また、樹脂成形品は、前記保護層と前記樹脂基材とはフィルム状に一体的になって射出され、インモールド成形によって成形される。このため、樹脂基材に保護層を二次加工にて貼り付ける構造と比べて、手間がかからず、生産性がよい。
【0011】
また、前記保護層は、光重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂であるので、耐磨耗性、耐候性を有する。このため、可撓性のある樹脂基材の少なくとも表面を十分に保護することができる。
【0012】
前記第2構成によれば、前記エステル系ポリオールは、水酸基として3官能以上のポリカプロラクトンを使用することにより、耐磨耗性、耐候性を維持したまま、可撓性にも優れる構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面を用いて説明する。説明においては、樹脂成形品の概略、保護層の詳細説明、本実施形態に係る樹脂成形品の実施例、の順で説明する。
【0014】
〔樹脂成形品の概略〕
図1を用いて、樹脂成形品1の説明をする。図1は本実施形態の樹脂成形品1の断面図である。
【0015】
図1(a)に示すように、本実施形態の樹脂成形品1は、可撓性の樹脂基材3の表面に保護層2を有する。保護層2は、耐候性、耐磨耗性に優れる構成であるため、樹脂基材3は、その表面を保護層2によって保護される。尚、保護層は、樹脂基材3の表面のみならず、裏面にもあってもよい。つまり、図1(b)に示すように、表面から、保護層2、樹脂基材3、保護層4の順で積層されてもよい。保護層2、4の構成については、後に詳述する。
【0016】
可撓性のある樹脂基材3としては、TPE樹脂(Thermoplastic Elastomer:熱可塑性エラストマー)が好適である。TPE樹脂は、ゴムのように軟らかく、プラスチックのように加工性に優れる。また、リサイクルが容易なため、環境負荷も少なく、様々な製品に利用される。
【0017】
TPE樹脂としては、ポリエステル系(TPEE)、ウレタン系(TPU)、オレフィン系(TPO)、スチレン系(TPS)、アミド系(TPEA)、塩化ビニル系(TPVC)等を使用することができる。また、上述のTPE樹脂と熱可塑性プラスチックとを混合してもよく、上述のTPE樹脂とEPDM等のゴムとを混合して樹脂改質をして使用してもよい。TPE樹脂は、実施する製品の用途に応じて、構成を変更し選択することができる。
【0018】
尚、樹脂基材としては、TPE樹脂に限るものではない。即ち、可撓性のある樹脂材料であればよく、TPE樹脂以外の樹脂としてもよい。
【0019】
樹脂成形品1を成形する場合には、型内に設置された保護層2、4に対して樹脂基材3の材料となる樹脂を流し込み、インモールド成形により形成する。すると、図1のように、樹脂基材3に対して保護層2、4が積層される状態になる。ここで、インモールド成形とは、印刷を施したフィルムを射出成形金型の内部に挿入して、成形時にフィルムと容器を一体成形する方法である。インモールド成形をすると、装飾性に優れ、強度があり、フィルムの選択により機能性を付与することができる。また、成形された樹脂基材3に対して、保護層2、4を二次加工によって貼り付ける方法と比較して、労力を大幅に軽減することができる。
【0020】
〔保護層の詳細な説明〕
図2を用いて、保護層の詳細な説明をする。図2は、樹脂成形品1の保護層2の拡大断面図である。
【0021】
図2に示すように、保護層2は多層に構成され、インモールド成形によって樹脂基材3と一体化し、樹脂成形品1となる。保護層2の層は、図2に示すように、表面から、特殊保護層13、アンカーコート14、印刷層15、アンカーコート16、接着層17、のように積層される。そして接着層17が樹脂基材3の表面に接着してフィルムを構成する。尚、特殊保護層13の上層には、表層11、離型処理層12が形成され、樹脂成形品が完成した後に、保護層2から剥離する。次に各部を詳細に説明する。
【0022】
(表層11及び離型処理層12)
表層11は、樹脂成形品1の成形前段階で樹脂基材3を保護し、樹脂成形品1の成形後は離型処理層12と共に剥がされるものである。表層11の材質としては、通常、ポリエチレンテレフタレート(PET)が使用される。厚さは38μmや50μmが好適である。離型処理層12は、メラミン系の塗料で形成するのが通常である。
【0023】
(特殊保護層13)
特殊保護層13は、本実施形態の特徴的な部分であり、樹脂基材3の表面を保護する層である。本実施形態の特殊保護層13は、その材料として、少なくとも、脂環族イソシアネートとエステル系ポリオールと水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物とを必須成分とするウレタンアクリレート、及び光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0024】
特殊保護層13を構成する組成としては、前記ウレタンアクリレートを主成分とする反応性オリゴマー、前記光重合開始剤の他に、反応性モノマー、非反応性ポリマー、各種添加剤が含まれていても良く、その構成比率は重量比で反応性オリゴマーが20〜95%、光開始剤が1〜15%、反応性モノマーが0〜35%、非反応性ポリマーが0〜15%、各種添加剤が0〜5%の範囲で調合することが好ましい。この範囲で調合することで、可撓性の高い特殊保護層13を得る事ができる。
【0025】
前記反応性モノマーとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどの単官能モノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能モノマー、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーなどを使用することができる。
【0026】
前記非反応性ポリマーとしてはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化酢酸ビニル、硝化綿やCAB等の繊維素系樹脂などを使用する事ができる。
【0027】
前記光重合開始剤としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物などであり、その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4′−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロ等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物などを使用することができる。
【0028】
前記各種添加剤としては、例えば、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、重合禁止剤、増白剤を使用することができる。
【0029】
また、前記反応性オリゴマーとしては、ポリウレタンアクリレートを主成分とする。前記ポリウレタンアクリレートは、ポリウレタン構造(−NHCOO−)を主鎖に持つアクリレートである。ポリウレタンアクリレートは、脂環族イソシアネートと、エステル系ポリオールと、水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物と、の反応で得られる。
【0030】
前記脂環族イソシアネート化合物によって、耐候性が異なる。前記脂環族イソシアネート化合物としては、例えば、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)を使用することが好ましい。また、脂環族イソシアネート以外でも、脂肪族イソシアネートのヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を使用するとしてもよい。これらの化合物は無黄変又は難黄変であることにより、樹脂の黄変を抑制することができる。この結果、耐候性を高くすることができる。
【0031】
前記エステル系ポリオールとしては、水酸基として3官能以上のポリカプロラクトン(PCL)であることが好ましい。3官能以上であることにより、特殊保護層13の耐磨耗性が十分に得られる。ここで、水酸基として3官能以上のポリカプロラクトンとしては、ε−カプロラクトン及びその変性物と3官能以上のポリオールの開環反応物を使用することができる。
【0032】
前記水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物としては、次のようなものが好ましい。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0033】
(アンカーコート14)
アンカーコート14は、色彩、模様、ロゴなどの印刷を付着させるためのアンカーコートである。基本としてアクリル系の塗料を使用し、必要に応じて複数の層で形成することとしてもよい。また、ウレタン等を付加し、熱を媒体に反応硬化を使用する場合もある。
【0034】
(印刷層15)
印刷層15における印刷方法は、グラビア印刷又はシルクスクリーン印刷が好ましい。
【0035】
(アンカーコート16)
アンカーコート16は、接着層17を密着させるために設けられる。アンカーコート16の材質は接着層17の組成によって選択する必要があるが、アンカーコート14の組成と類似し、基本としてアクリル系の材料を使用する。
【0036】
(接着層17)
接着層17は、樹脂基材3に接着するための層である。接着層17の材質は樹脂基材3の組成によって選択する必要があるが、アクリル系、エステル系、オレフィン系の接着剤を使用することができる。
【0037】
(樹脂成形品1の製作方法)
樹脂成形品1を製作する際には、上述した表層11、離型処理層12、特殊保護層13、アンカーコート14、印刷層15、アンカーコート16、接着層17を積層してインモールド成形用フィルムとし、射出成形によって接着層17と樹脂基材3が接着することにより、インモールド樹脂成形品1が形成される。その後、表層11及び離型処理層12を特殊保護層13から離型させる。これにより特殊保護層13が表面に現われ、樹脂基材3を保護することになる。
【0038】
本実施形態の樹脂成形品1の保護層2は、紫外線硬化型樹脂である。このため、紫外線硬化型樹脂の、耐磨耗性、耐候性に優れるという特性を有する。尚、紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合には、インモールド成形をする前に紫外線を照射して硬化させてもよいし、インモールド成形をした後に紫外線を照射して硬化させてもよい。紫外線硬化型樹脂の種類や、樹脂成形品の他の材料の状況によって紫外線を照射するタイミングを選択するとよい。
【0039】
〔実施例〕
上記構成の成形品を携帯電話機の一部に用いた実施例を示す。図3は本実施形態の樹脂成形品1を適用した携帯電話機50の使用状態を示す図である。
【0040】
図3(a)に示すように、本実施形態の樹脂成形品1は、携帯電話機50のイヤホンジャックのカバー部材51やメモリー又は電源の挿入部のキャップ部材52に使用することができる。
【0041】
携帯電話におけるカバー部材やキャップ部材としては、従来、ゴム製の部材等の可撓性を有する部材が用いられていた。しかしながら、前記カバー部材やキャップ部材は、直接手を触れて開閉を行う構成であるため、手を触れることで汚れやすいという問題があった。また、周囲の湿気を吸収することで、黄変や膨潤をするおそれもあった。
【0042】
これに対して本実施形態の樹脂成形品1をカバー部材51やキャップ部材52として使用すると、表面の保護層2が可撓性のある樹脂基材3を保護する。保護層2は、特殊保護層13の組成により、耐候性、耐磨耗性に優れる。このため、使用者が直接手を触れるカバー部材51やキャップ部材52であっても、汚れることを抑制することができる。また、黄変や膨潤をも抑制することができる。この結果、カバー部材51やキャップ部材52の耐久性を向上させることもできる。
【0043】
また従来は、前記汚れを防止するために、可撓性を有する部材の表面にアクリル系の塗装をする等、二次加工をすることが行われていた。しかしながら、手間やコストがかかるといった問題があった。また、可撓性を有する部材専用の塗料を選定せねばならず、色が限定される場合がある。この場合、色調が隣接する部材と合わず意匠性を損なうといった問題があった。
【0044】
これに対して本実施形態の樹脂成形品1は、連続したフィルム部材をインモールド成形をすることによって、保護層2と樹脂基材3とを一度に形成することができる。このため、二次加工をする手間を省略することができ、コストも低減することができる。またこの結果、生産性がよいといった効果も期待できる。
【0045】
また従来の表面保護層は撓みにくいため、可撓性のある樹脂基材の表面に配設すると、前記樹脂基材と前記表面保護層との間にある印刷層に歪みが生じ、当該印刷層が割れるおそれがあった。
【0046】
これに対して本実施形態の特殊保護層13には可撓性がある。このため、可撓性のある樹脂基材3の表面に特殊保護層13を配設しても、樹脂基材3が撓むと同様に特殊保護層13も撓むこととなる。このため、樹脂基材3と特殊保護層13との間にある印刷層15に歪みは生じない。このため、印刷層15の印刷が割れることを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態のように印刷層15は、アンカーコート14とアンカーコート16との間に挟まれる構成であるため、印刷層15は樹脂基材3と直接接触することがない。このため、樹脂基材3の材質によらず、印刷の塗料や方法を自由に選定することができる。この結果、意匠性に優れる印刷を施すことが可能となる。
【0048】
また、従来は、可撓性部材を筐体等の広い範囲に使用すると、可撓性部材表面の意匠性が制限されたり、可撓性部材の汚れが目立ったりする等の不具合がある。このため、携帯電話機の筐体等、広い範囲に使用することが困難であった。この結果、従来の可撓性部材は、イヤホンジャックのカバー部材やメモリー又は電源挿入部のキャップ部材といった小さな範囲の部材にのみ使用することとされていた。
【0049】
しかしながら、本実施形態の可撓性のある樹脂成形品1は耐候性、耐磨耗性、意匠性に優れるため、カバー部材51やキャップ部材52といった小さな範囲の部材に限らず、より広い範囲に使用しても好適である。例えば、図3(b)に示すように、携帯電話機50の筐体の一部とすることができる。
【0050】
図3(b)に示すように、本実施形態の樹脂成形品1を携帯電話機50の筐体表面の交換部材53に使用すると、樹脂基材3が可撓性部材であっても、前述のようにアンカーコート14、16があることで、自由な色彩の印刷を施すことができるため、携帯電話機の筐体表面を意匠性に優れたものとすることができる。
【0051】
また、本実施形態の樹脂基材3は可撓性があるため、緩衝材としても利用することができる。このため、本実施形態の樹脂成形品1を携帯電話機の筐体の一部の緩衝部材54とすれば、樹脂成形品1がある箇所の内部へ伝わる衝撃を緩和することができる。
【0052】
例えば、図3(c)に示すように、携帯電話機50の内部にICチップ55を内蔵して、当該ICチップを専用のICチップ認識装置60によって認識する場合、携帯電話機を認識装置60の認識部61に近づける際に、携帯電話機50と認識部61とが接触する場合がある。この場合に前記筐体が硬いと、接触時の衝撃が直接ICチップ55に伝達し、ICチップ55に悪影響を与えるおそれがある。この場合において、本実施形態の樹脂成形品1を携帯電話機50の筐体の一部に緩衝部材54として用いれば、接触時の衝撃を可撓性のある樹脂基材3によって吸収することができ、ICチップ55に伝わる衝撃を緩和することができる。
【0053】
尚、本実施例においては、携帯電話機50に適用したが、これに限るものではない。例えば、PDAやノート型のパーソナルコンピュータ等、類似の電子機器に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、樹脂材料を用いた成形品全般に使用可能である。例えば、化粧品の容器や文具雑貨等にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態の樹脂成形品1の断面図。
【図2】本実施形態の樹脂成形品1の保護層2の拡大断面図。
【図3】本実施形態の樹脂成形品1を適用した携帯電話機50の使用状態を示す図。
【符号の説明】
【0056】
1 …樹脂成形品
2 …保護層
3 …樹脂基材
4 …保護層
11 …表層
12 …離型処理層
13 …特殊保護層
14 …アンカーコート
15 …印刷層
16 …アンカーコート
17 …接着層
50 …携帯電話機
51 …カバー部材
52 …キャップ部材
53 …交換部材
54 …緩衝部材
55 …ICチップ
60 …ICチップ認識装置
61 …認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも表面の保護層と、を有する樹脂成形品であって、
前記保護層の構成要素として、脂環族イソシアネートとエステル系ポリオールと水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物とを必須成分とするウレタンアクリレート、及び光重合開始剤を含み、
インモールド成形により、前記樹脂基材に対して前記保護層を積層させたことを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
請求項1の樹脂成形品であって、
前記エステル系ポリオールは、水酸基として3官能以上のポリカプロラクトンであることを特徴とする樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−305795(P2006−305795A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129047(P2005−129047)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】