説明

樹脂組成物及び成形品

【課題】物性を保ちつつ成形収縮率と線膨張係数を抑えたポリプロピレン系樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂60〜98重量%、ポリスチレン系樹脂1〜20重量%、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂1〜20重量%からなり、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の合計100重量部に対して、相容化剤0.1〜40重量部、無機フィラー1〜300重量部から成るポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂中にポリスチレン系樹脂が均一に微分散した、収縮性を抑制し線膨張が小さい寸法精度に優れたポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性、成形性等に優れており、電気製品、自動車部品等の様々な工業分野で広く利用されている。しかし、ポリプロピレンは結晶性樹脂のため、成形収縮率が大きく成形時の寸法精度に欠ける。また、線膨張係数も約11と大きく、真夏の直射日光に晒されるような過酷な状況下において使用されているインストルメンタルパネル(以後インパネ)等の自動車内装部品では成形品が変形してしまうなどの問題が起こる。また、変形を抑えるために硬質な部材で裏打ちをするなどの対策がなされているが、樹脂自体は変形しようとするため劣化を起こして割れやひび等が生じ、外観上の不具合や機械物性の低下に繋がるという問題があった。一方、ポリスチレンは高剛性で、非晶性樹脂のため、寸法安定性が良いが、耐薬品性、耐溶剤性に欠ける、またハンドリングが難しいなどの欠点があった。したがって、これらの樹脂の欠点を補完すべく、両樹脂を溶融混練されているが両樹脂の相容性は非常に悪く、耐衝撃性を著しく低下させてしまう。両者の相容性を改善するためスチレン系のブロックコポリマーやグラフトポリマーなどが使われている。ポリマーアロイが作られイージーピールシーラント材などとして使われている、しかしインパネで必要とされているような耐衝撃性、剛性などを物性のバランスが取れた素材ではない。また、衝撃性を改善するためポリフェニレンエーテル樹脂などを添加した材料も開発されているが十分な効果を得られていない。
【特許文献1】特開平6−41366号公報
【特許文献2】特許第3319789号公報
【特許文献3】特表2007−500781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリプロピレン系樹脂(フィラー入りポリプロピレン系樹脂)の物性を落とすことなく、寸法精度を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、ポリプロピレン系樹脂60〜98重量%、ポリスチレン系樹脂1〜20.0重量%、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂1〜20重量%からなり、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の合計100重量部に対して、相容化剤0.1〜40重量部、無機フィラー1〜300重量部から成るポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【0005】
また本発明は、上記相容化剤がスチレン共重合体であるポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【0006】
さらに本発明は、上記のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて得られる成形品に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は成形収縮率および線膨張係数が低く優れた寸法精度を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においてプロピレン系樹脂としては、プロピレンホモポリマーや、プロピレン由来のモノマー単位を50モル%以上含むプロピレン系共重合体をあげることができる。共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。好ましく用いられるプロピレン系共重合体の例としては、エチレンまたは炭素原子数4〜10のα−オレフィンとプロピレンとの共重合体を挙げることができる。炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−ヘキセンおよび1−オクテンが挙げられる。プロピレン系共重合体中のプロピレン以外のモノマー単位の含有量は、エチレンについては15モル%以下、炭素原子数4〜10のα−オレフィンについては30モル%以下であることが好ましい。プロピレン系樹脂は1種類でもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0009】
また、当該ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS K7210に規定された方法にて測定。測定温度230℃、測定荷重2160g荷重)の測定値としては、パイプ、シート、フィルム成形品用は0.1〜10g/10min.、射出成形品用は1〜100g/10min.の範囲が望ましい。メルトフローレート測定が困難なワックス状重合体は成形品としての機械的強度が発現できないため好ましくない。
【0010】
本発明において用いられるポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、ゴム成分にスチレン系単量体が重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリスチレン系グラフト又はブロック共重合体などが含まれる。ポリスチレン系グラフト共重合体としては、ゴム成分に少なくともスチレン系単量体および共重合性単量体がグラフト重合した共重合体(例えば、ポリブタジエンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したABS樹脂、アクリルゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したAAS樹脂、塩素化ポリエチレンにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したACS樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体にスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合した重合体、エチレン−プロピレンゴムにスチレン及びアクリロニトリルをグラフト重合したAES樹脂、ポリブタジエンにスチレンとメタクリル酸メチルをグラフト重合したMBS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムにスチレン及びアクリルニトリルがグラフト重合した樹脂)などが挙げられる。ポリスチレン系ブロック共重合体としては、ポリスチレンブロックとジエン又はオレフィンブロックとで構成された共重合体(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体)などが挙げられる。これらのスチレン系樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0011】
本発明においては、中でも好ましくは、ポリスチレン、ゴム成分にスチレン系単量体が重合した耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂が用いられ、より好ましくは、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体が用いられる。
【0012】
ポリスチレン系樹脂は線膨張率が小さく、特にGPPS樹脂の線膨張率が約7(×10−5/℃)とポリプロピレン系樹脂と比較して小さく寸法安定性に優れている。本発明においては線膨張率の小さいポリスチレン系樹脂を添加することでポリプロピレン系樹脂の線膨張を低下させることを目的としている。
【0013】
本発明において、直鎖状低密度ポリエチレンは特にメタロセン系触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(以下、メタロセンLLDPEと記す)であることが好ましい。メタロセンLLDPEは分子量分布を狭く制御出来るので、低結晶化に伴うベトツキ性、融点の必要以上の低下、成形時の発煙が抑えられ、エラストマ−的性能を具備しており好ましい。
【0014】
メタロセン系触媒とは、例えばチタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、ニオブ、プラチナ等の四価の遷移金属に、シクロペンタジエニル骨格を有するりリガンドが少なくとも1つ以上配位する触媒の総称である。
【0015】
シクロペンタジエニル骨格を有するリガンドとしては、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−若しくはi−プロピルシクロペンタジエニル基、n−、i−、sec−、tert−ブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基、オクチルシクロペンタジエニル基等のアルキル一置換シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、メチルヘキシルシクロペンタジエニル基、エチルブチルシクロペンタジエニル基、エチルヘキシルシクロペンタジエニル基等のアルキル二置換シクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基等のアルキル多置換シクロペンタジエニル基、メチルシクロヘキシルシクロペンタジエニル基等のシクロ置換キルシクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基等が挙げられる。
【0016】
シクロペンタジエニル骨格を有するリガンド以外のリガンドとしては、例えば、塩素、臭素等の一価のアニオンリガンド、二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素基、アルコキシド、アミド、アリールアミド、アリールオキシド、ホスフィド、アリールホスフィド、シリル基、置換シリル基等が挙げられる。上記炭化水素基としては、炭素数1〜12程度のものが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基、シクロへキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、ネオフィル基等のアラルキル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
【0017】
シクロペンタジエニル骨格を有するリガンドが配位したメタロセン化合物としては、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)インデニルチタニウムビス(ジ−n−プロピルアミド)等が挙げられる。
【0018】
これらの重合は、上記した四価の遷移金属を含むメタロセン系触媒の他に、共触媒として、例えば、メチルアルミノキサンや硼素化合物等を加えた触媒系で行うことができる。この場合、メタロセン系触媒に対するこれらの触媒の割合は、1〜100万mol倍であることが好ましい。
【0019】
メタロセンLLDPEが非架橋樹脂であるにも係わらず、その柔軟性が優れている理由は、結晶部分同志を結合するポリマー鎖(タイ分子)の存在があるためと考えられる。架橋ゴム弾性体は常温・成形時を問わずポリマー分子間にて3次元網目構造であるため、柔軟性は向上するものの流動性に関しては悪化させる原因となっているが、メタロセンLLDPEの場合、成形温度では通常のポリエチレン同様、ポリマー鎖は自由に運動出来る状態にあるため、結果として流動性を悪化させないことが大きな差となっている。しかしながら常温付近では結晶成長と同時にポリマー結晶同志を結合させうるタイ分子が生成するため、結果として擬似的な架橋構造を有したプラスチックを形成し、ゴム弾性が向上するため柔軟性が得られるものと考えられる。
【0020】
本発明における相容化剤とはポリプロピレン系樹脂および直鎖状低密度ポリエチレンとポリスチレン系樹脂を相容化させるために用いられる。本発明においてはポリスチレン系樹脂を寸法安定性の改善のために用いるがポリプロピレン系樹脂と単純に混練するだけでは分散せず、物性を著しく劣化させてしまう。効果を発現させるためには相容化させることが必要となる。
【0021】
本発明に用いられる相容化剤としてはポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂および直鎖状低密度ポリエチレンのポリオレフィン系樹脂とを相容化させる機能を有するもので有れば特に限定されないが、その例として、分子内にポリスチレン成分とポリオレフィン成分を合わせもつものを挙げることができる。例えば、Aがポリスチレンあるいはポリスチレンとの共重合体、好ましくはポリスチレン、Bがポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを主体としたエチレン・α−オレフィン共重合体、水素化ポリブタジエン、水素化ポリイソプレン等からなるA−B型ブロック共重合体、Aグラフト化B共重合体及びBグラフト化A共重合体等を挙げることができる。更に、B重合体成分にAがランダムに導入された共重合体、具体的には、例えば下記に挙げるエチレン−スチレンランダム重合体の様にポリエチレンからなるB重合体成分にA単量体成分、即ちスチレンモノマーがランダムに導入された共重合体等も挙げることができるが、物性のバランスからA−B型ブロック共重合体を使用するのが好ましい。ここで、Bは、単一であっても良いし、又、2つ以上の組み合わせであっても良い。
【0022】
これらの具体的な例としては、ポリスチレングラフトポリプロピレン、スチレン−ブタジエンあるいはイソプレンブロック共重合体、スチレン−水素添加ブタジエンあるいはイソプレンブロック共重合体、エチレン−スチレンランダム共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンランダム共重合体等を挙げることができる。これらの中でも、特に、スチレン−水素添加ブタジエンあるいはイソプレンブロック共重合体は、それそのものが相容化剤としての役割を果たすと同時に、耐衝撃性を補助的にアップする効果も有り、且つ耐候性にも優れる為に、最も好ましい。なお、本発明におけるポリスチレン系樹脂と相容化剤は違う組成のものを使用する。
【0023】
本発明で使用する無機フィラーとしては、針状、繊維状、板状、鱗片状のフィラーはいずれも使用することができ、その例としてはタルク、マイカ、ゾノトライト、酸化チタン、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、カーボンウィスカー、ウィスカー、グラファイト、カーボンブラック、導電性金属繊維等が挙げられる。特に、色および物性バランスなどの面からタルクを用いるのが好ましい。
【0024】
本発明で使用される無機フィラーは、その目的に反しない限り、各種処理剤で表面処理されてもよい。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤系、高級脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、不飽和有機酸またはその誘導体、有機チタネート系、樹脂酸系、ポリエチレングリコールエーテルなどの各種処理剤での化学的または物理的表面処理を上げることができる。
【0025】
本発明で使用する無機フィラーは曲げ弾性率と線膨張率を小さくすることなどによる寸法安定性を改善するために用いられる。また、相容化剤または相容化助剤としても効果を示す。
【0026】
線膨張率とは熱膨張率のうち温度の上昇に対応して長さが変化する割合のことを言い、熱膨張率は温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合を1℃当たりで示したものである。ノンフィラーのポリプロピレン樹脂の線膨張率は約11(×10−5/℃)程度である。
【0027】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃助剤、架橋剤等の通常プラスチックの加工の際に常用されている添加剤を加える事が出来る。また、使用し得る着色剤に特に制限はなく、例えばカーボンブラックアゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン、又はメチン系等の各種有機顔料等が挙げられる。
【0028】
さらに本発明における樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、他の核形成剤等の各種添加剤が配合されていても良い。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、相容化剤、無機フィラーを配合し、エクストルーダー、ニーダー、ロールミル、バンバリミキサー等の混練機を用いて得られる。
本発明の樹脂組成物は、成形品製造の際に希釈樹脂と混合して成形されるいわゆるマスターバッチであってもよいし、また、そのままの組成で成形されるコンパウンドであってもよい。
本発明の樹脂組成物の形状は特に規定しないが、マスターバッチとして使用される場合は共に混合される希釈樹脂の形状と同一であれば加工時の分離発生防止などの点から好ましい。
【0030】
本発明の樹脂成形品は、樹脂組成物がマスターバッチの場合は、成形品製造の際に希釈樹脂としてポリプロピレン系樹脂と混合して成形される。希釈樹脂として使われるポリプロピレン系樹脂は主にタルクを配合してなるフィラー入りポリプロピレン系樹脂である。また、コンパウンドの場合はそのままの組成で成形される。
【0031】
本発明でマスターバッチを作成する場合はポリスチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、相容化剤、無機フィラーからなるポリプロピレン樹脂を含まないマスターバッチを作成し、希釈時にポリプロピレン樹脂を配合し樹脂成形物を作成しても構わない。
【0032】
成形品の成形方法は、一般のプラスチックと同様の射出成形、押し出し成形、中空成形、回転成形、粉末成形、真空成形、圧縮成形等、公知の方法が挙げられる。
【0033】
成形品の具体例としては機械部品、精密部品、電気・電子機器部品、日用雑貨類、工業部品、繊維、容器、キャップ、フィルム、テープ等が挙げられる。これらは積層構造を有していても良い。更に詳しくは自動車のダッシュボード、コンソール、ドア内張り、ピラー、開閉ハンドルノブ、フロアカーペット、シートカバー等の内装材、バンパー、ドア開閉ハンドルノブ、給油口フタ、フェンダー、ドアミラー、マッドガード等の外装品、弁当箱等が挙げられる。
【0034】
[実施例]
次に、本発明を具体的に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本実施例において使用した原料を以下に示す。
【0035】
ポリプロピレン系樹脂:カルプ工業社製、カルプ4700G
ポリスチレン系樹脂:PSジャパン社製、PSJポリスチレンGP679
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂:住友化学社製、エクセレンFX CX5508
相容化剤A:クラレ社製、SEPS セプトン2002(スチレンブロック共重合体)
相容化剤B:日本油脂社製、モディパーA3400(スチレングラフト共重合体)
無機フィラー:日本タルク社製、タルク ミクロエースP−2
【0036】
(マスターバッチの製造)
表1に示した配合でポリスチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、相容化剤、無機フィラーを均一混合し、二軸押出機(池貝社製PCM30;スクリュ径約30mm、L/D約42)を用い、スクリュ回転数250rpmにて溶融混練してマスターバッチ(MB)を得た。溶融混練の際の設定温度は230℃で行った。
【0037】
(物性試験)
上記マスターバッチとポリプロピレン系樹脂を表1記載の配合比で射出成形機(東芝機械社製IS−100F型)を用い成形温度は220℃、金型温度40℃で、ASTMで規定される試験片が共取りできるように設計された金型を用い成形を行った。成形後の試験片はアイゾット衝撃試験(ASTM D256)、曲げ弾性率(ASTM D790)、熱変形温度(ASTM D648)の機械物性試験を行った。得られた物性を表1に示す。
【0038】
(線膨張係数の測定)
ASTM D696に準拠して線膨張係数(単位:mm/mm/%)を測定した。セイコーインスツルメンツ社製TMA(TMA120)を用いて窒素雰囲気下で測定温度範囲は23〜80℃とし測定した。得られた物性を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、相容化剤、無機フィラーを用いた実施例1〜4のポリプロピレン系樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度、曲げ弾性率、熱変形温度を比較例1のベース樹脂並みに保ちつつ線膨張係数を小さく抑えることが出来たのに対し、比較例2、4のポリプロピレン系樹脂組成物は相容化剤を用いなかったためアイゾット衝撃強度保てず、また、比較例3は無機フィラーを用いなかったことにより曲げ弾性率を保てず全てが良好となるものは得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂60〜98重量%、ポリスチレン系樹脂1〜20重量%、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂1〜20重量%からなり、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の合計100重量部に対して、相容化剤0.1〜40重量部、無機フィラー1〜300重量部から成るポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
相容化剤がスチレン共重合体である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて得られる成形品。


【公開番号】特開2008−231129(P2008−231129A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67995(P2007−67995)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】