説明

樹脂組成物およびそれを含む積層体

【課題】耐光性、熱堅牢性および温熱堅牢性に優れた樹脂組成物および、それを含む積層体を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と、下記一般式(I)で表される化合物を含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびそれを含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(PDP)はキセノンなどのガスに高電圧をかけ、プラズマ発光させることで画像を表示するが、励起されたキセノンなどのガス分子がより安定な状態になる際に近赤外線が放出される。この為、PDPからは近赤外線が発生する。近赤外線は、リモコン装置の誤動作の原因になるなどの弊害の原因になることから、近赤外線を吸収除去するなどの近赤外線遮蔽処置をすることが必要とされている。そのため、PDPを用いたテレビジョン、いわゆるプラズマテレビのディスプレイ前面には、近赤外線吸収フィルター、例えば、近赤外線吸収フィルムが装着されている。
【0003】
近赤外線吸収フィルターには、近赤外線を吸収する色素を用いたものが知られている。例えば、ジイモニウム塩類や、フタロシアニン錯体などの有機色素を含んだ近赤外線吸収層を、ディスプレイ前面に塗布してなる、PDP等のための電子ディスプレイ用フィルターが開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかし、塗布により近赤外線吸収フィルターを設けるのは、生産性上、効率がよくないという問題があった。
【0004】
近年、PDPの生産性向上が強く求められていることから、このような問題を解決するため、近赤外線吸収色素を粘着剤に練りこんで、接着層と近赤外線吸収層を一層化する要求が高まっている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−174627号公報
【特許文献2】特開2002−249721号公報
【特許文献3】特開2006−257223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来色素では粘着剤に練りこんでも、色素の堅牢性が不十分なため、要求されるフィルターの耐用年数を満たさない等の問題があり、更に堅牢な色素が求められていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、耐光性、熱堅牢性および温熱堅牢性に優れた樹脂組成物および、それを含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1> バインダー樹脂と、下記一般式(I)で表される化合物群から選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物である。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(I)中、R111、R112、R121、R122、R131およびR132は、各々独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、R113とR114、R114とR111、R111とR112、R112とR115、R115とR116、R116とR123、R123とR124、R124とR121、R121とR122、R122とR125、R125とR126、R126とR133、R133とR134、R134とR131、R131とR132、R132とR135、R135とR136およびR136とR113は互いに連結して環を形成してもよい。Xは1価または2価の陰イオンを表し、nは1または2を表し、Xの価数とnの積は2となる。但し、R131とR132が同時に、4位に−NR141142で表される基を有するフェニル基となることは無い。ここでR141およびR142は、各々独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。
<2> 850〜1000nmの波長光の透過率が30%以下であることを特徴とする前記<1>に記載の樹脂組成物である。
<3> 前記バインダー樹脂のガラス転移温度が50℃以下であることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の樹脂組成物である。
<4> 前記バインダー樹脂のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
<5> 前記バインダー樹脂に対する前記一般式(I)で表される化合物の質量比が0.1〜10%であることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
<6> 前記一般式(I)中、R111、R112、R121、R122、R131およびR132のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
<7> 前記一般式(I)中、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
<8> 前記一般式(I)中、Xが、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、又は下記一般式(II)、(III)、(IV)のいずれかで表されるイオンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
前記一般式(II)〜(IV)中R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413、各々独立に、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。
<9> 前記一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413が、各々独立に、ハロゲン原子を有する脂肪族基、ハロゲン原子を有する芳香族基またはハロゲン原子を有する複素環基である前記<8>に記載の樹脂組成物である。
<10> 前記一般式(II〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413がフッ素原子を有する脂肪族基、フッ素原子を有する芳香族基またはフッ素原子を有する複素環基である前記<9>に記載の樹脂組成物である。
<11> 前記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む積層体である。
<12> 第1の紫外線吸収層、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層、および第2の紫外線吸収層を順次積層してなる構造を有することを特徴とする前記<11>に記載の積層体である。
<13> プラズマディスプレイに装着される表示面板に使用されることを特徴とする前記<1>〜<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
<14> プラズマディスプレイに装着される表示面板に使用されることを特徴とする前記<11>または前記<12>に記載の積層体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により耐光性、熱堅牢性および温熱堅牢性に優れた樹脂組成物および、それを含む積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値の下限値および上限値を含む意味に用いる。
【0016】
<樹脂組成物>
−一般式(I)で表される化合物−
本発明の樹脂組成物は、バインダー樹脂と、下記一般式(I)で表される化合物群から選択される少なくとも1種とを含むことを特徴とする。
【0017】
【化5】

【0018】
一般式(I)中、R111、R112、R121、R122、R131およびR132は、各々独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、R113とR114、R114とR111、R111とR112、R112とR115、R115とR116、R116とR123、R123とR124、R124とR121、R121とR122、R122とR125、R125とR126、R126とR133、R133とR134、R134とR131、R131とR132、R132とR135、R135とR136およびR136とR113は互いに連結して環を形成してもよい。Xは1価または2価の陰イオンを表し、nは1または2を表し、Xの価数とnの積は2となる。但し、R131とR132が同時に、4位に−NR141142で表される基を有するフェニル基となることは無い。ここでR141およびR142は、各々独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。
【0019】
前記一般式(I)で表される化合物は、近赤外線吸収色素であり、本発明の樹脂組成物に該一般式(I)で表される化合物を含むことにより、近赤外線を吸収して遮断する遮断材料として用いることができる。例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)の表示面板に用いた場合、PDPから放出される近赤外線を遮断することができる。また、当該化合物は、耐光性や熱堅牢性、湿熱堅牢性に優れることから、PDPが、外光としての紫外線・可視光線にさらされ、高温環境下(例えば80℃)におかれた場合でも、耐用し得る。
【0020】
近赤外線を実用上問題無いレベルまで遮断するためには、本発明の樹脂組成物の、波長領域850〜1000nmの波長光に対する透過率が、30%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0021】
前記一般式(I)において、R111、R112、R121、R122、R131またはR132で表される「脂肪族基」は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基または置換アラルキル基を意味する。
前記アルキル基は、分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。前記アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜18であることが更に好ましい。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル等を挙げることができる。
前記置換アルキル基のアルキル部分は、前記アルキル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
前記アルケニル基は、分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。前記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル等を挙げることができる。
前記置換アルケニル基のアルケニル部分は、前記アルケニル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
前記アルキニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。前記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル等を挙げることができる。
前記置換アルキニル基のアルキニル部分は、前記アルキニル基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
前記アラルキル基および前記置換アラルキル基のアルキル部分は、前記アルキル基と同義である。前記アラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基等を挙げることができる。前記アラルキル基および前記置換アラルキル基のアリール部分は下記アリール基と同義である。
【0022】
前記置換アルキル基、前記置換アルケニル基、前記置換アルキニル基および前記置換アラルキル基のアルキル部分の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。前記「アルキル基」には、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)のほか、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基)、例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造のアルキル基をも包含する。また、後述する置換基としてのアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)においても、同義であり、好ましい範囲も同義である。〕、
【0023】
アルケニル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。前記「アルケニル基」には、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基(炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基)、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基(二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基)、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、
【0024】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5員または6員の、置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5員もしくは6員の芳香族ヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
【0025】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えば、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
【0026】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、
【0027】
アルキルスルフィニル基及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
【0028】
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールアゾ基及びヘテロ環アゾ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
【0029】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを、更に上記の置換基で置換したものでも良い。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0030】
前記脂肪族基における置換アラルキル基のアリール部分の置換基としては、後述する置換アリール基の置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0031】
前記一般式(I)において、R111、R112、R121、R122、R131またはR132で表される「芳香族基」は、アリール基または置換アリール基を意味する。前記芳香族基は、脂肪族環、他の芳香族環または複素環が縮合していてもよい。アリール基の炭素原子数は、6〜40が好ましく、6〜30が更に好ましく、6〜20が更に好ましい。また、その中でもアリール基としてはフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。
【0032】
置換アリール基のアリール部分は、前記アリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。置換アリール基の置換基は、上記の置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基として説明した置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0033】
前記一般式(I)において、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135またはR136で表される「置換基」は、上記の置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基として説明した置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0034】
前記一般式(I)中、R111、R112、R121、R122、R131またはR132は、生産性の点で、好ましくは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアリール基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアルキニル基および炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基および炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜8の置換もしくは無置換のアリール基である。
上記の中でも、生産性の点で、最も好ましくは炭素数2〜6の置換もしくは無置換のアルキル基である。
また、生産性の点で、R111、R112、R121、R122、R131およびR132のうち少なくとも1つが異なる官能基で表されることが好ましい。即ち、一般式(I)で示される構造の中心の窒素原子に結合された3つのフェニル基のうち1つが異なるか、あるいは、全てが異なることが色相の点で好ましく、中心の窒素原子に結合された3つのフェニル基のうち1つが異なる場合が更に好ましい。
【0035】
前記一般式(I)中、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135またはR136は、生産性の点で、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、イミド基、シリル基であり、更に好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アミノ基であり、最も好ましくは水素原子、アルキル基である。
また、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136のうち少なくとも1つが異なる官能基であることが好ましい。即ち、一般式(I)で示される構造の中心の窒素原子に結合された3つのフェニル基のうち1つが異なるか、あるいは全てが異なることが色相の点で好ましく、中心の窒素原子に結合された3つのフェニル基のうち1つが異なる場合が更に好ましい。
【0036】
前記一般式(I)中、R131とR132が同時に、4位に−NR141142で表される基を有するフェニル基となることは無い。ここで、R141およびR142は、各々独立に、水素原子、脂肪族基および芳香族基を表す。R141およびR142で表される脂肪族基および芳香族基は、R111、R112、R121、R122、R131またはR132の説明において記載した脂肪族基および芳香族基と同義であり、それらの好ましい範囲も同様である。
【0037】
さらに、前記一般式(I)中、R113とR114、R114とR111、R111とR112、R112とR115、R115とR116、R116とR123、R123とR124、R124とR121、R121とR122、R122とR125、R125とR126、R126とR133、R133とR134、R134とR131、R131とR132、R132とR135、R135とR136、およびR136とR113は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0038】
前記一般式(I)中、Xは、1価または2価の陰イオンを表し、nは、1または2を表す。また、Xの価数とnの積は2となる関係を有する。
前記Xは、1価の陰イオンである、過塩素酸イオン(ClO)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、および下記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表されるイオン、ならびに、2価の陰イオンである、硫酸イオン(SO2−)が含まれる。
中でも、生産性の点で、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、および下記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表されるイオンから選択される1種であることが好ましい。
【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】

【0042】
前記一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413は、各々独立に、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。ここで、R211、R212、R311、R312、R411、R412、またはR413で表される脂肪族基、芳香族基は、R111、R112、R121、R122、R131またはR132の説明において記載した脂肪族基および芳香族基とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R211、R212、R311、R312、R411、R412、またはR413で表される複素環基は、前記置換アルキル基、前記置換アルケニル基、前記置換アルキニル基および前記置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の説明で記載したヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0043】
前記一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413は、各々独立に、ハロゲン原子を有する脂肪族基、芳香族基または複素環基であることが好ましく、より好ましくは、フッ素原子を有する脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0044】
前記一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412、およびR413は、好ましくは、各々独立に、ハロゲン原子を有するアルキル基、ハロゲン原子を有するアルケニル基、ハロゲン原子を有するアルキニル基、ハロゲン原子を有するアリール基、またはハロゲン原子を有する複素環基であり、より好ましくは、各々独立に、炭素数1〜20のハロゲン原子を有するアルキル基、炭素数2〜20のハロゲン原子を有するアルケニル基、炭素数2〜20のハロゲン原子を有するアルキニル基、または炭素数6〜20のハロゲン原子を有するアリール基であり、更に好ましくは、各々独立に、炭素数1〜10のハロゲン原子を有するアルキル基、炭素数2〜10のハロゲン原子を有するアルケニル基、または炭素数6〜10のハロゲン原子を有するアリール基であり、特に好ましくは、各々独立に、炭素数1〜8のハロゲン原子を有するアルキル基、または炭素数6〜8のハロゲン原子を有するアリール基であり、最も好ましくは、各々独立に、炭素数1〜4のハロゲン原子を有するアルキル基である。
中でも、C2n+1(n=1〜4)で表されるパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0045】
前記Xは、好ましくは、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、または、一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413が、各々独立に、炭素数2〜6で表されるハロゲン原子を有するアルキル基、ハロゲン原子を有するアルケニル基、ハロゲン原子を有するアルキニル基、ハロゲン原子を有するアリール基、ハロゲン原子を有する複素環基である場合における一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される陰イオンであり、より好ましくは、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンまたは一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413が、各々独立に、C2n+1で表されるパーフルオロアルキル基である場合における一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される陰イオンであり、更に好ましくは、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンまたは、一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413がCFである場合における一般式(II)〜(IV)のいずれかで表される陰イオンであり、特に好ましくは、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンまたは一般式(II)中、R211、R212がCFである場合における一般式(II)で表される陰イオンである。上記のうち、最も好ましくは、ヘキサフルオロアンチモン酸イオンである。
【0046】
本発明における一般式(I)で表される化合物は、耐熱性及び溶解性の点から、R111、R112、R121、R122、R131及びR132が水素原子、アルキル基、又はアリール基であって、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136が水素原子、アルキル基又はアルコキシ基であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413がアルキル基又はアリール基であることが好ましく、R111、R112、R121、R122、R131及びR132が炭素数2〜6のアルキル基であって、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136が水素原子であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413が炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0047】
本発明においては、R111、R112、R121、R122、R131及びR132の全てが炭素数2〜6の分岐アルキル基であって、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136が水素原子であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413が炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であることもまた好ましい。
また、R111、R112、R121、R122、R131及びR132の少なくとも1つが炭素数2〜6のシアノ基を有するアルキル基であって、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136が水素原子であって、R211、R212、R311、R312、R411、R412及びR413が炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であることもまた好ましく、ハロゲン原子がフッ素原子であることがより好ましい。
【0048】
前記一般式(I)で表される化合物は構造とその置かれた環境によって互変異性体を取りうる。本明細書においては代表的な形のひとつを記載するが、本明細書の記載とは異なる構造の互変異性体も本発明に用いられる化合物に含まれる。
【0049】
以下に本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例(I−1)〜(I−62)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
【化19】

【0061】
【化20】

【0062】
【化21】

【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
【化26】

【0068】
【化27】

【0069】
【化28】

【0070】
【化29】

【0071】
上記一般式(I)で表される化合物(一般式(I)におけるXが一般式(II)〜(IV)で表される場合を含む。以下、「化合物(I)」と総称することがある)は、常法により、例えば、デア・ドイチェン・ケミッシェン・ゲゼルシャフト、92巻、245−251ページ(1959年)、または特開2006−143674号公報に記載の方法により、合成することが可能である。
【0072】
ここで、一例として具体例(I−11)の合成例を示す。
DMF40ml中にトリス(4−ジ(n−ブチル)アミノフェニル)アミン5gを完溶させ、60℃にて加熱攪拌した。そこにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド銀塩15gを加え、60℃にて3時間加熱攪拌した。反応液をろ過して不溶解成分を除去した後、反応液に水200mlを加えて析出した結晶をろ過した。得られた結晶を水洗、乾燥して、目的の化合物5を8.6g(91%)得た。
マススペクトルを測定したところ、M=627であった。また、吸収スペクトルを測定したところ、極大吸収波長はλmax=916nm(ジクロロメタン)であった。
【0073】
本発明の樹脂組成物には、近赤外線吸収色素を、化合物(I)単独で用いてもよいし、複数の化合物(I)を併用してもよい。更に、化合物(I)以外の他の近赤外線吸収色素を化合物(I)と併用することもできる。
【0074】
化合物(I)と併用可能な近赤外線吸収色素は、1種またはそれ以上を同時に用いてもよく、例えば、シアニン系化合物、メロシアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、クロコニウム系化合物、オキソノール系化合物、トリアリールメタン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、チオールニッケル錯体系化合物、オキソノール系化合物、あるいは一般式(I)におけるR131とR132が同時に4位に−NR141142(R141142は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す)で表される基を有するフェニル基で表される化合物が挙げられる。
中でも、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、または、一般式(I)におけるR131とR132が、同時に4位に−NR141142(R141142は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す)で表される基を有するフェニル基で表される化合物が好ましく、更に好ましくはフタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物である。
【0075】
本発明の樹脂組成物に用いられる近赤外線吸収色素は、1種の化合物(I)を用いることが最も好ましい。
【0076】
本発明の樹脂組成物において、後述するバインダー樹脂(架橋性官能基を有する単量体と共重合したバインダー樹脂を含む)に対する化合物(I)の質量比は、0.1〜10%であることが好ましい。
【0077】
−バインダー樹脂−
本発明の樹脂組成物は、バインダー樹脂の少なくとも1種を含有する。
前記バインダー樹脂の種類は、特に制限はなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のポリスチレン系化合物;スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のポリビニル系化合物;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のポリ(メタ)アクリル酸アルキル;ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル;ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース、デンプン、ゴム等の天然高分子;6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、これらのハロゲン変性体などが挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。特に、アクリル系、ポリエステル系のバインダーが好ましい。
【0078】
本発明で用いるバインダー樹脂は、ガラス転移温度が50℃であるものが好ましく、0℃以下であるものが好ましい。このようなガラス転移温度を有するバインダー樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
−単量体−
本発明の樹脂組成物には、単量体をさらに含むことができる。前記単量体は、前記バインダー樹脂と共重合体を形成し得る架橋性官能基を有する単量体(架橋性官能基含有単量体)であることが好ましい。架橋性官能基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキルなどが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
また、所望により、上記以外の単量体をさらに用いることができ、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
共重合体中における前記架橋性官能基含有単量体に由来の構造単位の含有量は、その種類により異なるが、通常0.1〜20質量%程度であり、好ましくは1〜10質量%である。
前記共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
また、分子量としては、重量平均分子量で30万〜250万の範囲にあるものが好ましい。この重量平均分子量が30万以上あれば、後述する積層体を形成するときに、被着体との密着性や接着耐久性に優れ、250万以内であれば、本発明の樹脂組成物の、後述する支持体への塗工適性が良い。密着性、接着耐久性及び塗工適性などを考慮すると、この重量平均分子量は、30万〜200万のものが好ましく、特に50万〜180万のものが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
本発明においては、前記共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、所望により、上記高分子量の共重合体と、低分子量、例えば重量平均分子量が10万以下の単独重合体や共重合体を併用することもできる。
【0082】
−架橋剤−
本発明の樹脂組成物には架橋剤を用いることができる。この架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマーなどが挙げられるが、本発明においては、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
ここで、ポリイソシアネート化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
本発明においては、この架橋剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、本発明の樹脂組成物100質量部に対し、通常0.001〜50質量部であり、好ましくは、0.01〜10質量部の範囲で選定される。
【0083】
−各種添加剤−
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、公知の各種添加剤、例えば可塑剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など、さらにはPDPなどの表示装置の発光色を色調補正するための染料や顔料などを添加することができる。
上記各種添加剤のうち、特にシランカップリング剤を、前記樹脂組成物に添加すると、湿熱条件下におけるガラス板に対する粘着性を向上させ、浮きや剥がれが生じにくくなる。このシランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、バインダー樹脂成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。このようなシランカップリング剤としては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、その添加量は、前記樹脂組成物の固形分100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲が好ましく、特に0.005〜5質量部の範囲が好ましい。
【0084】
プラズマディスプレイパネル(PDP)等の電子ディスプレイ機器の生産性向上の点から、本発明の樹脂組成物において、近赤外線吸収色素は、樹脂組成物中に練り込まれた状態で含まれることが好ましい。
【0085】
<積層体>
本発明の積層体は、本発明の樹脂組成物を含む。すなわち、本発明の樹脂組成物は、前記したように、バインダー樹脂と化合物(I)とを含む。
本発明の積層体は、第1の紫外線吸収層、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層および第2の紫外線吸収層を順次積層してなる構造を有することが好ましい。
前記樹脂組成物層は、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの電子ディスプレイ機器の表示面板を構成する積層体の各層間を粘着するための粘着剤層として好ましく適用される。この場合、前記樹脂組成物層は、該粘着剤層のいずれかとして適用してもよく、2種以上の粘着剤層として適用してもよい。
【0086】
近赤外線吸収色素を樹脂組成物中に練りこむことにより樹脂組成物を得、当該樹脂組成物を用いた樹脂組成物層を、前記粘着剤層として適用することにより、従来のPDPパネル用前面板の層構成の1つである近赤外線吸収フィルム又は近赤外線吸収層をなくすことができ、層構成の簡略化が可能となる。
【0087】
近赤外線吸収色素が練りこまれた樹脂組成物を用いて、被着体に粘着剤層として樹脂組成物層を形成する場合、その厚さは、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜150μmである。また、必要に応じ、樹脂組成物層の上に、剥離フィルムを設けることができる。この剥離フィルムとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。この剥離フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0088】
本発明の積層体における樹脂組成物層は、近赤外線吸収色素を樹脂組成物中に練りこむ以外に、近赤外線吸収色素、溶媒、バインダー樹脂等を含有する樹脂組成物の溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明フィルム上に塗布することによっても作製できる。樹脂組成物層の層厚は、近赤外線遮蔽効果を有効に得るために、乾燥時において0.1μm以上が好ましく、成膜時の溶媒が残留しにくく、成膜の操作性が容易であるなどの点から20μm以下がより好ましい。特に好ましくは、0.3〜10μmである。
【0089】
本発明の積層体に用いられる近赤外線吸収色素の濃度・塗布量は、色素の吸収波長・吸収係数、積層体に要求される透過特性・透過率、そして、近赤外線吸収色素を分散させる媒体または塗膜の種類・厚さから決まり、特に限定されるものではないが、透明性を保ちつつ近赤外線吸収能を得る必要性から、近赤外線吸収色素の総塗布量は、0.01g/m〜2g/mが好ましく、0.05〜1g/mがより好ましい。
また、バインダー樹脂と近赤外線吸収色素の質量比は0.01〜15%が好ましく、更に好ましくは0.1〜10%であり、更に好ましくは0.5〜3%、更に好ましくは1〜2.5%である。
【0090】
また、例えば、PDPの使用環境の温度が高いときは、PDPの前面板に用いられている積層体の温度も上がるため、本発明の積層体に用いられる近赤外線吸収色素は、例えば80℃で分解等によって顕著に劣化しない耐熱性を有していることが好適である。同様の理由により、本発明の積層体に用いられる近赤外線吸収色素は、高温高湿度下においても、顕著に劣化しない耐湿熱性を有していることが好ましい。また、耐光性の要求される場合があり、ディスプレイの発光や外光の紫外線・可視光線による劣化が問題になる場合は、本発明の積層体に、紫外線吸収剤を含む部材や紫外線を透過しない部材を用いたり、紫外線吸収剤を近赤外線吸収色素とともに含有させることによって、本発明の積層体に用いられる近赤外線吸収色素の紫外線による劣化を低減すること、紫外線や可視光線による顕著な劣化がない近赤外線吸収色素を用いることが肝要である。
熱、光に加えて、湿度や、これらの複合した環境においても同様である。本発明の積層体に用いられる近赤外線吸収色素が劣化すると、本発明の積層体の透過特性が変わってしまい、色調が変化したり、近赤外線カット能が低下するおそれがある。さらには、媒体または塗膜中に分散させるために、適宜の溶媒への溶解性や分散性も重要である。
【0091】
また、本発明においては異なる吸収波長を有する近赤外線吸収色素2種類以上を一つの媒体または塗膜に含有させても良いし、近赤外線吸収色素を含有する媒体、塗膜を2つ以上有していても良い。
【0092】
−紫外線吸収層−
本発明の積層体には、近赤外線吸収色素の劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を付与することが好ましい。該色素を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。紫外線カット性は、紫外線吸収剤や紫外線を反射または吸収する無機化合物を含有する層(紫外線吸収層)を透明基材上に形成することにより得られる。該紫外線吸収層は近赤外線吸収剤と同一層であっても、また異なる層であってもよいが、好ましくは、異なる層である。近赤外線吸収色素の劣化防止を図る点から、紫外線吸収層、近赤外線吸収剤を含む層および紫外線吸収層を順次積層してなる構造を有することがより好ましい。
【0093】
また、紫外線吸収剤や紫外線を反射または吸収する無機化合物を、ポリマーの水性分散物中に含有させることも好ましい。
【0094】
紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散または溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。
【0095】
なお、紫外線カット性を有する機能性フィルムは、可視光線領域の吸収が少なく、著しく可視光線透過率が低下したり黄色等の色を呈することがないことが好ましい。このようなフィルムとしては、帝人デュポンフィルム(株)製「テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムPET HB」などが挙げられる。
【0096】
本発明の積層体に好ましく利用できる紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャ−No.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンゾオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0097】
−その他の添加剤−
本発明では、該染料の安定性向上のために、酸化防止剤を用いることが好ましい。酸化防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャ−No.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0098】
−支持体−
本発明の積層体には、支持体として、種々の公知の透明なプラスチックフィルムを用いることが可能であるが、透明性、価格、取扱い性などの点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適に用いられる。
フィルムの厚みは、50μm以上、200μm以下が好ましい。
塗布液を塗布するタックフィルムの表面は、あらかじめ紫外線照射処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、ケン化などの表面処理を施しておいてもよい。
【0099】
透明支持体(フィルム)への樹脂組成物層の塗布方法としては、例えばディップコート法、ローラーコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法などを選択できる。これらのコート法は連続加工を行うことができ、バッチ式の蒸着法などに比べて生産性が優れている。また、薄く均一な塗膜を形成できるスピンコート法も採用し得る。
【0100】
本発明の積層体における樹脂組成物層の塗布液は、前記の近赤外線吸収色素及びバインダー樹脂を溶解させる溶剤である必要があり、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0101】
本発明では、必要に応じて樹脂組成物層にさらに別の機能性を付与してもよい。又は該樹脂組成物層とは別に機能性を有する機能層を設けていてもよい。この機能層は、用途ごとに種々の仕様とすることができる。例えば、屈折率や膜厚を調整した反射防止機能を付与した反射防止層や、ノングレアー層またはアンチグレア層(共にぎらつき防止機能を有する)、特定の波長域の可視光を吸収する色調調節機能をもった層、指紋などの汚れを除去しやすい機能を有した防汚層、帯電防止層、傷のつき難いハードコート層、ガラス破損時のガラス飛散防止機能、ガスバリア層を有する層などを設けることができる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるものではない。
【0103】
(実施例1)
[近赤外線吸収性の積層体(近赤外線吸収フィルム)の作製]
アクリル酸ブチルとアクリル酸エチルとアクリル酸2−ヒドロキシエチルを、質量比77:15:8の割合で、常法により重合を行い、アクリル酸エステル系共重合体(バインダー樹脂)を製造した(重量平均分子量:80万)。
次に、このアクリル酸エステル系共重合体100質量部(固形分)に、イソシアナート系架橋剤〔日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL」〕4質量部(固形分)を添加した。さらに、下記表1の試料番号101の近赤外線吸収色素を、樹脂組成物全体の固形分に対し質量比で1.5%となるように加え、これをメチルエチルケトンにて希釈し、樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を、厚さ150μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔帝人デュポンフィルム(株)製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムPET HB〕(第1の紫外線吸収層)の上に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗布、乾燥して、樹脂組成物層を形成した。
【0104】
更に、当該樹脂組成物層の、PETフィルムが設けられている面とは反対の面に、厚さ100μmのPETフィルム〔帝人デュポンフィルム(株)製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムPET HB〕(第2の紫外線吸収層)を載せて圧着し、試料番号101の近赤外線吸収性の積層体(近赤外線吸収フィルム)を作製した。
【0105】
また、上記試料番号101の積層体の作製工程において、試料番号101の近赤外線吸収色素を、下記表1の試料番号102〜122の近赤外線吸収色素に代えたほかは、試料番号101の積層体と同様にして、試料番号102〜121の積層体(近赤外線吸収フィルム)を作製した。
なお、下記表1の試料番号101〜121における近赤外線吸収色素I−1等は、前記化合物(I)の具体例(I−1)〜(I−62)に対応し、試料番号122、123における比較化合物−1および比較化合物−2は、各々、下記構造式で表される化合物である。
【0106】
【化30】

【0107】
(実施例2)
[近赤外線吸収フィルムの作製]
メチルメタクリレートポリマー10gと下記表2の試料番号201に示す近赤外線吸収色素0.12gとにメチルエチルケトン100mlを加えて、40℃にて15分間攪拌して溶解して得た樹脂組成物を、厚さ100μmのPETフィルム〔帝人デュポンフィルム(株)製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムPET HB〕(第1の紫外線吸収層)に乾燥後の樹脂組成物層の層厚が20μmになるように塗布、乾燥した。この樹脂組成物層に粘着性樹脂(粘着剤;東亞合成(株)製、S−1601)を、厚さが25μmmになるように塗布、乾燥した。
更に、当該粘着剤層の、PETフィルムが設けられている面とは反対の面に、厚さ100μmのPETフィルム〔帝人デュポンフィルム(株)製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムPET HB〕(第2の紫外線吸収層)を圧着して、試料番号201の近赤外線吸収性の積層体(近赤外線吸収フィルム)を作製した。
【0108】
前記試料番号201の積層体の作製工程において、試料番号201の近赤外線吸収色素を、下記表2の試料番号202〜223に示す近赤外線吸収色素に代えたほかは、試料番号201の積層体と同様にして試料番号202〜223の積層体(近赤外線吸収フィルム)を作製した。
なお、下記表2の試料番号201〜221における近赤外線吸収色素I−1等は、前記化合物(I)の具体例(I−1)〜(I−62)に対応し、試料番号222および223における比較化合物−1および比較化合物−2は、表1における比較化合物と同じである。
【0109】
[評価]
−耐光性−
実施例1および実施例2で得られた積層体をキセノンランプにて9.5万ルクスで3日間照射し、照射前に対する化合物(I)の分光吸収極大波長の濃度を測定することにより残存比を求め、耐光性とした。
【0110】
−熱堅牢性−
80℃の条件下にて、実施例1の積層体については200時間、実施例2の積層体については500時間放置し、放置前に対する化合物(I)の分光吸収極大波長の濃度を測定することにより残存比を求め、熱堅牢性とした。
【0111】
−湿熱堅牢性−
60℃−相対湿度(RH)90%の条件下にて、実施例1の積層体については200時間、実施例2の積層体については500時間放置し、放置前に対する化合物(I)の分光吸収極大波長の濃度を測定することにより残存比を求め、湿熱堅牢性とした。
【0112】
上記耐光性、熱堅牢性、湿熱堅牢性の評価結果を、実施例1については表1に、実施例2については表2に、それぞれ示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表1および表2のとおり、本発明の一般式(I)で表される化合物は、耐光性、熱堅牢性、湿熱堅牢性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、下記一般式(I)で表される化合物群から選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(I)中、R111、R112、R121、R122、R131およびR132は、各々独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、R113とR114、R114とR111、R111とR112、R112とR115、R115とR116、R116とR123、R123とR124、R124とR121、R121とR122、R122とR125、R125とR126、R126とR133、R133とR134、R134とR131、R131とR132、R132とR135、R135とR136およびR136とR113は互いに連結して環を形成してもよい。Xは1価または2価の陰イオンを表し、nは1または2を表し、Xの価数とnの積は2となる。但し、R131とR132が同時に、4位に−NR141142で表される基を有するフェニル基となることは無い。ここでR141およびR142は、各々独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表す。〕
【請求項2】
850〜1000nmの波長光の透過率が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記バインダー樹脂のガラス転移温度が50℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂のガラス転移温度が0℃以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記バインダー樹脂に対する前記一般式(I)で表される化合物の質量比が0.1〜10%であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(I)中、R111、R112、R121、R122、R131およびR132のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(I)中、R113、R114、R115、R116、R123、R124、R125、R126、R133、R134、R135およびR136のうち少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記一般式(I)中、Xが、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、および下記一般式(II)〜(IV)のいずれかで表されるイオンから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化2】

【化3】

【化4】

〔前記一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413は、各々独立に、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。〕
【請求項9】
前記一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413が、各々独立に、ハロゲン原子を有する脂肪族基、ハロゲン原子を有する芳香族基またはハロゲン原子を有する複素環基であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記一般式(II)〜(IV)中、R211、R212、R311、R312、R411、R412およびR413が、各々独立に、フッ素原子を有する脂肪族基、フッ素原子を有する芳香族基またはフッ素原子を有する複素環基であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む積層体。
【請求項12】
第1の紫外線吸収層、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層、および第2の紫外線吸収層を順次積層してなる構造を有することを特徴とする請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
プラズマディスプレイに装着される表示面板に使用されることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
プラズマディスプレイに装着される表示面板に使用されることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の積層体。

【公開番号】特開2008−260899(P2008−260899A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106373(P2007−106373)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】