説明

樹脂製重石およびその製造方法

【課題】食品衛生面において、従来のコンクリートを用いたものよりも好適であり、リサイクルに適し、かつ多様なニーズに対応できる重石を提供する。
【解決手段】樹脂製の本体1を有することを特徴とする樹脂製重石。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂製重石およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品用の重石は、食品に圧力をかける目的で使用されるもので、例えば容器本体内におさめられた食品の上に配置して用いられる。
具体的には、例えば味噌、もろみ、漬物等の保存食を製造する際に用いられる。すなわち、味噌やもろみを製造する際に、桶等の容器本体に味噌やもろみの材料を入れ、その上に空気抜きの目的で重石を置いて使用する。また、漬物を製造する際には、桶等の容器本体に野菜と調味料等を入れ、その上に重石(漬物石)を置いて使用する。なお、この様に容器本体内の食品の上に配置される重石は、「押さえ蓋」とも呼ばれる。
【0003】
従来の食品産業に使用される大きなサイズの重石としては、特許文献1、2に記載されている用に、コンクリートやモルタル(以下、まとめてコンクリート等ということがある)を用いたものが使用されている。
特許文献1には吹込成形(ブロー成形)により成形された中空体にコンクリートモルタル等をその空気吹き込み口より充填して製造した樹脂でコーティングされたコンクリート製の漬物石(食品用の重石)が開示されている。
特許文献2には、コンクリートに、バインダーとして樹脂を混合した樹脂コンクリートからなる漬物石(食品用の重石)が開示されている。
【特許文献1】特開平10−99016号公報
【特許文献2】特開2002−360167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている様に、樹脂でコーティングしたコンクリート等からなる食品用の重石は、取り扱い中に食品用の重石をぶつけた際の衝撃でコーティングが破れたり、コーティング自体の劣化により、コーティングがひび割れ、これによってコーティングの一部がはがれてしまうという問題がある。コーティングが破れたりはがれたりするとコンクリート等が食品に接触するおそれがあり、食品衛生上好ましくない。
さらに、特許文献1に記載されている様に、ブロー成形によって樹脂製の中空体を製造するものは、所望のサイズや形毎に成形金型を用意する必要がある。したがって、形状、サイズ、または重さが異なる種々の食品用の重石を製造することは困難である。そのため、生産量が少ないものについては対応できず、多様なニーズに応えることができない。
また、特許文献2に記載され食品用の重石においては、コーティングを使用していないので、コーティングが破れたりはがれたりするという問題は生じないが、コンクリートが直接食品と接触するおそれがあるという問題は生じる。
また、従来品の様にコンクリート等を使用した食品用の重石は、リサイクルに適さない。
【0005】
そこで、本発明においては、食品衛生面において、従来のコンクリート等を用いたものよりも好適であり、多様なニーズに対応でき、かつリサイクル可能で、食品用に適した重石およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明においては、以下の手段を提案する。
第1の態様は、樹脂製の本体を有することを特徴とする樹脂製重石である。
第2の態様は、前記樹脂製の本体は、中空ではない樹脂製の本体である第1の態様の樹脂製重石である。
第3の態様は、前記樹脂製の本体と、この本体の重量を調整するために設けられた重りとを有する前記第1または第2の態様の樹脂製重石である。
第4の態様は、前記樹脂はポリオレフィンである第1〜3のいずれかの態様の樹脂製重石である。
第5の態様は、前記ポリオレフィンはポリプロピレンである第4の態様の樹脂製重石である。
第6の態様は、前記重りは前記本体の内部に設けられている第1〜5のいずれかの態様の樹脂製重石である。
第7の態様は、押出加工と切削加工を経て製造することを特徴とする第1〜6のいずれかの態様の樹脂製重石の製造方法である。
【0007】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「重石」は、好適には食品に圧力をかける目的で、食品の上に直接または間接的に置いて使用されるもので、例えば好適には容器本体内におさめられた食品の上に配置して用いられるものとする。そして、「重石」には、「漬物石」、食品用の「押さえ蓋」等が含まれる。この「押さえ蓋」は、重石の役割を果たせばよく、必ずしも容器本体の開口部全体を覆う必要はなく、容器本体の開口部の一部の範囲に配置されるものであればよい。
重石は、具体的には、例えば味噌、漬物、もろみ、漬け物等の保存食を製造する際に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、食品衛生面において、従来のコンクリート等を用いたものよりも好適であり、多様なニーズに対応でき、かつリサイクル可能な、食品用に好適な重石を提供することができる。
また、本発明の樹脂製重石は、押出加工、切削加工を経て簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜図4は本発明の樹脂製重石の一例を示したものである。
図1は樹脂製重石の斜視図である。
図2は樹脂製重石を上面(食品側に配置される面と反対側の面)から見た状態を示した平面図である。
図3は、図2に示すA−Aにおいて切断した側断面図であり、図4は図2に示すB−Bにおいて切断した側断面図である。
【0010】
この樹脂製重石は、樹脂製の本体1と、その内部に設けられた重り6とを有している。
本体1は円板状で、この例において、その直径は1360mm、高さは100mmである。本体1は、上面に円形の重り用の凹部(穴)4等が設けられている円板状の重り収納体2と、この重り収納体2よりも小径の円板状で、前記重り用の凹部(穴)4の円形の開口部に、重り収納体2の上面と面一になる様に取り付けられている蓋体3とから構成されている。
すなわち、本体1は、上述の従来用いられていた食品用の重石の様に樹脂でコーティングするものではなく、中空ではない。本発明において、「中空ではない樹脂製の本体」とはいわゆる無垢材であることを示し、コーティングに用いられるブロー成形体の様なシート状、風船状のものを除く趣旨である。よって、この例の様に本体1の内部に重り6を配置するためのスペースが設けられていてもよい。
なお、本明細書において「穴(あな)」は底を有する貫通しない凹部を示し、「孔(あな)」は底を有しない貫通しているものを示すものとする。
【0011】
重り収納体2において、その上面には、3つの重り用の凹部(穴)4と、3つの把持部取り付け用の孔8が、重り収納体2の同心円上(この例においては直径820mmの円上)に、交互に、かつ均等に配置されている。
この例において、重り用の凹部(穴)4の直径は275mm、深さは80mmである。把持部取り付け用の孔8は円形であり、その直径は120mmである。なお、把持部取り付け用の孔8内には棒状の把持部11が設けられており、この把持部11を掴みやすくするために、把持部取り付け用の孔8の上面側の開口部はわずかに拡径されている。
【0012】
そして、3つの重り用の凹部(穴)4内には、それぞれ金属等からなる重り6がおさめられている。この重り6は円柱状で、上下面は重り用の凹部(穴)4の底面と略同一のサイズを有し、かつ、図3に示す様に、その高さは重り用の凹部(穴)4の深さのサイズよりもやや小さくなっている。この例において重り6の高さは60mmである。なお、重り6の中心には、ハンドリングのために、小穴6aが設けられている。
そして、図3に示す様に、重り6の上には円板状の蓋体3が設けられている。蓋体3は重り用の凹部(穴)4の直径と略同一の直径を有し、その高さは重り6の上に配置された際に重り収納体2の上面と蓋体3の上面とが面一になる様に調整されている。この例において、蓋体3の直径は274mm、高さは20mmである。そして、蓋体3と重り収納体2とは、好適には溶接により一体化されて本体1が構成されている。
【0013】
なお、蓋体3は必須ではなく、重り用の凹部(穴)4が開口した状態で樹脂製重石を使用することもできる。すなわち、本発明において、「本体の内部に重りが設けられている」とは、本体1において、その外表面よりも内側に重り6が配置されていることを意味し、重り6を収納する空間の一部が開口していてもよいものとする。ただし、上記の例の様に重り収納体2と蓋体3とによって囲まれる様にして、本体1内部に重り6が設けられていると、食品衛生面においてより有利である。例えば漬け物等を製造する場合において、容器本体内におさめられた野菜の上に樹脂製重石を配置すると、時間がたつにつれて野菜から水が出て、この水が樹脂製重石の上面に接触することがあるが、この様な場合であっても上述の例の様に重り6の周囲全体が本体1にて囲まれていると、重り6は食品に接触せず、好ましい。
この例において、本体1の重さは119kgであり、重り6の重さは27kg×3であり、樹脂製重石の重量は200kgに調整されている。
【0014】
また、3つの把持部取り付け用の孔8内には、それぞれ把持部11が設けられている。把持部11は、重り収納体2(本体1)の側面2aに設けられた孔2bに、重り収納体2の中心に向かって挿入された棒10によって形成されている。
すなわち、図4に示す様に、棒10は、重り収納体2の側面2aに設けられた孔2bに挿入されている。なお、この例においては後述する様に孔2b内の側面2a側に樹脂を充填する際の操作上の便宜のため、孔2bは側面2aに設けられた溝2cに配置されている。そして、側面2aから挿入された棒10の先端10aは、把持部取り付け用の孔8に到達し、その側壁8aから突出し、把持部取り付け用の孔8を通って、側壁8aに対峙する側壁8bに挿入され、重り収納体2内に配置されている。棒10の後端10bは、重り収納体2内の外周付近に配置されている。また、側面2aに設けられた孔2bは、樹脂を充填することによって封止されている。樹脂を充填する方法としては、特開2004−338279号公報に記載されている方法が好ましい。
この様に、把持部取り付け用の孔8内において、対峙する側壁8a、8b間を掛け渡す様に、把持部11が設けられている。
この例において、棒10の直径は16mm、全長は340mmである。また、棒10は、重り収納体2の下面から高さ50mmの位置に配置されている。また、棒10の後端10bは側面2aから30mmの位置に配置されている。
【0015】
なお、重り収納体2(本体1)の中心には、重り収納体2を貫通する温度計挿入用の孔12が設けられている。また、重り収納体2には、その周縁付近に重り収納体2を貫通するサンプル採取用の孔14が設けられている。この例において、温度計挿入用の孔12の直径は50mm、サンプル採取用の孔14の直径は120mmである。
温度計挿入用の孔12を使用する場合は、例えば容器本体内の食品の上に樹脂製重石を配置し、この温度計挿入用の孔12から温度計を差し込んで、容器本体内の温度を測定する。サンプル採取用の孔14を使用する場合は、例えば同様にして樹脂製重石を配置し、このサンプル採取用の孔14から治具を差し込み、容器本体内の食品の一部を取り出す。
【0016】
本体1(重り収納体2および蓋体3)を構成する樹脂としては、合成樹脂が好ましく、加工性等の観点から、熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ナイロン(ポリアミド樹脂);ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等が挙げられる。
これらの中でもポリオレフィンは安価で加工が容易であり、またリサイクルが容易であるので好ましく、食品衛生上、特にポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、さらに好ましくはポリプロピレンである。なお、樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
【0017】
重り6の材料としては、充分な重さを確保する点、およびリサイクルの点から、金属が好ましく、例えばステンレス、鉄等が挙げられる。
棒10の材料としては、強度の点、衛生面、およびリサイクルの点から、金属が好ましく、例えばステンレス等が挙げられる。
【0018】
なお、上記の例においては重り6を用いて樹脂製重石の重さを調整する形態としたが、重り6は必須ではなく、本体1自体の重さによって食品に所望の圧力をかけることができる場合には設ける必要はない。
ただし、重り6を設ける場合には、本体1自体の大きさ等を変更せずに、重り6の重さや数を調整することによって、樹脂製重石全体の重さを調整することができ、より多様なニーズに対応可能となる。
また、上記の例においては、本体1は円板状であるが、これに限定するものではなく、適宜所望の形状とすることができる。ただし、食品上に配置する際の操作性や、複数の重石を容易に積み重ねることができ、製造時の取り扱いや収納のしやすさの観点から、上下面が平滑な形状であることが好ましい。
【0019】
この樹脂製重石は、樹脂を厚板に押出加工し、得られた樹脂成形品を切削加工することによって製造することができる。
すなわち、押出加工によって、重り収納体2(本体1)の厚さに相当する厚さを有する樹脂からなる板(樹脂成形品)を製造する。ついで、これを重り収納体2(本体1)の直径にあわせて円板状に切削加工する。ついで、この円板に、切削加工によって重り用の凹部(穴)4、把持部取り付け用の孔8、温度計挿入用の孔12、およびサンプル採取用の孔14を形成する。
また、同様にして押出加工により得られた板(樹脂成形品)を切削加工することにより蓋体3を製造する。
ついで、図3に示す様に、重り収納体2の重り用の凹部(穴)4に重り6を配置し、蓋体3をかぶせて重り収納体2と蓋体3とを溶接し、本体1を完成させる。
そして、棒10を重り収納体2の側面2aから挿入して、孔2bに樹脂を充填して棒10を固定し、把持部11を形成する。
この様に本発明の樹脂製重石は、押出加工と切削加工を経て容易に製造することができる。そして、さらに必要に応じて組立加工を経て容易に製造することができる。また、ブロー成形等の様に特別な金型を必要とせず、種々のサイズの樹脂製重石を製造することができる。
すなわち、切削加工によるので、既設の設備にて対応可能である。
また、切削加工により、円、角、大小等の自由に設計することができる。また重さも任意に設定可能である。
また、補修も容易である。
【0020】
この様に本発明の樹脂製重石においては、本体1が樹脂から形成されているので、コンクリート等を主材料として用いた従来品と比べて食品衛生面において有利である。
また、ブロー成形の様に特別な金型を必要とする方法以外の方法で製造することができるので、サイズ、形状、重さ等、多様なニーズに対応できる。例えば、好適には上下面が平滑な形状とすることができ、これにより食品上に配置する際の操作性が向上し、また、複数の重石を容易に積み重ねることができるので、製造時の取り扱いや収納のしやすさの観点から好ましい。
また、樹脂を用いているので、リサイクルに適している。
また、重り6や棒10を用いた場合であっても、これらはリサイクルが容易な金属等の材料から形成することができるので、同様にリサイクルが容易である。
また、樹脂製の本体1を用いているので、従来品の様にコーティングが破れる等の不都合がなく、本体1自体の強度が向上しているので、コンクリート等を用いた従来品と比べて耐久性が向上する。すなわち、多少の傷や破損が生じてもコンクリート等を用いたものと比較して、砕けて粉々になる様なことがなく、継続してある程度使用可能である。また、衛生上も好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の樹脂製重石の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す樹脂製重石を上面(食品側に配置される面と反対側の面)から見た状態を示した平面図である。
【図3】図1、図2に示す樹脂製重石において、重り用の凹部(穴)に蓋体をかぶせる状態を示した一部側断面図(図2に示すA−Aで切断した断面図)である。
【図4】図1、図2に示す樹脂製重石において、把持部取り付け用の孔に把持部を設ける状態を示した一部側断面図(図2に示すB−Bで切断した断面図)である。
【符号の説明】
【0022】
1 本体
2 重り収納体
3 蓋体
4 重り用の凹部(穴)
6 重り
8 把持部取り付け用の孔
10 棒
11 把持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の本体を有することを特徴とする樹脂製重石。
【請求項2】
前記樹脂製の本体は、中空ではない樹脂製の本体である請求項1に記載の樹脂製重石。
【請求項3】
前記樹脂製の本体と、この本体の重量を調整するために設けられた重りとを有する請求項1または2に記載の樹脂製重石。
【請求項4】
前記樹脂はポリオレフィンである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製重石。
【請求項5】
前記ポリオレフィンはポリプロピレンである請求項4に記載の樹脂製重石。
【請求項6】
前記重りは前記本体の内部に設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂製重石。
【請求項7】
押出加工と切削加工を経て製造することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂製重石の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−49905(P2007−49905A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235200(P2005−235200)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(000206163)平成ポリマー株式会社 (7)
【Fターム(参考)】