説明

機器用コネクタ

【課題】サービスカバーをケースに取り付ける際の芯ずれを吸収する。
【解決手段】本発明の機器用コネクタ10は、サービスホール22を塞ぐようにしてケース20に取り付けられるサービスカバー30と、ケース20の内部に配設され、端子台40に設けられた装着凹部42の内部に装着されたケース側コネクタ60と、サービスカバー30と一体に設けられ、同サービスカバー30がケース20に取り付けられることで待受け状態にあるケース側コネクタ60に接続されてインターロック回路を構成するカバー側コネクタ50と、待受け状態にあるときにはケース側コネクタ60と装着凹部42の内壁との間にクリアランスCLが確保されるようにケース側コネクタ60を保持する一方、クリアランスCLが変動した場合には待受け状態に戻すようにケース側コネクタ60を付勢する可撓片65とを備えている構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における機器のケースの内部に設けられた端子台のボルト締結作業を行うための開口部がケースに貫通して設けられてなる機器用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機器用コネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この機器用コネクタにおいてボルト締結作業を行う際は、開口部から締結工具をケース内に挿入してボルトを締め付けることでバスバーなどの端子同士を導通可能に接続するようになっている。そして、ボルト締結作業が完了した後は、開口部からケース内に水や埃などが浸入しないように、開口部を塞ぐようにしてサービスカバーをケースに取り付けるようになっている。
【0003】
この機器用コネクタには、安全対策の一環として、端子同士が通電状態にあるにもかかわらずサービスカバーがケースから取り外された場合に、機器の内部に設けられた電気回路をOFF状態に切り替えるインターロック回路が設定されている。具体的には、サービスカバーに設けられたカバー側コネクタとケースに設けられたケース側コネクタとを嵌合させることでインターロック回路が構成され、電気回路がON状態に切り替わる一方、サービスカバーをケースから取り外すとインターロック回路が遮断され、電気回路がOFF状態に切り替わるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−117306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような機器用コネクタでは、一つの端子台に複数の締結部を配設する場合があり、この場合に締結部毎に複数の開口部を設けると、各開口部に対応する複数のサービスカバーを取り付けることが必要になり、取付作業が煩雑になる。そこで、複数の締結部に共用の開口部を設定し、この開口部をいっぺんに覆うサービスカバーを設定すると、サービスカバーが大きくなってしまう。そして、サービスカバーが大きくなると、ケースに取り付ける際の芯ずれが発生しやすくなり、両コネクタが正規に嵌合しない場合、インターロック回路を構成できなくなる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、サービスカバーをケースに取り付ける際の芯ずれを吸収して、カバー側コネクタとケース側コネクタの嵌合を確実に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両における機器のケースの内部に設けられた端子台のボルト締結作業を行うための開口部がケースに設けられてなる機器用コネクタであって、開口部を塞ぐようにしてケースに取り付けられるサービスカバーと、ケースの内部に配設され、端子台に設けられた装着凹部の内部に装着されたケース側コネクタと、サービスカバーと一体に設けられ、同サービスカバーがケースに取り付けられることで待受け状態にあるケース側コネクタに接続されてインターロック回路を構成するカバー側コネクタと、待受け状態にあるときにはケース側コネクタと装着凹部の内壁との間にクリアランスが確保されるようにケース側コネクタを保持する一方、クリアランスが変動した場合には待受け状態に戻すようにケース側コネクタを付勢する付勢部材とを備えている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によると、サービスカバーをケースに取り付ける際に芯ずれが生じた場合であっても、待受け状態にあるケース側コネクタがカバー側コネクタと同軸をなすようにしてクリアランスの範囲内で移動することにより、芯ずれを吸収することができる。これにより、カバー側コネクタとケース側コネクタとによってインターロック回路が構成され、機器用コネクタの電気回路を通電可能な状態に切り替えることができる。一方、サービスカバーをケースから取り外した場合には、インターロック回路を遮断するとともにケース側コネクタを付勢部材によって付勢することにより待受け状態に復帰させることができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
待受け状態にあるケース側コネクタの両側に形成される一対のクリアランスは、いずれも同じ寸法となるように設定されている構成としてもよい。
このような構成によると、待受け状態においてケース側コネクタを装着凹部の中心に配置することができる。したがって、芯ずれの方向にかかわらず全範囲に亘って均等に芯ずれを吸収することができる。つまり、ケース側コネクタが装着凹部の中心に配置されていない場合には、ケース側コネクタの両側に大小2種類のクリアランスが形成されることになり、このうち小さい方のクリアランスは、装着凹部の中心に配置した場合におけるクリアランスよりも小さくなってしまうため、クリアランスが小さくなった分だけ芯ずれの吸収量も小さくなる。その点、上記の構成によると、ケース側コネクタの両側で同じ寸法のクリアランスが形成されるため、いずれか一方で芯ずれの吸収量が小さくなることはない。
【0010】
付勢部材は、ケース側コネクタに設けられた片持ち状の可撓片であって、この可撓片が装着凹部の内壁に弾性的に接触することにより、同ケース側コネクタをカバー側コネクタとの嵌合方向と直交する方向に付勢するようになっており、嵌合方向を前後方向としカバー側コネクタと嵌合する側を前方とした場合に、装着凹部は、後方に開口する凹形状をなし、装着凹部の前端部には、装着孔が前後方向に貫通して設けられており、ケース側コネクタは、装着孔を貫通する形態で装着されるケース側ハウジングと、このケース側ハウジングの外側面から側方に張り出して装着孔の孔縁部に後方から当接可能な張出片と、ケース側ハウジングの外側面における張出片の後方位置から装着凹部の前端部付近まで延びる可撓片とを備えて構成され、張出片は、可撓片の先端部がケース側ハウジングの外側面側に変位した場合にその可撓片の先端部が描く揺動軌跡に沿う形態とされた傾斜面を有している構成としてもよい。
【0011】
可撓片をできるだけ撓みやすく形成するためには、可撓片の長さをできるだけ長くして剛性を低下させることが望ましい。その点、上記の構成によると、可撓片が前後方向に延びて長く形成されているため、可撓片が短い場合よりも剛性が低下して撓みやすくできる。一方、可撓片を長くすると、張出片と干渉しやすくなることが懸念される。その点、上記の構成によると、可撓片の先端部が張出片の傾斜面に沿うように変位するため、可撓片の先端部と張出片の干渉を回避することができる。
【0012】
可撓片の先端部には、前後方向に延びる形態をなし装着凹部の内壁に線接触する突当リブが設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、突当リブを装着凹部の内壁に線接触させることにより、ケース側ハウジングが前後方向を向いた姿勢を維持したまま側方に平行移動することになる。このため、ケース側コネクタがカバー側コネクタに対して傾いた姿勢となって、この姿勢から強引に嵌合が行われることを規制できる。
【0013】
可撓片の先端部は、ケース側コネクタの前後方向における中央付近に配置されている構成としてもよい。
このような構成によると、可撓片によってケース側コネクタを側方に安定して付勢することができ、ケース側コネクタを平行移動させやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サービスカバーをケースに取り付ける際の芯ずれを吸収して、カバー側コネクタとケース側コネクタの嵌合を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態における機器用コネクタの斜視図
【図2】カバー側コネクタとケース側コネクタの嵌合状態を示す断面図
【図3】カバー側コネクタとケース側コネクタの嵌合状態を示す断面図であって、図2とは90°異なる方向から見た断面図
【図4】端子台の端子接続構造を示す断面図
【図5】ケース側コネクタを示す斜視図
【図6】ケース側コネクタの平面図
【図7】ケース側コネクタの正面図
【図8】ケース側コネクタの右側面図
【図9】図6におけるA−A線断面図
【図10】カバー側コネクタを示す斜視図
【図11】カバー側コネクタの底面図
【図12】カバー側コネクタの左側面図
【図13】図11におけるB−B線断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図13の図面を参照しながら説明する。本実施形態における機器用コネクタ10は、図1に示すように、ワイヤハーネスW/Hの端末に接続されたハーネス側コネクタH/Cと接続可能なコネクタ嵌合部21を備えている。図1においては、一つのコネクタ嵌合部21のみを図示しているものの、実際には、機器用コネクタ10は、複数のコネクタ嵌合部21を備えて構成されている。
【0017】
機器用コネクタ10は、コネクタ嵌合部21が側面に開口して設けられた金属製のケース20、このケース20の上面に開口して設けられたサービスホール(本発明の「開口部」の一例)22を塞ぐサービスカバー30、ケース20の内部に配設された端子台40などを備えて構成されている。サービスホール22は、端子台40のボルト締結作業を行うための作業用の孔であって、ボルト締結作業後にサービスカバー30によって閉じられてケース20の内部が密閉されるようになっている。
【0018】
ハーネス側コネクタH/Cは、図4に示すように、ワイヤハーネスW/Hの端末部にて絶縁被覆を皮剥きすることで露出された芯線に圧着接続されたハーネス側端子H/Tを備えている。このハーネス側端子H/Tは、平板状の丸端子であって、接続ボルトB1が通される接続孔を有している。一方、ハーネス側端子H/Tに接続される機器側端子E/Tも同様に、接続ボルトB1が通される接続孔を有している。
【0019】
端子台40には、締結ナットNが予め取り付けられた締結部41が設けられている。この締結部41では、締結ナットNの締結座面(上面)にハーネス側端子H/Tが載せられ、このハーネス側端子H/Tの上面に機器側端子E/Tが載せられた状態で、接続ボルトB1を各接続孔に通して締結ナットNに締め込むことにより、ボルト締結作業が行われる。このボルト締結作業が行われる締結ナットNの上方にサービスホール22が開口しており、サービスホール22を通してボルト締結作業のための締結工具などがケース20内に挿入可能とされている。
【0020】
本実施形態においては、図示はしないものの、ケース20内に複数の締結部41が設けられている。一方、サービスホール22は、ケース20に一つだけ設けられている。すなわち、サービスホール22は、各締結部41に共用とされており、図1に示すように、大きめの孔として構成されている。このため、サービスホール22を塞ぐサービスカバー30もケース20の長手方向に延びる長方形状とされている。
【0021】
サービスカバー30の周縁には、複数の取付部31が設けられている。本実施形態では図示6個の取付部31がサービスカバー30の周縁に間欠的に配置されている。各取付部31には取付ボルトB2が通される取付孔が設けられており、この取付孔に取付ボルトB2が挿通されてケース20にボルト締結されるようになっている。これにより、サービスカバー30がケース20の上面に取り付け固定される。
【0022】
サービスカバー30の中央部には、サービルホール22の外形よりも一回り小さい形状をなして上方に膨出して形成された膨出部32が設けられている。この膨出部32は、サービスカバー30の一部を上方に叩き出すことによって形成されており、膨出部32の上面には、さらに上方に膨出するようにして取付座33が設けられている。この取付座33の下面(内面)には、図3に示すように、略L字状をなす金属製のステー34が一体に固定されている。ステー34の下端部には、係止孔34Aが設けられている。
【0023】
ステー34の下端部には、カバー側コネクタ50が取り付けられている。このカバー側コネクタ50は、カバー側ハウジング51と、このカバー側ハウジング51の内部に圧入されたショート端子52とを備えて構成されている。カバー側コネクタ50は、ケース20内の端子台40に取り付けられたケース側コネクタ60と嵌合可能とされている。両コネクタ50,60が嵌合すると、ケース側コネクタ60内に収容された一対の雌端子62がショート端子52によって導通可能に接続され、インターロック回路が構成されるようになっている。
【0024】
インターロック回路が構成された状態(接続状態)では、機器側端子E/Tに連なって機器の内部に設けられた電気回路が通電可能な状態に切り替わる一方、インターロック回路が遮断された状態(非接続状態)では、電気回路が通電不能な状態に切り替わるように制御されている。したがって、サービスカバー30をケース20から取り外して両コネクタ50,60を離脱させた状態では、ハーネス側端子H/Tと機器側端子E/Tが接続されていても、電気回路が通電状態となることはない。これとは逆に、サービスカバー30をケース20に取り付けて両コネクタ50,60を嵌合させた状態では、電気回路が通電可能な状態となる。
【0025】
さて、本実施形態のサービスカバー30は、複数の締結部41に共用であり、サイズが大きいため、ケース20に取り付けられる際の取付公差も予め大きめに設定されている。この取付公差を吸収すべく、取付ボルトB2が通される取付部31の取付孔は、取付ボルトB2の軸部の直径よりも大きめに設定されており、取付公差を吸収した上で締結作業を行うことができるようになっている。
【0026】
一方、両コネクタ50,60間においては、上記取付公差に起因して、両コネクタ50,60の嵌合時における芯ずれが発生しやすくなっており、両コネクタ50,60の嵌合方向と直交する方向にケース側コネクタ60が移動することで芯ずれを吸収した上で嵌合できるようにしてある。以下、両コネクタ50,60の詳細な構成について説明する。また、以下の説明においては両コネクタ50,60の嵌合方向を前後方向とし、互いの嵌合面側を前側とする。
【0027】
まず、カバー側コネクタ50の構成について図10ないし図13の図面を参照しながら説明する。カバー側ハウジング51の外側面には、図10に示すように、ステー34が装着されるステー装着部53が設けられており。ステー装着部53は前後方向に延びる形態をなし、ステー34の両側縁に引っ掛けてステー34を支持する一対の支持レール53Aと、両支持レール53Aの間に設けられた係止突起53Bとからなる。
【0028】
ステー34をステー装着部53に装着すると、係止突起53Bがステー34の係止孔34Aに勢いよく嵌り込んで前後方向に係止する。この係止状態では、両支持レール53Aによってステー34がカバー側ハウジング51から離れることが規制されているため、カバー側ハウジング51がステー34に対して抜け止め状態に保持される。
【0029】
カバー側ハウジング51の外側面には、複数条の外側リブ54が設けられている。各外側リブ54は、前後方向に延びる形態をなし、その前後両端部にテーパ状の傾斜面が形成されている。カバー側ハウジング51の各外側面には、一対の外側リブ54が並列に配置されている。一方、カバー側ハウジング51の内部には、同じく前後方向に延びる形態をなす複数条の内側リブ55が設けられている。内側リブ55の前端部には、前方に向かうほどカバー側ハウジング51の外側面に近づくテーパ状の誘導面55Aが形成されている。なお、図11に示すように、各内側リブ55のうち係止突起53Bが設けられている側に位置する一対の内側リブ55は、他の内側リブ55よりも突出高さが小さめとされているものの、両内側リブ55とカバー側ハウジング51の外側面との間には、係止突起53Bの型抜き孔55Bを除く全域に誘導面55Aが形成されている。
【0030】
各内側リブ55の内側面によって囲まれた空間は、ケース側コネクタ60が内部に嵌合される嵌合空間56とされている。嵌合空間56の間口寸法は、カバー側ハウジング51の間口寸法の半分以下とされている。また、嵌合空間56は、カバー側ハウジング51の中心を通る軸線上に配置されている。嵌合空間56を挟む両側に並んで位置する両誘導面55Aは、その並び方向における寸法がいずれも同一とされており、並び方向におけるいずれの方向に芯ずれした場合であっても同じ芯ずれ量を吸収できるようになっている。また、誘導面55Aによって吸収できる芯ずれ量は、サービスカバー30の取付公差に基づいて算出される最大芯ずれ量よりも大きくなるように設定されている。
【0031】
次に、ケース側コネクタ60の構成について説明する。ケース側コネクタ60は、図2または図3に示すように、端子台40に設けられた装着凹部42の内部に装着されている。この装着凹部42は、下方に開口する凹形状をなしており、装着凹部42の下方からケース側コネクタ60が挿入可能とされている。装着凹部42の前端部(奥壁)には、装着孔43が貫通して設けられている。ケース側コネクタ60は、ケース側ハウジング61が装着孔43を貫通する形態で装着されており、装着孔43とケース側ハウジング61の外側面との間には、所定のクリアランスCLが全周に亘って設けられている。ケース側コネクタ60は、クリアランスCLの範囲内で移動可能とされ、クリアランスCLの寸法がケース側コネクタ60によって吸収可能な最大芯ずれ量となっている。
【0032】
ケース側ハウジング61は、図5に示すように、前後方向に長い略方形のブロック状とされている。ケース側ハウジング61の外側面には、リテーナ装着孔が開設されており、このリテーナ装着孔にリテーナRが装着されている。図9に示すように、雌端子62は、ケース側ハウジング61の内部に収容されており、ケース側ハウジング61の内部において片持ち状に形成されたランス63とリテーナRとによって二重係止された状態で後方に抜け止めされている。
【0033】
ケース側ハウジング61の外側面には、複数の張出片64が側方に張り出す形態で設けられている。張出片64は、図5に示すように、1つの側面に二つずつ配置されている。また、張出片64は、ケース側ハウジング61の前後方向における中央付近に配置されている。張出片64の前面は、ケース側ハウジング61の外側面に対して直交する配置とされており、装着孔43の孔縁部に対して後方から面接触可能とされている。
【0034】
また、ケース側ハウジング61の外側面には、片持ち状をなす可撓片65が弾性変形可能に設けられている。可撓片65は、ケース側ハウジング61の外側面における張出片64の後方位置から一旦側方に立ち上がった後、略直角に向きを変えて前方に延びる形態をなしている。すなわち、可撓片65は、ケース側ハウジング61の外側面から垂直に立ち上がる基端部65Aを有し、この基端部65Aの先端部からケース側ハウジング61の外側面と平行姿勢で前方に延びる形態とされている。
【0035】
可撓片65の先端部65Bは、可撓片65が弾性変形する前では張出片64のほぼ側方に位置して張出片64と干渉しないように配置されている。さらに、可撓片65の先端部65Bは、基端部65Aを中心として揺動軌跡を描きながらケース側ハウジング61に近づくとともにやや下方に向かうようにして変位する。また、張出片64の後面は、可撓片65の先端部65Bが描く揺動軌跡に沿う形態をなすテーパ状に傾斜している。このため、可撓片65の先端部65Bは、可撓片65が基端部65Aを中心に弾性変形した場合に、張出片64と干渉しないようになっている。
【0036】
また、装着凹部42の内側面には、一対の保持突起44が対向状態で設けられている。可撓片65の先端部65Bには、保持突起44と前後方向に係止可能な抜止部67が設けられている。可撓片65は、詳細には、基端部65Aから前方に延びる一対のアームを有し、両アームの先端部を抜止部67によって連結した構成とされている。したがって、抜止部67と両アームと基端部65Aとによって囲まれた領域は、保持突起44が嵌り込む保持孔とされている。図3に示すように、ケース側コネクタ60を装着凹部42の内部に装着した状態では、抜止部67と保持突起44が上下方向(ケース側コネクタ60の装着方向)に係止することにより、ケース側コネクタ60が装着凹部42に抜け止めされた状態に保持される。
【0037】
また、可撓片65の先端部65Bにおいて抜止部67を挟む両側には、一対の突当リブ68が設けられている。この突当リブ68は、前後方向に延びる形態をなし、可撓片65のアームよりも側方に張り出してケース側ハウジング61の外側面と平行に配置されている。
【0038】
また、可撓片65の先端部65Bには、4つの可撓片65のうち対向する2つの可撓片65において両突当リブ68の一方をさらに側方に突出させたフランジ66が張り出し形成されている。このフランジ66は、ケース側コネクタ60を装着凹部42に装着する際に、装着凹部42の内面に設けられた案内溝(図示せず)に嵌り込むようになっており、これによりケース側コネクタ60の装着動作が案内されるようになっている。
【0039】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、サービスカバー30をケース20から取り外し、各締結部41がサービスホール22を通して外部に臨んだ状態にしておく。引き続き、ハーネス側コネクタH/Cをコネクタ嵌合部21に嵌合させ、機器側端子E/Tとハーネス側端子H/Tを重ね合わせた状態にする。次に、接続ボルトB1をサービスホール22から各接続孔に挿通し締結工具をサービスホール22からケース20内に差し込んで、接続ボルトB1を締結ナットNに締め込むことにより、ボルト締結作業を行う。これにより、両端子E/T,H/Tが締結部41において導通可能に接続され、機器内部への電力供給が可能な状態となる。ただし、サービスカバー30をケース20に取り付ける前においては、インターロック回路が遮断され、OFF状態となっているため、機器内部の電気回路が通電不能な状態となっている。
【0040】
次に、サービスホール22を塞ぐようにしてサービスカバー30をケース20に取り付ける。このとき、カバー側コネクタ50が、待受け状態にあるケース側コネクタ60に対して芯ずれした状態で両コネクタ50,60の嵌合が行われる場合がある。この場合であっても、ケース側コネクタ60のケース側ハウジング61の前端部がカバー側コネクタ50のカバー側ハウジング51の誘導面55Aに摺接することにより、ケース側ハウジング61がカバー側ハウジング51と同軸をなすように側方に移動して芯ずれを吸収しながら嵌合空間56に嵌合する。この嵌合に際して、ケース側ハウジング61は、可撓片65の先端部65Bに設けられた突当リブ68が装着凹部42の内壁に線接触した状態のまま可撓片65が弾性変形することにより、側方に平行移動する。
【0041】
両コネクタ50,60が正規嵌合すると、ショート端子52と雌端子62が導通可能に接続され、インターロック回路が構成され、ON状態となるため、機器内部の電気回路が通電可能な状態となる。続いて、サービスカバー30の周縁に設けられた取付部31の取付孔に取付ボルトB2を挿通し、ケース20にボルト締結することで、サービスカバー30がサービスホール22を塞いだ状態でケース20に固定される。なお、サービスカバー30をケース20から取り外して両コネクタ50,60を離脱させた場合には、可撓片65の弾性力によってケース側ハウジング61が待受け状態に復帰し、次回の嵌合に備えて自動的に装着凹部42内でセンタリングされるようになっている。
【0042】
以上のように本実施形態では、複数の締結部41を外部に臨ませる大きなサービスホール22を一つのサービスカバー30で覆うようにした場合であっても、両コネクタ50,60の芯ずれを吸収して両コネクタ50,60を正規嵌合させることができる。したがって、インターロック回路を正常に作動させるとともに機器内部の電気回路を通電可能な状態に切り替えることができる。また、両コネクタ50,60を装着凹部42の中心に配置したから、両コネクタ50,60がいずれの方向に芯ずれした場合でも、クリアランスCLの範囲内で確実に芯ずれを吸収することができる。
【0043】
また、可撓片65をできるだけ長く形成するとともに、可撓片65が弾性変形した際に先端部65Bが張出片64の後面と干渉しないようにしたため、可撓片65の剛性を低下させることができる。したがって、可撓片65が弾性変形しやすくなって両コネクタ50,60の嵌合抵抗を小さくすることができる。また、可撓片65の先端部65Bに設けた突当リブ68を装着凹部42の内壁に線接触させるようにしたから、ケース側ハウジング61を側方に平行移動させ、両コネクタ50,60が不正な嵌合姿勢で嵌合することを回避できる。さらに、突当リブ68をケース側ハウジング61の前後方向における中央付近に配設したから、可撓片65の弾性変形に伴って発生する付勢力をケース側ハウジング61に対してバランス良く作用させることができる。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では付勢部材として可撓片65を例示しているものの、本発明によると、付勢部材としてコイルばねを用いてもよい。この場合、コイルばねの一端をケース側ハウジング61に当接させるとともに、コイルばねの他端を装着凹部42の外部で端子台40の任意の場所に当接させるようにしてもよい。
【0045】
(2)上記実施形態ではケース側コネクタ60と装着凹部42の内壁との間に確保されるクリアランスとして、装着孔43とケース側ハウジング61の外側面との間に形成されたクリアランスCLを例示しているものの、本発明によると、装着凹部42の内壁のうち前後方向に延びる内側壁とケース側ハウジング61の外側面との間に形成されるクリアランスとしてもよい。
【0046】
(3)上記実施形態ではケース側コネクタ60が側方のみに移動して芯ずれを吸収するものを例示しているものの、本発明によると、ケース側コネクタ60が前後方向にも移動するようにフローティング支持した上で芯ずれを吸収するようにしてもよい。
【0047】
(4)上記実施形態では片持ち状をなして前方に延びる形態をなす可撓片65を例示しているものの、本発明によると、片持ち状をなして後方に延びる形態をなす可撓片としてもよい。
【0048】
(5)上記実施形態では張出片64の後面を傾斜面としているものの、本発明によると、可撓片の先端部をやや後方に配置し、張出片の後面を両コネクタ50,60の嵌合方向と直交する垂直面としてもよい。
【0049】
(6)上記実施形態では可撓片65の先端部65Bがケース側ハウジング61の前後方向における中央付近に配置されているものの、本発明によると、可撓片の先端部をケース側ハウジングの前端付近に配置してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…機器用コネクタ
20…ケース
22…サービスホール(開口部)
30…サービスカバー
40…端子台
42…装着凹部
43…装着孔
50…カバー側コネクタ
60…ケース側コネクタ
61…ケース側ハウジング
64…張出片
65…可撓片
65B…先端部
68…突当リブ
CL…クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における機器のケースの内部に設けられた端子台のボルト締結作業を行うための開口部が前記ケースに設けられてなる機器用コネクタであって、
前記開口部を塞ぐようにして前記ケースに取り付けられるサービスカバーと、
前記ケースの内部に配設され、前記端子台に設けられた装着凹部の内部に装着されたケース側コネクタと、
前記サービスカバーと一体に設けられ、同サービスカバーが前記ケースに取り付けられることで待受け状態にある前記ケース側コネクタに接続されてインターロック回路を構成するカバー側コネクタと、
前記待受け状態にあるときには前記ケース側コネクタと前記装着凹部の内壁との間にクリアランスが確保されるように前記ケース側コネクタを保持する一方、前記クリアランスが変動した場合には前記待受け状態に戻すように前記ケース側コネクタを付勢する付勢部材とを備えていることを特徴とする機器用コネクタ。
【請求項2】
前記待受け状態にある前記ケース側コネクタの両側に形成される一対の前記クリアランスは、いずれも同じ寸法となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の機器用コネクタ。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記ケース側コネクタに設けられた片持ち状の可撓片であって、この可撓片が前記装着凹部の内壁に弾性的に接触することにより、同ケース側コネクタを前記カバー側コネクタとの嵌合方向と直交する方向に付勢するようになっており、
前記嵌合方向を前後方向とし前記カバー側コネクタと嵌合する側を前方とした場合に、前記装着凹部は、後方に開口する凹形状をなし、前記装着凹部の前端部には、装着孔が前後方向に貫通して設けられており、
前記ケース側コネクタは、前記装着孔を貫通する形態で装着されるケース側ハウジングと、このケース側ハウジングの外側面から側方に張り出して前記装着孔の孔縁部に後方から当接可能な張出片と、前記ケース側ハウジングの外側面における前記張出片の後方位置から前記装着凹部の前端部付近まで延びる前記可撓片とを備えて構成され、
前記張出片は、前記可撓片の先端部が前記ケース側ハウジングの外側面側に変位した場合にその可撓片の先端部が描く揺動軌跡に沿う形態とされた傾斜面を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機器用コネクタ。
【請求項4】
前記可撓片の先端部には、前後方向に延びる形態をなし前記装着凹部の内壁に線接触する突当リブが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の機器用コネクタ。
【請求項5】
前記可撓片の先端部は、前記ケース側コネクタの前後方向における中央付近に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の機器用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−234744(P2012−234744A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103585(P2011−103585)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】