説明

樹脂組成物およびそれを用いた積層体

【課題】熱硬化工程を必要とせず、活性エネルギー線照射のみで、従来の熱硬化衝撃吸収性プライマーと同等の耐衝撃性を有し、さらには、樹脂組成物及びその硬化物の屈折率が高く、光学用基材との密着性に優れる高屈折率の光学部材用衝撃吸収性樹脂組成物の提供。
【解決手段】
固形分の全量を基準として、フルオレン骨格を有する化合物(A)が1〜80重量%、フルオレン骨格を有さないアクリレート(B)が1〜80重量%、光重合開始剤(C)が1〜20重量%で含有されることを特徴とする光学部材用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材用樹脂組成物に関し、さらに詳細には、光学用基材に対する密着が良く、硬化物の屈折率が1.55以上の耐衝撃性に優れた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材、例えば、メガネ用プラスチックレンズは、無機ガラスのレンズと比較して、軽量で加工が容易であるというメリットがある一方、表面が軟らかく傷つきやすいという欠点がある。この欠点を解決するために、従来から、プラスチックレンズの表面をハードコートで被覆し、傷付を防止するという方法が用いられてきた。また、光の反射を抑えるために、さらにハードコートの表面に反射防止膜を形成することが一般的に行われている。しかしながら、プラスチックレンズ表面にハードコートや反射防止膜を形成することにより、メガネレンズの耐衝撃性低下が引き起こされ、メガネレンズが衝撃により破損するといった問題があった。この問題を解決するために、レンズ表面とハードコートの間に、衝撃を吸収するためのプライマー層を設け、レンズを衝撃から守る手法が用いられてきた。
【0003】
メガネレンズ用の耐衝撃性プライマーとして、アクリルポリオールと有機イソシアネートを熱硬化して得られる耐衝撃性プライマー(特許文献1)やアクリルポリオールと多官能性イソシアネート化合物との共重合体からなる水性化−ウレタン樹脂を主成分とする水性耐衝撃性プライマー(特許文献2)が用いられてきた。これらの耐衝撃性プライマーは、加熱することにより硬化膜を形成させる必要があった。また、得られたプライマーは、屈折率が低く、金属ゾルの添加により高屈折化を図る必要があった。
【特許文献1】特開昭61−114203号公報
【特許文献2】特開2002−552022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは、熱硬化工程を必要とせず、活性エネルギー線照射のみで、メガネレンズ基材などの光学用基材への密着に優れ、さらに屈折率1.55以上の屈折率を有し、耐衝撃性に優れたプライマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、、本発明に至った。
【0006】
本発明は、フルオレン骨格を有する化合物(A)とフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)と光重合開始剤(C)とを含有してなる光学部材用樹脂組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、固形分の全量を基準として、フルオレン骨格を有する化合物(A)が1〜80重量%、フルオレン骨格を有さないアクリレート(B)が1〜80重量%、光重合開始剤(C)が1〜20重量%で含有されることを特徴とする上記光学部材用樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、フルオレン骨格を有する化合物(A)が、下記式(1)で示される化合物であることを特徴とする上記光学部材用衝撃吸収性樹脂組成物に関する。
式(1)
【化1】

【0009】
(式中、R1〜R6は、それぞれ独立に非反応性基または反応性基を示す。ただし、R1〜R4のいずれかは反応性基であるものとする。k1およびk2はそれぞれ独立に1〜5の整数を示し、k3およびk4はそれぞれ独立に0または1〜5の整数を示し、m1およびm2はそれぞれ独立に0または1〜4の整数を示す。)
また、本発明は、反応性基が、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基およびグリシジル基から選ばれる置換基を少なくとも1つ有する基である上記光学部材用衝撃吸収性樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、反応性基が、(メタ)アクリロイル基を有することを特徴とする上記光学部材用衝撃吸収性樹脂組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、樹脂組成物の硬化物の屈折率が1.55以上であることを特徴とする上記光学部材用衝撃吸収性樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、光学用基材上に上記樹脂組成物からなる層を形成してなる積層体に関する。
【0013】
また、本発明は、光学用基材上に上記樹脂組成物からなる層を形成した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする積層体の製造方法に関する。

【発明の効果】
【0014】
本発明の光学部材用樹脂組成物は、光学用基材との密着性、高屈折率化、および耐衝撃性について優れた効果を発揮する。また、他の効果として、活性エネルギー線硬化性樹脂であるので光学部材の被覆工程時間を短縮し、作業性や経済性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の光学部材は、レンズ、偏光板、プリズム、フィルター、ミラーなど光が透過または反射するための部材をいう。
【0016】
以下、メガネレンズを代表例として説明するが、その他のレンズ、あるいは、レンズ以外の光学部材へも同様に適用できることは自明である。
【0017】
本発明のメガネレンズ用樹脂組成物は、メガネレンズの一部または全面に被覆することで、メガネレンズに耐衝撃性を与える樹脂組成物である。
【0018】
耐衝撃性とは、メガネレンズ成形体の衝撃によるレンズの破損を防止する性質をいう。本発明の樹脂組成物をメガネレンズに塗布することにより、ハードコートや無機蒸着膜からなる反射防止層を施しても耐衝撃性に優れるメガネレンズを得ることができる。
【0019】
さらに、該樹脂組成物は、屈折率が高いため、屈折率1.60以上のメガネレンズに使用しても干渉縞が生じにくく、高屈折率メガネレンズ成形品への密着性にも優れている。
【0020】
メガネレンズには、矯正用レンズやサングラス用レンズがある。矯正用レンズとしては、ガラスレンズ、超高屈折率プラスチックレンズ、高屈折率プラスチックレンズおよび低屈折率プラスチックレンズなどがある。本発明においては、超高屈折率プラスチックレンズおよび高屈折率プラスチックレンズが好ましい。
本発明の光学部材用衝撃吸収性樹脂組成物は、フルオレン骨格を有する化合物(A)とフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)と光重合開始剤(C)とを含有してなることを特徴とする。
【0021】
<フルオレン骨格を有する化合物(A)について>
本発明を構成するフルオレン骨格を有する化合物は、下記式(1)で示される。
式(1)
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R1〜R6は、それぞれ独立に非反応性基または反応性基を示す。ただし、R1〜R4のいずれかは反応性基であるものとする。k1およびk2はそれぞれ独立に1〜5の整数を示し、k3およびk4はそれぞれ独立に0または1〜5の整数を示し、m1およびm2はそれぞれ独立に0または1〜4の整数を示す。)
フルオレン骨格を有する化合物の具体例としては、フルオレン、フルオレノン、2−アセトアミドフルオレン、2−アセチルフルオレン、2−アミノフルオレン、9−ブロモフルオレン、9−ブロモ−9−フェニルフルオレン、2,7−ジアミノフルオレン、2,7−ジ(アセトアミド)フルオレン、2,7−ジアセチルフルオレン、9,9−ビス[4−
(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒ
ドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどがある。
【0024】
式(1)の非反応性基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などの炭素数5〜10のシクロアルキル基、好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基、さらに好ましくは炭素数5〜6のシクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)などの炭素数6〜10のアリール基、好ましくは炭素数6〜8のアリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などの炭素数6〜10のアリール−アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基など);アシル基(アセチル基などの炭素数1〜6のアシル基);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などの炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基);N,N−二置換アミノ基[例えば、炭化水素基で置換されたアミノ基(ジメチルアミノ基などのN,N−ジアルキルアミノ基(炭素数1〜6)など)];ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基などが挙げられる。
【0025】
式(1)の反応性基としては、例えば、活性水素を含有する基(活性水素含有基)、活性水素を含有しない基、これら双方を有する基などが挙げられる。活性水素含有基としては、例えば、水酸基、アミノ基、N−モノ置換アミノ基(例えば、炭化水素基で置換されたアミノ基[メチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(炭素数1〜6)など])、カルボキシル基などが挙げられ、水酸基、アミノ基、又はN−モノ置換アミノ基が好ましい。特に、水酸基またはアミノ基が好ましい。
【0026】
活性水素を含有しない基としては、グリシジル基、オキセタン基、無水物基、(メタ)アクリロイル基などがある。これらの基を少なくとも1つ有する基としては、例えば、前記活性水素含有基(特に、水酸基、アミノ基)の活性水素を通じて得られる基が挙げられる。このような基としては、特に限定されないが、例えば、−[X−(R13−O)n−Y](式中、R13は、アルキレン基であり、基Xは、酸素原子(エーテル基)又はイミノ基であり、Yは水素原子、グリシジル基又は(メタ)アクリロイル基であり、nは0又は1以上の整数を示す。ただし、nが0であるとき、Yは水素原子でない)などが挙げられる。
【0027】
アルキレンオキシ単位の置換数(又は付加数)nは、同一又は異なって、0又は1〜15程度の範囲から選択でき、例えば、0又は1〜12、好ましくは0又は1〜8、さらに好ましくは0又は1〜6、特に0又は1〜4程度であってもよい。なお、nが2以上の場合、ポリアルコキシ基(ポリアルキレンオキシ基)は、同一のアルキレン基で構成されていてもよく、異種のアルキレン基(例えば、エチレン基とプロピレン基)が混在して構成されていてもよいが、通常、同一のアルキレン基で構成されている場合が多い。
【0028】
式(1)で示されるフルオレン骨格を有する化合物において、R1〜R4のいずれかが反応性基であることが好ましい。特に、R1およびR3のいずれか一方と、R2およびR4のいずれか一方とが、反応性基であることが多い。また式(1)のR1〜R4のいずれかが、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基およびグリシジル基を有することが好ましい。中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0029】
式(1)で示される具体的なフルオレン化合物には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はその誘導体、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類又はその誘導体などが含まれる。
【0030】
式(1)の9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類には、多価フェノールのフルオレン、例えば、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン類[特に、9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン類[特に、9,9−ビス(トリヒドロキシフェニル)フルオレン]などが例示できる。
【0031】
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類の誘導体としては、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類又はそのアルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートなどがある。
【0032】
9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類又はその誘導体9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応する化合物、すなわち、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類のヒドロキシル基が、アミノ基又はN−置換アミノ基である化合物などである。
【0033】
また、9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類の誘導体としては、上記9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン類のアルキレンオキシド付加体、このアルキレンオキシド付加体のグリシジルエーテルおよび前記アルキレンオキシド付加体の(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0034】
これらのフルオレン骨格を有する化合物は、アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ、エポキシアクリレートまたはビニルエーテルなどの骨格を有して、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂として用いられる。
【0035】
なお、式(1)で示すフルオレン骨格を有する化合物については、特開平6−145087号公報、特開平8−217713号公報、特開平2005−162785号公報に詳しい。
【0036】
また、フルオレン骨格を有する化合物には、下記式(2)で表される化合物などがある。
式(2)
【化3】

【0037】
(式中、R7〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜6の置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していても芳香族基を示す。R11およびR12は、それぞれ独立に反応性基または非反応性基とする。ただし、R11およびR12のいずれかは反応性基であるものとする。)
式(2)中のnは、1以上の整数を示す。特にnは、1〜10の整数が好ましく、1〜3の整数が好ましい。nが1〜3のとき式(2)で表されるフルオレン骨格を有する化合物はモノマーまたはオリゴマーとなる。
【0038】
R7〜R10は、それぞれ独立に炭素数1〜6の置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよい芳香族基を示す。
【0039】
R11およびR12は、それぞれ独立に反応性基または非反応性基を示す。ただし、R11およびR12のいずれかは反応性基であるものとする。
【0040】
式(2)中の反応性基および非反応性基は、前記の式(1)における反応性基および比反応性基と同様である。R11およびR12の双方または一方が、アクリロイル基を有することが好ましい。
【0041】
フルオレン骨格は芳香族環を中心に構成されるため屈折率が高く、比較的少量の使用でも、屈折率1.55以上の屈折率を与えることができる。特にカルド構造は芳香族環を多数有する為に高い屈折率を比較的容易に得ることが出来る。
【0042】
また、カルド構造は立体障害のために、フルオレン骨格部分と主鎖方向がねじれ位置関係となり、中心の炭素原子部の結合角の自由度が高いため、急激な反応による体積収縮から生じる内部歪みを緩和する効果あると考えられている。
【0043】
本発明では、これらのカルド構造に更に極性の高い水酸基、カルボキシル基やアミノ基などを導入し基材との接着性を向上させている。また、アクリロイル基を導入し紫外線もしくは電子線による反応性を付与する事も有益である。
【0044】
<フルオレン骨格を有さないアクリレート(B)について>
本発明に用いるフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)は、衝撃吸収性、基材密着性を付与し、屈折率や粘度をコントロールする。
【0045】
衝撃吸収性を与えるフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)としては、例えば、ゴム変性アクリレートや柔軟性ウレタンアクリレート等が挙げられる。ゴム変性アクリレートとしては、常温付近でゴム状弾性を有するものであればよく、例えば、変性ジエン系ゴム(ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、カルボキシル化ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、カルボキシル化ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、水素化ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、水素化イソブチレン−イソプレン共重合体等)、変性アクリルゴム等の各種合成ゴム、変性ポリウレタン及び変性ポリチオウレタン等が挙げられる。
変性ジエン系ゴムでは主鎖の両末端、あるいは主鎖途中に官能基変性されたもの、特にアクリレート変性されたものが望ましい。
【0046】
変性アクリルゴムとしては、アクリルゴム中にアクリレート基がペンダントされたものが望ましい。
【0047】
変性ポリウレタンは、ジオール及び/またはジチオールとジイソシアネートを反応させ、更に変性することで得られる。ジオールはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコールや、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、さらにポリ(エチレンアジベート)、ポリ(ジエチレンアジベート)、ポリ(テトラメチレンアジベート)、ポリ(ヘキサメチレンアジベート)、ポリ(ネオペンチレンアジベート)などのポリ(アルキレンアジベート)や、ポリ−ε−カプロラクタン、ポリ(1,4−ブタジエン)、ポリ(1,2−ブタジエン)などのポリブタジエン、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)などのポリ(アルキレンカーボネート)、またシリコンポリオール等が挙げられる。
【0048】
ジチオールとしては上記ジオールの水酸基をチオール基に置き換えたものが挙げられる。
またジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルイソシアネートなどの芳香族系や、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系のものが例として挙げられるが、その他公知のジイソシアネートが使用可能である。
【0049】
これらのジオール及び/ジチオールとジイソシアネートを反応させてポリウレタン及び/またはポリチオウレタンを合成した後、両末端官能基をアクリレート変性したものが望ましい。
【0050】
これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
さらに、屈折率や粘度をコントロールするフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)としては、アルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレート、カルボキシル基と不飽和二重結合とを有する化合物、水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物、窒素含有(メタ)アクリル系化合物などがある。更にエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のアクリル系オリゴマーが使用出来る。
【0052】
このような(メタ)アクリレート化合物として、例えば、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノ又はジアクリレート類、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シ゛ペンタエリスリトール、トリス―ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多アルコールまたはこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多官能アクリレート類、フェノキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート類およびそれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物のアクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテルなどのエポキシアクリレート類などが挙げられる。
【0053】
特にレンズ基材との密着性や上層のハードコートとの密着性を付与するためには、親水性のアクリレートとして、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、アクリオロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等を用いるとよい。
【0054】
これらフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
<光重合開始剤(C)について>
次に、本発明を構成する光重合開始剤について説明する。本発明の樹脂組成物からなる層を活性エネルギー線により硬化させる場合は、光重合開始剤を加える。
【0056】
光重合開始剤としては、光励起によってビニル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルフォスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが使用できる。
【0057】
具体的にはモノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル−フェニルメタノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−(1,3−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシエチル)メタアンモニウム蓚酸塩、2−/4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9Hチオキサントン−2−イロキシ−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミン塩酸塩、ベンゾイルメチレン−3−メチルナフト(1,2−d)チアゾリンなどが挙げられる。
【0058】
ジカルボニル化合物としては、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2,1,1]ヘプタン−2,3−ジオン、ベンザイル、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート、4−フェニルベンザイルなどが挙げられる。
【0059】
アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−スチリルプロパン−1−オン重合物、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1−フェニル−1,2プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノ−プロパノニル)−9−ブチルカルバゾールなどが挙げられる。
【0060】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、などが挙げられる。
【0061】
アシルフォスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0062】
アミノカルボニル化合物としては、メチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート2−nブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4’−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5’−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノンなどが挙げられる。
【0063】
本発明を構成する光重合開始剤は上記化合物に限定されず、活性エネルギー線により重合を開始させる能力があればどのようなものでも構わない。これらは単独または併用して用いることができる。
【0064】
光重合開始剤の使用量は特に制限されないが、被硬化物の固形分の全量を基準として1〜20重量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0065】
また、増感剤として公知の有機アミンなどを加えることもできる。
【0066】
また、必要に応じて溶剤染料、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、フィラーなど様々な添加剤を添加することができる。
【0067】
なお、本発明の樹脂組成物は必要に応じて溶剤を加えても良い。使用される溶剤としては、様々な公知の有機溶剤を用いることができる。例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、メトキシブタノール、ブチルセロソルブ等のエーテル系、エタノール、イソプロピルアルコール、nブチルアルコール等のアルコール系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル系等である。これらは単独または併用で含めることが出来る。
【0068】
そして溶剤を添加した際には、硬化処理の前にオーブン等にて溶剤を揮発させる事が好ましい。
【0069】
フルオレン骨格を有する化合物(A)とフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)と光開始剤(C)の比率は、要求性能によって好適な比率が決定される。一般にフルオレン骨格を有する化合物(A)は、芳香環を多く含むので、比較的屈折率が高い。また、フルオレン構造は非常に剛直であるため、硬化皮膜の収縮を緩和する効果に優れる。しかしながら、過剰量の使用は、硬化塗膜を脆くし、皮膜の柔軟性を低下させる。そのため、フルオレン骨格を有さないアクリレート(B)により、皮膜に柔軟性を付与し耐衝撃性を向上させる。更には、溶液粘度調整、耐溶剤性、耐水性等の向上、基材やハードコートとの密着性の付与をはかる。
【0070】
したがって、本発明の光学部材用樹脂組成物には、固形分の全量を基準として、フルオレン骨格を有する化合物(A)が1〜80重量%、フルオレン骨格を有さないアクリレート(B)が1〜80重量%、光開始剤(D)が1〜20重量%で含有されることを特徴とする。
【0071】
光開始剤の使用する最適量は、組み合わせる組成、紫外線照射量、膜厚によって変動するが、被硬化物の固形分に対して1〜20重量%の範囲内で使用することが好ましい。1重量%未満では硬化反応が進まず、また、20重量%を超えると残留未反応物が可塑剤となるため、いずれの場合も皮膜の性能が低下する可能性が有る。
【0072】
本発明の積層体は、光学用基材上に本発明の樹脂組成物からなる層を形成してなる。
【0073】
光学用基材としては、光が透過する用途であれば、ガラス、ポリカーボネイト、アクリル樹脂、PETなどのポリエステル、チオウレタン、ポリアセテートフィルムなど、公知の材料が使用できる。また、反射するための用途であれば、その他の公知の材料も使用できる。これらは物理的、化学的な処理がされていてもよい。特にポリカーボネートのような熱可塑性樹脂が経済性や成形性の点で好ましい。また、屈折率が1.60を超える高屈折率光学部材には熱可塑性樹脂で対応することが困難な為、熱硬化型が好適に使用される。
【0074】
光学用基材の成形方法については公知の方法を用いてよい。例えば、上記の熱可塑性樹脂を熱成形し、研削することで任意の形状のメガネレンズ成形品を得ることができる。
【0075】
或いは液状原料を型の中に注入し熱硬化する注型法が選択される。注型法は熱硬化による架橋反応の結果、物理的・化学的強度に優れた光学用基材のを得ることが出来る。又、長時間かけて反応、冷却させるため生産性は劣るものの、重合歪みが少なく、光学歪みの少ない光学用基材のが得られる利点もある。
【0076】
光学用基材のに対する本発明の樹脂組成物からなる層の形成方法について説明する。形成方法としては、被覆・塗布などがある。被覆・塗布方法としては公知のコーティング作業で用いられる方法を使用できる。例えば、浸漬塗装法、流し塗り法、スピンコート法などがある。
【0077】
上記いずれの方法でコートした場合でも望ましい樹脂組成物からなる層の膜厚にコントロールする必要がある。衝撃吸収性の層として好ましい膜厚は1〜10μmである。膜厚をコントロールする方法としては、例えばスピンコート法の場合、スピンコートの回転速度と回転時間、ハードコート性樹脂組成物の粘度、或いは希釈溶剤の種類と固形分%、更に温度などを考慮して決定しなくてはならない。
【0078】
樹脂組成物が溶剤を含む場合には、被覆後に温風乾燥を行う。温風温度はコートされる光学用基材の熱変形を防止するために光学用基材温度が温風によってガラス転移点を超えない事が重要であり120℃以下が好ましい。従って温度による乾燥よりは風量による乾燥を優先させる事が好ましい。
【0079】
乾燥後、衝撃吸収性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し硬化させる。
【0080】
活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、α線、X線などがある。紫外線が好ましく用いられる。
【0081】
活性エネルギー線による硬化は熱硬化と比較して、短時間でしかも低温で硬化する等の優位点があり、特に高温に弱いプラスチック光学用基材等には好適である。
【0082】
照射する紫外線の光量は紫外線積算光量計にて測定され、樹脂組成物によって異なるが、好ましい光量は50〜1000mJ/cm2である。照射エネルギーが過剰になると塗膜やレンズの黄変を招く事がある。一方、照射エネルギーの不足は十分な性能を得ることが出来ない。
【0083】
樹脂組成物からなる層と光学用基材との屈折率に差が有ると、光の干渉縞が発生して光学部材の外観を損ない商品価値が低下する為、衝撃吸収性樹脂組成物の屈折率は光学部材に近いほど好ましい。
【0084】
なお、本発明の積層体は、は諸物性付与の為にさらに、公知の各種機能性膜が施されてもよい。また、光学用基材を被覆する範囲については用途に応じて決定でき、一部あるいは全面を被覆してもよい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例中、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
合成例1
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに9、9−Bis(3,4−dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride(JFEケミカル株式会社製、商品名 BPAF)100.0g、アクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル(日本触媒株式会社製)50.7g、ヒドロキノン0.08g(和光純薬工業株式会社製)、シクロヘキサノン100.4gを仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(東京化成工業株式会社製)1.51gを加え、85℃で5時間撹拌し、スチレンオキサイド(ダイセル化学株式会社製、商品名 STO)52.4g、シクロヘキサノン33.4gを加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン(和光純薬株式会社製)1.21gを加え、85℃で6時間撹拌し、室温まで冷却して反応を終了した。この反応溶液は淡黄色透明で固形分60%、数平均分子量(MN)690、重量平均分子量(MW)1,100であった。
合成例2
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに9、9−Bis(3,4−dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride(JFEケミカル株式会社製、商品名 BPAF)100.0g、アクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル(日本触媒株式会社製)50.7g、ヒドロキノン0.08g(和光純薬工業株式会社製)、シクロヘキサノン100.4gを仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(東京化成工業株式会社製)1.51gを加え、85℃で5時間撹拌し、Phenyl Glycidyl Ether(ナガセケムテックス株式会社製、商品名 EX−141)65.5g、シクロヘキサノン42.1gを加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン(和光純薬株式会社製)1.21gを加え、85℃で6時間撹拌し、室温まで冷却して反応を終了した。この反応溶液は淡黄色透明で固形分60%、数平均分子量(MN)750、重量平均分子量(MW)1,000であった。
合成例3
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに9、9−Bis(3,4−dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride(JFEケミカル株式会社製、商品名 BPAF)100.0g、アクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル(日本触媒株式会社製)50.7g、ヒドロキノン0.08g(和光純薬工業株式会社製)、シクロヘキサノン100.4gを仕込み85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(東京化成工業株式会社製)1.51gを加え、85℃で5時間撹拌し、o-フェニルフェノールグリシジルエーテル(三光株式会社製 商品名 OPP-G)129.5g、シクロヘキサノン84.8g
を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン(和光純薬株式会社製)1.21gを加え、85℃で6時間撹拌し、室温まで冷却して反応を終了した。この反応溶液は淡黄色透明で固形分60%、数平均分子量(MN)960、重量平均分子量(MW)1,200であった。
【0086】
得られた合成物の屈折率、鉛筆硬度を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表2の組成に従って、実施例1〜3および比較例1〜2の樹脂組成物を作製し、以下の方法でコーティングし、屈折率測定、成形品への密着性、耐衝撃性を評価した。
【0089】
【表2】

【0090】
硬化皮膜の作成方法について次に説明する。
「コーティング方法」
(スピンコート条件)
試験用プライマー液1.5ccを厚さ2.0mmのアクリル板の中心部付近に滴下し、直ぐに2000rpmで20秒間回転させ、均一にコートした。
(乾燥条件)
次にコート済み板を80℃で1分間オーブンに入れ乾燥させた。
(紫外線硬化条件)
次に乾燥済み板に紫外線を照射しプライマーを硬化させた。
【0091】
紫外線照射条件は高圧水銀ランプを用いて、積算光量は270mJ/cm2とした。尚、積算光量は光量計UV―350(オーク製作所製)を用いて測定した。
次に、硬化皮膜の物性試験について説明する。
「物性試験」
密着性と耐衝撃性は上記のプライマー塗布済みアクリル板を用いて物性試験を行った。
(密着性)
塗布面にカッターにて1mm間隔で10×10の碁盤目状にカットを入れ、その部分をセロハンテープにて剥離を行った。
評価は、剥離部分の数/100で表示した。
(耐衝撃性)
上記のプライマー塗布済みアクリル板(厚み2.0mm)を直径3cm×高さ3cmの円筒の上に平置きし、アクリル板より高さ127cmの位置から、剛球を落下させた。耐衝撃性はアクリル板にひびもしくは、割れが生じたときの剛球の重さを表示した。
(屈折率測定)
PETフィルム上にプライマーとして膜厚5〜7μmになるようにバーコーターにてコートし、前記乾燥、硬化条件にてサンプルを作成する。屈折率は25℃、湿度40%の環境にてアッベの屈折率計で測定した。
【0092】
実施例1〜3および比較例1〜2の物性試験の結果を表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
表3の結果より、フルオレン骨格を有する化合物(A)とフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)と光重合開始剤(C)を組み合わせることにより、屈折率1.55以上で耐衝撃性に優れる樹脂組成物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の光学部材用衝撃吸収性樹脂組成物およびその積層体は、メガネレンズに限らず、幅広く光学部材への外部または内部に起因する衝撃から部材の破損を防ぐために用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオレン骨格を有する化合物(A)とフルオレン骨格を有さないアクリレート(B)と光重合開始剤(C)とを含有してなる光学部材用樹脂組成物。
【請求項2】
固形分の全量を基準として、フルオレン骨格を有する化合物(A)が1〜80重量%、フルオレン骨格を有さないアクリレート(B)が1〜80重量%、光重合開始剤(C)が1〜20重量%で含有されることを特徴とする請求項1記載の光学部材用樹脂組成物。
【請求項3】
フルオレン骨格を有する化合物(A)が、下記式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の光学部材用樹脂組成物。
式(1)
【化1】

(式中、R1〜R6は、それぞれ独立に非反応性基または反応性基を示す。ただし、R1〜R4のいずれかは反応性基であるものとする。k1およびk2はそれぞれ独立に1〜5の整数を示し、k3およびk4はそれぞれ独立に0または1〜5の整数を示し、m1およびm2はそれぞれ独立に0または1〜4の整数を示す。)
【請求項4】
反応性基が、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基およびグリシジル基から選ばれる置換基を少なくとも1つ有する基である請求項3記載の光学部材用樹脂組成物。
【請求項5】
反応性基が、(メタ)アクリロイル基を有することを特徴とする請求項4記載の光学部材用樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物の硬化物の屈折率が1.55以上であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のメガネレンズ用樹脂組成物。
【請求項7】
光学用基材上に請求項1〜6いずれか記載の樹脂組成物からなる層を形成してなる積層体。
【請求項8】
光学用基材上に請求項1〜6いずれか記載の樹脂組成物からなる層を形成した後、活性エネルギー線照射することを特徴とする積層体の製造方法。

【公開番号】特開2008−81572(P2008−81572A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261888(P2006−261888)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】