説明

橋梁の補強構造物

【課題】 橋梁の橋軸と直角の方向について充分な耐震性が得られる補強構造物を提供する。基礎の大規模な耐震補強が必要なく工費や工期を著しく低減する。
【解決手段】 橋軸方向に対して橋脚の両側に橋脚頂部と地盤に設置した固定構造物とを接続する補強ケーブルを設置した橋梁の補強構造物である。固定構造物が基礎杭、アースアンカー又はカウンターウェイトが用いられ、橋梁としては歩道橋に適用するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋梁の耐震補強構造物に関する。特に既設の歩道橋などの橋梁に対して、本発明の耐震補強は比較的施工が容易で安価、かつ有効な耐震強度の確保をはかることができる。
【背景技術】
【0002】
阪神・淡路大震災以降、国、地方自治体、民間を問わず地震に対し様々な対策が検討され実行されつつある。建築、土木構造物における耐震構造は地震対策の中心的課題として強力に推進されている。特に道路、鉄道などライフライン上に設置された橋梁の崩落は、それ自体の損害にとどまらず災害復旧の大きな障害となることが強く指摘されている。かかる状況のもとで、現在、様々な耐震補強工事が推進されているが、土木構造物の耐震補強方法としては、想定される地震動に対して既設橋脚が所定の耐力を得られない場合、RC(鉄筋コンクリート)や鋼板、炭素繊維などで柱(壁)部を巻立てることにより、じん性や耐力を向上させる方法が広く採用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004-19327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の工法はつぎのような問題がある。
(1)柱(壁)部の補強により耐力を向上させた場合、橋梁の基礎の耐力の不足を誘発し、このため基礎についても同等の耐力が確保できるまで補強が必要となる場合が多い。
(2)上記の場合、基礎杭の増し打ちなど基礎の補強工事が大規模で工費、工期が増大し、大きな占用地の確保も必要となる。
(3)橋梁の橋軸方向(橋の長手方向軸)の耐震性については、基礎を含めた大規模な耐震補強を行う代わりに、地震時の慣性力を前後の下部工へ適切に分散させ橋梁全体として所定の耐震性能を得る制震工法や免震工法などを採用することが可能である。しかしながら、橋梁の橋軸と直角の方向の耐震性について同様の工法により対応することは困難である。
本発明の目的は、主に橋梁の橋軸と直角の方向について充分な耐震性を付与する補強構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、橋軸方向に対して橋脚の両側に橋脚頂部と地盤に設置した固定構造物とを接続する補強ケーブルを設置してなる橋梁の補強構造物を提供するものである。橋梁としては歩道橋に適用するのが好ましいが、鉄道橋、道路橋、併用橋、その他、ガス・上下水道橋などライフラインの橋梁などであっても差し支えない。ケーブルを接続する固定構造物としては基礎杭、アースアンカー又はカウンターウェイトが用いられてよい。この補強構造物に用いるケーブルは所定の仕様、特性を備えるとより優れた耐震性を与える。
【発明の効果】
【0006】
このように、本明細書に開示の工法では補強対象となる橋脚の両側に橋脚頂部と地盤とを斜め方向に接続する補強ケーブルを配置し、この補強構造物のケーブルにより橋脚の地震時における変形を抑制し耐震性能を向上させることができる。また、橋梁の変形自体を抑制する結果、基礎への負担も軽減され基礎の補強が不要となる。従来の方法によれば基礎の大規模な補強を行う必要がある場合において、本発明の補強構造物を設置することにより経済的な耐震補強が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に本発明を添付の図面に基づき更に具体的に説明する。
図1は自動車道路を跨ぐ既設の歩道橋20に本発明の補強構造物を設置し、耐震強度を向上させた歩道橋を示す概略斜視図である。図2はその一部を示す平面図、図3は横断面図である。図1において、既設の歩道橋20は自動車道路21の上方にこれを跨いで設けられている。この歩道橋20は4本の橋脚22a、22b、22c、22d、その上に張り渡された上部工23及び上部工の両端に設置された階段24を有する。本発明の補強構造物はこの歩道橋20の橋軸方向に対して左右を1対とし、2箇所の計4箇所に設けられている。
この補強構造物において補強ケーブル11は、その上端を歩道橋20の橋脚22の頂部25に取り付けた鋼製のブラケット12に固定される。補強ケーブル11は、同一の橋脚に対して、橋軸方向に対して左右一対を対向するように設置するのが好ましい。
【0008】
橋脚の頂部25に取り付けた前記ブラケット12の構造は、補強目的である橋軸と直角方向の変位抑制にのみ効果があるようにし、これ以外の方向(横軸方向)の変位を抑制しない構造とするのがよい。
【0009】
一方、補強ケーブル11の下端は自動車道路21の地盤に設置した固定構造物13に固定される。固定構造物13の設置場所は、通常、橋軸直角方向にある路肩部や中央分離帯、車線分離帯など車両の走行や歩行の障害とならない場所を選択する。地盤に設置したこの固定構造物13により補強ケーブル11を介して橋梁の変形に対する抑制に必要な反力が確保される。ここでケーブルを固定する固定構造物13としては、基礎杭、アースアンカー、カウンターウェイトなどを用いてよく、反力の規模や地盤の強度、施工ヤードなど、現地の状況に応じて従来公知の構造物を適宜選定することにより効率的な補強を行うことが可能である。
【0010】
橋脚頂部における補強ケーブルの設置角度は橋脚の補強効果や反力を生ずる固定構造物の規模などとのバランスから水平に対して−45度程度が最も効果的かつ経済的であるが、歩道橋など橋梁の設置場所の地形等を勘案して適宜変更してよい。たとえば、補強ケーブルを接続する固定構造物13が橋梁の設置面よりも相当に上方にあったり、或いは固定構造物の設置可能な場所が制限されるなど、様々な地形上等の条件に応じ補強ケーブルの水平に対する角度は0〜60度程度の範囲で適宜変更することができる。
【0011】
ここで用いられる補強ケーブルは、鋼線、カーボンファイバー、その他無機・有機の高強力繊維などを用いた種々のケーブルがいずれも用いられてよい。また、地震発生時における慣性力に対してケーブルの伸び量をバネとして評価することにより、ある程度の変形を許容しつつ所定の耐震性能を満足させる設計が好ましく、このような設計により一層効果的な耐震補強が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0012】
道路内に設置されている既設歩道橋の橋脚は、中央分離帯や歩道内の植樹帯など、道路交通に比較的支障をきたさない場所に構築されているケースが多く、橋軸の直角方向に補強ケーブルを配置するスペースの確保できる場合が多い。また、補強に用いられるケーブルやその連結材などは落橋防止装置として用いられる従来の材料を用いることができ特別な材料、装置を必要としない。
【0013】
本発明の補強構造物によれば、橋軸直角方向にある程度のスペースが確保できる場合、従来の工法と異なり基礎に大規模な耐震補強を行う必要なく工費や工期を著しく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の補強構造物を設置した歩道橋を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の補強構造物を設置した歩道橋の平面図である。
【図3】本発明の補強構造物を設置した歩道橋の横断面図である。
【符号の説明】
【0015】
11 補強ケーブル 12 ブラケット
13 固定構造物 20 歩道橋
21 自動車道路 22(a,b,c,d) 橋脚
23 上部工 24 階段
25 頂部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に対して橋脚の両側に、橋脚頂部と地盤に設置した固定構造物とを接続する補強ケーブルを設置してなる橋梁の補強構造物。
【請求項2】
前記の固定構造物が基礎杭、アースアンカー又はカウンターウェイトである請求項1の橋梁の補強構造物。
【請求項3】
橋梁が歩道橋である請求項1の橋梁の補強構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−196135(P2008−196135A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29827(P2007−29827)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(505434261)
【出願人】(507043656)
【出願人】(507043450)
【出願人】(501435060)株式会社アーバン・エース (2)
【Fターム(参考)】