説明

樹脂製建具

【課題】火炎に晒されても押縁が外れにくい建具を提供する。
【解決手段】室内外を連通する開口を閉塞可能であり、枠組みされた樹脂製の框体内に面材を備えた樹脂製建具であって、中空部を有し前記框体とともに前記面材の端部を保持する樹脂製の押縁と、前記框体に取り付けられ前記中空部に挿入されて前記押縁と係合する金属製の係合部材と、前記框体に固定され前記係合部材が係止される金属製の固定部材を有し、前記係合部材が前記固定部材に係止されることにより前記係合部材が前記框体に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材を押さえる押縁を備えた樹脂製建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製のサッシュ本体(框)に取り付けたガラスの縁部を覆うカバー部材(押縁)を備えた樹脂製建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような樹脂製建具では、カバー部材がサッシュ本体に設けられた蟻溝部に係入されてガラスの縁部を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2788167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような樹脂製建具では、カバー部材(押縁)も樹脂にて形成されているので、樹脂製建具が火炎に晒されると火炎の熱により、カバー部材(押縁)が軟化されてサッシュ本体(框)から外れる虞があるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、火炎に晒されても押縁が外れにくい建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の樹脂製建具は、室内外を連通する開口を閉塞可能であり、枠組みされた樹脂製の框体内に面材を備えた樹脂製建具であって、中空部を有し前記框体とともに前記面材の端部を保持する樹脂製の押縁と、前記框体に取り付けられ前記中空部に挿入されて前記押縁と係合する金属製の係合部材と、前記框体に固定され前記係合部材が係止される金属製の固定部材を有し、前記係合部材が前記固定部材に係止されることにより前記係合部材が前記框体に取り付けられていることを特徴とする樹脂製建具である。
【0007】
このような樹脂製建具によれば、框体に取り付けられた金属製の係合部材が、面材の端部を保持する押縁が有する中空部に挿入されて係合しているので、たとえ火炎の熱により押縁が軟化されたとしても、押縁が框体から外れることを防止することが可能であり、面材が框体から外れることも防止することが可能である。さらに、係合部材は、直接框体に取り付けられておらず、固定部材に係止されることにより框体に取り付けられているので、框体に対して適宜着脱可能である。このため、組立性及びメンテナンス性に優れた樹脂製建具を提供することが可能である。
【0008】
かかる樹脂製建具であって、前記固定部材は前記面材の一方の面と対面する第1対面部を有し、前記係合部材は前記面材の他方の面と対面する第2対面部を有することが望ましい。
【0009】
このような樹脂製建具によれば、金属製の固定部材の第1対面部と、金属製の係合部材の第2対面部とにより面材が狭持されるので、火炎の熱により押縁が軟化しても押縁及び面材が外れることを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、火炎に晒されても押縁が外れにくい建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る樹脂製建具を室内側から見た外観図である。
【図2】係合金具、固定金具、押縁の状態を説明するための断面図である。
【図3】係合金具と押縁との係合状態を説明するための斜視図である。
【図4】係合金具と固定金具とを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂製建具について図面を参照して説明する。
本実施形態の樹脂製建具1は、図1に示すような引き違い窓用の樹脂製建具1であって、建物等にて室内外を連通する開口を形成する枠体10と、枠体10に支持されるとともに見付け方向に移動して開口を閉塞可能な2枚の障子20とを有している。
【0013】
以下の説明においては、樹脂製建具1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、枠体10を構成する枠部材12及び障子20の框体21を構成する框部材22については、矩形状に枠組みされた枠体10及び框体21の状態にて、枠体10及び框体21に囲まれた内周側を内側、枠体10及び框体21の外周側を外側として示す。例えば、上側の枠部材12及び框部材22であれば、上面側を外側、下面側を内側として示す。
【0014】
枠体10は、樹脂製の押出成形部材である枠部材12が所定の長さにて45度に切断され、互いの端部同士が突き合わされて接合されることにより矩形状に形成されている。枠体10の上下に配置されている枠部材12には、障子20(20a、20b)が見付け方向に移動する際に案内されるレール(不図示)が設けられている。
【0015】
2枚の障子20(20a、20b)は、いずれも上下に配置される横框21a、21bと左右に配置される縦框21c、21dとが矩形状に枠組みされた框体21と、框体21にて囲まれた領域内に取り付けられる面材としてのガラス50と、框体21とともにガラス50の周端部を保持する押縁6と、押縁6と係合する金属製の係合部材として係合金具30と、を有している。
【0016】
ガラス50は、図2に示すように、2枚の耐熱強化ガラス51を対面させるとともに互いに間隔を隔てて一体に形成した複層ガラスである。複層ガラスの周端部には、2枚の耐熱強化ガラス51の間隔を保持するためのスペーサー54が介在され、スペーサー54の外周部分にシール剤52が充填されている。
【0017】
框体21の上下の横框21a、21b及び左右の縦框21c、21dは、樹脂製の押出成形部材であり、框部材22が所定の長さにて45度に切断され、横框21a、21bの端部と縦框21c、21dの端部とが突き合わされて接合されることにより矩形状の框体21を構成している。
【0018】
係合金具30は、外障子20a及び内障子20bの左右の縦框21c、21dとガラス50との間にそれぞれ設けられており、各縦框21c、21dの半分より上方側に2個ずつ設けられている。係合金具30が設けられている部位における縦框21c、21dとガラス50との取り合い部分の構成は、いずれも同じなので、以下では、室内側から見た際に左側に位置する外障子20aの戸先框である左の縦框(以下、戸先框ともいう)21cとガラス50との取り合い部分を例に挙げて詳述する。
【0019】
外障子20aの戸先框21cは、長手方向に連通する中空部材であり、図2に示すように、見込み方向に並ぶ大小2つの中空部を有してほぼ矩形状をなす框本体部23と、矩形状に枠組みされた框体21の状態にて、框本体部23の室外側の部位からガラス50側、すなわち框体21の内側に突出された框内側突出部24と、框本体部23から枠体10側に突出された一対の突出部25とを有している。
【0020】
框内側突出部24は、ガラス50の周端部と対向し、押縁6とともにガラス50の周端部を狭持する部位であり、框内側突出部24の室内側に臨む面24a、すなわちガラス50と対向する部位にビード53が設けられている。
【0021】
框本体部23の室内側における内周側の部位には、押縁6が嵌合される押縁嵌合部26が設けられている。このため、框本体部23、框内側突出部24、及び、押縁6にて形成される凹部にガラス50の周端部が収容される。本実施形態における押縁嵌合部26は、後述する係合金具30を取り付けるときに係合金具30と干渉する部位26aが切り欠かれている。
【0022】
押縁6は、長手方向に連通する中空部材であり、図2、図3に示すように、中空部6eを有する押縁本体6aと、戸先框21cに嵌合された状態にて、押縁本体6aの室外側に突出されビード53が取り付けられるビード取付部6bと、押縁本体6aの戸先框21c側に突出され戸先框21cに嵌合される嵌合片6cと、を有している。
【0023】
また、押縁6の室外側の嵌合片6cが形成されている部位には、図3に示すように、係合金具30の押縁係合部30cが挿入される連通孔6dが嵌合片6cの一部が切り欠かれた切欠部6fに形成されている。連通孔6dは、押縁6の長手方向において半分より上方側となる2カ所に設けられており、押縁6が有する中空部6eの内外を連通するように形成されている。
【0024】
係合金具30は、図3、図4に示すように、戸先框21cに固定される金属製の固定部材としての固定金具35に係止されて取り付けられている。以下、係合金具30及び固定金具35の説明は、係合金具30及び固定金具35が戸先框21cに取り付けられた状態にて、上下となる方向を上下方向とし、室内外方向となる方向を見込み方向として説明する。
【0025】
戸先框21cに固定された固定金具35は、図4に示すように、戸先框21cの長手方向に間隔を隔てて配置され戸先框21cにおける框本体部23の内側面23aに当接される2つの座板部35aと、2つの座板部35aにおける見込み方向の室外側の縁同士を繋ぎ座板部35aとほぼ直角をなす第1対面部としての側壁部35bと、2つの座板部35aの間に設けられ側壁部35bから見込み方向において室内側に突出された平板部35cと、を有している。
【0026】
座板部35aには、固定金具35を戸先框21cに固定するためのビスが貫通される固定孔35dが形成されている。平板部35cは、座板部35aとほぼ平行に形成され、固定金具35が戸先框21cに固定された際に、座板部35aより内側、すなわち内側面23aから框体21に囲まれた領域の中央側に離れた側に位置するように形成されている。座板部35aと平板部35cとは見付け方向において重ならないように形成されるとともに、座板部35aの内側面と平板部35cの外側面との間には、係合金具30が挿入可能な間隔を有している。また、平板部35cには、矩形状の貫通孔でなり係合金具30を係止するための係止部35eが設けられている。
【0027】
係合金具30は、座板部35aと平板部35cとの間に挿入される挿入板部30aと、
挿入板部30aの室内側の縁と繋がって挿入板部30aとほぼ直角をなし戸先框21cの長手方向に間隔を隔てて設けられた2つの対向板部30bと、2つの対向板部30bの間に設けられ、対向板部30bとほぼ平行をなすとともに対向板部30bより室内側に設けられた押縁係合部30cと、押縁係合部30cの外側の縁と挿入板部30aの室内側の縁とを連結し、押縁係合部30c及び挿入板部30aとのなす角度がほぼ45度をなす連結部30dと、挿入板部30aのほぼ中央に設けられ固定金具35の係止部35eに係止される係止片30eと、を有している。ここで、対向板部30bは、係合金具30が固定金具35に係止された際に側壁部35bとほぼ平行な状態にてガラス50と対向する第2対面部の一例である。
【0028】
係止片30eは、室外側から室内側に向かって挿入板部30aから離れる方向に傾斜するように、挿入板部30aから切り起こされて形成されている。
【0029】
そして、戸先框21cに固定金具35がビスにて固定された状態にてガラス50が配置された後に、係合金具30の挿入板部30aが座板部35aと平板部35cとの間に挿入されて係合金具30が係止される。このとき挿入板部30aが挿入されて係止片30eが平板部35cと接触し、さらに係合金具30を固定金具35側に押圧することにより係止片30eが挿入板部30a側に押されて弾性変形しつつ挿入板部30aが座板部35aと平板部35cとの間に進入していく。
【0030】
その後、係止片30eが係止部35eと対向する位置に至ると、押し曲げられていた係止片30eが弾性により復帰して係止部35eに係止される。このように係合金具30が固定金具35に、係止された状態にて、固定金具35の側壁部35bがガラス50の室外側の面と対面し、係合金具30の対向板部30bがガラス50の室内側の面と対面して、ガラス50が保持される。
【0031】
また、このとき、押縁係合部30cは、対向板部30bより室内側にて押縁係合部30cの先端がガラス50の中央側に突出している。
【0032】
係合金具30が固定金具35に係止された後に、押縁6をガラス50の中央側から端部側に移動させつつ、押縁係合部30cを連通孔6dに挿入するとともに嵌合片6cを押縁嵌合部26に嵌合させる。このとき、押縁6が嵌合されることにより、ビード53がガラス50に押圧され、その反力が押縁6に作用するが、押縁6の中空部6eに挿入され中空部6eの内壁6gと当接している押縁係合部30cの弾性力により押縁6がガラス50側に付勢されている。
【0033】
本実施形態の樹脂製建具1によれば、框体21に固定された固定金具35を介して框体21に取り付けられた係合金具30が、ガラス50の端部を保持する押縁6が有する中空部6eに挿入されて係合しているので、たとえ、火炎の熱により押縁6が軟化したとしても、押縁6が框体21から外れることを防止することが可能であり、ガラス50が框体21から外れることも防止することが可能である。
【0034】
また、係合金具30は、直接框体21に取り付けられておらず、固定金具35に係止されることにより框体21に取り付けられているので、框体21に対して適宜着脱可能である。このため、組立性及びメンテナンス性に優れた樹脂製建具1を提供することが可能である。
【0035】
また、係合金具30は縦框21c、21dに取り付けられているので、たとえ、火炎に晒されて框体21が軟化し、縦框21c、21dに嵌合されている押縁6も軟化したとしても、押縁6は外れず、ガラス50の見付け方向の端部が上下方向に沿って保持される。このため、例えば、上框21a側だけ保持されてガラス50が吊られた状態となったり、下框21b側だけ保持されてガラス50が下端だけで支持された状態とはならないので、火炎の熱により押縁6が軟化されたとしても、ガラス50がより外れ難い樹脂製建具1を提供することが可能である。
【0036】
また、樹脂製建具1が火炎に晒された際には、樹脂製建具1の上部側の方がより高温になり易いので、係合金具30が縦框21c、21dの上部に取り付けられていると、高温になり易い上部側にて、押縁6の外れを効果的に防止することが可能である。
【0037】
また、固定金具35の側壁部35bと係合金具30の対向板部30bとによりガラス50が狭持されるので、火炎の熱により押縁6が軟化しても押縁6が外れることのみならずガラス50が外れることも防止することが可能である。
【0038】
上記実施形形態においては、係合金具30がガラス50と対向する対向板部30bを有する構成としたが、対向板部30bは必ずしも設けられていなくても構わない。また、押縁6の中空部6eに挿入された押縁係合部30cが中空部6eの内壁6gと当接し、弾性力により押縁6がガラス50側に付勢されている例について説明したが、押縁係合部30cは必ずしも中空部6eの内壁6gと当接していなくても良く、また、押縁6が弾性力によりガラス50側に付勢されていなくても良い。例えば、押縁6が取り付けられた状態では、中空部6eに押縁係合部30cが挿入されており、火炎により軟化したときに押縁係合部30cが押縁6を支えるように構成されていても構わない。
【0039】
上記実施形態においては、引き違い用の樹脂製建具1を例に挙げて説明したが、これに限らず、開き窓や片引き窓および上げ下げ窓などのスライド形式の窓や、取り付けることにより開口が閉塞される嵌殺し窓などの面材を押さえる押縁を備えた樹脂製建具であれば構わない。
【0040】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 樹脂製建具、6 押縁、6d 連通孔、6e 中空部、21 框体、
21a、21b 横框、21c、21d 縦框、30 係合金具、30b 対向板部、
30c 押縁係合部、30e 係止片、35 固定金具、35b 側壁部、
35e 係止部、50 ガラス、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内外を連通する開口を閉塞可能であり、枠組みされた樹脂製の框体内に面材を備えた樹脂製建具であって、
中空部を有し前記框体とともに前記面材の端部を保持する樹脂製の押縁と、
前記框体に取り付けられ前記中空部に挿入されて前記押縁と係合する金属製の係合部材と、
前記框体に固定され前記係合部材が係止される金属製の固定部材を有し、
前記係合部材が前記固定部材に係止されることにより前記係合部材が前記框体に取り付けられていること特徴とする樹脂製建具。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製建具であって、
前記固定部材は前記面材の一方の面と対面する第1対面部を有し、
前記係合部材は前記面材の他方の面と対面する第2対面部を有することを特徴とする樹脂製建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−255206(P2010−255206A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103266(P2009−103266)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】