説明

樹脂製可撓電線管の切断工具

【課題】迅速且つ容易に樹脂製可撓電線管の切断作業を行うことができる。
【解決手段】相対的に大径の山部91と相対的に小径の谷部92が長手方向へ交互に形成された樹脂製可撓電線管9の切断工具であって、可撓電線管9の周囲を囲むように配設される環状の本体1と、本体1に設けられて当該本体1の内周面から進出ないし後退可能な切断刃7と、本体1に設けられ、谷部92内にこれに沿って移動可能に位置させられて切断刃7を山部91に対向させて位置させる位置決めボルト51〜55と、本体1に設けられ、切断刃7の刃先が山部91に当接するまで進出した状態で本体1を可撓電線管9回りに旋回させる操作ハンドル4とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂製可撓電線管の切断工具に関し、特に、いわゆる波付樹脂製可撓電線管を、その内部に通線されている電線に損傷を与えることなく迅速に切断することができる切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電線管として、近年、軽量で硬質のポリエチレン樹脂等を使用したものが多用されており、この種の電線管で、相対的に大径の山部と相対的に小径の谷部が長手方向へ交互に形成されて可撓性と耐外圧性を併せ備えた波付樹脂製可撓電線管が注目されている。
【0003】
なお、特許文献1には、電線の通電状態を検出して通電状態にあるときはラッチ機構によって剪断刃の作動を止めて誤切断を防止する誤切断防止はさみが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−261985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電線分岐用のハンドホールを設置する等のために上記波付樹脂製可撓電線管を途中で切断する場合には、内部の電線を切断しないように最新の注意を払う必要があり、従来は電線管の山部の頂点付近に鋸歯を当てて、慎重に様子を見つつ周方向へ鋸歯を移動させて電線管のみを切断している。しかし、この方法では作業性が悪い上に、滑り易い硬質樹脂の電線管表面に鋸歯を正確に当てるには熟練を要する等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、迅速且つ容易に切断作業を行うことが可能な樹脂製可撓電線管の切断工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本第1発明では、相対的に大径の山部(91)と相対的に小径の谷部(92)が長手方向へ交互に形成された樹脂製可撓電線管(9)の切断工具であって、上記可撓電線管(9)の周囲を囲むように配設される環状の本体(1)と、本体(1)に設けられて当該本体(1)の内周面から進出ないし後退可能な切断刃(7)と、本体(1)に設けられ、谷部(92)内にこれに沿って移動可能に位置させられて切断刃(7)を山部(91)に対向させて位置させる位置決め部材(51〜55)と、本体(1)に設けられ、切断刃(7)の刃先が山部(91)に当接するまで進出した状態で本体(1)を可撓電線管(9)回りに旋回させる操作部材(4)とを具備している。
【0008】
本第1発明において、切断刃の刃先を可撓電線管の山部に当接するまで進出させた状態で本体を可撓電線管回りに旋回させると、可撓電線管は切断刃によって山部に沿って切り裂かれる。山部を切り裂くものであるから電線管内部に挿通された電線を傷つけることはない。この際、切断刃は位置決め部材によって常に山部に対向するように位置させられているから、作業者は操作部材を掴んで本体を可撓電線管回りに旋回させるだけで容易に可撓電線管を長手方向で切り離し切断することができる。可撓電線管の山部と谷部が螺旋状に形成されているものでは、隣り合う山部が切り裂かれてその間に残った帯状部分を鋏で横断的に切断することによって可撓電線管を長手方向で容易に切り離すことができる。
【0009】
本第2発明では、上記本体(1)を、各一端がヒンジ部材(2)で結合され各他端が互いに切り離し可能に連結された半環状の一対の半部(11,12)で構成し、一方の半部11に操作部材(4)を設けるとともに、他方の半部12に切断刃(7)を設ける。
【0010】
本第2発明によれば、各半部の他端を切り離して開放した状態の本体を可撓電線管の外周に被せ、その後他端を再度連結することによって可撓電線管の外周に本体を容易に装着することができる。
【0011】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の切断工具によれば、迅速且つ容易に樹脂製可撓電線管の切断作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す、閉鎖状態の切断工具の側面図である。
【図2】開放状態とした切断工具の側面図である。
【図3】開放状態とした切断工具の正面図である。
【図4】可撓電線管に装着する過程の、開放状態とした切断工具の正面図である。
【図5】切断工具で切り裂かれた状態の可撓電線管の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に切断工具の全体側面図を示す。切断工具は円環状の本体1を備えており、本体1は半円環状の一対の半部11,12で構成されている。両半部11,12は各一端がヒンジ部材2によって結合されて、各他端を互いに離間させるように開放可能である。半部11,12の各他端はパッチン錠3で互いに結合されており、パッチン錠3の結合を解消することによって両半部11,12が図2に示すように開放可能となる。
【0015】
図2において、半部11,12の頂部111外周面には操作部材としての棒状の操作ハンドル4が突設してある。操作ハンドル4は公知の構造によって図2の鎖線で示すように横倒可能である。また、半部11の頂部111には操作ハンドル4に隣接して詳細を後述する位置決め部材としての位置決めボルト51が弧内へ向けて貫通設置されている。
【0016】
一方、半部12の頂部121には、これに形成された開口122(図3)を介して弧内へ向けて開放する箱型のガイド部材13が設けられており、ガイド部材13内には矩形ブロック状の保持体6が収納されている。保持体6には内端面61の両端部に位置決めボルトが突設されるとともに、内端面61の中間位置には円弧状の切断刃7が突設されている。なお、半部12の内周両端部には位置決めボルト54,55が弧内へ向けて突設されている。
【0017】
上記保持体6には中心にこれを貫通するネジ孔61が形成され、当該ネジ孔61に、ガイド部材13の頂面を貫通させた回転ハンドル8の先端ネジ部81が螺合させてある。回転ハンドル8を正逆回転させると、これに応じて保持体6が半部12の円弧内外方向へ直線移動する。これにより、半部12の内周面からの切断刃7の進出量を調整することができる。
【0018】
上記構造の切断具によって切断される樹脂製可撓電線管9は図4に示すようなもので、相対的に大径の山部91と相対的に小径の谷部92が交互にかつ本実施形態では螺旋状に長手方向へ連続して形成されている。
【0019】
上記可撓電線管9を切断する場合には、半部11,12を開いた状態にし、回転ハンドル8を逆転させて半部12の内周面から切断刃7が出ないように保持体6を後退させておく。この状態で、半部12の位置決めボルト54,55を可撓電線管9の谷部92に位置させる。続いて可撓電線管9を覆うように半部11を閉じて、当該半部11の位置決めボルト51を可撓電線管9の谷部92に位置させる。そして、パッチン錠3で半部11,12同士を連結して可撓電線管9の周囲を囲む環状の本体1を形成する。この状態で本体1は谷部92内に進入した位置決めボルト51,54,55によって可撓電線管9の長手方向への移動が規制される。
【0020】
この後、回転ハンドル8を正転させて保持体6を前進させ、切断刃7を適当量だけ半部12の内周面から進出させると、その刃先は可撓電線管9の山部91に当接する。この時に、同時に保持体6に設けた位置決めボルト53,54が上記山部91に隣接する谷部92内に進入して切断刃7の刃先を可撓電線管9の山部91のほぼ中央に正確に当接させる。この状態で、操作ハンドル8を掴んで本体1を1.5回転〜2回転回転させると、図5に示すように可撓電線管9は螺旋状の山部91に沿って所望の回転角範囲で切り離される。そこで、本体1の半部11,12を開いてこれを可撓電線管9から取り去り、隣り合う山部91が切り裂かれてその間に残った可撓電線管9の帯状部分93を鋏で横断的に切断すれば、可撓電線管9は完全に長手方向で二分される。
【0021】
以上のように、本実施形態の切断工具によれば、環状の本体1を回転させるだけで可撓電線管9はその山部91において、当該電線管9の内部に挿通された電線を傷つけることなく螺旋状に容易に切り離され、その後、鋏を使用して速やかに可撓電線管9を長手方向で切り離すことができる。なお、本発明の切断工具は、山部と谷部が螺旋状ではなく交互に平行に形成されている可撓電線管にも使用できることはもちろんであり、この場合は環状の本体を一回転させるだけで当該電線管を長手方向で容易に切り離すことができる。
【符号の説明】
【0022】
1…本体、11,12…半部、2…ヒンジ部材、3…パッチン錠、4…操作ハンドル(操作部材)、51,52,53,54,55…位置決めボルト(位置決め部材)、6…保持体、7…切断刃、8…回転ハンドル、9…可撓電線管、91…山部、92…谷部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に大径の山部と相対的に小径の谷部が長手方向へ交互に形成された樹脂製可撓電線管の切断工具であって、前記可撓電線管の周囲を囲むように配設される環状の本体と、前記本体に設けられて当該本体の内周面から進出ないし後退可能な切断刃と、前記本体に設けられ、前記谷部内にこれに沿って移動可能に位置させられて前記切断刃を前記山部に対向させて位置させる位置決め部材と、前記本体に設けられ、前記切断刃の刃先が前記山部に当接するまで進出した状態で前記本体を前記可撓電線管回りに旋回させる操作部材とを具備する樹脂製可撓電線管の切断工具。
【請求項2】
前記本体を、各一端がヒンジ部材で結合され各他端が互いに切り離し可能に連結された半環状の一対の半部で構成し、一方の半部に前記操作部材を設けるとともに、他方の半部に前記切断刃を設けた請求項1に記載の樹脂製可撓電線管の切断工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−229280(P2011−229280A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96846(P2010−96846)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000213286)シーキューブ株式会社 (13)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】