説明

樹脂材回収装置

【課題】樹脂材の材料特性を劣化させることなく、この樹脂材を回収する。
【解決手段】被膜形成樹脂材1の被膜溶解処理を行う処理槽2の内側に水平回転軸3を設け、この回転軸から外周に突出して複数のアーム14を設け、この各アームに2枚の板状ハンマー15a、15bを平行に設ける。この板状ハンマーの間に、このアームと同軸に可動アーム16を設け、この可動アームの一端を上記回転軸と同軸に設けた偏心回転軸9の表面に接触させて、偏心回転軸の回転とともに、上記可動アームを上記アームと同軸方向に移動可能とする。この可動アームの他端に可動ハンマー17を設け、上記板状ハンマーと可動ハンマーを近接させる。上記処理槽に処理溶液を満たし、小片に破砕したCD等を投入し、上記両ハンマーの間に上記小片が挟み込むと上記溶液による被膜溶解の効率が向上するため、被膜除去が速やかになされ、この樹脂材の材料特性が劣化しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被膜が形成されている被膜形成樹脂材から樹脂材を回収する樹脂材回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンパクトディスク(CD)やデジタル多用途ディスク(DVD)は、主原料がポリカーボネート等の樹脂材であって、近年の資源リサイクルへの関心の高まりに伴い、廃棄CD及びDVDから上記樹脂材を回収することが一般的となっている。このCDやDVDは、レーザ光反射被膜としてアルミニウム等の金属被膜が形成され、この金属被膜は上記リサイクルにおいて回収した上記樹脂材の品質を劣化させる恐れがあるため、この回収の際に上記金属被膜を除去する必要がある。
【0003】
また、CDやDVDの表面には、レーベル面(タイトル等の印刷面)が設けられ、この上記レーベル面に含まれるインク成分等も上記金属被膜と同様に回収した樹脂材の品質を劣化させる恐れがある。そのため、上記回収においてはこのレーベル面も除去する必要がある。
【0004】
この金属被膜等が形成された被膜形成樹脂材から樹脂材のみを回収する方法の一つとして、上記被膜形成樹脂材を苛性ソーダ等のアルカリ溶液中に浸漬し、上記金属被膜等を溶解して除去するものがある。
例えば、特許文献1においては、CDを3〜10mm程度の小片に破砕し、破砕したCDを70〜100℃に加熱した、濃度が10〜30%の苛性ソーダ水溶液に浸漬撹拌してポリカーボネートに形成されたアルミニウム等の被膜を溶解除去し、ポリカーボネートのみを回収する方法が示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2615277号公報
【0006】
一般的にCDやDVDは、2枚のポリカーボネート板の間にアルミニウム等からなる金属被膜が挟まれた積層構成となっている。そのため、上記溶解除去に際しては、まず、破砕したCD等の端面に露出した金属被膜を溶解除去し、上記水溶液をポリカーボネート板の間の隙間に浸入させて、全ての金属被膜を溶解除去する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記金属被膜は一般的に蒸着被膜であって非常に薄いので、ポリカーボネート板の間の隙間はわずかである。このため、この隙間に上記苛性ソーダ溶液を速やかに浸入させるのは容易ではない。この結果、この金属被膜の溶解除去に長時間(1日程度)を要したり、高濃度の苛性ソーダ溶液を用いたりする必要が生じ、この処理によって、アルカリに対してさほど強くないポリカーボネートが化学的に変性して、材料特性(透明性や材料強度等)が劣化する恐れがある。
【0008】
また、上記溶解除去を速やかに完了するためには、CDやDVDを予めできるだけ細かく破砕しておき、上記苛性ソーダ溶液が上記隙間の奥深くまで浸入しなくても済むようにする必要があり、このように細かく破砕するには余計なコストと時間を要する。
【0009】
そこで、この発明は、ポリカーボネート等の樹脂材の材料特性を劣化させることなく、この樹脂材を速やかに回収することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、被膜が形成されている被膜形成樹脂材から上記被膜を除去して上記樹脂材を回収する樹脂材回収装置において、上記被膜形成樹脂材の被膜の除去処理を行う処理槽の内側に回転軸を設け、この回転軸から外向きに突出してアームを設けるとともにこのアームに板状ハンマーを設け、上記アームと同軸にこの軸方向に可動の可動アームを設け、この可動アームに可動ハンマーを設け、上記板状ハンマーと可動ハンマーを近接させて、両者の間に上記被膜形成樹脂材を挟み込む構成とすることにしたのである。
このように、被膜形成樹脂材を板状ハンマーと可動ハンマーの間に挟み込むようにすることで、この挟み込みの際に被膜形成樹脂材に変形が生じ、この変形によって上記被膜と樹脂材の間に隙間が生じ得る。この隙間に上記被膜を溶解する溶液等が浸入してこの被膜を除去し、上記被膜が除去された樹脂材が回収される。
【0011】
上記構成において、上記板状ハンマーと可動ハンマーの双方の上記挟み込みを行う面を非平面とすることができる。
このようにすれば、板状ハンマーと可動ハンマーの間に挟みこまれた被膜形成樹脂材が、上記非平面の形状に沿うように強制的に変形されるため、この強制変形によって上記被膜と樹脂材の間に隙間が生じやすい。このため、この隙間に上記溶液等が容易に浸入する。また、上記変形の際、樹脂材表面にひび割れが生じることがあり、そのひび割れを通って、上記被膜と樹脂材の間に上記溶液が浸入し得る。そのため、この被膜の除去処理効率が一層向上する。
【0012】
上記非平面が、上記挟み込みを行う面に突起を形成することによってなされ、一方の面に形成した突起の凸部が、他方の面に形成した突起の凹部に嵌まり込むようにすることができる。
このようにすれば、被膜形成樹脂材が、上記突起によって板状ハンマーと可動ハンマーの間に強く挟み込まれて脱落しにくい。そのため、上記変形が確実になされ、上記除去処理効率が更に向上する。
【0013】
上記樹脂材回収装置において、上記可動アームの一端が、上記回転軸と同軸に偏心回転する偏心回転軸の外周面に接触し、上記回転軸の軸心と、上記偏心回転軸と上記可動アームの上記一端との当接部との間の距離に対応して、上記可動アームが上記アームと同軸に移動することによって上記挟み込みがなされるようにすることができる。
上記可動アームのストローク量は、上記偏心回転軸の偏心量によって決まり、例えば、上記偏心量がaの場合、上記偏心回転軸の回転によって得られるストローク量は、この偏心回転軸の長径と短径の差、つまり2aとなる。
【0014】
また、上記可動ハンマーと上記回転軸との間に、上記可動ハンマーを上記回転軸に向けて付勢する弾性部材を介在して設けることができる。
この弾性部材の付勢力によって、上記可動アームの上記一端と、上記偏心回転軸の外周面とが接触した状態が常に維持されるため、上記偏心回転軸の回転に対応して上記可動アームが上記アームと同軸方向に円滑に移動する。
【0015】
また、上記可動アームの上記一端を、上記回転軸と同軸に回転する回転部材に形成された溝に嵌め込み、この溝と上記回転軸の軸心との間の距離に対応して、上記可動アームが上記アームと同軸に移動することによって上記挟み込みがなされるようにすることもできる。
このようにすれば、上記偏心回転軸の外周面に上記可動アームの上記一端を接触させた場合と同様に、この可動アームを上記アームと同軸方向に移動させることができる。しかも、この可動アームの上記一端は上記溝に嵌まり込んでいるため、この回転部材の回転とともに上記可動アームがその軸方向に沿って動き得る。そのため、上記弾性部材を用いなくとも、上記可動アームの上記回転軸の向きへの引き戻しがなされる。
【0016】
また、上記アームに、複数の板状ハンマーを平行に設け、この隣り合う板状ハンマーの間に上記可動ハンマーを上記可動アームに固定して設け、この可動ハンマーを順次、隣り合う上記板状ハンマーに近接させるようにすることができる。
このようにすれば、上記可動ハンマーが往復移動する際、その上死点と下死点の双方において上記被膜形成樹脂材の挟み込みがなされるので、それに伴って処理効率が向上する。
【0017】
また、上記処理槽をこの処理槽の外部から加熱することによって、この処理槽内を加熱するようにすることができる。
このように、処理槽内を外部から間接的に加熱すれば、例えば電熱ヒータを上記処理槽内に設けて直接加熱した場合と比較して、上記処理槽内の処理溶液等が局所的に高温過熱される恐れが低くなる。そのため、この高温過熱によって上記処理溶液等が劣化することなく、この処理溶液等の処理能力を維持することができる。
【0018】
上記溶解処理に際し、上記回転軸と偏心回転軸が相互に逆方向に回転するようにすることができ、このように逆回転すれば、上記回転軸と偏心回転軸の相対回転速度が大きくなるため、それに伴って上記可動ハンマーの移動速度が大きくなり処理能力が向上する。
また、上記回転軸と回転部材も相互に逆方向に回転するようにすることができ、それによって上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、ポリカーボネート等の樹脂材の回収処理が速やかに完了するので、この回収処理の間に上記処理溶液等によって上記樹脂材の材料特性が劣化する恐れは低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1にこの発明に係る樹脂材回収装置の全体構成を示す。
【0021】
この樹脂材回収装置は、被膜形成樹脂材1の被膜溶解処理を行う処理槽2が設けられ、その処理槽2の内側に、水平に回転軸3が設けられている。この回転軸3はその両端において軸受4、4で支持され、そのうちの一端にプーリー5がこの回転軸3と同軸に設けられている。このプーリー5は、チェーン6を介してケーシング7に設けられたモータ8によって回転を伝達される。
【0022】
この回転軸3の内部は中空(円筒状)になっており、その中空内部に、この回転軸3と同軸に、偏心量aだけ偏心した偏心回転軸9が設けられている。この偏心回転軸9も回転軸3と同軸に軸受4、4で支持され、そのうちの一端にプーリー10がこの偏心回転軸9と同軸に設けられている。このプーリー10は、チェーン11を介してケーシング7に設けられた他のモータ12によって回転を伝達される。
【0023】
この回転軸3の円筒面には、この円筒面の周方向に、その中空の内部に貫通する2箇所の貫通孔13が対向して形成され、同様に対向して形成された貫通孔13が、この円筒面の軸方向に等間隔かつ軸周りに90度回転しながら、さらに5列形成されている(図1参照)。この計12箇所の貫通孔13の位置に対応して、中空のアーム14が回転軸3の円筒面から垂直に突出して、この回転軸3に設けられている。
【0024】
この各アーム14には、それぞれ2枚の円板形状の板状ハンマー15、15が、その板状ハンマー15、15の中心軸とアーム14の軸とを同一にして、平行に隔離して設けられている。
【0025】
このアーム14の中空の内部には、このアーム14と同軸に、この軸方向に移動自在に棒状の可動アーム16が設けられ、この可動アーム16の一端は貫通孔13を通して偏心回転軸9の外周面に接触している。また、この可動アーム16の他端側には、可動ハンマー17が、上記2枚の板状ハンマー15、15の間に位置するように、しかも、これらの板状ハンマー15、15と同軸かつ平行に設けられている(図1及び図2参照)。
【0026】
回転軸3に設けるアーム14の本数は、このアーム14に設けた板状ハンマー15がその回転の際に相互に接触しない限り、適宜増やすことができる。このようにアーム14の数を増やせばこのアーム14に設けることができる板状ハンマー15の数を増やすことが可能なので、回収処理の効率を高めることができる。
【0027】
この各アーム14に設ける板状ハンマー15の枚数は上記構成のように2枚に限定されるものではなく、3枚以上設けることもでき、その際は各板状ハンマー15の間に可動ハンマー17を設けるようにすることもできる。このように両ハンマー15、17の数を増やすことで上記と同様に回収処理の効率を高めることができる。
【0028】
また、図3に示すように、板状ハンマー15と可動ハンマー17の挟み込みを行う双方の面には、棒状部材18が所定間隔sを有しつつ平行して複数並べて設けられている。この所定間隔sは、棒状部材18の太さより広いので、上記挟み込みの際に、板状ハンマー15又は可動ハンマー17のいずれか一方の凸部(棒状部材18を設けた部分)を、他方の凹部(棒状部材18のない部分)に嵌まり込むようにすることができる。
【0029】
この2枚の板状ハンマー15のうち、回転軸3から離れている側の板状ハンマー15aは、弾性体19とともにアーム14に形成された縮径部20に嵌め込まれている。この板状ハンマー15aと可動ハンマー17が近接して被膜形成樹脂材1が両ハンマー15a、17の間に挟み込まれると、その挟み込み力に対応して弾性体19がアーム14の先端側に押されて縮む。この弾性体19の材質や厚さを適宜変えることによって、この弾性体19による弾性力(弾性体19の縮み量)が調節できるため、それに伴って上記挟み込み力を適切な大きさに維持することができる。
【0030】
このようにすれば、例えば、複数の被膜形成樹脂材1が重なり合った状態で挟み込まれた際に、重なり合った被膜形成樹脂材1の全厚さに対応して弾性体19が縮んでその挟み込み力が適切な大きさに維持されるので、過大な挟み込み力によって被膜形成樹脂材1や両ハンマー15a、17が破損するのが回避できる。この弾性体19としてゴム材等が採用できる。
この弾性体19は必ずしも設ける必要はなく、上記挟み込み力が両ハンマー15a、17を介して直接被膜形成樹脂材1に伝達されるようにしてもよい。
【0031】
また、図3及び図4に示すように、可動ハンマー17とアーム14の間に介在して、この可動ハンマー17を回転軸3の軸心方向に付勢するばね21が、それぞれの可動ハンマー17に2本ずつ設けられている。このばね21の付勢力によって、この可動ハンマー17と一体の可動アーム16の上記一端は常に偏心回転軸9の外周面に押し付けられて接触した状態が維持される。
【0032】
2枚の板状ハンマー15のうち、回転軸3に近い側の板状ハンマー15bと可動ハンマー17が近接すると、このばね21の弾性力に対応した挟み込み力で被膜形成樹脂材1が両ハンマー15b、17の間に挟み込まれる。このばね21のばね定数を適宜変えることによって、このばね21の弾性力が調節できるため、それに伴って上記挟み込み力を適切な大きさに維持することができる。
このようにすれば、上記と同様に、過大な挟み込み力によって被膜形成樹脂材1や両ハンマー15b、17が破損するのが回避できる。
【0033】
この偏心回転軸9が回転すると、その偏心量に対応して、回転軸3の軸心22と可動アーム16の一端との当接部23との間の距離が変化し、この変化に対応して、可動アーム16がその軸方向に往復移動する(図4参照)。上述したように、この可動アーム16のストローク量は偏心回転軸9の長径と短径の差となり、上記偏心量がaの場合、上記ストローク量は2aとなる。そのため、上記2枚の板状ハンマー15a、15bは上記偏心量の2倍だけ隔離して設けられている。
【0034】
この偏心回転軸9の代わりに、回転軸3と同軸に設けられた他の回転軸にカムを設け、このカムの外周縁に可動アーム16の一端を接触させて、この可動アーム16をアーム14と同軸方向に移動するようにすることもできる。
【0035】
また、可動ハンマー17は、図5に示すように、半月状の分割部材17a及び17bから構成される。この分割部材17a、17bは、可動アーム16に形成された、ほぞ24を分割部材17a、17bに形成したほぞ穴25に差し込まれ、さらにねじ17cによって可動アーム16に固定されている。アーム14には長孔26が形成され、ほぞ24が長孔26内をアーム14の軸方向に往復移動することによって、可動ハンマー17が往復移動する。ばね21は、両分割部材17a、17bに形成されたばね取り付け穴27に取り付けられる。
【0036】
この板状ハンマー15と可動ハンマー17が嵌まり込み合うと、図6に示すように、被膜形成樹脂材1が強く挟み込まれ、この被膜形成樹脂材1を構成する樹脂材28と被膜29の間に隙間gが生じたり、樹脂材28表面にひび割れcが生じたりする。この隙間gやひび割れcを通って処理溶液等が浸入して被膜29が除去される。また、樹脂材28表面にレーベル面が形成されている場合においても、そのレーベル面にひび割れcが生じやすく、そのひび割れcに処理溶液等が浸入するため、上記除去が速やかになされる。
【0037】
図7に示すように、平行に設けられた2枚の板状ハンマー15a、15bのうち、回転軸3に近い側の板状ハンマー15bには、ばね用孔30が設けられ、このばね用孔30を通して上記の2本のばね21が設けられる。
【0038】
この板状ハンマー15及び可動ハンマー17には、各ハンマー15、17の表面から裏面に貫通する水抜き孔31が複数形成されており、両ハンマー15、17によって被膜形成樹脂材1が挟み込みされる際に、処理溶液がこの水抜き孔31から排出(図7(a)中の矢印f参照)される。
この水抜き孔31を形成しない場合、上記挟み込みの際に、両ハンマー15、17の上記挟み込みを行う面の端部から上記処理溶液が排出されるのとともに、被膜形成樹脂材1が流されて上記面から脱落する恐れがあるが、この水抜き孔31から処理溶液を排出することで上記脱落が回避される。そのため、被膜形成樹脂材1が両ハンマー15、17の間に確実に挟み込まれる。
この水抜き孔31の形状は、図7に示すように平行に配置した複数の長孔とする他に、水抜き効率を向上させるため、板状ハンマー15の中心から放射状に設けた形状とすることもできる。
【0039】
この板状ハンマー15にはその外周縁に突部32が形成され、この突部32は板状ハンマー15が可動ハンマー17と近接して被膜形成樹脂材1を挟み込む際、この板状ハンマー15の外周縁から被膜形成樹脂材1が上記処理溶液の排出とともに脱落するのを防止する。そのため被膜形成樹脂材1の上記挟み込みが一層確実になされる。
【0040】
この樹脂材回収装置を用いた回収処理においては、処理槽2に苛性ソーダ水溶液33を満たし、この苛性ソーダ水溶液33を、処理槽2の外部に設けられた図示しないヒータによって所定の温度に加熱し、加熱した苛性ソーダ水溶液33に、数mm〜数cm程度に破砕したCDやDVDの小片を投入する。さらに、両モータ8、12を稼動して処理を行うと、1時間程度の短時間でCD等のポリカーボネート樹脂材から反射被膜として形成されたアルミニウムの層が溶解除去されて、ポリカーボネートのみが回収される。そのため、従来処理において上記回収処理に1日程度を要していたのと比較して処理コストを大幅に低減でき、しかも、上記処理においてポリカーボネートの材料特性を劣化させることがない。
【0041】
この回転軸3と偏心回転軸9の回転方向は、両モータ8、12の回転方向を変えることで適宜変えることができるが、相互に逆方向にすることが好ましい。上述したように、逆方向とすることにより可動ハンマー17の移動速度を大きくすることができるためである。また、両軸3、9の回転速度が異なるのであればこの両軸3、9の回転方向を同じにすることもでき、あるいは、この両軸3、9のうち一方の回転を停止した状態にすることもできる。
【0042】
上記金属被膜がアルミニウム等の両性金属の場合、この処理溶液33として苛性ソーダ水溶液等のアルカリ溶液だけではなく、硝酸等の酸性溶液を用いることもできる。ただし、その際には、通常はステンレス等からなるアーム14等の装置構成部材が酸性溶液によって腐食しないように、この装置構成部材の表面にセラミックス被膜等を形成して予め保護したり、この装置構成部材を耐食性のある素材で構成したりする必要がある。
【0043】
また、この処理は必ずしも溶液中で行う必要はなく、例えば、塩化水素ガス等の腐食性ガスを処理槽2に導入して、気相中で行うことも考えられる。この際には、被膜形成樹脂材1が効率的に両ハンマー15、17に挟み込まれるようにするため、例えば、処理槽2中の腐食性ガスをブロワー等で循環して、被膜形成樹脂材1が処理槽2内で撹拌される(吹き飛ばされる)ようにする等、適宜工夫する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一実施形態における(a)は全体側面図、(b)は全体正面図
【図2】同実施形態における(a)は処理槽側面図、(b)は処理槽正面図
【図3】同実施形態における要部の(a)は正面図、(b)は側面図
【図4】同実施形態における要部の作用断面図
【図5】可動ハンマーの分解斜視図
【図6】被膜形成樹脂材が可動ハンマー及び板状ハンマーに挟まれた様子を示す断面図
【図7】同実施形態における要部の(a)は斜視図、(b)は板状ハンマーの平面図
【符号の説明】
【0045】
1 被膜形成樹脂材
2 処理槽
3 回転軸
9 偏心回転軸
14 アーム
15 板状ハンマー
16 可動アーム
17 可動ハンマー
18 突起
21 弾性部材(ばね)
23 当接部
28 樹脂材
29 被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜(29)が形成されている被膜形成樹脂材(1)から上記被膜(29)を除去して樹脂材(28)を回収する樹脂材回収装置において、
上記被膜形成樹脂材(1)の被膜(29)の除去処理を行う処理槽(2)の内側に回転軸(3)を設け、この回転軸(3)から外向きに突出してアーム(14)を設けるとともにこのアーム(14)に板状ハンマー(15)を設け、上記アーム(14)と同軸にこの軸方向に可動の可動アーム(16)を設け、この可動アーム(16)に可動ハンマー(17)を設け、上記板状ハンマー(15)と可動ハンマー(17)を近接させて、両者の間に上記被膜形成樹脂材(1)を挟み込むようにしたことを特徴とする樹脂材回収装置。
【請求項2】
上記板状ハンマー(15)と可動ハンマー(17)の双方の上記挟み込みを行う面を非平面としたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂材回収装置。
【請求項3】
上記非平面が、上記挟み込みを行う面に突起(18)を形成することによってなされ、一方の面に形成した突起(18)の凸部が、他方の面に形成した突起(18)の凹部に嵌まり込むようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂材回収装置。
【請求項4】
上記可動アーム(16)の一端が、上記回転軸(3)と同軸に偏心回転する偏心回転軸(9)の外周面に接触し、上記回転軸(3)の軸心と、上記偏心回転軸(9)と上記可動アーム(16)の一端との当接部(23)との間の距離に対応して、上記可動アーム(16)が上記アーム(14)と同軸に移動することによって上記挟み込みがなされることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹脂材回収装置。
【請求項5】
上記可動ハンマー(17)と上記回転軸(3)との間に、上記可動ハンマー(17)を上記回転軸(3)に向けて付勢する弾性部材(21)を介在して設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の樹脂回収装置。
【請求項6】
上記可動アーム(16)の一端を、上記回転軸(3)と同軸に回転する回転部材に形成された溝に嵌め込み、この溝と上記回転軸(3)の軸心(22)との間の距離に対応して、上記可動アーム(16)が上記アーム(14)と同軸に移動することによって上記挟み込みがなされることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹脂材回収装置。
【請求項7】
上記アームに、複数の板状ハンマー(15)を平行に設け、この隣り合う板状ハンマー(15)の間に上記可動ハンマー(17)を上記可動アーム(16)に固定して設け、この可動ハンマー(17)を順次、隣り合う上記板状ハンマー(15)に近接させることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の樹脂材回収装置。
【請求項8】
上記処理槽(2)をこの処理槽(2)の外部から加熱することによって、この処理槽内を加熱することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の樹脂材回収装置。
【請求項9】
上記回転軸(3)と偏心回転軸(9)が相互に逆方向に回転することを特徴とする請求項1から5、7又は8のいずれかに記載の樹脂材回収装置。
【請求項10】
上記回転軸(3)と回転部材が相互に逆方向に回転することを特徴とする請求項1から3、又は、6から8のいずれかに記載の樹脂材回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−254373(P2008−254373A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100581(P2007−100581)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(507113524)株式会社未来工業 (1)
【Fターム(参考)】