説明

樹脂被覆金属板およびその製造方法

【課題】 溶接性、耐食性、加工性に優れる樹脂被覆金属板の提供
【解決手段】 本発明の樹脂被覆金属板は、導電性粒子を含有する樹脂層が金属板の表面に設けられている樹脂被覆金属板であって、前記樹脂層の膜厚をt(μm)、前記導電性粒子の体積平均粒子径をr(μm)及び前記導電性粒子の累積粒子径分布における累積率84%の粒子径をd84(μm)、累積率16%の粒子径をd16 (μm)としたときに、前記膜厚t(μm)、前記体積平均粒子径r(μm)、前記粒子径d84(μm)及びd16(μm)が下記式を満足することを特徴とする。
2.0≦t≦16・・・(1)
0.25t≦r≦2t・・・(2)
SD=(d84−d16)/2≦0.8r・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆金属板およびその製造方法に関するものであり、より詳細には、自動車用防錆塗装鋼板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車メーカのワックス、シール工程省略によるコストダウンに対応するボナジンクのようなZn粒を含有した有機皮膜被覆鋼板が、穴あき12年保証できる鋼板として欧州自動車メーカで使用されている。最近では、さらなる高耐食化の要求に応えるべく、導電性粒子としてリン化鉄を含有した有機皮膜被覆鋼板が検討されている(例えば、特許文献1及び2)。リン化鉄を含有する有機皮膜被覆鋼板は、Zn粒タイプに比べて、安価で、耐傷つき性、加工部の耐食性などが良好で、溶接連打点が高いというメリットがある。
【0003】
しかし、リン化鉄の導電性粒子は、硬く安定な物質のため、有機皮膜との密着性が低い。その結果、加工時に、有機皮膜が剥離して金型をいためるという問題がある。また、リン化鉄の皮膜中の含有量を下げれば加工時の皮膜剥離は解消されるものの、今度は溶接性が確保できないという問題が発生する。このようにリン化鉄の導電性粒子を含有する有機皮膜被覆鋼板は、今だ実用レベルには至っていないのが現状である。
【特許文献1】特開平11−5269号公報
【特許文献2】特開平11−216420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記課題について、かねてより研究を進めており、その研究の一環として特願2003−131825のような技術を提案している。この技術では、導電性粒子としてリン化鉄を採用し、耐食性、溶接性、加工性を同時に高めた溶接可能性樹脂被覆金属板を提案している。しかしながら、上記樹脂被覆金属板においても場合によっては、加工時のリン化鉄の剥離性を発揮できないという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、溶接性、耐食性だけでなく、加工性、特に耐剥離性に優れた樹脂被覆金属板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂被覆金属板は、導電性粒子を含有する樹脂層が金属板の表面に設けられている樹脂被覆金属板であって、前記樹脂層の膜厚をt(μm)、前記導電性粒子の体積平均粒子径をr(μm)及び前記導電性粒子の累積粒子径分布における累積率84%の粒子径をd84(μm)、累積率16%の粒子径をd16(μm)としたときに、前記膜厚t(μm)、前記体積平均粒子径r(μm)、前記粒子径d84(μm)及びd16(μm)が下記式を満足することを特徴とする。
2.0≦t≦16・・・(1)
0.25t≦r≦2t・・・(2)
SD=(d84−d16)/2≦0.8r・・・(3)
まず、本発明では、導電性粒子を含有する樹脂層の膜厚tを2.0μm以上16μm以下とする。樹脂層の膜厚は、製造コスト、溶接性、耐食性などに影響を及ぼすものであり、2.0μm以上16μm以下とすることによって、製造コスト、溶接性、耐食性に優れるものが得られる。また、本発明では、前記膜厚tと体積平均粒子径rとが上記式(2)を満足するようにする。目標とする溶接性、耐剥離性を得るためには、樹脂層の膜厚tに応じて適切な体積平均粒子径rを有する導電性粒子を使用する必要があるからである。さらに本発明では、前記導電性粒子の粒子径分布と体積平均径rとが上記式(3)を満足するようにする。上記式中、SDは、粒子径分布の広狭を指標するものであり、SDが大きいほど、粒子径分布が広くなり、SDが小さいほど、粒子径分布が狭くなる。そして、上記式(3)のように規定することによって、一定膜厚tの樹脂層に均一な粒子径の導電性粒子を分散させることができ、導電性粒子の脱落を抑制して、耐剥離性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂被覆金属板は、溶接性、耐食性、及び、加工性(特に、樹脂層の耐剥離性)に優れる。また、本発明の樹脂被覆金属板を自動車用防錆塗装鋼板として使用すれば、自動車の塗装工程を1工程省略することができ、自動車製造時の生産効率を高め、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の樹脂被覆金属板は、導電性粒子を含有する樹脂層が金属板の表面に設けられている樹脂被覆金属板であって、前記樹脂層の膜厚をt(μm)、前記導電性粒子の体積平均粒子径をr(μm)及び前記導電性粒子の累積粒子径分布における累積率84%の粒子径をd84(μm)、累積率16%の粒子径をd16(μm)としたときに、前記膜厚t(μm)、前記体積平均径r(μm)、前記粒子径d84(μm)及びd16(μm)が下記式を満足することを特徴とする。
2.0≦t≦16・・・(1)
0.25t≦r≦2t・・・(2)
(d84−d16)/2≦0.8r・・・(3)
まず、導電性粒子を含有する樹脂層について説明する。導電性粒子を含有する樹脂層を構成する樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができるが、エポキシ樹脂が好ましく、さらに好ましくは可撓性エポキシ樹脂を使用する。可撓性エポキシ樹脂を使用すれば、加工時の耐パウダリング性を向上できるからである。ここで、可撓性エポキシ樹脂とは、MIT屈曲試験において、割れが生じるまでの屈曲回数が300回以上となるものをいう。MIT屈曲試験は、図1に示す試験装置のクランプに幅:15mm、長さ:130mmの試験片の一端を挟んで折り曲げ、試験片の他端を張力:1kgf、回転角度135°、回転振動:175回/分の条件で動かして、割れが生じるまでの回数を測定する試験である。
【0008】
前記可撓性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂を使用することが好ましい態様である。前記ウレタン変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂の分子構造にウレタン結合(樹脂)を導入したものであり、ウレタン樹脂構造により可撓性が付与される。また、前記ダイマー酸変性エポキシ樹脂とは、例えば、ジャパンエポキシレジン製「エピコート872」を挙げることができる。前記ダイマー酸変性エポキシ樹脂「エピコート872」は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂「エピコート1007」と、「872」/「1007」=1/2(質量比)の割合で混合して使用することが好ましい。尚、上記エポキシ樹脂は、液状、固形のいずれであってもよく、固形の場合は、例えば、溶剤で希釈して使用すればよい。
【0009】
本発明における樹脂層が、上述した樹脂成分を硬化剤で硬化したものであることも好ましい態様である。斯かる硬化剤としては、例えば、ブロックドイソシアネート、メラミン樹脂、アミン系硬化剤を挙げることができる。この中でも、ブロックドイソシアネート、メラミン樹脂は、エポキシ樹脂の水酸基と反応し、アミン系硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して、前記エポキシ樹脂を硬化することができる。エポキシ樹脂の反応基/硬化剤の反応基の当量比は、0.8以上1.2以下であることが好ましい。
【0010】
前記ブロックドイソシアネートとしては、例えば、イソシアネート基をカプロラクタム、オキシムなどでブロックしたものを挙げることができ、例えば、カプロラクタムでブロックしたものは150℃付近でブロック剤が解離し、オキシムでブロックしたものは120〜130℃でブロック剤が解離してイソシアネート基が活性化する。
【0011】
前記メラミン樹脂としては、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂などがある。
【0012】
前記アミン系硬化剤には、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミンなどがある。前記脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス−アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0013】
前記脂環族ポリアミンとしては、例えば、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、複素環式ジアミンなどを挙げることができる。
【0014】
前記芳香族ポリアミンとしては、キシリレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミンなどを挙げることができる。前記ポリアミドアミンとしては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミノアミドなどを挙げることができる。
【0015】
次に、本発明の樹脂層が含有する導電性粒子について説明する。前記導電性粒子としては、導電性を有する粒子であれば特に限定されず、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、銀、銅などの金属粉末、カーボンブラック、リン化鉄、酸化亜鉛、酸化チタンなどを使用することができる。前記導電性粒子は、単独で或いは2種以上を併用して使用してもよい。上記導電性粒子として、リン化鉄を使用することが特に好ましい態様である。リン化鉄を使用することによって、溶接性や加工性を一層向上できるからである。
【0016】
前記導電性粒子の樹脂層中の含有量は、40質量%以上、より好ましくは45質量%以上であることが望ましい。導電性粒子の含有量が40質量%未満であると、加工性は良好であるが、溶接性が低下する場合があるからである。前記導電性粒子の樹脂層中の含有量は、60質量%以下、より好ましくは55質量%以下であることが望ましい。導電性粒子の含有量が60質量%を超えると、溶接性が良好であるが、加工性が低下するからである。
【0017】
本発明では、導電性粒子を含有する上記樹脂層の膜厚t(μm)が、以下の式(1)を満足する。
【0018】
2.0≦t≦16・・・(1)
すなわち本発明では、導電性粒子を含有する前記樹脂層の膜厚tを2.0μm以上、より好ましくは4μm以上、16μm以下、より好ましくは8μm以下とする。樹脂層の膜厚が2.0μm未満の場合には、耐食性が低下する虞がある。特に、導電性粒子の粒子径が相対的に大きくなって樹脂層から導電性粒子が突き出る場合があり、樹脂層による耐食性が一層低下する虞もある。また、前記樹脂層の膜厚tが16μmを超える場合には、溶接性が低下する虞がある。
【0019】
また本発明では、膜厚tと体積平均粒子径rとが下記式(2)を満足するようにする。
0.25t≦r≦2t・・・(2)
すなわち、所定の溶接性、耐剥離性を得るためには樹脂層の膜厚tに応じて、適切な体積平均粒子径rを有する導電性粒子を使用する必要があり、膜厚tに対して体積平均粒子径rを極端に小さくすることは(r<0.25t)、溶接通電点の増加による溶接性の低下が起こる。逆に、膜厚tに対して、体積平均粒子径rが大きくなりすぎると(r>2t)、導電性粒子の脱落が生じる。前記体積平均粒子径rは、0.3t以上、1.8t以下であることがより好ましい。
【0020】
さらに本発明では、前記導電性粒子の粒子径分布SDと体積平均粒子径rとが下記式(3)を満足するようにする。
SD =(d84−d16)/2≦0.8r・・・(3)
上記式中、SD =(d84−d16)/2は、粒子径分布の広狭を指標するものであり、SDが大きいほど粒子径分布は広くなり、SDが小さくなるほど粒子径分布は狭くなる。そして、上記式(1)〜(3)のように規定することによって、一定膜厚tの樹脂層中に、粒子径分布が制御された導電性粒子を均一に分散させて導電性粒子の脱落を抑制し、耐剥離性を向上させることができる。一方、上記式(3)を満足しない場合には、剥離に悪影響を及ぼす、大きな導電性粒子の割合が多くなり、導電性粒子の脱落が起こって、加工時の剥離性が低下する。また、上記SDは、0.6r以下であることがより好ましい。
【0021】
尚、本発明で使用する上記(2)及び(3)を満足する導電性粒子としては、市販の導電性粒子を購入して、これをボールミルなどで粉砕し、篩やメッシュを用いて分粒することにより得ることができ、具体的には、Glenn Spring Holdingsから入手可能である。
【0022】
本発明における樹脂層は、上述した樹脂成分と導電性粒子の他に、例えば、防錆剤や沈降防止剤を含有することもできる。防錆剤を含有することによって、耐食性を一層向上できる。前記防錆剤としては、例えば、トリポリリン酸アルミニウム、カルシウムイオン交換性シリカ、無定形ケイ酸マグネシウム化合物などを挙げることができる。
【0023】
前記防錆剤の含有量は、樹脂層中、5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であることが望ましい。前記含有量を5質量%以上とすることによって、耐食性を一層向上できるからである。また、前記防錆剤の含有量は、樹脂層中25質量%以下、より好ましくは20質量%以下であることが望ましい。防錆剤の添加量が25質量%を超えると、加工性が低下するからである。
【0024】
本発明において、樹脂層が設けられている金属板としては、亜鉛めっき金属板を用いることが好ましい態様である。前記亜鉛めっき金属板としては、金属板に亜鉛めっきを施したものであれば、特に限定されず、例えば、電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)などを挙げることができる。電気亜鉛めっき鋼板(EG)、又は、溶融亜鉛めっき鋼板を使用する場合には、樹脂層の被覆前に下地処理(クロメート処理或いはノンクロメート(リン酸系など)処理)をすることが重要である。合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いる場合は、必要に応じて、適宜下地処理を行うようにすればよい。
【0025】
次に、本発明の樹脂被覆金属板の製造方法について説明する。本発明の樹脂被覆金属板は、樹脂層を形成する樹脂組成物、例えば、溶液、水溶液、エマルジョンなどに、導電性粒子、必要に応じて、防錆剤、沈降防止剤などを加えて、被覆用樹脂組成物を調製する。その後、前記被覆用樹脂組成物を金属板の表面に所定の膜厚になるように塗布して、乾燥し、樹脂被覆金属板を製造することができる。乾燥は、使用する被覆用樹脂組成物に応じて適宜行えばよい。例えば、被覆用樹脂組成物が水系樹脂組成物である場合には、70℃以上、より好ましくは90℃以上であって、150℃以下、より好ましくは120℃以下の温度で、3秒以上、より好ましくは30秒以上、2分以下、より好ましくは1分以下の条件で行うことが望ましい。また、樹脂組成物が溶剤系樹脂組成物の場合には、使用する硬化剤の種類に応じて、乾燥温度および乾燥時間を設定すればよい。また、樹脂層を構成する樹脂成分として硬化剤を使用する場合には、前記乾燥と同時に、或いは、前記乾燥後に、熱処理を行って、樹脂成分の硬化反応を促進することも好ましい態様である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)導電性粒子の粒度分布及び体積平均粒子径
Lead&Nrthrup社製のマイクロトラックFRA9220を用いて、レーザー回折法(散乱式)により測定した。
測定範囲:0.12〜714μm、溶媒:水
(2)加工性(耐剥離性)評価方法
(2−1)下記条件で深絞り加工を実施した。
<深絞り加工条件>
・樹脂被覆金属板の抜き打ち径(深絞り加工用ブランク直径):90mm
・ポンチ径(外形):50mm
・ダイス径(内径):52mm
・BHF(しわ押さえ圧):980N
・深絞り成形速度:160mm/min
(2−2)上記深絞り加工後の表面を強制的にテープで剥離する。即ち、上記深絞り加工により得られた深絞り成形体(底付円筒状)の円筒部分表面に粘着テープ(セロハンテープ)を貼り付けた後、このテープを強制的に剥がした。
(2−3)上記深絞り成形体についての粘着テープの貼り付け、剥離による重量減量(Wd)を測定した。即ち、粘着テープの貼り付け前における深絞り成形体の重量W1および粘着テープの貼り付け、剥離後における深絞り成形体の重量W2を測定し、両者の重量差(W1−W2=W1-2)を求め、この重量差W1-2を深絞り成形体の粘着テープ貼付部の表面積Sで割ることにより、重量減量Wd=W1-2/Sを求める。
(2−4)加工性の判定基準は以下のようにする。
<加工性の判定基準>
重量減量Wd:3g/m2以上の場合、×(加工性不良)
重量減量Wd:2g/m2以上3g/m2未満の場合、△(上記×の場合よりは加工性良く、加工性は許容範囲にある)
重量減量Wd:2g/m2未満の場合、○(加工性に優れる)
[樹脂被覆金属板の作製]
金属板としては、めっき層のパウダーが発生しやすい付着量45g/m2の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を使用し、PPG製Nupalを用いてノンクロメートタイプの下地処理を施した。下地の付着量は、蛍光X線でPの強度が1になるようにバーコードで塗布した。
【0027】
樹脂層を形成する被覆剤は、樹脂成分であるエポキシ樹脂(三井化学製、製品名:エポキー834)38、28質量部に対して、導電性粒子としてリン化鉄50、60質量部、沈降防止剤としてヒュームドシリカ2質量部、防錆剤として無定形ケイ酸マグネシウムを10部添加し(合計100質量部)、さらにキシレン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/n−ブタノール=4/3/1の混合溶媒を用いて希釈し、蒸発残分が50%になるように調製した。
【0028】
上記のようにして得られた被覆剤組成物を、樹脂層厚が1.8〜8μmとなるようにバーコーターを選定して、上記下地処理が施された合金化溶融亜鉛めっき鋼板に塗工し、連続加熱炉にてPMT230℃で溶剤の除去及び樹脂層の硬化を行って、樹脂被覆金属板を得た。
【0029】
使用した導電性粒子の粒度分布、及び、得られた樹脂被覆金属板について評価した結果を表1にまとめた。
【0030】
【表1】

【0031】
表1からも明らかなように、式(1)〜(3)を満足する樹脂被覆金属板は、耐剥離性に優れていることが分かる。一方、金属板10〜12、及び、22〜24は、式(3)を満足しない場合であり、耐剥離性が低下した。金属板25は、式(1)を満足しない場合であり、耐剥離性、及び、耐食性(VDA試験合わせ部10サイクルで赤錆が発生)が低下した。また、金属板26は式(2)を満足しない場合であり、膜厚tに対して体積平均粒子径が大きくなりすぎために、耐剥離性が低下した。
【0032】
尚、式(1)〜(3)を満足する樹脂被覆金属板は、溶接連続打点性能が1000点以上であり、VDA試験合わせ部15サイクルで赤錆が発生せず、溶接性、耐食性のいずれも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の樹脂被覆金属板は、自動車用鋼板、家電製品等に繁用される溶接可能塗装金属板として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】屈曲試験装置の概要を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子を含有する樹脂層が金属板の表面に設けられている樹脂被覆金属板であって、前記樹脂層の膜厚をt(μm)、前記導電性粒子の体積平均粒子径をr(μm)及び前記導電性粒子の累積粒子径分布における累積率84%の粒子径をd84(μm)、累積率16%の粒子径をd16(μm)としたときに、前記膜厚t(μm)、前記体積平均粒子径r(μm)、前記粒子径d84(μm)及びd16(μm)が下記式を満足することを特徴とする樹脂被覆金属板。
2.0≦t≦16・・・(1)
0.25t≦r≦2t・・・(2)
SD=(d84−d16)/2≦0.8r・・・(3)
【請求項2】
前記導電性粒子は、リン化鉄である請求項1に記載の樹脂被覆金属板。
【請求項3】
前記導電性粒子の樹脂層中の含有量は、40〜60質量%である請求項1または2に記載の樹脂被覆金属板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂層を金属板の表面に設けることを特徴とする樹脂被覆金属板の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−21506(P2006−21506A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203890(P2004−203890)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】