説明

樹脂管継手

【課題】騒音状況下にある作業現場においても、ユニオンナットが締付終了又はそれに近い状態であることの確認が行えるようにし、組付作業性や取扱い性に優れるように改善される樹脂管継手を提供する。
【解決手段】インナ筒4にチューブ3が外嵌されて拡径部3Aを生じる状態での雌ねじ8と雄ねじ5との螺合によるユニオンナット2の螺進により、拡径変化領域9がシール用押圧部10で押圧される構成の樹脂管継手において、外周フランジ1Aとユニオンナット端面2aとの軸心P方向間における継手本体1に回動可能にリング体18を外嵌装備し、回されるユニオンナット2でリング体18が連れ回りされる連回り手段Eが設けられ、シール用押圧部10が拡径変化領域9を押圧してシール部Sが形成されるユニオンナット2の螺進終了状態になると、リング体18が連れ回りし始める締付終了認知手段Cを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造や医療・医薬品製造、食品加工、化学工業等の各種技術分野の製造工程で取り扱われる高純度液や超純水の配管にも好適であって、ポンプ、バルブ、フィルタ等の流体機器や流体移送路であるチューブの接続手段として用いられる樹脂管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂管継手としては、特許文献1において開示されるチューブ継手が知られている。即ち、合成樹脂製のチューブ(1)を継手本体(4)の嵌合筒(5)に強制的に押し込むか、又は特許文献1の図2に示されるように、予めチューブ端部(2)を拡径させて嵌合筒(5)に嵌め込むかする。それから、予めチューブに嵌装されているユニオンナット(6)を継手本体に螺合させ、締込み操作して継手本体(4)の軸心方向に強制移動させることにより、チューブ(1)の拡径付け根部分(2a)をエッヂ部(6a)で軸心方向に強く押圧し、チューブ(1)と嵌合筒(5)との間をシールする構造である。
【0003】
上述の構造と同様なものとしては、特許文献2の図8,図9において開示された樹脂管継手も知られている。また、特許文献2の図5や特許文献3において開示されるように、インナーリングに拡径外嵌されているチューブ端を継手本体の嵌合筒に内嵌させ、ユニオンナットの締付によってチューブにおけるインナーリングへの拡径部を押圧してシールさせる構造の樹脂管継手もある。いずれにしても、チューブ端を拡径(フレア)させてユニオンナットの締付でシールさせる構造である。チューブの先端を嵌合筒部外嵌させてナット止めする前者の構造のものでは、継手本体とユニオンナットとの2部品で経済的に管継手を構成できる良さがあり、インナーリングを用いる後者の構造のものでは、確実に漏れが回避できて安定した性能が得られ、かつ、信頼性に優れる良さがある。
【0004】
ところで、これらのように種々の優れたメリットを持つ樹脂管継手の実際の施工において、ユニオンナットの締付終了時点が分り難いという慢性的な要改善項目があった。もともと、樹脂製の継手においては、その材料の特性上、ユニオンナットの回し操作に対して締付けトルクが漸増するので、金属材料のように締付トルクが急激に大きくなることによる締切り感に乏しく、感覚的に締付終了が分かり難いのである。締付が不足すると漏れのおそれがあり、締め付け過ぎると継手を損壊させるおそれがある。樹脂製であるが故にそれらの不都合が起こり易いので、正しくユニオンナットの締付を終える必要がある。
【0005】
そこで、特許文献3において、継手本体(1)に片持ち状態で軸心方向に突設させた突片(15)と、ユニオンナット(2)の軸心方向端部に隆起形成された突起(23)とが、ユニオンナット(2)の締付終了間際になると周方向で接近干渉して当接し、その際に突片(15)が発する弾かれ音により、作業者は締付終了又はそれに近づいたことを知ることが可能となる技術が開示されている。つまり、音によって作業者に締付終了状態を知らしめる音発生手段である。
【特許文献1】実登3041899号公報
【特許文献2】特開平7−27274号公報
【特許文献3】特開平11−230463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記音発生手段により、管継手部分が見えなくてもユニオンナット操作による締付終了状態の音認識による確認が可能になり、一定の効果が得られるものとなった。ところが、実際の配管作業現場は静寂状況であることはまれであり、稼動中の工場内であるとか、他の工事や施工が一緒に行われる状況での作業等、得てしてある程度の騒音状況下で行われることになる。従って、樹脂製突片の弾ける音程度では作業者には聞えないことが多く、ユニオンナットの締付終了を知らせる手段、即ち、締付終了認知手段としては更なる改善の余地が残されているものであった。
【0007】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、騒音状況下にある作業現場においても、ユニオンナットが締付終了又はそれに近い状態であることの確認が行えるようにし、組付作業性や取扱い性に優れるように改善される樹脂管継手を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、合成樹脂製チューブ3の端部を拡径させて嵌合装着可能な嵌合筒4と、雄ねじ5とを備える合成樹脂製の継手本体1、及び、
前記雄ねじ5に螺合可能な雌ねじ8と、前記チューブ3の拡径部3Aにおける拡径変化領域9に作用可能なシール用押圧部10とを備える合成樹脂製のユニオンナット2を有し、
前記嵌合筒4に前記チューブ3が嵌合装着される状態における前記雌ねじ8を前記雄ねじ5に螺合させての前記ユニオンナット2の前記継手本体1の軸心P方向への螺進により、前記拡径変化領域9が前記シール用押圧部10で前記軸心P方向に押圧されてシール部Sが形成されるように構成されている樹脂管継手において、
前記継手本体1に形成される外周フランジ1Aと前記ユニオンナット2の継手本体1への螺進側となる先端2aとの軸心P方向間における前記継手本体1に、前記軸心P回りに回動可能なリング体18が外嵌装備され、かつ、回し操作される前記ユニオンナット2によって前記リング体18が回動移動される連れ回り手段Eが設けられており、前記シール用押圧部10が前記拡径変化領域9を押圧して前記シール部Sが形成される前記ユニオンナット2の螺進終了状態又はその直前状態になると、前記リング体18が前記ユニオンナット2によって回動移動され始めるように設定されて成る締付終了認知手段Cが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の樹脂管継手において、前記連れ回り手段Eが、前記ユニオンナット2の先端2aに軸心P方向でリング体側に突出形成される係合突起20と、前記リング体18に軸心P方向でユニオンナット側に突出形成される被係合突起19とで成り、前記螺進終了状態又はその直前状態になると前記係合突起20が前記被係合突起19を押し始める設定とされていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の樹脂管継手において、前記リング体18が前記ユニオンナット2で回動移動され始めての前記螺進終了状態から、前記ユニオンナット2と前記外周フランジ1Aとの間に前記リング体18が挟まれてそれ以上の螺進が阻止される締付限度状態になるまでは、前記ユニオンナット2を締込み方向へ所定量回し操作可能とする増締め手段Eが設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の樹脂管継手において、前記リング体18が、前記外周フランジ1Aに沿う第1リング部18aと、前記被係合突起19を有するユニオンナット側の第2リング部18bと、前記被係合突起19と周方向で位置ずれする状態で前記第1リング部18aと前記第2リング部18bとを繋ぐ連結部18cとを有して成り、前記増締め手段Eが、前記第1リング部18aにおける前記連結部18c以外の箇所が軸心P方向に変形して、前記連結部18cにおいて前記リング体18が前記外周フランジ1Aと前記ユニオンナット2との間で挟まれる前記締付限度状態になるまで、前記ユニオンナット2の回し込みが可能となることにより構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の樹脂管継手において、前記係合突起20、前記被係合突起19、及び前記連結部18cのそれぞれが周方向で均等間隔毎に4箇所ずつ設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の樹脂管継手において、前記継手本体1及び前記ユニオンナット2がフッ素樹脂製であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて述べるが、締付終了認知手段の機能により、ユニオンナットを締付けを進めて行くと、継手本体の外周フランジとユニオンナット先端との間に介装されているリング体がユニオンナットに連れ回りする状況が現れる。従って、リング体が回動移動し出したことの目視にて確認することにより、ユニオンナットの締付終了状態になったことが認識できるものとなる。その結果、騒音状況下にある作業現場においても、ユニオンナットが締付終了又はそれに近い状態であることの確認が行えるようにし、組付作業性や取扱い性に優れるように改善される樹脂管継手を提供することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、ユニオンナット先端の係合突起と、リング体の被係合突起とで成る連れ回り手段により、係合突起が被係合突起を押し始めてリング体が連れ回りする状況の目視により、螺進終了状態又はその直前状態になることを認識することが可能になる。つまり、ユニオンナットの係合突起とリング体の被係合突起とを設ける程度の簡単構造な連れ回り手段を有する締付終了認知手段により、請求項1の発明による前記効果が合理的、経済的に得られる利点がある。
【0016】
請求項3の発明によれば、増締め手段により、締付終了状態から所定量ユニオンナットの締め込みが可能とされているから、経時変化などによる弛み防止、ひいては漏れ防止の確実化が図れ、長期に亘ってシール機能が有効に発揮されて信頼性に優れる樹脂管継手を提供することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、第1リング部と第2リング部と連結部とでリング体を構成して被係合突起部分が軸心方向に縮小移動可能とされており、それによって締付終了状態から所定量ユニオンナットの締め込みを可能とする増締め手段が設けられている。故に、締付終了認知手段の構成要素(=リング体)の工夫により、部品点数の追加やスペースの追加等大型化を招くことなく、実用性や取扱い性が向上するものとしながら請求項3の発明による前記効果が得られる利点がある。この場合、請求項5のように、係合突起、被係合突起、及び連結部のそれぞれを周方向で均等間隔毎に4箇所ずつ設ける構成とすれば、強度があって確実に機能するより実用的な樹脂管継手にすることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、継手本体及びユニオンナットを耐薬品性、耐熱性に優れるフッ素系樹脂で形成するものであり、流体が薬液であるとか化学液体であっても、或いは高温流体であっても継手構造部分が変形して漏れ易くなることがなく、良好なシール性や耐引抜力が維持できるようになる。そして、フッ素系樹脂は高温にも安定で、撥水性に優れ、摩擦係数が小さく、耐薬品性も極めて高く、電気絶縁性も高い点で好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明による樹脂管継手の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は実施例1の樹脂管継手の構造を示す断面図、図2は図1の樹脂管継手の平面図、図3はリング体を示す正面図、図4はリング体が連れ回りされる直前を示す樹脂管継手の平面図、図5は増し締め後の締付限界状態を示す樹脂管継手の平面図である。
【0020】
〔実施例1〕
実施例1による樹脂管継手Aは、図1,図2に示すように、フッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製のチューブ3をポンプ、バルブ等の流体機器や、異径又は同径のチューブに連通接続するものであり、フッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製の継手本体1と、フッ素樹脂(PFA、PTFE等に代表される合成樹脂の一例)製ユニオンナット2と、リング体18との3部品で構成されている。尚、図1はユニオンナット2を所定量締め込んだ締付終了状態(組付状態)を示している。
【0021】
継手本体1は、図1,図2に示すように、チューブ3の端部を拡径して外嵌装着可能な一端のインナ筒(嵌合筒の一例)4と、インナ筒4の内奥側部分の外周側に拡径されたチューブ3先端の入り込みを許容すべく軸心P方向に延びる周溝mを有して被さるカバー筒部6と、台形ねじで成る雄ねじ5と、軸心Pを持つ円柱空間状の流体経路7と、外周フランジ1A等を備える筒状部材に形成されている。インナ筒4は、チューブ3を徐々に拡径させる先端先窄まり筒部4Aと、先端先窄まり筒部4Aの大径側に続いて形成される直胴筒部分4Bとを有する先細りストレート形のものとして構成されている。
【0022】
周溝mは、その径内側の周面である外周面は直胴筒部分4Bの外周面4bであり、その径外側の周面である外周面はカバー筒部6の内周面6aである。周溝mの奥側周面21から軸心P方向に所定長さ離れた箇所に外周フランジ1Aが形成されており、その外周フランジ1Aの略根元部位からカバー筒部6の端部の外周面に亘って雄ねじ5が形成されている。インナ筒4の先端面は、径方向で内側ほど内奥側(軸心P方向で奥側)に寄る逆テーパの角度が施される、即ち、先端ほど大径となるカット面16が形成されており、チューブ3の内周面が拡径部(フレア部)に向けて拡がり変位することに因る液溜り周部17の形状を内周側拡がり形状として、その流体が液溜り周部17に停滞し難くしてある。
【0023】
尚、カット面16は、その最大径が自然状態のチューブ3の内径と外径の略中間値となるように形成されているが、それにはこだわらない。また、フランジ1Aの軸心P方向で雄ねじ5と反対側には、軸心P方向に一定の幅を有する操作用の六角ナット部23、及びそれに続くパイプ部(接続部)25(図2,4,5を参照)が形成されている。
【0024】
継手本体1には、図1,図2に示すように、外周フランジ1Aの雄ねじ側面1aに続いて、雄ねじ5の山径と同じかそれ以上の径を持つ装着用外周面1cが形成されている。これは、リング体18(後述)を回動移動可能に外嵌装備させるための構成であって、ユニオンナット2と外周フランジ1Aとの間でリング体18を挟み込むことにより、ユニオンナット2でリング体18を回動移動させる連れ回り手段D(後述)構成がされる。
【0025】
ユニオンナット2は、図1,図2に示すように、雄ねじ5に螺合可能な雌ねじ8と、チューブ3のインナ筒4に外嵌される拡径部3Aにおける拡径変化領域9の小径側端部分に作用可能なシール用周エッヂ(シール用押圧部の一例)10と、拡径変化領域9の大径側端部分に作用可能な抜止め用周エッヂ11と、拡径部3Aにおける径一定の直胴筒部分4Bに外囲される拡径ストレート部12に外嵌可能な押え内周部13と、シール用周エッヂ10に続いてチューブ3を軸心P方向の所定長さに亘って外囲するガイド筒部14とを備えて形成されている。尚、2Aは滑止め加工が施された外周面、2bはナット部である。
【0026】
シール用周エッヂ10は、その内径がチューブ3の外径に略等しく、その押圧面10aは軸心Pに直交する側周面とされている。抜止め用周エッヂ11は、その内周面の径がインナ筒4の最大径である直胴筒部分4Bの外周面4bよりも大径であり、かつ、チューブ3の肉厚を足した径、即ち押え内周部13の径よりは小さい値に設定されているが、そうでなく(例:外周面4bよりも小径)ても良く、拡径変化領域9の大径側部分に作用すれば良い。抜止め用周エッヂ11の押圧面11aも軸心Pに直交する側周面である。
【0027】
押え内周部13は、これと拡径ストレート部12とに径方向の隙間が無く、かつ、ユニオンナット2の締込みによる拡径部3Aの連れ回りが生じない程度に拡径ストレート部12に圧入(圧接外嵌)される値に設定されて抜止め手段Nが構成されている。これは、ユニオンナット2の締込みにより、チューブ3の抜出しを阻止すべく抜止め用周エッヂ11が拡径ストレート部12を軸心方向で食い込むように押圧するが、その押圧力によって拡径ストレート部12が径外側に膨らむように逃げ変形できないようにして、抜止め用周エッヂ11との協働による耐引抜力を高めて得るためのものである。
【0028】
ユニオンナット2の継手本体へ1の螺進側となる先端である雌ねじ側端面2aには、図1,図2に示すように、リング体18(後述)を回動移動させるための係合突起20が形成されている。係合突起20は、平面視で略矩形を為し、径方向にある程度の寸法を有するものであり、軸心P回りの90度均等角度毎に計4箇所に一体形成されている。
【0029】
図1〜図3に示すように、ユニオンナット2の継手本体へ1の螺進側となる先端である雌ねじ側の端面2aと、外周フランジ1Aとの軸心P方向間には可撓性を有する材料(フッ素樹脂等の合成樹脂、ばね鋼等の金属、ゴム等)リング体18が介装されている。継手本体1の装着用外周面1cに装着されるリング体18は、外周フランジ1A、詳しくは雄ねじ側面1aに沿う第1リング部18aと、被係合突起19を有するユニオンナット側の第2リング部18bと、被係合突起19と周方向で位置ずれする状態で第1リング部18aと第2リング部18bとを繋ぐ連結部18cとを有して成るゲージリングとして構成されている。リング体18の径は、外周フランジ1Aの外周面1bの径、並びにユニオンナット2の外径と同じに設定されているが、それ以外でも良い。
【0030】
第2リング部18bには、周方向に少しの幅を持ち、かつ、軸心P方向でユニオンナット側に突出する略矩形状の被係合突起19が、軸心P回りの90度均等角度毎に計4箇所に一体形成されている。そして、被係合突起19よりも少し周方向幅の広い連結部18cは、被係合突起19と軸心Pに関して45度位置ずれする状態で軸心P回りの90度均等角度毎に計4箇所形成されている。外周フランジ1Aの径と同径の第1リング部18aと、ユニオンナット2の径と同径の第2リング部18bとは互いに同径である。つまり、リング体18は、外周フランジ1Aとユニオンナット2の端面2aとの軸心P方向間における継手本体1の装着用外周面1cに、軸心P回りに回動可能に外嵌装備されている。
【0031】
次に、チューブ3の端部をインナ筒4に外嵌挿入するには、常温下で強制的にチューブ3を押し込んで拡径させて装着するか、熱源を用いて暖めて膨張変形し易いようにしてから押し込むか、或いは拡径器(図示省略)を用いて予めチューブ端を拡径させておいてからインナ筒4に押し込むかして、図1に示すように、チューブ端3tがカバー筒部6の端壁15よりも内奥に位置する状態となるまで差し込む。インナ筒4に外嵌装着される拡径部3Aは、先端先窄まり筒部4Aの外周面4aに外嵌される拡径変化領域9と、直胴筒部分4Bの外周面4bに外嵌される拡径ストレート部12とで成る。
【0032】
つまり、図1に示すように、インナ筒4にチューブ3が外嵌装着された状態における雌ねじ8を雄ねじ5に螺合させてのユニオンナット2の締込みによる継手本体1の軸心P方向への螺進により、拡径ストレート部12に押え内周部13が外嵌され、かつ、拡径変化領域9の大径側部分におけるインナ筒4の径よりも大径となる部分が抜止め用周エッヂ11で軸心P方向に押圧され、かつ、拡径変化領域9の小径側部分がシール用周エッヂ10で軸心P方向に押圧されるように設定されている。尚、チューブ3の流体移送路3Wの径と流体経路7の径とは、円滑な流体の流れとすべく互いに同径に設定されているが、互いに異なっていても良い。
【0033】
この場合、前述したように、押え内周部13と拡径ストレート部12との径方向には隙間が無く、直胴筒部分4Bと押え内周部13との間に拡径ストレート部12が圧接挟持されているような状態になっている。また、実施例1においては、チューブ3の拡径変化領域9が先端先窄まり筒部4Aに被さる部分として形成されている。拡径変化領域9は、徐々に拡がるテーパ管の状態であり、シール用周エッヂ10と抜止め用周エッヂ11とは軸心P方向で互いに離れた位置関係にあるが、先端先窄まり筒部4Aの外周面4aの軸心Pに対する角度が急になればなる程、シール用周エッヂ10と抜止め用周エッヂ11との軸心P方向の距離は接近する。また、シール用周エッヂ10とインナ筒4の先端とは軸心P方向で少し離れているが、前記外周面4aの角度が急になればその離間距離は拡大され、緩くなればその離間距離は縮小される。
【0034】
さて、図1に示すように、樹脂管継手Aの所定の組付状態においては、シール用周エッヂ10はチューブ3の拡径変化領域9の小径側端部分を軸心P方向に押圧するので、拡径変化領域9の外周面4aの小径側端と、その箇所に接するチューブ3の内周面とが強く圧接されてシール部Sが形成される。このインナ筒4の先端箇所でのシール部Sにより、インナ筒4と拡径部3Aと間に洗浄液、薬液等の流体が入り込むことなくチューブ3と継手本体1とが良好にシールされている。
【0035】
そして、インナ筒4に圧入的に外嵌されている拡径部3Aの拡径ストレート部12が直胴筒部分4Bの外周面4bと押え内周部13とで囲まれていて、まず膨張変形できないようにホールドされており、かつ、抜止め用周エッヂ11がほぼその拡径ストレート部12に食い込むように位置している。これにより、拡径変化領域9の大径側端部分、即ち実質的に拡径ストレート部12に食い込むように押す抜止め用周エッヂ11の引掛かりによって拡径部3Aに作用する引抜力に抗することができるとともに、抜止め用周エッヂ11を基点として拡径ストレート部12が引抜力によって径方向に膨張変形できることに起因して拡径部3Aが抜き出る方向にずり動くことが牽制阻止されるようにもなる。
【0036】
拡径部3Aが軸心P方向に少しでもずり動くと、シール部Sにおけるシールポイントもずれてシール機能が不確実化するおそれがあるが、それが未然に防止されるようになる。従って、拡径部3Aが軸心P方向でインナ筒4から抜け出る方向の移動が強固に規制される抜止め手段Nが構成されており、それによって優れた耐引抜力が実現されている。その結果、継手本体1とユニオンナット2とから成るフレア型の樹脂管継手Aを、チューブがインナ筒に装着されている状態でのナット操作によって簡単に組付けできて組付性に優れるとともに、シール部Sによる優れたシール性と抜止め手段Nによる優れた耐引抜力との両立も図れる改善されたものとして実現できている。
【0037】
加えて、抜止め用周エッヂ11による拡径変化領域9の大径側部分の押圧が開始された後にシール用周エッヂ10による拡径変化領域9の小径側部分の押圧が開始される状態に設定されていること、即ち押圧時差手段により、次のような作用や効果もある。即ち、ユニオンナット2を回して締め込んで(螺進させて)ゆくと、まず、抜止め用周エッヂ11が先に拡径変化領域9(詳しくは拡径変化領域9の大径側部分)に当接し、そのときはシール用周エッヂ10は拡径変化領域9にまだ達していない。これにより、抜止め用周エッヂ11のみが拡径変化領域9の大径側部分、より詳しくは直胴筒部分4Bよりも大径となる部分を軸心P方向に押すから、ユニオンナット2の締付操作によって拡径ストレート部12をインナ筒4のより内奥側に押し込もうとする作用が生じる。上記は、抜け止め用エッヂ11による拡径変化領域9の大径側部分の押圧が開始された後にシール用周エッヂ10による拡径変化領域9の小径側部分の押圧が開始される状態について説明したが、そのような状態に限定されることはなく、抜け止め用周エッヂ11とシール用周エッヂ10とが同時にチューブ3に当接する構造でも良く、その場合においても同様の作用が生じる。
【0038】
直胴筒部分4Bに圧入外嵌される拡径ストレート部12は押え内周部13にも圧接されるが、その圧接力が比較的弱い場合には拡径部3Aをズリ動かしてインナ筒4のより内奥側に挿入させようとするから、より確実にチューブを継手本体1に差し込めるとか、それに加えて、軸心P方向に押される拡径ストレート部12が軸心P方向に動きに難いことに起因して径方向に膨張しようとして、より圧接力が高まってしっかりと挟持される作用が生じるといった好ましい効果が得られる。前記圧接力が比較的強い場合には、軸心P方向に押される拡径ストレート部12が軸心P方向にまず動けないことによって径方向に膨張しようとする強い作用が生じ、インナ筒4と押え内周部13との間で拡径ストレート部12がより一層強固に保持される効果が得られる。
【0039】
つまり、いずれせよ、シール用周エッヂ10が拡径部3Aに刺さり込み作用していない状況で抜止め用周エッヂ11が拡径部3Aを軸心P方向に押すことにより、直胴筒部分4Bと押え内周部13とによる拡径ストレート部12の圧接保持力が強化されるという効果が得られる。例えば、拡径部3Aにおける抜止め用周エッヂ11で押される部分が径外側に流動して押圧面11aと押え内周部13とで成される隅角空間部が埋まるといった具合である。このように、押圧時差手段により、チューブ3のインナ筒4に対する圧接保持力も耐引抜力も一層向上する効果が得られるようになる。
【0040】
また、図1に示すように、インナ筒4の内奥側とカバー筒部6とで形成される周溝m、及び透視可能なフッ素樹脂で形成されるユニオンナット2とにより、チューブ3が正しくインナ筒4に差し込まれている否かを目視チェック可能なインジケータ手段Bが構成されていても良い。つまり、押え内周部13の内奥側で、かつ、雌ねじ8に至るまでの間の谷状内周面22を通るラインでの目視により、拡径部3Aが見え、かつ、拡径端部3tが見えない正常状態であるならば、チューブ3がインナ筒4に正しく外嵌装備されていると判断できるからである。拡径部3Aが見え、かつ、拡径端部3tも見える差込不良状態、或いは拡径部3A自体が見えない差込不足状態であれば、チューブ3の差込がまだ規定量に達していないと判断できるのであり、この場合は前記正常状態が目視できるまでチューブ3をさらに押し込む操作を行うことになる。
【0041】
インジケータ手段Bは、ユニオンナット2が透明又は半透明(乳白色等)のフッ素樹脂を用いて形成されていてその内側にある物体を目視視認可能である。特に、押え内周部13の内奥側で、かつ、雌ねじ8に至るまでの間の谷状内周面22を通るラインでの目視で、ユニオンナット2の厚みの少ない部分のみの透視によって拡径部3Aを比較的はっきりと視認し易いものとなっている。それに対して、谷状内周面22の部位よりも肉厚が厚い押え内周部13の部位では拡径部3Aの視認度が劣り、見難いものとなっている。
【0042】
そして、チューブ3の端部が入り込み可能な周溝mの部分では、ユニオンナット2とカバー筒部6が重なっているので、継手本体1も透視可能であるとしても、厚みが谷状内周面22の部分よりも厚くなる上、雄ねじ5と雌ねじ8との重なりによる境界面での屈折率の変化も加わり、拡径端部3tが何処にあるかの視認は先ず無理な状態になる。また、継手本体1が着色されている等の透視不可の場合には、カバー筒部6の端壁15よりも内奥側においては、言うまでもなく拡径部3Aや拡径端部3tを見ることはできない。
【0043】
従って、谷状内周面22から拡径部3Aが見え、かつ、拡径端部3tが見えないという正常状態を視認できるか否かというインジケータ手段Bの機能によって、ユニオンナット2を締め付け操作した後の組付状態にて目視確認できるものであり、便利で使い勝手に優れる樹脂管継手Aが提供できている。
【0044】
また、インジケータ手段Bを構成するための周溝m及びカバー筒部6の存在により、チューブ3をインナ筒4に差し込む際におけるインジケータとしても機能する、という効果も得られる。即ち、チューブ3をフレアしてのインナ筒4への差込量が所定量になっているか否かの確認ができる。つまり、インナ筒4に差し込まれた拡径部3Aとしての端部3tが端壁15より奥にあれば良く、その良否をチューブ3のインナ筒4への組付時において視認判断できる手段としても機能する利点がある。
【0045】
次に、締付終了認知手段Cについて説明する。この樹脂管継手Aは、チューブ3を差し込んでユニオンナット2で締付固定するという組付作業状態におけるユニオンナット2の締付終了(又は終了が近づいたこと)を目視でもって認識可能な締付終了認知手段Cが設けられている。即ち、ユニオンナット2を回して締付けていくうちに、リング体18が連れ回りし出したら締付終了となるように設定されているものであり、要はリング体18の回動移動を目視によって確認したら組付けOK、という具合に締付終了認知手段Cが機能するのである。
【0046】
図1,図2に示すように、装着用外周面1cに外嵌装備されているリング体が、回し操作されるユニオンナット2によって回動移動される連れ回り手段Dが設けられており、シール用周エッヂ10が拡径変化領域9を押圧してシール部Sが形成されるユニオンナット2の螺進終了状態(又はその直前状態)になると、リング体18がユニオンナット2によって回動移動され始めるように設定されて締付終了認知手段C構成されている。連れ回り手段は、ユニオンナット2の係合突起20と、係合突起20と径方向寸法が等しい状態でリング体18に形成されている被係合突起19とで成り、螺進終了状態又はその直前状態になると係合突起20が被係合突起19を押し始める設定とされている。
【0047】
締付終了認知手段Cによる作用を説明すると、ユニオンナット2を締付けて螺進させて行き、押圧用周エッヂ10が拡径変化領域9を押圧し始めるかその直前になる状況では、図4に示すように、係合突起20と被係合突起19とは軸心方向で僅かに離れる位置関係となっている。さらにユニオンナット2を締込んで行き、押圧用周エッヂ10が拡径変化領域9を押圧してシール部Sが形成される状況では、図2に示すように、係合突起20が被係合突起19と径方向で干渉するまでユニオンナット2が螺進されていてリング体18が連れ回りされて回動移動している。
【0048】
従って、作業者はリング体18が回り始めたことを見ることにより、樹脂管継手Aが締付終了状態になったことを認識でき、それによってユニオンナット2の回し操作を終了する。これが締付終了認知手段Cによる作業者に締付終了になったことを知らせる機能である。つまり、シール部Sが形成されるユニオンナット2の螺進終了状態又はその直前状態になると、リング体18がユニオンナット2によって回動移動され始めるように設定されている。要は、ユニオンナット2を継手本体1に螺着して締付方向に回して行き、リング体18の連れ回りを目視できたら締付を終了する、という操作を行えば良い。
【0049】
そして、経時によるクリープなどより、ユニオンナット2の増し締めが必要となる場合には、見た目には締付終了にある図2の状態からリング体18の連れ回りを伴いながらユニオンナット2を回し込めば良い。即ち、軸心P方向にリング体18がより押圧されるので、周方向で隣り合う連結部18c,18cどうしの間における第2リング部18bが軸心方向に撓む(弾性変形する)ことにより(図5参照)、リング体18を回動移動させながら係合突起20のリング体18の軸心P方向幅内への入り込みを許容することが可能になっている。そして、増し締め限界は、図5に示すように、リング体18が連結部18cにおいて外周フランジ1Aとユニオンナット2とで挟持される状態、即ち締付限度状態である。これ以上は軸心P方向にリング体18が撓み変位(弾性変形)するのが不可能になるからである。
【0050】
つまり、実施例1による樹脂管継手Aにおいては、リング体18がユニオンナット2で回動移動され始めての螺進終了状態から、ユニオンナット2と外周フランジ1Aとの間にリング体18が挟まれてそれ以上の螺進が阻止される締付限度状態になるまでは、ユニオンナット2を締込み方向へ所定量回し操作可能とする増締め手段Eが設けられている。具体的には、リング体18の構造、即ち、周方向で隣合う連結部18c,18cどうしの中間に被係合突起20が位置して軸心P方向に撓み変位(弾性変形)可能な第2リング部18bが軸心方向に撓める構造である。
【0051】
〔別実施例〕
係合突起20や被係合突起19の大きさ、形状、寸法等は適宜な変更設定が可能であり、それらの数や連結部18cの数も種々の設定が可能である。また、例えば、連結部18c及び被係合突起をそれぞれ2箇所ずつとして、第2リング部18bの軸心P方向の可能撓み量を増大し、増し締め量を増やした樹脂管継手も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1による樹脂管継手の構造(締付終了状態)を示す断面図
【図2】図1の樹脂管継手を示す平面図
【図3】リング体を示す正面図
【図4】リング体が回動移動する直前を示す樹脂管継手の平面図
【図5】増締限界(締付限界)を示す樹脂管継手の平面図
【符号の説明】
【0053】
1 継手本体
1A 外周フランジ
2 ユニオンナット
2a 先端
3 チューブ
3A 拡径部
4 嵌合筒
5 雄ねじ
8 雌ねじ
9 拡径変化領域
10 シール用押圧部
18 リング体
18a 第1リング部
18b 第2リング部
18c 連結部
19 被係合突起
20 係合突起
C 締付終了認知手段
D 連れ回り手段
E 増締め手段
P 軸心
S シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製チューブの端部を拡径させて嵌合装着可能な嵌合筒と、雄ねじとを備える合成樹脂製の継手本体、及び、
前記雄ねじに螺合可能な雌ねじと、前記チューブの拡径部における拡径変化領域に作用可能なシール用押圧部とを備える合成樹脂製のユニオンナットを有し、
前記嵌合筒に前記チューブが嵌合装着される状態における前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させての前記ユニオンナットの前記継手本体の軸心方向への螺進により、前記拡径変化領域が前記シール用押圧部で前記軸心方向に押圧されてシール部が形成されるように構成されている樹脂管継手であって、
前記継手本体に形成される外周フランジと前記ユニオンナットの継手本体への螺進側となる先端との軸心方向間における前記継手本体に、前記軸心回りに回動可能なリング体が外嵌装備され、かつ、回し操作される前記ユニオンナットによって前記リング体が回動移動される連れ回り手段が設けられており、前記シール用押圧部が前記拡径変化領域を押圧して前記シール部が形成される前記ユニオンナットの螺進終了状態又はその直前状態になると、前記リング体が前記ユニオンナットによって回動移動され始めるように設定されて成る締付終了認知手段が設けられている樹脂管継手。
【請求項2】
前記連れ回り手段が、前記ユニオンナットの先端に軸心方向でリング体側に突出形成される係合突起と、前記リング体に軸心方向でユニオンナット側に突出形成される被係合突起とで成り、前記螺進終了状態又はその直前状態になると前記係合突起が前記被係合突起を押し始める設定とされている請求項1に記載の樹脂管継手。
【請求項3】
前記リング体が前記ユニオンナットで回動移動され始めての前記螺進終了状態から、前記ユニオンナットと前記外周フランジとの間に前記リング体が挟まれてそれ以上の螺進が阻止される締付限度状態になるまでは、前記ユニオンナットを締込み方向へ所定量回し操作可能とする増締め手段が設けられている請求項1又は2に記載の樹脂管継手。
【請求項4】
前記リング体が、前記外周フランジに沿う第1リング部と、前記被係合突起を有するユニオンナット側の第2リング部と、前記被係合突起と周方向で位置ずれする状態で前記第1リング部と前記第2リング部とを繋ぐ連結部とを有して成り、前記増締め手段が、前記第1リング部における前記連結部以外の箇所が軸心方向に変形して、前記連結部において前記リング体が前記外周フランジと前記ユニオンナットとの間で挟まれる前記締付限度状態になるまで、前記ユニオンナットの回し込みが可能となることにより構成されている請求項3に記載の樹脂管継手。
【請求項5】
前記係合突起、前記被係合突起、及び前記連結部のそれぞれが周方向で均等間隔毎に4箇所ずつ設けられている請求項4に記載の樹脂管継手。
【請求項6】
前記継手本体及び前記ユニオンナットがフッ素樹脂製である請求項1〜5の何れか一項に記載の樹脂管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223347(P2010−223347A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71823(P2009−71823)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】