説明

機器操作補助装置

【課題】ユーザ名を意識しなくても電子機器を使用しているユーザを判別し、そのユーザに適したユーザ環境を提供する機器操作補助装置を実現する。
【解決手段】電子機器に対するユーザの操作を補助する機器操作補助装置に関する。ユーザの操作を操作時刻とともに操作ログとして記録する操作記録手段と、操作ログを基にユーザの操作をクラスタリングするクラスタリング手段と、クラスタリング結果から各クラスタの特徴を解析し、特徴が共通するクラスタ毎にユーザを割り当てる操作解析手段と、特徴が共通するクラスタ毎にユーザ環境情報を登録するユーザ環境登録手段と、ユーザの操作に対して、ユーザ環境情報を基に該当するユーザを推定するユーザ推定手段と、ユーザ推定手段の指示により、推定したユーザのユーザ環境を構築するユーザ環境作成手段とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に対するユーザの操作を補助する機器操作補助装置に関し、特に、電子機器を使用しているユーザを操作内容から判別し、そのユーザに適した使用環境(ユーザ環境)を提供する機器操作補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録計等の電子機器は、多くの機能を有しており、ユーザが必要な機能を呼び出したり、設定したりといった操作性の向上が望まれている。また、同じ電子機器を複数のユーザが使用するため、ユーザ毎にユーザ環境を設定したいという要望もある。このため、ユーザ名によって電子機器のユーザ環境を保存し、ユーザ毎に前回使用時の状況を再現する等の機能を持たせている。
【0003】
例えば、従来の記録計がユーザ別の使用環境で動作する仕組みについて説明する。
ユーザは、記録計のログイン画面からユーザ名とパスワードを入力する。ユーザ認証が行われると、ユーザ名に関連付けて保存されているユーザ環境が適用される。記録計を使用後、ログアウトを行うと、今回使用時のユーザ環境がユーザ名と関連付けて保存し直される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−334549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録計等の電子機器は、パソコンのキーボード等のように十分なHMI(Human Machine Interface)を備えていないため、ユーザにログイン作業を行わせることは操作性が悪く、効率が悪かった。
また、作業現場では1つの電子機器を複数のユーザが使用するため、ユーザ毎にログイン作業を行わせることは不便であった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、ユーザ名を意識しなくても電子機器を使用しているユーザを判別し、そのユーザに適したユーザ環境を提供する機器操作補助装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を達成するために、本発明は次のとおりの構成になっている。
(1)電子機器に対するユーザの操作を補助する機器操作補助装置において、
ユーザの操作を操作時刻とともに操作ログとして記録する操作記録手段と、
前記操作ログを基にユーザの操作をクラスタリングするクラスタリング手段と、
前記クラスタリング結果から各クラスタの特徴を解析し、特徴が共通するクラスタ毎にユーザを割り当てる操作解析手段と、
前記特徴が共通するクラスタ毎にユーザ環境情報を登録するユーザ環境登録手段と、
ユーザの操作に対して、前記ユーザ環境登録手段に登録されたユーザ環境情報を基に該当するユーザを推定するユーザ推定手段と、
該ユーザ推定手段の指示により、推定したユーザのユーザ環境を構築するユーザ環境作成手段と、
を有することを特徴とする機器操作補助装置。
【0008】
(2)前記クラスタリング手段は、操作した機能及び操作時刻の分布から時間軸を優先してクラスタリングすることを特徴とする(1)記載の機器操作補助装置。
【0009】
(3)前記クラスタリング手段は、操作した機能の順序によりクラスタリングすることを特徴とする(1)記載の機器操作補助装置。
【0010】
(4)前記操作解析手段は、同一機能のクラスタ毎に周期性を解析することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の機器操作補助装置。
【0011】
(5)前記ユーザ推定手段は、前記電子機器の使用開始時に前回操作時刻と今回操作時刻から所属クラスタを推定することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の機器操作補助装置。
【0012】
(6)ユーザ環境作成手段は、前記ユーザ推定手段で推定したユーザが操作しない機能に関し、前記電子機器の操作画面における表示を隠すことを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の機器操作補助装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば次のような効果がある。
電子機器を使用しているユーザを操作内容から判別するので、ユーザ名を意識することなく、そのユーザに適したユーザ環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す構成図である。
ユーザは、電子機器の操作をHMIである機器操作手段11により行う。時刻データ発生手段21はリアルタイムクロックであり、現在の時刻データを発生している。操作認識手段22は、ユーザの行った操作内容とその操作時刻を認識し、操作内容と操作時刻の関連付けを行う。これらのデータは、操作ログとして操作記憶手段23に順次記憶されていく。
【0015】
クラスタリング手段31は、操作記憶手段23に蓄積されている操作ログのデータを一定の関係により分割し、クラスタリングを行う。クラスタリングの方法としては、例えば、ユーザが操作した機能と操作時刻との関係に着目し、時間軸を優先してクラスタリングを行う方法や、ユーザが操作した機能の順序によりクラスタリングを行う方法等がある。
【0016】
操作解析手段32は、クラスタリング手段31によりクラスタリングされた各クラスタの特徴を解析し、特徴が共通するクラスタ毎に再分類を行い、再分類されたクラスタ毎にユーザを割り当てる。例えば、同一機能のクラスタ毎に周期性を解析し、周期性によりユーザを割り当てる。このようにすると、同一ユーザが同一機能を定期的に行う場合等に対応することができる。また、FFT(高速フーリエ変換)によりクラスタの特徴を解析するようにしてもよい。
【0017】
ユーザ環境登録手段33は、操作解析手段32によって特徴が共通するクラスタ毎にユーザが割り当てられたユーザ環境情報を登録する。ユーザ環境情報は固定ではなく、操作解析手段32の解析結果を反映して、ユーザの追加、削除や操作内容の変更等、適宜更新される。ユーザ環境情報の更新のタイミングとしては、例えば、電子機器の使用を終了する際に行う場合や、定周期で行う場合、クラスタの特徴に変化が表れた際に行う場合等がある。
【0018】
ユーザ環境情報は不用意に更新されると逆にユーザの操作性が悪くなる場合があるが、操作解析手段32で周期性等を判断することにより、臨時に別人が操作した場合等にそれがノイズとなってユーザ環境情報が更新されるのを防ぐことができる。
【0019】
ユーザ推定手段41は、ユーザが機器操作手段11により電子機器の操作を行うと、操作認識手段22の情報をユーザ環境登録手段33に登録されているユーザ環境情報に照らし合わせ、特徴が共通するクラスタから現在使用しているユーザを推定する。例えば、電子機器の使用開始時に前回操作時刻、今回操作時刻と最初の操作から所属クラスタを割り出し、ユーザを推定する。
【0020】
ユーザ環境作成手段51は、ユーザ推定手段41の指示により推定したユーザのユーザ環境を構築する。これにより、ユーザは前回使用した環境と同じ環境を自動的に呼び出すことができる。例えば、使用頻度の高い機能をプルダウンメニューの上にもっていく等、アクセスし易い位置に配置したり、最後に表示した測定値等を優先的に表示したりする。
【0021】
図2は本発明のユーザ解析の具体的な説明図である。本発明を記録計に適用した場合について説明する。図中のバツ印はそれぞれの操作が行われたポイントを示しており、点線は各クラスタを示している。
図2(a)は記録計の操作を行った時刻と使用した機能の分布を表している。
記録計は長期にわたり運用され、その操作はバッチ的の行われ、普段は自動運転状態で使用されている。このため、決まった時刻に決まったユーザが同じ機能を使用する場合が多い。ここでは、時間軸を優先してクラスタリングしている。
【0022】
図2(b)はクラスタの周期と使用した機能の分布を表している。
同一機能を使用するクラスタ毎に周期性を求める。その結果、クラスタ毎にユーザ1,2,3が割り当てられる。ここで、割り当てられるユーザ1,2,3は、特徴が共通するクラスタ毎に便宜上割り当てられたユーザ識別子であり、ユーザ1,2,3は別人である場合もあるし、同一人である場合もある。このようにすることで、ユーザ名に依存することなく、操作状況に応じた使用環境を提供することができる。
【0023】
図3は本発明の動作を示すフローチャートである。
図3(a)はユーザの電子機器に対する操作からユーザを解析し登録する解析過程を示している。
ユーザが電子機器のHMIにより操作を行うと(S10)、操作内容とその時の操作時刻が認識され(S20)、操作ログが記憶手段に順次記憶されていく(S30)。
【0024】
電子機器の使用終了時や、電子機器の使用が一定時間経過した時等の所定のタイミングで、操作ログを基に、ユーザの操作郡を機能や操作時刻等の観点から分類し、クラスタ化を行う(S40)。各クラスタの特徴を解析し(S50)、周期性等の特徴が共通するクラスタ毎に再分類を行い、再分類されたクラスタ毎にユーザの割り付けを行う。この解析結果は、ユーザ環境情報として登録される(S60)。
【0025】
図3(b)はユーザの電子機器に対する操作から操作状況に応じたユーザ環境を提供する運用過程を示している。
ユーザが記録計等の電子機器のHMIにより操作を行うと(S70)、操作内容とその時の操作時刻が認識される(S80)。この操作内容と操作時刻から登録されているユーザ環境情報を基に特徴が共通するユーザを推定する(S90)。
ユーザの推定は、電子機器の使用開始時や、ユーザの操作状況に応じて行う。
【0026】
ユーザ環境情報を基に、推定したユーザのユーザ環境を構築(適用)し(S100)、続くユーザの電子機器の操作を補助する。ユーザは続く操作をしようとした際に、適用された環境がユーザの意図したものであればそのまま操作を続行し(S110)、適用された環境がユーザの意図したものでなければ今回適用されたユーザ環境をキャンセルボタン等によりキャンセルする(S120)。キャンセルすることで、適用前の使用環境で操作できることになる。
【0027】
例えば、記録計の場合のユーザ環境としては、トレンド表示、ディジタル表示、バーグラフ表示の表示切り替えや表示色の変更、測定チャネル、演算チャネルの選択、測定周期やファイルセーフ周期の設定等がある。
また、表示する際に使用したいもの以外は表示しないように隠したり、使用する可能性が高い項目をプルダウンメニューの一番上に表示する等のように選び易い位置に配置するようにしてもよい。
【0028】
本発明により、ユーザは特に意識することなく、自分に適したユーザ環境で電子機器を使用することができる。
また、特徴が共通するクラスタ毎に割り付けられたユーザ識別子を用いており、ユーザ名及びパスワードというユーザ認証を行っていないので、1人のユーザが複数のユーザ環境を持つことができる。これにより、同じユーザであっても、1日の時間帯によってユーザ環境を変えたい場合や、曜日によりユーザ環境を変えたい場合であっても容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明のユーザ解析の具体的な説明図である。
【図3】本発明の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
11 機器操作手段
21 時刻データ発生手段
22 操作認識手段
23 操作記憶手段
31 クラスタリング手段
32 操作解析手段
33 ユーザ環境登録手段
41 ユーザ推定手段
51 ユーザ環境作成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に対するユーザの操作を補助する機器操作補助装置において、
ユーザの操作を操作時刻とともに操作ログとして記録する操作記録手段と、
前記操作ログを基にユーザの操作をクラスタリングするクラスタリング手段と、
前記クラスタリング結果から各クラスタの特徴を解析し、特徴が共通するクラスタ毎にユーザを割り当てる操作解析手段と、
前記特徴が共通するクラスタ毎にユーザ環境情報を登録するユーザ環境登録手段と、
ユーザの操作に対して、前記ユーザ環境登録手段に登録されたユーザ環境情報を基に該当するユーザを推定するユーザ推定手段と、
該ユーザ推定手段の指示により、推定したユーザのユーザ環境を構築するユーザ環境作成手段と、
を有することを特徴とする機器操作補助装置。
【請求項2】
前記クラスタリング手段は、操作した機能及び操作時刻の分布から時間軸を優先してクラスタリングすることを特徴とする請求項1記載の機器操作補助装置。
【請求項3】
前記クラスタリング手段は、操作した機能の順序によりクラスタリングすることを特徴とする請求項1記載の機器操作補助装置。
【請求項4】
前記操作解析手段は、同一機能のクラスタ毎に周期性を解析することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の機器操作補助装置。
【請求項5】
前記ユーザ推定手段は、前記電子機器の使用開始時に前回操作時刻と今回操作時刻から所属クラスタを推定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の機器操作補助装置。
【請求項6】
ユーザ環境作成手段は、前記ユーザ推定手段で推定したユーザが操作しない機能に関し、前記電子機器の操作画面における表示を隠すことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の機器操作補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−299549(P2008−299549A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144321(P2007−144321)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】