説明

樹脂組成物及び樹脂組成物の製造方法

【課題】 可塑剤のブリードも無く外観に優れ、且つ機械強度に優れる柔軟な樹脂組成物、好ましくは更に生分解性、易焼却性といった好ましい性質を有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)脂肪族−芳香族共重合ポリエステル系樹脂、(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂、及び(A)+(B)の合計量100重量部に対して、(C)芳香族カルボン酸成分及び脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤を10〜150重量部配合してなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤のブリードも無く外観に優れ、且つ機械強度に優れる柔軟な樹脂組成物、好ましくは更に生分解性、易焼却性といった好ましい性質を有する樹脂組成物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリ乳酸系や脂肪族ポリエステル系樹脂などのいわゆる生分解性樹脂と言われる樹脂が、注目されている。これらの樹脂は、土中又は微生物環境下において微生物分解性を有する点や、一部樹脂は植物由来の原料を利用できる点で利点を有するが、一方で、従来の汎用樹脂、例えばポリエチレン樹脂や塩化ビニル系樹脂などと比べると、圧倒的に柔軟性のレベルが低く、これらの汎用樹脂の代替としては殆ど利用されておらず極めて限定的な用途製品にしか適用されていないのが現状である。
【0003】
これら生分解性のポリエステル系樹脂としては、大きく分類して、ポリ乳酸系、ポリブチレンサクシネート等のサクシネート系、ポリカプロラクトン系、脂肪族−芳香族ポリエステル系、等の樹脂種が知られている。しかし各々の樹脂の物性(透明性や樹脂の硬さ、添加剤との相性など)は大きく違う。
中でも生分解性樹脂の一つであるポリ乳酸は、近年大量にかつ安価に製造されるようになってきたため、その利用拡大が期待されている。しかし、ポリ乳酸は、樹脂そのものの性質が硬質のポリスチレン樹脂に類似した性質を有するなど柔軟性や耐衝撃性に劣るため、ポリ乳酸を対象として柔軟化を目的とした可塑剤も提案されているが、可塑剤を添加しても柔軟性のレベルは低く、柔軟性を要求されるフィルムや包装材料には適しているとは言い難い。
一方、サクシネート系、ポリカプロラクトン系、脂肪族―芳香族ポリエステル系などは比較的柔軟性を有する樹脂としてゴミ袋、食品などの包装材料、などに使用されているが、いまだ汎用のポリエチレン樹脂や塩化ビニル系樹脂などに要求されている柔軟性のレベルには到達しておらず、更なる柔軟性が求められている。
【0004】
たとえば脂肪族−芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステル系樹脂およびポリカプロラクトン系樹脂からなる3成分系樹脂に可塑剤を添加した組成物をフィルム化した生分解性フィルムに関する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、可塑剤の添加量が20重量%を超えると可塑剤がブリードアウトするため充分な柔軟性の付与にはいたっていない。
また、ポリ乳酸と脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂に可塑剤と無機質充填剤を配合した組成物からなるフィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしこの公知文献記載の可塑剤では可塑剤の添加量が限られ、十分な柔軟性を備えたフィルムが得られていないのが実情である。
【0005】
一方、本発明者は本発明に先立って、かかる柔軟性を備えた樹脂組成物を得るため種々樹脂や添加剤の組み合わせ検討を行い、特定の樹脂(A)と特定の可塑剤(C)の組み合わせによる樹脂組成物により極めて柔軟性が高い樹脂組成物が得られることを見出し、出願している(特願2004−55224号)。しかしながら、樹脂(A)と可塑剤(C)との組み合わせだけでは引張破断強度に代表される機械物性が若干不十分であった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−201351号公報
【特許文献2】特開2002−327107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、従来の汎用樹脂、例えばポリエチレン系樹脂や塩化ビニル系樹脂に近い柔軟性と機械強度を有する生分解性樹脂組成物を得るため、各樹脂種と種々の可塑性付与物質の組み合わせを多数行い鋭意検討した結果、特定の樹脂種と可塑剤の組み合わせ、即ち(A)脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂と(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂と(C)特定の可塑剤を特定比率で含有する樹脂組成物とすると、柔軟性が高くかつ機械物性が向上した樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達したものである。また、更に好ましくは特定の製造方法を用いると、前記物性の優れた樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の要旨は(1)(A)脂肪族−芳香族共重合ポリエステル系樹脂、(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂、及び(A)+(B)の合計量100重量部に対して、(C)芳香族カルボン酸成分及び脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤を10〜150重量部配合してなる樹脂組成物、又は、(A)脂肪族−芳香族共重合ポリエステル系樹脂及び(C)芳香族カルボン酸成分と脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤を含有する組成物を混合した後に該混合物を(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂に混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法、に存する。
【0009】
更に好ましくは、(2) 上記(1)に記載の(A)と(B)の重量比率(A/B)が90/10〜20/80であることを特徴とする樹脂組成物、(3) 上記(1)に記載の(C)芳香族カルボン酸成分と脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤が、安息香酸エステル、フタル酸アルキルベンジル、及び、フタル酸ジアルコキシアルキル、からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の可塑剤であることを特徴とする上記(1)又は上記(2)に記載の樹脂組成物、(4) 上記(1)に記載の(B)樹脂として、(B1)ポリ乳酸系樹脂を必須として配合してなる樹脂組成物であって、引張破断伸びが500%以上であることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物、(5) 上記(1)に記載の(B)樹脂として、(B2)脂肪族ポリエステル系樹脂を必須として配合してなる樹脂組成物であって、引張破断強度が5MPa以上であることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の樹脂組成物、(6) 該樹脂組成物のA/Bの重量比が70/30〜30/70の範囲で、かつA/Cの重量比が70/30〜30/70であることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物、(7) 該樹脂組成物の100%モジュラス値が8MPa以下であることを特徴とする(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂組成物、にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可塑剤のブリードも無く外観に優れ、且つ機械強度に優れる柔軟な樹脂組成物、好ましくは更に生分解性、易焼却性といった好ましい性質を有する樹脂組成物とその製造方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明するが、本発明はこの形態に限られるわけではない。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として(A)脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂と(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂とを必須とし、可塑剤成分として特殊な可塑剤(C)を必須とすることを特徴とする。
【0012】
<(A)脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂>
本発明において用いる(A)脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールとの共重合により得られるポリエステルが使用できる。脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、たとえば、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸などがあり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などがあり、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが使用できる。
【0013】
脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの好ましい組み合わせとしてはコハク酸/テレフタル酸/ブタンジオール、コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール、コハク酸/イソフタル酸/ブタンジオール、コハク酸/イソフタル酸/エチレングリコール、アジピン酸/テレフタル酸/ブタンジオール、アジピン酸/テレフタル酸/エチレングリコール、アジピン酸/イソフタル酸/ブタンジオール、アジピン酸/イソフタル酸/エチレングリコール等の組み合わせが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸/芳香族ジカルボン酸の共重合比率は、モル比で、通常1/0.02〜1/5程度、特に1/0.05〜1/2程度であることが好ましい。
このような脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂の具体例としては、BASF社製「ECOFLEX」、EASTMAN CHEMICAL社製「EASTAR BIO」、DuPONT社製「BIOMAXS」等が挙げられる。
【0014】
<(B1)ポリ乳酸系樹脂>
本発明でいうB樹脂成分としては、(B1)ポリ乳酸系樹脂または(B2)脂肪族系ポリエステル系樹脂(B2)、それらの混合物を用いることができる。
(B1)ポリ乳酸系樹脂としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸またはそれらの混合物、ラクチドなどのホモポリマー又はコポリマーをいい、これらの原料から直接脱水縮合またはラクチドの開環重合などによって製造することができるが、製法は特に限定されない。また、ポリ乳酸の性質を損なわない程度に、乳酸以外の他のヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸等を共重合してもかまわない。
得られるポリ乳酸としては、D−乳酸単位が約10%以下でL−乳酸単位が約90%以上、またはL−乳酸単位が10%以下でD−乳酸単位が90%以上で、光学純度が約80%以上の結晶性ポリ乳酸と、D−乳酸単位が10%〜90%で、L−乳酸単位も10%〜90%で、光学純度が約80%未満の非晶質ポリ乳酸とがあるが、本発明で用いるポリ乳酸は、特に好ましくは非晶部を有するものであって、L−乳酸単位が20%以下、D−乳酸単位が80%以上又はその組成比が逆であるポリ乳酸を用いると好ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)は、1万〜100万程度が好ましく、3万〜60万程度がより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の具体例としては、株式会社島津製作所製「LACTY」、三井化学株式会社製「レイシア」などが挙げられる。又は脂肪族系ポリエステル系樹脂(B2)
【0015】
<(B2)脂肪族ポリエステル系樹脂>
(B2)脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを主成分として、その他脂肪族ヒドロキシカルボン酸等を種々組み合わせて合成されるポリエステルであって生分解性を有するものである。具体的には、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、等が挙げられる。また、テレフタル酸やカーボネート等を共縮合した変性脂肪族ポリエステルであってもよい。
具体例としては、昭和高分子株式会社製の「ビオノーレ」、三菱化学株式会社製の「GS Pla」等が挙げられる。
【0016】
<(C)特定可塑剤>
本発明の樹脂組成物では、前記樹脂と組み合わせて、特定の可塑剤、即ち芳香族カルボン酸成分と脂肪族アルコール成分を必須とするエステル系可塑剤を用いることを特徴とする。
芳香族カルボン酸成分と脂肪族アルコール成分を必須とするエステル系可塑剤としては、特に好ましくは、安息香酸エステル(好ましくは安息香酸と脂肪族多価アルコールのエステル)、フタル酸と脂肪族アルコール及び芳香族アルコールとのエステル(好ましくはフタル酸アルキルベンジル)、及び、フタル酸と脂肪族アルコールとのエステル(好ましくはフタル酸ジアルコキシアルキル)、からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の可塑剤を用いることが挙げられる。この中でも特に、安息香酸と脂肪族二価アルコールとのエステルが、好ましく挙げられる。
【0017】
本発明で用いる可塑剤の一種である安息香酸エステルは、安息香酸と脂肪族多価アルコールのエステル、中でも好適には二価アルコールの安息香酸エステルが挙げられる。二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2−メチルー1,3−プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチルプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ベンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられ、その一種または二種以上の混合物を用いることができるが、特にジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロピレングリコールが好ましい。
【0018】
本発明で用いる可塑剤の一つであるフタル酸と脂肪族アルコール及び芳香族アルコールとのエステルは、好適にはフタル酸アルキルベンジルであり、フタル酸アルキルベンジルのアルキルを構成する一価アルコールとしては、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナール、n−デカノール、ウンデカノール、3−(ブチリルオキシ)−1−イソプロピル−2,2−ジメチルプロパノール、3−(ブチリルオキシ)−4−メチル−2,2−ジメチルペンタノールなどが挙げられ、その一種または二種以上の混合物を用いることができるが、特にn−ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、3−(ブチリルオキシ)−1−イソプロピル−2,2−ジメチルプロパノール、3−(ブチリルオキシ)−4−メチル−2,2−ジメチルペンタノールが好ましい。
【0019】
本発明で用いる可塑剤の一種であるフタル酸と脂肪族アルコールとのエステルの中、好適なフタル酸ジアルコキシアルキルは、一価アルコールのフタル酸エステルであり、一価アルコールとしては、例えばメトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノール、メトキシブタノール、エトキシブタノール、プロポキシブタノール、ブトキシブタノール、メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノール、プロポキシエトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエトキシエタノール、ブトキシエトキシエトキシエタノール、エトキシブトキシブトキシブタノール、ブトキシブトキシブトキシブタノールなどが挙げられ、その一種または二種以上の混合物を用いることができるが、特にブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、ブトキシエトキシエトキシエタノールが好ましい。
【0020】
このような芳香族カルボン酸成分と脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤としては、具体的には、ジェイ・プラス社製「JP120」、「OBzP」、「D180」、「DBMP」、フェロー社「BBP」などがある。
これらの可塑剤は、可塑剤自体としても生分解性能を有するものが多く、好ましい。
【0021】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物においては、(A)脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂、及び(B)ポリ乳酸系樹脂又は脂肪族ポリエステル系樹脂を含有する樹脂成分の合計重量部100重量部に対して、(C)芳香族カルボン酸成分及び脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤を、10重量部〜150重量部含有することを特徴とする。特に好ましい実施態様としては、該可塑剤を25重量部〜140重量部含有すること、好ましくは35重量部以上130重量部以下、更に好ましくは40重量部以上130重量部以下含有することが挙げられる。可塑剤の添加量が少ないと可塑化効果が不十分となり柔軟性を付与できない。逆に多い場合には可塑剤のブリードアウトの原因となる。
【0022】
従来、通常の生分解性樹脂組成物(ポリ乳酸系樹脂や、脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂)に関する技術においては、たいてい可塑剤の添加量は、樹脂100重量部に対して、3〜20重量部程度とされていたが、本発明の特定の樹脂と特定の可塑剤の組み合わせによれば、意外にも脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して、25重量部以上、例えば100重量部の可塑剤添加が可能であり、その結果、従来得られなかった極めて柔軟性の高い領域の生分解性樹脂組成物を得ることができる。
【0023】
更に本発明において、樹脂成分に含まれる(A)脂肪族―芳香族共重合ポリエステル系樹脂と(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂との配合割合は、A/Bとして、90/10〜20/80(重量%)であり、特に好ましくは85/15〜25/75(重量%)の範囲であることが好ましい。特にA/B比が90/10〜55/45の範囲の場合には、引張伸びが600%以上を達成できるため好ましい。また引張強度も5MPa以上となる。一方、A/B比が55/45〜20/80の範囲の場合には、引張強度が8MPa以上を達成できるため好ましい。また、引張伸びも300%以上を達成できる。更に、A/Bが30/70〜70/30で且つ、A/C比が30/70〜70/30である樹脂組成物であって、特に好ましくはB成分としてB1(ポリ乳酸系樹脂)を用いたを樹脂組成物においては、100%モジュラス値が5MPa以下であり、かつ引張破断伸びが400%以上(更に好ましくは引張破断強度が10MPa以上)を達成することができる。
【0024】
また、本発明において、樹脂成分として(A)脂肪族―芳香族共重合ポリエステル系樹脂と(B1)ポリ乳酸系樹脂を必須とする樹脂組成物によれば、引張破断伸びが500%以上(かつ引張破断強度が5MPa以上で、100%モジュラス値が5MPa以下)を達成することができる。
【0025】
一方、樹脂成分として(A)脂肪族―芳香族共重合ポリエステル系樹脂と(B2)脂肪族ポリエステル系樹脂を必須とする樹脂によれば、引張破断強度が8MPa以上(かつ100%モジュラスが10MPa以下)を達成することができる。
【0026】
また、本発明において、樹脂成分として(A)脂肪族―芳香族共重合ポリエステル系樹脂と(B1)ポリ乳酸系樹脂と(B2)脂肪族ポリエステル系樹脂との3樹脂成分を必須とする態様も好ましく用いられる。この場合、B1/B2の比は、90/10〜10/90の範囲から任意に選択しうる。
【0027】
<製造方法>
本願発明の樹脂組成物の製造方法の特に好ましい製造方法は、下記のとおりである。すなわち、(A)脂肪族−芳香族共重合ポリエステル系樹脂成分にまず(C)特定可塑剤成分を含有せしめて混合物を作成し、その後に該混合物を(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂に混合する製造方法である。このような製造方法は、特に特定可塑剤成分を樹脂合計量100重量部に対して25重量部以上、好ましくは35重量部以上という多量を含有せしめた樹脂組成物において好ましい。
【0028】
<樹脂組成物物性>
上記のようにして得られる本発明の樹脂組成物は、特に好ましくは下記の特定範囲の物性を有するものである。
柔軟性の指標の一つである100%モジュラス値が8.0MPa以下、好ましくは5.0MPa。この値が低いほど柔軟性であることを示す。最下限は特に限定されないが、好ましくは0.5MPa以上である。
引張破断強度が、2〜30MPa、好ましくは5〜25MPa。
引張伸びが300〜1000%、特に好ましくは400〜950%。
硬度が90以下、好ましくは80以下。
なお、本願発明でいう100%モジュラス値、引張破断強度、引張伸びは、JIS K6723に従い、2号型試験片をオートグラフにより200mm/minの割合で引張り、伸びが100%になったときの応力(100%モジュラス値)、切断時の応力(引張破断強度:抗張力)、および伸び(引張伸び)の測定により得られる。
また、硬度は、40mm角、厚み2mmのプレス成形品を3枚重ねたものをサンプルとして、JIS K6253に従い、タイプA型デュロメータを用い、1kgの荷重を掛けた際の直後の値を測定することにより得られる。
【0029】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、生分解性樹脂組成物に通常添加されるその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。このような成分として、例えば改質剤、結晶核剤、香料、抗菌剤、顔料、染料、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、強化剤、アンチブロッキング剤、難燃剤等が挙げられる。
また、本発明の特定の樹脂以外の樹脂成分、本発明の特定の可塑剤以外の可塑剤成分を添加することも可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜3、参考例1)
下記(1)記載の樹脂及び可塑剤を用いて、表−1に示す配合組成比により、下記(2)に示す方法により樹脂組成物を作成し、(3)に示す方法により評価を行った。
【0031】
(1)配合組成
樹脂A:脂肪族ー芳香族ポリエステル系樹脂(BASF社製 商品名「エコフレックス」)
樹脂B1−1:結晶性ポリ乳酸系樹脂 (三井化学社製 商品名「レイシア H100」)
樹脂B1−2:非結晶性ポリ乳酸系樹脂 (三井化学社製 商品名「レイシア H280」)
樹脂B2:ポリブチレンサクシネート系樹脂 (三菱化学社製 商品名「GS−Pla AZ81T」
可塑剤C:安息香酸エステル系可塑剤 (ジェイ・プラス社製 商品名「JP120」)
可塑剤D:アセチルクエン酸トリブチル (ジェイ・プラス社製 商品名「ATBC」)
可塑剤E:アジピン酸系エステル可塑剤 (ジェイ・プラス社製 商品名「D343」)。
【0032】
(2)組成物及び試験片の作成
樹脂Aと可塑剤Cをヘンシェルミキサー(80℃)で混合し、可塑剤を樹脂Aに含浸させた混合物を得た。更にその後、該混合物に常温下で樹脂Bを加え1分間攪拌することにより混合物を得た。ついでこれを同方向2軸押出機(口径30mm、L/D=30)を用いて160℃の温度条件下で混練・造粒し、ペレットを得た。得られたペレットをプレス成形機(温度180℃、加圧下150kgf/cm2、加圧時間3分)で厚み0.3mmのシートに成形した。
【0033】
(3)評価
下記1.2.3.の試験を行い、4.の総合評価を行った。その結果を表―1に示す。また、引張試験結果の概要を示すグラフを図1に示す。この図1は、各実施例等の100%モジュラス値と引張破断時の伸びと強度をプロットし、間を直線でつないだグラフであり、実際のヒステリシスではないが、近似の挙動を示すものである
1.引張試験
JIS K6723の2号型試験片をオートグラフにより200mm/minの割合で引っ張り、伸びが100%になったときの応力(100%モジュラス値)、切断時の応力(引張破断強度)および伸び(引張破断伸び)を測定した。
2.硬度試験
40mm角、厚み2mmのプレス成形品を3枚重ねたものをサンプルとして、JIS K6253に従い、タイプA型デュロメータを用い、1kgの荷重を掛けた際の直後の値を測定した。
3.表面状態
得られたプレスシートから10cm×10cmの試料を作成し、25℃、相対湿度50%で1週間放置した後の表面状態を観察した。
○:可塑剤が全くブリードしていない
△:可塑剤がややブリードしている
×:可塑剤のブリードが著しい
【0034】
【表1】

【0035】
(4)結果
表―1及び図ー1に示すように、従来技術を示す比較例1(樹脂Aに可塑剤C以外の可塑剤を多めに添加した樹脂組成物)では、可塑剤のブリードアウトが著しいため、引張試験を行うことができなかった。比較例2(樹脂B1に従来の可塑剤を添加した樹脂組成物)では、引張破断伸び等の伸びが低く、硬かった。比較例3(樹脂B2に従来の可塑剤を添加した樹脂組成物)では、100%モジュラス値が高く伸びが悪かった。更に、参考例1として示す例(樹脂Aに可塑剤Cを添加した樹脂組成物)では、100%モジュラス値で示す伸び特性は良いものの、引張破断伸び及び引張破断強度が、不足していた。
【0036】
これに対し、本発明の樹脂組成物、すなわち、特定樹脂成分(A)及び(B)と特定可塑剤(C)を必須とする樹脂組成物の例(実施例1〜5)においては、100%モジュラス値が10MPa以下、硬度90以下と柔軟性が高く、引張破断特性に見られる機械強度にも優れ、かつ可塑剤のブリードも無く外観に優れた樹脂組成物が得られた。
特に樹脂成分として(B1)ポリ乳酸系樹脂を必須とした例(実施例1、2、5)では、引張破断伸び500%以上を達成することができた。また、樹脂成分として(B2)脂肪族ポリエステル系樹脂を必須とした例(実施例3、4)では引張破断強度を5MPa以上を達成することができている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例比較例で得られた引張試験の結果の概要を示すためのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族−芳香族共重合ポリエステル系樹脂、(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂、及び(A)+(B)の合計量100重量部に対して、(C)芳香族カルボン酸成分及び脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤を10〜150重量部配合してなる樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の(A)と(B)の重量比率(A/B)が90/10〜20/80であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の(C)芳香族カルボン酸成分と脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤が、安息香酸エステル、フタル酸アルキルベンジル、及び、フタル酸ジアルコキシアルキル、からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の可塑剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の(B)樹脂として、(B1)ポリ乳酸系樹脂を必須として配合してなる樹脂組成物であって、引張破断伸びが500%以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の(B)樹脂として、(B2)脂肪族ポリエステル系樹脂を必須として配合してなる樹脂組成物であって、引張破断強度が5MPa以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
該樹脂組成物のA/Bの重量比が70/30〜30/70の範囲で、かつA/Cの重量比が70/30〜30/70であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
該樹脂組成物の100%モジュラス値が8MPa以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)脂肪族−芳香族共重合ポリエステル系樹脂及び(C)芳香族カルボン酸成分と脂肪族アルコール成分を有するエステル系可塑剤を含有する組成物を混合した後に該混合物を(B)ポリ乳酸系樹脂または脂肪族ポリエステル系樹脂に混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−57053(P2006−57053A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242756(P2004−242756)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(500587920)アプコ株式会社 (12)
【出願人】(000176774)三菱化学エムケーブイ株式会社 (29)
【Fターム(参考)】