説明

橋桁の送り込み方法及びその送り込み方法に使用されるスプライス乗り越え用プレート

【課題】 スプライス乗り越え用プレートの装着、取外しが非常に楽で、橋桁の送り込みの工期を短縮し、しかも作業者へ労働負担を軽減する橋桁の送り方法を提供する。
【解決手段】 磁石8による吸着で、隣設する所定長さの橋桁単位体cの下板c2、c2に跨って設けられるスプライス手段Dの下方に下面を位置させてスプライス乗り越え用プレートBを装着した後、そのスプライス乗り越え用プレートBが各ピアPの水平送り装置Aの送り面6に載承されるように橋桁Cの送り込みが行われ、橋桁Cの所要量の送り込みが行なわれた後、スプライス乗り越え用プレートBを、その吸着力に抗して剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は隣設する橋桁単位体の下板に跨設されるスプライス手段の水平送り装置との干渉を防止して橋桁を送る橋桁の送り込み方法及びその送り込み方法に使用されるスプライス乗り越え用プレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋桁は、ピアの手前側に設置した組立ヤードで所定長さの橋桁単位体(例えばボックス桁)を連結しつつ、各ピアに設置したクローラを送り面とする水平送り装置にウェブ直下を載承して、ピア上方に送り込まれる。
斯様な所定長さの橋桁単位体同士は、スプライス手段で連結される。
そのスプライス手段は、隣設する橋桁単位体の下板、上板、ウェブ各々間に跨ってその下板、上板、ウェブを挟むようにスプライスプレートをあてがい、ボルト・ナット(固定金具)で締結することによって構成されている。
そのため、ウェブの下方位置でボルトやナット(固定金具)が下側に突出し、これが水平送り装置の送り面に干渉し傷付けて、水平送り装置の耐久性を低下させる問題があった。
【0003】
それを防止するために、従来では、隣設する橋桁単位体の下板に跨って前記固定金具下端よりも下面が下側に位置する所要厚のスプライス乗り越え用プレートを下板に跨って組立ヤードで溶着しておいて、橋桁送り込み時にそのスプライス乗り越え用プレートが水平送り装置の送り面に載承されて、送り込まれるようにしている。
しかしながら、橋桁の送り込みが終了した後に溶接されているスプライス乗り越え用プレートを強制的に削り取る作業が非常に大変なものであった。
尚、前記する橋桁の送り込み方法及びそれに使用するスプライス乗り越え用プレートの先行技術文献は、出願人としては不知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、スプライス乗り越え用プレートの装着、取外しが非常に楽で、橋桁の送り込みの工期を短縮し、しかも作業者へ労働負担を軽減する橋桁の送り方法及びその送り方法に使用されるスプライス乗り越え用プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために講じた技術的手段は、隣設する橋桁単位体の下板に跨設されるスプライス手段の下方に下面が位置するようにスプライス乗り越え用プレートを磁力で剥離可能に吸着させて、橋桁の送り込み時において前記スプライス手段が水平送り装置上を通過する時に前記スプライス乗り越え用プレートが水平送り装置の送り面に載承されるように構成してなり、橋桁を所要量送り込んだ後、前記スプライス乗り越え用プレートを橋桁から吸着力に抗して剥離することを特徴とする橋桁の送り込み方法である(請求項1)。
そして、橋桁の送り方法に使用されるスプライス乗り越え用プレートは、スプライス手段、橋桁単位体の下板に剥離可能に吸着されていると好適である(請求項2)。
橋桁の送り方法に使用されるスプライス乗り越え用プレートは、下面をスプライス手段よりも下方に位置させる中央プレート部と、該中央プレート部の両長手端に一体または当接状もしくは近接状をもって橋桁の送り込み方向に配され中央プレート部の下面に連続して漸減する傾斜状面を下面とする前後のテーパープレート部とを備え、該中央プレート部、テーパープレート部に、剥離可能に吸着する手段として磁石を埋設していると好適なものである(請求項3)。
【0006】
以上の手段によれば、磁石による吸着で、隣設する所定長さの橋桁単位体の下板に跨って設けられるスプライス手段の下方に下面を位置させてスプライス乗り越え用プレートを装着した後、そのスプライス乗り越え用プレートが各ピアの水平送り装置の送り面に載承されるように橋桁の送り込みが行われ、橋桁の送り込みが行なわれた後にスプライス乗り越え用プレートは、その吸着力に抗して剥離される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上のように橋桁の送り込みに先立ってスプライス乗り越え用プレートを磁力で吸着させ、橋桁の送り込み後に吸着を解除するようにそのスプライス乗り越え用プレートを剥離して、橋桁の送り込みが終了するようになるので、スプライス乗り越え用プレートの装着からスプライス乗り越え用プレートの取外しで終了する橋桁の送り込み作業が非常に簡単になり、工期を大幅に短縮できるし、スプライス乗り越え用プレートとしても、磁石を付設したり、埋設したりするだけで良いので、何度となく繰り返し使用できる。
その上、磁石による吸着なので、剥離に際しても作業者に溶接箇所を削り取るような特殊な工具、機械を使用しての重労働を強いることがない。
しかも、スプライス乗り越え用プレートは、下面をスプライス手段よりも下方に位置させる中央プレート部と、その中央プレート部の下面に連続して漸減する傾斜状面を下面とする前後のテーパープレート部とを備えていると、例えば全長に亘って所要肉厚になっているスプライス乗り越え用プレートのように、水平送り装置の送り面に載承されて橋桁が滑動される時に、下板からスプライス乗り越え用プレートに乗り換える際の段差に起因して水平送り装置や橋桁に大きな衝撃を与えることがなく、水平送り装置の耐久性を低下させたり、橋桁に無用な負荷を掛けることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明橋桁の送り込み方法及びその送り込み方法に使用されるスプライス乗り越え用プレートの実施の形態を図1〜図5に基づいて説明すると、符号Aは水平送り装置、Bはスプライス乗り越え用プレートである。
【実施例1】
【0009】
水平送り装置Aは、図1、図4に示すように橋桁Cのウェブw直下に対応するようにピアPに設置され、機体1をベースプレート2から立設した複数本の鉛直油圧ジャッキ3…で支持し、その機体1の上側部に設けた複数本の付勢用油圧ジャッキ4…に薄板金属板5を介して送り面を構成するクローラ6の内側面に接触する低摩擦板(フッ素樹脂製)7を支持して、前記鉛直油圧ジャッキ3…、付勢用油圧ジャッキ4…のピストンの伸縮量を制御可能にした周知の構成のものである(特開2001−63999号等公報)。
この水平送り装置Aは、前記複数本の鉛直油圧ジャッキ4…の機能で機体1の傾斜量が調節可能で、その機体1に対して送り面であるクローラ6の傾斜量も調節可能にして、鉛直油圧ジャッキ3と、付勢用油圧ジャッキ4とで、クローラ6の高さ及び傾斜具合を微調整可能にしている。
この水平送り装置Aは、ピアP上面に直接設置したり、ピアPに組付けられたサンドル(図示せず)に設置されている。
尚、前記水平送り装置Aは、鉛直油圧ジャッキ3、付勢用油圧ジャッキ4を具備しない単純なタイプであっても良いものである。
【0010】
橋桁(ボックス桁)Cは、所定長さの橋桁単位体c、c端部同士を組立ヤードで、スプライス手段Dで連結すると共にそのスプライス手段Dの下方からの突出をスプライス乗り越え用プレートBで防止しつつ、前記水平送り装置Aから送り出されるようになっている。
【0011】
前記スプライス手段Dは、隣設する橋桁単位体cの上板c1、下板c2、ウェブw間に亘ってサンドイッチ状に配置される上下のスプライスプレートd1、d1を固定金具(ボルト・ナット)d2で締結して形成されている。
本実施の形態では、隣設する橋桁単位体cの下板c2、c2間のスプライス手段Dは、図2に示すように、ウェブwを境に内外に配置した上面側の細帯状のスプライスプレートd1’、d1’と、ウェブwの延長線を跨いで配置した下面側の広幅状のスプライスプレートd1”とを固定金具(ボルト・ナット)d2で締結した構成になっている。
【0012】
前記スプライス乗り越え用プレートBは、図1等に示すように隣設する橋桁単位体cの下板c2、c2に跨設されるスプライス手段Dの広幅状のスプライスプレートd1”下面において丁度ウェブw直下に配置されている。
【0013】
このスプライス乗り越え用プレートBは、合成樹脂材で成形されており、中央プレート部b1と、テーパープレート部b2とからなっている。
【0014】
前記中央プレート部b1は、スプライス手段Dにおける橋桁送り込み方向の長さ寸法と同等長さを有し、下面を前記下板c2のスプライス手段Dを締結する固定金具d2よりも下方に位置させてある。
【0015】
また、テーパープレート部b2は、前記中央プレート部b1の下面に連続して漸減する傾斜状面を下面とし、中央プレート部b1の前後両側に配置されるようになっている。
【0016】
前記中央プレート部b1、テーパープレート部b2は、各々のプレート部b1、b2に散在して埋設されている磁石(例えばネオジム磁石)8で前記下板c2、広幅状のスプライスプレートd1”に剥離可能に吸着されている。
前記磁石8は、本実施の形態では、表面を中央プレート部b1、テーパープレート部b2の上面に対して同面状にして埋設されている。
【0017】
以上のように組立ヤードで、所定長さの橋桁単位体cを、スプライス手段Dで連結し、更にそのスプライス手段Dの、下方からの突出を防止するようにスプライス乗り越え用プレートBを剥離可能に吸着して、ウェブw直下を水平送り装置Aの送り面6に載承して橋桁Cを送り込むと、スプライス手段Dが水平送り装置A上を通過する時にテーパープレート部b2、中央プレート部b1、テーパープレート部b2の順から水平送り装置Aの送り面6にスプライス手段Dが干渉することなくスプライス乗り越え用プレートBが載承されるように、各ピアPの水平送り装置Aに送り込まれる。
そして、橋桁Cの所要量の送り込みが完了すると、スプライス乗り越え用プレートBを、吸着力に抗して剥離させる。
【0018】
尚、前記橋桁Cの送り込みで下板c2が水平送り装置Aの送り面6に載承される時には、図5(イ)に示すように、前記鉛直油圧ジャッキ3の各ピストン13の伸び量を一定にし、また中央プレート部b1を挟んで上流側のテーパープレート部b2が水平送り装置Aの送り面6に載承される時には、図5(ロ)に示すように、そのテーパープレート部b2の傾斜に合わせて上流側から下流側に行くに従って鉛直油圧ジャッキ3の各ピストン13の伸び量を小さくし、更に中央プレート部b1が水平送り装置Aの送り面6に載承される時には、図5(ハ)に示すように、その鉛直油圧ジャッキ3の各ピストン13の伸び量をその小さな量に維持し、そして、下流側のテーパープレート部b2が水平送り装置Aの送り面6に載承される時には、図5(ニ)に示すようにそのテーパープレート部b2の傾斜に合わせて下流側から上流側に行くに従って鉛直油圧ジャッキ3のピストン13の伸び量を大きくして、橋桁Cの水平送りが行えるようになっている。
尚、テーパープレート部の傾斜具合が急な時には、鉛直油圧ジャッキ、付勢用油圧ジャッキを併用すること自由なものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態橋桁の送り込み方法の実施の形態において橋桁、スプライス乗り越え用プレート、水平送り装置の間係を示す側面図で一部切欠して示す。
【図2】図1の(2)−(2)線拡大断面図。
【図3】スプライス乗り越え用プレートの斜視図。
【図4】水平送り装置の側面断面図で、一部切欠して示す。
【図5】橋桁の送り工程の側面図で、(イ)は、橋桁の送り込み途中で下板が水平送り装置の送り面に載承される時の状態を、(ロ)は、上流側のテーパープレート部が水平送り装置の送り面に載承される時、(ハ)は、中央プレート部が水平送り装置の送り面に載承される時、(ニ)は、下流側のテーパープレート部が水平送り装置の送り面に載承される時の状態を示す。
【符号の説明】
【0020】
C:橋桁 B:スプライス乗り越え用プレート
c:橋桁単位体 c2:下板
c1:上板 w:ウェブ
A:水平送り装置 8:磁石
b1:中央プレート部 b2:テーパープレート部
d1:スプライスプレート d2:固定金具
D:スプライス手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣設する橋桁単位体の下板に跨設されるスプライス手段の下方に下面が位置するようにスプライス乗り越え用プレートを磁力で剥離可能に吸着させて、橋桁の送り込み時において前記スプライス手段が水平送り装置上を通過する時に前記スプライス乗り越え用プレートが水平送り装置の送り面に載承されるように構成してなり、橋桁を所要量送り込んだ後、前記スプライス乗り越え用プレートを橋桁から吸着力に抗して剥離することを特徴とする橋桁の送り込み方法
【請求項2】
隣設する橋桁単位体の下板に跨設されるスプライス手段よりも下面を下位に位置させて設けられて、橋桁の送り込みに際して水平送り装置に載承されるスプライス乗り越え用プレートであって、スプライス手段、橋桁単位体の下板に剥離可能に吸着されていることを特徴とする橋桁の送り込み方法に使用されるスプライス乗り越え用プレート。
【請求項3】
前記スプライス乗り越え用プレートは、下面をスプライス手段よりも下方に位置させる中央プレート部と、該中央プレート部の両長手端に一体または当接状もしくは近接状をもって橋桁の送り込み方向に配され中央プレート部の下面に連続して漸減する傾斜状面を下面とする前後のテーパープレート部とを備え、該中央プレート部、テーパープレート部に、剥離可能に吸着する手段として磁石を埋設していることを特徴とする請求項2記載の橋桁の送り込み方法に使用されるスプライス乗り越え用プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−63735(P2006−63735A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250192(P2004−250192)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(390032001)株式会社大滝油圧 (9)
【Fターム(参考)】