説明

樹脂組成物およびその製造方法

【課題】ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン樹脂分解物と水を相溶しやすくし、従来では実現できなかったウレタン樹脂分解物の水溶化方法及びその樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】この発明の樹脂組成物は、ウレタン樹脂を化学的に分解したウレタン樹脂分解物と、該ウレタン分解物に加えて溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物と、水とを含有することを特徴とする樹脂組成物である。このような化合物としては、エタノール、エチレングリコール、モノエタノールアミン、エチレンジアミンなどが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂のリサイクル技術に関し、詳しくはウレタン樹脂を化学的に分解して得られた分解物と使用する樹脂組成物およびその製造方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂を含む廃棄物の例として、冷蔵庫、建材、クッション材などが挙げられる。近年、このリサイクルに対する要望が高まっており、これらの廃棄物はそれぞれの分野において再利用が研究されている。しかし、ウレタン樹脂は3次元の網目構造を有する熱硬化性樹脂であるためリサイクルが困難であり、現状は埋め立てや焼却などの処分がされている。
【0003】
ウレタン樹脂をリサイクルする方法として、ウレタンを化学的に分解して低分子化合物にして樹脂原料として再利用するものがある(例えば特許文献1参照)。これらの方法で得られたウレタン分解液と水を混合すると、2相に分離してほとんど水と相溶しないため、水性塗料への利用が困難であるという問題があった。
【0004】
また、特許文献2にはウレタン樹脂をグリコールで分解し、特定の溶解パラメータを持つグリコールを添加し相分離を抑えるという技術が記載されている。ところで、この文献2においては、ウレタンを分解した時に起こるポリオール成分とアミン成分の均一化を目的としたものであって、水溶化については開示されておらず、水性塗料としての使用を教示するものではなかった。
【0005】
このように、従来公知の技術においては、依然としてウレタン樹脂のリサイクル樹脂を水性樹脂組成物へ応用する技術について解決策が見いだされておらず、その技術の開発が求められていた。
【特許文献1】特開平6−184513号公報
【特許文献2】特開2000−239345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン樹脂分解物と水とを相溶しやすくすることによって、従来では実現できなかったウレタン樹脂分解物を水溶化した樹脂組成物を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、(1)ウレタン樹脂を化学的に分解したウレタン樹脂分解物、(2)溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物、および(3)水を必須成分とする樹脂組成物である。
【0008】
前記本発明において、前記水酸基またはアミノ基を有する化合物が、エタノールであることが好ましい。
また、前記本発明において、樹脂組成物の組成比は、(1)ウレタン樹脂を化学的に分解したウレタン樹脂分解物を30〜90重量部、(2)溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物を5〜65重量部、(3)水を5〜65重量部の割合で混合したものとすることが好ましい。
【0009】
第2の本発明は、ウレタンを化学的に分解して得られたウレタン分解物に、溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物と水とを混合を有する樹脂組成物の製造方法である。
【0010】
本発明者らは、ウレタン樹脂を分解して得られたウレタン樹脂分解物を水と相溶させる検討を行った結果、水酸基またはアミノ基を有する特定の溶解パラメータの化合物を添加することによって、ウレタン樹脂分解物と水とを相溶させやすくすることに成功した。また、本発明によれば冷蔵庫、建材、クッション材などの産業資材として使用済みのウレタン樹脂を再利用するにあたり有効な再生方法を提供することができ、廃棄物を減少させ環境に対する負荷を軽減することができるという点でも大変有用である。

【発明の効果】
【0011】
この発明に依れば、ウレタン樹脂分解物を簡便な方法によって均一な水性樹脂組成物を得ることができ、スプレー塗布可能な樹脂組成物とすることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る樹脂組成物の各成分及び樹脂組成物の製造方法、並びにこの樹脂組成物を使用する方法の実施形態について説明する。
【0013】
(ウレタン樹脂分解物)
ここで言うウレタン樹脂分解物とは、ウレタン樹脂を化学的に分解、すなわち低分子化させたものである。
被分解物であるウレタン樹脂は、その用途等特に限定されるものではない。具体的には、発泡硬質ウレタン(硬質フォーム)、ヌレート結合を持つイソシアヌレート材、発泡半硬質ウレタン(半硬質フォーム)、発泡軟質ウレタン(軟質フォーム)、ウレタンエラストマー、RIM成型体等の種類があり、その用途としては、断熱材、構造材、寝具、自動車シート、バンパー、などが上げられる。
この中でも、硬質ウレタン樹脂を分解した分解物を用いた場合が、分解物中に含まれる官能基の数が多くなるため成形体の強度が向上し好ましい。ここで硬質ウレタンとは、ウレタン原料ポリオールの水酸基価が250mgKOH/g以上のもの使用したウレタン樹脂と定義する。ウレタン原料ポリオールの水酸基価上限は1024mgKOH/gである。より高い強度を得るためには、ウレタン原料ポリオールが350mgKOH/g以上のものを用いることが望ましい。
【0014】
ウレタン樹脂を化学的に分解すると、分解物中に主には原料に由来した、水酸基を構造中に有する化合物(ポリオール類)及びアミノ基を構造中に有する化合物(アミン類)が生成する。このアミノ基はウレタン原料イソシアネート成分のNCO基が反応し、NH2基に変化したものである。より強度の高い成形体を得るために、分解物のアミン価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下になるよう分解した分解物である事が好ましい。また、分解物の水酸基価が300mgKOH/g以上750mgKOH/g以下、さらに好ましくは400mgKOH/g以上750mgKOH/g以下になるよう分解した分解物であることが望ましい。
【0015】
ウレタン樹脂を化学的に分解する方法は、分解物中に水酸基、アミノ基を生成するものであれば特に方法は問わない。具体的には熱及び分解剤の少なくとも一方を作用させて化学的に分解する方法が挙げられる。
【0016】
熱による分解を行う際には、例えば300℃〜500℃の温度で、常圧もしくは加圧状態下におくことにより行うことができる。このとき窒素置換雰囲気か、無酸素雰囲気で行われることが望ましい。また、押出機などのスクリューフィーダや炉で行うことができる。
【0017】
また、分解剤を作用させて分解を行う方法について以下に述べる。
分解剤の例としては、アミン類分解剤、ポリオール類分解剤、あるいは加水分解触媒などが挙げられる。その中でも、アミン類分解剤が、分解物中に多くのアミノ基を含有するようになるので、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基およびその無水物との反応が良好になり、高い強度がでるので特に好ましい。
【0018】
前記アミン類分解剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチレンジアミン、プロパンジアミン、イソプロパノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、エチルアミノエタノール、アミノブタノール、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、n−アミルアミン、イソブチルアミン、メチルジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペラジン、ピペリジン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、クロロアニリン、ピリジン、ピコリン、N−メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ピラゾール、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、12−アミノドデカン酸、2−エチルヘキシルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3−アミノ−1−プロパノール、3−アミノクロトン酸メチル、3−メトキシプロピルアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ブチルエタノールアミン、N−エチルエチレンジアミン、n−ヘキシルアミン、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、アリルアミン、イソプロピルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジアリルアミン、ジイソブチルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ジエチレントリアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジブチルアミン、ジメチルアミン、テトラエチレンペンタミン、テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、プロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノイソプロパノールアミン、モノブチルアミン、モノメチルアミンが挙げられる。これらの化合物を2種類以上混合して使用しても問題はない。
【0019】
アミン類分解剤を被分解物であるウレタン樹脂100重量部に対し5重量部以上、より好ましくは10重量部以上用いることが望ましい。上限はウレタン樹脂100重量部に対し100重量部以下、より好ましくは40重量部以下であることが望ましい。
【0020】
これらのアミン類分解剤とウレタン樹脂を分解装置に投入してウレタン分解物を得る。分解装置には、従来知られているどのような分解装置を用いることもできるが、特に加熱・混合・圧縮の同時にできる押出し機を用いることが望ましい。バッチ式で分解を行うと、ウレタンの熱伝導率が悪いため、ウレタンの分解開始時間に大きな差ができてしまう。このため、先に分解した部分はより低分子量に、後に分解したものが高分子量になるため、幅広い分子量を持つ分解物となってしまうのである。分解する際には温度は150℃〜300℃、分解時間はバッチ式で数十分〜数時間、連続式では1〜10分程度で行うことが望ましい。
【0021】
ウレタン樹脂分解物中に含有される成分は、分解するウレタン樹脂の原料であるポリオールと、原料のイソシアネートの末端がアミノ基に代わったアミン類、及びこれらのオリゴマーである。成分の具体例を以下に挙げる。
【0022】
まず、ウレタン樹脂分解物中に含有されるアミン類としては、原料の4−4’ジフェニルメタンジイソシアネート及びそのポリマー由来のジアミノジフェニルメタン(MDA)及びそのポリマー、トルイレンジイソシアネート(TDI)由来のトルイレンジアミン(TDA)などが主なアミン類として挙げられる。これ以外にも、NDI(1,5−ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、H6XDA(水添MDI)、LDI(リジンジイソシアネート)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、TMXDI(テトラメチルキシレンジイソシアネート)、リジンエステルトリイソシアネート、等のイソシアネート基がアミノ基に変換したアミン類や、ポリオールと反応させたプレポリマーの末端がアミノ基に変換したものも挙げられる。
【0023】
ウレタン樹脂分解物中ポリオール類としては、ウレタン樹脂原料として一般的に使用されているポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールに大別される。エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールエチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スークロース、糖類などにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等を付加反応させたものが具体例として挙げられる。
【0024】
(溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物)
溶解パラメータとは、溶解性の指標となるパラメータのことであり、物理定数から求めることができる。
この溶解パラメータの詳細は、高分子データハンドブック基礎編(昭和61年、高分子学会編)に記載されており、本発明において添加する化合物の溶解パラメータはこの本に記載されている値を使用している。また、この本に記載されていない化合物についてはモル牽引定数よりSmallの式から算出することができる。算出方法は、同ハンドブックに記載されている。
【0025】
ウレタン分解物を水と相溶化するために、溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある化合物を添加する。さらに好ましくは7〜13cal1/2cm−3/2のものを使用するのが良い。この範囲にない化合物を添加した場合、水との相溶性を改善することができず、場合によっては悪化させる。また、この時添加する化合物中に水酸基を有する化合物またはアミン類(1級アミン、2級アミン、3級アミン)を使用する。これらの官能基を持っていると、ウレタン分解物と再生剤(後述)で再生樹脂を作成する際に樹脂中に取り込まれるため、添加した化合物の分離が不要であり、VOCなどの形で大気中に放出されることもない。より好ましくは二つ以上の水酸基またはアミノ基を含有していることが好ましい。このような化合物を用いると、一つだけ水酸基またはアミノ基を有する化合物を用いるより架橋密度が増えるため、再生樹脂の機械強度が向上するので好ましい。また、水酸基やアミノ基が一つのものでも、エタノールのように沸点が低いものを用いると、再生樹脂を加熱硬化する際に添加した化合物が揮発するので再生樹脂に影響を与えず好ましい。この時、揮発しきれないものは、再生剤と反応して樹脂中に取り込まれるので、VOCとして放散されない。
【0026】
具体的な化合物の例としては一般的に売られている化学薬品のうち、溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2にあり、水酸基を有する化合物またはアミン類であればよい。例えば、メタノール(溶解度パラメータ:14.5)、エタノール(12.7)、n−プロパノール(11.9)、n−ブタノール(11.4)、イソブタノール(10.5)、sec−ブチルアルコール(10.8)、tert−ブチルアルコール(10.6)、n−オクタノール(10.3)、1−ドデカノール(9.8)、エチルヘキサノール(9.5)、3,5,5−トリメチルヘキサノール、(8.4)、シクロヘキサノール(11.4)、メチルイソブチルカルビノール(10.0)、n−アミルアルコール(10.9)、アリルアルコール(11.8)、ラウリルアルコール(8.1)、ベンジルアルコール(12.1)、フルフリルアルコール(12.5)、エチレングリコール(14.6)、ジエチレングリコール(12.1)、トリエチレングリコール(10.7)、テトラエチレングリコール(9.9)、プロピレングリコール(12.6)、ジプロピレングリコール(10.0)、トリプロピレングリコール(9.2)、ネオフェニルグリコール(11.0)、1,3−ブタンジオール(11.6)、1,4−ブタンジオール(12.1)2,3−ブタンジオール(11.1)、1,5−ペンタンジオール(11.5)、2,4−ペンタンジオール(10.8)、2,5−ヘキサンジオール(10.3)、ポリエチレングリコール(9〜11)、メチルアミン(11.2)、エチルアミン(10.0)、ジエチルアミン(8.0)、トリエチルアミン(7.4)、n−ブチルアミン(8.7)、ジブチルアミン(8.1)、トリブチルアミン(7.7)、ジブチルアミン(8.1)、トリブチルアミン(7.7)、n−アミルアミン(8.7)、エチレンジアミン(12.3)、トリエチレンテトラミン(11.1)、ジエチレントリアミン(10.7)、アニリン(10.3)、m−キシリレンジアミン(10.4)、モノエタノールアミン(11.8)、ジエタノールアミン(11.0)、トリエタノールアミン(10.3)などが挙げられる。これらのものを複数添加しても構わない。
【0027】
これらの化合物をウレタン分解物に添加するのは、ウレタン分解の前、すなわちウレタン樹脂原料を分解する以前に添加しても、分解後に添加しても構わないが、好ましくはウレタンを分解した後に加えるのが良い。分解前に添加すると、ウレタンの分解に関与して化合物が消費されてしまったり、分解時の熱で添加した化合物が揮発してしまったりする可能性があるからである。また、水と同時に加えても、水を加える前でも構わない。
これらの化合物を、ウレタン樹脂を化学的に分解したウレタン樹脂分解物を30〜90重量部に対し、5〜65重量部添加し、さらに水を5〜65重量部の割合で混合することにより本発明の樹脂組成物が得られる。
【0028】
(ウレタン分解物から再生樹脂を作る方法)
前述のようにして混合された樹脂組成物を用いて、再生樹脂を製造する方法は3つの方法がある。すなわち、(1)エポキシ基を2つ以上含有する化合物を添加して樹脂を合成する方法、(2)イソシアネート基を2つ以上含有する化合物を添加して樹脂を合成する方法、および(3)カルボキシ基を2つ以上含有する化合物またはその無水物を添加して樹脂を合成する方法である。その用途としては、樹脂成型体、接着剤、路盤材、塗料などが挙げられ、樹脂組成物が水性であることから、スプレー塗布する用途に適している。また、その用途に応じて再生樹脂の組成を調整することができる。
【0029】
(エポキシ基を2つ以上含有する化合物)
本発明で使用されるエポキシ樹脂としては1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、特に限定されるものではない。その具体的例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、トリス−ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、その他の多官能型エポキシ樹脂のほか、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジールイソシアネートやヒダントインエポキシの如き含複素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテルやペンタエリスリトール−ポリ−グリシジルエーテルなどの脂肪族系エポキシ樹脂、脂肪族もしくは芳香族カルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、オルソ−アリル−フェノールノボラック化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのそれぞれの水酸基のオルソ位にアリル基を有するジアリルビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などである。さらに柔軟性を付与させる目的で、低極性結合基を導入させたオリゴマー型変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂などがあり、さらに、難燃性を付与させる目的の臭素化したエポキシ樹脂なとも用いることができる。この中でも、室温における粘度が500ポアズ以下、さらには300ポアズ以下の室温で液状のエポキシ樹脂を用いると、取り扱いが容易で好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、たとえば、エピコート825,エピコート827,エピコート828,エピコート828EL,エピコート828XA,エピコート834,エピート801,エピコート801P,エピコート802,エピコート802XA,エピコート815,エピコート815XA,エピコート816A,エピコート819,エピコート806,エピコート806L,エピコート807(以上ジャパンエポキシレジン株式会社)、EP−4100,EP−4100G,EP−4100E,EP−4100W,EP−4100TX,EP−4300E,EP−4340,EP−4200,EP−4400,EP−4500A,EP−4510,EP−4520,EP−4520S,EP−4520TX,EP−4530,EP−4901,EP−4901E,EP−4950,EP−4000,EP−4005,EP−1307,EP−4004,Ep−4080E,EP−4012M,EP−4000S,EP−4000SS,EP−4003S,EP−4010S,EP−4088S,EP−4085S(以上旭電化工業)、EXA−4850−150,EXA−4850−1000,(以上大日本インキ化学工業、CEL−2021P(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量128〜140、粘度200〜350cP/25℃)、CEL−2021A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量130〜145、粘度200〜450cP/25℃)、CEL−2000(1−ビニル−3,4−エポキシシクロヘキサン、1.5cP/25℃)、CEL−3000(1,2,8,9−ジエポキシリモネン、エポキシ当量93.5以下、粘度5〜20cP/25℃)(以上ダイセル化学工業製)や、デナコールEX−421、201(レゾルシンジグリシジルエーテル)、211(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)、911(プロピレングリコールジグリシジルエーテル)、701(アジピン酸ジグリシジルエステル)(以上ナガセ化成工業製)等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は粘度、耐熱性、接着性、表面硬度の点から、混合して使用することができる。
【0030】
(イソシアネート基を二つ以上もつ化合物)
本発明で使用されるイソシアネート樹脂としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。その具体的例としては、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート,1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ピリジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;ジメチレントリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物;グリセリンやトリメチロールプロパン等のポリオール類と上記ジイソシアネート化合物との付加反応物、等が挙げられる。これらのイソシアネートは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
(カルボキシ基を二つ以上有する化合物およびその無水物)
本発明で使用されるカルボキシ基を含有する樹脂としては、カルボキシ基を2つ以上持つものおよびその無水物であればよく、特に限定されるものではない。その具体例として、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタルサン、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、ニトロフタル酸、マロン酸、シュウ酸、グルタル酸、コハク酸、ピメリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノスベリン酸、1,12−ドデカン2酸、ハイミック酸、ヘット酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロルマレイン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。一般にエポキシ樹脂の硬化剤として使用されている酸無水物硬化剤を使用してもかまわない。また、この中でも不飽和炭素結合を有する化合物を用いることが好ましい。これらの化合物を二種類以上を混合して使用しても良い。
【0032】
これらの反応剤と、樹脂組成物を反応させることによって再生樹脂を得ることができる。その用途については特に制限されない。必要に応じて、さらに樹脂組成物に充填材、ガラスファイバー、着色剤、促進剤、離型剤、などの各種添加剤を配合して、成形材料として使用することができる。これら充填材には、シリカやアルミナなどの各種無機充填材のほか、金属分、木粉、古紙、樹脂くず、貝殻、砂、コンクリート廃材などが挙げられ、このような充填材を配合した成形材料からの各種ボード、タイル、レンガなどを製造できる。また、着色料、促進剤、溶剤等を加え、ペイントとして使用できる。

【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【0034】
<ウレタン樹脂分解物の作成>
冷蔵庫の断熱材に使用されているウレタン樹脂(水酸基価450mgKOH/gのポリオールとポリメリックMDIを主成分とする:以下ウレタン樹脂A)を合成した。合成されたウレタン樹脂A:モノエタノールアミン=4:1の混合比で250℃の1軸押出し機に投入してウレタン樹脂分解物Aを得た。
【0035】
(実施例1)
ウレタン樹脂分解物Aを100重量部、エタノール(溶解パラメータ:12.7cal1/2cm−3/2)30重量部をよく混合したあと、この混合物に純水を徐々に添加した。水を60重量部添加しても相分離を起こさなかったが、これ以上添加すると水と分解物の2相に分離した。このため、エタノールを30重量部添加した場合の、最大水溶解量は60重量部であった。
【0036】
(比較例1)
ウレタン樹脂分解物Aを100重量部に純水を徐々に添加した。水を20重量部添加しても相分離を起こさなかったが、これ以上添加すると水と分解物の2相に分離した。何も添加しなかった場合の、最大水溶解量は20重量部であった。
【0037】
(実施例2〜8)
エタノールの量を変化させたこと以外は実施例1と同様に水の最大溶解量を調べた。
【0038】
実施例1、比較例1と共に表1にまとめる。また、エタノール添加量と最大水溶解量の関係を図1に示す。エタノール添加による水溶解量の増加は5重量部から現れ始め、10重量部から劇的に変化した。また、200重量部までは水溶解量が増加したが、それ以上は変化しなかった。このため、エタノールの添加量は10重量部以上200重量部までが好ましい範囲と言える。
【0039】
【表1】

【0040】
(実施例9〜25)
実施例1と添加する化合物の種類を変えたこと以外は同じにして、水の最大溶解量を調べた。使用した化合物の溶解パラメータと最大水溶解量を表2と図2にまとめた。
【0041】
【表2】

【0042】
(比較例2)
エタノールの代わりにグリセリンを用いたこと以外は実施例1同様にして、水の最大溶解量を調べた。使用した化合物の溶解パラメータと最大水溶解量を表2と図2に併せて示した。
【0043】
この結果を見ると、溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある化合物を添加すると、水の最大溶解量を増加させることがわかった。しかし、比較例2にあるように、溶解パラメータが16cal1/2cm−3/2より大きいものを添加すると、水の最大溶解量を増加させることができなかった。このため、最適な溶解パラメータは7〜16cal1/2cm−3/2であることがわかる。また、7〜13cal1/2cm−3/2の範囲においては、大きく水の最大溶解量を増加させる化合物が多くあり、この範囲にある化合物を用いることが好ましい。
【0044】
<再生樹脂の作成>
(実施例26)
ウレタン樹脂分解物7.5重量部、エタノール(溶解度パラメータ12.7cal1/2cm−3/2)2.5重量部、水5重量部を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物15重量部とイソシアネート25重量部(三井武田ケミカル社製、M−200)を粉砕した籾殻360重量部に噴霧したあと、金型に入れて、180℃、5分、30kg/cmでプレス成型したところ、木質ボードを得た。JIS A 5908に基づいてこの木質ボードの強度を測定したところ、27.1MPaであった。
【0045】
(実施例27)
エタノールの代わりに、ポリエチレングリコール#400(溶解度パラメータ9.7cal1/2cm−3/2)を用いたこと以外は、実施例26と同様に木質ボードを得た。JIS A 5908に基づいてこの木質ボードの強度を測定したところ、27.1MPaであった。
【0046】
(比較例3)
エタノールの代わりにグリセリン(溶解度パラメータ16.5cal1/2cm−3/2)を用いたこと以外は実施例26と同様に樹脂組成物を得ようとしたところ、水とウレタン分解物が分離して混ざらなかった。高速攪拌機でこれらを混合したところ、クリーム状の液体となり粘度が高くスプレー噴霧できなかった。このため、リボンミキサー中でこのクリーム状の液をたらしながら混合し、その後実施例26と同様に木質ボードを成型した。JIS A 5908に基づいてこの木質ボードの強度を測定したところ、17.9MPaであった。また、破断面を観察したところ、ウレタン分解物が十分に木材の表面に分散していないことが確認された。
【0047】
(実施例28)
ウレタン樹脂分解物7.5重量部、エタノール2.5重量部、水5重量部を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物15重量部とエポキシ樹脂30重量部(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)を粉砕した籾殻350重量部に噴霧したあと、金型に入れて、180℃、10分、30kg/cmでプレス成型したところ、木質ボードが得られた。
【0048】
(実施例29)
ウレタン樹脂分解物7.5重量部、エタノール2.5重量部、水5重量部を混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物15重量部と無水マレイン酸7.5重量部を粉砕した籾殻350重量部に噴霧したあと、金型に入れて、180℃、10分、30kg/cmでプレス成型したところ、木質ボードが得られた。

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】エタノール添加量と、最大水溶解量の関係を示すグラフ。
【図2】化合物の溶解パラメータと、水の最大溶解量の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンを化学的に分解したウレタン樹脂分解物と、溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物と、水とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物は、エタノールであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂分解物は、硬質ウレタン樹脂を分解して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂分解物は、アミン類を用いて分解して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ウレタンを化学的に分解したウレタン樹脂分解物が30〜90重量部、溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物が5〜65重量部、水が5〜65重量部の範囲で混合して得られることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
ウレタンを化学的に分解して得られたウレタン分解物に、溶解パラメータが7〜16cal1/2cm−3/2の範囲にある水酸基またはアミノ基を有する化合物と水を混合する工程を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−91832(P2007−91832A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281374(P2005−281374)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】