説明

樹脂組成物

【課題】 機械的強度に優れ、樹脂製品の軽量化を図ることのできる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン60〜80重量%と、エチレンプロピレンゴム10〜20重量%と、硫酸マグネシウムウィスカ3〜8重量%と、タルク3〜8重量%とを混合することによって樹脂組成物を得る。そして、この樹脂組成物は、自動車のバンパー、インストルメントパネル、ドアトリム、ピラーなどの自動車内外装材、建築資材、日用品などの成形品として好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、詳しくは、自動車の内外装材などの各種樹脂製品として好適に用いられる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のバンパーやインストルメントパネルなどの自動車の内外装材には、ポリプロピレンを主成分として含有する樹脂組成物が用いられている。
そのような樹脂組成物として、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体(結晶性ポリプロピレン)54〜68重量%と、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー24〜34重量%と、チタン酸カリウムウィスカ2〜4重量%と、タルク5〜9重量%とを含有する樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−316360号公報(実施例1〜8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の樹脂組成物では、十分な機械的強度を得ることができず、さらなる物性の向上が望まれている。
また、自動車の内外装材では、機械的強度の向上を図りつつ、なるべく軽い製品が望まれている。
本発明の目的は、機械的強度に優れ、樹脂製品の軽量化を図ることのできる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン60〜80重量%と、エチレンプロピレンゴム10〜20重量%と、硫酸マグネシウムウィスカ3〜8重量%と、タルク3〜8重量%とを含有することを特徴としている。
また、本発明の樹脂組成物では、硫酸マグネシウムウィスカの平均繊維径が、0.3〜0.8μmであり、平均繊維長が10〜20μmであることが好適である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の樹脂組成物によれば、硫酸マグネシウムウィスカを3〜8重量%含有させることにより、機械的強度を向上させることができるとともに、密度を小さくすることができる。そのため、本発明の樹脂組成物は、機械的強度に優れ、樹脂製品の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレンと、エチレンプロピレンゴムと、硫酸マグネシウムウィスカと、タルクとを含有している。
本発明で用いられるポリプロピレンは、プロピレン単位を50モル%を超過して含有するポリマーであって、例えば、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとα−オレフィンとのブロック共重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0007】
α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
プロピレンとα−オレフィンのブロック共重合体としては、例えば、プロピレンの単独重合ユニットとエチレン・プロピレンの共重合ユニットとからなるエチレン・プロピレンブロック共重合体が挙げられる。プロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレンのランダム共重合体が挙げられる。また、これらの共重合体は、少量のエチレン単独重合ユニットを含んでいてもよい。
【0008】
また、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体において、プロピレン単位の含有量は、80モル%以上であることが好ましい。
また、ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、例えば、温度230℃、荷重21.2NにおけるMFRが30〜50g/10minである。
そして、本発明の樹脂組成物には、上記したポリプロピレンが60〜80重量%含有され、好ましくは70〜80重量%含有されている。
【0009】
本発明で用いられるエチレンプロピレンゴムは、50モル%を超過するエチレン単位と、プロピレン単位とを含有する共重合体であれば、特に制限されず、例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、およびこれらの混合物などが挙げられる。
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体におけるジエン単位としては、例えば、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)などが挙げられる。
【0010】
また、エチレンプロピレンゴムのメルトフローレート(MFR)は、例えば、温度230℃、荷重21.2NにおけるMFRが0.5〜10g/10minである。
そして、本発明の樹脂組成物には、上記したエチレンプロピレンゴムが10〜20重量%含有され、好ましくは10〜15重量%含有されている。
本発明で用いられる硫酸マグネシウムウィスカは、硫酸マグネシウムからなるひげ状結晶(ウィスカの定義については、JIS R1600参照。)であって、その表面が処理されたものであってもよいし、無処理の状態のものであってもよい。
【0011】
硫酸マグネシウムウィスカを表面処理するための処理剤としては、例えば、カップリング剤が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)−シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルキャップトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシ・シクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのシラン系カップリング剤、ジイソステアロリルエチレンチタネートなどのチタネート系カップリング剤などが挙げられる。
【0012】
上記のようなカップリング剤による硫酸マグネシウムウィスカの表面処理方法としては、例えば、乾式法、湿式法など公知の方法が挙げられる。
硫酸マグネシウムウィスカの平均繊維径は、0.3〜0.8μmであり、好ましくは0.4〜0.7μmである。また、硫酸マグネシウムウィスカの平均繊維長は、10〜20μmであり、好ましくは14〜20μmである。なお、平均繊維径および平均繊維長は、例えば、顕微鏡観察などの公知の方法によって求めることができる。硫酸マグネシウムの平均繊維径および平均繊維長が上記した範囲であると、少量のウィスカで、樹脂組成物の機械的強度を維持しながら、樹脂組成物により得られる樹脂製品の外観を向上させることができる。
【0013】
そして、本発明の樹脂組成物には、上記した硫酸マグネシウムウィスカが3〜8重量%含有され、好ましくは3〜6重量%含有されている。硫酸マグネシウムウィスカの含有量が3重量%よりも少ないと、樹脂組成物の機械的強度が低下する場合があり、含有量が8重量%よりも多いと、樹脂組成物の密度が大きくなる場合がある。また、樹脂組成物に含有されるウィスカが、硫酸マグネシウム以外のウィスカであると、樹脂組成物の機械的強度の向上を図ることが困難となる。
【0014】
本発明で用いられるタルクは、表面が処理されたものであってもよいし、無処理の状態のものであってもよい。
タルクを表面処理するための処理剤としては、カップリング剤、界面活性剤などが挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、上記したカップリング剤が挙げられる。
【0015】
界面活性剤としては、例えば、非イオン性(ノニオン性)界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤など公知の界面活性剤が挙げられる。
上記のような処理剤によるタルクの表面処理方法としては、例えば、上記した乾式法、湿式法など公知の方法が挙げられる。
タルクの平均粒子径は、例えば、8〜16μmであり、好ましくは10〜14μmである。なお、平均粒子径は、例えば、遠心沈降式粒度分布測定法など公知の方法によって求めることができる。
【0016】
そして、本発明の樹脂組成物には、タルクが3〜8重量%含有され、好ましくは3〜6重量%含有されている。
また、本発明の樹脂組成物には、上記した成分以外に、必要により熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、離型剤、滑剤などの公知の添加剤が含有されていてもよい。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0017】
そして、本発明の樹脂組成物は、ポリプロピレン、エチレンポリプロピレンゴム、硫酸マグネシウム、タルクおよび必要により添加剤を混合することにより得ることができる。
混合方法としては、上記した成分を均一に混合することができれば特に制限されず、例えば、溶融混練など公知の方法が挙げられる。溶融混練するための装置としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなど公知の混練装置が挙げられる。
【0018】
また、溶融混練の方法としては、ポリプロピレン、エチレンポリプロピレンゴム、硫酸マグネシウム、タルクおよび必要により添加剤を一括して混練する方法が挙げられる。
このようにして得られる樹脂組成物は、JIS K 7112(1999年)に準拠して測定される密度が、例えば、0.99〜1.02g/cmであり、好ましくは、0.99〜1.00g/cmである。
【0019】
また、JIS K 7171(1994年)に準拠して測定される樹脂組成物の曲げ弾性率は、例えば、2100〜2750MPaであり、好ましくは、2500〜2700MPaである。
また、例えば、温度230℃、荷重21.2Nにおける樹脂組成物のMFRは、25〜35g/10minである。
【0020】
また、JIS K 7110(1999年)に準拠して測定される樹脂組成物のノッチ付き試験片のアイゾット衝撃強さ(試験温度:−30℃)は、40〜70J/m、好ましくは、50〜70J/mである。
つまり、本発明の樹脂組成物によれば、硫酸マグネシウムウィスカを3〜8重量%含有させることにより、機械的強度(曲げ弾性率、アイゾット衝撃強さなど)を向上させることができるとともに、密度を小さくすることができる。そのため、本発明の樹脂組成物は、機械的強度に優れ、樹脂製品の軽量化を図ることができる。その結果、樹脂製品を薄肉化することができ、樹脂製品の製造に要する組成物の量を低減できるので、製造コストを低減することができる。
【0021】
さらに、硫酸マグネシウムウィスカの含有により、樹脂製品の外観を向上させることもできる。
よって、本発明の樹脂組成物は、公知の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、発泡成形、圧縮成形、ブロー成形などにより成形して、例えば、自動車のバンパー、インストルメントパネル、ドアトリム、ピラーなどの自動車内外装材、建築資材、日用品などの樹脂製品として好適に用いることができる。とりわけ、自動車のバンパー(外装材)およびインストルメントパネル(内装材)の両方に好適に用いることができる。その結果、自動車の内外装材に関して、用途別に樹脂組成物を調製する必要がなくなるので、自動車の内外装材の製造設備(例えば、樹脂組成物を貯留するタンク)を一まとめにすることができる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
以下の原料を用いた。
1)ポリプロピレン
日本ポリプロ株式会社製 MFR:35g/10min(230℃ 21.2N荷重)
2)エチレンプロピレンゴム
JSR株式会社製 樹脂ブレンド用ゴム MFR:0.8g/10min(230℃ 21.2N荷重)
3)ウィスカ
(a)硫酸マグネシウム(MgSO)ウィスカ
宇部マテリアルズ株式会社製 モスハイジ 平均繊維径0.5μm 平均繊維長15μm シラン系カップリング剤による表面処理済
(b)チタン酸カリウム(KO・nTiO)ウィスカ
大塚化学株式会社製 ティスモ 平均繊維径0.4μm 平均繊維長15μm
(c)ホウ酸アルミニウム(9Al・2B)ウィスカ
四国化成工業株式会社製 アルボレックス 平均繊維径1.0μm 平均繊維長20μm
(4)タルク
富士タルク工業株式会社製 平均粒子径12μm
(5)添加剤
紫外線吸収剤および老化防止剤
実施例1および比較例1〜6
上記した原料を、下記の表1に示す処方において、200℃で溶融混練して、樹脂組成物のペレットを得た。
【0023】
【表1】

【0024】
評価実験
実施例および比較例により得られた樹脂組成物について、以下の方法により物性試験を行なった。結果を表1に示す。
(1)密度
樹脂組成物のペレットを溶融し、溶融した樹脂組成物を押し出す(射出する)ことにより、樹脂組成物のシートを作製した。そして、このシートから試験片を切り出し、JIS K 7112(1999年)に準拠して測定した。
(2)曲げ弾性率
樹脂組成物のペレットを溶融し、溶融した樹脂組成物を押し出す(射出する)ことにより、樹脂組成物のシートを作製した。そして、このシートから試験片を作製し、JIS K 7171(1994年)に準拠して測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン60〜80重量%と、エチレンプロピレンゴム10〜20重量%と、硫酸マグネシウムウィスカ3〜8重量%と、タルク3〜8重量%とを含有することを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
硫酸マグネシウムウィスカの平均繊維径が、0.3〜0.8μmであり、平均繊維長が10〜20μmであることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−24293(P2010−24293A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185072(P2008−185072)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】