説明

樹脂用導電剤、導電性樹脂組成物及び導電性樹脂組成物の製造方法

【課題】樹脂中に分散させることが非常に難しいカーボンナノチューブを樹脂中に容易に均一に分散させることができ、高温でも安定性を有し、少量で樹脂に高い導電性を付与することができ、安価で工業的にも有用な樹脂用導電剤を提供することにある。カーボンナノチューブを樹脂中に容易に均一に分散させ、強度など樹脂特性を損なわず、高温でも均一で安定した抵抗値を有し、成形加工機の磨耗、損傷を生じさせず、安価で工業的にも有用な導電性樹脂組成物やその製造方法を提供することにある。
【解決手段】樹脂用導電剤において、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含む。導電性樹脂組成物において、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含む混合物を樹脂中に分散させてなる。導電性樹脂組成物の製造では、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを混合した後、樹脂に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含有する樹脂用導電剤や、これを樹脂に分散させた導電性樹脂組成物及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性の樹脂に導電性を付与するため、導電剤を樹脂に添加するという手法が一般的に取られている。導電剤としては、粉状若しくは繊維状の金属や金属酸化物など金属系導電剤、カーボンファイバーやカーボンブラックなどのカーボン系導電剤、また抵抗値が比較的高抵抗ではあるが親水性のポリマーやイオン性有機化合物などの有機系導電剤が用いられている。金属系の導電剤を用いる場合、抵抗値は非常に低くまで下げられるものの、加工時に添加した金属が押出機や成形機のスクリューやバレル、成形用金型などを摩耗させてしまうという問題がある。カーボン系導電剤を用いる場合、所望の導電性を得るために添加量が多量となる場合もあり、樹脂に対し補強効果を奏し、硬度や強度を上昇させる反面、加工時の流動性の低下や脆弱となって耐衝撃性を低下させるなど、樹脂本来の特性を変化させることもある。有機系導電剤を用いる場合、低い抵抗値が得られないことの他に、使用環境の温度や湿度の変化によって抵抗値が大きく変化することもある。親水性ポリマー導電剤は、一般的に強度が低いため、樹脂の強度を低下させることもあり、イオン性有機化合物導電剤は、室温よりガラス転移点の高い樹脂に対して十分な導電性を付与することができないなどの問題がある。また、エンジニアリングプラスチックスやスーパーエンプラといった加工温度が非常に高温になる樹脂に対しては、有機系導電剤は加工時に分解して使用できないという問題がある。
【0003】
ところで、1985年にその存在が発見されて以来、カーボンナノチューブは、製法プロセス制御の複雑さ、精製の困難さから工業的生産には至っておらず、樹脂の添加剤として、純度を備えたものの使用量を適価で入手することは困難であった。近年、工業的使用を可能とする実用に適したカーボンナノチューブの技術の開発が始められ、その報告がなされている。カーボンナノチューブが絶縁性樹脂の導電剤として期待されるところとして、成形加工機の摩耗を生じさせない、少量で高い導電性の付与が可能で多量添加による樹脂を脆性化来たさない、耐熱性であり、環境変化に対して安定性を有するなどの点にある。
【0004】
しかしながら、カーボンナノチューブは樹脂には非常に分散しにくいことに加えて、通常、1本ずつが単独で存在しておらず、数本〜数百本が一体となった塊状状態となっている。このため、二軸混練押出機などを用いて樹脂中に分散させても、いわゆるカーボンブラックの二次凝集と類似の挙動を取り、塊状のカーボンナノチューブが細分されず、樹脂中への分散が十分になされない。カーボンナノチューブの樹脂中への分散性を改善するためにカーボンナノチューブの表面を改質するという方法が種々検討されているが、カーボンナノチューブの表面を改質すると、本来のカーボンナノチューブの高導電性が損なわれるという問題がある。カーボンナノチューブを分散させる方法として、カーボンナノチューブをドデシルスルホン酸ナトリウムなどの界面活性剤を含有する水溶液に入れる方法が報告されている。(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法においては、カーボンナノチューブ表面に非導電性の有機物が付着するので導電性が損なわれるという問題がある。カーボンナノチューブ表面にコイル状構造を持つポリマー付着させる方法として、ポリ−m−フェニレンビニレン−co−ジオクトキシ−p−フェニレンビニレンを含む溶媒中にカーボンナノチューブを加え、沈殿する複合材を分離・精製する方法が報告されている。(例えば特許文献2参照)。しかし、この複合材におけるポリマーは共役系が不完全なため、カーボンナノチューブの導電性を損ねるという問題がある。
【0005】
一方、単層カーボンナノチューブに官能基を付加させる等の化学的処理により分散性を付与することが報告されている。(例えば非特許文献1参照)。しかし、 カーボンナノチューブに化学的処理を施すとカーボンナノチューブを構成するπ共役系が破壊されやすく、カーボンナノチューブ本来の特性が損なわれる傾向にある。
【特許文献1】特開平6−228824号公報
【特許文献2】特開2000−44216号公報
【非特許文献1】「Science」誌、 vol.282、 1998(1998年10月2日発行)p95
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、樹脂中に分散させることが非常に難しいカーボンナノチューブを樹脂中に容易に均一に分散させることができ、高温でも安定性を有し、少量で樹脂に高い導電性を付与することができ、安価で工業的にも有用な樹脂用導電剤を提供することにある。
【0007】
本発明の課題は、カーボンナノチューブを樹脂中に容易に均一に分散させ、強度など樹脂特性を損なわず、高温でも均一で安定した抵抗値を有し、成形加工機の磨耗、損傷を生じさせず、安価で工業的に有用な導電性樹脂組成物やその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究の結果、カーボンナノチューブを予めシリコーンオイルと混合することによって、塊状状態のカーボンナノチューブを細分し、カーボンナノチューブ表面を樹脂との親和性を向上させたものとできることの知見を得た。このような表面を有するカーボンナノチューブを、樹脂に添加することにより、混合が困難なカーボンナノチューブを容易に均一に樹脂へ分散させることができ、これによって均一かつ安定的な抵抗値を有する導電性樹脂組成物を得ることができることを見い出した。
【0009】
すなわち、本発明は、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含む混合物を樹脂中に分散させてなることを特徴とする導電性樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを混合した後、樹脂に分散させることを特徴とする導電性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含むことを特徴とする樹脂用導電剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂用導電剤は、樹脂中に分散させることが非常に難しいカーボンナノチューブを樹脂中に容易に均一に分散させることができ、高温でも安定性を有し、少量で樹脂に高い導電性を付与することができ、安価で工業的にも有用である。本発明の導電性樹脂組成物は、カーボンナノチューブを樹脂中に容易に均一に分散させ、強度などの樹脂の特性を損なわず、高温でも均一で安定した抵抗値を有し、成形加工機の磨耗、損傷を生じさせず、安価で工業的にも有用である。本発明の導電性樹脂組成物の製造方法は、上記導電性樹脂組成物を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の樹脂用導電剤は、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の樹脂用導電剤に用いられるカーボンナノチューブとしては、炭素六角網面が円筒状に閉じた構造を有するものであれば、単層構造の所謂カーボンナノチューブでも、これらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造のグラファイトナノチューブでも、これらが混在するものであってもよい。かかるカーボンナノチューブは、その円筒構造を高分解能透過型電子顕微鏡で検出できるが、円筒形状が透過型電子顕微鏡でまっすぐにはっきりと見えるものほど好ましい。円筒形状が直線状に形成されていないものは、カーボンナノファイバーと定義することもあるが、本発明に用いられるカーボンナノチューブには、このようなカーボンナノファイバーを含んでいてもよい。
【0015】
上記カーボンナノチューブの形態としては、針状、コイル状、チューブ状、カップ状の形態などいずれの形態を有するものであってもよい。具体的には、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンチューブ、カーボンフィブリル、カーボンマイクロチューブ、カーボンナノファイバーなどを挙げることができる。これらの形態として1種または2種以上を組み合わせた形態において使用することができる。
【0016】
上記カーボンナノチューブのサイズとしては、特に限定されるものではなく、例えば、繊維径として0.5〜300nm、繊維長として0.01〜100μmなどを具体的に挙げることができる。繊維径として1〜200nm、繊維長として1〜10μmを好ましい範囲として挙げることができる。
【0017】
上記カーボンナノチューブの製造方法としては、いずれの製造方法であってもよく、単層構造、多層構造を有するものを得るためにその製造方法を選択することができる。単層構造のカーボンナノチューブを製造するには、レーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法、燃焼法などを選択することができる。多層構造のカーボンナノチューブの製造方法としては、触媒の担体としてゼオライトを使用し、アセチレンを原料に熱CVD法が好ましい。この熱CVD法は精製工程を省略することができ、多少の熱分解炭素等の炭素被覆はあるものの、純度が高く、高度にグラファイト化された多層カーボンナノチューブを得ることができる(Chemical Physics Letters 303(1999) 117-124)ため、好ましい。
【0018】
本発明の樹脂用導電剤に用いられるシリコーンオイルは、
【0019】
【化1】

【0020】
で表される直鎖シロキサン構造を有するものが好ましい。式中、R1、R2、R3、は、特に限定されるものではなく、例えば、アルキル基、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、エポシキ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、ビニル基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、などであってもよい。これらの置換基を選択することによって、特定の特性、性質を有するシリコーンオイルとすることができる。式中、nは0または1以上の整数で大きくなるにつれて分子量及び粘度が高くなり0.65mm2/Sから100万mm2/Sまで任意に選ぶことができる。具体的には、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、ケイ素官能形メチルハイドロジェンシリコーン、ケイ素官能形シラノール基含有シリコーン、ケイ素官能形アルコキシ基含有シリコーン、炭素官能形アミノ変性シリコーン、炭素官能形カルボン酸変性シリコーン、炭素官能形カルビノール変性シリコーン、炭素官能形エポキシ変性シリコーン、炭素官能形メルカプト変性シリコーン等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明の樹脂用導電剤が適用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれであってもよいが、熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルに代表されるいわゆるエンプラ系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニル系重合体などに代表されるオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、環状ポリオレフィン、ABS、SANなどに代表されるオレフィン系に関わる共重合体群、アクリル系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルファイド、ポリスルホン、ポリフェニルサルホン、ポリエーテルサルホンなどの硫黄系樹脂、またはこれらの変性品、共重合体などを挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、好ましくはポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレートなど)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイド、ポリアリーレンサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアミド(例えば、PA−6、PA−6,12、PA−4,6、MXD6など)、変性ポリフェニレンエーテル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドのいずれか、またはこれらの樹脂を用いたポリマーアロイのいずれか、またはこの変性品、共重合体などや他の樹脂との混合物を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを使用することができる。
【0022】
本発明の樹脂用導電剤の製造方法としては、上記カーボンナノチューブと上記シリコーンオイルとを混合することにより製造することができる。混合時には、剪断力を加えることが好ましい。剪断力を加える方法としては乳鉢、サンドグラインダー、ビーズミル、インターナルミキサー、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸混練機などを用い樹脂にカーボンナノチューブを分散させる方法などを挙げることができる。
【0023】
本発明の導電性樹脂組成物は、カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含む混合物を樹脂中に分散させてなることを特徴とする。
【0024】
本発明の導電性樹脂組成物に用いられるカーボンナノチューブや、シリコーンオイルとしては、具体的に上記樹脂導電剤において用いられるカーボンナノチューブや、シリコーンオイルと同様のものを挙げることができる。
【0025】
本発明の導電性樹脂組成物に用いられるカーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含む混合物としては、上記樹脂用導電剤を用いることができる。また、混合物中のカーボンナノチューブと、シリコーンオイルとの混合割合も上記樹脂用導電剤中におけるこれらの混合割合と同様の割合を挙げることができ、その混合方法も上記樹脂用導電剤の製造方法と同様の方法を挙げることができる。
【0026】
本発明の導電性樹脂組成物に用いられる樹脂としては上記樹脂用導電剤が適用される樹脂と同様のものを挙げることができる。
【0027】
これらの樹脂に対する上記混合物の使用量としては、樹脂に対して、カーボンナノチューブの含有量が1.0〜8.0質量%の範囲とすることができる。樹脂に対してカーボンナノチューブ含有量が1.0質量%以上であれば、導電性を付与することができる。また、樹脂に対してカーボンナノチューブ含有量が8.0質量%以下であれば、樹脂組成物を用いた加工品が脆弱となるのを抑制し、耐衝撃性の低下を抑制することができる。
【0028】
本発明の導電性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で充填剤などの添加物が含有されていてもよい。充填剤としては、例えば、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填剤を挙げることができる。これらは中空であってもよく、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。また、より優れた機械的強度を得る目的でこれら繊維状/非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することもできる。
【0029】
さらに、上記添加剤として、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミンなどの酸化防止剤、熱安定剤、熱老化防止剤、耐侯剤、可塑剤、流動性改良剤滑剤、紫外線防止剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、染料や顔料などの着色剤、帯電防止剤などを挙げることができる。
【0030】
また、本発明の導電性樹脂組成物には、靭性を向上させるため、エラストマー成分が含有されていてもよい。かかるエラストマー成分としては、天然ゴム、ブタジエン重合体、スチレン−イソプレン重合体、ブタジエン−スチレン共重合体及びそれらの水添物(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など)、イソプレン重合体、クロロブタジエン重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソブチレン重合体、イソブチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム(例えば、ポリプロピレンオキシド等)、エピクロルヒドリンゴム等を挙げることができる。
【0031】
エラストマー成分は適宜組み合わせて使用することができ、使用量としては、上記樹脂と上記混合物の合計100重量部に対して、例えば、50重量部以下を挙げることができる。
【0032】
本発明の導電性樹脂組成物の製造方法としては、上記カーボンナノチューブとシリコーンオイルとの混合物と樹脂とを混合する方法を挙げることができる。具体的には、カーボンナノチューブとシリコーンオイルの混合物、熱可塑性樹脂、その他成分を一括してドライブレンドした後、適宜加熱して、押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練してもよく、溶融した熱可塑性樹脂にカーボンナノチューブとシリコーンオイルの混合物を添加することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[樹脂用導電剤の調製]
シリコーンオイル(TSF451−1000(粘度1000cst)/GE東芝シリコーン)70質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)30質量%を乳鉢で混ぜて樹脂用導電剤CNT1を調製した。
【0034】
シリコーンオイル(TSF433(粘度450cst)/GE東芝シリコーン)70質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)30質量%を乳鉢で混ぜて樹脂用導電剤CNT2を調製した。
[導電性樹脂組成物の調製]
上記樹脂用導電剤を用いて、導電性樹脂組成物を調製した。
【0035】
導電性樹脂組成物中のカーボンナノチューブの分散性評価は、導電性に置き換えて組成物を用いて作製したフィルムの体積抵抗率を測定することによって行った。フィルムは一軸押出機とT−ダイにより、厚さ100μm、幅200mmに押出成形したものを使用した。
【0036】
フィルムの体積抵抗率は、ASTM D257に準拠して、フィルム面内で 幅方向2点(左右端部から50mm)における長さ方向10点(100mmピッチ)の計20箇所について測定した体積固有抵抗値の平均値とバラツキで評価した。
[実施例1]
ポリカーボネート(GEプラスチックス社製:商品名レキサン121(以下、PC))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値は5E+08Ωcmであった。バラツキは1E+08〜1E+09Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート(三菱レーヨン社製:ダイヤナイトPA200(以下、PET))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、270℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、255℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値は1E+08Ωcmであった。バラツキは5E+07〜6E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例3]
ポリエーテルエーテルケトン(ビクトレックス・エムシー社製:ピーク381G(以下、PEEK))93質量%に対し、CNT2を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、380℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、370℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値9E+08Ωcmであった。バラツキは4E+08〜2E+09Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例4]
ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業社製:DIC−PPS ML320(以下、PPS))93質量%に対し, CNT2を7wt%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機, 275℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値3E+08Ωcmであった。バラツキは8E+07〜9E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例5]
ポリブチレンテレフタレート(GEプラスチックス社製:バロックス310(以下、PBT))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、260℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、245℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値1E+08Ωcmであった。バラツキは4E+07〜6E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例6]
ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート アロイ(鐘淵化学工業社製:ハイパーライトJP−50000(以下、PC/PET))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値4E+08Ωcmであった。バラツキは8E+07〜9E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例7]
ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート アロイ(出光石油化学社製:タフロンSC−620(以下, PC/PBT))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、270℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、260℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値2E+08Ωcmであった。バラツキは6E+07〜7E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例8]
ポリアミド−6(宇部興産社製:UBEナイロン1030B(以下、PA−6))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、265℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、255℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値3E+08Ωcmであった。バラツキは7E+07〜8E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例9]
ポリアミド−6,12(デュポン社製:ザイテル158L(以下、PA−6,12))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、250℃, 200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、240℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値2E+08Ωcmであった。バラツキは7E+07〜8E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例10]
芳香族ポリアミド(三菱ガス化学社製:レニー6002(以下、MXD6)93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、265℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値7E+08Ωcmであった。バラツキは2E+08〜2E+09Ωcmであり、非常に狭い範囲にあった。
[実施例11]
エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学社製:ソアライトM(以下、EVOH))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、230℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、220℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値4E+08Ωcmであった。バラツキは8E+07〜9E+08Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例12]
変性ポリフェニレンエーテル(GEプラスチックス社製:ノリル731(以下、m−PPE)93質量%に対し、CNT2を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、285℃、200rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、280℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値9E+08Ωcmであった。バラツキは5E+08〜2E+09Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例13]
ポリエーテルイミド(GEプラスチックス社製:ウルテム 1000(以下、PEI))93質量%に対し、CNT1を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、385℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、380℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値2E+09Ωcmであった。バラツキは9E+08〜5E+09Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例14]
ポリフェニレンスルホン(ソルベイ社製:レーデルR−5000(以下、PPSU)93質量%に対し、CNT2を7wt%をドライブレンドし、二軸混練押出機、370℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、365℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値1E+09Ωcmであった。バラツキは7E+08〜3E+09Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[実施例15]
ポリアミドイミド(ソルベイ社製:トーロン4203L(以下、PAI))93質量%に対し、CNT2を7質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、350℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、340℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値1E+09Ωcmであった。バラツキは8E+08〜4E+09Ωcmであり、非常に狭い範囲内にあった。
[比較例1]
PCを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値8E+07Ωcmであった。バラツキは2E+06〜5E+10Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例2]
PETを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値9E+06Ωcmであった。バラツキは3E+05〜8E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例3]
PEEKを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値2E+08Ωcmであった。バラツキは6E+06〜7E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例4]
PPSを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値1E+07Ωcmであった。バラツキは4E+05〜8E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例5]
PBTを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値8E+06Ωcmであった。バラツキは2E+05〜4E+10Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例6]
PC/PETを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値6E+07Ωcmであった。バラツキは5E+05〜7E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例7]
PC/PBTを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値4E+07Ωcmであった。バラツキは6E+05〜9E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例8]
PA−6を97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値4E+07Ωcmであった。バラツキは8E+05〜2E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例9]
PA−6,12を97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値5E+07Ωcmであった。バラツキは9E+05〜2E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例10]
MXD6を97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値7E+07Ωcmであった。バラツキは6E+05〜1E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例11]
EVOHを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値6E+07Ωcmであった。バラツキは3E+05〜8E+09Ωcmであり、非常に変動が激しかった。
[比較例12]
m−PPEを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値3E+08Ωcmであった。バラツキは8E+06〜4E+09Ωcmであり、変動が激しかった。
[比較例13]
PEIを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値5E+08Ωcmであった。バラツキは1E+07〜5E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例14]
PPSUを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値3E+08Ωcmであった。バラツキは8E+06〜5E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。
[比較例15]
PAIを97.9質量%に対しカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ(粉末)ABタイプ/マイクロフェーズ)2.1質量%をドライブレンドし、二軸混練押出機、280℃、150rpmで押し出してペレット化した。これを一軸押出機、270℃で厚さ100μmにフィルム成形し抵抗値を測定したところ、体積抵抗値4E+08Ωcmであった。バラツキは7E+06〜3E+09Ωcmであり、変動が非常に激しかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含む混合物を樹脂中に分散させてなることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項3】
カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを混合した後、樹脂に分散させることを特徴とする導電性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
カーボンナノチューブとシリコーンオイルとを含むことを特徴とする樹脂用導電剤。

【公開番号】特開2007−154100(P2007−154100A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353821(P2005−353821)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】