説明

樹脂組成物と接着剤

【課題】釣り竿のロッド、リールの固定用途に最適な、表面硬化性が良好で、接着強さが高い常温下紫外線で硬化する樹脂組成物、接着剤を提供する。
【解決手段】(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオール、(4)光重合開始剤、(5)還元剤、(6)多官能重合性ビニルモノマー、(7)酸化剤、を含有することを特徴とする樹脂組成物であり、好ましくは、(2)ポリエンと(3)ポリチオールとを予め反応させた後、配合して成ることを特徴とする前記の樹脂組成物と、それからなる接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線及び常温硬化して樹脂を提供する組成物(以下、単に「樹脂組成物」という。)と接着剤に関する。さらに詳しくは、釣り竿のロッド、リールの固定用途に最適な紫外線下常温で硬化する2材型の樹脂組成物と接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、釣り竿のロッド、リールの固定用硬化性樹脂組成物としてエポキシ系固定剤、紫外線硬化型固定剤等が使用されている。しかしながら、(1)エポキシ系固定剤は、2液を混合して使用するが、混合後10分位から粘度が上昇し、その上硬化時間が長く、作業性が悪いという欠点がある。また、(2)紫外線硬化型固定剤の中でポリエン、ポリチオール系樹脂に関しては、接着強さが不足してしまうことがあり、より高い接着強さが必要とされているし、紫外線の照射できない部位は硬化しないという欠点がある。また、(3)アクリル系硬化性樹脂組成物は、嫌気性のために、空気中での硬化、表面の硬化に配慮が必要である等、改善が要望されていました(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−236809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、従来技術の事情に鑑み、表面硬化性が良好で、接着強さが高い、紫外線下常温で硬化する樹脂組成物、特に釣り竿のロッド、リールの固定用途に最適な樹脂組成物、接着剤を提供することを目的に検討し、本発明に至ったものである。
【0005】
つまり、本発明は、従来技術の前記課題を解決するためになされたものであり、より詳細には、釣り竿のロッド、リール固定用に好適な程に作業時間を十分に取ることができ、被着体に対して高い接着力を有し、しかも、従来の紫外線硬化性樹脂組成物と異なって酸素の影響を受けにくく、紫外線の照射により数秒から数分の短時間で硬化して表面硬化性が良いという特徴を有する樹脂組成物であり、接着剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオール、(4)光重合開始剤、(5)還元剤、(1)ウレタンオリゴマー、(6)多官能重合性ビニルモノマー、(4)光重合開始剤、(7)酸化剤を含有する樹脂組成物であり、好ましくは、(2)ポリエンと(3)ポリチオールとを予め反応させた後、配合して成ることを特徴とする前記の樹脂組成物である。
【0007】
本発明は、前記の樹脂組成物からなることを特徴とする接着剤であり、より好ましい実施態様として、(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオール、(4)光重合開始剤、(5)還元剤を含有する第一の樹脂組成物と、(1)ウレタンオリゴマー、(6)多官能重合性ビニルモノマー、(4)光重合開始剤、(7)酸化剤を含有する第二の樹脂組成物とからなる2材型であることを特徴とする前記の接着剤である。加えて、本発明は、釣り竿のロッド、リールの固定用に用いられることを特徴とする前記の接着剤である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、酸素の影響を受けること無く硬化し、従って、表面硬化性が良く、また、鉛筆硬度が高い硬化物を与えるので、例えば釣り竿のロッドやリール等に適用する接着剤を提供できる。また、当該樹脂組成物はプレポリマーとすることができるので、容易に粘度調整ができ、接着剤等の用途に適用する場合に、作業性を高めることができる特徴もある。
【0009】
本発明の接着剤は、前記特定の樹脂組成物からなるので、前記特性を反映して、例えば、釣り竿のロッドやリール等に好適な接着剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に於いて、(1)ウレタンオリゴマーを用いることを特徴としている。本発明に用いることのできる(1)ウレタンオリゴマーとしては、ジビニールベンゼン誘導体、UN−9000PEP、F−6023(コグニスジャパン社製)等、脂肪族アクリレート、F−6008、F−6210(サンノプコ社製)等、一般に使用されているウレタン化合物(イソホロンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物)が挙げられ、このうちF−6008は、硬化速度が速い、皮膚刺激性が低い、摩耗性に優れるという理由で好ましく選択される。
【0011】
本発明に於いて、(1)ウレタンオリゴマーの組成割合は、後述する(2)ポリエンと、やはり後述する(3)ポリチオールとの合計量について、1:9〜9:1(質量比)であることが好ましく、8:2〜9:1(質量比)がより好ましい。
【0012】
本発明に用いる(2)ポリエンとは、1分子中に2個以上の炭素−炭素二重結合を有する多官能性の化合物をいう。
【0013】
(2)ポリエンとしては、アリルアルコール誘導体、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類、ウレタン(メタ)アクリレート、ジビニールベンゼン誘導体等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
ここで、アリルアルコール誘導体としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル及びソルビトールジアリルエーテル等が挙げられる。
【0015】
また、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル類としては、例えば、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。
【0016】
(2)ポリエンの配合量については、(1)ウレタンオリゴマー、(3)ポリチオール、(6)多官能重合性ビニルモノマーとの合計100質量部に対して、5〜50質量部が好ましく、15〜25質量部がより好ましい。
【0017】
本発明に用いる(3)ポリチオールとは、1分子中に2個以上のチオール基を有する多官能性の化合物をいう。このようなポリチオールとしては、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類、脂肪族ポリチオール類及び芳香族ポリチオール類等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
ここで、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類の中で、メルカプトカルボン酸としては、チオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸及びβ−メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
【0019】
メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類の中で、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。
【0020】
脂肪族ポリチオール類及び芳香族ポリチオール類としては、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン−2,4−ジチオール及びキシレンジチオール等が挙げられる。
【0021】
これらのポリチオール類の中では、臭気の少ない点で、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類が好ましい。
【0022】
(3)ポリチオールの配合量については、(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(6)多官能重合性ビニルモノマーとの合計100質量部に対して、10〜60質量部が好ましく、25〜35質量部がより好ましい。また、本発明において、(2)ポリエン、(3)ポリチオールの使用割合は、ポリエン中の二重結合とポリチオール中のチオール基とが、モル比で5:1〜1:5の範囲が好ましく、1:1がより好ましい。
【0023】
本発明に用いる(4)光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンゾフェノン系紫外線開始剤、アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系紫外線重合開始剤、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系紫外線重合開始剤、イソプロピルチオキサントンやジエチルチオキサントン等のチオキサントンアシルホスフィンオキサイド、ベンジル、カンファーキノン、アントラキノン並びにミヒラーテトン等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、表面硬化性の点で、ベンゾフェノン系紫外線開始剤が好ましく、ベンジルジメチルケタールがより好ましい。
【0024】
(4)光重合開始剤の配合量については、(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオール、(6)多官能重合性ビニルモノマーとの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0025】
本発明に用いる(5)還元剤として、チオ尿素誘導体、アミン類、アルデヒドとアミンの縮合反応物、有機塩等が挙げられ、例えば、チオ尿素誘導体としてはジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メルカプトベンゾイミダゾール等のチオアミド化合物が挙げられる。アミン類としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。金属塩としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの1種または2種以上を使用してもよい。これらの中では、硬化促進の点で、チオ尿素誘導体が好ましく、エチレンチオ尿素が好ましい。
【0026】
(5)還元剤の使用量は、(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオールとの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。
【0027】
本発明で用いる(6)多官能重合性ビニルモノマーとしては、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート、ピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノ−ルAアルコキシジアクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリレート、イソホロンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0028】
(6)多官能重合性ビニルモノマーの配合割合については、(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオールと、(6)多官能重合性ビニルモノマーの配合比率は質量比で10:90〜90:10が好ましく、30:70〜70:30が特に好ましい。
【0029】
本発明で使用する(7)酸化剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用してもよい。これらの中では反応性の点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0030】
(7)酸化剤の使用量は、(1)ウレタンオリゴマー、(6)多官能重合性ビニルモノマーとの合計100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0031】
また、本発明に於いて、(2)ポリエンと(3)ポリチオールとを予め反応させた後、プレポリマーとし、これを配合することが好ましい。この操作により、最終用途に応じて好ましい粘度を有する樹脂組成物、接着剤を容易に提供できるし、それにより最終用途に於いて作業性を向上できる。
【0032】
予め反応させてプレポリマーを製造する方法としては、(2)ポリエン、(3)ポリチオールの混合物を単に加熱する方法や、過酸化物等を少量添加して加熱する方法、少量の(4)光重合開始剤を添加して紫外線を照射する方法等があげられるが、反応速度の制御の面からは、(2)ポリエンと、(3)ポリチオールの混合物を単に加熱する方法が好ましい。反応させる温度としては反応速度の制御の点で5℃から70℃が好ましい。
【0033】
また、通常市販されている(2)ポリエン、(3)ポリチオールには、通常、不純物が含まれており、これらの不純物をキレート化合物に変換して、取り除くことで更に反応速度の制御がし易くなる。
【0034】
更に、本発明の接着剤については、(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオール、(4)光重合開始剤、(5)還元剤を含有する第一の樹脂組成物と、(1)ウレタンオリゴマー、(6)多官能重合性ビニルモノマー、(4)光重合開始剤、(7)酸化剤を含有する第二の樹脂組成物とからなる2材型であることが好ましい。
【0035】
前記の通りに2材型とすることで、長期保管(1年間以上)が可能なる特徴を発揮できる。また、部材同士の接着時に作業時間を十分に確保でき、しかも接合時には短時間で接着強度を高くすることができ、作業性が一層向上できる。
【0036】
本発明の接着剤において、第一の樹脂組成物と第二の樹脂組成物との組成割合は3:7〜7:3(質量比)であることが好ましく、1/1(質量比)がより好ましい。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物、接着剤は、紫外線の照射により、(2)ポリエン、(3)ポリチオールと、(1)ウレタンオリゴマー、(6)多官能重合性ビニルモノマーが重合して、数秒から数分の短時間で硬化させることができる。紫外線源としては、例えば、超高圧、高圧、低圧の水銀灯及びメタルハライドランプによる紫外線を使用する。なお、レドックス硬化系であるので、紫外線の照射できない部位は常温で硬化する。
【0038】
本発明の樹脂組成物、接着剤には、必要に応じて、有機リン化合物、有機珪素化合物等の接着性改良剤、重合禁止剤、充填剤、着色剤、チクソトロピー剤、硬化促進剤、可塑剤及び界面活性剤等の通常用いられる各種の配合剤を添加してもよい。
【0039】
加えて、本発明の樹脂組成物、接着剤は粘度について、例えば25℃で100cps〜70万cpsの範囲まで調整することができ、例えば、釣り竿のロッド、リール等に好適に適用する場合には、作業性の点で、600cps〜800cpsに調整することが好ましい。また、当該粘度に調整された接着剤は、釣り竿のロッド、リールの固定用に用いて好ましく用いることができる。
【実施例1】
【0040】
(実施例1、比較例1〜4)
【0041】
(実験例1)マレイン酸ジアリルとトリス−2ヒドロキシエチル−イソシアヌレート−トリス-β−メルカプトプロピオネートを、ポリエン中の炭素−炭素二重結合基とポリチオール中のチオール基とのモル比が1/1となるように混合した。40℃にて攪拌しながら反応させて、粘度が約300(mPa/s)になった時点で、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対して、N−ニトロソフエニル−ヒドロキシアミンアンモニウム塩0.0005質量部を添加する。反応停止確認後、2,2―メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール0.005質量部、ベンジルジメチルケタール0.50質量部を添加して、60℃にて1時間溶解する。溶解確認後、イソホロンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物20質量部を添加して、自然冷却下で撹拌して、溶解させる。溶解後、エチレンチオ尿素0.5質量部を添加、攪拌して溶解させることで樹脂組成物(B)を得た。
【0042】
(実験例2)ネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート5質量部、ビスフェノールAアルコキシジアクリレート13質量部、ビバリン酸エステルネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート40質量部に予め加温溶解したポリウレタン系アクリレートオリゴマー30質量部、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリレート12質量部を添加して撹拌する。ベンジルジメチルケタール0.5質量部添加して、60℃にて1時間溶解する。冷却後、クメンハイドロパーオキサイド3質量部を添加、撹拌して溶解させ、樹脂組成物(A)を得た。
【0043】
(実験例3)ネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート5質量部、ビスフェノールAアルコキシジアクリレート13質量部、ビバリン酸エステルネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート40質量部、トリス−2ヒドロキシエチル−イソシアヌレート−トリス-β−メルカプトプロピオネートに予め加温溶解したポリウレタン系アクリレートオリゴマー30質量部、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリレート12質量部を添加して撹拌する。ベンジルジメチルケタール0.5質量部添加して、60℃にて1時間溶解する。冷却後、クメンハイドロパーオキサイド3質量部、エチレンチオ尿素0.5質量部を添加、撹拌して溶解させ、樹脂組成物を得た。
【0044】
(実験例4)ネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート5質量部、ビスフェノールAアルコキシジアクリレート13質量部、ビバリン酸エステルネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート40質量部、マレイン酸ジアリルに予め加温溶解したポリウレタン系アクリレートオリゴマー30質量部、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリレート12質量部を添加して撹拌する。ベンジルジメチルケタール0.5質量部添加して、60℃にて1時間溶解する。冷却後、クメンハイドロパーオキサイド3部、エチレンチオ尿素0.5質量部を添加、撹拌して溶解させ、樹脂組成物を得た。
【0045】
得られた樹脂組成物(B)(実験例1)と樹脂組成物(A)(実験例2)の質量比が1となるように配合した樹脂組成物、実験例1の樹脂組成物(B)、実験例2の樹脂組成物(A)、実験例3、4のそれぞれの樹脂組成物について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。尚、表1中では、それぞれの場合を、実験例の組成比として実1/実2=1/1、実1、実2、実4で表した(以降、同様に表示する)。
【0046】
<評価1;表面硬化性>実物カーボン竿(ナイロン糸巻き付き)に刷毛を使用して各試料を塗布して、紫外線を次の条件で照射して硬化させて、表面のタック状態を評価する。但し、塗布/硬化は2回とし、硬化は酸素雰囲気中で行った。
・紫外線照射量 :3000mJ/cm
・紫外線照射装置:トスキュアー400(東芝製)
表面のタック状態の評価は、指先で行い、次の評価結果とした。
0:タックなし
1:指紋の付く程度
2:タックあり
【0047】
<評価2;糸下硬化性>評価1の方法にて、試料を作製し、23℃×50%RH雰囲気中に24時間放置後、ナイロン糸を剥がし、その表面を肉眼にて観察し、次の評点を付した。
0:カーボン表面に糸目がある
1:カーボン表面にやや糸目がある
2:カーボン表面に糸目なし
【0048】
<評価3;接着強度>実物カーボン竿(ガイド付き)に刷毛を使用して各試料を塗布して、紫外線を照射して硬化させ、硬化後にプシュブルゲージを使用して、ガイドを直角方向に引き、強度を測定する。尚、硬化条件は評価1に準じた。強度を次の評点でランク分けした。
0:30kg以上
1:20kg以上30kg未満
2:20kg未満
【0049】
<評価4:鉛筆硬度>JIS K 5400に準じて評価した。
【0050】
【表1】

【実施例2】
【0051】
(実施例2〜4)
【0052】
(実験例5)マレイン酸ジアリルとトリス−2ヒドロキシエチル−イソシアヌレート−トリス-β−メルカプトプロピオネートを、ポリエン中の炭素−炭素二重結合基とポリチオール中のチオール基とのモル比が1/1となるように混合する。そして、40℃にて攪拌しながら反応させて、約300(mPa/s)になった時点で、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対してN−ニトロソフエニル−ヒドロキシルアミンアンモニウム塩0.0005質量部添加する。反応停止確認後、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール0.005質量部、ベンジルジメチルケタール0.50質量部添加して、60℃にて1時間溶解する。溶解確認後、イソホロンジイソシアネート−2−ヒドロキシエチルアクリレート付加物20質量部添加して、自然冷却下で撹拌して、溶解させ、樹脂組成物(B)を得た。
【0053】
(実験例6)ネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート5質量部、ビスフェノールAアルコキシジアクリレート13質量部、ビバリン酸エステルネオペンチルグリコールアルコキシジアクリレート40質量部に予め加温溶解したポリウレタン系アクリレートオリゴマー30質量部、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリレート12質量部を添加して撹拌する。ベンジルジメチルケタール0.5質量部添加して、60℃にて1時間溶解し、樹脂組成物(A)を得た。
【0054】
(実験例7)マレイン酸ジアリルとトリス−2ヒドロキシエチル−イソシアヌレート−トリス-β−メルカプトプロピオネートを、ポリエン中の炭素−炭素二重結合基とポリチオール中のチオール基とのモル比が1/1となるように混合する。そして、40℃にて攪拌しながら反応させて、約300(mPa/s)になった時点で、ポリエンとポリチオールの合計100質量部に対してN−ニトロソフエニル−ヒドロキシルアミンアンモニウム塩0.0005質量部添加する。反応停止確認後、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール0.005質量部、ベンジルジメチルケタール0.50質量部添加して、60℃にて1時間溶解する。冷却後、エチレンチオ尿素0.5質量部を添加、攪拌して溶解させ、樹脂組成物(B)を得た。
【0055】
前記実験例1、2、5〜7の樹脂組成物(A)、樹脂組成物(B)を用いて、表2に示した配合で樹脂組成物を作成し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の樹脂組成物、接着剤は、表面硬化性が良く、また、鉛筆硬度が高い硬化物を与える特徴があるし、更に、使用する用途に応じて粘度調整が容易にできる特徴があるので、例えば、釣り竿のロッドやリール等に使用してその作業性を大いに改善できる等、いろいろな分野で使用可能であり、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオール、(4)光重合開始剤、(5)還元剤、(6)多官能重合性ビニルモノマー、(7)酸化剤、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
(2)ポリエンと(3)ポリチオールとを予め反応させた後、配合して成ることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の樹脂組成物からなることを特徴とする接着剤。
【請求項4】
(1)ウレタンオリゴマー、(2)ポリエン、(3)ポリチオール、(4)光重合開始剤、(5)還元剤を含有する第一の樹脂組成物と、(1)ウレタンオリゴマー、(6)多官能重合性ビニルモノマー、(4)光重合開始剤、(7)酸化剤を含有する第二の樹脂組成物とからなる2材型であることを特徴とする請求項3記載の接着剤。
【請求項5】
釣り竿のロッド、リールの固定用に用いられることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の接着剤。

【公開番号】特開2007−2108(P2007−2108A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184242(P2005−184242)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】