説明

橋桁止水構造

【課題】高い耐久性の下で、桁遊間に入り込む雨水、塵埃等を長期間にわたって堰止めて、それらの、桁下への流下、落下等を効果的に防止できる橋桁止水構造を提供する。
【解決手段】隣接する橋桁1の相互を、桁遊間2の上部で、一対のフィンガージョイント3aを介して伸縮自在に組み合わせるとともに、それらのフィンガージョイント3aの下方側で、桁遊間2に、内部への加圧流体の給排によって膨縮変形される止水のう4を、橋桁1の幅方向に延在させて配設し、この止水のう4の外表面を、隣接する橋桁1のそれぞれの対向端面に、膨張姿勢で密着させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
橋梁、高架橋等においては、橋桁等の、温度変化に伴う膨張や収縮の他、通行物の重量による撓を吸収するべく、一定間隔毎に桁遊間が設られており、この一方で、橋梁や高架橋等に降った雨水その他の、桁遊間からの自由な落下を阻止するために、隣接する橋桁の相互を、桁遊間の上部で、道路ジョイントを介して、たとえば伸縮自在に組み合わせた状態で、その道路ジョイントの下側に、たとえば、特許文献1および2に開示されているような、発泡層を具える止水材を、隣接する橋桁のそれぞれの対向端面に接着させて設けることが行なわれており、これによれば、桁遊間が存在してなお、道路ジョイントとしての伸縮継手の作用下で、車両等の自由な走行が十分に許容されることになり、また、伸縮継手を通過した雨水等は、その伸縮継手の下側で、多くは桁幅一杯に配設される止水材の作用下で、橋梁等の側方への流下を案内されることになる。
【特許文献1】特開平7−331758号公報
【特許文献2】特開平2006−29069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
しかるに、このような従来技術では、橋桁端面に固着した止水材が、温度変化による橋桁の繰返しの伸縮変形、伸縮継手上への車両の通過に伴う繰返しの圧縮変形、止水材に含まれる水分の繰返しの凍結、解凍等の影響の下で、比較的早期に破損に到るという問題があり、止水材が破損した場合は、図4の部分断面斜視図に破線をもって模式的に例示するように、一対の橋桁31の桁遊間32の上部に設けた伸縮継手33を通過して、または、伸縮継手33と舗装34との隙間を経て止水材35に達した、凍結防止剤等の塩化物その他を含むことのある雨水等が、その止水材35を通過して、または、桁端を伝って桁下まで落下ないしは流下することになるため、その雨水等によって桁端面その他のコンクリートが劣化されたり、橋桁31を支承する金属部品が腐食されたりすることになり、また、甚だしくは、フィンガージョイント33から進入した塵埃等が桁下に落下して、橋台および橋脚の天端に堆積することがあり、この堆積塵埃を放置すると橋桁支承部の劣化や動作不良が生じることになる。
【0003】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするとことは、高い耐久性の下で、桁遊間に入り込む雨水、塵埃等を長期間にわたって堰止めて、それらの、桁下への流下、落下等を効果的に防止できる橋桁止水構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係る橋桁止水構造は、隣接する橋桁の相互を、桁遊間の上部で、たとえば、指状部材が水平面内で相互に入り込むフィンガージョイントとすることができる道路ジョイントを介して組合わせるとともに、その道路ジョイントの下側方で、桁遊間に、内部への、大気圧より高圧の加圧流体の給排によって膨縮変形される、たとえば、円筒状、平板状等の形態をなす止水のうを、橋桁の幅方向に延在させて、これもたとえば、桁幅一杯に配設し、この止水のうの外表面を、隣接する橋桁のそれぞれの対向端面に膨満姿勢で密着させてなるものである。
【0005】
この場合好ましくは、止水のうの少なくとも一方の端部分を、それの延在方向の中央部分より低く位置させてなる。
そしてまた好ましくは、止水のうの、延在方向の、中央部分で高さが最も高く、両端部分で高さが低くなる山形形状に延在させてなる。
【0006】
また、止水のうは、少なくともそれの外表面を、ゴムを含むエストラマにより形成することが好ましく、一方、止水のうの少なくとも内表面はブチルゴムにて形成することが好ましい。
そしてまた、内部に埋設した、または埋設しない補強繊維層を有するものとすることが好ましい。
ところで、止水のうは、橋桁の上下方向に複数段にわたって配設することがより好適である。
【0007】
この発明に係る橋桁止水方法は、隣接する橋桁の相互を、桁遊間の上部で、道路ジョイントを介して組み合わせるとともに、その道路ジョイントの下方側で、桁遊間に、内部への加圧流体の給排によって膨縮変形される止水のうを、いずれか一方の橋桁の端面への固定下で、橋桁の幅方向に延在させて配設し、この止水のうの外表面を、それの内部への加圧流体の供給によって、隣接する橋桁のそれぞれの対向端面に、膨満姿勢で密着させるにある。
【0008】
この方法においてより好ましくは、止水のうを、それの延在方向の両端部分で橋桁端面に固定する。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る橋桁止水構造では、大気圧より高圧の加圧流体によって膨満させた止水のうを、そこへの供給圧力に基づいて橋桁の対向端面に密着させて機能させることにより、たとえば、温度変化に起因する橋桁の伸縮変形その他の変形に対する、止水のうの高い追従性の下で、すぐれた耐久性を発揮させることができ、これがため、塩化物その他を含むことのある雨水等を常に確実に堰止めて、たとえば、止水のうの両端の、所期した通りの位置から流下させることで、コンクリートの劣化、金属部品の腐食等を有効に防止することができ、また塵埃等の、桁下への落下堆積を効果的に防止して、橋梁等の維持管理を容易ならしめることができ、さらには、止水のうの、桁遊間閉塞作用によって、車両の走行騒音、段差部を通過時の衝撃音その他の橋梁等の下方への放射を有利に抑制することができる。
【0010】
なおこの止水構造においては、止水のうは、そこからの内圧の排出下では、桁端間隔より小さい寸法に縮径されるので、既存の橋桁に対する止水のうの事後的な配設、既設の止水のうの交換等をも簡単にかつ容易に行なうことができる。
【0011】
ここで、止水のうに供給する、大気圧より高圧の加圧流体としては、橋桁の大きな伸縮変位により柔軟に対応させるためには、液体より気体を用いることが好ましく、また気体にあっても、空気より窒素ガスを用いることが、ガスバリア性の点で好ましい。
【0012】
かかる止水構造において、止水のうの少なくとも一方の端部分を、それの延在方向の中央部分より低く位置させた場合には、それにて堰止め等した雨水等を、止水のう上の塵埃等とともに、配設高さの低い止水のう端部分から、所期した通りの位置へより円滑に流下させることができ、この場合にあって、止水のうを山形形状に延在させたときには、雨水等の、より速やかな振り分け流下を担保することができる。
【0013】
ところで、止水のうの少なくとも外表面を、エストラマにて形成したときは、止水のうの、桁端面等へのなじみを良くして、それらの間の液密性を大きく高めることができ、また、止水のうの少なくとも内表面をブチルゴムにて形成したときは、止水のうに高いガスバリア性を発揮させて、充填流体の不測の漏出を長期間にわたって有効に防止することができる。
【0014】
ここにおいて、止水のうが補強繊維層を有するものとしたときは、止水のう内への供給圧力に対する抗力を高めて、止水のうそれ自体の耐久性を向上させることができる。
そしてまた、止水のうを、橋桁の上下方向に複数段に配設した場合には、止水機能、塵埃落下防止機能、騒音低減機能等を一層高めることができる。
【0015】
またこの発明に係る方法によれば、止水のうを、いずれか一方の橋桁端面に固定することで、所要の止水構造を容易に実現することができる。
そしてこの場合にあって、止水のうの両端部分を橋桁端面に固定するときは、止水のうの取付けを簡易にしてなお、止水のうに所要の機能を十分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、この発明の実施の形態をその一部について示す断面斜視図であり、図中1は、桁端を対向させた姿勢で隣接配置した一対の橋桁を示し、2は、両橋桁1の桁端間に区画される桁遊間を示す。
【0017】
また3は、それぞれの橋桁1に取り付けた道路ジョイントを示す。図示のこの道路ジョイント3は、桁遊間2の上部で、水平面内で相互に入り込み配置される一対のフィンガージョイント3aからなり、両橋桁1は、これらのフィンガージョイント3aを介して、相互に伸縮自在に組合される。
【0018】
ここでは、かかる道路ジョイント3の下方側で、桁遊間2内に、内部への加圧流体の給排によって膨縮変形される止水のう4を、橋桁1の幅方向に延在させて位置決め配置し、たとえば、桁幅一杯に延在させて設けたこの止水のう4を、その内部への、大気圧より高圧の加圧液体もしくは加圧気体の供給によって膨満させて、それの外表面を、隣接する橋桁1のそれぞれの桁端面1aに、少なくもと液密に密着させることで十分な止水機能の発揮を担保する。
【0019】
なおここで、止水のう4の少なくとも外表面を、ゴムその他のエストラマにて形成したときは、止水のう4の外表面の、桁端面へのなじみを良くして、止水のう4と、桁端面との間の液密性をより高めることができ、また、止水のう4の少なくとも内表面をブチルゴムに形成したときは、封入気体に対するバリア性をより向上させることができる。
そしてまた、止水のう4が補強繊維層を有するものとしたときは、内圧耐久性を大きく向上させることができる。
【0020】
ところで、止水のう4は、たとえば、図2(a)に例示するように、当初から中空円筒状をなすホース状部材4aにて構成することができる他、図2(b)に例示するように、平坦な初期形状を有し、厚み方向の中央部に、加圧流体の給排を許容する離型部を有するも、両側部は、一体的な封止構造になる帯状部材4bによっても構成することもでき、このような止水のう4の所定の個所への位置決め配置は、たとえば、それがホース状部材4aからなると、帯状部材4bからなるとの別なく、その両端部分を気密に圧潰封止する密封金具5を介して、対をなす橋桁1の一方の桁端面1aに取付け固定することによって行うことができ、この場合、止水のう4に対する加圧流体の給排は、いずれか一方の密封金具5に止水のう4の内側に達するノズル6を設けることによって行なうことができる。
【0021】
なお、図2(a),(b)に示すところでは、止水のう4はいずれも、その全体が水平姿勢となるように桁端面1aに取り付けられているも、止水のう4を、図3(a),(b)に例示するように、一方の端部分が他方の端部分より低く位置するように延在させた場合、および図3(c)に例示するように、止水のう4の延在方向の中央部が、最も高く位置する山形形状となるように取付けたときは、それを膨満させて、両桁端面に密着させることで、その止水のう上へ流下した雨水等を、橋桁1の一方の所要の側部、または、それぞれの側部へ、塵埃等ともに円滑に流下させることができる。
【0022】
桁端間に以上のようにして配設されて、膨満姿勢で両桁端面1aに液密に密着される止水のう4は、橋桁1の伸縮変形に柔軟に追従することができ、すぐれた耐久性を発揮できるので、雨水等の、桁下への所期しない不測の流下、落下等を長期間にわたって十分に防止できるとともに、塵埃等の桁下への落下堆積等をもまた効果的に防止することができ、併せて、橋上で発生した騒音の、橋下への放射を、止水のうそれ自体のすぐれた防音性、遮音性等をもって有効に抑制することができる。
そして、これらのこと、なかでも防音性は、止水のう4を複数段に配設した場合にとくに顕著である。
【0023】
さらに、このような止水のう4は、密封金具5に設けたノズル6から内部供給流体を排出して縮径姿勢とすることで、それの、桁端面1aに対する係合を、簡易に、かつ迅速に解除することができるので、止水のう4の補修、交換等をもまた、短時間のうちに簡単に行なうことができる。
【0024】
ところで、止水のう4を上述したように、機能させるに当って、橋上の雨水等がそこから流下して止水のう4で堰止められ、そして、流動方向を変更されて、橋桁1の側方の所要位置から流下されるまでの間で、桁端面その他の、雨水等と接触するおそれのある領域には、塩化物等に対する保護層を予め形成しておくことが、桁端面1a、橋桁支承部その他の耐久性を高める上で好適である。
【0025】
以上に述べたような橋桁止水構造は、隣接する橋桁の相互を、桁遊間の上部で、道路ジョイント3を介して組み合わせるとともに、その道路ジョイント3の下方側で、桁遊間に、内部への加圧流体の給排によって膨縮変形される止水のう4を、いずれか一方の橋桁1の端面1aへの固定下で、橋桁1の幅方向に延在させて配設し、この止水のう4の外表面を、それの内部への加圧流体の供給によって、隣接する橋桁1のそれぞれの対向端面に、膨満姿勢で密着させることによって容易に実現することができ、この場合、止水のう4の両端部分を、図2および3に示すように、桁端面1aに固定することで、止水のう4の所要の形態での取付けを簡易なものとして、その止水のう4に所期した通りの機能を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態をその一部について示す断面斜視図である。
【図2】桁端面への止水のうの取付け例を示す略線斜視図である。
【図3】止水のうの他の取付け例を示す略線斜視図である。
【図4】従来技術を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 橋桁
1a 桁端面
2 桁遊面
3 道路ジョイント
3a フィンガージョイント
4 止水のう
4a ホース状部材
4B 帯状部材
5 密封金具
6 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する橋桁の相互を、桁遊間の上部で、道路ジョイントを介して組み合わせるとともに、その道路ジョイントの下方側で、桁遊間に、内部への加圧流体の給排によって膨縮変形される止水のうを、橋桁の幅方向に延在させて配設し、この止水のうの外表面を、隣接する橋桁のそれぞれの対向端面に、膨満姿勢で密着させてなる橋桁止水構造。
【請求項2】
止水のうの少なくとも一方の端部分を、それの延在方向の中央部分より低く位置させてなる請求項1に記載の橋桁止水構造。
【請求項3】
止水のうを山形形状に延在させてなる請求項2に記載の橋桁止水構造。
【請求項4】
止水のうの少なくとも外表面をエストラマにて形成してなる請求項1〜3のいずれかに記載の橋桁止水構造。
【請求項5】
止水のうが補強繊維層を有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の橋桁止水構造。
【請求項6】
橋桁の上下方向に止水のうを複数段に配設してなる請求項1〜5のいずれかに記載の橋桁止水構造。
【請求項7】
止水のうの少なくとも内表面をブチルゴムにて形成してなる請求項1〜6のいずれかに記載の橋桁止水構造。
【請求項8】
隣接する橋桁の相互を、桁遊間の上部で、道路ジョイントを介して組み合わせるとともに、その道路ジョイントの下方側で、桁遊間に、内部への加圧流体の給排によって膨縮変形される止水のうを、いずれか一方の橋桁の端面への固定下で、橋桁の幅方向に延在させて配設し、この止水のうの外表面を、それの内部への加圧流体の供給によって、隣接する橋桁のそれぞれの対向端面に、膨満姿勢で密着させる橋桁止水方法。
【請求項9】
止水のうを、それの延在方向の両端部分で橋桁端面に固定する請求項8に記載の橋桁止水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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