説明

機器収納筐の空気調和機

【課題】複数のPTCヒータを熱源とする機器収納筐の空気調和機において、1個の電流センサでPTCヒータの断線故障を検出する。
【解決手段】ヒータをオンして所定時間後に内気温度を検出し(S13)、次に電源電圧を検出する(S14)、次に内気温度と電源電圧に関連づけられた閾値Isを制御部のメモリから検索し(S15)、次にヒータ電流Iを検知し(S16)、この電流Iを閾値Isと比較して(S17)、I≦Isであれば異常通報出力を発生する(S18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯基地局等の通信機器、設備を収納する機器収納筐を、特に寒冷地に設置した場合に、迅速に加熱手段の故障を検知して、通信回線を介して保守部門に通報し、迅速なサービスが行えるようにした空気調和機に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯基地局等の通信機器等の機器を収納する筐は、屋外に設置されるために日射、風雨、降雪などの厳しい気象条件下に晒される。このため筐は密閉構造とし、空気調和機を搭載して、筐内の温度が高温度もしくは低温度にならないようにしている。また、機器は商用電源により駆動されることが多く、この場合は停電の場合に機器の機能を損なわないようにバックアップ用の2次電池を筐内に搭載しているが、この電池は一般に低温域では寿命が短くなるために0℃以上で使用することが推奨されている。そこで通信機器は筐内の温度が0℃以上(例えば10℃)にならないと動作しないよう構成されている。
【0003】
従って空気調和機も筐内にヒータを内蔵し、冬期や厳寒期には、このヒータにより筐内の温度を20℃程度に調節するように構成されている。また、冗長性からヒータを複数並列接続して使用することが一般的である。
【0004】
このヒータが万一、断線故障を起こすと、筐内の温度が維持できなくなり、ひいては通信機器も機能を停止するため、ヒータは複数で構成し、ヒータが1個でも故障した場合は、これを検知して、電話回線や通信回線を利用した通報手段により近隣の保守を行う部門に通報して、迅速なサービスが行える構成にしている。
【0005】
このヒータの断線故障を検出する方法としては、CT(カレントトランス)と呼ばれる電流センサをヒータ毎に設ければ、確実にヒータの断線故障が検知できるが、電流センサがヒータの数だけ必要な上に、検知した電流を処理する電子回路もヒータの数だけ必要となり高価になる。また複数のヒータの電流を1個のセンサで検知し、ヒータの一部が断線故障を発生した場合に、電流値のレベルで断線を判断する方法は、電源電圧の変動でヒータ電流が変動するために、誤検知を起こす可能性がある。そこで、例えば特許文献1に示すものが提案されている。
【0006】
特許文献1のヒータの断線事故を検知する方法について説明すると、並列接続したヒータと、この並列接続したヒータに流れる電流を検知する電流センサをヒータ組とする複数のヒータ組で構成されものにおいて、それぞれの電流センサが検知する電流値を相対的に比較することにより、いずれかのヒータ組のヒータの1個が断線故障を発生した場合に、電流センサが検知する電流値に不平衡が発生するので、この不平衡を検知してヒータの断線故障を検知するものである。
【0007】
この方法では、電源電圧の変動に無関係に、精度よくヒータの断線事故を検知できるとしている。
【特許文献1】特開平8−180960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の特許文献1の方法は、複数の電流センサが必要である。
【0009】
また、ヒータにPTCヒータを用いる場合には、ヒータの電流が前述の電源電圧に左右されるだけでなく、ヒータに送風される空気の温度にも左右されので、誤検知が発生する可能性がある。
【0010】
本発明は、以上の課題を解決し、複数のヒータの一部の断線故障を1個の電流センサで検知できる、PTCヒータを熱源とする機器収納筐の空気調和機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の機器収納筐の空気調和機は、並列接続された複数のPTCヒータを、筐内の温度を検知する温度センサの信号により、制御部がオンオフ制御し、筐内を所定の温度に制御する構成のものにあって、PTCヒータの電流を一括して検知する電流センサを備え、制御部は、PTCヒータをオンして後の所定時間経過後に、PTCヒータの電流値と筐内の温度とを検知し、検知した電流値を、予め前記制御部に内蔵された筐内の温度によって定まる閾値と比較し、電流値が閾値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を通報手段に対して発生することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の機器収納筐の空気調和機は、並列接続された複数のPTCヒータを、筐内の温度を検知する温度センサの信号により、制御部がオンオフ制御し、筐内を所定の温度に制御する構成のものにあって、PTCヒータの電流を一括して検知する電流センサとPTCヒータに印可される電圧を検知する手段とを備え、制御部は、PTCヒータをオンして後の所定時間経過後に、PTCヒータの電流値とPTCヒータに印可される電圧とを検知し、検知した電流値を、予め前記制御部に内蔵されたPTCヒータに印可される電圧によって定まる閾値と比較し、電流値が閾値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を通報手段に対して発生することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の機器収納筐の空気調和機は、並列接続された複数のPTCヒータを、筐内の温度を検知する温度センサの信号により、制御部がオンオフ制御し、筐内を所定の温度に制御する構成のものにあって、制御部は、PTCヒータをオンした以降の筐内の温度の上昇勾配を求め、温度の上昇勾配が、制御部に予め内蔵した所定の勾配値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を前記通報手段に対して発生することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1個の電流センサで、複数のPTCヒータの1部の断線故障が検知できる、機器収納筐の空気調和機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の請求項1記載の発明の機器収納筐の空気調和機は、筐内の空気を循環する循環ファンと、筐内の空気を加熱するために、並列接続された複数のPTCヒータと、筐内の温度を検知する温度センサと、温度センサの信号に基づいてPTCヒータをオンオフさせて筐内の温度を所定の温度域に制御する制御部、および外部への通報手段を備えた機器収納筐の空気調和機であって、制御部は、複数のPTCヒータの電流を検知する電流センサを備え、PTCヒータをオンして後の所定時間経過後に、PTCヒータの電流を検知するとともに、筐内の温度を検知し、電流センサが検知する電流値を、予め前記制御部に内蔵された筐内の温度によって定まる閾値と比較し、電流値が閾値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を通報手段に対して発生することを特徴としている。
【0016】
このことにより、並列接続された複数のPTCヒータの断線事故を1個の電流センサで検知することができ、従って空気調和機を安価に製造することができる。
【0017】
本発明の請求項2記載の発明の機器収納筐の空気調和機は、請求項1記載の発明の機器収納箱の空気調和機において、前記の比較は、PTCヒータをオフするまでの期間、繰り返し実施されることを特徴としている。
【0018】
このことにより、PTCヒータの断線事故の検知精度が向上し、PTCヒータをオンしている期間は常時、PTCヒータの断線事故を監視することができるので、PTCヒータの断線事故が発生した場合に迅速に通報することができる。
【0019】
また、機器収納筐の空気調和機を設置して、筐内の温度で極低温(たとえば−30℃)から運転開始した場合も、筐内の温度の上昇に従って、閾値も変化して精度よく断線検知ができる。
【0020】
本発明の請求項3記載の発明の機器収納筐の空気調和機は、筐内の空気を循環する循環ファンと、筐内の空気を加熱するために、並列接続された複数のPTCヒータと、筐内の温度を検知する温度センサと、温度センサの信号に基づいてPTCヒータをオンオフさせて筐内の温度を所定の温度域に制御する制御部、および外部への通報手段を備えた機器収納筐の空気調和機であって、制御部は、複数のPTCヒータの電流を検知する電流センサとPTCヒータに印可される電源電圧を検知する手段を備え、PTCヒータをオンして後の所定時間経過後に、PTCヒータの電流を検知するとともに、筐内の温度と前記電源電圧とを検知し、電流センサが検知する電流値を、予め前記制御部に内蔵された前記筐内の温度と電源電圧によって定まる閾値と比較し、電流値が前記閾値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を通報手段に対して発生することを特徴としている。
【0021】
このことにより、電源電圧が変化した場合に、閾値も追従して変化し、精度良く断線検知ができる。
【0022】
本発明の請求項4記載の発明の機器収納筐の空気調和機は、請求項3記載の発明の機器収納筐の空気調和機において、前記の比較は、PTCヒータをオフするまでの期間、繰り返し実施されることを特徴としている。
【0023】
このことにより、請求項2と同様の効果が得られる。
【0024】
本発明の請求項5記載の発明の機器収納筐の空気調和機は、筐内の空気を循環する循環ファンと、筐内の空気を加熱するために、並列接続された複数のPTCヒータと、筐内の温度を検知する温度センサと、温度センサの信号に基づいてPTCヒータをオンオフさせて筐内の温度を所定の温度域に制御する制御部、および外部への通報手段を備えた機器収納箱の空気調和機であって、記制御部は、複数のPTCヒータをオンした以降の筐内の温度の上昇勾配を求め、温度の上昇勾配が、制御部に予め内蔵した所定の勾配値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を通報手段に対して発生することを特徴としている。
【0025】
このことにより、電流センサを必要としないでPTCヒータの断線を検知することができ、従って構成を簡素にできる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図9を参照しながら説明する。
【0027】
なお、分かり易くするために数字を記して説明するが、本発明は、この数字には拘束されない。
【0028】
(実施の形態1)
まず、図1〜図2を用いて本発明が適用される機器収納筐の空気調和機の構成を説明する。
【0029】
図1は、本発明が適用される機器収納筐の空気調和機の外観を示す図であり、図2は、その構成を示す側断面図である。
【0030】
筐体1には、機器2と電池3および補助ファン4が収納されている。
【0031】
筐体1のドア部1aには、内気循環ファン5a、5bと、PTCヒータ6a、6bと、熱交換器7と、外気送風ファン8a、8bと、温度センサ9と、制御部10とが設けられていて、これらが空気調和機を構成している。
【0032】
夏期においては、内気循環ファン5a、5bと、外気送風ファン8a、8bが駆動され、筐体1とドア部1aとで密閉された空間内の空気(内気)が矢示のように循環し、機器2で発生する熱が熱交換器7により外部に放出される。
【0033】
冬期においては、内気循環ファン5a、5bと、PTCヒータ6a、6bが駆動され、内気が所定の温度に保たれる。このような動作は、温度センサ9が検知する内気の温度によって制御部10が実施する。
【0034】
次に、PTCヒータの6a、6bの有する課題を、図3を用いて説明する。
【0035】
図3は、PTCヒータの断線検知の課題を説明するための図である。
【0036】
図3(a)は、PTCヒータをオンしたときの電流の経過を示す図である。特性AはPTCヒータが2個の場合、特性BはPTCヒータが1個の場合を示している。
【0037】
図のように瞬間的に過大な電流が流れ、漸次減少して1分以降は、ほぼ安定した電流値を維持する。
【0038】
筐内の温度を一定に保つためにはPTCヒータの電力を制御する必要があり、その方法として、PTCヒータへの送風量すなわち前述の内気循環ファンの回転数を増減する方法があるが、送風量を少なくすると、筐内の空気の循環が悪くなり、筐内の空気に温度のむらが発生して、好ましくないので、温度制御は、内気循環ファンの回転数を一定にしておいて、PTCヒータをオンオフさせる方法が採られる。従って、PTCヒータをオンする毎に図3(a)の過大な電流が発生する。
【0039】
図3(b)は、図3(a)の1分以降のほぼ安定した電流域におけるPTCヒータの電流の温度特性を示す図である。特性CはPTCヒータが2個の場合、特性DはPTCヒータが1個の場合を示している。なお、特性Gと特性Jは、後述する閾値である。
【0040】
図のようにPTCヒータの電流は、PTCヒータに送り込まれる空気の温度(内気の温度)により変化する。
【0041】
図3(c)は、図3(a)の1分以降のほぼ安定した電流域におけるPTCヒータの電流の電源電圧特性を示す図である。特性EはPTCヒータが2個の場合、特性FはPTCヒータが1個の場合を示している。なお、特性Hと特性Kは、後述する閾値である。
【0042】
図のようにPTCヒータの電流は、PTCヒータに印可される電源電圧により変化する。
【0043】
以上に述べた3の要因により、並列に接続したPTCヒータの断線を1個の電流センサで検出しようとした場合に次の課題がある。
【0044】
まず、PTCヒータの全てが断線事故を起こした場合は、断線を判断する電流の閾値を図の特性Gで示すように、低く設定しておけば容易に検知が可能である。
【0045】
しかし、複数のPTCヒータの内の1個の断線事故を検知する場合は、図3(c)の特性Hで示すように閾値を一定値に設定すると、電源電圧が低い場合には、断線が検知できない場合が発生し、電源電圧が高い場合には、1個の断線を検知できずに正常と判断してしまう場合が発生する。
【0046】
図示しないが、図3(a)と図3(b)の場合も、PTCヒータのバラツキや電流検知の誤差を含めると図3(c)と同様の誤検知が発生する。
【0047】
本発明は、以上の課題を解決するもので、次に、この解決策を、図4〜図6を用いて説明する。
【0048】
図4は、電気的な構成を説明するための図、図5は、制御部10のマイコンが内蔵する断線検知のための閾値を示す図である。
【0049】
図4において、商用電源11に主スイッチ12を経て内気循環ファン5a、5bと、PTCヒータ6a、6bと、外気送風ファン8a、8bがそれぞれ開閉器13、14、15を介して接続されている。制御部10には、温度センサ9と、電流センサ16と、電源電圧の電圧信号17とが入力として接続されていて、この制御部10は、温度センサ9の温度信号に基づいて開閉器13、14、15を制御する。また、制御部10は、異常通報18を有している。これらが空気調和機を構成し、筐体1のドア部1aに収納されている。
【0050】
また、サーモスタット21を介してトランスなどの降圧部22、前述の内気循環ファン5a、5b、充放電制御部23、前述の電池3と、通信の機器2および通報手段24が接続され。これらは前述の筐体1に収納されている。通報手段24は、通信の機器2の異常はもちろん、制御部10の異常通報18の信号を受けると、近隣の保守部門に通報する。
【0051】
サーモスタット21は、電池3の保護のために0℃以上、例えば10℃以上の時に通信の機器2が運転でき、0℃で通信機器の運転が停止するように動作する。
【0052】
図5は、制御部10のマイコンが内蔵するPTCヒータの断線検知のための閾値を示す図である。閾値は、温度センサ9が検知する内気温度(筐内の温度)と電源電圧に関連付けされた値となっている。図で縦の枠囲い部は、図3(b)の特性Jに相当し、図で横の枠囲い部は、図3(c)の特性Kに相当している。図で***で示す部分には内気温度と電源電圧の両方に関連づけられた数値が記入されている。
【0053】
次に図4〜図5を参照しながら図6を用いて断線検知の動作を説明する。
【0054】
図6は、制御部10の断線検知の動作を説明するためのフローチャートである。
【0055】
図6において、S(ステップ)11でPTCヒータがオンされると、S12で1分間待機し、S13において、内気温度Tを検知する。次いでS14で電源電圧Vを検知する。
【0056】
次にS15において、検知したTとVとから、図5の閾値電流Isを抽出する。次にS16において、PTCヒータの電流Iを検知し、次のS17において、検知した電流Iと閾値電流Isとを比較する。通常は、I≦Isに対してNOなので、再びS13に戻ってS13〜S17の動作が、PTCヒータがオフされるまで繰り返される。この繰り返し動作は、連続して行うか、もしくは所定間隔毎に行うかのいずれでもよい。
【0057】
この間に、内気温度が変化すれば、あるいは電源電圧が変化すれば、これに応じて閾値電流Isは絶えず修正される。
【0058】
S17で万一、PTCヒータの断線が検出された場合(I≦Isに対してYES)は、異常通報出力を発生する(S18)。
【0059】
以上説明したように、PTCヒータがオンされた時点からの所定時間は、PTCヒータの断線検知をせずに、所定時間後にPTCヒータの電流を検知し、この電流値を、この時点で検知した内気温度と電源電圧に関連づけられた閾値電流と比較するので、検知精度が向上し、複数のPTCヒータの1個の断線故障を、誤検知を生じること無く検知することができる。また、検知動作は、PTCヒータがオンされている期間は継続するので、検知遅れが少なくい。また、機器収納箱の空気調和機を設置して、筐内の温度が極低温(たとえば−30℃)から運転開始した場合も、筐内の温度の上昇に従って閾値も変化して、精度よく断線検知を行うことができる。
【0060】
なお、本実施の形態では、ヒータは2個としたが、3個以上であっても予め閾値を同様の設定で複数個設けておけば、ヒータ1個以上の断線検知が可能である。また、図5で説明した閾値は、テーブルの形で制御部の内部に収納したが、関数式の形態で収納してもかまわない。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態の電気的な構成は、図4図の構成から電流センサ16と電圧信号17を除いたものであるので、電気的な構成の図示は省略し、図7〜図9を用いて説明する。
【0062】
図7(a)は、機器収納箱の空気調和機を設置して、筐内の温度が−30℃から運転開始した場合の筐内の温度(内気温度)の推移を示す図であり、また、この過程でのPTCヒータの断線検知の動作原理を説明するための図である。
【0063】
図で特性Lは、PTCヒータが健全な場合の筐内温度の推移を示しており、約3.5時間後に10℃に達し、通信機器が稼働を開始し、このため温度の上昇は加速され、約6時間後には20℃に達し、PTCヒータがオフされ、以後は、PTCヒータがオンオフする温度調節域になることを示している。
【0064】
図で特性Mは、PTCヒータが1個断線している場合の筐内温度の推移を示している。
【0065】
図8(a)は、図7(a)の温度調節域での筐内の温度(内気温度)の推移を示す図であり、また、この過程でのPTCヒータの断線検知の動作原理を説明するための図である。
【0066】
図で特性Pは、PTCヒータが健全な場合の筐内温度の推移を示しており、特性Qは、PTCヒータが1個断線している場合の筐内温度の推移を示している。
【0067】
次に、図7と図8を参照しながら図9を用いて、断線検知の動作を説明する。
【0068】
図9は、筐内の温度が−30℃の極低温から運転開始した場合の制御部10の断線検知の動作を説明するためのフローチャートである。なお、説明は、図7(a)と図8(a)を用いて説明し、図7(b)と図8(b)の説明は後述する。
【0069】
S(ステップ)21でPTCヒータがオンされると、S22において、内気温度T0を検知する。次にS23において、温度T0が0℃以下かどうかチェックし、YESであれば、S24で20分待機し、S25において、内気温度T20を検知する。次にS26で温度差ΔT(T20−T0)を求める。次にS27において、温度差ΔTを所定値K1と比較する。この部分を図7(a)で説明すると、PTCヒータがオンされた運転開始後の時刻t1において、PTCヒータが正常であれば、温度差ΔT1が得られ、PTCヒータが1個断線故障していれば、温度差ΔT2が得られる。ここで、閾値K1は、空気調和機設計時に、予め実験的に求めたΔT1とΔT2の中間値に設定され、温度差ΔTが閾値K1より下位であれば、PTCヒータの1個が断線故障したと判断できる。
【0070】
S27で、もし断線故障が検知されれば、S35の異常通報出力が発生するが、検知されなければ、S28において、内気温度が20℃に達し、PTCヒータがオフされるのを待ち、このため内気温度が低下して、再びPTCヒータがオンされたことをS29で検知すると、S30に移行する。ここでは内気温度T0を検知する。次に2分を経過するのを待って(S31)、S32において、内気温度T2を検知する。次にS33において、内気温度差ΔT(T2−T0)を求める。次にS34において、温度差ΔTを所定値K2と比較する。この部分を図8(a)で説明すると、PTCヒータがオンされた時刻tから2分後の時刻t+2において、PTCヒータが正常であれば、温度差ΔT4が得られ、PTCヒータが1個断線故障していれば、温度差ΔT5が得られる。ここで、閾値K2は、空気調和機設計時に、予め実験的に求めたΔT4とΔT5の中間値に設定され、温度差ΔTが閾値K2より下位(ΔT≦K2がYES)であれば、PTCヒータの1個が断線故障したと判断できる。
【0071】
S34で、もし断線故障が検知されれば、S35の異常通報出力が発生するが、検知されなければ、S28に戻る。すなわち、次にPTCヒータがオンされる毎にS30〜S34の検知動作が繰り返される。
【0072】
次に、図7(b)と図8(b)について説明する。
【0073】
前述した、S24〜S27の断線検知の動作は、図7(a)で説明した方法に替えて図7(b)の方法で行ってもよい。
【0074】
すなわち、PTCヒータがオンされた時の内気温度から、内気温度が除除に上昇し、所定の温度上昇値のΔT3に達する時間を制御部が計測する。PTCヒータが正常であれば、時間t2が得られ、PTCヒータが1個断線故障していれば、時間t3が得られる。ここで、断線判定の閾値は、空気調和機設計時に、予め実験的に求めたt2とt3の中間値に設定され、所定の温度上昇値のΔT3に達する時間が前記の閾値よりも大であれば、PTCヒータの1個が断線故障したと判断できる。
【0075】
また同様に前述した、S30〜S34の断線検知の動作は、図8(a)で説明した方法に替えて図8(b)の方法で行ってもよい。
【0076】
すなわち、PTCヒータがオンされた時の内気温度から、内気温度が除除に上昇し、所定の温度上昇値のΔT6に達する時間を制御部が計測する。PTCヒータが正常であれば、時間t4が得られ、PTCヒータが1個断線故障していれば、時間t5が得られる。ここで、断線判定の閾値は、空気調和機設計時に、予め実験的に求めたt4とt5の中間値に設定され、所定の温度上昇値のΔT5に達する時間が前記の閾値よりも大であれば、PTCヒータの1個が断線故障したと判断できる。
【0077】
以上説明したように、制御部は、前記複数のPTCヒータをオンした以降の筐内の温度の上昇勾配を求め、温度の上昇勾配が、制御部に予め内蔵した所定の勾配値よりも下位の場合は、PTCヒータの一部が断線したと判断して、異常通報のための出力を通報手段に対して発生するようにしたものである。
【0078】
この方法では、電流センサを必要としないで、PTCヒータの断線を検知することができ、従って構成を簡素化できる。
【0079】
なお、本実施の形態ではヒータは2個としたが3個以上であっても予め閾値を同様の設定で複数個設けておけば、ヒータ1個以上の断線検知が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の機器収納筐の空気調和機は、複数のヒータの断線が1個の電流センサで検知できるもので、複数のヒータを利用する家庭電気機器などの他の機器の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明が適用される機器収納筐の空気調和機の外観を示す図
【図2】同構成を示す側断面図
【図3】PTCヒータの断線検知の課題を説明するための図((a)PTCヒータをオンしたときの電流の経過を示す図、(b)1分以降のほぼ安定した電流域におけるPTCヒータの電流の温度特性を示す図、(c)1分以降のほぼ安定した電流域におけるPTCヒータの電流の電源電圧特性を示す図)
【図4】本発明の実施の形態1の電気的な構成を説明するための図
【図5】同制御部のマイコンが内蔵する断線検知のための閾値を示す図
【図6】同断線検知の動作原理を説明するためのフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2の運転開始時の断線検知の原理を説明するための図((a)筐内の温度が−30℃から運転開始した場合の筐内の温度の推移とPTCヒータの断線検知の動作原理を示す図、(b)断線検知動作の別の方法を示す図)
【図8】同温度調節域での断線検知の原理を動作説明するための図((a)温度調節域での筐内の温度の推移とPTCヒータの断線検知の動作原理を示す図、(b)断線検知動作の別の方法を示す図)
【図9】同断線検知の動作を説明するためのフローチャート
【符号の説明】
【0082】
2 機器
5a、5b 内気循環ファン
6a、6b PTCヒータ
9 温度センサ
10 制御部
17 電圧信号
18 異常通報(通報出力)
24 通報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐内の空気を循環する循環ファンと、前記筐内の空気を加熱するために、並列接続された複数のPTCヒータと、前記筐内の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの信号に基づいて前記PTCヒータをオンオフさせて前記筐内の温度を所定の温度域に制御する制御部、および外部への通報手段を備えた機器収納箱の空気調和機であって、前記制御部は、前記PTCヒータの電流を検知する電流センサを備え、前記PTCヒータをオンして後の所定時間経過後に、前記複数のPTCヒータの電流を検知するとともに、前記筐内の温度を検知し、前記電流センサが検知する電流値を、予め前記制御部に内蔵された前記筐内の温度によって定まる閾値と比較し、前記電流値が前記閾値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を前記通報手段に対して発生する機器収納筐の空気調和機。
【請求項2】
前記の比較は、前記複数のPTCヒータをオフするまでの期間、繰り返し実施される請求項1記載の機器収納筐の空気調和機。
【請求項3】
筐内の空気を循環する循環ファンと、前記筐内の空気を加熱するために、並列接続された複数のPTCヒータと、前記筐内の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの信号に基づいて前記PTCヒータをオンオフさせて前記筐内の温度を所定の温度域に制御する制御部、および外部への通報手段を備えた機器収納筐の空気調和機であって、前記制御部は、前記複数のPTCヒータの電流を検知する電流センサと前記PTCヒータに印可される電源電圧を検知する手段を備え、前記PTCヒータをオンして後の所定時間経過後に、前記PTCヒータの電流を検知するとともに、前記筐内の温度と前記電源電圧とを検知し、前記電流センサが検知する電流値を、予め前記制御部に内蔵された前記筐内の温度と前記電源電圧によって定まる閾値と比較し、前記電流値が前記閾値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を前記通報手段に対して発生する機器収納筐の空気調和機。
【請求項4】
前記の比較は、前記PTCヒータをオフするまでの期間、繰り返し実施される請求項3記載の機器収納筐の空気調和機。
【請求項5】
筐内の空気を循環する循環ファンと、前記筐内の空気を加熱するために、並列接続された複数のPTCヒータと、前記筐内の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの信号に基づいて前記PTCヒータをオンオフさせて前記筐内の温度を所定の温度域に制御する制御部、および外部への通報手段を備えた機器収納筐の空気調和機であって、前記制御部は、前記複数のPTCヒータをオンした以降の前記筐内の温度の上昇勾配を求め、前記温度の上昇勾配が、前記制御部に予め内蔵した所定の勾配値よりも下位の場合は、異常通報のための出力を前記通報手段に対して発生する機器収納筐の空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−127993(P2009−127993A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306759(P2007−306759)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】