説明

樹脂成形用金型構造

【課題】 構造が簡単で、成形時にスライド型にかじりが発生することのない樹脂成形用金型構造を提供する。
【解決手段】 下側に保持される固定型3と、該固定型3に対して移動自在に構成された可動型5とを備え、これら固定型3及び可動型5の成形面13,39で形成されるキャビティ11内に溶融樹脂35を注入して発泡及び固化させることにより、樹脂製基板49を成形する樹脂成形用金型構造において、前記固定型3のキャビティ11側の成形面13に凹部15を設け、該凹部15内に、固定型3に対して移動自在のスライド型17を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形用金型構造に関し、更に詳しくは、発泡樹脂製の成形品を成形する際に用いる金型の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡樹脂からなる樹脂製成形品を成形する際には、固定型と可動型とからなる金型のキャビティに溶融樹脂を注入及び充填させ、この溶融樹脂を発泡及び固化させることにより成形している。
【0003】
また、樹脂製成形品の各部位ごとに板厚を変える場合は、薄肉部に対応する金型の部位には、可動型と別途に摺動するスライド型を設け、該スライド型を可動型の成形面よりも突出して成形することにより、スライド型が当接する部位を他の一般部位よりも薄く成形することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−39511公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来例では、スライド型が金型の可動型に設けられていたため、可動型を上下移動させる機構と、スライド型を上下移動させる機構とをそれぞれ別途に設ける必要があり、金型構造が非常に複雑になるという問題があった。
【0005】
また、樹脂成形品の成形時に、スライド型と可動型との隙間内に樹脂が入り込み、スライド型にかじりが発生するおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、構造が簡単で、成形時にスライド型にかじりが発生することのない樹脂成形用金型構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、所定位置に保持される固定型と、該固定型に対して移動自在に構成された可動型とを備え、これら固定型と可動型とで形成されるキャビティ内に溶融樹脂を注入して発泡及び固化させることにより、樹脂製の成形品を成形する樹脂成形用金型構造において、前記固定型のキャビティ側の成形面に凹部を設け、該凹部内に、固定型に対して移動自在のスライド型を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る樹脂成形用金型構造によれば、金型の構造が簡素化されるため、金型の製造コストを大幅に低減することができる。
【0009】
また、樹脂製成形品を成形する際、スライド型が摺動してもかじり等が発生することなく、円滑な成形作業を行うことができる。即ち、従来は、スライド型が可動型に設けられていたため、スライド型と可動型との隙間内に樹脂が入り込み、スライド型にかじりが発生するおそれがあったが、本実施形態によれば、スライド型を固定型に設けたため、従来のようにスライド型にかじりが発生することはなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
図1は本発明の実施形態による金型の断面図である。
【0012】
この金型1は、下側に保持される固定型3と、該固定型3の上側に配置され、固定型3に対して上下方向に移動自在の可動型5とを備え、これらの固定型3及び可動型5は、ダイプレート7,9を介して図外の射出成形装置に取り付けられている。前記固定型3は凸状に形成され、可動型5は凹状に形成され、可動型5に固定型3が嵌合して上下にスライドするように構成されている。また、固定型3に可動型5が嵌合されたときに、固定型3の成形面(上面)13と可動型5の成形面(底面)39との間に、キャビティ(成形品空間)11が形成されている。
【0013】
前記固定型3は、前述したように、ダイプレート9を介して射出成形装置に固定されており、その成形面13には、下方に凹んだ細長い凹部15が上下方向に沿って形成されている。この凹部15内にスライド型17が設けられ、該スライド型17は、駆動装置19を介して上下方向に摺動自在に設けられている。
【0014】
前記固定型3には、溶融樹脂をキャビティ内に導入するための湯口(スプール)21、湯道(ランナー)23及び注入口(ゲート)25が形成されている。前記湯口21には、図外のノズルが取り付けられており、このノズルを介して湯口21に溶融樹脂35が注入されると、湯道23を通って注入口25から前記キャビティ11に溶融樹脂35が流れ込む。
【0015】
図2はスライド型の近傍部を示す断面図である。
【0016】
固定型3のキャビティ11側の成形面13に形成された凹部15内には、スライド型17が収納されている。このスライド型17の下部には、スライド型17を上下に摺動させる油圧式の駆動装置(駆動手段)19が配設されている。該駆動装置19は、凹部15の底部に固定された駆動装置本体27と、該駆動装置本体27に設けられ、上下に摺動自在に構成されたロッド29と、該ロッドの先端に設けられた押圧部31とを備えている。この押圧部とスライド型17との間には、中間部材33が設けられている。従って、ロッド29が上下に移動すると、押圧部31と共に中間部材33が上下移動することにより、スライド型17を前記可動型5とは別途に摺動させることができる。
【0017】
次いで、図3及び図4を用いて、樹脂成形品の成形方法を簡単に説明する。
【0018】
図3は図1の金型に溶融樹脂を充填した状態を示す要部断面図、図4は図3の溶融樹脂が発泡した状態を示す要部断面図である。
【0019】
図3に示すように、固定型3の注入口から溶融樹脂35が注入されると、該溶融樹脂35は左右に広がってキャビティ11内に充填される。この状態では、未だ溶融樹脂35は発泡しておらず、厚さDの状態になっている。
【0020】
次に、図4に示すように、可動型5を上方に移動させると共に、スライド型17も可動型5と同一長さ分だけ上方に移動させる。可動型5を上方に移動させると、溶融樹脂35が発泡して厚みHの発泡樹脂41となる。また、スライド型17を上方に移動させると、このスライド型17の上面37と可動型内の成形面39との上下高さはDとなるため、発泡樹脂41におけるスライド型17の当接部分は発泡することなく、固定型3の成形面13と可動型5の成形面39との上下高さHよりも小さく形成される。よって、発泡樹脂41のうち、スライド型17の上面37が当たる部分の板厚Dは、他の一般部位の板厚Hよりも薄く成形される。この状態で溶融樹脂35が冷却及び固化されたのち、可動型5をさらに上方に持ち上げると共にスライド型17を下降させると、発泡樹脂41からなる樹脂成形品が成形される。
【0021】
図5は自動車用ドア部品である樹脂製基板を成形するための成形用金型に溶融樹脂を充填した状態を示す断面図である。
【0022】
この場合も、キャビティ11に溶融樹脂35が注入及び充填されると、スライド型17が当接する部位の溶融樹脂35の板厚はdとなり、スライド型17が当接しない一般部位の板厚はhになる。
【0023】
図6は図5の溶融樹脂が発泡した状態を示す断面図である。
【0024】
次いで、可動型5及びスライド型17を上方に移動させると溶融樹脂35が発泡して発泡樹脂41になる。このとき、発泡樹脂41のうち、スライド型17が当接している部位の板厚はdのままであり、スライド型17が当接していない一般部位の板厚はh’に膨張する。即ち、スライド型17が当接する部位の板厚dを他の一般部位の板厚h’よりも薄く成形される。
【0025】
図7は本発明の実施形態による樹脂製基板を含むドアの分解斜視図である。
【0026】
このドア43は、ドアパネル45、ウィンドウパネル47、樹脂製基板49、ドアトリム51からなり、樹脂製基板49を介してドアトリム51をドアパネル45に組み付けている。
【0027】
図8は図7の樹脂製基板を示す斜視図、図9は図8の樹脂製基板の要部を拡大して示す斜視図、及び図10は図9の断面図である。
【0028】
図8に示すように、この樹脂製基板49には、図外のウィンドウパネル用昇降モータ等を組み付けてあり、その前側上部には、膨出部分53が形成されている。
【0029】
この膨出部分53は、上部側に形成された厚肉部55と、下部側に形成された薄肉部57とからなり、薄肉部57は、図6で説明したようにスライド型17が当接する部位に対応し、厚肉部55は、スライド型17が当接しない一般部位に対応している。
【0030】
以下に、本発明の実施形態による作用効果について説明する。
【0031】
前記固定型3のキャビティ11側の成形面に凹部15を設け、該凹部15内に、固定型3に対して移動自在のスライド型17を設けているため、金型1の構造が簡素化され、金型1のコストを大幅に低減することができる。
【0032】
また、スライド型17が摺動する際にかじり等が発生することなく、円滑な成形作業を行うことができる。即ち、従来は、スライド型17が可動型5に設けられていたため、スライド型17と可動型5との隙間内に樹脂が入り込み、スライド型17にかじりが発生するおそれがあったが、本実施形態によれば、スライド型17を固定型3に設けたため、従来のようにスライド型17にかじりが発生することはなくなる。
【0033】
前記スライド型17を、油圧式の駆動装置19を介して移動及び保持させるように構成しているため、スライド型17の押圧力の微調整が可能となり、最終的な樹脂成形品である樹脂製基板49の薄肉部57における板厚の寸法精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による金型の断面図である。
【図2】金型のスライド型近傍部を示す断面図である。
【図3】図1の金型内に溶融樹脂を充填した状態を示す要部断面図である。
【図4】図3の溶融樹脂が発泡した状態を示す要部断面図である。
【図5】自動車用ドア部品である樹脂製基板を成形する成形用金型に溶融樹脂を充填した状態を示す要部断面図である。
【図6】図5の溶融樹脂が発泡した状態を示す要部断面図である。
【図7】本発明の実施形態による樹脂製基板を含むドアの分解斜視図である。
【図8】図7の樹脂製基板を示す斜視図である。
【図9】図8の樹脂製基板の要部を拡大した斜視図である。
【図10】図9の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1…金型
3…固定型
5…可動型
11…キャビティ
13,39…成形面
15…凹部
17…スライド型
19…駆動装置(駆動手段)
35…溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に保持される固定型と、該固定型に対して移動自在に構成された可動型とを備え、これら固定型と可動型とで形成されるキャビティ内に溶融樹脂を注入して発泡及び固化させることにより、樹脂製の成形品を成形する樹脂成形用金型構造において、
前記固定型のキャビティ側の成形面に凹部を設け、該凹部内に、固定型に対して移動自在のスライド型を設けたことを特徴とする樹脂成形用金型構造。
【請求項2】
前記スライド型を、油圧式の駆動手段を介して移動及び保持させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形用金型構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−272640(P2006−272640A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92441(P2005−92441)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(300084421)ジー・ピー・ダイキョー株式会社 (50)
【Fターム(参考)】