樹脂成形方法および樹脂成形品
【課題】樹脂成形品の強度を向上させることができる樹脂成形方法を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂成形方法は、金型1を締め、成形機のノズルの下流側に配置されるゲート25と、ゲート25の下流側に配置されるキャビティ292と、を備える樹脂流路90を形成すると共に、樹脂流路90に邪魔部材221D、221Uを配置する型締め工程と、ノズルから、樹脂流路90に、相対粘度が2.3以上4.5以下の液体の母材と、母材に分散される異方性の固体の充填材と、を備える溶融樹脂を注入し、溶融樹脂の流れを邪魔部材221D、221Uが邪魔することにより、邪魔部材221D、221Uの下流側にウェルド部WLを形成する注入工程と、金型1を開き、溶融樹脂が固化して形成される樹脂成形品70を取り出す型開き工程と、を有することを特徴とする。
【解決手段】樹脂成形方法は、金型1を締め、成形機のノズルの下流側に配置されるゲート25と、ゲート25の下流側に配置されるキャビティ292と、を備える樹脂流路90を形成すると共に、樹脂流路90に邪魔部材221D、221Uを配置する型締め工程と、ノズルから、樹脂流路90に、相対粘度が2.3以上4.5以下の液体の母材と、母材に分散される異方性の固体の充填材と、を備える溶融樹脂を注入し、溶融樹脂の流れを邪魔部材221D、221Uが邪魔することにより、邪魔部材221D、221Uの下流側にウェルド部WLを形成する注入工程と、金型1を開き、溶融樹脂が固化して形成される樹脂成形品70を取り出す型開き工程と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母材中に充填材が配合された溶融樹脂を原料とする樹脂成形方法および樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェルド部を意図的に発生させる樹脂成形方法が開示されている。同文献開示の樹脂成形方法によると、樹脂流路に邪魔部材が配置されている。また、樹脂流路に注入される溶融樹脂は、繊維を含有している。樹脂流路において、溶融樹脂の流れは、邪魔部材に衝突して分流する。一旦分流した流動先端同士が再び会合することにより、ウェルド部が形成される。ここで、溶融樹脂中の繊維は、ウェルド部の延在方向に沿って配向する。このため、同文献開示の樹脂成形方法によると、樹脂成形品の、ウェルド部の延在方向に対する強度(引張強度や曲げ強度)を向上させることができる。特許文献2、特許文献3にも、特許文献1と同様に、ウェルド部を発生させることにより、溶融樹脂中の繊維を配向させる樹脂成形方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−142218号公報
【特許文献2】特開2003−231156号公報
【特許文献3】特開平10−34762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜3開示の樹脂成形方法によると、より確実に樹脂成形品の強度を向上させるのは困難であった。その理由について、本発明者は、以下のように考察する。
【0004】
図11に、従来の樹脂成形品の内部構造の模式図を示す。図11に示すように、ウェルド部102を意図的に発生させる樹脂成形方法によると、ウェルド部102に近い部分においては、溶融樹脂中の充填材101がウェルド部102の延在方向に沿って配向する。つまり、ウェルド部102の延在方向における、充填材101の配向性が高くなる。一方、ウェルド部102から遠い部分においては、溶融樹脂中の充填材101が、ウェルド部102の延在方向に対して略直交する方向に沿って配向しやすい。つまり、ウェルド部102の延在方向における、充填材101の配向性が低くなる。
【0005】
ここで、溶融樹脂の母材100は、固化する際に収縮しようとする。一方、溶融樹脂の充填材101は、母材100が固化する際、母材100と比較して、収縮しにくい。このため、母材100は、充填材101の長手方向には、収縮しにくい。その理由は、母材100が収縮しようとする際、充填材101が、自身の長手方向全長分だけ、当該収縮を規制するからである。したがって、母材100の内部において、充填材101の長手方向には、引張応力が発生しにくい。これに対して、母材100は、充填材101の短手方向には、収縮しやすい。その理由は、母材100が収縮しようとする際、充填材101は、自身の短手方向全長分だけしか、当該収縮を規制することができないからである。したがって、母材100の内部において、充填材101の短手方向には、引張応力が発生しやすい。このため、ウェルド部102の延在方向における充填材101の配向性が高い、ウェルド部102に近い部分では、引張応力の方向が、ウェルド部102の延在方向に対して略直交する方向に揃いやすい。一方、ウェルド部102の延在方向における充填材101の配向性が低い、ウェルド部102から遠い部分では、引張応力の方向が、ウェルド部102の延在方向に揃いやすい。
【0006】
このように、ウェルド部102に近い部分とウェルド部102から遠い部分とを比較すると、母材100に発生する引張応力の方向が異なる。この引張応力の方向のばらつきにより、樹脂成形品の残留応力が大きくなる。したがって、樹脂成形品の強度が向上しにくくなる。
【0007】
本発明の樹脂成形方法および樹脂成形品は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、樹脂成形品の強度を向上させることができる樹脂成形方法を提供することを目的とする。また、本発明は、強度が高い樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の樹脂成形方法は、金型を締め、成形機のノズルの下流側に配置されるゲートと、該ゲートの下流側に配置されるキャビティと、を備える樹脂流路を形成すると共に、該樹脂流路に邪魔部材を配置する型締め工程と、該ノズルから、該樹脂流路に、相対粘度が2.3以上4.5以下の液体の母材と、該母材に分散される異方性の固体の充填材と、を備える溶融樹脂を注入し、該溶融樹脂の流れを該邪魔部材が邪魔することにより、該邪魔部材の下流側にウェルド部を形成する注入工程と、該金型を開き、該溶融樹脂が固化して形成される樹脂成形品を取り出す型開き工程と、を有することを特徴とする(請求項1に対応)。
【0009】
本発明の樹脂成形方法によると、溶融樹脂の母材の相対粘度は2.3以上4.5以下に設定されている。相対粘度は、母材の分子量と相関関係があり、相対粘度が高いほど、分子量が大きくなる。本発明の樹脂成形方法の母材の相対粘度、言い換えると分子量は、比較的大きい。このため、母材が固化する際の、母材を形成する分子同士の交絡の度合いが、大きくなる。したがって、ウェルド部からの距離によらず、また充填材の配向性によらず、母材が全体的に変形しにくくなる。すなわち、母材の全体に亘って、引張応力が発生するのを抑制することができる。よって、樹脂成形品の残留応力が小さくなる。その結果、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0010】
ここで、母材の相対粘度を、2.3以上にしたのは、2.3未満の場合、充分な強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.5以下にしたのは、4.5超過の場合、注入工程において、溶融樹脂を樹脂流路に注入する際の注入抵抗が大きくなるからである。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である方がよい(請求項2に対応)。母材の相対粘度を、2.5以上にしたのは、2.5未満の場合、より優れた強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.0以下にしたのは、4.0超過の場合、注入工程において、溶融樹脂を樹脂流路に注入する際の注入抵抗が、相対粘度4.5超過の場合よりは緩和されるものの、大きいからである。
【0012】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記邪魔部材は、前記樹脂流路に複数配置されており、該樹脂流路の流路方向と、複数の該邪魔部材の並設方向と、は交差している構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0013】
ウェルド部は、溶融樹脂の流れが邪魔部材に邪魔されることにより形成される。すなわち、溶融樹脂の流れの少なくとも一部が、邪魔部材により分流し邪魔部材の下流側で合流することにより、ウェルド部が形成される。本構成によると、邪魔部材は複数配置されている。また、複数の邪魔部材は、樹脂流路の流路方向に対して交差する方向に、並んでいる。このため、樹脂成形品に、複数のウェルド部を形成することができる。したがって、樹脂成形品の強度を、さらに向上させることができる。
【0014】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記キャビティの、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の長さの最小値は、4mm以上である構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0015】
本発明の樹脂成形方法は、肉厚が厚い樹脂成形品を作製するのに、特に好適である。その理由を以下に説明する。すなわち、肉厚が薄い樹脂成形品の場合、母材が固化する際に収縮しても、収縮変形が樹脂成形品に「反り」や「引け」などの変形として発現する。このため、樹脂成形品の内部に残留応力が残りにくい。一方、肉厚が厚い樹脂成形品の場合、母材は、樹脂成形品の外面付近から固化する。その理由は、樹脂成形品の外面付近は、金型に接触しており、放熱しやすいからである。樹脂成形品の内部の母材が固化する際に収縮しようとしても、樹脂成形品の外面付近の母材は固化が進行しているため、樹脂成形品は変形しにくい。したがって、樹脂成形品の内部に残留応力が残りやすい。このような理由から、肉厚が厚い樹脂成形品に本発明の樹脂成形方法を用いると、より効果的に残留応力を小さくすることができる。すなわち、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0016】
この点に鑑み、本構成によると、キャビティの長さ(ウェルド部の深さ方向の長さ)の最小値が、4mm以上に設定されている。ここで、キャビティの長さの最小値を4mm以上としたのは、4mm未満の場合、上述したように、母材が固化する際に収縮しても、収縮変形が樹脂成形品に「反り」や「引け」などの変形として発現するだけで、樹脂成形品の内部に残留応力が残りにくいからである。
【0017】
(5)また、上記課題を解決するため、本発明の樹脂成形品は、相対粘度が2.3以上4.5以下の母材と、該母材に分散される異方性の充填材と、を備える樹脂製の本体と、該本体に形成されるウェルド部と、を備えてなることを特徴とする(請求項5に対応)。
【0018】
本発明の樹脂成形品によると、溶融樹脂の母材の相対粘度は2.3以上4.5以下に設定されている。すなわち、比較的相対粘度の高い(分子量の大きい)母材を用いている。このため、母材が固化する際の、母材を形成する分子同士の交絡の度合いが、大きくなる。したがって、ウェルド部からの距離によらず、また充填材の配向性によらず、固化する際、母材が全体的に変形しにくくなる。すなわち、母材の全体に亘って、引張応力が発生するのを抑制することができる。よって、樹脂成形品の残留応力が小さくなる。その結果、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0019】
ここで、母材の相対粘度を、2.3以上にしたのは、2.3未満の場合、充分な強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.5以下にしたのは、4.5超過の場合、成形において、溶融樹脂をキャビティに注入する際の注入抵抗が大きくなるからである。
【0020】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である方がよい(請求項6に対応)。母材の相対粘度を、2.5以上にしたのは、2.5未満の場合、より優れた強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.0以下にしたのは、4.0超過の場合、成形において、溶融樹脂をキャビティに注入する際の注入抵抗が、相対粘度4.5超過の場合よりは緩和されるものの、大きいからである。
【0021】
(7)好ましくは、上記(5)または(6)の構成において、前記ウェルド部は、前記本体に複数形成されている構成とする方がよい(請求項7に対応)。本構成によると、充填材の配向性を向上させるウェルド部が、本体に複数形成されている。このため、樹脂成形品の強度を、さらに向上させることができる。
【0022】
(8)好ましくは、上記(5)ないし(7)のいずれかの構成において、前記本体の、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の肉厚の最小値は、4mm以上である構成とする方がよい(請求項8に対応)。
【0023】
本構成によると、本体の肉厚(ウェルド部の深さ方向の肉厚)の最小値が、4mm以上に設定されている。ここで、本体の肉厚の最小値を4mm以上としたのは、4mm未満の場合、樹脂成形品の内部に残留応力が残りにくいからである。本構成のように、本体の肉厚が比較的厚い場合であっても、本発明の樹脂成形品によると、強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、樹脂成形品の強度を向上させることが可能な樹脂成形方法を提供することができる。また、本発明によると、強度が高い樹脂成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の樹脂成形方法および樹脂成形品の実施の形態について説明する。
【0026】
<第一実施形態>
[樹脂成形方法に用いる金型]
まず、本実施形態の樹脂成形方法に用いる金型について説明する。
【0027】
(金型の構成)
まず、金型の構成について説明する。図1に、本実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の型開き状態における斜視図を示す。なお、固定型20については、左面付近のみを示す。図2に、同金型の可動型の型締め状態における斜視図を示す。図3に、同可動型の型締め状態における右面図を示す。
【0028】
図1〜図3に示すように、金型1は、固定型20と、可動型21と、邪魔部材用スライドコア22U、22Dと、凹部用スライドコア280F、280Rと、ナット固定用スライドコア281と、を備えている。
【0029】
固定型20は、クロムモリブデン鋼製であって、直方体のブロック状を呈している。可動型21は、クロムモリブデン鋼製であって、長方形板状を呈している。固定型20の左面と可動型21の右面とが当接することにより、固定型20と可動型21との間に、第一ランナー290とスライドコア用凹部291とキャビティ292と前方凹部293Fと後方凹部293Rと下方凹部294とが形成されている。
【0030】
固定型20には、左右方向に延在するスプルー200が穿設されている。すなわち、スプルー200の左端は、固定型20の左面に開口している。第一ランナー290は、当該スプルー200の左端と、スライドコア用凹部291の長手方向略中央と、を連結している。
【0031】
キャビティ292は、固定型20左面および可動型21右面の、略中央に配置されている。可動型21の右面からは突起295Lが突設されている。突起295Lは、キャビティ292内に配置されている。型締め状態において、突起295Lの先端は、固定型20の左面に当接している。突起295Lには、弾性部材296が装着されている。すなわち、キャビティ292内には、弾性部材296が配置されている。具体的には、弾性部材296は、ゴム製の本体296aと、金属製の円筒部296bと、を一体的に備えている。突起295Lは、円筒部296bに挿入されている。
【0032】
前方凹部293Fはキャビティ292の前方に、後方凹部293Rはキャビティ292の後方に、それぞれ連なっている。前方凹部293Fには、凹部用スライドコア280Fが、後方凹部293Rには凹部用スライドコア280Rが、それぞれ前後方向に移動可能に収容されている。
【0033】
下方凹部294は、キャビティ292の下方に連なっている。下方凹部294には、ナット固定用スライドコア281が、上下方向に移動可能に収容されている。ナット固定用スライドコア281の上面には、前記一対の突起282が配置されている。突起282には、ナット283が環装されている。
【0034】
スライドコア用凹部291は、キャビティ292の前上方に配置されている。スライドコア用凹部291には、邪魔部材用スライドコア22U、22Dが、前下−後上方向に、移動可能に収容されている。
【0035】
図4に、邪魔部材用スライドコアの斜視図を示す。図5に、邪魔部材用スライドコアのキャビティ側から見た正面図を示す。邪魔部材用スライドコア22Uは、クロムモリブデン鋼製であって、直方体のブロック状を呈している。邪魔部材用スライドコア22Uの下面には、絞り部材220Uと、邪魔部材221Uと、が一体に形成されている。
【0036】
絞り部材220Uは、邪魔部材用スライドコア22Uの下面から、下方に突設されている。絞り部材220Uは、左右方向に延在している。絞り部材220Uの断面は、矩形状を呈している。
【0037】
邪魔部材221Uは、邪魔部材用スライドコア22Uの下面から、下方に突設されている。邪魔部材221Uは、絞り部材220Uよりも、キャビティ292に近接して配置されている。邪魔部材221Uは、矩形板状を呈している。邪魔部材221Uは、合計十一枚配置されている。十一枚の邪魔部材221Uは、左右方向に並設されている。
【0038】
邪魔部材用スライドコア22Dの材質、構成は、上記邪魔部材用スライドコア22U同様である。スライドコア用凹部291において、邪魔部材用スライドコア22Dは、邪魔部材用スライドコア22Uと対向して、移動可能に収容されている。すなわち、十一枚の邪魔部材221Uと十一枚の邪魔部材221Dとは対向している。並びに、絞り部材220Uと絞り部材220Dとは対向している。
【0039】
(金型の動き)
次に、金型1の動きについて説明する。金型1は、型開き状態と、型締め状態と、に切り替え可能である。
【0040】
型開き状態においては、図1に示すように、固定型20を基準に、可動型21が左方に離間している。また、スライドコア用凹部291の固定型20側部分においては、邪魔部材用スライドコア22Uが後上方に、邪魔部材用スライドコア22Dが前下方に、それぞれ離間している(図3参照)。また、前方凹部293Fの固定型20側部分においては、前方凹部293Fの前部に、凹部用スライドコア280Fが待機している。並びに、後方凹部293Rの固定型20側部分においては、後方凹部293Rの後部に、凹部用スライドコア280Rが待機している。また、下方凹部294の固定型20側部分においては、下方凹部294の下部に、ナット固定用スライドコア281が待機している。
【0041】
型開き状態から型締め状態に切り替える際は、可動型21の右面を、固定型20の左面に、当接させる。可動型21を固定型20に当接させることにより、固定型20と可動型21との間に、第一ランナー290とスライドコア用凹部291とキャビティ292と前方凹部293Fと後方凹部293Rと下方凹部294とが形成される。
【0042】
また、可動型21と固定型20との当接に並行して、スライドコア用凹部291において、図3に示すように、スライドコア用凹部291の長手方向略中央で、邪魔部材用スライドコア22Uと、邪魔部材用スライドコア22Dと、を当接させる。また、前方凹部293Fにおいて、前方凹部293Fの後部に、凹部用スライドコア280Fを移動させる。凹部用スライドコア280Fの後部は、キャビティ292に進入する。並びに、後方凹部293Rにおいて、後方凹部293Rの前部に、凹部用スライドコア280Rを移動させる。凹部用スライドコア280Rの前部は、キャビティ292に進入する。また、下方凹部294において、下方凹部294の上部に、ナット固定用スライドコア281を移動させる。ナット固定用スライドコア281の上部は、キャビティ292に進入する。このようにして、金型1を、型開き状態から型締め状態に切り替える。なお、金型1を、型締め状態から型開き状態に切り替える場合は、上記一連の過程を逆方向に実行する。
【0043】
[樹脂流路]
次に、金型1に形成される樹脂流路について説明する。樹脂流路90は、型締め状態の金型1の内部に形成されている。樹脂流路90は、スプルー200と、第一ランナー290と、第二ランナー299と、頸部24と、十二個のゲート25と、キャビティ292と、を備えている。
【0044】
第二ランナー299は、第一ランナー290の下端に連通している。第一ランナー290と第二ランナー299との境界である拡張部27においては、樹脂流路90の流路断面積(この部分を溶融樹脂は前上方→後下方に流れるから、当該方向に対して略垂直方向の断面積)が、急激に大きくなる。
【0045】
頸部24は、図3に示すように、邪魔部材221Uの絞り部材220Uと、邪魔部材221Dの絞り部材220Dと、の間に形成されている。頸部24は、左右方向に延在している。頸部24は、第二ランナー299の下流側に配置されている。頸部24の流路断面積(左右方向の断面積)は、第二ランナー299の流路断面積(左右方向の断面積)に対して、急激に小さくなる。
【0046】
十二個のゲート25は、頸部24の下流側に配置されている。詳しく説明すると、図5に示すように、スライドコア用凹部291の内部空間には、十一枚の邪魔部材221Uにより、十二個のゲート25が区画されている。十二個のゲート25のゲート幅Cは、略均等である。すなわち、十一枚の邪魔部材221Uの配置間隔は、略均等である。
【0047】
このように、型締め状態の金型1の内部には、上流側から下流側に向かって、スプルー200→第一ランナー290→第二ランナー299→頸部24→十二個のゲート25→キャビティ292と連通する樹脂流路90が形成されている。キャビティ292の樹脂流路90の流路方向、つまり所望の充填材配向方向は、キャビティ292の延在方向、つまり弾性部材296を中心とする円周方向である。
【0048】
[樹脂成形方法]
次に、本実施形態の樹脂成形方法について説明する。本実施形態の樹脂成形方法は、型締め工程と注入工程と型開き工程とを有している。
【0049】
(型締め工程)
まず、型締め工程について説明する。型締め工程においては、金型1を、図1に示す型開き状態から、図2、図3に示す型締め状態に、切り替える。
【0050】
具体的には、まず、突起295Lに弾性部材296を装着する。次いで、固定型20に対して、可動型21を左方から当接させる。それから、スライドコア用凹部291内において、邪魔部材用スライドコア22U、22Dを当接させる。また、前方凹部293F内において、凹部用スライドコア280Fを後方に移動させる。また、後方凹部293R内において、凹部用スライドコア280Rを前方に移動させる。また、下方凹部294内において、ナット283装着済みのナット固定用スライドコア281を上方に移動させる。
【0051】
(注入工程)
次に、注入工程について説明する。注入工程においては、成形機のノズルから、樹脂流路90に、溶融樹脂を注入する。溶融樹脂は、ナイロン66と、ガラス繊維と、を備えている。ナイロン66は、本発明の母材に含まれる。ガラス繊維は、本発明の充填材に含まれる。ガラス繊維は、溶融状態のナイロン66に分散している。成形機のシリンダ温度は約290℃である。また、金型1の温度は約80℃である。
【0052】
溶融樹脂は、樹脂流路90内を流動する。樹脂流路90の流路断面積は、拡張部27において、急激に拡張する。このため、溶融樹脂は、拡張部27を通過後、拡散しながら第二ランナー299に流入する。第二ランナー299に流入した溶融樹脂の流速は、ばらついている。しかしながら、溶融樹脂の流速のばらつきは、頸部24を通過することにより、補正される。並びに、溶融樹脂の流速のばらつきは、十一枚の邪魔部材221Uおよび十一枚の邪魔部材221Dにより分割された、十二個のゲート25を通過することにより、補正される。
【0053】
十二個のゲート25を通過することにより、十二個に分流した溶融樹脂は、キャビティ292に流れ込む。キャビティ292に流れこんだ溶融樹脂は、弾性部材296に衝突し、さらに後上方向と前下方向との二手に分流する。その後、溶融樹脂は、キャビティ292全体に行き渡る。行き渡った溶融樹脂は、キャビティ292において、冷却、固化される。
【0054】
(型開き工程)
次に、型開き工程について説明する。型開き工程においては、金型1を、図2、図3に示す型締め状態から、図1に示す型開き状態に、再び切り替える。
【0055】
具体的には、まず、スライドコア用凹部291内において、邪魔部材用スライドコア22U、22Dを離間させる。また、前方凹部293F内において、凹部用スライドコア280Fを前方に移動させる。また、後方凹部293R内において、凹部用スライドコア280Rを後方に移動させる。また、下方凹部294内において、ナット固定用スライドコア281を下方に移動させる。次いで、固定型20に対して、可動型21を左方に離間させる。その後、ゲートカットが施され、エンジンマウントが完成する。
【0056】
[樹脂成形品]
次に、本実施形態の樹脂成形品について説明する。本実施形態の樹脂成形品は、エンジンマウントである。図6に、本実施形態のエンジンマウントの斜視図を示す。以下に説明するエンジンマウント70は、模式的なものであり、樹脂成形方法やその後の処理によっては、エンジンマウント70に、ゲートカット跡GCが確認できない場合もある。また、ウェルド部WLの延在方向や、ウェルド部WLの延在区間や、互いに隣接するウェルド部WL間の間隔などが、異なる場合もある。
【0057】
図6に示すように、本実施形態のエンジンマウント70は、ブラケット700と弾性部材296とを一体的に備えている。ブラケット700は、本発明の本体に含まれる。エンジンマウント70の上下方向長さW1は110mmである。エンジンマウント70の前後方向長さW2は100mmである。エンジンマウント70の左右方向長さW3は50mmである。ブラケット700の径方向肉厚W4の最小値は、12mmである。径方向肉厚W4の最小値は、本発明の「キャビティの、ウェルド部の延在方向に略直交する、ウェルド部の深さ方向の長さの最小値」に含まれる。また、径方向肉厚W4の最小値は、本発明の「本体の、ウェルド部の延在方向に略直交する、ウェルド部の深さ方向の肉厚の最小値」に含まれる。
【0058】
エンジンマウント70は、車両のエンジンを車体に固定するために用いられる。エンジンマウント70により、エンジンの振動が車体に伝わるのを抑制することができる。ブラケット700には、十一本のウェルド部WLと十二個のゲートカット跡GCとが形成されている。十二個のゲートカット跡GCは、左右方向に略一列に並んでいる。十二個のゲートカット跡GCの面積は、略均等である。十一本のウェルド部WLは、弾性部材296を中心とする周状に延在している。十一本のウェルド部WLは、十二個のゲートカット跡GCを、一つずつに区分けしている。十一本のウェルド部WL間の間隔は、略均等である。
【0059】
なお、ブラケット700におけるガラス繊維の配向性の程度は、一例として、引張試験などによりブラケット700を径方向に破断(切断ではない)させ、当該破断面を観察することにより、確認することができる。ガラス繊維の配向性が高いほど、破断面におけるガラス繊維の毛羽立ちの程度がより高くなる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態のエンジンマウント70は、以下の特徴のうち少なくとも一つを有している。複数のゲートカット跡GCが形成されている。複数のウェルド部WLが形成されている。ウェルド部WL間の間隔の広狭と、ゲートカット跡GCの面積の大小と、は対応している。ウェルド部WLの延在方向に対して略垂直方向の破断面に、ガラス繊維の毛羽立ちが観察される。
【0061】
[作用効果]
次に、本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品の作用効果について説明する。本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品(エンジンマウント70)によると、溶融樹脂の母材の相対粘度は2.3以上4.5以下に設定されている。このため、母材が固化する際の、母材を形成する分子同士の交絡の度合いが、大きくなる。したがって、ウェルド部WLからの距離によらず、またガラス繊維の配向性によらず、母材が全体的に変形しにくくなる。すなわち、母材の全体に亘って、引張応力が発生するのを抑制することができる。よって、樹脂成形品の残留応力が小さくなる。その結果、樹脂成形品の強度を向上させることができる。また、注入工程において、溶融樹脂を樹脂流路90に注入する際の注入抵抗が大きくなりにくい。
【0062】
また、本実施形態の樹脂成形方法によると、樹脂流路90の流路方向(図2における前上→後下方向)と、十一枚の邪魔部材221Uおよび十一枚の邪魔部材221Dの並設方向(図2における左右方向)と、が略直交している。ウェルド部WLは、溶融樹脂の流れが邪魔部材221U、221Dに邪魔されることにより形成される。すなわち、溶融樹脂の流れが、邪魔部材221U、221Dにより分流し邪魔部材の下流側で合流することにより、ウェルド部WLが形成される。この点、本実施形態の樹脂成形方法によると、十一枚の邪魔部材221Uおよび十一枚の邪魔部材221Dは、樹脂流路90の流路方向に対して略直交する方向に、並んでいる。このため、樹脂成形品に、十一本のウェルド部WLを形成することができる。したがって、樹脂成形品の強度を、さらに向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品によると、ブラケット700の径方向肉厚W4の最小値が12mmに設定されている。すなわち、キャビティ292の、ウェルド部WLの延在方向(図3における弾性部材296を中心とする円周方向)に略直交する、ウェルド部WLの深さ方向(図3における弾性部材296を中心とする円の径方向)の長さの最小値が、12mmに設定されている。並びに、ブラケット700の、ウェルド部WLの延在方向(図6における弾性部材296を中心とする円周方向)に略直交する、ウェルド部WLの深さ方向(図6における弾性部材296を中心とする円の径方向)の肉厚の最小値が、12mmに設定されている。このように、ブラケット700の肉厚が比較的厚い場合であっても、本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品によると、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0064】
<第二実施形態>
本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品と、第一実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品と、の相違点は、邪魔部材、ゲートの形状のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0065】
図7に、本実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の可動型の型締め状態における右面図を示す。なお、図7に示すのは、ゲート付近の拡大図である。図3と対応する部位については同じ符号で示す。図7に示すように、各々十一枚ずつの邪魔部材221U、221Dと、ゲート25と、の間には、所定の間隔が確保されている。すなわち、ゲート25は一つだけ配置されている。
【0066】
図8に、本実施形態のエンジンマウントの斜視図を示す。なお、図6と対応する部位については同じ符号で示す。図8に示すように、エンジンマウント70には、単一のゲートカット跡GCが配置されている。ゲートカット跡GCは、左右方向に長い長方形状を呈している。エンジンマウント70の寸法は、第一実施形態のエンジンマウント70の寸法と、同様である。
【0067】
本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品と、同様の作用効果を有している。本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品によると、ゲート25(ゲートカット跡GC)が単一であるにもかかわらず、エンジンマウント70にウェルド部WLを形成することができる。
【0068】
<その他>
以上、本発明の樹脂成形方法および樹脂成形品の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0069】
溶融樹脂の母材の種類は特に限定しない。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、芳香族ナイロンなどを用いることができる。すなわち、母材の相対粘度が、2.3以上4.5以下であればよい。母材の相対粘度が2.5以上4.0以下であると更に好適である。
【0070】
また、溶融樹脂の充填材の種類も特に限定しない。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、金属繊維、炭化珪素繊維、ワラストナイト、ウイスカー、カオリナイト、タルク、マイカ、モンモリロナイト、クレー、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
【0071】
また、充填材の形状も特に限定しない。図9(a)に示すように、繊維タイプの充填材800を用いてもよい。また、図9(b)に示すように、薄板タイプの充填材801を用いてもよい。また、図9(c)に示すように、楕円球タイプの充填材802を用いてもよい。すなわち、充填材の形状は、異方性を有していればよい。
【0072】
また、邪魔部材の形状も特に限定しない。図10(a)に示すように、断面略真円状の邪魔部材810を用いてもよい。また、図10(b)に示すように、断面長円状の邪魔部材811を用いてもよい。また、図10(c)に示すように、断面水滴状の邪魔部材812を用いてもよい。また、邪魔部材の配置数、隣接する邪魔部材間の間隔、金型が開いている際の邪魔部材の分割数も特に限定しない。また、金型の材質も特に限定しない。また、金型におけるゲートの位置、形状、配置数も特に限定しない。
【0073】
また、本実施形態の樹脂成形方法の成形条件も特に限定しない。例えば、成形機のシリンダ温度や金型温度などは、使用する溶融樹脂の特性や樹脂成形品のスペックなどに応じて、適宜設定すればよい。また、キャビティ内に邪魔部材を配置する場合、成形後の樹脂成形品に、邪魔部材が残っていてもよい。こうすると、金型の構造が簡単になる。
【実施例】
【0074】
次に、上記実施形態の樹脂成形品に対して行った破壊強度測定試験について説明する。
【0075】
<サンプル>
実施例1のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例1のサンプルの寸法はエンジンマウント70同様である。すなわち、上下方向長さW1は110mmであり、前後方向長さW2は100mmであり、左右方向長さW3は50mmである。また、ブラケット700の径方向肉厚W4の最小値は、12mmである。
【0076】
実施例1のサンプルを形成する樹脂は、母材(ナイロン66)に、充填材(ガラス繊維)が、50質量%(母材を100質量%とする)配合されたものである。実施例1のサンプルの母材の相対粘度は、以下の方法により測定する。まず、98質量%濃度の硫酸(全体を100質量%として、H2SO4を98質量%含有する濃硫酸)に、母材(ナイロン66)を、溶解する。母材の濃度は、1g/100ml(硫酸100mlに対して、母材が1g溶解している)に調整する。次いで、オストワルド粘度計(アズワン(株)製オストワルド粘度計)を用いて、25℃恒温槽中における溶液の落下時間(t)を測定する。上記溶液同様に測定した98質量%濃度の硫酸の落下時間(t0)と、溶液の落下時間(t)と、の比を相対粘度(η=t/t0)とする。実施例1のサンプルの母材の相対粘度は、2.3である。
【0077】
実施例2〜実施例6、比較例1、比較例2のサンプルを形成する樹脂の材質、サンプルの寸法、サンプルの母材の相対粘度の測定方法は、上記実施例1同様である。実施例2のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例2のサンプルの母材の相対粘度は、2.5である。実施例3のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例3のサンプルの母材の相対粘度は、2.7である。実施例4のサンプルは、図8のエンジンマウント70である。実施例4のサンプルの母材の相対粘度は、2.7である。実施例5のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例5のサンプルの母材の相対粘度は、3.1である。実施例6のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例6のサンプルの母材の相対粘度は、4である。
【0078】
比較例1のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。比較例1のサンプルの母材の相対粘度は、2.2である。比較例2のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。ただし、比較例2のサンプルを成形する金型には、図5に示すような十二個のゲート25は配置されていない。言い換えると、比較例2のサンプルを成形する金型1には、邪魔部材221U、221D、絞り部材220U、220Dは配置されていない。ゲート25は一個だけである。このため、比較例2のサンプルは、ウェルド部WLを有していない。比較例2のサンプルの母材の相対粘度は、2.7である。なお、実施例1〜実施例6、比較例1、比較例2のサンプルの相対粘度は、分子量すなわち重合度を変えることにより、調整する。
【0079】
<試験方法および試験結果>
破壊強度の測定は、以下の手順で行った。まず、エンジンマウント70を治具に固定した。次いで、金属製の丸棒を、円筒部296bに挿入した。それから、当該丸棒を、図6における上方に引っ張った。丸棒の上昇速度は、20mm/minとした。エンジンマウント70が破壊した際の応力を、破壊強度とした。試験結果を表1に示す。
【表1】
【0080】
表1に示すように、比較例2の破壊強度を100%として、実施例1の破壊強度は103%、実施例2の破壊強度は108%、実施例3の破壊強度は113%、実施例4の破壊強度は111%、実施例5の破壊強度は119%、実施例6の破壊強度は123%だった。また、比較例1の破壊強度は91%だった。試験結果から、実施例1〜実施例6は、いずれも、比較例1、比較例2よりも、破壊強度が高いことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第一実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の型開き状態における斜視図である。
【図2】同金型の可動型の型締め状態における斜視図である。
【図3】同可動型の型締め状態における右面図である。
【図4】邪魔部材用スライドコアの斜視図である。
【図5】邪魔部材用スライドコアのキャビティ側から見た正面図である。
【図6】第一実施形態のエンジンマウントの斜視図である。
【図7】第二実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の可動型の型締め状態における右面図である。
【図8】第二実施形態のエンジンマウントの斜視図である。
【図9】(a)は繊維タイプの充填材の斜視図である。(b)は薄板タイプの充填材の斜視図である。(c)は楕円球タイプの充填材の斜視図である。
【図10】(a)は断面略真円状の邪魔部材の斜視図である。(b)は断面長円状の邪魔部材の斜視図である。(c)は断面水滴状の邪魔部材の斜視図である。
【図11】従来の樹脂成形品の内部構造の模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1:金型。
20:固定型、21:可動型、22D:邪魔部材用スライドコア、22U:邪魔部材用スライドコア、24:頸部、25:ゲート、27:拡張部、70:エンジンマウント(樹脂成形品)、90:樹脂流路。
200:スプルー、220D:絞り部材、220U:絞り部材、221D:邪魔部材、221U:邪魔部材、280F:凹部用スライドコア、280R:凹部用スライドコア、281:ナット固定用スライドコア、282:突起、283:ナット、290:第一ランナー、291:スライドコア用凹部、292:キャビティ、293F:前方凹部、293R:後方凹部、294:下方凹部、295L:突起、296:弾性部材、296a:本体、296b:円筒部、299:第二ランナー、700:ブラケット(本体)、800:充填材、801:充填材、802:充填材、810:邪魔部材、811:邪魔部材、812:邪魔部材。
C:ゲート幅、GC:ゲートカット跡、W1:上下方向長さ、W2:前後方向長さ、W3:左右方向長さ、W4:径方向肉厚、WL:ウェルド部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、母材中に充填材が配合された溶融樹脂を原料とする樹脂成形方法および樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェルド部を意図的に発生させる樹脂成形方法が開示されている。同文献開示の樹脂成形方法によると、樹脂流路に邪魔部材が配置されている。また、樹脂流路に注入される溶融樹脂は、繊維を含有している。樹脂流路において、溶融樹脂の流れは、邪魔部材に衝突して分流する。一旦分流した流動先端同士が再び会合することにより、ウェルド部が形成される。ここで、溶融樹脂中の繊維は、ウェルド部の延在方向に沿って配向する。このため、同文献開示の樹脂成形方法によると、樹脂成形品の、ウェルド部の延在方向に対する強度(引張強度や曲げ強度)を向上させることができる。特許文献2、特許文献3にも、特許文献1と同様に、ウェルド部を発生させることにより、溶融樹脂中の繊維を配向させる樹脂成形方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8−142218号公報
【特許文献2】特開2003−231156号公報
【特許文献3】特開平10−34762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜3開示の樹脂成形方法によると、より確実に樹脂成形品の強度を向上させるのは困難であった。その理由について、本発明者は、以下のように考察する。
【0004】
図11に、従来の樹脂成形品の内部構造の模式図を示す。図11に示すように、ウェルド部102を意図的に発生させる樹脂成形方法によると、ウェルド部102に近い部分においては、溶融樹脂中の充填材101がウェルド部102の延在方向に沿って配向する。つまり、ウェルド部102の延在方向における、充填材101の配向性が高くなる。一方、ウェルド部102から遠い部分においては、溶融樹脂中の充填材101が、ウェルド部102の延在方向に対して略直交する方向に沿って配向しやすい。つまり、ウェルド部102の延在方向における、充填材101の配向性が低くなる。
【0005】
ここで、溶融樹脂の母材100は、固化する際に収縮しようとする。一方、溶融樹脂の充填材101は、母材100が固化する際、母材100と比較して、収縮しにくい。このため、母材100は、充填材101の長手方向には、収縮しにくい。その理由は、母材100が収縮しようとする際、充填材101が、自身の長手方向全長分だけ、当該収縮を規制するからである。したがって、母材100の内部において、充填材101の長手方向には、引張応力が発生しにくい。これに対して、母材100は、充填材101の短手方向には、収縮しやすい。その理由は、母材100が収縮しようとする際、充填材101は、自身の短手方向全長分だけしか、当該収縮を規制することができないからである。したがって、母材100の内部において、充填材101の短手方向には、引張応力が発生しやすい。このため、ウェルド部102の延在方向における充填材101の配向性が高い、ウェルド部102に近い部分では、引張応力の方向が、ウェルド部102の延在方向に対して略直交する方向に揃いやすい。一方、ウェルド部102の延在方向における充填材101の配向性が低い、ウェルド部102から遠い部分では、引張応力の方向が、ウェルド部102の延在方向に揃いやすい。
【0006】
このように、ウェルド部102に近い部分とウェルド部102から遠い部分とを比較すると、母材100に発生する引張応力の方向が異なる。この引張応力の方向のばらつきにより、樹脂成形品の残留応力が大きくなる。したがって、樹脂成形品の強度が向上しにくくなる。
【0007】
本発明の樹脂成形方法および樹脂成形品は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、樹脂成形品の強度を向上させることができる樹脂成形方法を提供することを目的とする。また、本発明は、強度が高い樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の樹脂成形方法は、金型を締め、成形機のノズルの下流側に配置されるゲートと、該ゲートの下流側に配置されるキャビティと、を備える樹脂流路を形成すると共に、該樹脂流路に邪魔部材を配置する型締め工程と、該ノズルから、該樹脂流路に、相対粘度が2.3以上4.5以下の液体の母材と、該母材に分散される異方性の固体の充填材と、を備える溶融樹脂を注入し、該溶融樹脂の流れを該邪魔部材が邪魔することにより、該邪魔部材の下流側にウェルド部を形成する注入工程と、該金型を開き、該溶融樹脂が固化して形成される樹脂成形品を取り出す型開き工程と、を有することを特徴とする(請求項1に対応)。
【0009】
本発明の樹脂成形方法によると、溶融樹脂の母材の相対粘度は2.3以上4.5以下に設定されている。相対粘度は、母材の分子量と相関関係があり、相対粘度が高いほど、分子量が大きくなる。本発明の樹脂成形方法の母材の相対粘度、言い換えると分子量は、比較的大きい。このため、母材が固化する際の、母材を形成する分子同士の交絡の度合いが、大きくなる。したがって、ウェルド部からの距離によらず、また充填材の配向性によらず、母材が全体的に変形しにくくなる。すなわち、母材の全体に亘って、引張応力が発生するのを抑制することができる。よって、樹脂成形品の残留応力が小さくなる。その結果、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0010】
ここで、母材の相対粘度を、2.3以上にしたのは、2.3未満の場合、充分な強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.5以下にしたのは、4.5超過の場合、注入工程において、溶融樹脂を樹脂流路に注入する際の注入抵抗が大きくなるからである。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である方がよい(請求項2に対応)。母材の相対粘度を、2.5以上にしたのは、2.5未満の場合、より優れた強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.0以下にしたのは、4.0超過の場合、注入工程において、溶融樹脂を樹脂流路に注入する際の注入抵抗が、相対粘度4.5超過の場合よりは緩和されるものの、大きいからである。
【0012】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記邪魔部材は、前記樹脂流路に複数配置されており、該樹脂流路の流路方向と、複数の該邪魔部材の並設方向と、は交差している構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0013】
ウェルド部は、溶融樹脂の流れが邪魔部材に邪魔されることにより形成される。すなわち、溶融樹脂の流れの少なくとも一部が、邪魔部材により分流し邪魔部材の下流側で合流することにより、ウェルド部が形成される。本構成によると、邪魔部材は複数配置されている。また、複数の邪魔部材は、樹脂流路の流路方向に対して交差する方向に、並んでいる。このため、樹脂成形品に、複数のウェルド部を形成することができる。したがって、樹脂成形品の強度を、さらに向上させることができる。
【0014】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記キャビティの、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の長さの最小値は、4mm以上である構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0015】
本発明の樹脂成形方法は、肉厚が厚い樹脂成形品を作製するのに、特に好適である。その理由を以下に説明する。すなわち、肉厚が薄い樹脂成形品の場合、母材が固化する際に収縮しても、収縮変形が樹脂成形品に「反り」や「引け」などの変形として発現する。このため、樹脂成形品の内部に残留応力が残りにくい。一方、肉厚が厚い樹脂成形品の場合、母材は、樹脂成形品の外面付近から固化する。その理由は、樹脂成形品の外面付近は、金型に接触しており、放熱しやすいからである。樹脂成形品の内部の母材が固化する際に収縮しようとしても、樹脂成形品の外面付近の母材は固化が進行しているため、樹脂成形品は変形しにくい。したがって、樹脂成形品の内部に残留応力が残りやすい。このような理由から、肉厚が厚い樹脂成形品に本発明の樹脂成形方法を用いると、より効果的に残留応力を小さくすることができる。すなわち、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0016】
この点に鑑み、本構成によると、キャビティの長さ(ウェルド部の深さ方向の長さ)の最小値が、4mm以上に設定されている。ここで、キャビティの長さの最小値を4mm以上としたのは、4mm未満の場合、上述したように、母材が固化する際に収縮しても、収縮変形が樹脂成形品に「反り」や「引け」などの変形として発現するだけで、樹脂成形品の内部に残留応力が残りにくいからである。
【0017】
(5)また、上記課題を解決するため、本発明の樹脂成形品は、相対粘度が2.3以上4.5以下の母材と、該母材に分散される異方性の充填材と、を備える樹脂製の本体と、該本体に形成されるウェルド部と、を備えてなることを特徴とする(請求項5に対応)。
【0018】
本発明の樹脂成形品によると、溶融樹脂の母材の相対粘度は2.3以上4.5以下に設定されている。すなわち、比較的相対粘度の高い(分子量の大きい)母材を用いている。このため、母材が固化する際の、母材を形成する分子同士の交絡の度合いが、大きくなる。したがって、ウェルド部からの距離によらず、また充填材の配向性によらず、固化する際、母材が全体的に変形しにくくなる。すなわち、母材の全体に亘って、引張応力が発生するのを抑制することができる。よって、樹脂成形品の残留応力が小さくなる。その結果、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0019】
ここで、母材の相対粘度を、2.3以上にしたのは、2.3未満の場合、充分な強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.5以下にしたのは、4.5超過の場合、成形において、溶融樹脂をキャビティに注入する際の注入抵抗が大きくなるからである。
【0020】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である方がよい(請求項6に対応)。母材の相対粘度を、2.5以上にしたのは、2.5未満の場合、より優れた強度向上効果が得られにくいからである。一方、母材の相対粘度を、4.0以下にしたのは、4.0超過の場合、成形において、溶融樹脂をキャビティに注入する際の注入抵抗が、相対粘度4.5超過の場合よりは緩和されるものの、大きいからである。
【0021】
(7)好ましくは、上記(5)または(6)の構成において、前記ウェルド部は、前記本体に複数形成されている構成とする方がよい(請求項7に対応)。本構成によると、充填材の配向性を向上させるウェルド部が、本体に複数形成されている。このため、樹脂成形品の強度を、さらに向上させることができる。
【0022】
(8)好ましくは、上記(5)ないし(7)のいずれかの構成において、前記本体の、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の肉厚の最小値は、4mm以上である構成とする方がよい(請求項8に対応)。
【0023】
本構成によると、本体の肉厚(ウェルド部の深さ方向の肉厚)の最小値が、4mm以上に設定されている。ここで、本体の肉厚の最小値を4mm以上としたのは、4mm未満の場合、樹脂成形品の内部に残留応力が残りにくいからである。本構成のように、本体の肉厚が比較的厚い場合であっても、本発明の樹脂成形品によると、強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、樹脂成形品の強度を向上させることが可能な樹脂成形方法を提供することができる。また、本発明によると、強度が高い樹脂成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の樹脂成形方法および樹脂成形品の実施の形態について説明する。
【0026】
<第一実施形態>
[樹脂成形方法に用いる金型]
まず、本実施形態の樹脂成形方法に用いる金型について説明する。
【0027】
(金型の構成)
まず、金型の構成について説明する。図1に、本実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の型開き状態における斜視図を示す。なお、固定型20については、左面付近のみを示す。図2に、同金型の可動型の型締め状態における斜視図を示す。図3に、同可動型の型締め状態における右面図を示す。
【0028】
図1〜図3に示すように、金型1は、固定型20と、可動型21と、邪魔部材用スライドコア22U、22Dと、凹部用スライドコア280F、280Rと、ナット固定用スライドコア281と、を備えている。
【0029】
固定型20は、クロムモリブデン鋼製であって、直方体のブロック状を呈している。可動型21は、クロムモリブデン鋼製であって、長方形板状を呈している。固定型20の左面と可動型21の右面とが当接することにより、固定型20と可動型21との間に、第一ランナー290とスライドコア用凹部291とキャビティ292と前方凹部293Fと後方凹部293Rと下方凹部294とが形成されている。
【0030】
固定型20には、左右方向に延在するスプルー200が穿設されている。すなわち、スプルー200の左端は、固定型20の左面に開口している。第一ランナー290は、当該スプルー200の左端と、スライドコア用凹部291の長手方向略中央と、を連結している。
【0031】
キャビティ292は、固定型20左面および可動型21右面の、略中央に配置されている。可動型21の右面からは突起295Lが突設されている。突起295Lは、キャビティ292内に配置されている。型締め状態において、突起295Lの先端は、固定型20の左面に当接している。突起295Lには、弾性部材296が装着されている。すなわち、キャビティ292内には、弾性部材296が配置されている。具体的には、弾性部材296は、ゴム製の本体296aと、金属製の円筒部296bと、を一体的に備えている。突起295Lは、円筒部296bに挿入されている。
【0032】
前方凹部293Fはキャビティ292の前方に、後方凹部293Rはキャビティ292の後方に、それぞれ連なっている。前方凹部293Fには、凹部用スライドコア280Fが、後方凹部293Rには凹部用スライドコア280Rが、それぞれ前後方向に移動可能に収容されている。
【0033】
下方凹部294は、キャビティ292の下方に連なっている。下方凹部294には、ナット固定用スライドコア281が、上下方向に移動可能に収容されている。ナット固定用スライドコア281の上面には、前記一対の突起282が配置されている。突起282には、ナット283が環装されている。
【0034】
スライドコア用凹部291は、キャビティ292の前上方に配置されている。スライドコア用凹部291には、邪魔部材用スライドコア22U、22Dが、前下−後上方向に、移動可能に収容されている。
【0035】
図4に、邪魔部材用スライドコアの斜視図を示す。図5に、邪魔部材用スライドコアのキャビティ側から見た正面図を示す。邪魔部材用スライドコア22Uは、クロムモリブデン鋼製であって、直方体のブロック状を呈している。邪魔部材用スライドコア22Uの下面には、絞り部材220Uと、邪魔部材221Uと、が一体に形成されている。
【0036】
絞り部材220Uは、邪魔部材用スライドコア22Uの下面から、下方に突設されている。絞り部材220Uは、左右方向に延在している。絞り部材220Uの断面は、矩形状を呈している。
【0037】
邪魔部材221Uは、邪魔部材用スライドコア22Uの下面から、下方に突設されている。邪魔部材221Uは、絞り部材220Uよりも、キャビティ292に近接して配置されている。邪魔部材221Uは、矩形板状を呈している。邪魔部材221Uは、合計十一枚配置されている。十一枚の邪魔部材221Uは、左右方向に並設されている。
【0038】
邪魔部材用スライドコア22Dの材質、構成は、上記邪魔部材用スライドコア22U同様である。スライドコア用凹部291において、邪魔部材用スライドコア22Dは、邪魔部材用スライドコア22Uと対向して、移動可能に収容されている。すなわち、十一枚の邪魔部材221Uと十一枚の邪魔部材221Dとは対向している。並びに、絞り部材220Uと絞り部材220Dとは対向している。
【0039】
(金型の動き)
次に、金型1の動きについて説明する。金型1は、型開き状態と、型締め状態と、に切り替え可能である。
【0040】
型開き状態においては、図1に示すように、固定型20を基準に、可動型21が左方に離間している。また、スライドコア用凹部291の固定型20側部分においては、邪魔部材用スライドコア22Uが後上方に、邪魔部材用スライドコア22Dが前下方に、それぞれ離間している(図3参照)。また、前方凹部293Fの固定型20側部分においては、前方凹部293Fの前部に、凹部用スライドコア280Fが待機している。並びに、後方凹部293Rの固定型20側部分においては、後方凹部293Rの後部に、凹部用スライドコア280Rが待機している。また、下方凹部294の固定型20側部分においては、下方凹部294の下部に、ナット固定用スライドコア281が待機している。
【0041】
型開き状態から型締め状態に切り替える際は、可動型21の右面を、固定型20の左面に、当接させる。可動型21を固定型20に当接させることにより、固定型20と可動型21との間に、第一ランナー290とスライドコア用凹部291とキャビティ292と前方凹部293Fと後方凹部293Rと下方凹部294とが形成される。
【0042】
また、可動型21と固定型20との当接に並行して、スライドコア用凹部291において、図3に示すように、スライドコア用凹部291の長手方向略中央で、邪魔部材用スライドコア22Uと、邪魔部材用スライドコア22Dと、を当接させる。また、前方凹部293Fにおいて、前方凹部293Fの後部に、凹部用スライドコア280Fを移動させる。凹部用スライドコア280Fの後部は、キャビティ292に進入する。並びに、後方凹部293Rにおいて、後方凹部293Rの前部に、凹部用スライドコア280Rを移動させる。凹部用スライドコア280Rの前部は、キャビティ292に進入する。また、下方凹部294において、下方凹部294の上部に、ナット固定用スライドコア281を移動させる。ナット固定用スライドコア281の上部は、キャビティ292に進入する。このようにして、金型1を、型開き状態から型締め状態に切り替える。なお、金型1を、型締め状態から型開き状態に切り替える場合は、上記一連の過程を逆方向に実行する。
【0043】
[樹脂流路]
次に、金型1に形成される樹脂流路について説明する。樹脂流路90は、型締め状態の金型1の内部に形成されている。樹脂流路90は、スプルー200と、第一ランナー290と、第二ランナー299と、頸部24と、十二個のゲート25と、キャビティ292と、を備えている。
【0044】
第二ランナー299は、第一ランナー290の下端に連通している。第一ランナー290と第二ランナー299との境界である拡張部27においては、樹脂流路90の流路断面積(この部分を溶融樹脂は前上方→後下方に流れるから、当該方向に対して略垂直方向の断面積)が、急激に大きくなる。
【0045】
頸部24は、図3に示すように、邪魔部材221Uの絞り部材220Uと、邪魔部材221Dの絞り部材220Dと、の間に形成されている。頸部24は、左右方向に延在している。頸部24は、第二ランナー299の下流側に配置されている。頸部24の流路断面積(左右方向の断面積)は、第二ランナー299の流路断面積(左右方向の断面積)に対して、急激に小さくなる。
【0046】
十二個のゲート25は、頸部24の下流側に配置されている。詳しく説明すると、図5に示すように、スライドコア用凹部291の内部空間には、十一枚の邪魔部材221Uにより、十二個のゲート25が区画されている。十二個のゲート25のゲート幅Cは、略均等である。すなわち、十一枚の邪魔部材221Uの配置間隔は、略均等である。
【0047】
このように、型締め状態の金型1の内部には、上流側から下流側に向かって、スプルー200→第一ランナー290→第二ランナー299→頸部24→十二個のゲート25→キャビティ292と連通する樹脂流路90が形成されている。キャビティ292の樹脂流路90の流路方向、つまり所望の充填材配向方向は、キャビティ292の延在方向、つまり弾性部材296を中心とする円周方向である。
【0048】
[樹脂成形方法]
次に、本実施形態の樹脂成形方法について説明する。本実施形態の樹脂成形方法は、型締め工程と注入工程と型開き工程とを有している。
【0049】
(型締め工程)
まず、型締め工程について説明する。型締め工程においては、金型1を、図1に示す型開き状態から、図2、図3に示す型締め状態に、切り替える。
【0050】
具体的には、まず、突起295Lに弾性部材296を装着する。次いで、固定型20に対して、可動型21を左方から当接させる。それから、スライドコア用凹部291内において、邪魔部材用スライドコア22U、22Dを当接させる。また、前方凹部293F内において、凹部用スライドコア280Fを後方に移動させる。また、後方凹部293R内において、凹部用スライドコア280Rを前方に移動させる。また、下方凹部294内において、ナット283装着済みのナット固定用スライドコア281を上方に移動させる。
【0051】
(注入工程)
次に、注入工程について説明する。注入工程においては、成形機のノズルから、樹脂流路90に、溶融樹脂を注入する。溶融樹脂は、ナイロン66と、ガラス繊維と、を備えている。ナイロン66は、本発明の母材に含まれる。ガラス繊維は、本発明の充填材に含まれる。ガラス繊維は、溶融状態のナイロン66に分散している。成形機のシリンダ温度は約290℃である。また、金型1の温度は約80℃である。
【0052】
溶融樹脂は、樹脂流路90内を流動する。樹脂流路90の流路断面積は、拡張部27において、急激に拡張する。このため、溶融樹脂は、拡張部27を通過後、拡散しながら第二ランナー299に流入する。第二ランナー299に流入した溶融樹脂の流速は、ばらついている。しかしながら、溶融樹脂の流速のばらつきは、頸部24を通過することにより、補正される。並びに、溶融樹脂の流速のばらつきは、十一枚の邪魔部材221Uおよび十一枚の邪魔部材221Dにより分割された、十二個のゲート25を通過することにより、補正される。
【0053】
十二個のゲート25を通過することにより、十二個に分流した溶融樹脂は、キャビティ292に流れ込む。キャビティ292に流れこんだ溶融樹脂は、弾性部材296に衝突し、さらに後上方向と前下方向との二手に分流する。その後、溶融樹脂は、キャビティ292全体に行き渡る。行き渡った溶融樹脂は、キャビティ292において、冷却、固化される。
【0054】
(型開き工程)
次に、型開き工程について説明する。型開き工程においては、金型1を、図2、図3に示す型締め状態から、図1に示す型開き状態に、再び切り替える。
【0055】
具体的には、まず、スライドコア用凹部291内において、邪魔部材用スライドコア22U、22Dを離間させる。また、前方凹部293F内において、凹部用スライドコア280Fを前方に移動させる。また、後方凹部293R内において、凹部用スライドコア280Rを後方に移動させる。また、下方凹部294内において、ナット固定用スライドコア281を下方に移動させる。次いで、固定型20に対して、可動型21を左方に離間させる。その後、ゲートカットが施され、エンジンマウントが完成する。
【0056】
[樹脂成形品]
次に、本実施形態の樹脂成形品について説明する。本実施形態の樹脂成形品は、エンジンマウントである。図6に、本実施形態のエンジンマウントの斜視図を示す。以下に説明するエンジンマウント70は、模式的なものであり、樹脂成形方法やその後の処理によっては、エンジンマウント70に、ゲートカット跡GCが確認できない場合もある。また、ウェルド部WLの延在方向や、ウェルド部WLの延在区間や、互いに隣接するウェルド部WL間の間隔などが、異なる場合もある。
【0057】
図6に示すように、本実施形態のエンジンマウント70は、ブラケット700と弾性部材296とを一体的に備えている。ブラケット700は、本発明の本体に含まれる。エンジンマウント70の上下方向長さW1は110mmである。エンジンマウント70の前後方向長さW2は100mmである。エンジンマウント70の左右方向長さW3は50mmである。ブラケット700の径方向肉厚W4の最小値は、12mmである。径方向肉厚W4の最小値は、本発明の「キャビティの、ウェルド部の延在方向に略直交する、ウェルド部の深さ方向の長さの最小値」に含まれる。また、径方向肉厚W4の最小値は、本発明の「本体の、ウェルド部の延在方向に略直交する、ウェルド部の深さ方向の肉厚の最小値」に含まれる。
【0058】
エンジンマウント70は、車両のエンジンを車体に固定するために用いられる。エンジンマウント70により、エンジンの振動が車体に伝わるのを抑制することができる。ブラケット700には、十一本のウェルド部WLと十二個のゲートカット跡GCとが形成されている。十二個のゲートカット跡GCは、左右方向に略一列に並んでいる。十二個のゲートカット跡GCの面積は、略均等である。十一本のウェルド部WLは、弾性部材296を中心とする周状に延在している。十一本のウェルド部WLは、十二個のゲートカット跡GCを、一つずつに区分けしている。十一本のウェルド部WL間の間隔は、略均等である。
【0059】
なお、ブラケット700におけるガラス繊維の配向性の程度は、一例として、引張試験などによりブラケット700を径方向に破断(切断ではない)させ、当該破断面を観察することにより、確認することができる。ガラス繊維の配向性が高いほど、破断面におけるガラス繊維の毛羽立ちの程度がより高くなる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態のエンジンマウント70は、以下の特徴のうち少なくとも一つを有している。複数のゲートカット跡GCが形成されている。複数のウェルド部WLが形成されている。ウェルド部WL間の間隔の広狭と、ゲートカット跡GCの面積の大小と、は対応している。ウェルド部WLの延在方向に対して略垂直方向の破断面に、ガラス繊維の毛羽立ちが観察される。
【0061】
[作用効果]
次に、本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品の作用効果について説明する。本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品(エンジンマウント70)によると、溶融樹脂の母材の相対粘度は2.3以上4.5以下に設定されている。このため、母材が固化する際の、母材を形成する分子同士の交絡の度合いが、大きくなる。したがって、ウェルド部WLからの距離によらず、またガラス繊維の配向性によらず、母材が全体的に変形しにくくなる。すなわち、母材の全体に亘って、引張応力が発生するのを抑制することができる。よって、樹脂成形品の残留応力が小さくなる。その結果、樹脂成形品の強度を向上させることができる。また、注入工程において、溶融樹脂を樹脂流路90に注入する際の注入抵抗が大きくなりにくい。
【0062】
また、本実施形態の樹脂成形方法によると、樹脂流路90の流路方向(図2における前上→後下方向)と、十一枚の邪魔部材221Uおよび十一枚の邪魔部材221Dの並設方向(図2における左右方向)と、が略直交している。ウェルド部WLは、溶融樹脂の流れが邪魔部材221U、221Dに邪魔されることにより形成される。すなわち、溶融樹脂の流れが、邪魔部材221U、221Dにより分流し邪魔部材の下流側で合流することにより、ウェルド部WLが形成される。この点、本実施形態の樹脂成形方法によると、十一枚の邪魔部材221Uおよび十一枚の邪魔部材221Dは、樹脂流路90の流路方向に対して略直交する方向に、並んでいる。このため、樹脂成形品に、十一本のウェルド部WLを形成することができる。したがって、樹脂成形品の強度を、さらに向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品によると、ブラケット700の径方向肉厚W4の最小値が12mmに設定されている。すなわち、キャビティ292の、ウェルド部WLの延在方向(図3における弾性部材296を中心とする円周方向)に略直交する、ウェルド部WLの深さ方向(図3における弾性部材296を中心とする円の径方向)の長さの最小値が、12mmに設定されている。並びに、ブラケット700の、ウェルド部WLの延在方向(図6における弾性部材296を中心とする円周方向)に略直交する、ウェルド部WLの深さ方向(図6における弾性部材296を中心とする円の径方向)の肉厚の最小値が、12mmに設定されている。このように、ブラケット700の肉厚が比較的厚い場合であっても、本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品によると、樹脂成形品の強度を向上させることができる。
【0064】
<第二実施形態>
本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品と、第一実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品と、の相違点は、邪魔部材、ゲートの形状のみである。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0065】
図7に、本実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の可動型の型締め状態における右面図を示す。なお、図7に示すのは、ゲート付近の拡大図である。図3と対応する部位については同じ符号で示す。図7に示すように、各々十一枚ずつの邪魔部材221U、221Dと、ゲート25と、の間には、所定の間隔が確保されている。すなわち、ゲート25は一つだけ配置されている。
【0066】
図8に、本実施形態のエンジンマウントの斜視図を示す。なお、図6と対応する部位については同じ符号で示す。図8に示すように、エンジンマウント70には、単一のゲートカット跡GCが配置されている。ゲートカット跡GCは、左右方向に長い長方形状を呈している。エンジンマウント70の寸法は、第一実施形態のエンジンマウント70の寸法と、同様である。
【0067】
本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品と、同様の作用効果を有している。本実施形態の樹脂成形方法および樹脂成形品によると、ゲート25(ゲートカット跡GC)が単一であるにもかかわらず、エンジンマウント70にウェルド部WLを形成することができる。
【0068】
<その他>
以上、本発明の樹脂成形方法および樹脂成形品の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0069】
溶融樹脂の母材の種類は特に限定しない。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、芳香族ナイロンなどを用いることができる。すなわち、母材の相対粘度が、2.3以上4.5以下であればよい。母材の相対粘度が2.5以上4.0以下であると更に好適である。
【0070】
また、溶融樹脂の充填材の種類も特に限定しない。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、金属繊維、炭化珪素繊維、ワラストナイト、ウイスカー、カオリナイト、タルク、マイカ、モンモリロナイト、クレー、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
【0071】
また、充填材の形状も特に限定しない。図9(a)に示すように、繊維タイプの充填材800を用いてもよい。また、図9(b)に示すように、薄板タイプの充填材801を用いてもよい。また、図9(c)に示すように、楕円球タイプの充填材802を用いてもよい。すなわち、充填材の形状は、異方性を有していればよい。
【0072】
また、邪魔部材の形状も特に限定しない。図10(a)に示すように、断面略真円状の邪魔部材810を用いてもよい。また、図10(b)に示すように、断面長円状の邪魔部材811を用いてもよい。また、図10(c)に示すように、断面水滴状の邪魔部材812を用いてもよい。また、邪魔部材の配置数、隣接する邪魔部材間の間隔、金型が開いている際の邪魔部材の分割数も特に限定しない。また、金型の材質も特に限定しない。また、金型におけるゲートの位置、形状、配置数も特に限定しない。
【0073】
また、本実施形態の樹脂成形方法の成形条件も特に限定しない。例えば、成形機のシリンダ温度や金型温度などは、使用する溶融樹脂の特性や樹脂成形品のスペックなどに応じて、適宜設定すればよい。また、キャビティ内に邪魔部材を配置する場合、成形後の樹脂成形品に、邪魔部材が残っていてもよい。こうすると、金型の構造が簡単になる。
【実施例】
【0074】
次に、上記実施形態の樹脂成形品に対して行った破壊強度測定試験について説明する。
【0075】
<サンプル>
実施例1のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例1のサンプルの寸法はエンジンマウント70同様である。すなわち、上下方向長さW1は110mmであり、前後方向長さW2は100mmであり、左右方向長さW3は50mmである。また、ブラケット700の径方向肉厚W4の最小値は、12mmである。
【0076】
実施例1のサンプルを形成する樹脂は、母材(ナイロン66)に、充填材(ガラス繊維)が、50質量%(母材を100質量%とする)配合されたものである。実施例1のサンプルの母材の相対粘度は、以下の方法により測定する。まず、98質量%濃度の硫酸(全体を100質量%として、H2SO4を98質量%含有する濃硫酸)に、母材(ナイロン66)を、溶解する。母材の濃度は、1g/100ml(硫酸100mlに対して、母材が1g溶解している)に調整する。次いで、オストワルド粘度計(アズワン(株)製オストワルド粘度計)を用いて、25℃恒温槽中における溶液の落下時間(t)を測定する。上記溶液同様に測定した98質量%濃度の硫酸の落下時間(t0)と、溶液の落下時間(t)と、の比を相対粘度(η=t/t0)とする。実施例1のサンプルの母材の相対粘度は、2.3である。
【0077】
実施例2〜実施例6、比較例1、比較例2のサンプルを形成する樹脂の材質、サンプルの寸法、サンプルの母材の相対粘度の測定方法は、上記実施例1同様である。実施例2のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例2のサンプルの母材の相対粘度は、2.5である。実施例3のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例3のサンプルの母材の相対粘度は、2.7である。実施例4のサンプルは、図8のエンジンマウント70である。実施例4のサンプルの母材の相対粘度は、2.7である。実施例5のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例5のサンプルの母材の相対粘度は、3.1である。実施例6のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。実施例6のサンプルの母材の相対粘度は、4である。
【0078】
比較例1のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。比較例1のサンプルの母材の相対粘度は、2.2である。比較例2のサンプルは、図6のエンジンマウント70である。ただし、比較例2のサンプルを成形する金型には、図5に示すような十二個のゲート25は配置されていない。言い換えると、比較例2のサンプルを成形する金型1には、邪魔部材221U、221D、絞り部材220U、220Dは配置されていない。ゲート25は一個だけである。このため、比較例2のサンプルは、ウェルド部WLを有していない。比較例2のサンプルの母材の相対粘度は、2.7である。なお、実施例1〜実施例6、比較例1、比較例2のサンプルの相対粘度は、分子量すなわち重合度を変えることにより、調整する。
【0079】
<試験方法および試験結果>
破壊強度の測定は、以下の手順で行った。まず、エンジンマウント70を治具に固定した。次いで、金属製の丸棒を、円筒部296bに挿入した。それから、当該丸棒を、図6における上方に引っ張った。丸棒の上昇速度は、20mm/minとした。エンジンマウント70が破壊した際の応力を、破壊強度とした。試験結果を表1に示す。
【表1】
【0080】
表1に示すように、比較例2の破壊強度を100%として、実施例1の破壊強度は103%、実施例2の破壊強度は108%、実施例3の破壊強度は113%、実施例4の破壊強度は111%、実施例5の破壊強度は119%、実施例6の破壊強度は123%だった。また、比較例1の破壊強度は91%だった。試験結果から、実施例1〜実施例6は、いずれも、比較例1、比較例2よりも、破壊強度が高いことが判った。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第一実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の型開き状態における斜視図である。
【図2】同金型の可動型の型締め状態における斜視図である。
【図3】同可動型の型締め状態における右面図である。
【図4】邪魔部材用スライドコアの斜視図である。
【図5】邪魔部材用スライドコアのキャビティ側から見た正面図である。
【図6】第一実施形態のエンジンマウントの斜視図である。
【図7】第二実施形態の樹脂成形方法に用いる金型の可動型の型締め状態における右面図である。
【図8】第二実施形態のエンジンマウントの斜視図である。
【図9】(a)は繊維タイプの充填材の斜視図である。(b)は薄板タイプの充填材の斜視図である。(c)は楕円球タイプの充填材の斜視図である。
【図10】(a)は断面略真円状の邪魔部材の斜視図である。(b)は断面長円状の邪魔部材の斜視図である。(c)は断面水滴状の邪魔部材の斜視図である。
【図11】従来の樹脂成形品の内部構造の模式図である。
【符号の説明】
【0082】
1:金型。
20:固定型、21:可動型、22D:邪魔部材用スライドコア、22U:邪魔部材用スライドコア、24:頸部、25:ゲート、27:拡張部、70:エンジンマウント(樹脂成形品)、90:樹脂流路。
200:スプルー、220D:絞り部材、220U:絞り部材、221D:邪魔部材、221U:邪魔部材、280F:凹部用スライドコア、280R:凹部用スライドコア、281:ナット固定用スライドコア、282:突起、283:ナット、290:第一ランナー、291:スライドコア用凹部、292:キャビティ、293F:前方凹部、293R:後方凹部、294:下方凹部、295L:突起、296:弾性部材、296a:本体、296b:円筒部、299:第二ランナー、700:ブラケット(本体)、800:充填材、801:充填材、802:充填材、810:邪魔部材、811:邪魔部材、812:邪魔部材。
C:ゲート幅、GC:ゲートカット跡、W1:上下方向長さ、W2:前後方向長さ、W3:左右方向長さ、W4:径方向肉厚、WL:ウェルド部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を締め、成形機のノズルの下流側に配置されるゲートと、該ゲートの下流側に配置されるキャビティと、を備える樹脂流路を形成すると共に、該樹脂流路に邪魔部材を配置する型締め工程と、
該ノズルから、該樹脂流路に、相対粘度が2.3以上4.5以下の液体の母材と、該母材に分散される異方性の固体の充填材と、を備える溶融樹脂を注入し、該溶融樹脂の流れを該邪魔部材が邪魔することにより、該邪魔部材の下流側にウェルド部を形成する注入工程と、
該金型を開き、該溶融樹脂が固化して形成される樹脂成形品を取り出す型開き工程と、
を有する樹脂成形方法。
【請求項2】
前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である請求項1に記載の樹脂成形方法。
【請求項3】
前記邪魔部材は、前記樹脂流路に複数配置されており、
該樹脂流路の流路方向と、複数の該邪魔部材の並設方向と、は交差している請求項1または請求項2に記載の樹脂成形方法。
【請求項4】
前記キャビティの、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の長さの最小値は、4mm以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の樹脂成形方法。
【請求項5】
相対粘度が2.3以上4.5以下の母材と、該母材に分散される異方性の充填材と、を備える樹脂製の本体と、
該本体に形成されるウェルド部と、
を備えてなる樹脂成形品。
【請求項6】
前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である請求項5に記載の樹脂成形品。
【請求項7】
前記ウェルド部は、前記本体に複数形成されている請求項5または請求項6に記載の樹脂成形品。
【請求項8】
前記本体の、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の肉厚の最小値は、4mm以上である請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の樹脂成形品。
【請求項1】
金型を締め、成形機のノズルの下流側に配置されるゲートと、該ゲートの下流側に配置されるキャビティと、を備える樹脂流路を形成すると共に、該樹脂流路に邪魔部材を配置する型締め工程と、
該ノズルから、該樹脂流路に、相対粘度が2.3以上4.5以下の液体の母材と、該母材に分散される異方性の固体の充填材と、を備える溶融樹脂を注入し、該溶融樹脂の流れを該邪魔部材が邪魔することにより、該邪魔部材の下流側にウェルド部を形成する注入工程と、
該金型を開き、該溶融樹脂が固化して形成される樹脂成形品を取り出す型開き工程と、
を有する樹脂成形方法。
【請求項2】
前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である請求項1に記載の樹脂成形方法。
【請求項3】
前記邪魔部材は、前記樹脂流路に複数配置されており、
該樹脂流路の流路方向と、複数の該邪魔部材の並設方向と、は交差している請求項1または請求項2に記載の樹脂成形方法。
【請求項4】
前記キャビティの、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の長さの最小値は、4mm以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の樹脂成形方法。
【請求項5】
相対粘度が2.3以上4.5以下の母材と、該母材に分散される異方性の充填材と、を備える樹脂製の本体と、
該本体に形成されるウェルド部と、
を備えてなる樹脂成形品。
【請求項6】
前記母材の相対粘度は、2.5以上4.0以下である請求項5に記載の樹脂成形品。
【請求項7】
前記ウェルド部は、前記本体に複数形成されている請求項5または請求項6に記載の樹脂成形品。
【請求項8】
前記本体の、前記ウェルド部の延在方向に略直交する、該ウェルド部の深さ方向の肉厚の最小値は、4mm以上である請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の樹脂成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−120351(P2010−120351A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298726(P2008−298726)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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