説明

橋梁の支承の防錆方法及び防錆構造

【課題】簡易で安価な構造で橋梁の支承の錆の発生、進行を長期的かつ確実に防止する。
【解決手段】橋梁の橋脚等の下部構造10の上端部に、支承20を囲むようにして枠装置40を設け、この枠装置40と支承20との間に下部構造10の上面を底部とする有底の環状空間Sを形成する。この有底環状空間Sに防錆グリース50を充填する。枠装置40は、複数の枠部材41を環状に並べることにより構成する。各枠部材41は、アルミ板からなる本体板42とアルミ型材からなる補強部材43とで構成する。枠装置40の上端部は、上部構造30から縁切りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、橋梁の橋脚等の下部構造上において橋桁等の上部構造を支持する支承を防錆する方法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の橋脚や橋台の上面には支承が設けられており、この支承を介して橋桁が橋脚や橋台に支持されている。通常、支承は、橋脚や橋台に定着された下沓と、橋桁に連結された上沓とに分かれており、上沓が下沓に対し橋軸方向に摺動可能になっている。これにより、温度変化等による橋桁の橋軸方向への伸縮を上沓の変位で吸収するようになっている。
一般に、支承には鋼製の部材が多く用いられており、年数が経つと発錆のおそれがある。特に海岸近くの潮風に晒される場所に設置されたものは発錆しやすい。また、豪雪地帯では積雪対策用に撒いた塩によって錆が出来やすくなる。そのような場合、従来はサンドブラストを行ない、亜鉛溶射し、上塗塗装を施している。
しかし、支承の下沓の内面や上沓の下面等にはサンドブラストが当たりにくい。そのような箇所の錆はノミやハンマー等の手工具で剥がすことになるが、極めて煩雑であり、完全に除去するには限界がある。そのため、錆が残存したまま亜鉛溶射せざるを得ない現状があり、上塗塗装も確実性が十分でない。したがって、数年も経つと、この箇所から再び発錆することが散見される。
特許文献1に記載のものでは、支承を環状の弾性シール材で囲み、この弾性シール材と支承との間にグリースを充填している。弾性シール材は、橋桁下面と橋脚上面との間に挟まれ、上下方向に圧縮されている。
【特許文献1】特開平3−12171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上掲特許文献1の弾性シール材は合成ゴム等で構成されているため、耐用年数が短く、長期的な使用は困難である。しかも、弾性シール材は、上下に圧縮されることにより橋桁の下面に圧接されているため、温度変化に応じた橋桁の伸縮に伴ない、弾性シール材に剪断力や摩擦力が働くことになり、損耗、劣化を来たしやすい。また、変位が大きい場合には、弾性シール部材が橋脚上面から外れたり、内部のグリースが漏れたりするおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、支承の錆の発生又は進行を長期的かつ確実に防止でき、しかも安価に施工できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明に係る支承防錆方法は、
橋梁の下部構造の上端部に、支承を囲むようにして複数の金属製の枠部材を環状に並べてなる枠装置を、上部構造から縁切りして設置し、該枠装置と支承との間に前記下部構造の上面を底部とする有底の環状空間を形成し、
この有底環状空間に防錆グリースを充填することを特徴とする。
また、本発明に係る支承防錆構造は、
橋梁の下部構造上の支承を囲むように環状に並べられた複数の金属製の枠部材を有し、前記支承との間に前記下部構造の上面を底部とする有底の環状空間を形成するとともに上部構造から縁切りされた枠装置と、
前記有底環状空間に充填された防錆グリースと、
を備えたことを特徴とする。
これによって、支承の錆の発生・進行を確実かつ長期的に防止することができる。サンドブラストが当たりにくく従来は防錆困難であった箇所にも、防錆グリースを確実に行き渡らせることができ、確実に防錆を施すことができる。また、枠装置が橋桁等の上部構造から縁切りされているため、温度変化等で上部構造が伸縮しても枠装置に剪断力や摩擦力が働くことがなく、損傷を防止でき、耐用年数を一層確実に長期化することができる。枠装置が変形により下部構造から外れたり内部の防錆グリースが漏れたりするおそれも防止できる。
【0005】
前記枠部材の各々が、幅方向を上下に向けて一方向に延びる平板状の本体板と、この本体板に連結用ネジにて固定された補強部材とを有しているのが好ましい。
前記補強部材は、前記本体板にネジ止めされているのが好ましい。これによって、本体板と補強部材を簡単に組み立てることができる。
前記本体板には、前記環状空間に面する内側面から外側面へ貫通し、前記連結用ネジを通す挿通孔が形成され、前記補強部材には、前記挿通孔に連なるとともに前記連結用ネジが螺合されるネジ孔と、このネジ孔に連なり前記防錆グリースを貯留可能な内部空間とが形成されていることが好ましい。
これによって、防錆グリースが前記ネジ孔に入り込んでも、補強部材の内部空間にとどめることができ、外部への漏れを防止することができる。
2つの枠部材どうしの連結は、ネジ(ボルト)にてなされるようになっているのが好ましい。これによって、枠装置を簡単に組み立てることができる。
【0006】
前記補強部材は、前記本体板の縁部に沿って延びているのが好ましい。
前記補強部材の側面が、前記枠部材の端面を構成していることが好ましい。前記本体板の端面と前記補強部材の側面とが面一をなして前記枠部材の端面を構成していることがより好ましい。
これによって、枠部材の端面を幅広にすることができる。これにより、互いに連結される枠部材どうしの当接面積を大きくすることができ、これら枠部材どうし間にシール剤を確実かつ容易に配置することができ、これら枠部材どうし間からの防錆グリースの漏れを確実に防止することができる。また、枠部材と上部構造との当接面積を大きくすることができ、これら枠部材と上部構造との間にシール剤を確実かつ容易に配置することができ、これら枠部材と上部構造との間からの防錆グリースの漏れを確実に防止することができる。
前記補強部材は、前記本体板の外側面(前記支承とは反対側を向く面)の周縁部に設けられているのが好ましい。
【0007】
前記枠部材は、防錆処理されているのが好ましい。
前記本体板は、アルミニウムにて構成されているのが好ましい。アルミニウム製本体板の表面にはアルマイト処理膜が形成されていることがより好ましい。更に前記アルマイト処理膜上に電着塗装膜が積層されているのが一層好ましい。
同様に、前記補強部材は、アルミニウムにて構成されているのが好ましく、その表面にアルマイト処理膜が形成されていることがより好ましく、更に前記アルマイト処理膜上に電着塗装膜が積層されているのが一層好ましい。
これによって、本体板及び補強部材の耐食性を高めることができるとともに、これら本体板と補強部材の連結用ネジとの間に電解電位差があっても電食を起きるのを抑制することができ、枠装置の耐用年数を一層長期化することができる。
また、安価なアルミを用いることにより材料コストを低廉化することができる。補強部材は、アルミの押し出し成形にてなる押し出し型材にて構成することにより、低コストで量産化することができる。
【0008】
防錆グリースの粘度は、支承の細部に浸透することができる程度であることが好ましい。これにより、支承の細部に空気や水分が浸入するのを確実に防止することができる。
支承が可動支承の場合、可動防錆グリースの粘度は、可動支承の動きを妨げない程度の粘度であるのが好ましい。
また、防錆グリースの粘度は、地震や強風を受けても枠から流出しない程度であるのが好ましい。
また、グリースは、枠からの不測の流出が起きても環境等への影響が小さいものであるのが好ましい。さらに、充填作業等がしやすく、安価であることが好ましい。
さらに、支承のケレン(錆落し)が3種程度でも、錆の進行を抑えることができることが好ましい。
防錆グリースとしては、例えば(公序良俗違反につき、不掲載)を用いるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易で安価な構造で橋梁の支承の錆の発生、進行を長期的かつ確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図2及び図3に示すように、橋梁の橋脚10(下部構造)の上面には、支承20が設置されている。支承20は、下沓21、上沓22、サイドブロック23等を有している。下沓21は、アンカーボルト11にて橋脚10に定着されている。下沓21に上沓22が橋軸方向(図2の左右方向、図3の紙面直交方向)に摺動可能に嵌合されている。上沓22が上部構造の主桁30に連結されている。これにより、主桁30が支承20を介して橋脚10に橋軸方向に変位可能に支持されている。主桁30の下面にはソールプレート31が一体に設けられており、このソールプレート31が支承20の上面に載設されている。
【0011】
橋脚10の躯体コンクリートの上面にはモルタル12が版状に打設されている。モルタル12の上面(下部構造の上面)は、水平かつ平坦になっている。このモルタル12上に支承防錆構造が設置されている。支承防錆構造は、枠装置40と、この枠装置40の内部に溜められた防錆グリース50とを備えている。
【0012】
図1に示すように、枠装置40は、支承20を囲む4つ(複数)の枠部材41にて構成され、平面視四角形の環状をなしている。
図4及び図5(a)に示すように、各枠部材41は、本体板42と、4つ(複数)の補強部材43とを有し、幅方向を上下に向けて水平に長く延びている。
【0013】
図5(b)に示すように、本体板42は、幅方向を上下に向け、長手方向を水平に向けた長方形の平板状をなしている。本体板42は、アルミニウムの平板で構成されている。詳細な図示は省略するが、本体板42の全表面には、アルマイト処理膜が形成され、さらにその上に電着塗装膜が積層されている。
【0014】
図5(a)に示すように、本体板42の外側面(支承20の反対側を向く面)の4つの縁部に、補強部材43がそれぞれ設けられている。各補強部材43は、本体板42の対応する縁に沿って直線状に延びている。本体板42の長辺側の縁に対応する補強部材43Lは長尺をなし、短辺側の縁に対応する補強部材43Sは短尺をなしている。
【0015】
各補強部材43は、アルミニウムを押し出し成形してなるアルミ型材にて構成されている。図6(a)及び(b)に示すように、補強部材43は、断面四角形の角筒部44と、この角筒部44の直交する2つの辺からまっすぐ延出された一対のフランジ45,45とを一体に有している。
【0016】
図5(a)に示すように、各補強部材43の長手方向の両端面は、45度に斜設されている。これにより、本体板42の互いに直交する2つの縁に対応する2つの補強部材43の端面どうしがぴったり合わされ、これら2つの補強部材43どうしが直角に接合されている。
【0017】
図6(a)及び(b)に示すように、各補強部材43と本体板42は、皿ネジ61にて連結されている。皿ネジ61は、鉄製であり、表面が亜鉛メッキされている。本体板42には、挿通孔42aが形成されている。補強部材43には、上記挿通孔42aに一直線に連なる雌ネジ孔43aが形成されている。雌ネジ孔43aは、補強部材43の角筒部44に設けられており、角筒部44の内部空間44aに連通している。
皿ネジ61が、本体板42の挿通孔42aに通され、補強部材43の雌ネジ孔43aにねじ込まれている。皿ネジ61の先端部は、角筒部44の内部空間44aに位置している。
【0018】
各補強部材43の外側面は、本体板42の対応する端面と面一に揃えられている。すなわち、図4に示すように、本体板42の長辺側の端面と長尺補強部材43Lの外側面とが面一をなし、枠部材41の長辺側の端面41el(図4)が構成されている。本体板42の短辺側の端面と短尺補強部材43Sの外側面とが面一をなし、枠部材41の短辺側の端面41es(図4)が構成されている。
【0019】
図1〜図3に示すように、各枠部材41は、長手方向を橋軸方向又は橋幅方向に向け、短手方向(幅方向)を上下に向け、更には本体板42が支承20を向き、補強部材43が外側を向くようにして、橋脚10の上面のモルタル12上に載置され、アンカーボルト70にて定着されている。図8に示すように、各枠部材41の下側の長尺補強部材43Lのフランジ45には、アンカーボルト70を通す挿通孔45cが形成されている。図示は省略するが、枠部材41の底面すなわち下側の長辺側端面41elと橋脚10の上面(モルタル12の上面)との間には、シリコーン等のシール剤が設けられている。
【0020】
図1に示すように、4つの枠部材41は、支承20を囲むように平面視四角形に組まれている。図7に示すように、互いに直交する2つの枠部材41のうち、一方の枠部材41の短辺側の端面41esが、他方の枠部材41の本体板42の内側面(支承20を向く面)の長手方向の端部に当接されている。図示は省略するが、これら直交する2つの枠部材41の当接面どうし間には、シリコーン等のシール剤が設けられている。
【0021】
直交する2つの枠部材41は、ボルト62にて連結されている。ボルト62は、鉄製であり、表面が亜鉛メッキされている。上記一方の枠部材41の短辺側端面41esを構成する短尺補強部材43Sのフランジ45には、ボルト62を通す挿通孔45bが形成されている。
上記他方の枠部材41の本体板42の長手方向の端部には、上記挿通孔45bに一直線に連なる挿通孔42bが形成されている。さらに、当該他方の枠部材41の短尺補強部材43Sには、上記挿通孔42bに一直線に連なる雌ネジ孔43bが形成されている。雌ネジ孔43bは、補強部材43の角筒部44に設けられており、角筒部44の内部空間44aに連通している。
ボルト62が、挿通孔45b,42bに挿通され、雌ネジ孔43bにねじ込まれている。ボルト62の先端部は、上記他方の枠部材41の短尺補強部材43Sの角筒部44の内部空間44aに位置している。
【0022】
枠部材41の上端部は、支承20の上沓22と下沓21の摺動部より上に位置している。
枠部材41の上端面は、主桁30の下フランジより下に少し離れている。これにより、枠装置40が、主桁30から縁切りされている。
枠部材41の内周は、上沓22の橋軸方向への摺動を十分に許容する大きさを有している。
【0023】
図1に示すように、枠の内周面と支承20の外周面との間に、環状空間Sが形成されている。図2及び図3に示すように、橋脚10のモルタル12の上面が、環状空間Sの底部を構成している。これにより、環状空間Sは、有底になっている。
【0024】
図1〜図3、図7、図8に示すように、この有底環状空間Sに防錆グリース50が充填されている。この防錆グリース50に支承20のほぼ全体が漬かっている。防錆グリース50は、少なくとも支承20の上沓22と下沓21の摺動部より上の高さまで充填され、該摺動部が防錆グリース50内に完全に漬かっている。防錆グリース50は、支承20の外表面は勿論、下沓21の内面やサイドブロック23の内面等、支承20内の上記摺動部等の細部に行き渡っている。
【0025】
防錆グリース50は、支承20の細部に浸透可能な粘性を有していることが好ましく、かつ支承20の動きを妨げない程度の粘性を有していることが好ましく、さらには地震や強風を受けても枠から流出しない程度の粘性を有しているのが好ましい。常温(25℃前後)で375程度の混和稠度が好ましい。また、グリース50は、枠からの不測の流出が起きても環境等への影響が小さいものであるのが好ましい。さらに、充填作業等がしやすく、安価であることが好ましい。
防錆グリース50としては、例えば(公序良俗違反につき、不掲載)を用いるとよい。
【0026】
支承防錆構造の施工手順を説明する。
まず、枠装置40の各枠部材41の作成を工場等で行なう。枠装置40の補強部材43は、押し出し成形にて製造し、所定長さにカットする。これによって、安価に量産することができる。枠本体と補強部材43には、アルマイト処理(陽極酸化処理)を施し、さらに電着塗装を行なう。そして、皿ネジ61にて枠本体と補強部材43を接合し、枠部材41を組み立てる。この枠部材41を、支承20の防錆施工現場へ搬送する。
【0027】
橋脚10の躯体コンクリートの上面にはモルタルを打設してモルタル12を形成し、橋脚10の上面を水平かつ平滑にしておく。
また、橋脚10の上端部にアンカーボルト70を設置しておく。
【0028】
そして、モルタル12上にシール剤を介して4つの枠部材41を、支承20を囲むようにして環状に設置する。各枠部材41は、アンカーボルト70にて橋脚10に定着する。互いに直交する2つの枠部材41の間には、シール剤を充填する。これら直交する2つの枠部材41どうしをボルト62にて接合する。
これによって、橋脚10の上端部に枠装置40を構築することができ、枠装置40と支承20の間にモルタル12の上面を底部とする有底環状空間Sを形成することができる。
【0029】
次いで、この有底環状空間Sに防錆グリース50を充填する。これによって、支承20のほぼ全体が防錆グリース50に漬かる。
このようにして、支承20の防錆構造を簡単に施工することができる。
【0030】
支承防錆構造によれば、長期間にわたって支承20の錆発生を防止することができ、既に錆が付いている場合には錆の進行を抑制することができる。
枠装置40が主桁30から縁切りされているため、温度変化等で主桁30が伸縮しても枠装置40に摩擦力や剪断力が働くことがない。これによって、枠装置40の磨耗や破損を防止でき、耐用年数を一層確実に長期化することができる。
防錆グリース50は支承20の外表面は勿論、上沓22と下沓21の摺動部等の細部にまで行き渡るので、錆の発生・進行を確実に防止することができる。特に、支承20の下沓21の内面、上沓22の下面、サイドブロック23の内面等、サンドブラストが当たりにくく従来は防錆困難であった箇所にも、防錆グリース50を確実に行き渡らせることができ、確実に防錆を施すことができる。
【0031】
枠部材41を構成するアルミ製の本体板42や補強部材43の表面は、アルマイト処理がなされ、さらに電着塗装がなされているので、耐食性を向上できるだけでなく、アルミに対し電解電位差の大きな鉄製の皿ネジ61,2と接触しても、電食を抑制することができる。さらに、鉄製の皿ネジ61及びボルト62の表面は亜鉛メッキされているため、アルミ製の本体板42や補強部材43との電解電位差を小さくでき、電食を一層確実に防止することができる。
【0032】
防錆グリース50が枠装置40の皿ネジ61とネジ孔43aの間に浸透したとしても、角筒部44の内部空間44aに溜まるだけであり、外部に漏れるのを防止することができる。
本体板42の端面と補強部材43の外側面とを面一に揃えることにより、枠部材41の端面41el,41esを幅広にすることができる。これにより、枠装置10の底面と橋脚10の当接面積を大きくすることができ、これら枠装置40と橋脚10の間からの防錆グリースの漏れを確実に防止することができる。また、直交する2つの枠部材41,41どうしの当接面積を大きくすることができ、これら枠部材41,41どうし間からの防錆グリースの漏れを確実に防止することができる。しかも、これら枠部材41,41の当接面にそれぞれ被膜されたアルマイト処理膜によって、これら枠部材41,41の当接面が微視的にはラビリンス状になるため、防錆グリース50の漏れを一層防止することができる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をなすことができる。
枠部材41の本体板42と補強部材43の連結用の皿ネジ61や枠部材41どうしの連結用ボルト62は、亜鉛メッキした鉄製のものに代えて、ステンレス製のネジ(ボルト)を用いてもよい。ステンレスは本体板42や補強部材43を構成するアルミニウムに対し電解電位差が小さく、電食のおそれが小さい。
図1では、橋幅方向に延びる枠部材41の端面41esと、橋軸方向に延びる枠部材41の内側面の長手方向端部とが、互いに当接されているが、その逆になっていてもよい。1つの枠部材41の一端面41esが、これと直交する枠部材41の内側面の長手方向端部に当接し、前記1つの枠部材41の内側面の長手方向の他端部が、これと直交するもう1つの枠部材41の端面41esに当接していてもよい。
環状空間Sの上面開口を塞ぐ蓋を設けることにしてもよい。蓋は、金属製でもよく、樹脂製でもよい。ゴム等の弾性板を枠装置40の上端部から上に突出させ、この弾性板の上端部が主桁30に弾性を持って当接するようにし、これにより、環状空間Sの上面開口を塞ぐようにしてもよい
枠装置40を構成する枠部材41の数は、4つに限られず、例えば3つでもよく、5つ以上であってもよい。
枠部材41は、橋脚10の上端部の側面に定着されるようになっていてもよい。
補強部材43は、所要の補強強度を有し、本体板42の縁部への取り付け部を含み、更に好ましくはネジ孔43aに連なる内部空間44aが形成されていればよく、上記実施形態の断面形状に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係る支承防錆施工を施した橋梁の橋脚及び支承を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う上記橋梁の橋幅方向から見た断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う上記橋梁の橋軸方向から見た断面図である。
【図4】上記支承防錆用の枠装置の枠部材の斜視図である。
【図5】(a)は、上記枠部材を外側から見た正面図であり、(b)は、上記枠部材を内側(支承の側)から見た背面図である。
【図6】(a)は、図5(a)のVIa−VIaに沿う上記枠部材の側面断面図であり、(b)は、図5(a)のVIb−VIbに沿う上記枠部材の平面断面図である。
【図7】直交する2つの枠部材の連結部の周辺の支承防錆構造を示す平面断面図である。
【図8】上記支承防錆構造の側面断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 橋脚(下部構造)
11 アンカーボルト
12 モルタル
20 支承
21 下沓
22 上沓
23 サイドブロック
30 主桁(上部構造)
31 ソールプレート
40 枠装置
41 枠部材
41el 長辺側端面
41es 短辺側端面
42 本体板
42a 皿ネジ用挿通孔
42b 枠部材相互間連結ボルト用挿通孔
43 補強部材
43L 長尺補強部材
43S 短尺補強部材
43a 皿ネジ用雌ネジ孔
43b 枠部材相互間ボルト用挿通孔
44 角筒部
44a 内部空間
45 フランジ
45b 枠部材相互間ボルト用挿通孔
45c アンカーボルト用挿通孔
70 アンカーボルト
50 防錆グリース
61 枠部材組立て用皿ネジ
62 枠部材相互間連結ボルト
S 有底環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の下部構造の上端部に、支承を囲むようにして複数の金属製の枠部材を環状に並べてなる枠装置を、上部構造から縁切りして設置し、該枠装置と支承との間に前記下部構造の上面を底部とする有底の環状空間を形成し、
この有底環状空間に防錆グリースを充填することを特徴とする橋梁の支承の防錆方法。
【請求項2】
橋梁の下部構造上の支承を囲むように環状に並べられた複数の金属製の枠部材を有し、前記支承との間に前記下部構造の上面を底部とする有底の環状空間を形成するとともに上部構造から縁切りされた枠装置と、
前記有底環状空間に充填された防錆グリースと、
を備えたことを特徴とする橋梁の支承の防錆構造。
【請求項3】
前記枠部材の各々が、幅方向を上下に向けて一方向に延びる平板状の本体板と、この本体板に連結用ネジにて固定された補強部材とを有し、
前記本体板には、前記環状空間に面する内側面から外側面へ貫通し、前記連結用ネジを通す挿通孔が形成され、
前記補強部材には、前記挿通孔に連なるとともに前記連結用ネジが螺合されるネジ孔と、このネジ孔に連なり前記防錆グリースを貯留可能な内部空間とが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の支承防錆構造。
【請求項4】
前記補強部材が、前記本体板の縁部に沿って延びており、
前記本体板の端面と前記補強部材の側面とが面一をなして前記枠部材の端面を構成していることを特徴とする請求項3に記載の支承防錆構造。
【請求項5】
前記本体板及び補強部材が、アルミニウムにて構成され、その表面にアルマイト処理膜が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の支承防錆構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−332564(P2007−332564A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162655(P2006−162655)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により明細書の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(500408212)アルコニックス株式会社 (2)
【出願人】(507171605)西日本高速道路総合サービス沖縄株式会社 (1)
【Fターム(参考)】