説明

樹脂組成物及び吸液性樹脂の製造方法

【課題】従来の吸液性樹脂形成性樹脂組成物は、成形体の吸液力が低下することや、吸液後にゲルが離脱してしまう。また、安全性や取り扱い性が悪い等の問題がある。さらに、成形できる形状がシート状や繊維状のみに限られる。
【解決手段】下記重合体(A)を含んでなり、固形分が80〜100重量%であり、ゲル化率が0〜40%である樹脂組成物(C)、及びこの樹脂組成物を加熱及び/又は放射線照射による架橋方法で架橋する吸液性樹脂の製造方法。
重合体(A):カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらの官能基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換された官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する構成単位(a)を(A)の重量を基準として20〜100重量%含有してなり、(A)のオニウムカチオン置換率が30〜100モル%である重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び吸液性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸液性樹脂(又は吸水性樹脂)として、アクリル酸−アクリル酸塩共重合体、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体等多くのものが知られている。これらの吸液性樹脂は多くの場合粉末状の3次元架橋重合体である。このため吸液性樹脂を成形した吸液体を得ることができず、吸液(吸水)体を得る方法としては、紙、パルプ又は不織布の基材シート上に吸液性樹脂の粉末を均一に分散させ固着させるという方法が一般的である。
しかしながら、粉末以外の繊維、フィルム及び発泡シート等の所望の形状の吸液性樹脂(又は吸水性樹脂)を得ることが望まれている。所望の形状の吸液性樹脂(又は吸水性樹脂)を得る方法として、比較的小粒径の吸液性樹脂を成形可能な樹脂の中に分散して成形するという方法(特許文献1)やアクリル酸(塩)及びポリアクリル酸(塩)の水溶液を成形後、重合又は硬化し乾燥する方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−298516号公報
【特許文献2】特開2003−64235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前者では、吸液(吸水)力のない熱可塑性樹脂を使用するため、結果的に成形体の吸液力が低下することや、吸液後にゲルが離脱してしまうという問題がある。
後者では、アクリル酸(塩)及びポリアクリル酸(塩)の水溶液は安全性に問題があり、粘調な液体であるため取り扱い性が悪い。また、水溶液であるため成形できる形状がシート状や繊維状のみに限られるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の樹脂組成物を用い、この樹脂組成物を架橋することで、高い吸液力を持った所望の形状の吸液性樹脂を得ることができることを見出した。
すなわち本発明の樹脂組成物は、下記重合体(A)を含んでなる樹脂組成物であって、樹脂組成物の固形分が80〜100重量%であり、樹脂組成物のゲル化率が0〜40%であることを要旨とする。
重合体(A):カルボキシル基、スルホン酸基並びにこれらの官能基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換された官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する構成単位(a)を(A)の重量を基準として20〜100重量%含有してなり、以下の式により示される(A)のオニウムカチオン置換率が30〜100モル%である重合体。
オニウムカチオン置換率(モル%)=[(A)中のオニウムカチオンのモル数]÷[(A)中のカルボキシル基、スルホン酸基並びにこれらの官能基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換された官能基の合計のモル数]×100
また、本発明の吸液性樹脂の製造方法は、この樹脂組成物を加熱及び/又は放射線照射による架橋方法で架橋する工程を含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂組成物及び吸液性樹脂の製造方法は以下の効果を奏する。
(1)本発明の樹脂組成物は、架橋することで、フィルム、繊維、発泡体、シート及び肉厚成形品等の所望の形状の吸液性樹脂を得ることができる。
(2)さらに、得られた吸液性樹脂は水、メタノール、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びエタノール等の各種液体に対して高い吸液力を示す。
(3)本発明の樹脂組成物は、熱可塑化が可能であり、溶融混練等の操作により、他の樹脂と容易に混合することができるため、従来の粉末状の吸液性樹脂と比較して他樹脂との混合が均一に行える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、重合体(A)は、カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらの官能基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換された官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する構成単位(a)を含有する重合体であり、(a)を形成し得るモノマーを重合してなる重合体が含まれる。
オニウムカチオンとしては後述するオニウムカチオンを意味し、アルカリ金属カチオンとは、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン等のアルカリ金属のカチオンを意味する。
【0008】
(a)を形成し得るモノマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー等が含まれ、これらの1種以上を重合することにより重合体(A)の構成単位(a)とすることができる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、エタアクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ケイ皮酸及びそれらの無水物等が挙げられる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルスルホン酸{ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸及びスチレンスルホン酸等}、(メタ)アクリレート型スルホン酸{スルホエチル(メタ)アクリレート及びスルホプロピル(メタ)アクリレート等}並びに(メタ)アクリルアミド型スルホン酸{アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等}等が挙げられる。
【0009】
上記カルボキシル基を有するモノマー又はスルホン酸基を有するモノマーのカルボキシル基又はスルホン酸基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換されたモノマーも使用できる。
【0010】
モノマーの重合性の観点から、好ましくは炭素数3〜30のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するモノマーであり、さらに好ましくはカルボキシル基を有するモノマー、次にさらに好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0011】
なお、本発明において、(メタ)アクリルの記載は、アクリル及び/又はメタクリルの意味であり、(メタ)アクリレートの記載は、アクリレート及び/又はメタクリレートの意味であり、以下同様である。
また、ここで炭素数とは、モノマーが分子内に有する全ての炭素原子の数を意味する。
【0012】
上記の構成単位(a)を形成し得るモノマーを重合してなる重合体以外に、構成単位(a)を含んだ重合体(A)としては、カルボキシル基含有多糖類(カルボキシメチルセルロースなど)、スルホン酸基含有多糖類及び多糖類と上記(a)を形成し得るモノマーとのグラフト共重合体が挙げられる。
多糖類としては、デンプン(サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、トウモロコシデンプン及び米デンプン等の生デンプン、酸化デンプン、ジアルデヒドデンプン、アルキルエーテル化デンプン、アリールエーテル化デンプン、オキシアルキル化デンプン並びにアミノエチルエーテル化デンプン等が挙げられる。
セルロースとしては、木材等から得られるセルロース、アルキルエーテル化セルロース、有機酸エステル化セルロース、酸化セルロース並びにヒドロキシアルキルエーテル化セルロース等が挙げられる。
【0013】
本発明において、重合体(A)中の構成単位(a)の含有量は、(A)の重量に基づいて20〜100重量%であり、樹脂組成物の成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、好ましくは40〜100重量%、さらに好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは100重量%である。構成単位(a)が20重量%未満では吸液性樹脂の吸液量が悪くなる。
【0014】
本発明において、重合体(A)は、構成単位(a)以外の構成単位(b)を含有してもよい。構成単位(b)としては、アミノ基、ヒドロキシル基、不飽和基、アミド基、ニトリル基、ハロゲン基、アルキル基、カルボン酸アルキルエステル基、スルホン酸アルキルエステル基、エーテル基及びフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基が含まれる構成単位が挙げられる。
構成単位(b)は、(b)を形成し得るモノマーを構成単位(a)を形成し得るモノマーと共重合等する方法の他に、構成単位(b)を形成し得る化合物(c)を構成単位(a)の官能基に付加又は縮合反応等させる方法でも(A)に導入できる。
【0015】
構成単位(b)を形成し得るモノマーとしては、下記(b−1)〜(b−12)等が挙げられる。
【0016】
(b−1)アミノ基含有モノマー;
ジアルキル(アルキルの炭素数:1〜5)アミノエチル(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート]、メタ(アクリロイル)オキシエチルトリアルキル(アルキル炭素数:1〜5)アンモニウムクロリド、ブロマイド若しくはサルフェート等;
【0017】
(b−2)ヒドロキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル[(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル]、(メタ)アクリル酸モノ(ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記する))エステル(PEGの数平均分子量:100〜4000)及び(メタ)アクリル酸モノ(ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記する))エステル(PPGの数平均分子量:100〜4000)等;
【0018】
(b−3)共役ジエン化合物;
1,3−ブタジエン、イソプレン、2−フェニル−1,3−ブタジエン及びクロロプレン等;
【0019】
(b−4)アミド基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−(ジ)メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エチル−N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロールマレアミド及びN−メチロールイタコンアミド等;
【0020】
(b−5)チオール基含有モノマー;
(メタ)アリルメルカプタン、チオール基を有する(メタ)アクリル酸エステル[ヒドロキシエチルアクリレートのエチレンスフィド1モル付加物、トリエチレングリコールジメルカプタンとアクリル酸とのエステル化物及びアクリル酸へのエチレンスルフィド2モル付加物等]等;
なお、本発明において、(メタ)アリルの記載は、アリル及び/又はメタアリルの意味であり、以下同様である。
【0021】
(b−6)ニトリル基含有モノマー;
アクリロニトリル及びメタアクリロニトリル等
【0022】
(b−7)ハロゲン基含有モノマー;
塩化ビニル、塩化ビニリデン及びハロゲン置換プロピレンモノマー等;
【0023】
(b−8)炭素数4〜20のα−オレフィン
イソブチレン、1−ヘキセン及び1−ドデセン等;
【0024】
(b−9)(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜30)エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等]、(メタ)アクリル酸モノメトキシPEG(PEGの数平均分子量:100〜4000)及び(メタ)アクリル酸モノメトキシPPG(PPGの数平均分子量:100〜4000)等;
【0025】
(b−10)アリルエーテル;
メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル及びペンタエリスリトールモノアリルエーテル等
【0026】
(b−11)炭素数8〜20の芳香族ビニル化合物;
スチレン等;
【0027】
(b−12)その他のビニル化合物;
N−ビニルアセトアミド、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル及びステアリン酸ビニル等;
【0028】
これらの(b)を形成し得るモノマーとしては1種以上を含んでいてもよい。なお、ここで炭素数とは、モノマーが分子内に有する全ての炭素原子の数を意味する。
【0029】
構成単位(b)を形成し得るモノマーの中で、モノマーの重合性並びに(a)及び(b)を形成し得るモノマーから得られる重合体の安定性の観点から、(b−2)、(b−4)、(b−9)及び(b−10)が好ましい。
【0030】
構成単位(b)を形成し得る化合物(c)は、カルボキシル基又はスルホン酸基と反応し得る官能基を含有する化合物であり、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等を少なくとも1種含有する化合物等が挙げられる。(c)を形成し得る化合物としては下記(c−1)〜(c−6)等が挙げられる。
【0031】
(c−1)アミノ基含有化合物;アンモニア、第1級アミン(炭素数1〜30)、第2級アミン(炭素数1〜30)等
(c−2)ヒドロキシル基含有化合物;脂肪族(炭素数1〜30)アルコール、芳香族(炭素数6〜30)アルコール等
(c−3)エポキシ基含有化合物;グリシジルエーテル、グリシジルエステル及びα−オレフィンオキサイド(炭素数2〜30)等
(c−4)イソシアネート基含有化合物;芳香族(炭素数6〜30)イソシアネート、脂肪族(炭素数1〜30)イソシアネート及び脂環式(炭素数3〜30)イソシアネート等
(c−5)カルボジイミド基含有化合物;芳香族(炭素数6〜30)カルボジイミド、脂肪族(炭素数1〜30)カルボジイミド、脂環式(炭素数3〜30)カルボジイミド等
(c−6)オキサゾリン基含有化合物;2−メチル−2−オキサゾリン及び2−フェニル−2−オキサゾリン等;
【0032】
これらの中で、反応性及び安全性の観点から、(c−1)、(c−2)及び(c−3)が好ましい。
【0033】
本発明において、構成単位(b)の重合体(A)中の含有量は、重合体(A)の重量に基づいて0〜80重量%が好ましく、吸液性樹脂組成物の成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、さらに好ましくは0〜60重量%、次にさらに好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜20重量%である。
【0034】
また、吸液性樹脂は、種々の液体が吸収の対象となるため、吸液性樹脂の吸液量を向上させる観点から、それら対象となる液体のSP値(溶解度パラメーター)と構成単位(b)を形成し得るモノマーのSP値との差の絶対値が5以下の構成単位(b)を形成し得るモノマーを選択することが好ましく、さらに好ましくは対象とする液体のSP値と構成単位(b)を形成し得るモノマーのSP値との差の絶対値が3以下である。
なお、SP値とは、下記に示した様に凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。
[SP値]=(△E/V)1/2
ここで△Eは凝集エネルギー密度を表す。Vは分子容を表し、その値は、ロバート エフ.フェドールス(Robert F.Fedors)らの計算によるもので、例えばポリマー エンジニアリング アンド サイエンス(Polymer engineering and science)第14巻、147〜154頁に記載されている。
【0035】
構成単位(a)を形成し得るモノマー、及び必要により構成単位(b)を形成し得るモノマーを重合する際の重合方法は公知の方法で良く、例えば、前記の各モノマー及び生成する重合体が溶解する溶媒中での溶液重合法、溶媒を使用せずに重合する塊状重合法、乳化重合法等が挙げられる。好ましくは、モノマーの重合性の観点から、溶液重合法である。
【0036】
溶液重合で使用する溶媒は、使用するモノマーや重合体の溶解性により適宜選択できるが、メタノール及びエタノール等のアルコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びジメチルカーボネート等のカーボネート、γ−ブチロラクトン等のラクトン、ε−カプロラクタム等のラクタム、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン、酢酸エチル等のカルボン酸エステル、テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素並びに水等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を混合して使用しても良い。溶液重合における重合濃度は、目的の用途によって適宜選定すればよいが、モノマーの重合性の観点から、1〜80重量%が好ましく、5〜60重量%がより好ましい。
【0037】
上記重合で使用する重合開始剤は公知のもので良く、アゾ開始剤[アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド及びアゾビス{2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル}プロロピオンアミド)等]、過酸化物開始剤[過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート及び過酸化水素等]及びレドックス開始剤[上記過酸化物開始剤と還元剤(アスコルビン酸や過硫酸塩等)との組み合わせ等]等が挙げられる。
【0038】
重合開始剤を使用する場合の開始剤の使用量は、モノマーの重合性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、使用するモノマーの総重量に対して、0.0001〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜2重量%である。重合温度は、目的とする分子量、開始剤の分解温度及び使用する溶媒の沸点等により適宜選択すればよいが、樹脂組成物の成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、−20〜200℃が好ましく、さらに好ましくは0〜100℃である。
【0039】
他の重合方法としては、光増感開始剤[ベンゾフェノン等]を添加し紫外線を照射する方法及びγ線や電子線等の放射線を照射し重合する方法等が挙げられる。
【0040】
重合体(A)は、オニウムカチオン置換率が30〜100モル%であることが必須である。なお、オニウムカチオン置換率は以下の式で示される。
オニウムカチオン置換率は、成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%、次にさらに好ましくは70〜100モル%である。
オニウムカチオン置換率が30モル%未満では、樹脂組成物の成形性又は吸液性樹脂の吸液力が悪くなり、吸液力が悪くなる。
オニウムカチオン置換率(モル%)=[(A)中のオニウムカチオンのモル数]÷[(A)中のカルボキシル基、スルホン酸基並びにこれらの官能基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換された官能基の合計のモル数]×100
【0041】
オニウムカチオンとしては、第4級アンモニウムカチオン(I)、3級スルホニウムカチオン(II)、第4級ホスホニウムカチオン(III)及び3級オキソニウムカチオン(IV)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。第4級アンモニウムカチオン(I)としては、下記(I−1)〜(I−11)が挙げられる(以下カチオンの言葉は省略)。
【0042】
(I−1)炭素数4〜30のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族第4級アンモニウム;
テトラメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、及びテトラブチルアンモニウム等;
【0043】
(I−2)炭素数6〜30の芳香族第4級アンモニウム;
トリメチルフェニルアンモニウム及びトリエチルフェニルアンモニウム等;
【0044】
(I−3)炭素数3〜30の脂環式第4級アンモニウム;
N,N−ジメチルピロジニウム及びN,N−ジエチルピペリジニウム等;
【0045】
(I−4)炭素数3〜30のイミダゾリニウム;
1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム及び1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム等;
【0046】
(I−5)炭素数3〜30のイミダゾリウム;
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−フェニルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ベンジルイミダゾリウム及び1−ベンジル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等;
【0047】
(I−6)炭素数4〜30のテトラヒドロピリミジニウム;
1,3−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム及び1,2,3,4−テトラメチルテトラヒドロピリミジニウム等;
【0048】
(I−7)炭素数4〜30のジヒドロピリミジニウム;
1,3−ジメチル−2,4−若しくは−2,6−ジヒドロピリミジニウム[これらを1,3−ジメチル−2,4,(6)−ジヒドロピリミジニウムと表記し、以下同様の表現を用いる。]、1,2,3−トリメチル−2,4,(6)−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−2,4,(6)−ジヒドロピリミジニウム及び1,2,3,5−テトラメチル−2,4,(6)−ジヒドロピミジニウム等;
【0049】
(I−8)炭素数3〜30のイミダゾリニウム骨格を有するグアニジウム;
2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム及び1,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]イミダゾリニウム等;
【0050】
(I−9)炭素数3〜30のイミダゾリウム骨格を有するグアニジウム;
2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム及び1,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]イミダゾリウム等;
【0051】
(I−10)炭素数4〜30のテトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジウム;
2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム及び1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]ピリミジニウム等;
【0052】
(I−11)炭素数4〜30のジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジウム;
2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−2,4(6)−ジヒドロピリミジニウム及び1,6,7,8−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]ピリミジニウム等;
【0053】
3級スルホニウムカチオン(II)としては、下記(II−1)〜(II−3)が挙げられる。
(II−1)炭素数1〜30のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族3級スルホニウム;
トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、エチルジメチルスルホニウム及びジエチルメチルスルホニウム等;
(II−2)炭素数6〜30の芳香族3級スルホニウム;
フェニルジメチルスルホニウム、フェニルエチルメチルスルホニウム及びフェニルメチルベンジルスルホニウム等;
(II−3)炭素数3〜30の脂環式3級スルホニウム;
メチルチオラニウム、フェニルチオラニウム等;
【0054】
第4級ホスホニウムカチオン(III)としては、下記(III−1)〜(III−3)が挙げられる。
(III−1)炭素数1〜30のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族第4級ホスホニウム;
テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム及びトリメチルブチルホスホニウム等;
【0055】
(III−2)炭素数6〜30の芳香族4級ホスホニウム;
トリフェニルメチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウム及びトリフェニルベンジルホスホニウム等;
(III−3)炭素数3〜30の脂環式4級ホスホニウム;
【0056】
3級オキソニウムカチオン(IV)としては、下記(IV−1)〜(IV−3)が挙げられる。
(IV−1)炭素数1〜30のアルキル及び/又はアルケニル基を有する脂肪族3級オキソニウム;
トリメチルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、エチルジメチルオキソニウム及びジエチルメチルオキソニウム等;
(IV−2)炭素数6〜30の芳香族3級オキソニウム;
フェニルジメチルオキソニウム、フェニルエチルメチルオキソニウム及びフェニルメチルベンジルオキソニウム等;
(IV−3)炭素数3〜30の脂環式3級オキソニウム;
メチルオキソラニウム及びフェニルオキソラニウム等;
【0057】
これらの中で、好ましいオニウムカチオンは(I)であり、吸液性樹脂組成物の成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、更に好ましいものは(I−1)、(I−4)及び(I−5)であり、次に更に好ましいものは(I−4)及び(I−5)であり、特に好ましいのは(I−4)である。
これらオニウムカチオンは、1種又は2種以上を併用しても良い。
【0058】
オニウムカチオンを重合体(A)に導入する方法としては、(1)カルボキシル基を有するモノマー又はスルホン酸基を有するモノマーのカルボキシル基又はスルホン酸基のプロトンがオニウムカチオンで置換されたモノマーを(共)重合する方法(前出)の他、(2)重合体のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基のプロトンをオニウムカチオンにより置換する方法が挙げられる。
(2)の方法では、所定量オニウムカチオンに置換できる方法であればいずれの方法でも良いが、例えば、上記オニウムカチオンのモノメチル炭酸塩(例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリニウムモノメチル炭酸塩)をカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を含有する重合体に添加し、必要により脱水や脱炭酸、脱メタノールを行うことで容易に置換できる。
【0059】
重合体(A)の重量平均分子量は、樹脂組成物の成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、150,000〜3,000,000が好ましく、さらに好ましくは200,000〜2,000,000、次にさらに好ましくは300,000〜1,500,000である。
【0060】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、カラム:Guardcolum PWXL、TSKgelG6000PWXL及びTSKgelG3000PWXLの3本のカラム、カラム温度:40℃、移動相:メタノール30%水溶液(v/v)(酢酸ナトリウム0.5%(w/v)含有)、流量:1.0mL/min、試料濃度:0.25重量%、注入量:200μLの条件で測定される。
【0061】
重合体(A)の含有量は、吸液性樹脂の吸液力の観点から、樹脂組成物(C)の重量を基準として、60〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは70〜100重量%、次にさらに好ましくは80〜100重量%である。
【0062】
本発明の樹脂組成物(C)は、重合体(A)の他に架橋剤(B)、有機過酸化物(D)及び添加剤(E)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【0063】
架橋剤(B)としては、重合体(A)の構成単位(a)及び必要により含有する構成単位(b)が有する官能基と反応し得る官能基を分子内に少なくとも2つ有する化合物が含まれる。
【0064】
架橋剤(B)としては、下記(B−1)〜(B−9)が挙げられる。
(B−1)多価アルコール;
脂肪族(炭素数2〜300)多価アルコール、芳香族(炭素数6〜100)多価アルコール及び脂環式(炭素数3〜100)多価アルコール等が含まれる。
脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG(数平均分子量:100〜4000)、PPG(数平均分子量:100〜4000)、グリセリン、ポリグリセリン、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等が挙げられる。
芳香族多価アルコールとしては、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、レゾルシン及び1,4−ビスヒドロキシエトキシベンゼン等が挙げられる。
脂環式多価アルコールとしては、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びトリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0065】
(B−2)多価アミン;
脂肪族(炭素数1〜300)多価アミン、脂環式(炭素数3〜300)多価アミン及び芳香族(炭素数6〜300)多価アミン等が含まれる。
脂肪族多価アミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ビス(2−アミノエチル)エーテル及びポリエチレンイミン(数平均分子量:100〜4000)等が挙げられる。
脂環式多価アミンとしては、ノルボルネンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン及び1,4−シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。
芳香族多価アミンとしては、キシリレンジアミン及びビス−2,2−(4’−アミノフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0066】
(B−3)硫黄及びチオール化合物;
硫黄、脂肪族(炭素数1〜100)チオール、芳香族(炭素数6〜100)チオール及び複素環含有チオール等が含まれる。
脂肪族チオールとしては、メタンジチオール、プロパンジチオール、シクロヘキサンジチオール及びトリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)等が挙げられる。
芳香族チオールとしては、ジ−、トリス−又はテトラ−メルカプトベンゼン、ビス−、トリス−又はテトラ−(メルカプトアルキル)ベンゼン及びナフタレンジチオール等が挙げられる。
複素環含有チオールとしては、アミノ−4,6−ジチオール−シム−トリアジン及び1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0067】
(B−4)フェノール縮合物
p−アルキル置換フェノール、o−アルキル置換フェノール及びm−アルキル置換フェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種の置換フェノールとアルデヒドとの縮合物が含まれる。アルキル基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素)で置換されていてもよい炭素数1〜30のアルキル基、アルデヒドは、炭素数1〜30のアルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等)、縮合度(すなわち、縮合物の芳香環の含有個数)は、1〜20である。好ましくはアルキル基の炭素数1〜20、アルデヒドの炭素数1〜20、縮合度1〜10であり、さらに好ましくはアルキル基の炭素数1〜10、アルデヒドの炭素数1〜10、縮合度1〜5である。
【0068】
フェノール縮合物の市販品としては、商品名「タッキロール201」(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、商品名「タッキロール250−I」(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、商品名「タッキロール250−III」(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、商品名「PP−4507」(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、群栄化学工業社製)、商品名「ST137X」(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、ローム&ハース社製)、商品名「スミライトレジンPR−22193」(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、住友デュレズ社製)、商品名「タマノル531」(熱反応性フェノール樹脂、荒川化学社製)、商品名「SP1059」、商品名「SP1045」、商品名「SP1055」、商品名「SP1056」(以上、熱反応性フェノール樹脂、スケネクタディ社製)及び商品名「CRM−0803」(熱反応性フェノール樹脂、昭和ユニオン合成社製)等が挙げられる。
【0069】
(B−5)キノン及びキノンオキシム;
p−キノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム及びN−(2−メチル−2−ニトロプロピル)−4−ニトロソアニリン等;
【0070】
(B−6)多価(ブロック)エポキシ化合物;
多価エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が含まれ、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル及び(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
多価(ブロック)エポキシ化合物としては、多価シクロカーボネート基含有化合物等が含まれ、3−アクリロイルオキシプロピレンカーボネート及び/又は3−メタクリロイルオキシプロピレンカーボネートの単独重合体又は共重合体並びに多価エポキシ基含有化合物(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等)と二酸化炭素との反応により得られる多価シクロカーボネート基含有化合物等が挙げられる。
【0071】
(B−7)多価(ブロック)イソシアネート;
多価イソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート並びにポリイソシアネートのビューレットタイプの付加物及びイソシアヌル環タイプ付加物等が含まれる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート及びダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート及びシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
多価ブロックイソシアネートは、多価イソシアネートをフェノール、オキシム、活性メチレン化合物、ε−カプロラクタム、トリアゾール及びピラゾール等のブロック剤で封鎖した化合物であり、多価ブロックイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、デスモジュールBL1100、BL1265MPA/X、VPLS2253、BL3475BS/SN、BL3272MPA、BL3370MPA、BL4265SN、デスモーサム2170、スミジュール3175(以上、住化バイエルウレタン株式会社製)、デュラネート17B−60PX、TPA−B80X、MF−B60X、MF−K60X(以上、旭化成ケミカルズ株式会社製)、バーノックDB−980K、D−550、B3−867、B7−887−60(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、コロネート2515、2507、2513(以上、日本ポリウレタン工業株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
(B−8)メチロール化合物;
N−メチロール[ジメチロール尿素及びヘキサメチロールメラミン等]、N−アルコキシメチロール[ジメトキシメチルエチレン尿素等]等;
【0073】
(B−9)多価不飽和化合物
(B−9−1)多価(メタ)アクリルアミド化合物;
N,N−アルキレン(炭素数1〜6)ビス(メタ)アクリルアミド[N,N−メチレンビスアクリルアミド等];
【0074】
(B−9−2)多価ビニル化合物;
ジビニルベンゼン及びジビニルエーテル等;
【0075】
(B−9−3)多価アリルエーテル化合物;
グリセリンジアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル及びペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等;
【0076】
(B−9−4)多価(メタ)アクリル酸エステル化合物;
トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等;
【0077】
架橋剤(B)は、架橋剤の反応性、ゲル化率及び加圧加熱後ゲル化率(80℃又は170℃、5MPa、30分間)を後述の範囲に調整する観点から、重合体(A)に含まれる官能基の種類によって、(B)を選択することが好ましい。
重合体(A)が構成単位(a)のみからなる場合、(B−1)、(B−2)、(B−6)(特に多価ブロックエポキシ化合物)、(B−7)(特に多価ブロックイソシアネート化合物)、(B−8)及び(B−9)が好ましく、(B−1)及び(B−2)が次に好ましく、(B−2)がさらに好ましく、脂肪族アミンが最も好ましい。
重合体(A)が構成単位(b)を含有し、その官能基がアミノ基の場合、(B−2)及び(B−7)(特に多価ブロックイソシアネート化合物)が好ましく;その官能基がヒドロキシル基の場合、(B−8)及び(B−9)が好ましく;その官能基がチオール基の場合、(B−5)、(B−6)(特に多価ブロックエポキシ化合物)、(B−7)(特に多価ブロックイソシアネート化合物)、(B−8)及び(B−9)が好ましく;その官能基が不飽和基の場合、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、(B−5)、(B−6)(特に多価ブロックエポキシ化合物)、(B−8)及び(B−9)が好ましい。
【0078】
樹脂組成物(C)中の(B)の含有量は、吸液性樹脂の吸液力の観点から、重合体(A)の重量を基準として、0.001〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量%、次にさらに好ましくは0.2〜3重量%である。
【0079】
有機過酸化物(D)としては、従来公知の各種のもの、例えば、オクタノイルパーオキシド(80℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(84℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(90℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(119℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(115℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(119℃)、t−ブチルクミルパーオキサイド(137℃)、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(173℃)及びt−ヘキシルハイドロパーオキサイド(189℃)等が挙げられ、これらは単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。なお、上記括弧内の温度は1時間半減期温度を表す。なお、1時間半減期温度とは一定温度で有機過酸化物を分解させた際、活性酸素量が1時間で当初の半分になるときの温度である。
【0080】
樹脂組成物(C)のゲル化率及び加圧加熱後ゲル化率(80℃又は170℃、5MPa、30分間)を後述の範囲に調整する観点から、1時間半減期温度が80℃〜190℃のものが好ましく、90℃〜180℃のものが次に好ましく、100℃〜170℃のものがさらに好ましく、110℃〜160℃のものが最も好ましい。
【0081】
樹脂組成物(C)中の(D)の含有量は、吸液性樹脂の吸液力の観点から、重合体(A)の重量を基準として、0.01〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.04〜0.5重量%である。
【0082】
添加剤(E)としては、可塑剤、熱安定剤、滑剤及びブロッキング防止剤が挙げられる。
【0083】
可塑剤としては、PEG(数平均分子量;106〜20,000)、PPG(数平均分子量;134〜20,000)、オキシエチレン−オキシプロピレン・ブロック共重合体等が使用できる。また、国際公開第98/10020号パンフレット及び特開2007−169444号公報等に記載されている公知の可塑剤等も使用できる。公知の可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル等のフタル酸エステル、フタル酸ブチルベンジルエステル等のフタル酸混基エステル、コハク酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪族2塩基酸エステル、ジエチレングリコールジベンゾエート等のグリコールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ可塑剤、並びにトリメリット酸トリオクチル、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル、塩素化パラフィン、ポリプロピレンアジペート、ポリエチレンセバケート、トリアセチン、トリブチリン、トルエンスルホンアミド、アルキルベンゼン、ビフェニル、部分水添ターフェニル及びショウノウ等が挙げられる。
これらの中で、成形性と吸液性樹脂の吸液力の観点から、オキシエチレン−オキシプロピレン・ブロック共重合体が好ましい。
【0084】
樹脂組成物(C)中の可塑剤の含有量は用途によって異なるが、成形性と吸液性樹脂の吸液力の観点から、重合体(A)の重量を基準として、3〜30重量%が好ましい。
【0085】
熱安定剤としては、ヒンダードフェノール、リン含有化合物及びラクトン等の公知の熱安定剤等が使用できる。
ヒンダードフェノールとしては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン及びN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド等が挙げられる。
リン含有化合物としては、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト及びビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジファスファイト等が挙げられる。
ラクトンとしては、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン-2−オンとキシレンの反応性生物等が挙げられる。
これらの中でも成形性の観点から、ヒンダードフェノールが好ましい。樹脂組成物(C)中の熱安定剤の含有量は、吸液性樹脂の吸液力の観点から、重合体(A)の重量を基準として、0.5〜10重量%が好ましい。
【0086】
滑剤としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪族アルコール及びパラフィン等の公知の滑剤が使用できる。
脂肪酸アミドとしては、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド及びp−フェニレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、ラウリン酸メチル、ステアリン酸オクチル、牛脂硬化油及びヒマシ硬化油等が挙げられる。
脂肪酸としては、ステアリン酸及びリノレン酸等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、ステアリルアルコール及びラウリルアルコール等が挙げられる。
パラフィンとしては、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス等が挙げられる。
これらの中でも成形性の観点から、脂肪族アルコールが好ましい。樹脂組成物(C)中の滑剤の含有量は、重合体(A)の重量を基準として、成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、0.05〜5重量%が好ましい。
【0087】
ブロッキング防止剤として具体的には、ワックス、有機微粉末及び無機微粉末等が挙げられる。ワックスは、パラフィンロウ、モンタンロウ、カルナバワックス、ペヘニン酸アミド及びステアリン酸アミド等が挙げられ、有機微粉末としては、架橋化アクリル微粉末、架橋化ポリスチレン微粉末、ペンゾクアナミン―ホルムアルデヒド縮合物微粉末、塩化ビニリデン重合体微粉末及びテフロン(登録商標)微粉末等が挙げられ、また、無機微粉末としては、シリカ微粉末、炭酸カルシウム及び酸化アルミニウム等が挙げられる。
これらの中でも、成形性の観点から、無機微粉末が好ましく、さらに好ましくはシリカ微粉末等である。樹脂組成物(C)中のブロッキング防止剤の含有量は、成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、重合体(A)の重量を基準として、0.05〜5重量%が好ましい。
【0088】
さらに、本発明の樹脂組成物(C)は、水、メタノール、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びエタノール等の溶媒を含んでもよい。樹脂組成物(C)中の溶媒の含有量は、成形性及び吸液性樹脂の吸液力の観点から、樹脂組成物(C)の重量を基準として、0.1〜20重量%が好ましい。
【0089】
樹脂組成物(C)の製造方法としては、前述の方法により重合体(A)を製造する方法が挙げられる。さらに必要により架橋剤(B)、有機過酸化物(D)、添加剤(E)及び溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させる場合には、これらを混合すればよい。
(B)、(D)、(E)及び溶媒を混合する方法としては、
(1)(A)の前駆体{モノマー又はカチオン置換する前の重合体}と混合する。
(2)(A)と混合する。
が挙げられる。
(1)において、前駆体と混合する場合、混合後、カチオン置換を行って、樹脂組成物(C)が得られる。
(2)において、(A)を溶液としてから、混合してもよい。
また、(1)及び(2)において、必要により(B)、(D)、(E)は溶液又は分散液として混合してもよい。
これらのうち、吸液性樹脂の吸液力の観点から、(2)が好ましい。
【0090】
樹脂組成物(C)の溶融粘度としては、樹脂の成形性の観点から、100〜20,000Pa・sが好ましく、さらに好ましくは200〜10,000Pa・s、次にさらに好ましくは400〜5,000Pa・sである。溶融粘度は、120℃、剪断速度100sec-1の条件で測定され、キャピログラフ(例えば、キャピラリーレオメーターPD−C型、東洋精機社製)によって測定できる。
【0091】
樹脂組成物(C)の固形分は、成形性の観点から、80〜100重量%であり、さらに好ましくは90〜100重量%、次にさらに好ましくは95〜99重量%である。固形分は下記の方法で測定される。
固形分が80重量%未満では、樹脂組成物の成形性が悪くなる。
【0092】
[固形分の測定法]
試料M(g)(約5〜10g)を秤量し、真空乾燥機(例えばバキュームドライングオーブンVO−620、アドバンテック社製)に入れ、100℃、100キロパスカルの減圧下で2時間乾燥させた後、重量N(g)を測定する。以下の式により固形分を算出する。
固形分(重量%)={(M−N)/M}×100
【0093】
樹脂組成物(C)のゲル化率は、0〜40%であり、成形性の観点から、0〜20%が好ましく、さらに好ましくは0〜10%である。ゲル化率は下記の方法で測定される。
ゲル化率が40%を超えると、樹脂組成物の成形性が悪くなる。
【0094】
[ゲル化率の測定法]
試料P(g)(約1.0g)を秤量し、1.5Lのポリ瓶中で約1Lのイオン交換水と試料を混合し、マグネティックスターラー(長さ2.5cm のバー)を入れ、回転数300rpmにて4時間撹拌した後、試料を60メッシュの金網で濾過し、さらに過剰(約3L)のイオン交換水を流す。次に、金網上のろ過ケーキを取り出し、真空乾燥機(例えばバキュームドライングオーブンVO−620、アドバンテック社製)に入れ100℃、100キロパスカルの減圧下で2時間乾燥させた後、重量Q(g)を測定する。以下の式によりゲル化率を算出する。なお、試料の固形分(重量%)は、前述の測定方法により求められる値である。

ゲル化率(%)={Q/(P×固形分)}×10000
【0095】
樹脂組成物(C)を80℃、5MPa、30分間の条件で加圧加熱後のゲル化率は、成形性の観点から、0〜20%が好ましく、さらに好ましくは0〜10%、次にさらに好ましくは0〜5%である。また、樹脂組成物(C)を170℃、5MPa、30分間の条件で加圧加熱後のゲル化率は、成形性の観点から、70〜100%が好ましく、さらに好ましくは80〜100%、次にさらに好ましくは90〜100%である。
加圧加熱後のゲル化率は下記の方法で測定される。
【0096】
〔加圧加熱後のゲル化率の測定法〕
試料3gをテフロン(登録商標)シート(厚さ0.2mm、寸法20cm×20cm)で挟み、熱プレス機(ケーブルタイプテストプレスSA−302,テスター産業社製)にて80℃(又は170℃)、5MPa、30分間、の条件で加熱加圧プレスを行った後、前述の方法でゲル化率を求める。
【0097】
ゲル化率を0〜40%の範囲に調整する方法は、(C)の組成により異なる。(C)の組成としては、下記(1)〜(3)の場合が挙げられる。
(1)(C)が架橋剤(B)及び/又は有機過酸化物(D)を含有する場合
(2)(C)が(B)及び(D)を含まず、重合体(A)が熱架橋性を有する構成単位(b)を含有する場合
(3)(C)が(1)、(2)のいずれでもない場合
(1)及び(2)は(C)が熱架橋性を有するため、(C)を架橋しにくい温度で製造することが好ましい。製造時の温度として、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜110℃である。さらに、(B)、(D)は、製造時の温度で架橋しにくいものであり、且つ製造時の温度以上で架橋するものを選定することが好ましい。
(3)は熱架橋性を有さないため、放射線で架橋する必要がある。この場合、好ましいゲル化率を得るための制限は特にない。
【0098】
本発明の樹脂組成物(C)を、加熱及び/又は放射線照射による架橋方法で架橋することで吸液性樹脂が製造できる。
【0099】
加熱による架橋方法とは、樹脂組成物(C)を100℃以上に加熱して熱架橋する方法であり下記(1)〜(3)の方法が挙げられる。
(1)重合体(A)の官能基間で架橋する方法
・重合体(A)が構成単位(a)と構成単位(b)を含有し、構成単位(a)の官能基と構成単位(b)の官能基が互いに反応して架橋する。
この場合の(b)の官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基が挙げられる。
・重合体(A)が構成単位(a)と構成単位(b)を含有し、構成単位(b)の官能基同士が互いに反応して架橋する。
この場合の(b)の官能基としては、アミド基が挙げられる。
【0100】
(2)架橋剤(B)を用いる方法
・重合体(A)が構成単位(a)を含有し、構成単位(a)の官能基と架橋剤(B)の官能基が反応して架橋する。
・重合体(A)が構成単位(a)と構成単位(b)を含有し、構成単位(a)の官能基及び/又は構成単位(b)の官能基と架橋剤(B)の官能基が反応して架橋する。
【0101】
(3)有機過酸化物(D)を用いる方法
・加熱により有機過酸化物(D)からラジカルを発生させ重合体(A)の有する炭素原子間を架橋する。
【0102】
放射線照射による架橋方法とは、樹脂組成物(C)に紫外線、電子線、γ線及びマイクロウエーブ等の放射線を照射して(C)を架橋する方法である。これらの中でも、架橋性の観点から電子線による照射が好ましい。
【0103】
樹脂組成物(C)の架橋方法の中でも、成形性の観点から、加熱して熱架橋する方法が好ましく、さらに好ましくは架橋剤(B)を用いる方法である。
【0104】
本発明の吸液性樹脂の製造方法は、樹脂組成物(C)の成形性の観点から、(C)を成形した後に架橋することが好ましい。
成形方法としては射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、カレンダー成形及び熱成形等があげられる。これらの中で、成形性の観点から、押出成形が好ましい。
【0105】
押出成形は、熱可塑性樹脂における慣用の方法、シート成形、パイプ成形、フィルム成形及び異形成形等が含まれる。
【0106】
また、成形時に発泡させてもよく、発泡方法についても、熱可塑性樹脂における慣用の方法が用いられる。例えば、下記(1)〜(3)の方法等が用いられる。
(1)樹脂組成物(C)の製造の段階で発泡剤を予め添加する、又は(C)の製造後に成形に供する段階で発泡剤を添加する等、(C)に発泡剤を含有させ、(C)を発泡させる方法
(2)上記(1)と同様に(C)に発泡剤を添加し、成形後に発泡させる方法
(3)成形の段階で、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、エタン、ヘプタン、エチレン、プロピレン及び石油エーテル等の炭化水素、メタノール及びエタノール等のアルコール、メチルクロライド、メチレンクロライド、ジクロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン及びトリクロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素、並びに二酸化炭素、窒素、アルゴン及び水等の物理発泡剤を注入して発泡させる方法
【0107】
上記(1)及び(2)に使用される発泡剤としては、アゾジカーボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド、p−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーン等の有機発泡剤、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム及びクエン酸等の無機発泡剤を使用することができる。
発泡剤の含有量は、吸液性樹脂の吸液力の観点から、吸液性樹脂の重量を基準として、0.1〜20重量%が好ましい。
また、得られた吸液性樹脂発泡体の見掛け密度は 0.2〜0.6g/cm3が好ましく、さらに好ましくは0.3〜0.5g/cm3である。見掛け密度はJIS K7222:2005に準拠して測定される。
【0108】
上記の方法により成形した後に、樹脂組成物(C)を所定の温度で加熱処理及び/又は所定量の放射線の照射を行う。
【0109】
加熱処理により架橋する場合、樹脂組成物の成形性と熱安定性の観点から、樹脂組成物は架橋を起こしにくい温度で成形することが好ましい。成形時の温度としては、樹脂組成物の成形性と熱安定性の観点から、100〜150℃が好ましく、さらに好ましくは110〜140℃、次にさらに好ましくは120〜130℃である。また、加熱架橋時の温度は、成形時と同様の観点から、130〜200℃が好ましく、さらに好ましくは140〜190℃、次にさらに好ましくは150〜180℃である。
【0110】
放射線を照射して架橋する場合、樹脂組成物は成形可能な温度であればよく、成形時及び架橋時の温度は、樹脂組成物の成形性と熱安定性の観点から、100〜200℃が好ましく、さらに好ましくは120〜180℃、次にさらに好ましくは130℃〜170℃である。
【0111】
本発明の製造方法で得られる吸液性樹脂の、水、メタノール、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びエタノール等からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の液体に対する吸液量は、吸液力の観点から、10〜1,000g/gが好ましく、さらに好ましくは30〜900g/g、次にさらに好ましくは50〜500g/gである。各種液体に対する吸液量は下記の方法により測定される。
[吸液量の測定法]
ナイロン製の網袋(250メッシュ、20cm×10cm)に吸液性樹脂の試料X(g)(約0.1gを秤量)を入れ、これを袋ごと対象となる過剰(2L)の液体に浸す。浸漬3時間後に袋ごと空中に引き上げ、静置して30分間液体切りした後、重量Y(g)を測定する。また、網袋のみを用いて同様の操作を行い、この重量Z(g)を測定する。なお、測定において対象となる液体の温度は25℃±1.0℃である。

吸液量(g/g)=(Y−Z)/X
【0112】
本発明の樹脂組成物(C)は架橋することで、又は成形後に架橋することで、フィルム、繊維、発泡シート及び肉厚成形品等の所望の形状の吸液性樹脂を得ることができる。また、(C)は熱可塑化が可能であるため、他の熱可塑性樹脂と溶融混練によって容易に混合することができる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例で本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
実施例1
重量平均分子量25万のポリアクリル酸35重量%水溶液(シグマ−アルドリッチ社製)137.2gに、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩(分子量:187)の45重量%メタノール溶液(三洋化成工業社製)194.0gを添加し、カルボキシル基の一部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンで置換した後、ロータリーエバポレーターを用いて80℃、減圧度100キロパスカル、3時間で副生したメタノール及び二酸化炭素を留去した。このポリマー溶液にヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液2.3gを添加し、混合・撹拌した後、減圧乾燥機を用いて100キロパスカルの減圧下で80℃、3時間乾燥した。乾燥物を粉砕し、重量平均粒子径1000μmの樹脂組成物(1)(固形分濃度:99重量%)を得た。
なお、重量平均粒子径は、測定試料の粒度分布を測定し、対数確率紙{横軸:粒径、縦軸:累積含有量(重量%)}に、累積含有量と粒子径との関係をプロットし、累積含有量が50重量%に対応する粒子径を求めることにより得られる。以下の実施例及び比較例においても同様である。粒度分布は、JIS Z8815−1994に準拠して測定され、内径150mm、深さ45mmのふるい{目開き:2100μm、1700μm、1400μm、1180μm、1000μm、850μm、710μm、500μm、300μm、150μm及び106μm}を、目開きの狭いふるいを下にして重ね、一番上の最も目開きの広い2100μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定した。
【0115】
実施例2
実施例1において、乾燥温度を110℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(2)を得た。
【0116】
実施例3
実施例1において、乾燥温度を120℃に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(3)を得た。
【0117】
実施例4
実施例1において、乾燥時間を30分に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(4)を得た。
【0118】
実施例5
実施例1において、乾燥時間を1時間に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(5)を得た。
【0119】
実施例6
実施例1において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩の45重量%メタノール溶液194.0gを110.9gに変更し、ヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液2.3gの代わりにグリセリン2.4g及び数平均分子量1万のポリエチレングリコール(PEG−10000、三洋化成工業社製)の20重量%水溶液12.0gを添加した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(6)を得た。
【0120】
実施例7
実施例1において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩の45重量%メタノール溶液194.0gの代わりに、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムのモノメチル炭酸塩(分子量203)の60重量%メタノール溶液(三洋化成工業社製)158.0gを使用した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(7)を得た。
【0121】
実施例8
実施例1において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩の45重量%メタノール溶液194.0gを277.2gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(8)を得た。
【0122】
実施例9
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸160.0gと水610.0gを混合し、モノマー水溶液を作成した。このモノマー水溶液に窒素を通じて溶存酸素を低減した後、ウォーターバスを用いて、モノマー水溶液を85℃に加熱し、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸の5重量%水溶液30gを重合開始剤溶液として滴下し、加熱還流しながら重合した。生成したポリマー水溶液中に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩の45重量%メタノール溶液を321.2g添加し、スルホン酸基を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンで置換した後、ロータリーエバポレーターを用いて80℃、減圧度100キロパスカル、3時間で副生したメタノール及び二酸化炭素を留去した。このポリマー溶液にヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液2.7gを添加し、混合・撹拌した後、減圧乾燥機を用いて100キロパスカルの減圧下で80℃、3時間乾燥した。乾燥物を粉砕し、重量平均粒子径1000μmの樹脂組成物(9)を得た。
【0123】
実施例10
実施例1において、重量平均分子量25万のポリアクリル酸35重量%水溶液の代わりに、重量平均分子量15万のポリアクリル酸35重量%水溶液(シグマ−アルドリッチ社製)を使用し、ヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液2.3gを4.6gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(10)を得た。
【0124】
実施例11
実施例1において、重量平均分子量25万のポリアクリル酸35重量%水溶液(シグマ−アルドリッチ社製)137.2gの代わりに、重量平均分子量100万のポリアクリル酸(和光純薬社製)の20重量%水溶液240.1gを使用し、さらにヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液を添加した後に、数平均分子量1万のポリエチレングリコール(PEG−10000、三洋化成工業社製)の20重量%水溶液12.0gを添加した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(11)を得た。
【0125】
実施例12
エタノール150g中に重量平均分子量17万のイソブチレン/無水マレイン酸共重合体(イソバン−10、クラレ社製)50gを投入し、50℃、300rpmで3時間撹拌し均一に溶解させた。この溶液に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩(分子量:187)の45重量%メタノール溶液(三洋化成工業社製)242.9gを添加し、カルボキシル基の一部を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンで置換した後、ロータリーエバポレーターを用いて80℃、減圧度100キロパスカル、3時間で副生したメタノール及び二酸化炭素を留去した。このポリマー溶液にテトラエチレングリコール6.3gを添加し、混合・撹拌した後、減圧乾燥機を用いて100キロパスカルの減圧下で80℃、3時間乾燥した。乾燥物を粉砕し、重量平均粒子径1,000μmの樹脂組成物(12)を得た。
【0126】
実施例13
実施例1において、ヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液2.3gを0.7gに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(13)を得た。
【0127】
実施例14
実施例1において、ヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液に代えて、エチレングリコールジグリシジルエーテル10重量%水溶液3.5gを使用し、乾燥条件を80℃、3時間の代わりに30℃、10時間とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(14)を得た。
【0128】
実施例15
実施例1において、ヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液2.3gを添加した後に、アゾジカルボンアミド(永和化成工業製、商品名:ビニルホールAC#3)の10重量%N,N’−ジメチルホルムアミド溶液48.0gを添加した以外は実施例1と同様にして樹脂組成物(15)を得た。
【0129】
実施例16
実施例12において、アゾジカルボンアミドの代わりに、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニル)ヒドラジド(永和化成工業製、商品名:ネオセルボンN#5000)を使用した以外は実施例12と同様にして樹脂組成物(16)を得た。
【0130】
実施例17
樹脂組成物(1)3gを、テフロン(登録商標)シート(厚さ0.2mm、寸法20cm×20cm)で挟み、熱プレス機(ケーブルタイプテストプレスSA−302,テスター産業社製)にて160℃、10Mpa、30分間の条件で加熱加圧プレス成形し、厚さ100μmのフィルム状の吸液性樹脂(17)を得た。
【0131】
実施例18〜29
実施例17において、樹脂組成物(1)の代わりに樹脂組成物(2)〜(13)を使用した以外は実施例17と同様にして厚さ100μmのフィルム状の吸液性樹脂(18)〜(29)を得た。
【0132】
実施例30
樹脂組成物(14)3gを、テフロン(登録商標)シート(厚さ0.2mm、寸法20cm×20cm)で挟み、熱プレス機(ケーブルタイプテストプレスSA−302,テスター産業社製)にて160℃、10Mpa、30分間の条件で加熱加圧プレス成形したが、厚さ100μmのフィルム状の吸液性樹脂は得られず、厚さ800μmのフィルム状の吸液性樹脂(30)を得た。
【0133】
実施例31
樹脂組成物(15)3gを、テフロン(登録商標)シート(厚さ0.2mm、寸法20cm×20cm)で挟み、熱プレス機(ケーブルタイプテストプレスSA−302,テスター産業社製)にて120℃、10Mpa、30分間の条件で加熱加圧プレス成形後、循風乾燥機で160℃、60分間加熱し、厚さ250μm、見掛け密度0.40g/cm3の発泡シート状の吸液性樹脂(31)を得た。
【0134】
実施例32
実施例31において、樹脂組成物(15)を樹脂組成物(16)に変更した以外は実施例31と同様にして厚さ290μm、見掛け密度0.35g/cm3の発泡シート状の吸液性樹脂(32)を得た。
【0135】
比較例1
実施例1において、ヘキサメチレンジアミン10重量%水溶液に代えて、エチレングリコールジグリシジルエーテル10重量%水溶液3.5gを使用した以外は実施例1と同様にして比較の樹脂組成物(R1)を得た。
【0136】
比較例2
実施例1において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩の45重量%メタノール溶液194.0gに代えて、水酸化ナトリウム48重量%水溶液38.9gを使用した以外は実施例1と同様にして比較の樹脂組成物(R2)を得た。
【0137】
比較例3
実施例1において、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンのモノメチル炭酸塩の45重量%メタノール溶液194.0gを55.3gに変更した以外は実施例1と同様にして比較の樹脂組成物(R3)を得た。
【0138】
比較例4
比較例1で得た樹脂組成物(R1)3gをテフロン(登録商標)シート(厚さ0.2mm、寸法20cm×20cm)で挟み、熱プレス機(ケーブルタイプテストプレスSA−302,テスター産業社製)にて160℃、30分間、10MPaの条件で、加熱加圧プレス成形を行ったが、フィルム状へ成形することができなかった。比較例1で得た樹脂組成物(R1)を、さらに粉砕し重量平均粒子径370μmの比較の吸液性樹脂(R4)を得た。
【0139】
比較例5
比較例4において、樹脂組成物(R1)を比較例2で得た樹脂組成物(R2)に変更した以外は比較例4と同様にして行ったが、フィルム状へ成形することができなかった。比較例2で得た樹脂組成物(R2)を、さらに粉砕し重量平均粒子径370μmの比較の吸液性樹脂(R5)を得た。
【0140】
比較例6
比較例4において、樹脂組成物(R1)を比較例3で得た樹脂組成物(R3)に変更した以外は比較例4と同様にして行ったが、フィルム状へ成形することができなかった。比較例3で得た樹脂組成物(R3)を、さらに粉砕し重量平均粒子径370μmの比較の吸液性樹脂(R6)を得た。
【0141】
実施例1〜16で得られた樹脂組成物(1)〜(16)及び比較例1〜3で得られた比較の樹脂組成物(R1)〜(R3)について、重合体(A)のオニウムカチオン置換率を表1に示す。また、重合体(A)の重量平均分子量、樹脂組成物のゲル化率及び樹脂組成物の固形分の測定結果を表1に示す。
【0142】
実施例17〜32で得られた吸液性樹脂(17)〜(32)及び比較例4〜6で得られた比較の吸液性樹脂(R4)〜(R6)について、得られた吸液性樹脂の形状を表2に示す。また、吸液性樹脂の水、メタノール、エタノールに対する吸液量の測定結果を表2に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
表2の結果から、本発明の樹脂組成物は、フィルム形状及び発泡体状に成形できることが分かる。実施例17〜29では厚さ100μmのフィルム状の吸液性樹脂組成物が得られたが、実施例30では厚さ800μmのフィルム状のものが得られた。このことから、実施例17〜29の方が厚さが薄いフィルムが得られることが分かる。実施例31及び32では見掛け密度が0.35〜0.40g/cm3の発泡シート状の吸液性樹脂が得られることが分かる。また、水、メタノール、エタノールに対する吸液量は、比較の吸液性樹脂(R1)及び(R2)と比較して、同等以上であることが分かる。比較の吸液性樹脂(R2)に対しては、実施例の吸液性樹脂は水に対する吸液量は劣るが、メタノール、エタノールに対する吸液量が極めて優れることが分かる。
【0146】
一方、比較の樹脂組成物(R1)は本発明のゲル化率を満たさず、比較の樹脂組成物(R2)及び(R3)は本発明のオニウムカチオン置換率を満たさない。表2の結果から、これら比較の樹脂組成物は、フィルム形状に成形できなかったことが分かる。
【0147】
したがって、本発明の樹脂組成物は、比較の樹脂組成物に対して、極めて成形性に優れることがわかる。
また、吸液量については、メタノール、エタノールに対する吸液量が同等以上であることが分かる。水に対する吸液量は、ナトリウムイオンで置換した比較例(R2、R5)には劣り、その他の比較例に対しては同等以上である。比較例(R2、R5)のものはメタノール、エタノールに対しては吸液性を示さないので、種々の対象に対する吸液性という観点で、本発明のものが優れる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の樹脂組成物は、必要により成形した後、架橋することで、フィルム、繊維、発泡体、シート及び肉厚成形品等の所望の形状の吸液性樹脂を得ることができ、得られた吸液性樹脂は水、メタノール、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、及びエタノール等の各種液体に対して高い吸液力を示すことから、水膨潤性ゴム、帯電防止剤、創傷被覆材、ゲル電解質フィルム、固体燃料、電池用バインダー、芳香・消臭剤の担持体及び吸水性バインダー等の幅広い用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記重合体(A)を含んでなる樹脂組成物であって、樹脂組成物の固形分が80〜100重量%であり、樹脂組成物のゲル化率が0〜40%である樹脂組成物(C)。
重合体(A):カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらの官能基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換された官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する構成単位(a)を(A)の重量を基準として20〜100重量%含有してなり、以下の式により示される(A)のオニウムカチオン置換率が30〜100モル%である重合体。
オニウムカチオン置換率(モル%)=[(A)中のオニウムカチオンのモル数]÷[(A)中のカルボキシル基、スルホン酸基並びにこれらの官能基のプロトンがオニウムカチオン又はアルカリ金属カチオンで置換された官能基の合計のモル数]×100
【請求項2】
重合体(A)がアミノ基、ヒドロキシル基、不飽和基、アミド基、ニトリル基、ハロゲン基、アルキル基、カルボン酸アルキルエステル基、スルホン酸アルキルエステル基、エーテル基及びフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する構成単位(b)を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、架橋剤(B)、有機過酸化物(D)及び添加剤(E)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなる請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物を80℃、5MPa、30分間の条件で加圧加熱後のゲル化率が0〜20%であり、170℃、5MPa、30分間の条件で加圧加熱後のゲル化率が70〜100%である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
オニウムカチオンが第4級アンモニウムカチオンである請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
第4級アンモニウムカチオンが、脂肪族アンモニウムカチオン、イミダゾリニウムカチオン及びイミダゾリウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の吸液性樹脂形成性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物を加熱及び/又は放射線照射による架橋方法で架橋する工程を含む吸液性樹脂の製造方法。
【請求項8】
樹脂組成物を成形した後に架橋する工程を含む請求項7に記載の吸液性樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−159390(P2010−159390A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104778(P2009−104778)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】