説明

樹脂配管の部品取付け部構造

【課題】シール性が高く、確実かつ強固に部品の取付けが可能な樹脂配管の部品取付け部構造を提供する。
【解決手段】樹脂製の取付け口2が金属製の規制リング3と接続ポート9とに挟まれて変形が抑制されて補強され、規制リング3は取付け口2に外嵌され係合部2aと係合して樹脂配管1に対して強固に固定され、互いに金属製の規制リング3と接続ポート9は、固定ボルト11を用いて強固に固定されることによって、樹脂配管1、規制リング3および接続ポート9が一体的に強固に固定されて変形しにくくなり、規制リング3がOリング8に作用する反力を受けて、取付け口2の内周面と接続ポート9とのすき間をなくして高いシール性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂配管の部品取付け部構造に関し、さらに詳しくは、シール性が高く、確実かつ強固に部品の取付けが可能な樹脂配管の部品取付け部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量化を図るためにエンジンのインテークマニホールドに樹脂が使用されるようになり(例えば、特許文献1参照)、また、燃料電池に使用される配管やマニホールドには、軽量化や内部を流通する流体によって金属イオンの溶出を防ぐ等の目的で、樹脂が使用されるようになり、樹脂配管の用途が広がりつつある。
【0003】
従来の樹脂配管におけるセンサ等の部品を取付ける構造は、例えば図4に示すような構造をしていた。この構造では、内周面にねじ溝を有し、樹脂配管1の内部と連通する連通孔4を有する取付け口2が樹脂配管1に突設され、この取付け口2にフランジ部9aを有する筒状の金属製の接続ポート9が螺合されて固定されていた。接続ポート9には、樹脂配管1内を流通する流体の状態を検知する温度センサ、圧力センサ等の部品12の一部が嵌着されて取付けられていた。
【0004】
しかしながら、この構造では、樹脂製の取付け口2と金属製の接続ポート9との熱膨張率の違いによって、相互間にすき間が生じ、また、樹脂の経時的なクリープによって相互間にすき間が生じてシール性を確保できないという問題があった。
【0005】
また、燃料電池のマニホールドのような樹脂配管では、内部を流通する流体に応じて使用できる樹脂が限定されるといった制約があり、高強度の樹脂が使用できない場合には、取付け口2に接続ポート9を強固に固定することができず、これに伴い、部品12を確実、強固に樹脂配管1に取付けることができないという問題があった。
【0006】
また、樹脂配管にセンサ等を取付けるための別の構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この提案では、樹脂配管の外周部から外側にセンサが挿入される円筒部を膨出させ、この円筒部に周方向に形成されるスリットを設けて、円筒部に挿入されたセンサに設けられた溝部とスリットとに保持金具を嵌合させてセンサを円筒部に取付ける構造としている。
【0007】
しかしながら、この構造では、円筒部にスリットを設けることによって、円筒部の剛性が低下し、部品を確実、強固に取付けるには不利な構造であった。
【特許文献1】特開2003−254181号公報
【特許文献2】特開2004−177223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、シール性が高く、確実かつ強固に部品の取付けが可能な樹脂配管の部品取付け部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の樹脂配管の部品取付け部構造は、樹脂配管に該樹脂配管内部と連通させて部品を取付けるための構造であって、前記樹脂配管の外周に突設され、前記樹脂配管内部と連通する連通孔を有する取付け口と、該取付け口の外周から突出する係合部と、該係合部に係合するとともに前記取付け口に外嵌される剛性のあるリング状の規制体と、フランジ部を有し前記部品が嵌着される剛性のある筒状の接続ポートとを備え、前記接続ポートは前記取付け口の内周面との間にOリングを介在させて前記連通孔に嵌挿されるとともに、前記フランジ部が前記リング状の規制体に固定されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂配管の部品取付け部構造によれば、樹脂配管の外周に突設され、樹脂配管内部と連通する連通孔を有する取付け口と、この取付け口の外周から突出する係合部と、この係合部に係合するとともに取付け口に外嵌される剛性のあるリング状の規制体と、フランジ部を有し部品が嵌着される剛性のある筒状の接続ポートとを備え、接続ポートは取付け口の内周面との間にOリングを介在させて連通孔に嵌挿されるとともに、フランジ部がリング状の規制体に固定される構造としたので、樹脂製の取付け口が剛性のあるリング状の規制体と接続ポートとに挟まれて変形が抑制されるとともに、補強される構造となる。
【0011】
リング状の規制体は、取付け口に外嵌され、取付け口の係合部と係合することによって、移動が抑えられるので、樹脂配管に対してリング状の規制体が強固に固定可能となる。また、リング状の規制体と接続ポートは、互いに剛性があり、固定ボルト等を用いて締結しても容易に変形せずに固定できるので、確実で強固に固定可能であり、これによって樹脂配管、リング状の規制体および接続ポートが一体的に強固に固定可能となり、変形しにくいものとなる。
【0012】
また、リング状の規制体がOリングに作用する反力を受けるので、取付け口の内周面と接続ポートとのすき間をなくして高いシール性を確保することができる。
【0013】
このように、取付け口とのシール性が高く、強固に一体化して変形の少ない接続ポートに部品を取付けるので、高いシール性を保って、部品を確実、強固に取付けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の樹脂配管の部品取付け部構造を図に示した実施形態に基づいて説明する。図1は実施形態の縦断面構造を示している。この樹脂配管1は、外周に樹脂配管1の内部と連通する連通孔4を有する取付け口2を突設し、取付け口2の上端には外側に突出するフランジ状の係合部2aが設けられている。この樹脂配管1、取付け口2および係合部2aは樹脂で一体成形されている。
【0015】
取付け口2には、この外周に密着するとともに、係合受部3dを係合部2aと係合させる剛性のあるリング状の規制体として、金属製の規制リング3が嵌め込まれている。
【0016】
規制リング3が嵌め込まれた取付け口2の連通孔4には、上端にフランジ部9aを有する筒状の金属製の接続ポート9が挿入され、介在するOリング8によって取付け口2の内周面と接続ポート9との間はシールされた状態となっている。
【0017】
接続ポート9の上端のフランジ部9aは、規制リング3の上面と当接し、ワッシャ10を介装してフランジ部9aに設けられた貫通孔9bを挿通し、規制リング3に設けられたボルト穴7に螺合する固定ボルト11によって固定された構造となっている。
【0018】
接続ポート9には、樹脂配管1の内部と連通する各種部品12が取付けられる。例えば、樹脂配管1の内部を流通する流体の温度、圧力、流量、湿度、濃度等を感知するセンサが取付けられる。また、別の配管を取付けることもできる。
【0019】
この構造では、樹脂製の取付け口2が、金属製の規制リング3および接続ポート9に挟まれて変形が抑制されるとともに補強されることになる。
【0020】
規制リング3は、取付け口2の外周に密着して嵌め込まれ、規制リング3の係合受部3dは、取付け口2の上端の係合部2aと係合することによって、規制リング3の移動を抑えるので、樹脂配管1に対して規制リング3が強固に固定可能となる。係合部2aおよび係合受部3dの形状は、図1に示したものに限定されず、種々の形状を採用することができる。
【0021】
規制リング3と接続ポート9は、互いに金属製であり、固定ボルト11を用いて固定しても容易に変形しないので、確実で強固な固定可能であり、これによって樹脂配管1、規制リング3および接続ポート9が一体化して強固に固定され、変形しにくい構造となる。規制リング3と接続ポート9との固定は、図1に示した固定ボルト11に限定されず、他の固定手段を用いることができる。
【0022】
また、Oリング8の半径方向外側に規制リング3が配置されているので、規制リング3がOリング8に作用する反力を受け、取付け口2の内周面と接続ポート9とのすき間をなくして高いシール性を確保することができる。
【0023】
以上のように、取付け口2と高いシール性を保ちつつ、強固に一体化して変形が少ない接続ポート9に部品12を取付けるので、高いシール性を保って確実、強固な取付けが可能となる。
【0024】
樹脂配管1は、内部を流通する流体によって耐食性、耐熱性等の要求性能を満す樹脂が使用されるため、必ずしも剛性の高い樹脂を使用できるとは限らない。例えば、燃料電池自動車に搭載される燃料電池のマニホールドは、軽量化が求められるとともに狭いスペースに収まるように複雑な形状となり、内部を流通する流体によって使用できる樹脂が限定され、制約が多くなる。
【0025】
このように使用可能な樹脂に制約があり、剛性の低い樹脂によって樹脂配管1が形成される場合でも、本発明の構造であれば、部品12を確実、強固に樹脂配管1に取付けることができ、高いシール性を確保することができる。換言すれば、部品12を取付けるための剛性を考慮せずに配管に使用する樹脂を選択することができ、材料選択の幅を広げることが可能となる。
【0026】
規制リング3は金属製に限定されず、取付け口2の変形を規制でき、固定ボルト11による固定によって容易に変形しない剛性のある材質を用いることができ、例えば、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂や、それらをガラス繊維、カーボン繊維等で複合強化した樹脂、また、セラミック等を使用することができる。
【0027】
接続ポート9も金属製に限定されず、部品12の取付けや固定ボルト11による固定によって容易に変形しない材質として、規制リング3と同様に上記した材質を使用することができる。
【0028】
規制リング3は、樹脂配管1を射出成形する際に、金型にインサートしておき、図2に示すように樹脂配管1と一体化することもできる。これによって、取付け口2と規制リング3とを強固に密着して接合することができる。この構造によれは、別途、接続ポート9を組み付けるだけでよいので、組立工数を削減することが可能となる。
【0029】
尚、図2に示すようにフランジ状の係合部2aの外縁に凹部2bを設ける等によって、係合部2aの外縁を非円形にすることによって、取付け口2と規制リング3との回転ずれを防止することができる。
【0030】
規制リング3は、周方向に複数に分割した分割体を組み付けて構成することもできる。例えば、図3に示すように、規制リング3を2つの分割体3a、3bとし、対向する一端部をヒンジ部6で連結し、それぞれの他端部に貫通孔5aを有する接合片5を設け、それぞれの貫通孔5a、5aにボルト等を挿通させて両接合片5、5を当接させてリング状に連結して構成することもできる。分割数やリング状にする連結手段は、図示したものに限定されず適宜、決定することができる。
【0031】
この規制リング3の構造では、取付ける部品12等に応じて、適切な材質や形状等の規制リング3を選択して取付け口2の外周に嵌め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の樹脂配管の部品取付け部構造を例示する縦断面図である。
【図2】本発明の樹脂配管の部品取付け部構造の組立状態を例示する斜視図である。
【図3】本発明に係る規制リングの構造を例示する斜視図である。
【図4】従来の樹脂配管の部品取付け部構造を例示する縦断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 樹脂配管
2 取付け口 2a 係合部 2b 凹部
3 規制リング(リング状の規制体) 3a、3b 分割体 3d 係合受部
4 連通孔
5 接合片 5a 貫通孔
6 ヒンジ部
7 ボルト穴
8 Oリング
9 接続ポート 9a フランジ部 9b 貫通孔
10 ワッシャ
11 固定ボルト
12 センサ(部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂配管に該樹脂配管内部と連通させて部品を取付けるための樹脂配管の部品取付け部構造であって、前記樹脂配管の外周に突設され、前記樹脂配管内部と連通する連通孔を有する取付け口と、該取付け口の外周から突出する係合部と、該係合部に係合するとともに前記取付け口に外嵌される剛性のあるリング状の規制体と、フランジ部を有し前記部品が嵌着される剛性のある筒状の接続ポートとを備え、前記接続ポートは前記取付け口の内周面との間にOリングを介在させて前記連通孔に嵌挿されるとともに、前記フランジ部が前記リング状の規制体に固定されることを特徴とする樹脂配管の部品取付け部構造。
【請求項2】
前記リング状の規制体が、インサート成形によって前記樹脂配管と一体化されている請求項1に記載の樹脂配管の部品取付け部構造。
【請求項3】
前記リング状の規制体が、周方向に複数に分割された分割体から構成されている請求項1に記載の樹脂配管の部品取付け部構造。
【請求項4】
前記樹脂配管が燃料電池自動車に搭載される燃料電池のマニホールドであるとともに、前記接続ポートは前記樹脂配管内を流通する流体の状態を検知するセンサを取付けるものである請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂配管の部品取付け部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−234127(P2006−234127A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52558(P2005−52558)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】