説明

樹脂用の加工安定化剤、該加工安定化剤を含む樹脂組成物、および樹脂の加工安定性を向上させる方法

【課題】樹脂用の加工安定化剤を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される化合物の少なくとも1個のヒドロキシ基がC2-30脂肪族アシルオキシ基または置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基で置き換わったエステル化合物(2)を含むことを特徴とする樹脂用の加工安定化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂用の加工安定化剤、および該加工安定化剤を含む樹脂組成物に関する。本発明は、該加工安定化剤を使用して樹脂の加工安定性を向上させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂およびその組成物は成形性などに優れているため、様々な用途に広く用いられている。このような樹脂の特性(例えば加工安定性)を向上させるために、種々の添加剤を使用することが知られている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】本間精一、1.基礎総合解説編、現場で役立つ成形加工技術−材料と成形技術、プラスチック2002年4月号別冊4頁、(株)工業調査会発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂組成物の成形加工などは、高温で行われる場合がある。そのため高温加工の際に樹脂の加工安定性を向上させることができる加工安定化剤が求められている。本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、樹脂用の加工安定化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、特定のエステル化合物を使用すれば、樹脂の加工安定性を向上させることができることを見出した。
【0006】
このような知見に基づき、本発明の樹脂用の加工安定化剤は、式(1)で表される化合物の少なくとも1個のヒドロキシ基がC2-30脂肪族アシルオキシ基または置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基で置き換わったエステル化合物(2)を含むことを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
なお本発明(即ち本願明細書および特許請求の範囲)において、「樹脂用の加工安定化剤」とは、「樹脂の加工安定性を向上させる添加剤」を意味し、詳しくは「該添加剤を添加しない場合と比べて、樹脂の高温混練時に混練トルクの上昇を防ぎ、混練トルクの最大値に到達するまでの時間(ビルドアップタイム)を延長させる作用を有する添加剤」を意味する。また「Ca-b」とは、炭素数がa以上b以下であることを意味する。
また以下では「式(1)で表される化合物」等を「化合物(1)」等と略称することがある。
【0009】
エステル化合物(2)は、好ましくは、式(2−1)で表される化合物である。
【0010】
【化2】

【0011】
式(2−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、C2-30脂肪族アシル基または置換基を有していてもよいベンゾイル基を表す。但しR1およびR2の少なくとも1個はC2-30脂肪族アシル基または置換基を有していてもよいベンゾイル基である。
【0012】
化合物(1)は、好ましくは、グルコピラノースの2分子が互いに1位のヒドロキシ基で脱水縮合した二糖類であり、より好ましくはα−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドである。
【0013】
本発明は、上記加工安定化剤および樹脂を含むことを特徴とする樹脂組成物;並びに上記加工安定化剤および樹脂を混合することを特徴とする樹脂の加工安定性を向上させる方法;も提供する。
【発明の効果】
【0014】
エステル化合物(2)を使用すれば、樹脂の加工安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の加工安定化剤は、エステル化合物(2)を含むことを特徴とする。エステル化合物(2)は、化合物(1)の少なくとも1個のヒドロキシ基がC2-30脂肪族アシルオキシ基または置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基(好ましくはC2-30脂肪族アシルオキシ基)で置き換わった化合物である。以下では、まず化合物(1)から説明する。
【0016】
化合物(1)は、式(1)で表されるピラノース型のアルドヘキソースの2分子が、互いに1位のヒドロキシ基で脱水縮合した二糖類である。
【0017】
【化3】

【0018】
ピラノース型のアルドヘキソースは、α体でもβ体でもよく、好ましくはα体である。またピラノース型のアルドヘキソースは、D体でもL体でもよく、好ましくはD体である。ピラノース型のアルドヘキソースとしては、グルコピラノース、マンノピラノース、ガラクトピラノース、アロピラノース、アルトロピラノース、グロピラノース、イドピラノースおよびタロピラノースが挙げられる。これらの中でグルコピラノースが好ましく、α−D−グルコピラノースおよびβ−D−グルコピラノースがより好ましい。化合物(1)としては、α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシド、およびα−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシドが好ましく、入手しやすさからα−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド(以下「トレハロース」と略称することがある)がより好ましい。
【0019】
次にC2-30脂肪族アシルオキシ基および置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基について説明する。本発明において「C2-30脂肪族アシル基」とは「C2-30脂肪酸(即ちR3CO−OH)から−OHを除いた残基(即ちR3CO−)」をいい、「C2-30脂肪族アシルオキシ基」とは「C2-30脂肪族アシル基とオキシ基とが結合している基(即ちR3CO−O−)」をいう。同様に「ベンゾイルオキシ基」とは「ベンゾイル基とオキシ基とが結合している基」をいう。C2-30脂肪族アシル基に含まれるR3(即ち脂肪族炭化水素基)は、直鎖状でも分枝鎖状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。C2-30脂肪族アシル基の炭素数は、好ましくは6以上(より好ましくは8以上)、好ましくは20以下(より好ましくは18以下)である。
【0020】
2-30脂肪族アシル基としては、C2-30アルカノイル基、C3-30アルケノイル基およびC3-30アルキノイル基のいずれでもよく、C2-30アルカノイル基およびC3-30アルケノイル基が好ましい。なお本発明において「C3-30アルケノイル基」および「C3-30アルキノイル基」は、それぞれ、炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合(以下「不飽和結合」と総称する)を複数有するものも包含する。不飽和結合の数は、好ましくは1〜3個である。C3-30アルケノイル基は、好ましくは、cis構造を有する。
【0021】
2-30アルカノイル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、カプロイル基(ヘキサノイル基)、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基(ドデカノイル基)、ミリストイル基(テトラデカノイル基)、パルミトイル基(ヘキサデカノイル基)、ステアロイル基(オクタデカノイル基)、アラキドイル基(イコサノイル基)、ベヘノイル基(ドコサノイル基)、リグノセロイル基(テトラコサノイル基)などが挙げられる。これらの中で、カプロイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、およびステアロイル基がより好ましく、オクタノイル基およびデカノイル基がより好ましい。
【0022】
3-30アルケノイル基としては、例えば、オレオイル基{(Z)−オクタデカ−9−エノイル基}、バクセノイル基{(E)−オクタデカ−11−エノイル基}、リノレオイル基{(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエノイル基}、α−リノレノイル基{(9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−9,12,15−トリエノイル基}、γ−リノレノイル基{(6Z,9Z,12Z)−オクタデカ−6,9,12−トリエノイル基}、アラキドノイル基{all−cis−イコサ−5,8,11,14−テトラエノイル基}などが挙げられる。これらの中でオレオイル基、バクセノイル基、α−リノレノイル基およびγ−リノレノイル基が好ましく、オレオノイル基がより好ましい。C3-30アルキノイル基としては、例えば、ブタ−2−イノイル基などが挙げられる。
【0023】
ベンゾイル基は、置換基を有していてもよい。置換基の数は、好ましくは3以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0である。ベンゾイル基が2以上の置換基を有する場合、置換基は、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。置換基の結合位置は、好ましくは2位または4位である。ベンゾイル基が2個以上の置換基を有する場合、その内の2個の置換基の結合位置は、好ましくは2位および4位である。
【0024】
ベンゾイル基が有し得る置換基としては、例えば、C1-8アルキル基、C1-8アルコキシ基およびハロゲン原子(例えば塩素原子)などが挙げられ、これらの中でC1-8アルキル基およびC1-8アルコキシ基が好ましい。C1-8アルキル基およびC1-8アルコキシ基は、いずれも、直鎖状でも分枝鎖状でもよい。
【0025】
1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。これらの中で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、およびtert−ブチル基が好ましい。
【0026】
1-8アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。これらの中で、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0027】
エステル化合物(2)中のC2-30脂肪族アシルオキシ基および置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基の数は、合計で、1以上8以下であり、好ましくは1、2または8、より好ましくは1または2である。C2-30脂肪族アシルオキシ基および置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基の位置は2位または6位(同様に2’位または6’位)が好ましく、6位(同様に6’位)が好ましい。
【0028】
エステル化合物(2)は、好ましくは式(2−1)で表される化合物である。
【0029】
【化4】

【0030】
1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、C2-30脂肪族アシル基または置換基を有していてもよいベンゾイル基(好ましくは水素原子またはC2-30脂肪族アシル基)を表す。但しR1およびR2の少なくとも1個はC2-30脂肪族アシル基または置換基を有していてもよいベンゾイル基(好ましくはC2-30脂肪族アシル基)である。なお式(2−1)中のC2-30脂肪族アシル基および置換基を有していてもよいベンゾイル基の説明は前記の通りである。エステル化合物(2−1)は、好ましくは、6位のヒドロキシ基のみ、または6位および6’位のヒドロキシ基が、C2-30脂肪族アシルオキシ基で置き換わったα−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドである。
【0031】
エステル化合物(2−1)としては、例えば、6−O−カプロイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−デカノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−ラウロイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−パルミトイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−ステアロイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6,6’−ジ−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6,6’−ジ−O−デカノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドなどのC2-30アルカノイルオキシ基を有するα−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド誘導体;6−O−オレオイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−バクセノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6,6’−ジ−O−オレオイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドなどのC3-30アルケノイルオキシ基を有するα−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド誘導体;6−O−ベンゾイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−(4−メチルベンゾイル)−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−(4−メトキシベンゾイル)−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドなどの置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基を有するα−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド誘導体;6−O−オクタノイル−β−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシド、6−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシド、6’−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−β−D−グルコピラノシドなど;が挙げられる。これらの中で、α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド誘導体が好ましく、6,6’−ジ−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6,6’−ジ−O−デカノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、6−O−オレオイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドおよび6,6’−ジ−O−オレオイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドがより好ましい。
【0032】
その他のエステル化合物(2)としては、例えば、2,6,6’−トリ−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、2,6,2’,6’−テトラ−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド、2,3,4,6,2’,3’,4’,6’−オクタ−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドなどが挙げられる。
【0033】
エステル化合物(2)は、化合物(1)および脂肪酸または置換基を有していてもよい安息香酸(以下、単に「安息香酸」と略称することがある)を原料とする公知のエステル化反応によって製造することができる。
【0034】
脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびリグノセリン酸などの飽和脂肪酸;並びにオレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、テトロル酸(ブタ−2−イン酸)などの不飽和脂肪酸;が挙げられる。置換基を有していてもよい安息香酸としては、例えば、安息香酸、4−メチル安息香酸、4−エチル安息香酸、4−プロピル安息香酸、4−ブチル安息香酸、4−メトキシ安息香酸、4−エトキシ安息香酸、4−プロポキシ安息香酸、4−ブトキシ安息香酸などが挙げられる。
【0035】
化合物(1)と脂肪酸または安息香酸とのエステル化反応によって、エステル化合物(2)を製造してもよい。この場合、減圧等によって反応系中から水を除くことが望ましい。
【0036】
収率を向上させるためには、化合物(1)と脂肪酸ハロゲン化物または安息香酸ハロゲン化物とのエステル化反応によって、エステル化合物(2)を製造することが望ましい。脂肪酸ハロゲン化物または安息香酸ハロゲン化物は、脂肪酸または安息香酸とハロゲン化剤(例えば塩化チオニル、臭化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン等)とのハロゲン化反応によって製造することができる。このハロゲン化反応におけるハロゲン化剤の使用量は、脂肪酸または安息香酸ハロゲン化物1モルに対して、好ましくは、1.05モル〜1.5モルである。また脂肪酸ハロゲン化物または安息香酸ハロゲン化物は、市販品を使用することができる。
【0037】
脂肪酸ハロゲン化物または安息香酸ハロゲン化物を用いる場合、脱ハロゲン化水素剤または塩基(例えばアミン類、ピリジン類、ピロリジン類、アミド類、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物など)を反応系中に共存させて、エステル化反応を促進させてもよい。
【0038】
上記エステル化反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒は、反応を阻害しないものであれば使用することができ、例えば、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の含酸素系炭化水素;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系炭化水素などが挙げられる。また脂肪酸ハロゲン化物または安息香酸ハロゲン化物を使用する場合、塩基性溶媒(例えばトリエチルアミン、ピリジン等)を用いることによって、エステル化反応を促進させてもよい。
【0039】
上記エステル化反応の温度は、好ましくは0〜100℃である。操作性の観点からこの反応温度は、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。反応時間は、反応温度などの条件によって変化するが、通常1〜100時間、好ましくは1.5〜30時間である。
【0040】
1分子中にC2-30脂肪族アシルオキシ基または置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基が1個であるエステル化合物(2){即ちモノエステル}を製造する場合、脂肪酸または安息香酸(或いはこれらのハロゲン化物)の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは1.0〜3モル、より好ましくは1.2〜2モルである。ジエステルを製造する場合は、この倍の量で脂肪酸等を使用すればよい。トリエステル等の場合も同様である。
【0041】
反応完了後に得られた反応混合物を、公知の手段(例えばカラムクロマトグラフィー、および再結晶等)によって、単離・精製することが好ましい。
【0042】
本発明の加工安定化剤は、1種または2種以上のエステル化合物(2)を含む。本発明の加工安定化剤は、エステル化合物(2)のみでも、エステル化合物(2)以外の加工安定化剤を含んでもよく、好ましくはエステル化合物(2)のみである。
【0043】
本発明の加工安定化剤と樹脂とを混合することによって、樹脂の加工安定性を向上させることができる。そのため本発明は、加工安定化剤および樹脂を含む樹脂組成物も提供する。以下、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0044】
組成物中の加工安定化剤の量は、加工安定化剤に含まれるエステル化合物(2)の量を基準にして定められる。即ち組成物中のエステル化合物(2)の量(複数のエステル化合物(2)を使用する場合はその合計量)は、樹脂100質量部に対して、樹脂の加工安定性を向上させるためには、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.02質量部以上、特に好ましくは0.1質量部以上であり、経済性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下である。
【0045】
組成物に含まれる樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂が好ましい。以下、熱可塑性樹脂について説明する。
【0046】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン[例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂{高密度ポリエチレン(HD−PE)、低密度ポリエチレン(LD−PE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体など}、環状ポリオレフィン、メチルペンテンポリマーなど]、ポリスチレン類[例えばポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体など]、塩素化樹脂(例えば、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン)、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸など)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂、ジアリルフタレートプレポリマー、シリコーン樹脂、ポリイソプレン、ブタジエン重合体などが挙げられる。これらの中で、成形加工性の観点から、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂およびポリスチレン類が好ましく、ポリエチレン系樹脂の1種であるエチレン−酢酸ビニル共重合体およびポリスチレン類の1種であるスチレン−ブタジエン共重合体がより好ましい。
【0047】
成形加工性の観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂およびポリスチレン類が好ましく、ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体およびスチレン−ブタジエン共重合体がより好ましい。
【0048】
本発明の樹脂組成物は、前記加工安定化剤および樹脂以外に、例えば酸化防止剤(例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、造核剤、充填剤、難燃剤、金属不活性化剤、顔料、可塑剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、発泡剤、乳化剤、光沢剤、結着剤などの添加剤(以下「その他の添加剤」と総称する)を含有していてもよい。その他の添加剤の中でも、酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤がより好ましい。その他の添加剤は、1種以上を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。その他の添加剤を使用する場合、その含有量(複数のその他の添加剤を使用する場合は、その合計量)は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部である。以下、その他の添加剤について順に説明する。
【0049】
フェノール系酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、以下の[1]〜[16]に記載する物などが挙げられる。
【0050】
[1]ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−β−(4’ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクダデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルウンデシル−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデシル−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデシル−1’−イル)フェノールなどのアルキル化モノフェノール。
【0051】
[2]2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−エチルフェノール、2,6−ビス(ドデシルチオメチル)−4−ノニルフェノールなどのアルキルチオメチルフェノール。
【0052】
[3]2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペートなどのヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン。
【0053】
[4]α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールなどのトコフェロール。
【0054】
[5]2,2’−チオビス(6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3,6−ジ−t−アミルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(ヒドロキシ化フェニル)スルフィド。
【0055】
[6]2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール)]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−イソブチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス−3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5−テトラ(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタンなどのアルキリデンビスフェノールおよびその誘導体。
【0056】
[7]3,5,3’,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトアセテートなどのO−ベンジル誘導体、N−ベンジル誘導体およびS−ベンジル誘導体。
【0057】
[8]ジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)マロネート、ジオクタデシル−(2−3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネートなどのヒドロキシベンジル化マロネート誘導体。
【0058】
[9]1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノールなどの芳香族ヒドロキシベンジル誘導体。
【0059】
[10]2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−n−オクチルチオ4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−n−オクチルチオ4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−フェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシシンナモイルオキシ)エチル]イソシアヌレートなどのトリアジン誘導体。
【0060】
[11]ジメチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルベンジルホスホネート、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエステルのカルシウム塩などのベンジルホスホネート誘導体。
【0061】
[12]4−ヒドロキシラウリル酸アニリド、4−ヒドロキシステアリン酸アニリド、オクチル−N−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバネートなどのアシルアミノフェノール誘導体。
【0062】
[13]β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と、一価アルコールまたは多価アルコール(例えばメタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタンおよびそれらの混合物など)と、のエステル。
【0063】
[14]β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と、一価アルコールまたは多価アルコール(例えばメタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタンおよびそれらの混合物など)と、のエステル。
【0064】
[15]3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸と、一価アルコールまたは多価アルコール(例えばメタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタンおよびそれらの混合物など)と、のエステル。
【0065】
[16]N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]トリメチレンジアミンなどのβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド。
【0066】
フェノール系酸化防止剤は、好ましくはアルキル化モノフェノール(より好ましくはペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−β−(4’ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]−ウンデカン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも一つ)である。
【0067】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,6,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイト、2−(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)−5−エチル−5−ブチル−1,3,2−オキサホスホリナン、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0068】
リン系酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。好ましいリン系酸化防止剤は、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,6,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピンである。
【0069】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば2,4−ビス[オクチルチオメチル−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、トリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ネオペンタンテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などが挙げられる。
【0070】
イオウ系酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。好ましいイオウ系酸化防止剤は、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネートである。
【0071】
紫外線吸収剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、以下の[1]〜[3]に記載する物などが挙げられる。
【0072】
[1]フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−t−オクチルフェニルサリシレート、ビス(4−tert−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、ヘシサデシル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2−メチル−4,6−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート誘導体。
【0073】
[2]2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどの2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体。
【0074】
[3]2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−s−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[3’−tert−ブチル−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2’−ヒドロキシフェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]フェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’−ドデシル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび2−[3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールの混合物、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−tert−ブチル−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、ポリ(3〜11)(エチレングリコール)と2−[3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]ベンゾトリアゾールとの縮合物、ポリ(3〜11)(エチレングリコール)とメチル3−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとの縮合物、2−エチルヘキシル3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート、オクチル3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート、メチル3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート、3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸などの2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール。
【0075】
好ましい紫外線吸収剤は、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、および2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートである。
【0076】
光安定剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。光安定剤としては、例えば、以下の[1]〜[11]に記載する物などが挙げられる。
【0077】
[1]ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルデカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−(2−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、およびテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールと、の混合エステル化物。
【0078】
[2]1,2,3,4−ブタンテトラボン酸と、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールと、の混合エステル化物。
[3]1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび3、9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンと、の混合エステル化物。
[4]1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよび3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンと、の混合エステル化物。
[5]ジメチルサクシネートと、1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと、の重縮合物。
【0079】
[6]ポリ[(6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)]、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン2,4−ジイル((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))、およびN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと、1,2−ジブロモエタンとの重縮合物。
【0080】
[7]N,N’,4,7−テトラキス[4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、N,N’,4−トリス[4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、N,N’,4,7−テトラキス[4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、N,N’,4−トリス[4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンなどのヒンダードアミン系光安定剤。
【0081】
[8]エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、イソオクチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−α−カルボメトキシシンナメート、メチル−α−シアノ−β−メチル−p−メトキシシンナメート、ブチル−α−シアノ−β−メチル−p−メトキシシンナメート、メチル−α−カルボメトキシ−p−メトキシシンナメートおよびN−(β−カルボメトキシ−β−シアノビニル)−2−メチルインドリンなどのアクリレート系光安定剤。
【0082】
[9]2,2’−チオビス−[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]のニッケル錯体、ニッケルジブチルジチオカルバメート、モノアルキルエステルのニッケル塩、ケトキシムのニッケル錯体などのニッケル系光安定剤。
【0083】
[10]4,4’−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’−ジエトキシオキサニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−tert−ブチルアニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−tert−ブチルアニリド、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エトキシアニリド、2−エトキシ−5,4’−ジ−tert−ブチル−2’−エチルオキサニリドなどのオキサミド系光安定剤。
【0084】
[11]2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2,4−ジヒドロキシフェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロポキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン系光安定剤。
【0085】
光安定剤は、好ましくは2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン系光安定剤(より好ましくはセバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物からなる群から選ばれる少なくとも一つ)である。
【0086】
中和剤としては、例えば、合成ハイドロタルサイト、天然ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0087】
滑剤としては、例えば、パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ブチルステアレート、硬化ひまし油、ステアリルアルコールやステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0088】
帯電防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。帯電防止剤としては、例えば、以下の[1]〜[4]に記載する物などが挙げられる。
[1]第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジン誘導体等のカチオン系帯電防止剤。
[2]硫酸化油、石鹸、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸化エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩、燐酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤。
[3]多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等の非イオン系帯電防止剤。
[4]カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系帯電防止剤。
【0089】
防曇剤としては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ソルビタンモノラウレートやソルビタンモノステアレート等が挙げられる。
【0090】
造核剤としては、例えば、1,3:2,4−ジ−O−ベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−O−(4−クロロベンジリデン)−2,4−O−(4−メチルベンジリデン)−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−プロピルベンジリデン)ソルビトール、アルミニウム モノヒドロキシ−ジ−p−tert−ブチルベンゾエート、ナトリウム ビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム 2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、タルク、安息香酸ナトリウム、リチウム 2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0091】
充填剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化クロム(III)、酸化鉄、酸化亜鉛、シリカ、珪藻土、アルミナ繊維、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチムフェライト、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーン等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の塩基性物または水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、ドロマイト、ドーソナイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム等の(亜)硫酸塩;珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、モンモリロライト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ベントナイト等の珪酸塩;カオリン(陶土)、パーライト、鉄粉、銅粉、鉛粉、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化珪素繊維、黄銅繊維、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硼酸亜鉛、硼酸アルミニウム、メタ硼酸バリウム、硼酸カルシウム、硼酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0092】
難燃剤としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、トリフェニルホスフェート、赤燐、ハロゲンを含むリン酸エステル、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。またハロゲン系難燃剤の難燃性を高める助剤として、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどを挙げることができる。
【0093】
次に本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。なお以下では、樹脂の中でも好ましい熱可塑性樹脂を用いる製造方法について説明する。製造方法としては、例えば、(a)本発明の加工安定化剤、熱可塑性樹脂、および必要に応じてその他の添加剤を混合し、得られた混合物を単軸または多軸の押出し機により溶融混練する方法;(b)熱可塑性樹脂を溶液中で重合し、重合後のその溶液中に、本発明の加工安定化剤および必要に応じてその他の添加剤を含む溶液または懸濁液を供給し、次いで得られた混合液から溶媒を留去する方法;および(c)本発明の加工安定化剤、熱可塑性樹脂、および必要に応じてその他の添加剤をバンバリーミキサーなどで混合し、得られた混合物を押出成形してペレット状の樹脂組成物を得る方法;などが挙げられる。また、その他の添加剤を使用する場合には、本発明の加工安定化剤およびその他の添加剤を、例えばバンバリーミキサーなどで混合し、得られた混合物を造粒法(例えば押出造粒、攪拌造粒、圧縮造粒など)で粒状物に加工し、この粒状物と熱可塑性樹脂とを混練する方法なども使用することができる。
【0094】
本発明の樹脂組成物は、フィルムやパイプ等の製品を製造するための成形材料として有用である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0096】
(I)化合物の製造
製造例1:式(2−1a)で表されるエステル化合物(6−O−オレオイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド)の製造
【0097】
【化5】

【0098】
温度計、攪拌機および冷却管を備えた四つ口フラスコに、化合物(1)としてトレハロース(20mmol)、無水ジメチルホルムアミド(100ml)、およびトリエチルアミン(200mmol)を加えた。フラスコ内容物を5℃に冷却しながら、そこにオレイン酸クロライド(30mmol)を滴下した。その後、フラスコ内容物を室温に昇温し、この温度で24時間撹拌した。撹拌後、フラスコ内にクロロホルム200mlを加え、得られた有機相を5%重曹水100mlで2回洗浄した。分液した有機相を、硫酸ナトリウムによる乾燥、濾過および濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することによって、エステル化合物(2−1a)を得た。トレハロースに対するエステル化合物(2−1a)の収率は14%であった。
【0099】
エステル化合物(2−1a)の物性データ
1H−NMR(500MHz,DMSO)δ5.36−5.29(2H,m),5.05(2H,d,J=5.4Hz),4.90(2H,d,J=4.6Hz),4.87(2H,d,J=3.8Hz),4.84(2H,d,J=3.8Hz),4.80−4.78(2H,m),4.69(2H,d,J=6.1Hz),4.68(2H,d,J=6.1Hz),4.36(1H,t,J=6.1Hz),4.24−4.02(2H,m),3.92−3.89(1H,m),3.67−3.64(1H,m),3.58−3.45(4H,m),3.28−3.23(2H,m),3.16−3.10(2H,m),2.27(2H,t,J=7.7Hz),2.00−1.96(4H,m),1.51(2H,m),1.29−1.24(20H,m),0.85(3H,t,J=6.9Hz)
13C−NMR(125MHz,DMSO)δ172.8,129.63,129.62,93.3,93.2,72.83,72.79,72.583,72.579,71.5,70.1,69.6,63.1,60.8,33.5,31.3,29.15,29.12,28.9,28.7,28.64,28.61,28.53,28.50,26.62,26.59,24.5,22.1,13.9.
MS m/z=629.4[M+Na]+
【0100】
製造例2:式(2−1b)で表されるエステル化合物(6,6’−ジ−O−デカノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド)の製造
【0101】
【化6】

【0102】
オレイン酸クロライド(30mmol)の代わりにデカン酸クロライド(60mmol)を使用したこと以外は、製造例1と同様にして、エステル化合物(2−1b)を得た。トレハロースに対するエステル化合物(2−1b)の収率は8%であった。
【0103】
エステル化合物(2−1b)の物性データ
1H−NMR(500MHz,DMSO)δ5.04(2H,d,J=5.4Hz),4.87(2H,d,J=5.4Hz),4.81(2H,d,J=3.1Hz),4.74(2H,d,J=6.1Hz),4.23−4.00(4H,m),3.90−3.86(2H,m),3.56−3.51(2H,m),3.26−3.22(2H,m),3.13−3.08(2H,m),2.26(4H,t,J=7.6Hz),1.51−1.47(4H,m),1.27−1.23(24H,m),0.84(6H,t,J=6.9Hz).
13C−NMR(125MHz,DMSO)δ172.7,93.4,72.7,71.4,70.1,69.7,63.0,33.5,31.2,28.8,28.71,28.65,28.42,28.41,24.4,22.1,13.9.
MS m/z=673.4[M+Na]+
【0104】
製造例3:式(2−1c)で表されるエステル化合物(6,6’−ジ−O−オクタノイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド)の製造
【0105】
【化7】

【0106】
オレイン酸クロライド(30mmol)の代わりにオクタン酸クロライド(60mmol)を使用したこと以外は、製造例1と同様にして、エステル化合物(2−1c)を得た。トレハロースに対するエステル化合物(2−1c)の収率は16%であった。
【0107】
エステル化合物(2−1c)の物性データ
1H−NMR(500MHz,DMSO)δ5.06(2H,d,J=5.4Hz),4.89(2H,d,J=5.4Hz),4.83(2H,d,J=3.8Hz),4.77(2H,d,J=6.1Hz),4.24−4.02(4H,m),3.91−3.88(2H,m),3.58−3.53(2H,m),3.28−3.24(2H,m),3.15−3.10(2H,m),2.27(4H,t,J=7.3Hz),1.53−1.50(4H,m),1.27−1.25(16H,m),0.86(6H,t,J=7.3Hz).
13C−NMR(125MHz,DMSO)δ172.8,93.5,72.7,71.4,70.1,69.7,63.1,33.6,31.1,28.42,28.40,24.5,22.1,13.9.
MS m/z=617.4[M+Na]+
【0108】
製造例4:式(2−1d)で表されるエステル化合物(6,6’−ジ−O−オレオイル−α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシド)の製造
【0109】
【化8】

【0110】
オレイン酸クロライドの使用量が30mmolではなく60mmolであること以外は、製造例1と同様にして、エステル化合物(2−1d)を得た。トレハロースに対するエステル化合物(2−1d)の収率は12%であった。
【0111】
エステル化合物(2−1d)の物性データ
1H−NMR(500MHz,DMSO)δ5.32−5.30(4H,m),5.05(2H,d,J=5.4Hz),4.89(2H,d,J=4.6Hz),4.83(2H,d,J=3.9Hz),4.75(2H,d,J=6.2Hz),4.24−4.01(4H,m),3.91−3.88(2H,m),3.58−3.53(2H,m),3.28−3.24(2H,m),3.14−3.10(2H,m),2.26(4H,t,J=7.3Hz),1.51(4H,m),1.30−1.20(40H,m),0.85(6H,t,J=6.9Hz).
13C−NMR(125MHz,DMSO)δ172.6,129.5,93.3,72.7,71.4,70.1,69.7,63.1,33.5,31.3,29.1,28.9,28.7,28.6,28.52,28.47,26.59,26.57,24.5,22.1,13.9.
【0112】
(II)加工安定化剤の評価
製造例1〜4で得られたエステル化合物(2−1a)〜(2−1d)の加工安定化剤としての作用を評価するため、これらのそれぞれと熱可塑性樹脂とをラボプラストミルにて混練加工して、樹脂組成物を調製した。この混練加工時のトルク(抵抗値)を連続して記録し、「混練開始からトルクが最大に到達するまでの時間(ビルドアップタイム)」を測定した。加工安定化剤を添加しない場合に比べてビルドアップタイムが長くなるほど、熱可塑性樹脂の加工安定性が向上したことを意味する。また比較例として、加工安定化剤を添加せず、熱可塑性樹脂のみを混練したときのビルドアップタイムも測定した。これらの結果を表1に示す。
【0113】
熱可塑性樹脂としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体〔旭化成(株)製:アサフレックス(登録商標)830〕を使用した。エステル化合物(2)の使用量は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体100質量部に対して0.24質量部であった。ラボプラストミルとしては、東洋精機製作所製ラボプラストミル(4C−150)を用いた。混練は、窒素雰囲気、250℃、回転数50rpmの条件で行った。
【0114】
【表1】

【0115】
表1に示されているように、加工安定化剤として本発明の加工安定化剤{即ちエステル化合物(2−1a)〜(2−1d)}を添加した実施例1〜4の樹脂組成物は、加工安定化剤を添加していない比較例1の樹脂と比べてビルドアップタイムが長く、加工安定性が向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
エステル化合物(2)を加工安定化剤として用いれば、樹脂(特に熱可塑性樹脂)の加工安定性を向上させることができる。加工安定化剤としてエステル化合物(2)を含む本発明の樹脂組成物は、加工安定性に優れ、フィルムやパイプ等の製品を製造するための成形材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物の少なくとも1個のヒドロキシ基がC2-30脂肪族アシルオキシ基または置換基を有していてもよいベンゾイルオキシ基で置き換わったエステル化合物(2)を含むことを特徴とする樹脂用の加工安定化剤。
【化1】

【請求項2】
エステル化合物(2)が、式(2−1)で表される化合物である請求項1に記載の加工安定化剤。
【化2】

〔式(2−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、C2-30脂肪族アシル基または置換基を有していてもよいベンゾイル基を表す。但しR1およびR2の少なくとも1個はC2-30脂肪族アシル基または置換基を有していてもよいベンゾイル基である。〕
【請求項3】
式(1)で表される化合物が、グルコピラノースの2分子が互いに1位のヒドロキシ基で脱水縮合した二糖類である請求項1または2に記載の加工安定化剤。
【請求項4】
式(1)で表される化合物が、α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドである請求項3に記載の加工安定化剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の加工安定化剤および樹脂を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の加工安定化剤および樹脂を混合することを特徴とする樹脂の加工安定性を向上させる方法。


【公開番号】特開2011−207798(P2011−207798A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76162(P2010−76162)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】