説明

樹脂成形装置

【課題】樹脂成形装置において、ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口の開口面での溶融樹脂の固化を防ぐ。
【解決手段】本発明の樹脂成形装置は、射出装置からノズルまたはダイあるいはTダイを介して金型上に溶融樹脂を吐出し、次いで型締めを行うことにより樹脂製品を成形する樹脂成形装置において、吐出口2の開口面の溶融樹脂を保温または加熱するための赤外線ヒータ4を、吐出口2に向けて吐出口2の斜め前方に配置したことを特徴とする。また、赤外線ヒータを使用して吐出口2の開口面の溶融樹脂を保温または加熱する代わりに、吐出口2を閉鎖するためのシャッタ8を設け、このシャッタ8をヒータ9で加熱しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出装置からノズルまたはダイあるいはTダイ等を介して金型上に溶融樹脂を吐出し、次いで型締めを行うことにより樹脂製品を成形する樹脂成形装置に係り、特に、溶融樹脂を吐出するノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口周りの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
射出装置からノズルまたはダイあるいはTダイを介して金型上に溶融樹脂を吐出し、次いで型締めを行なうことにより樹脂製品を成形する樹脂成形装置においては、射出装置から溶融樹脂を射出することにより、既にノズルまたはダイあるいはTダイに充満している溶融樹脂が、ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口より金型上に吐出される。また、それと同時に、射出装置の次回の射出動作で金型上に吐出される溶融樹脂が、ノズルまたはダイあるいはTダイに充填される。射出装置の次回の射出動作が開始されるまでの間、ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口に充満している溶融樹脂は、吐出口の開口面で大気と触れ、その部分の温度が局部的に低下して固化することがある。
【0003】
従来の樹脂成形装置では、このような吐出口における樹脂の固化を積極的に防止する対策は、取られていない。
【0004】
但し、(a)射出成形機の射出装置のノズルについては、樹脂垂れの防止を目的として、吐出口を開閉する機構(例えば、ニードル式シャットオフノズル)を設ける場合がある。(b)Tダイに関しては、塗工の分野で、液垂れの防止を目的として、吐出口にシャッタを設けた例がある(特許第291727号)。(c)ダイに関しては、樹脂漏れを防ぐために、カッターで溶融樹脂を切断後、吐出口を塞ぐ機構を設けた例がある(実公平7−23216号)。
【0005】
(従来技術の問題点)
吐出口の開口面で一旦固化した樹脂は、その後、金型に送り込まれ、型締めされたとしても、溶融樹脂の温度により再溶融されにくいので、製品の不良の原因となる。特に、透明の樹脂製品については、固化された箇所が製品に明確に不具合として現われる。
【0006】
シャットオフ機構を持たないオープンノズル、あるいは吐出口の開閉機構が無いTダイやダイの場合、吐出口の開口面が大気に曝されるため、吐出口の開口面で溶融樹脂が固化され易い。
【0007】
また、ニードル式シャットオフノズルを使用した場合、ニードルバルブ及びその駆動機構との間の干渉を避けるため、ノズル内で溶融樹脂の流路が屈曲する構造となる。そのため、ノズル内で溶融樹脂が滞留し易く、滞留した溶融樹脂により不具合を生じやすい成形品を製造する場合には、ニードル式シャットオフノズルを使用することができない。
【0008】
ロータリ式シャットオフバルブを使用した場合、ロータリバルブ自体はノズルの先端部に配置されていないため、オープンノズルと同様にその開口面が大気に曝されることになる。このため、吐出口の開口面で溶融樹脂が固化され易い状態となる。
【0009】
吐出口の開閉機構を備えたTダイやダイについては、目的が液垂れや樹脂漏れの防止にあることから、シャッタ等の開閉板自体は、その構成にもよるが、Tダイやダイからの伝熱である程度加熱されるのみで、吐出口の開口面の溶融樹脂と接触する部分の温度をコントロールすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第291727号公報
【特許文献2】実公平7−23216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような従来の樹脂成形装置における問題点に鑑み成されたもので、本発明の目的は、樹脂成形装置において、ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口の開口面での溶融樹脂の固化を防ぎ、製品の不具合を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の樹脂成形装置は、
射出装置からノズルまたはダイあるいはTダイを介して金型上に溶融樹脂を吐出し、次いで型締めを行なうことにより樹脂成形品を成形する樹脂成形装置において、
ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口の開口面の溶融樹脂を保温または加熱するための赤外線ヒータを、吐出口に向けて吐出口の斜め前方に配置したことを特徴とする。
【0013】
本発明の樹脂成形装置によれば、ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口の開口面の溶融樹脂を赤外線ヒータを用いて保温または加熱することにより、前記開口面での溶融樹脂の局部的な固化を防ぐことができる。
【0014】
また、ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口の開口面の溶融樹脂を赤外線ヒータを用いて保温または加熱する代わりに、吐出口を閉鎖するためのシャッタを設け、このシャッタをヒータで加熱しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口の開口面の溶融樹脂の局部的な固化を確実に防止することよって、固化した樹脂に起因するフローマーク等の不具合の発生を抑え、あるいは、成形品の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づく樹脂成形装置の一例を示すであって、この例では赤外線ヒータが使用されている。
【図2】本発明に基づく樹脂成形装置の一例を示すであって、この例ではヒータを備えたシャッタが使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本発明に基づく樹脂成形装置の一例(主要部のみ)を示す。図中、1はTダイ、2は吐出口、4は赤外線ヒータ、10は射出装置(部分)を表わす。
【0018】
射出装置10の先に、Tダイ1が取り付けられている。Tダイ1の側面に、支持脚3が取り付けられ、この支持脚3の先に赤外線ヒータ4が保持されている。赤外線ヒータ4は、赤外線の照射方向を吐出口2に向けて、吐出口2の斜め前方に配置されている。
【0019】
なお、この例では、赤外線ヒータ4は固定式であるが、赤外線ヒータ4を可動式として任意の位置に調整したり、吐出時に溶融樹脂が付着しないように後方に退避できる構造とすることも考えられる。
【0020】
また、従来、Tダイ1の吐出口2の部分は大気に触れ、温度コントロールされているTダイ1本体よりも、温度が低下する傾向にあるが、本発明によれば、吐出口2の開口面の溶融樹脂と同時に、吐出口2も保温または加熱されるので、温度の均一性を向上することができる。このことは、Tダイ2のみならず、ノズル及びダイを用いた場合も同様である。
【0021】
図2に、本発明に基づく樹脂成形装置の他の例(主要部のみ)を示す。図中、1はTダイ、8はシャッタ、9はヒータを表わす。
【0022】
射出装置10の先に、Tダイ1が取り付けられている。Tダイ1の側面には、支持脚3が取り付けられ、この支持脚3に、軸11を介して回転プレート7が取り付けられている。回転プレート7の外周上のTダイ1の吐出口2と向かい合う部分には、シャッタ8が取り付けられている。シャッタ8には、カートリッジヒータ9が組み込まれている。回転プレート7の外周近傍のTダイ1の吐出口2とは反対側の部分には、スロット12が形成されている。支持脚3には、更に、空圧シリンダ6が固定されている。空圧シリンダ6のピストンの先は、ピン13を介して上記のスロット12に接続されている。
【0023】
空圧シリンダ6を駆動することによって、回転プレート7が軸11の回りで傾動角度を変える。空圧シリンダ6のピストンを前進させると、シャッタ8がTダイ1の吐出口2に密着して、吐出口2を塞ぐ。空圧シリンダ6のピストンを後退させると、図2の中で符号8aで示すように、シャッタ8が後方に退避して、吐出口2を開く。
【0024】
吐出口2から溶融樹脂を吐出した後、シャッタ8で吐出口2を塞いで、吐出口2の開口面の溶融樹脂が大気に触れることを防ぐ。この時、シャッタ8はカートリッジヒータ9により加熱され、その温度は適切にコントロールされている。また、シャッタ8の表面には、溶融樹脂が付着しないように、好ましくはフッ素系のコーティングまたはメッキ処理を施す。なお、シャッタ8は樹脂漏れを防ぐ機能も併せ持つ。
【符号の説明】
【0025】
1・・・Tダイ、2・・・吐出口、3・・・支持脚、4・・・赤外線ヒータ、6・・・空圧シリンダ、7・・回転プレート、8・・・シャッタ(閉じた状態)、8a・・・シャッタ(開いた状態)、9・・・カートリッジヒータ、11・・・軸、12・・・スロット、13・・・ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出装置からノズルまたはダイあるいはTダイを介して金型上に溶融樹脂を吐出し、次いで型締めを行なうことにより樹脂成形品を成形する樹脂成形装置において、
ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口の開口面の溶融樹脂を保温または加熱するための赤外線ヒータを、吐出口に向けて吐出口の斜め前方に配置したことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項2】
射出装置からノズルまたはダイあるいはTダイを介して金型上に溶融樹脂を吐出し、次いで型締めを行なうことにより樹脂成形品を成形する樹脂成形装置において、
ノズルまたはダイあるいはTダイの吐出口を閉鎖するためのシャッタと、このシャッタを加熱するためのヒータと、を備えたことを特徴とする樹脂成形装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−210816(P2012−210816A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142963(P2012−142963)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【分割の表示】特願2005−304571(P2005−304571)の分割
【原出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】